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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】脱臭材及び脱臭シート
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20220914BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20220914BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220914BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61L9/01 K
A61L9/01 B
B01J20/20 B
B01J20/22 A
B01J20/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018095798
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019198543
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】藤木 博規
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072603(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040577(WO,A1)
【文献】特開平02-052043(JP,A)
【文献】特開平01-288336(JP,A)
【文献】特開2017-165936(JP,A)
【文献】特開平11-057468(JP,A)
【文献】特開2005-152033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0029853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00- 20/28
B01J 20/30- 20/34
B01D 53/02- 53/12
B01D 53/34- 53/73
B01D 53/74- 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、
前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、
以下の方法によって測定される、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、
以下の方法によって測定される、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部である、
脱臭材。
(活性炭100質量部に対する芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量(質量部)の測定)
活性炭に担持された芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量については、薬剤溶液の、活性炭を浸漬する前の液と活性炭を浸漬した後の液の有機物濃度を、それぞれ全有機物濃度(TOC)計を用いて測定し、浸漬操作前後の有機物濃度の差から、合計担持量を測定するまず全有機物濃度(TOC)計を用いて、浸漬操作前後の薬剤溶液について、炭素(C)に換算された有機物濃度(mgC/L)を測定し、操作前後の濃度の差を求める。別途、秤量して調製した既知濃度の芳香族アミン水溶液について同様に全有機物濃度を測定し、有機物濃度(mgC/L)と芳香族アミン濃度(mg芳香族アミン/L)の対応を表す検量線を作成する。作成した検量線を用いて、添着操作前後の有機物濃度の差(mgC/L)を芳香族アミン濃度の差(mg芳香族アミン/L)に換算する。求めた濃度の差に処理液量(L)を乗じて芳香族アミン質量の差を算出する。算出された値を、薬剤溶液に浸漬する前の活性炭100質量部あたりの質量部に換算し、得られた質量部を、活性炭100質量部に対する芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量(質量部)とする。
(活性炭100質量部に対する芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量(質量部)の測定)
活性炭に担持された芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計物質量は、活性炭を浸漬する前の薬剤溶液と、活性炭を浸漬した後の薬剤溶液について、JIS K 0101:1998 42.4に規定のイオンクロマトグラフ法に準じ硫酸イオンの濃度(mg/L)を測定することで、これらの合計担持量を計算する。浸漬操作前後の薬剤溶液の硫酸イオンの濃度(mg/L)を、検量線を用いてそれぞれ測定し、操作前後の硫酸イオン濃度の差(mg/L)を求める。求めた操作前後の硫酸イオン濃度の差(mg/L)に、硫酸の分子量(98.08g/mol)と硫酸イオンの分子量(96.06g/mol)の比を乗じて硫酸濃度の差に換算する。硫酸濃度の差に処理液量(L)を乗じて操作前後の硫酸の差を算出する。算出した操作前後の硫酸の差を、薬剤溶液に浸漬する前の活性炭100質量部あたりの質量部に換算し、得られた質量部を、活性炭100質量部に対する芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量(質量部)とする。
【請求項2】
前記活性炭にp-アミノ安息香酸とp-アミノ安息香酸の硫酸塩が担持されている、請求項1に記載の脱臭材。
【請求項3】
アセトアルデヒドの脱離率が15%以下である、請求項1又は2に記載の脱臭材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の脱臭材を含む、脱臭シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭材及び脱臭シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気浄化に関する関心が高まっており、室内等において、より悪臭の少ない環境が求められている。また、シックハウス症候群の問題を発端として、住環境における揮発性有機化合物(VOC)への対策も求められている。
【0003】
例えば、自動車などの車室内においては、シートパッド、インストルメント・パネル、ドアトリムなどの内装樹脂部品、塗料、接着剤などからの揮発性有機化合物の悪臭、さらに、排気ガス、燃料臭、タバコ、人体、食品の腐敗物などの多くの悪臭が発生し得る。また、車室内は、住宅に比して空間が狭いため、密閉すると特に悪臭が充満しやすいという問題を有する。
【0004】
特許文献1は、繊維状活性炭と芳香族アミノ酸と硫酸とを含んだ繊維状脱臭材であって、以下の工程を含む方法によって製造された繊維状脱臭材を開示している。
芳香族アミノ酸と硫酸とを含有した水溶液中に繊維状活性炭を浸漬させて繊維状活性炭に芳香族アミノ酸と硫酸とを担持させる工程であって、繊維状活性炭に対する芳香族アミノ酸の質量比を10質量%乃至20質量%の範囲内とし、繊維状活性炭に対する硫酸の質量比を5質量%乃至25質量%の範囲内とする工程と、
芳香族アミノ酸及び硫酸を担持させた繊維状活性炭から水溶液を除去する工程と、
水溶液を除去した繊維状活性炭を乾燥させる工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-72603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された脱臭材によれば、アセトアルデヒドを高い効率で除去し且つ優れた貯蔵安定性を達成することが可能となる。しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に開示された脱臭材は、アセトアルデヒドを吸着した後に高温雰囲気下に置くと、吸着したアセトアルデヒドの脱臭材からの脱離が比較的多くなる場合があることを知得した。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率の小さい脱臭材、及び該脱臭材を用いた脱臭シートを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)「芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩」、又は、(B)「芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸」とを含む、脱臭材であって、前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部である脱臭材とすることにより、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、
前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、
前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、
前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部である、
脱臭材。
項2. 前記活性炭にp-アミノ安息香酸とp-アミノ安息香酸の硫酸塩が担持されている、項1に記載の脱臭材。
項3. アセトアルデヒドの脱離率が15%以下である、項1又は2に記載の脱臭材。
項4. 項1~3のいずれか1項に記載の脱臭材を含む、脱臭シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱臭材によれば、活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部であることから、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の脱臭材は、活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部であることを特徴とする。以下、本発明の脱臭材及びこれを用いた脱臭シートについて詳述する。
【0012】
以下において、細孔容積とは、QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)によって算出される細孔容積をいう。QSDFT法とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。
【0013】
本発明の脱臭材は、活性炭と、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む。本発明の脱臭材において、活性炭と、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩とが含まれる場合には、芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩が、当該活性炭に担持されている。また、本発明の脱臭材において、活性炭と、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とが含まれる場合には、芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸が、当該活性炭に担持されている。
【0014】
本発明において、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸(以下、総称して「本発明の脱臭材に含まれる薬剤」と略することがある。)を担持させる、活性炭は、全細孔容積が0.45cc/g以上である。なお、本明細書において、活性炭の説明については、別途説明の無い限り、本発明の脱臭材に含まれる薬剤を担持する前のものを示す。
【0015】
本発明において、活性炭を上記前細孔容積とすることにより、後述する本発明の脱臭材に含まれる薬剤の担持量とすることができる。上記全細孔容積としては、0.7cc/g以上がより好ましい。上記全細孔容積の上限値としては特に制限されないが、例えば、1.3cc/g以下とすることが挙げられる。
【0016】
本発明において、活性炭の比表面積としては、例えば、0.45cc/g以上の全細孔容積を確保しつつ、アセトアルデヒド吸着性能をより向上させる観点から、1000m2/g以上が好ましく、1500m2/g以上がより好ましい。上限値としては特に制限されないが、例えば、3000m2/g以下が挙げられ、2500m2/g以下が好ましく挙げられる。なお、活性炭の比表面積は、JIS K1477に記載されたBET法(1点法)により求めた値である。
【0017】
本発明において、活性炭の平均細孔径としては、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率をより一層小さいものとする観点から、1.5~2.3nmが好ましく挙げられ、1.5~1.8nmがより好ましく挙げられ、1.7~1.8nmがさらに好ましく挙げられる。なお、活性炭の平均細孔径としては、下記式(1)により算出されるものである。
平均細孔直径(nm)
=4×全細孔容積(cc/g)/比表面積(m2/g)×103 ・・・(1)
【0018】
本発明において、活性炭の、0.65nm以上2nm以下の細孔径の細孔容積としては、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率をより一層小さいものとする観点から、0.2~0.7cc/gが好ましく挙げられ、0.6~0.7cc/gがより好ましく挙げられる。
【0019】
本発明の脱臭材において、活性炭の形態は特に限定されないが、例えば、粒状活性炭、粉末状活性炭、繊維状活性炭等が挙げられる。アセトアルデヒドの吸着速度が比較的速いという観点からは、繊維状である繊維状活性炭とすることがより好ましい。なお、繊維状活性炭の平均繊維径としては、好ましくは30μm以下、より好ましくは5~20μm程度が挙げられる。なお、本発明における平均繊維径は、画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した値である。また、粒状活性炭及び粉末状活性炭の粒径としては、レーザー回折/散乱式法で測定した積算体積百分率D50が0.01~5mmが挙げられる。
【0020】
活性炭前駆体の原料種及び形態としては特に制限されるものではない。活性炭前駆体の原料種の例としては、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。また、オガ屑、木材チップ、木材、ピート、木炭、ヤシ殻、石炭、オイル、炭素質物質(石油コークス、石炭コークス、石油ピッチ、石炭ピッチ、コールタールピッチ、及びこれらの複合物など)、合成樹脂(フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、フラン樹脂など)、セルロース系繊維(紙、綿繊維など)、及びこれらの複合物(紙-フェノール樹脂積層板など)、フラーレンなどが挙げられる。これらの中でも、炭素化時の理論炭素化収率の点で、ピッチであることが好ましく、石炭ピッチであることがより好ましい。活性炭前駆体の形態の例としては、粒状、粉末状、繊維状等が挙げられる。
【0021】
本発明の脱臭材に用いる活性炭を得る方法としては、特に制限されないが、例えば、上記活性炭前駆体を、水蒸気を用いて、所定の全細孔容積となるよう、賦活温度、賦活時間を調整して得る方法が挙げられる。
【0022】
本発明の脱臭材において、芳香族アミンとしては特に制限されないがアセトアルデヒドに対する脱臭能をより効果的に高めるため、また製造上の取り扱い易さや安全上の観点から、ハロゲン、スルホ基、アセトアミド基、又はカルボニル基がベンゼン環に結合した芳香族アミンが好ましい。ハロゲン、スルホ基、アセトアミド基、又はカルボニル基がベンゼン環に結合した芳香族アミンとしては、アミノ安息香酸、アミノアセトアニリド、アミノサリチル酸、アミノスルファニル酸等が好ましく挙げられる。中でも、芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩としてはアミノ安息香酸及びその硫酸塩が好ましい。すなわち、本発明の脱臭材においては、繊維状活性炭にアミノ安息香酸及びその硫酸塩が担持されていることが好ましい。本発明の脱臭材中において、芳香族アミンの少なくとも一部は、後述の硫酸と共に硫酸塩を形成する。芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
アミノ安息香酸としては、特に制限されず、p-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、及びo-アミノ安息香酸のうち少なくとも1種を用いることができる。アセトアルデヒドに対する脱臭能をより効果的に高める観点からは、本発明の脱臭材においては、p-アミノ安息香酸が担持されていることが特に好ましい。
【0024】
本発明の脱臭材においては、上記の芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と共に、硫酸が担持されていてもよい。すなわち、本発明の脱臭材は、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩が担持された活性炭(硫酸が担持されていなくてもよい)、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸とが担持された活性炭を備えている。
【0025】
硫酸は、沸点が比較的高く、揮発し難い。硫酸は、水へのアミノ安息香酸の溶解を促進するため、後述するような脱臭材の製造過程において、活性炭に芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩を均一に担持させることを可能とする。さらに、硫酸は、脱臭材において、芳香族アミン、芳香族アミンの硫酸塩同士が互いに重合することを抑制する効果を発揮する。
【0026】
前述のとおり、特許文献1に開示された繊維状脱臭材においては、繊維状活性炭に対する配合量が特定の範囲に設定された芳香族アミノ酸と硫酸とを含有した水溶液を用い、この水溶液中に、繊維状活性炭を浸漬することによって繊維状脱臭材を得ているが、アセトアルデヒドを吸着した後高温雰囲気下に置くと、吸着したアセトアルデヒドの脱臭材からの脱離が比較的多くなる場合がある。
【0027】
これに対して、本発明の脱臭材においては、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩が担持された活性炭、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸とが担持された活性炭を備える脱臭材とし、該活性炭の全細孔容積を0.45cc/g以上とした上で、該活性炭100質量部に対する、担持される芳香族アミン及び前記芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量を20~32質量部とし、担持される芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量を1.8~3.5質量部に設定することにより、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができる。
【0028】
活性炭100質量部に対する、担持される芳香族アミン及び前記芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量は28~32質量部がより好ましい。また、活性炭100質量部に対する、担持される芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量は2.0~3.0質量部がより好ましい。
【0029】
本発明の脱臭材において、このような特定の構成を採用することによってアセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができる機構の詳細は明らかではないが、例えば、次のような要因が関連しているものと考えられる。脱臭材に接触したアセトアルデヒドは、芳香族アミン等と化学吸着するか、活性炭の細孔に物理吸着すると考えられる。アルデヒドを吸着した脱臭材を高温環境に置くと、不可逆に化学吸着したアセトアルデヒドは脱離しないが、物理吸着したアセトアルデヒドは一部が細孔から脱離する。脱臭材における芳香族アミン等の担持量が十分でないと、物理吸着の寄与が比較的大きくなり、脱着するアセトアルデヒド量が多くなるため、結果脱離率が増加する。また、芳香族アミン等を所定の担持量となるように担持させるためには、担持する活性炭は細孔容積が一定以上必要であり、所定の細孔容積を有する活性炭に芳香族アミン等を担持させることで、上記効果を奏することが可能となる。
【0030】
なお、本発明の脱臭材中における芳香族アミンと芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量、及び、芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量は、例えば、以下のように測定することができる。
【0031】
活性炭100質量部に対する芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量(質量部)の測定
活性炭に担持された芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量については、薬剤溶液の、活性炭を浸漬する前の液と活性炭を浸漬した後の液の有機物濃度を、それぞれ全有機物濃度(TOC)計を用いて測定し、浸漬操作前後の有機物濃度の差から、合計担持量を測定する。具体的には、まず全有機物濃度(TOC)計(株式会社島津製作所製TOC-5000)を用いて、浸漬操作前後の薬剤溶液について、炭素(C)に換算された有機物濃度(mgC/L)を測定し、操作前後の濃度の差を求める。別途、秤量して調製した既知濃度の芳香族アミン水溶液について同様に全有機物濃度を測定し、有機物濃度(mgC/L)と芳香族アミン濃度(mg芳香族アミン/L)の対応を表す検量線を作成する。作成した検量線を用いて、添着操作前後の有機物濃度の差(mgC/L)を芳香族アミン濃度の差(mg芳香族アミン/L)に換算する。求めた濃度の差に処理液量(L)を乗じて芳香族アミン質量の差を算出する。算出された値を、薬剤溶液に浸漬する前の活性炭100質量部あたりの質量部に換算し、得られた質量部を、活性炭100質量部に対する芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量(質量部)とする。
【0032】
活性炭100質量部に対する芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量(質量部)の測定
活性炭に担持された芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計物質量についても同様に、活性炭を浸漬する前の薬剤溶液と、活性炭を浸漬した後の薬剤溶液について、JIS K 0101:1998 42.4に規定のイオンクロマトグラフ法に準じ硫酸イオンの濃度(mg/L)を測定することで、これらの合計担持量を計算する。具体的には浸漬操作前後の薬剤溶液の硫酸イオンの濃度(mg/L)を、検量線を用いてそれぞれ測定し、操作前後の硫酸イオン濃度の差(mg/L)を求める。求めた操作前後の硫酸イオン濃度の差(mg/L)に、硫酸の分子量(98.08g/mol)と硫酸イオンの分子量(96.06g/mol)の比を乗じて硫酸濃度の差に換算する。硫酸濃度の差に処理液量(L)を乗じて操作前後の硫酸の差を算出する。算出した操作前後の硫酸の差を、薬剤溶液に浸漬する前の活性炭100質量部あたりの質量部に換算し、得られた質量部を、活性炭100質量部に対する芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量(質量部)とする。
【0033】
本発明の脱臭材の比表面積(本発明の脱臭材に含まれる薬剤を担持後の比表面積)としては、特に制限されないが、例えば、50~1000m2/gが好ましく挙げられ、500~1000m2/gがより好ましく挙げられる。
【0034】
本発明の脱臭材において、本発明の脱臭材に含まれる薬剤の担持により減少する比表面積(=担持前の活性炭の比表面積-担持後の脱臭材の比表面積)としては、例えば、500~1300m2/gが挙げられ、900~1200m2/gが挙げられる。また、本発明の脱臭材において、活性炭の比表面積の、本発明の脱臭材に含まれる薬剤の担持による減少率(=担持後の脱臭材の比表面積/担持前の活性炭の比表面積×100(%))としては、例えば、30~95%が挙げられ、40~70%が好ましく挙げられる。
【0035】
本発明の脱臭材は、活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部であることから、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができる。本発明の脱臭材の、下記測定方法における脱離率としては、15%以下が挙げられ、12%以下が挙げられる。当該脱離率の下限値としては、特に制限されないが、例えば、1%以上又は3%以上が挙げられる。
【0036】
(アセトアルデヒド脱離率測定方法)
脱臭材0.01gと、450ppmのアセトアルデヒドガス3Lとをガスバッグに封入し、20℃の環境下において静置し、脱臭材にアセトアルデヒドを吸着させる。24時間経過後、ガスバッグ内のアセトアルデヒド濃度を測定し、脱臭材1gあたりのアセトアルデヒド吸着量を算出する。次に、アセトアルデヒドを吸着した脱臭材をガスバッグから取り出し、該脱臭材を窒素ガス3Lとともにガスバッグに封入し、70℃の環境下において静置する。24時間経過後、ガスバッグ内のアセトアルデヒド濃度を測定し、脱臭材1gあたりのアセトアルデヒド脱離量を算出する。そして、得られたアセトアルデヒド吸着量とアセトアルデヒド脱離量を下記式(2)に代入し、得られる値をアセトアルデヒド脱離率(%)とする。
アセトアルデヒド脱離率(%)
=アセトアルデヒド脱離量/アセトアルデヒド吸着量×100(%) ・・・(2)
【0037】
本発明の脱臭材は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、全細孔容積が0.45cc/g以上である活性炭を準備する。当該活性炭を得る方法としては、前述のとおりである。次に、芳香族アミンおよび/またはその塩と、硫酸および/またはその塩と、水とを含有した処理液を調製する。芳香族アミンおよび/またはその塩は、水で十分に希釈した硫酸および/またはその塩の水溶液中に溶解させてもよく、硫酸および/またはその塩を比較的高い濃度で含んだ水溶液中に溶解させた後にこれを水で希釈して処理液としてもよい。硫酸としては、濃硫酸を用いてもよいし、希硫酸を用いてもよい。また、芳香族アミンおよび/またはその塩を水に溶解させるために、硫酸および/またはその塩の水溶液を、例えば50~80℃の範囲内の温度に加熱し、ここに芳香族アミンおよび/またはその塩を混合してもよい。また、芳香族アミンとしては、前述のものを用いる。芳香族アミンの塩としては、特に制限されないが、例えば、当該芳香族アミンの硫酸塩などが挙げられる。
【0038】
処理液における芳香族アミンおよび/またはその塩の仕込み量としては、本発明の脱臭材における芳香族アミンおよび/またはその塩の担持量が所望の範囲となるように設定すれば、特に制限されず、例えば、後に浸漬する活性炭100質量部に対して、20~40質量部程度とすればよい。また、処理液における硫酸および/またはその塩の仕込み量としては、本発明の脱臭材における芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の含有量が所望の範囲となるように設定すれば、特に制限されず、後に浸漬する活性炭100質量部に対して、20~40質量部程度とすればよい。
【0039】
次に、この処理液中に準備した活性炭を浸漬して、該活性炭に(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸を担持させる。例えば、活性炭を処理液中に均一に分散させ、その後、十分な時間に亘ってこの分散液を静置する。活性炭を処理液中に浸漬させる時間は、例えば約1時間以上とする。活性炭の質量と処理液の体積との比は、例えば5~50g/Lの範囲内とする。この比が小さすぎる場合、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸を活性炭に担持させるためにより長い時間を要する。一方、この比が大きすぎる場合、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸を活性炭に均一に担持させることが難しくなる。なお、活性炭を水溶液と接触させている時間が十分に長ければ、この比が活性炭に担持される(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の量に及ぼす影響は無視することができる。なお、活性炭を浸漬する処理液は、上記の芳香族アミンおよび/またはその塩の仕込みの際に加熱された状態で使用してもよく、加熱した処理液を冷却した後に使用してもよい。
【0040】
次いで、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸とを担持させた活性炭から処理液を除去する。処理液を除去する方法としては、特に制限されず、例えば、活性炭を処理液から引き上げることにより行うことができる。(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸とを担持させた活性炭からの処理液の除去に先立って、処理液を水で希釈してもよい。
【0041】
その後、処理液を除去した活性炭を乾燥させる。この乾燥には、例えば、自然乾燥、通風乾燥、熱風乾燥、マイクロ波加熱乾燥、間接加熱乾燥などを利用することができる。乾燥は、活性炭の温度が、例えば130℃以下、好ましくは80℃以下に維持されるように行う。以上のようにして、本発明の脱臭材を製造することができる。
【0042】
次に、本発明の脱臭シートについて詳述する。本発明の脱臭シートは、上記の本発明の脱臭材を用いたものであり、本発明の脱臭材を含む。具体的には、本発明の脱臭シートは、例えば、上記の脱臭材がシート状に成形されたものである。シートの形態としては、特に限定されないが、不織布が好ましく挙げられる。本発明の脱臭シートは、上記の脱臭材をシート状に成形することなどを目的として、必要に応じてバインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、脱臭材を構成する活性炭同士を接着できるものであれば特に制限されず、例えば、(繊維状バインダーが挙げられ、繊維状バインダーの市販品としてはユニチカ株式会社製商品名メルティ)などを使用することができる。
【0043】
本発明の脱臭シートがバインダーを含む場合、バインダーと、(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸が担持された活性炭との質量比(バインダー/活性炭)としては、好ましくは75/25~25/75程度が挙げられる。
【0044】
本発明の脱臭シートの密度は、特に限定されるものではないが、アセトアルデヒドに対する脱臭能をより一層優れたものとする観点から、例えば、0.05~0.3g/cm3が好ましく、0.05~0.20g/cm3がより好ましく、0.08~0.12g/cm3が特に好ましい。また、本発明の脱臭シートの厚さとしては、例えば、0.15~0.80mm、0.15~0.50mm、好ましくは0.15~0.25mmとすると、上記脱臭能に優れつつ、車室内の座席のカバー内に収容できやすくなる。上記のような密度が低い、および/または薄いシートを得る方法としては、例えば、目付け1~8g/m2程度の薄い不織布を製造し、該不織布を複数層重ねてニードルパンチ加工を施して一体化させることにより得ることができる。
【0045】
本発明の脱臭シートは、例えば、上記の脱臭材をシート状に成形することにより製造することもできるし、繊維状活性炭に(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸を担持させる前の繊維状活性炭をシート状に成形した後、当該シートを上記と同様にして処理液に浸漬して、繊維状活性炭に(A)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩と硫酸を担持させることによっても製造することができる。
【0046】
本発明の脱臭シートを空気浄化用シートとして用いる場合は、エレクトレット化された不織布シート、HEPA(high efficiency particulate air)フィルタ、ULPA(ultra low penetration air)フィルタなどの除塵シートを脱臭シートに貼り合せることによって、除塵効果を付与した積層体とすることも可能である。そのような積層体は、空気浄化と除塵とを行う空気清浄器などにおいて好適に使用され得る。
【0047】
本発明の脱臭シートは、上記した本発明の脱臭材を含んでいるため、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができ、自動車、電車、船舶、飛行機などの内装材にも好適に使用できる。中でも、本発明の脱臭シートは、自動車内装材として、車室内の座席のカバー内に収容して用いることができる。すなわち、本発明の脱臭シートを含む、車室内用座席とすることができる。また、本発明の脱臭材は、アセトアルデヒド以外にも、ホルムアルデヒド等の低級アルデヒドに対しても、脱離率を小さくすることができる。
【実施例
【0048】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0049】
<実施例1>
活性炭の準備
粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、繊維状活性炭を得た。得られた繊維状活性炭の全細孔容積は0.476cc/g、比表面積は1232m2/g、平均細孔径は1.55nm、0.65nm以上2nm以下の細孔径の細孔容積は0.255cc/gであった。
【0050】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して22.5質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す。
【0051】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、実施例1の脱臭材を得た。なお、脱臭材における、活性炭100質量部に対する芳香族アミンと該芳香族アミンの硫酸塩の合計担持量(質量部)、及び活性炭100質量部に対する芳香族アミンの硫酸塩と硫酸の合計担持量(質量部)は、前述の方法で測定した。
【0052】
<実施例2>
活性炭の準備
実施例1で得た活性炭を準備した。
【0053】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して30.0質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す。
【0054】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、実施例2の脱臭材を得た。
【0055】
<実施例3>
活性炭の準備
粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、繊維状活性炭を得た。得られた繊維状活性炭の、全細孔容積は0.753cc/g、比表面積は1731m2/g、平均細孔径は1.74nm、0.65nm以上2nm以下の細孔径の細孔容積は0.622cc/gであった。
【0056】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して22.5質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す
【0057】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、実施例3の脱臭材を得た。
【0058】
<実施例4>
活性炭の準備
実施例3で得た活性炭を準備した。
【0059】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して30.0質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す。
【0060】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、実施例4の脱臭材を得た。
【0061】
<比較例1>
実施例1で得た活性炭を準備した。
【0062】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して15.0質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す。
【0063】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、比較例1の脱臭材を得た。
【0064】
<比較例2>
活性炭の準備
粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で30分間熱処理することにより賦活をおこない、繊維状活性炭を得た。得られた繊維状活性炭の、全細孔容積は0.315cc/g、比表面積は825m2/g、平均細孔径は1.53nm、0.65nm以上2nm以下の細孔径の細孔容積は0.116cc/gであった。
【0065】
薬剤溶液の調製
まず、75質量%の濃度で硫酸を含有した硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を65℃以上の温度で撹拌して、芳香族アミンとしてp-アミノ安息香酸を水溶液に加え、完全に溶解させたのち、活性炭の質量と処理液の体積との比が20g/Lとなるように水を加え、処理液を得た。なお、芳香族アミン及び硫酸の仕込み量は、活性炭100質量部に対して30.0質量部となるようにした。なお、硫酸の当該仕込み量(質量部)は、75硫酸水溶液中の、純水を除いた硫酸のみの量(質量部)を示す。
【0066】
活性炭への薬剤の担持
次に、薬剤溶液に、上記得られた活性炭100質量部を浸漬した。続いて、この溶液を10分間に亘って撹拌して、活性炭を溶液中に均一に分散させた。その後、この分散液を静置した。8時間以上静置した後、活性炭を溶液から引き上げ、乾燥機を用いて80℃で3時間に亘って乾燥させ、比較例2の脱臭材を得た。
【0067】
実施例1~4、比較例1及び2で得た脱臭材を用い、比表面積、アセトアルデヒド脱離率を前述の方法に従い、測定した。また、得られた脱臭材の比表面積から活性炭の比表面積を減じ、芳香族アミン及び硫酸の担持により減少した比表面積を算出した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から、実施例1~4の脱臭材は、活性炭と、前記活性炭に担持された、(A)芳香族アミン及び該芳香族アミンの硫酸塩、又は、(B)芳香族アミン、該芳香族アミンの硫酸塩、及び硫酸とを含む、脱臭材であって、前記活性炭の全細孔容積が0.45cc/g以上であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンと前記芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20~32質量部であり、前記活性炭100質量部に対する、前記芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8~3.5質量部であることから、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率を小さくすることができるものであった。
【0070】
一方、比較例1の脱臭材は、活性炭100質量部に対する、芳香族アミンと芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20質量部未満、及び、活性炭100質量部に対する、芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8質量部未満であったことから、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率が高かった。また、比較例2の脱臭材は、活性炭の全細孔容積が0.45cc/g未満であり、芳香族アミンと芳香族アミンの硫酸塩との合計担持量が20質量部未満、及び、活性炭100質量部に対する、芳香族アミンの硫酸塩と前記硫酸との合計担持量が1.8質量部未満であったことから、アセトアルデヒドを吸着させた後に高温雰囲気下に置いたときの、吸着したアセトアルデヒドの脱離率が高かった。