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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】LED装置の発光特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018219896
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020085639
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137476
【氏名又は名称】株式会社マルコム
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【氏名又は名称】大井 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】原田 学
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163857(JP,A)
【文献】特開2012-098209(JP,A)
【文献】特開平06-167461(JP,A)
【文献】特開2009-300356(JP,A)
【文献】特開2012-208024(JP,A)
【文献】特開2000-241349(JP,A)
【文献】特開2009-036978(JP,A)
【文献】特開2017-090388(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02330406(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62- 21/958
H01L 33/00- 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子が蛍光体物質を含有する封止部材によって封止されてなるLED装置の発光特性測定装置であって、
前記封止部材における前記蛍光体物質を励起する励起光を当該封止部材に照射する光源部と、
前記封止部材からの蛍光及び前記封止部材によって反射された励起光を受光する受光部と、
前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータ及び励起光の分光スペクトルデータを取得する分光測定器と、
前記励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高を調整し、当該調整された励起光の分光スペクトルデータと、前記蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、前記LED装置による光の色度座標を演算する演算処理部と
を備えてなることを特徴とするLED装置の発光特性測定装置。
【請求項2】
前記光源部からの励起光の少なくとも一部を反射若しくは透過し、かつ、前記封止部材からの蛍光の少なくとも一部を透過若しくは反射するビームスプリッタを備え、
前記光源部からの励起光が、前記ビームスプリッタを介して前記封止部材に照射され、
前記封止部材からの励起光および蛍光が、前記ビームスプリッタを介して前記受光部に受光されることを特徴とする請求項1に記載のLED装置の発光特性測定装置。
【請求項3】
前記光源部からの励起光を反射若しくは透過し、かつ、前記封止部材からの蛍光を透過若しくは反射するダイクロイックフィルタを備え、
前記光源部からの励起光が、前記ダイクロイックフィルタを介して前記封止部材に照射され、
前記封止部材からの蛍光が、前記ダイクロイックフィルタを介して前記受光部に受光されることを特徴とする請求項1に記載のLED装置の発光特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子が蛍光体物質を含有する封止部材によって封止されてなるLED装置の発光特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、スマートホン等に搭載される液晶表示パネルのバックライトや、各種の照明器具の光源として、近年、蛍光ランプや白熱電球の代わりに、LED素子が蛍光体物質を含有する封止部材によって封止されてなるLED装置が用いられている。
【0003】
図5は、LED装置の一例における構成を示す説明用断面図である。このLED装置1は、表面に例えば銀ペーストによって形成されたアノード5aおよびカソード5bを有する基板4と、この基板4の一面上に配置されたLED素子6と、基板4の表面においてLED素子6を取り囲むよう配置された、金属よりなるリフレクター8とを備えてなる。LED素子6の電極パッド(図示省略)は、ボンディングワイヤー7を介して、基板4におけるアノード5aおよびカソード5bに電気的に接続されている。リフレクター8は、内周面に光反射面が形成された、光出射側の一端(図において上端)から他端に向かって小径となるテーパー状の貫通孔8Hを有し、この貫通孔8H内に位置するようLED素子6が配置されている。そして、リフレクター8の貫通孔8Hと基板4とによって形成された凹所内には、封止部材9がLED素子6の表面を覆うよう充填されている。この封止部材9は、液状の硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなる封止材料を硬化することによって形成されたものである。蛍光体物質としては、LED素子6からの光によって励起されて蛍光を発するものが用いられている。
【0004】
このLED装置1においては、LED素子6からの光と、LED素子からの光が封止部材9中の蛍光体物質に照射されることによって生ずる蛍光とが混合することにより、所要の色の光が得られる。例えばLED素子6として、ピーク波長が460nm若しくはその近傍にある青色光を発するものを用い、蛍光体物質として、ピーク波長が550nm近傍にある蛍光を発する黄色蛍光体物質(例えばYAG蛍光体物質)を用いることにより、LED素子6が発する青色光と、封止部材9が発する黄色光とにより、疑似白色光が得られる。また、ピーク波長が365~420nm近傍にある光を出射するものを用い、蛍光体物質として、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質および黄色蛍光体物質の混合物を用いることにより、LED素子6が発する光と、封止部材9が発する黄色光とにより、疑似白色光が得られる。
【0005】
このLED装置1の製造プロセスにおいては、リードフレームやガラス基板に多数の未封止のLED素子実装体が形成されてなる中間体を製造し、次いで、この中間体におけるLED素子実装体の各々に封止部材9を形成した後、個々のLED装置に切断することが行われている。また、封止部材9を形成する方法としては、液状の硬化性樹脂中に蛍光体物質が分散されてなる封止材料を、中間体におけるLED素子上に滴下した後、当該封止材料を硬化する方法(ポッテイング法)、液状の硬化性樹脂中に蛍光体物質が分散されてなる封止材料を中間体の表面に塗布した後、当該封止材料を硬化する方法、硬化樹脂中に蛍光体物質が分散されてなるシート状の封止材料を中間体の表面に接着する方法などが利用されている。
【0006】
上記のLED装置1の製造プロセスにおいては、製造したLED装置1について、その光の明るさや色合いの良否を判定する検査が行われている。このような検査は、従来、作業者の目視により行われていた。しかしながら、作業者の目視による検査では、検査結果が作業者の熟練度や技能によって左右されるため、安定した検査精度を得ることは困難である。
このような事情から、近年、LED装置からの光の輝度値を測定することによってLED装置を検査する発光特性測定装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
このような発光特性測定装置によるLED装置の検査は、LED装置がリードフレームやガラス基板に形成された状態で行うことが、効率上利点がある。
而して、リードフレーム上に形成されたLED装置については、端子が外部に露出しているため、当該LED装置を点灯することにより、上記の発光特性測定装置によるLED装置の検査を行うことが可能である。
しかしながら、ガラス基板上に形成されたLED装置については、端子が外部に露出しておらず、従って、LED装置を点灯することができないため、上記の発光特性測定装置によるLED装置の検査を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5689648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、LED装置を点灯することなしに、当該LED装置による光の色度座標を測定することができるLED装置の発光特性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のLED装置の発光特性測定装置は、LED素子が蛍光体物質を含有する封止部材によって封止されてなるLED装置の発光特性測定装置であって、
前記封止部材における前記蛍光体物質を励起する励起光を当該封止部材に照射する光源部と、
前記封止部材からの蛍光及び前記封止部材によって反射された励起光を受光する受光部と、
前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータ及び励起光の分光スペクトルデータを取得する分光測定器と、
前記励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高を調整し、当該調整された励起光の分光スペクトルデータと、前記蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、前記LED装置による光の色度座標を演算する演算処理部と
を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明のLED装置の発光特性測定装置においては、前記光源部からの励起光の少なくとも一部を反射若しくは透過し、かつ、前記封止部材からの蛍光の少なくとも一部を透過若しくは反射するビームスプリッタを備え、
前記光源部からの励起光が、前記ビームスプリッタを介して前記封止部材に照射され、 前記封止部材からの励起光および蛍光が、前記ビームスプリッタを介して前記受光部に受光されることが好ましい。
【0012】
また、本発明のLED装置の発光特性測定装置においては、前記光源部からの励起光を反射若しくは透過し、かつ、前記封止部材からの蛍光を透過若しくは反射するダイクロイックフィルタを備え、
前記光源部からの励起光が、前記ダイクロイックフィルタを介して前記封止部材に照射され、
前記封止部材からの蛍光が、前記ダイクロイックフィルタを介して前記受光部に受光されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のLED装置の発光特性測定装置においては、LED装置における封止部材に、光源部によって励起光を照射し、当該封止部材からの蛍光が受光部によって受光される。そして、受光部によって受光された蛍光の分光スペクトルデータが取得され、当該分光スペクトルデータに基づいて、LED装置による光の色度座標が演算される。
従って、本発明のLED装置の発光特性測定装置によれば、LED装置を点灯することなしに、当該LED装置による光の色度座標を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るLED装置の発光特性測定装置の一例における構成を示す説明図である。
図2】LED装置による光の分光分布の一例を示す図である。
図3】国際照明委員会(CIE)によって定められている等色関数を示す図である。
図4】国際照明委員会によって規定されたCIE1931色度図である。
図5】LED装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のLED装置の発光特性測定装置の実施の形態について詳細に説明する。 本発明において、測定対象であるLED装置における封止部材は、透明な硬化樹脂中に蛍光体物質が含有されてなるものである。
硬化樹脂としては、特に限定されず、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの硬化物を用いることができる。
また、封止部材に含有された蛍光体物質は、目的とするLED装置による光の色に応じて適宜選択して用いられる。例えば青色光を放射するLED素子を用いて白色LED装置を製造する場合には、黄色蛍光体を用いることができ、橙色蛍光体や赤色蛍光体を更に添加することにより、放射される光の色を調整することができる。また、黄色蛍光体の代わりに緑色蛍光体と赤色蛍光体との混合物を用いることもできる。
【0017】
図1は、本発明に係るLED装置の発光特性測定装置の一例における構成を示す説明図である。
このLED装置の発光特性測定装置(以下、単に「測定装置」ともいう。)は、励起光をLED装置1における封止部材(図示省略)に照射する光源部10と、LED装置1における封止部材からの蛍光を受光する受光部20とを有する。光源部10から放射される励起光は、LED装置1における封止部材中に含有された蛍光体物質を励起するものである。
【0018】
図示の例の測定装置において、受光部20は、測定対象であるLED装置1に対向するよう配置されている。LED装置1と受光部20との間には、それぞれ板状の第1のビームスプリッタ30および第2のビームスプリッタ35が、LED装置1から受光部20に向かってこの順で設けられている。第1のビームスプリッタ30および第2のビームスプリッタ35の各々は、LED装置1から受光部20までの光路に対して45°に傾斜した姿勢で配置されている。
【0019】
第1のビームスプリッタ30および第2のビームスプリッタ35の各々は、光源部10からの励起光および封止部材からの蛍光の各々について、その一部を反射すると共にその一部を透過するものである。第1のビームスプリッタ30における光の透過率と光の反射率との比は、光の透過率:光の反射率が30:70~70:30であることが好ましい。また、第2のビームスプリッタ35における光の透過率と光の反射率との比は、光の透過率:光の反射率が30:70~70:30であることが好ましい。
【0020】
第1のビームスプリッタ30の側方位置には、光源部10が、励起光が当該第1のビームスプリッタ30に照射されるよう配置されている。この光源部10は、LED装置における封止部材中の蛍光体物質を励起する励起光を放射するLED素子11と、LED素子11からの光を成形するアパーチャ12とを備えてなる。例えばLED装置1が白色LED装置であり、封止部材中の蛍光体物質が黄色蛍光体である場合には、光源部10を構成するLED素子として、青色LED素子が用いられる。光源部10と第1のビームスプリッタ30との間には、光源部10からの励起光を平行化するコリメートレンズ15が配置されている。
また、第1のビームスプリッタ30とLED装置1との間には、第1のビームスプリッタ30によって反射された励起光を、LED装置1における封止部材に集光すると共に、LED装置1からの蛍光を平行化する凸レンズ31が配置されている。
【0021】
第2のビームスプリッタ35の側方位置には、LED装置1における封止部材からの光をモニタリングするための小型カメラ36が配置されている。第2のビームスプリッタ35と小型カメラ36との間には、第2のビームスプリッタ35からの光を小型カメラ36に集光する集光レンズ37が配置されている。
【0022】
受光部20と第2のビームスプリッタ35との間には、LED装置1からの蛍光を受光部20に集光する集光レンズ21が配置されている。受光部20は、ファイバーコネクタ26によって光ファイバー25の一端に接続されている。光ファイバー25の他端には、ファイバーコネクタ27によって、分光測定器40が接続されている。この分光測定器40は、受光部20に受光された蛍光の分光スペクトルデータを取得するものである。
【0023】
分光測定器40には、当該分光測定器40によって取得された分光スペクトルデータに基づいて、LED装置による光の色度座標を演算する演算処理部50が電気的に接続されている。この演算処理部50には、LED装置1における封止部材中の蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータ、例えばLED装置1が、青色LED素子と黄色蛍光体を含有する封止部材とを備えた白色LED装置である場合には、当該青色LED素子による光の分光スペクトルデータが記録されている。
【0024】
以下、上記の測定装置の動作について、測定対象であるLED装置が、ピーク波長が460nm近傍にある青色LED素子と、ピーク波長が555nm近傍にある黄色蛍光体を含有する封止部材とを備えた白色LED装置である場合を例に挙げて説明する。
【0025】
先ず、測定対象であるLED装置1が、 受光部20の直下位置に配置される。次いで、光源部10が点灯すると、当該光源部10からの励起光(青色光)が第1のビームスプリッタ30を介してLED装置1における封止部材に照射され、これにより、当該封止部材から蛍光(黄色光)が放射される。封止部材によって反射された励起光および封止部材から放射された蛍光は、第1のビームスプリッタ30および第2のビームスプリッタ35を介して受光部20に受光される。受光部20に受光された光は、光ファイバー25を介して分光測定器40に導入され、受光された光の分光スペクトルデータが取得される。この分光スペクトルデータは、演算処理部50に送信される。
【0026】
そして、演算処理部50においては、以下のようにして、LED装置1による光の色度座標が演算される。
先ず、演算処理部50に送信された分光スペクトルデータには、光源部10からの励起光の分光分布が含まれているため、送信された分光スペクトルデータに係る分光分布から励起光の分光分布を除去することにより、LED装置1における封止部材からの蛍光の分光スペクトルデータが作成される。具体的には、励起光はピーク波長が460nm近傍にある青色光であり、蛍光はピーク波長が555nm近傍にある黄色光であるため、例えば波長500nm以下の分光分布がカットされる。
【0027】
このようにして作成された蛍光の分光スペクトルデータと、予め演算処理部50に記録された蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータとに基づいて、LED装置による光の色度座標が演算される。
【0028】
この色度座標の演算処理は、国際照明委員会(CIE)が規定するXYZ表色系色度図に基づいて行われる。
具体的に説明すると、LED装置による光(白色光)は、励起光(青色LED素子による青色光)と蛍光(黄色蛍光体による黄色光)との合成光であることから、LED装置による光の分光分布S0(λ)と、励起光の分光分布S1(λ)と、蛍光の分光分布S2(λ)とは、下記式1を満たすものである。図2に、LED装置による光の分光分布の一例を示す。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、XYZ表色系色度図は、JIS Z 8724「色の測定方法-光源色」として定められている、下記式2に示す演算式に従って算出される三刺激値(X,Y,Z)を用いて規定される。下記式2は、可視領域(380nm~780nm,λ1 =380,λ2 =780)にある各波長成分の強度に対応する等色関数の値を乗じた値を積算するものである。図3は、国際照明委員会(CIE)によって定められている等色関数を示す図であり、等色関数は、人間の目における分光感度を表現したものに相当する。
【0031】
【数2】
【0032】
上記式2において、刺激値Yの値は、LED装置による明るさ(輝度)に相当する値である。
Kは、封止部材における蛍光体物質による蛍光と、LED装置における青色LED素子の発光との合成光の輝度の絶対値と一致するように設定される係数である。
刺激値Xおよび刺激値Yの値は色度座標(x,y)を算出するために用いられ、色度座標(x,y)は、下記式3に示す演算式に従って算出される。この式3から、全ての可視光線の光源色の色度座標(x,y)が、1931年CIEによって定義されている。
【0033】
【数3】
【0034】
そして、励起光の分光分布S1 (λ)に基づいて、上記式2および上記式3により、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )および色度座標P1 (x1 ,y1 )が算出される。また、蛍光の分光分布S2 (λ)に基づいて、上記式2および上記式3により、蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )および色度座標P2 (x2 ,y2 )が算出される。
【0035】
上記式1に示すように、LED装置による光の分光分布S0 (λ)は、励起光の分光分布S1 (λ)と蛍光の分光分布S2 (λ)との和であるから、LED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )と、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )と、蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )とは、下記式4の関係を満たすものである。
【0036】
【数4】
【0037】
そして、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )および蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )に基づいて、上記式4により、LED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )が求められる。
【0038】
また、A=X+Y+Z、A1 =X1 +Y1 +Z1 、A2 =X2 +Y2 +Z2 と定義すると、A=A1 +A2 であるから、上記式3より、下記式5が求められる。
【0039】
【数5】
【0040】
また、下記式6を定義すると、上記式3~上記式5および下記式6により、LED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )は、下記式7により求められる。
【0041】
【数6】
【0042】
【数7】
【0043】
このようにして、励起光の分光スペクトルデータと、蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、LED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )および色度座標P0 (x0 ,y0 )が演算される。
【0044】
以上において、励起光の分光スペクトルデータは、適宜の分光測定器を用いて取得しても、本発明の測定装置を用いて取得してもよい。
励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高(分光の強度の振幅の大きさ)は、例えば以下のようにして調整することができる。
【0045】
上記式7に示す2つの式から、K1 を消去すると、下記式8が得られる。
【0046】
【数8】
【0047】
図4は、国際照明委員会によって規定されたCIE1931色度図である。
この図において、横軸および縦軸は、それぞれxおよびyの色度である。横軸については、xの値が大きくなるに従って「赤み」の比率が増し、xの値が小さくなるに従って「青み」の比率が増すことを示している。一方、縦軸については、yの値が大きくなるに従って「緑み」の比率が増し、yの値が小さくなるに従って「青み」の比率が増すことを示している。
また、馬蹄型の曲線aは単色光の色度座標を連ねたスペクトル軌跡である。このスペクトル軌跡に□でプロットされた個所の数字は、単色光の波長(nm)を示している。スペクトル軌跡の両端に位置する単色光の波長は、それぞれ380nmおよび780nmである。
また、スペクトル軌跡の両端を結ぶ直線bは、純紫軌跡である。
また、スペクトル軌跡と純紫軌跡とによって囲まれた範囲内にある弧状の曲線cは、各絶対温度における黒体の色度座標を連ねた黒体軌跡である。この黒体軌跡上に示された数字は黒体の絶対温度(K)であり、〇でプロットされた個所は、それぞれ昼光色蛍光ランプ(色温度=6500K)、白色蛍光ランプ(色温度=4200K)、白熱電球(色温度=2850K)の光源色の色度座標である。
【0048】
上記式8は、励起光の色度座標P1 (x1 ,y1 )と蛍光の色度座標P2 (x2 ,y2 )とを結ぶ直線(図3においてLで示す。)に係る関数であり、LED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )は、理論上、直線L上の位置にある。
白色LED装置においては、通常、光源色が黒体軌跡に近い色温度を有する色度値であることが目標とされることから、例えば直線Lと黒体軌跡に係る曲線cとの交点が目標とされる色度座標である。
【0049】
そして、例えば目標の色度座標またはその近傍の光を放射するLED装置から、蛍光の標準分光スペクトルデータを取得しておき、この標準分光スペクトルデータと、目標の色度座標とに基づいて、励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高が決定される。
また、蛍光の標準分光スペクトルデータの取得が困難な場合には、複数(例えば10)のLED装置のサンプルについて、それぞれの蛍光の分光スペクトルデータを測定し、これらの蛍光の分光スペクトルデータと励起光の分光スペクトルデータとを組み合わせたときに、色度座標の値が許容範囲内となる数が最多となる励起光を見出し、この励起光分光スペクトルデータに係る分光分布から波高を決定してもよい。
【0050】
以上説明したように、本発明のLED装置の発光特性測定装置においては、LED装置1における封止部材に、光源部10によって励起光を照射し、当該封止部材からの蛍光が受光部20によって受光される。そして、受光部20によって受光された蛍光の分光スペクトルデータが取得され、当該分光スペクトルデータに基づいて、LED装置1による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )が演算される。
従って、本発明のLED装置の発光特性測定装置によれば、LED装置1を点灯することなしに、当該LED装置1による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )を測定することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば図1に示す測定装置において、光源部10が、測定対象であるLED装置1に対向するよう配置され、受光部20が第1のビームスプリッタ30の側方位置に配置された構成であってもよい。
また、図1に示す測定装置において、第1のビームスプリッタ30の代わりに、光源部10からの励起光を反射し、かつ、LED装置1における封止部材からの蛍光を透過するダイクロイックフィルタを用いることができる。また、光源部10がLED装置1に対向するよう配置された構成である場合には、第1のビームスプリッタ30の代わりに、光源部10からの励起光を透過し、かつ、LED装置1における封止部材からの蛍光を反射するダイクロイックフィルタを用い、当該ダイクロイックフィルタの側方位置に受光部20が配置されていてもよい。
測定対象のLED装置における封止部材は、黄色蛍光体物質が単独で含有されたものに限定されず、互いに発光色の異なる複数種の蛍光体物質が含有されたもの、また、近紫外LED素子と組み合わせて用いられる、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質および青色蛍光体物質が含有されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 LED装置
4 基板
5a アノード
5b カソード
6 LED素子
7 ボンディングワイヤー
8 リフレクター
8H 貫通孔
9 封止部材
10 光源部
11 LED素子
12 アパーチャ
15 コリメートレンズ
20 受光部
21 集光レンズ
25 光ファイバー
26 ファイバーコネクタ
27 ファイバーコネクタ
30 第1のビームスプリッタ
31 凸レンズ
35 第2のビームスプリッタ
36 小型カメラ
37 集光レンズ
40 分光測定器
50 演算処理部
図1
図2
図3
図4
図5