(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】水処理用吸着材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/24 20060101AFI20220914BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220914BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220914BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220914BHJP
C02F 1/40 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B01J20/24 C
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 A
C02F1/28 Q
C02F1/28 N
C02F1/40 E
(21)【出願番号】P 2018228595
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-12-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517223200
【氏名又は名称】タキエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196391
【氏名又は名称】萩森 学
(72)【発明者】
【氏名】古杉 哲也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-515879(JP,A)
【文献】特開平10-337402(JP,A)
【文献】特開2000-254700(JP,A)
【文献】特開2018-192468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
C02F 1/28、1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理用吸着材であって、
吸着剤と、
吸着剤を保持する基質を備え、
吸着剤が、カチオン化グアーガムであり、
基質がセルロースであり、
該セルロースが平均粒径
45μmの粉末セルロースであ
り、
該セルロースと該カチオン化グアーガムの配合割合が、セルロース1000重量部に対してカチオン化グアーガムが5ないし41重量部である
ことを特徴とする水処理用吸着材。
【請求項2】
7.95ないし63.3重量部のカチオン化グアーガムを水に溶解する工程と、得られた水溶液に1000重量部の平均粒径45μmの粉末セルロースを混合する工程と、得られた混合液を乾固する工程と、得られた乾固体を粉末にする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の水処理用吸着材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理用吸着材を含むことを特徴とする濾過膜。
【請求項4】
請求項1に記載の水処理用吸着材を含むことを特徴とする円筒状フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細菌、ウィルス、油、顔料等で汚染された水からこれらを除去し、水を浄化するために用いる水処理用の吸着材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中に分散する汚染物質、例えば細菌、ウイルス、油滴、顔料などを水より除去する従来技術としては、メンブレンフィルターでろ過する方法、凝集剤で処理する方法、遠心分離による方法、帯電物質を含む吸着材をろ材とし汚染物質を電磁気力により吸着除去する方法などがある。
【0003】
メンブレンフィルターはメンブレン(膜)に細孔を有している。汚染物質を含む液を該メンブレンフィルターでろ過することにより、細孔の大きさよりも大きい汚染物質を液から除去することができる。メンブレンフィルターは細孔径を調整することができるので、目的に応じた濾過/分離精度を設定することができる。また、材質もPFA、PTFE、PP、PES、PEなど多くの素材から選択できるので、多種類の液体に使用することができる。分離や分級などの分野で汎用されている。しかし、ウイルスや顔料といった微細な粒子を液中より分離するためのメンブレンフィルターでは原料単価が高くなり、高価となる。また、原液の汚染物濃度が高い場合は、すぐに細孔が目詰まり(膜閉塞)してしまう。さらに、粘性物質を含む液体などをろ過すると膜表面に粘性物質が広がりすぐに膜閉塞してしまい、圧力抵抗が高くなるという欠点がある。従って多量の汚染水処理には適当ではない。
【0004】
凝集剤で処理する方法は、汚染水中のコロイド状物質や浮遊物質を分離するために凝集剤を加えて沈殿させる方法である。水中に分散する多くの物質は、表面が負に帯電しているためにお互いに反発して分散状態である。そこに正に帯電している物質(凝集剤)を加えると、帯電が中和されてそれぞれの物質が凝集しフロックとなり沈殿する。凝集剤には、ポリ塩化アルミニウムや、硫酸アルミニウム、有機系凝集剤などがある。この方法はメンブレンフィルターによるろ過に比べて、処理コストが安い。また、汚染物濃度が高い原液にも対応ができるという利点がある。しかし、この方法はPH調整、攪拌工程、凝集剤添加工程、凝集物回収システムなどが必要であり、大規模な廃水処理施設となるので、小規模な工場などでは導入が難しい。
【0005】
遠心分離法は、汚染物を含む液を遠心分離器にかけ、液中に分散する汚染物を遠心力により沈殿させて液から分離する方法である。薬剤やPH調整などは不要であり、メンブレンフィルターにおける膜閉塞のような問題が無く、永続的に使用できる。しかしながら、ウイルスや顔料などの物質を液から分離する場合は数万Gの遠心力が必要である上、処理できる量が少なく多量の汚染水の処理には不適当である。
【0006】
塵芥、細菌、ウィルス、油滴、有機物、顔料などの汚染水中に分散している汚染物質の殆どは負に帯電している。帯電物質を含む吸着材は、吸着材に正に帯電した吸着剤を含ませたもので、液中に分散するこれらの負に帯電している汚染物質を電磁気力により吸着除去し、液中より分離するものである。本吸着材も細孔を有し、この細孔を汚染水が通過する間に汚染物質が吸着剤に吸着される。本吸着材の細孔の大きさは汚染物質粒子の大きさより十分大きいので、メンブレンフィルターで問題となる膜閉塞は起こりにくく、処理能力もメンブレンフィルターと比較すると大きい。また、浄化処理工程は、汚染水が吸着材を通過するだけであり、単純である。但し、現在実用に供されているものは高価であることが欠点である。
このような吸着材として液体中で正のゼータ電位を示しセルロース、パーライト、ケイソウ土、レジンから成る濾材が開発されている(特許文献1,2、非特許文献1)。これは液体中に分散して負に帯電している微細粒子、バクテリア、ウィルス、パイロジェン、コロイド粒子などを電磁気力により吸着除去することができる。しかし処理能力が十分ではなく処理コストが高くなることが問題である。
もう一つの例として、ナノアルミナ繊維をガラス繊維やセルロースに結合させた不織媒体をプリーツ加工したフィルターが開発されている(特許文献3)。このフィルターはナノアルミナ繊維の表面が正に帯電しており、水中に存在する負に帯電している粒子を吸着する。水中に混濁しているホコリ、細菌、油滴、有機物などは、表面電荷が負に帯電しているので、このフィルターはこれらの汚染物質を吸着除去することができる。しかし、これについてもコストが高いことが難点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3115316号
【文献】米国特許第4309247号
【文献】特許第5718309号
【文献】特許第2670116号
【非特許文献】
【0008】
【文献】https://multimedia.3m.com/mws/media/983697O/cun-d03.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、大規模な設備を必要とせず、小規模な工場や実験室などにも導入可能な、水処理技術を提供することである。具体的には、水中に分散している塵芥、細菌、ウィルス、油滴、有機物、顔料などの汚染物質を吸着除去できる水処理用吸着材およびその製造方法を提供することである。特に、既存の吸着材に比べ処理能力が格段に優れ、その結果処理コストが格段に低廉となる水処理用吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、鋭意検討を重ねた結果、カチオン化グアーガムをセルロース粉末から成る基質に保持させて得られる材が、水中に分散して負に帯電している汚染物質を吸着除去できる吸着材となり得ること、また該材におけるカチオン化グアーガムとセルロース粉末基質との配合割合が該材の吸着能に大きい影響を及ぼし、該配合割合が好適範囲であれば既存のフィルターを顕著に上回る汚染物質除去能力を発揮することを見出し本発明に至った。
【0011】
グアーガム(Guar Gum)とは、パキスタンやインドで栽培されているマメ科の一年生植物 グァー(学名 Cyamopsis tetragonolobus) の種子から得られる多糖類で、主成分はガラクトマンナンである。 グアーガムは食品添加物として認められており、増粘剤、増粘安定剤、ゲル化剤として広く用いられている。カチオン化グアーガムとはグアーガムを4級アンモニウム化することによって得られるカチオンポリマーである。
【0012】
なお、本発明において、吸着剤とは、汚染水中の汚染物質に結合し汚染物質を吸着する物質を指し、吸着材とは、吸着剤を基質に保持させたもの、即ち、吸着剤と基質を主な構成物とするものを指す。本発明は以下のとおりである。
【0013】
第一の発明にかかる水処理用吸着材は、吸着剤と、吸着剤を保持する基質を備え、吸着剤が、カチオン化グアーガムであり、基質がセルロースであることを特徴とするものである。
【0014】
第二の発明に係る水処理用吸着材は、第1の発明において基質のセルロースが平均粒径10~100μmの粉末セルロースであることを特徴とするものである。
【0015】
第三の発明にかかる水処理用吸着材は、第1または第2の発明において水処理用吸着材におけるセルロースとカチオン化グアーガムの配合割合が、セルロース1000重量部に対してカチオン化グアーガムが5ないし130重量部であることを特徴とするものである。
【0016】
第四の発明は、第一の発明ないし第3の発明のいずれかに係る水処理用吸着材の製造方法であって、5ないし130重量部のカチオン化グアーガムを水に溶解する工程と、得られた水溶液に1000重量部のセルロースを混合する工程と、得られた混合液を乾固する工程と、得られた乾固体を粉末にする工程を含むことを特徴とするものである。
【0017】
第五の発明は、第一の発明ないし第3の発明のいずれかに係る水処理用吸着材を含むことを特徴とする濾過膜である。
【0018】
第六の発明は、第一の発明ないし第3の発明のいずれかに係る水処理用吸着材を含むことを特徴とする円筒状フィルターである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水処理用吸着材は水中に分散している汚染物質を吸着除去する能力が非常に高い。本発明に係る水処理用吸着材に用いている吸着剤であるカチオン化グアーガムは正に帯電しており、水中に懸濁していて表面が負に帯電している塵芥、細菌、ウィルス、油滴、有機物、顔料などの汚染物質を吸着することができる。また、本願発明に係る水処理用吸着材を用いた水浄化処理工程は、基本的には汚染水が吸着材を通過するだけであり単純であるので、小規模な工場や実験室でも容易に導入できるものである。さらに本発明に係る水処理用吸着材は製造コストが比較的に低廉であり、水処理能力は既存の帯電物質を含む吸着材に比べ格段に大きいので水処理コストが大幅に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は実施例1乃至5において作成した水処理用吸着材膜を示す図である。
【
図2】
図2は本願発明に係る吸着材を円筒状に成形したフィルターの一例を示す。
【
図3】
図3は本願発明に係る吸着材から成る濾過膜を取り付けたホルダーの一例である。
【
図4】
図4は本願発明に係る吸着材から成る濾過膜を取り付けたホルダーと汚染水を満たした圧力容器から成る水処理システムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変更や修正が可能であることは言うまでもない。
【0022】
本発明に係る水処理用吸着材は吸着剤としてカチオン化グアーガムを用い、これを、基質として用いるセルロースに保持させていることを特徴とするものである。基質として用いるセルロースは平均粒子径が10μm~100μmの粉末セルロースが適している。
【0023】
本願発明に係る水処理用吸着材の製造方法の一例は以下の通りである。5600重量部の水に5~130重量部のカチオン化グアーガムを加え混合したのち、これに1000重量部の粉末セルロースを加え混合する。次いでこの混合液を50~80℃で18時間程度乾燥し得られた乾固物を粉末にする。この粉末が本願発明に係る水処理用吸着材である。
この水処理用吸着材を膜状に成形すれば濾過膜として使用できる。また円筒状に成形すれば円筒状フィルターとして使用できる。ろ過装置への適用の態様は処理する液の量や除去すべき物質の性質等によって適宜選択できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に温度の記載をした場合を除き、全ての操作は室温下で行った。
【0025】
<実施例1>
5600gの超純水(アドバンテック東洋株式会社製、比抵抗値18.2MΩ.cm以上、TOC1PPb以下)に7.95gのカチオン化グアーガム(三晶株式会社製、MEYPRO-BOND111)を加えミキサーで強く撹拌し、完全に溶解させた。得られた水溶液に1000gの粉末セルロースKCフロック(登録商標)W50-GK(日本製紙製、平均粒子径45μm)を加え攪拌し混合した。得られた混合液を50~80℃で18時間乾燥した。得られた乾固体を粉砕機(三庄インダストリー株式会社製、トルネードミルTM-25)を用いて粉末にした。この粉末2gと粉末セルロースKCフロックW50-GK1gを混合し、3gの混合粉末を得た。
超純水300ccにバインダー繊維(東洋紡株式会社製、ビィパル(登録商標))1gを加え分散液とした。この分散液に前記の3gの混合粉末を加え混合し、濾紙上で減圧濾過し、水処理用吸着材膜1(
図1)を得た。
該水処理用吸着材膜の厚みは5~10mmであった。
【0026】
<実施例2>
最初に5600gの超純水に15.68gのカチオン化グアーガムを加えたこと以外は実施例1と全く同じ方法で、水処理用吸着材膜を得た。
【0027】
<実施例3>
最初に5600gの超純水に25.76gのカチオン化グアーガムを加えたこと以外は実施例1と全く同じ方法で、水処理用吸着材膜を得た。
【0028】
<実施例4>
最初に5600gの超純水に48.2gのカチオン化グアーガムを加えたこと以外は実施例1と全く同じ方法で、水処理用吸着材膜を得た。
【0029】
<実施例5>
最初に5600gの超純水に63.3gのカチオン化グアーガムを加えたこと以外は実施例1と全く同じ方法で、水処理用吸着材膜を得た。
【0030】
<実施例6>
本願発明に係る水処理用吸着材を用いて、特許文献4に記載の方法により円筒状フィルター2(
図2)を作成した。本フィルターは中心部に円筒状の支持体3を有している。支持体3の円筒の一端は閉じており他端は開放している。支持体3の円筒状の壁は全面に通水孔を有し液体はこの壁を透過することができる。水処理用吸着材は支持体3の外表面に積層され吸着材成形層4を形成している。本フィルターを使用するときは、本フィルターの開放している方の端を、チューブを介して真空ポンプに連結する。汚染水が満たされた水槽に本フィルターを投入し真空ポンプを作動させて支持体3の内部を減圧する。その陰圧によって汚染水は吸着材成形層4を通過して支持体3の円筒の内側に入りチューブを通って排出される。汚染水が吸着成形層を通過する際に、汚染物質は吸着材成形層4に吸着されることにより除去され、浄化された水が排出される。
また、本円筒状フィルターによる水処理には、真空ポンプではなく圧送ポンプを用いてもよい。その場合、圧力容器に本フィルターを入れ、そこに汚染水をいっぱいに入れる。本フィルターの開放している方の端をチューブを介して、圧力容器の壁を通して外に出し排出口とする。圧力容器には汚染水の供給のために容器の壁に汚染水供給口を設け、その供給口は配管を介して送液ポンプに接続する。汚染水は送液ポンプにより圧力容器内に送液され、送液の加圧により汚染水は吸着材成形層4を通過して支持体3の円筒の内側に入りチューブを通って排出される。汚染水が吸着材成形層を通過する際に、汚染物質は吸着材成形層4に吸着されることにより除去され、浄化された水が排出される。
【0031】
<水処理用吸着材膜の水処理能力評価試験>
各実施例に係る水処理用吸着材膜および対照の膜の水処理能力の評価は、顔料を水に混合した混合液を同じ面積のそれぞれの膜で濾過し、それぞれの膜において濾液の色度が5以下に保たれる、最大の濾液量を測定した。なお、色度に関する水道法に基づく水質基準の基準値は5度以下と定められている。
対照として、カチオン性の吸着材タイプの2種類の膜(本明細書ではAとBと呼ぶ)を用いた。対照Aはスリーエムジャパン株式会社製のゼータプラス(登録商標)タイプ90Sフィルターである。このフィルターは、カチオン化樹脂を膜繊維内に練りこんだフィルターであり、液中に分散する負電荷の物質を容易に吸着するとされている。特許文献1,2に記載されている発明および非特許文献1に係る製品である。なおこのフィルターの厚さは3~8mmである。対照Bはアルゴナイドコーポレイション製のナノセラムフィルターである。このフィルターはアルミナを膜繊維表面に担持させたフィルターであり、ナノ粒子や負電荷の物質を容易に吸着するとされているフィルターである。特許文献3に記載されている発明に係る製品である。なおこのフィルターの厚さは1~2mmである。
実施例1ないし5の水処理用吸着材膜および対照膜A,Bの各膜について濾過面積が4平方センチになるように円形膜を2枚ずつ調製した。この膜(以下試験膜と呼ぶ)を
図3に示す吸着材膜ホルダー5の両端部に1枚ずつ取り付けた(
図3)。吸着材膜ホルダー5は中空の円筒状であり中央部に吐出口6を有する。吐出口6に吐出用配管9を連結した(
図4)。
純水製造装置RFU685DA(アドバンテック東洋株式会社製)を用いて製造した純水にキナクリドンマゼンタ(ホルベイン画材株式会社)を混合し色度が170度の試験液を調製した。色度はポータブル水質計WA-2M(日本電色工業株式会社)を用いて測定した。
圧力容器7(
図4)に上記の試験液10をいっぱいに入れ、そこに上記の吐出用配管9を連結した吸着材膜ホルダー5を試験液10に沈め蓋をする。吐出用配管9は蓋を通して外に出し真空ポンプに連結した。圧力容器7は流入口を有しており、流入口に流入用配管8を連結し流入用配管8は試験液を入れた別の容器に連結した。
真空ポンプを作動させて吸着材膜ホルダー5を減圧すると圧力容器7内の試験液は吸着材膜ホルダー5の両端部に取り付けられた吸着材膜1を通過して吸着材膜ホルダー5内に入り吐出用配管9から流出する。同時に新たな試験液が流入口から圧力容器7内に補充される。試験液が試験膜を通過する速度は線速度(linear velocity、LV)が0.05m/hになるように調整した。
吐出用配管9から排出された液(排出液)が30~50cc溜まる度に、その液の色度を上記の色度計を用いて測定した。排出液の色度が5度を超える直前までの排出液の総量を当該試験膜の処理可能量とした。各膜について上記評価試験を2回繰り返した。
【0032】
【表1】
表1に2回の試験、試験1と試験2、における実施例1~5の水処理用吸着材膜および対照膜A,Bの処理可能量および各膜の2回の試験の平均値を示す。水処理用吸着材膜の処理可能量は実施例3および4に係る膜が高い値を示した。2回の試験の平均値において最も高い性能を示した実施例4の膜の処理可能量は、対称AおよびBの処理可能量の、それぞれ7.8倍および17.2倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は汚染水の浄化だけでなく、飲料水、加湿用水などからの細菌やウィルスの除去、酒類や清涼飲料などの製造過程における細菌、ウィルス、沈殿物、有機物などの除去にも利用できるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 吸着材膜
2 円筒状フィルター
3 支持体
4 吸着材成形層
5 吸着材膜ホルダー
6 吐出口
7 圧力容器
8 流入配管
9 吐出用配管
10 試験液