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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】LED用封止材料の発光特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220914BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220914BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20220914BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
H01L33/50
H01L33/56
G01J3/46 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018219897
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020085640
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137476
【氏名又は名称】株式会社マルコム
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【氏名又は名称】大井 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】原田 学
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-098209(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084566(WO,A1)
【文献】特開2013-002851(JP,A)
【文献】特開2000-019114(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105403548(CN,A)
【文献】特開平06-050817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/958
H01L 33/00-33/64
G01J 3/46- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な液状の熱硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなる、LED装置における封止部材を形成するためのLED用封止材料の発光特性測定装置であって、
前記LED用封止材料が収容された透明な容器が挿入される容器挿入用開口を有し、内面が光拡散反射面によって構成された、測定室を区画する筐体と、
前記測定室内において、前記蛍光体物質を励起する励起光を放射する光源部と、
前記測定室内において、前記LED用封止材料からの蛍光を受光する受光部と、
前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータを取得する分光測定器と、
前記分光スペクトルデータに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標を演算する演算処理部と
を備えてなり、
前記筐体は中空の球欠体の形状を有し、当該筐体を形成する球欠体における球環の中央に前記容器挿入用開口が形成され、
当該筐体を構成する球欠体における底面に、前記受光部が当該球欠体における球環に向いた姿勢で配置されており、
当該筐体を形成する球欠体における底面に、前記光源部が当該光源部からの光が容器に直接入射されることのないように当該球欠体における球環に向いた姿勢で配置されていることを特徴とするLED用封止材料の発光特性測定装置。
【請求項2】
前記筐体は中空の半球体の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のLED用封止材料の発光特性測定装置。
【請求項3】
前記受光部には、前記LED用封止材料からの蛍光を集光する凹レンズが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED用封止材料の発光特性測定装置。
【請求項4】
前記演算処理部においては、前記蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータが記録されており、当該励起光の分光スペクトルデータと、前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標を演算することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のLED用封止材料の発光特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な液状の熱硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなるLED用封止材料の発光特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、スマートホン等に搭載される液晶表示パネルのバックライトや、各種の照明器具の光源として、近年、蛍光ランプや白熱電球の代わりに、LED素子が蛍光体物質を含有する封止部材によって封止されてなるLED装置が用いられている。
【0003】
図5は、LED装置の一例における構成を示す説明用断面図である。このLED装置は、表面に例えば銀ペーストによって形成されたアノード5aおよびカソード5bを有する基板4と、この基板4の一面上に配置されたLED素子6と、基板4の表面においてLED素子6を取り囲むよう配置された、金属よりなるリフレクター8とを備えてなる。LED素子6の電極パッド(図示省略)は、ボンディングワイヤー7を介して、基板4におけるアノード5aおよびカソード5bに電気的に接続されている。リフレクター8は、内周面に光反射面が形成された、光出射側の一端(図において上端)から他端に向かって小径となるテーパー状の貫通孔8Hを有し、この貫通孔8H内に位置するようLED素子6が配置されている。そして、リフレクター8の貫通孔8Hと基板4とによって形成された凹所内には、封止部材9がLED素子6の表面を覆うよう充填されている。この封止部材9は、液状の硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなる封止材料を硬化することによって形成されたものである。蛍光体物質としては、LED素子6からの光によって励起されて蛍光を発するものが用いられている。
【0004】
このLED装置においては、LED素子6からの光と、LED素子からの光が封止部材9中の蛍光体物質に照射されることによって生ずる蛍光とが混合することにより、所要の色の光が得られる。例えばLED素子6として、ピーク波長が460nm若しくはその近傍にある青色光を発するものを用い、蛍光体物質として、ピーク波長が550nm近傍にある蛍光を発する黄色蛍光体物質(例えばYAG蛍光体物質)を用いることにより、LED素子6が発する青色光と、封止部材9が発する黄色光とにより、疑似白色光が得られる。また、ピーク波長が365~420nm近傍にある光を出射するものを用い、蛍光体物質として、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質および黄色蛍光体物質の混合物を用いることにより、LED素子6が発する光と、封止部材9が発する黄色光とにより、疑似白色光が得られる。
【0005】
上記のLED装置の製造プロセスにおいては、液状の熱硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなるLED用封止材料が調製され、図6に示すように、LED用封止材料Mがシリンジ状の容器1内に収容された後、当該LED用封止材料Mが基板4上に実装されたLED素子6の表面に滴下されることにより、当該LED素子6を覆うよう封止材料層が形成される。その後、封止材料層を熱硬化処理することにより、LED素子6を覆う封止部材9が形成され、以て、LED装置が製造される。図6において、2は、容器1内のLED用封止材料Mを押圧するピストン、3は、容器1内のLED用封止材料Mを吐出するニードルである。
【0006】
このような製造プロセスにおいて、所要の色合いの光、例えば色度座標の値が予め設定された許容範囲にある光を放射するLED装置を得るためには、LED用封止材料中における蛍光体物質が、均一に分布していることが肝要である。然るに、蛍光体物質は、硬化性樹脂に比較して比重が大きく、これにより、LED用封止材料中において沈降しやすい。そのため、LED用封止材料中における蛍光体物質の分布にバラツキが生じ、このバラツキが大きい場合には、所要の色合いの光を放射するLED装置が得られない。
【0007】
このような事情から、シリンジ状の容器に収容されたLED用封止材料の発光特性に基づいて、当該LED用封止材料によって封止されてなるLED装置による光の色度座標や色温度を予測する発光特性測定装置が提案されている(特許文献1参照。)。
この発光特性測定装置は、容器内に収容されたLED用封止材料に対して、蛍光体物質を励起する励起光を照射することによって生ずる蛍光を検出して分光スペクトルデータを取得し、この蛍光の分光スペクトルデータと、予め記憶されたLED素子による光の分光スペクツトルデータとに基づいて、得られるLED装置による光の色度座標等を予測するものである。
【0008】
しかしながら、上記の発光特性測定装置においては、LED用封止材料が収容された容器に対して局所的に励起光を照射するため、例えば容器に歪みが生じていたり、容器の表面に傷が生じていたりするときには、取得される蛍光の分光スペクトルデータにバラツキが生じ、その結果、得られる色度座標の予測値の誤差が大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5689648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、LED用封止材料について、LED装置を製造したときに当該LED装置による光の色度座標を小さい誤差範囲で予測することができるLED用封止材料の発光特性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置は、透明な液状の熱硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなる、LED装置における封止部材を形成するためのLED用封止材料の発光特性測定装置であって、
前記LED用封止材料が収容された透明な容器が挿入される容器挿入用開口を有し、内面が光拡散反射面によって構成された、測定室を区画する筐体と、
前記測定室内において、前記蛍光体物質を励起する励起光を放射する光源部と、
前記測定室内において、前記LED用封止材料からの蛍光を受光する受光部と、
前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータを取得する分光測定器と、
前記分光スペクトルデータに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標を演算する演算処理部と
を備えてなり、
前記筐体は中空の球欠体の形状を有し、当該筐体を形成する球欠体における球環の中央に前記容器挿入用開口が形成され、
当該筐体を構成する球欠体における底面に、前記受光部が当該球欠体における球環に向いた姿勢で配置されており、
当該筐体を形成する球欠体における底面に、前記光源部が当該光源部からの光が容器に直接入射されることのないように当該球欠体における球環に向いた姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記筐体は中空の半球体の形状を有することが好ましい。
【0013】
また、前記受光部には、前記LED用封止材料からの蛍光を集光する凹レンズが設けられていることが好ましい。
また、前記演算処理部においては、前記蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータが記録されており、当該励起光の分光スペクトルデータと、前記受光部に受光された蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標を演算することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置においては、光源部からの励起光は、筐体の内面を構成する光拡散反射面によって均一に拡散された後、LED用封止材料が収容された容器における測定室内に露出する表面全面に照射される。これにより、当該容器における測定室内に露出する表面全面から蛍光が出射され、この蛍光は、筐体の内面を構成する光拡散反射面によって均一に拡散された後、受光部によって受光される。
従って、本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置によれば、容器に歪みが生じていたり、容器の表面に傷が生じていたりしたときにも、当該容器に収容されたLED用封止材料について、LED装置を製造したときに当該LED装置による光の色度座標を小さい誤差範囲で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るLED用封止材料の発光特性測定装置の一例における構成について筐体を切断して示す説明図である。
図2】製造されるLED装置による光の分光分布の一例を示す図である。
図3】国際照明委員会(CIE)によって定められている等色関数を示す図である。
図4】国際照明委員会によって規定されたCIE1931色度図である。
図5】LED装置の一例における構成を示す説明用断面図である。
図6】容器内に収容されたLED用封止材料が基板上に実装されたLED素子の表面に滴下される状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、測定対象であるLED用封止材料は、透明な液状の熱硬化性樹脂中に蛍光体物質が含有されてなるものである。
液状の硬化性樹脂としては、特に限定されず、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
蛍光体物質は、目的とするLED装置による光の色に応じて適宜選択して用いられる。例えば青色光を放射するLED素子を用いて白色LED装置を製造する場合には、黄色蛍光体を用いることができ、橙色蛍光体や赤色蛍光体を更に添加することにより、放射される光の色を調整することができる。また、黄色蛍光体の代わりに緑色蛍光体と赤色蛍光体との混合物を用いることもできる。
【0017】
図1は、本発明に係るLED用封止材料の発光特性測定装置の一例における構成について筐体を切断して示す説明図である。
このLED用封止材料の発光特性測定装置(以下、単に「測定装置」ともいう。)は、LED用封止材料Mの発光特性の測定が実行される測定室Rを区画する筐体10を備えている。この筐体10は、中空の球欠体の形状を有し、図示の例では、中空の半球体の形状である。
筐体10の内面11は、光拡散反射面によって構成されている。光拡散反射面を構成する手段としては、白色塗料を塗布する手段などが挙げられる。
筐体10を形成する球欠体における球環12の中央には、透明な円形のシリンジ状の容器1が挿入される容器挿入用開口13が形成されている。また、測定室R内には、筐体10を形成する球欠体における底面14の中央位置に、容器挿入用開口13に挿入された容器1を上下方向に伸びる姿勢で保持する保持部材15が設けられている。ここで、容器1内には、測定対象であるLED用封止材料Mが収容されている。
【0018】
測定室R内において、筐体10を形成する球欠体における底面14には、光源部20が、筐体10を形成する球欠体における球環12に向いた姿勢で配置され、更に、当該底面14には、LED用封止材料Mからの蛍光を受光する受光部30が、筐体10を形成する球欠体における球環12に向いた姿勢で配置されている。光源部20が球環12に向いた姿勢で配置されていることにより、光源部20からの光が容器1に直接入射することを抑制することができる。また、受光部30が、球環12に対向して配置されていることにより、容器1内のLED用封止材料Mからの光が受光部30に直接入射することを抑制することができる。
また、筐体10を形成する球欠体における底面14には、例えば保持部材15と光源部20との間の位置に、照度センサ25が配置されている。
【0019】
光源部20は、LED用封止材料M中の蛍光体物質を励起する励起光を放射するLED素子を備えてなる。例えば製造すべきLED装置が白色LED装置であり、LED用封止材料M中の蛍光体物質が黄色蛍光体である場合には、光源部20を構成するLED素子として、青色LED素子が用いられる。
【0020】
図示の例の受光部30は、光を集光する凹レンズ31と、この凹レンズ31を保持する光コネクタ32とを有する。受光部30に凹レンズ31が設けられていることにより、容器1に歪みが生じていたり,容器1の表面に傷が生じていたりする場合でも、LED用封止材料Mからの蛍光について、誤差がより小さい分光スペクトルデータを取得することができる。
【0021】
受光部30は、ファイバーコネクタ36によって光ファイバー35の一端に接続されている。光ファイバー35の他端には、ファイバーコネクタ37によって、筐体10の外部に設けられた分光測定器40が接続されている。この分光測定器40は、受光部30に受光された蛍光の分光スペクトルデータを取得するものである。
【0022】
分光測定器40には、当該分光測定器40によって取得された分光スペクトルデータに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標を演算する演算処理部50が電気的に接続されている。この演算処理部50には、LED用封止材料M中の蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータ、例えば製造すべきLED装置が、青色LED素子と黄色蛍光体を含有する封止部材とを備えた白色LED装置である場合には、当該青色LED素子による光の分光スペクトルデータが記録されている。
【0023】
以下、上記の測定装置の動作について、製造すべきLED装置が、ピーク波長が460nm近傍にある青色LED素子と、ピーク波長が555nm近傍にある黄色蛍光体を含有する封止部材とを備えた白色LED装置である場合を例に挙げて説明する。
【0024】
先ず、LED用封止材料Mが収容された容器1が、筐体10の容器挿入用開口13に挿入され、当該容器1が、保持部材15によって上下方向に伸びる姿勢で保持される。
次いで、光源部20が点灯すると、当該光源部20からの励起光(青色光)は、筐体10における内面によって拡散反射される。これにより、測定室R内に露出する容器1の表面全面に励起光が均一に照射され、容器1内に収容されたLED用封止材料Mから蛍光(黄色光)が当該容器1の表面全面から放射される。この蛍光は、筐体10における内面によって拡散反射される。
【0025】
一方、受光部30には、光源部20からの励起光およびLED用封止材料Mからの蛍光の両方が受光される。受光部30に受光される蛍光は、筐体10における内面によって拡散反射されたものであるため、容器1の表面全面から放射された蛍光が均一化されたものである。このように、受光部30に受光された光は、光ファイバー35を介して分光測定器40に導入され、受光された光の分光スペクトルデータが取得される。この分光スペクトルデータは、演算処理部50に送信される。
【0026】
そして、演算処理部50においては、以下のようにして、製造されるLED装置による光の色度座標の予測値が演算される。
先ず、演算処理部50に送信された分光スペクトルデータは、光源部20からの励起光とLED用封止材料Mからの蛍光との混光の分光分布に係るデータであるため、当該分光分布から励起光の分光分布を除去することにより、LED用封止材料Mからの蛍光の分光スペクトルデータが作成される。具体的には、励起光はピーク波長が460nm近傍にある青色光であり、蛍光はピーク波長が555nm近傍にある黄色光であるため、例えば波長500nm以下の分光分布がカットされる。
【0027】
このようにして作成された蛍光の分光スペクトルデータと、予め演算処理部50に記録された蛍光体物質を励起する励起光の分光スペクトルデータとに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標が演算される。
【0028】
この色度座標の演算処理は、国際照明委員会(CIE)が規定するXYZ表色系色度図に基づいて行われる。
具体的に説明すると、製造されるLED装置による光(白色光)は、励起光(青色LED素子による青色光)と蛍光(黄色蛍光体による黄色光)との合成光であることから、LED装置による光の分光分布S0(λ)と、励起光の分光分布S1(λ)と、蛍光の分光分布S2(λ)とは、下記式1を満たすものである。図2に、製造されるLED装置による光の分光分布の一例を示す。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、XYZ表色系色度図は、JIS Z 8724「色の測定方法-光源色」として定められている、下記式2に示す演算式に従って算出される三刺激値(X,Y,Z)を用いて規定される。下記式2は、可視領域(380nm~780nm,λ1 =380,λ2 =780)にある各波長成分の強度に対応する等色関数の値を乗じた値を積算するものである。図3は、国際照明委員会(CIE)によって定められている等色関数を示す図であり、等色関数は、人間の目における分光感度を表現したものに相当する。
【0031】

【数2】
【0032】
上記式2において、刺激値Yの値は、LED装置による明るさ(輝度)に相当する値である。
Kは、LED用封止材料Mにおける蛍光体物質による蛍光と、LED装置を製造するために用いられる青色LED素子の発光との合成光の輝度の絶対値と一致するように設定される係数である。
刺激値Xおよび刺激値Yの値は色度座標(x,y)を算出するために用いられ、色度座標(x,y)は、下記式3に示す演算式に従って算出される。この式3から、全ての可視光線の光源色の色度座標(x,y)が、1931年CIEによって定義されている。
【0033】
【数3】
【0034】
そして、励起光の分光分布S1 (λ)に基づいて、上記式2および上記式3により、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )および色度座標P1 (x1 ,y1 )が算出される。また、蛍光の分光分布S2 (λ)に基づいて、上記式2および上記式3により、蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )および色度座標P2 (x2 ,y2 )が算出される。
【0035】
上記式1に示すように、製造されるLED装置による光の分光分布S0 (λ)は、励起光の分光分布S1 (λ)と蛍光の分光分布S2 (λ)との和であるから、LED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )と、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )と、蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )とは、下記式4の関係を満たすものである。
【0036】
【数4】
【0037】
そして、励起光の三刺激値(X1 ,Y1 ,Z1 )および蛍光の三刺激値(X2 ,Y2 ,Z2 )に基づいて、上記式4により、製造されるLED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )が求められる。
【0038】
また、A=X+Y+Z、A1 =X1 +Y1 +Z1 、A2 =X2 +Y2 +Z2 と定義すると、A=A1 +A2 であるから、上記式3より、下記式5が求められる。
【0039】
【数5】
【0040】
また、下記式6を定義すると、上記式3~上記式5および下記式6により、製造されるLED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )は、下記式7により求められる。
【0041】
【数6】
【0042】
【数7】
【0043】
このようにして、励起光の分光スペクトルデータと、蛍光の分光スペクトルデータとに基づいて、製造されるLED装置による光の三刺激値(X0 ,Y0 ,Z0 )および色度座標P0 (x0 ,y0 )が演算される。
【0044】
以上において、励起光の分光スペクトルデータは、適宜の分光測定器を用いて取得しても、本発明の測定装置を用いて取得してもよい。
励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高(分光の強度の振幅の大きさ)は、例えば以下のようにして調整することができる。
【0045】
上記式7に示す2つの式から、K1 を消去すると、下記式8が得られる。
【0046】
【数8】
【0047】
図4は、国際照明委員会によって規定されたCIE1931色度図である。
この図において、横軸および縦軸は、それぞれxおよびyの色度である。横軸については、xの値が大きくなるに従って「赤み」の比率が増し、xの値が小さくなるに従って「青み」の比率が増すことを示している。一方、縦軸については、yの値が大きくなるに従って「緑み」の比率が増し、yの値が小さくなるに従って「青み」の比率が増すことを示している。
また、馬蹄型の曲線aは単色光の色度座標を連ねたスペクトル軌跡である。このスペクトル軌跡に□でプロットされた個所の数字は、単色光の波長(nm)を示している。スペクトル軌跡の両端に位置する単色光の波長は、それぞれ380nmおよび780nmである。
また、スペクトル軌跡の両端を結ぶ直線bは、純紫軌跡である。
また、スペクトル軌跡と純紫軌跡とによって囲まれた範囲内にある弧状の曲線cは、各絶対温度における黒体の色度座標を連ねた黒体軌跡である。この黒体軌跡上に示された数字は黒体の絶対温度(K)であり、〇でプロットされた個所は、それぞれ昼光色蛍光ランプ(色温度=6500K)、白色蛍光ランプ(色温度=4200K)、白熱電球(色温度=2850K)の光源色の色度座標である。
【0048】
上記式8は、励起光の色度座標P1 (x1 ,y1 )と蛍光の色度座標P2 (x2 ,y2 )とを結ぶ直線(図3においてLで示す。)に係る関数であり、製造されるLED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )は、理論上、直線L上の位置にある。
白色LED装置においては、通常、光源色が黒体軌跡に近い色温度を有する色度値であることが目標とされることから、例えば直線Lと黒体軌跡に係る曲線cとの交点が目標とされる色度座標である。
【0049】
そして、例えば目標の色度座標またはその近傍の光を放射するLED装置から、蛍光の標準分光スペクトルデータを取得しておき、この標準分光スペクトルデータと、目標の色度座標とに基づいて、励起光の分光スペクトルデータに係る分光分布の波高が決定される。
また、蛍光の標準分光スペクトルデータの取得が困難な場合には、複数(例えば10)のLED用封止材料のサンプルについて、それぞれの蛍光の分光スペクトルデータを測定し、これらの蛍光の分光スペクトルデータと励起光の分光スペクトルデータとを組み合わたときに、色度座標の値が許容範囲内となる数が最多となる励起光を見出し、この励起光分光スペクトルデータに係る分光分布から波高を決定してもよい。
【0050】
以上説明したように、本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置においては、光源部20からの励起光は、筐体10の内面11を構成する光拡散反射面によって均一に拡散された後、LED用封止材料Mが収容された容器1における測定室R内に露出する表面全面に照射される。これにより、当該容器1における測定室R内に露出する表面全面から蛍光が出射され、この蛍光は、筐体10の内面11を構成する光拡散反射面によって均一に拡散された後、受光部30によって受光される。そして、分光測定器40によって、受光部30に受光された蛍光の分光スペクトルデータが取得され、演算処理部50によって、取得された蛍光の分光スペクトルデータに基づいて、製造されるLED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )が演算される。
【0051】
従って、本発明のLED用封止材料の発光特性測定装置によれば、容器1に歪みが生じていたり、容器1の表面に傷が生じていたりしたときにも、当該容器1に収容されたLED用封止材料Mについて、LED装置を製造したときに当該LED装置による光の色度座標P0 (x0 ,y0 )を小さい誤差範囲で予測することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
筐体の形状は特に限定されず、例えば中空の直方体や円錐台の形状のものであってもよいが、光をより均一に拡散することができる点で、図1に示す例のように、中空の球欠体の形状、特に中空の半球体の形状を有するものであることが好ましい。
測定対象のLED用封止材料は、黄色蛍光体物質が単独で含有されたものに限定されず、互いに発光色の異なる複数種の蛍光体物質が含有されたもの、また、近紫外LED素子と組み合わせて用いられる、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質および青色蛍光体物質が含有されたものであってもよい。
封止材料が収容される容器は、シリンジ状のものに限定されず、例えばカップ状のものであってもよい。また、容器の材質は、光源部からの励起光および蛍光体物質による蛍光を透過する特性を有するものであればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 容器
2 ピストン
3 ニードル
4 基板
5a アノード
5b カソード
6 LED素子
7 ボンディングワイヤー
8 リフレクター
8H 貫通孔
9 封止部材
10 筐体
11 内面
12 球環
13 容器挿入用開口
14 底面
15 保持部材
20 光源部
25 照度センサ
30 受光部
31 凹レンズ
32 光コネクタ
35 光ファイバー
36 ファイバーコネクタ
37 ファイバーコネクタ
40 分光測定器
50 演算処理部
M LED用封止材料
R 測定室
図1
図2
図3
図4
図5
図6