(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】賃借人の見守りシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20220914BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220914BHJP
G06Q 50/16 20120101ALI20220914BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G06Q50/16 300
(21)【出願番号】P 2019238224
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520001051
【氏名又は名称】株式会社ジュウサポ
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸子
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054247(JP,A)
【文献】特開2014-106789(JP,A)
【文献】特開2019-192054(JP,A)
【文献】特開2012-117362(JP,A)
【文献】特開2013-061832(JP,A)
【文献】特開2018-056730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-31/00
G06Q50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃借人の安全を見守るべく、見守りサーバと、
電力会社のサーバと、賃借人端末と、管理会社端末と、債務保証会社端末と、
前記賃借人の賃貸物件に設置された通信機能付き電力量計を有する利用現況情報通信装置とをインターネットで接続してなる賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記利用現況情報通信装置から賃借人の賃貸物件利用に関する現況情報を受け取る現況情報受信部と、
前記現況情報受信
部が受け取った現況情報に基づいて、賃借人の安全に関して異常が発生したことを判断する異常判断部と、
前記異常判断部が異常発生と判断した場合に、前記賃借人に対して安否確認を問う安否確認部と、
前記安否確認部が所定期間、前記賃借人から返信を得られない場合に、前記賃貸物件の防犯のため利用停止の措置を講ずる利用禁止措置部と、
前記利用禁止措置部が当該措置を講じたことを前記賃借人端末と、前記管理会社端末と、前記債務保証会社端末とに通知する関係者通知部と
を有し、
前記利用現況情報通信装置が有する当該通信機能付き電力量計が取得した前記賃貸物件における電力消費の現況を電力会社のサーバを介して、前記見守りサーバの現況情報受信部が受信し、前記利用現況情報通信装置は、前記債務保証会社端末から賃料滞納情報を受け取り、その情報を前記異常判断部に伝えることを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の賃借人の見守りシステムであって、
さらに、駆けつけ会社端末が、前記見守りサーバに接続され、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から駆けつけ要請の返信を得た場合に、駆けつけ会社端末又は居住支援法人端末にその旨を通知し、賃借人の安全を確保する措置をとる駆けつけ要請部を
さらに有することを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の解約手続きを希望する旨の返信を得た場合に、前記管理会社端末に対して、賃借人が解約希望をする旨の通知を伝える解約希望伝達部を
さらに有することを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれか1項に記載する賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の賃料延滞についての支払い相談を希望する旨の返信を得た場合に、前記債務保証会社端末にその旨を通知する延滞解消相談部を
さらに有することを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載する賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、さらに、電力供給の停止を申し入れる電力供給停止部を有し、
前記利用禁止措置部が講ずる措置は、前記電力供給停止部を介して、電力の供給停止を電力会社サーバに申し入れる通知を送ることである
ことを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載する賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が当該賃借人との間の安否確認のやりとりをこれまでに実行した履歴を記録する安否確認履歴部を
さらに有して、
前記利用禁止措置部が、安否確認から利用禁止措置を講じるまでの所定期間の長さを、前記安否確認履歴部が記録するこれまでの安否確認回数の数値に応じて設定し直す
ことを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項7】
請求項
6に記載する賃借人の見守りシステムであって、
賃借人との間の安否確認が所定回数以上となった場合には、前記安否確認履歴部は、その旨を前記安否確認部に通知し、
それ以降において、異常判断部が異常発生と判断した場合には、安否確認せずに前記利用禁止措置部が賃借人の利用を禁止する措置を講ずる
ことを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【請求項8】
請求項
6又は請求項
7に記載する賃借人の見守りシステムを複数接続する本部サーバをさらに設ける賃借人の見守りシステムであって、
前記本部サーバでは、
前記見守りサーバの安否確認部が収集した情報に基づいて、統計処理を行って、異常判断の基準を見直して、見直し後の情報を各見守りサーバに送ることを特徴とする賃借人の見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は賃貸住宅における賃借人の見守りシステムに関し、特に賃借人の身に危険が迫り、病気などで緊急の対応が必要な場合に、システムの運営会社が中心となって、安全対策を実施することを可能にする賃借人の見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、就労状況及び住宅事情が多様化しており、一人暮らしの賃借人が多いこと、就労事情が安定していないこと、高齢者の一人暮らしが増えていること、などの傾向が見られる。
【0003】
例えば、賃借人が一人で賃貸住宅に住んでいる場合に、職を失う、生活レベルが下がる、職探しをする、安い家賃の賃貸住宅に引っ越そうとしても生活改善及び職探しと同時に転居先を探すことまでは対応不能となるという事態が考えられる。
また、病気の場合に、一人では病院に行けない、適切な病院を探せない、生活する上での何らかの手伝いが必要だという事態が考えられる。
さらに、高齢者や認知症患者が一人住まいしていると、生活介助、世話などが必要な場合が考えられる。
【0004】
上述の生活レベル低下、病気、高齢、認知症などの場合に、多くは家賃の滞納という現象として現れる。そして、そのような異常な事態に対して賃貸契約をすみやかに解除させる方法として「不動産管理方法」が提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術においては、保証金保障機構、保証・補償会社が関与して滞納賃料の支払い原状回復費用の支払いなどをすみやかに行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、賃貸契約の解約確定がなされてからの処理を早く行うためのものであって、解約までの手続きを考えたものではない。
また、賃貸契約の解約を早く確定させる行為は、往々にして賃借人の立場に対して配慮に欠けたものになりがちである。
さらに、家賃滞納に対して家賃保証会社は賃借人に対して取り立て行為を行うが、多くは電話対応によるものであり、時には冷酷さを感じさせるものになりかねない。
【0007】
本発明の発明者は、賃借人の保護の観点から、賃借人に寄り添って相談に乗って、賃借人の抱える問題を解決するのに役立つ見守りシステムが必要であると考えた。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、従来の賃貸住宅の家賃滞納の問題に対処すべく、賃借人の抱える病気、失業、高齢による肉体の衰え、認知症などの問題から賃借人が抜け出ることができるように支援、サポート、紹介、情報提供などを行う見守りシステムを実現する。家賃滞納問題を抱える賃借人が早く立ち直れるようにサポートすることが可能な賃借人の見守りシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記解決しようとする課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、あらかじめ賃貸借契約において、運営会社が賃借人の身元保証人(身元引受人)兼共同利用者(同居者)となり、通常時は運営会社が当該賃貸物件に立ち入らないが、家賃滞納、看病、介護の必要が生じたときに入室、同居して賃借人をサポートするという取り決めをしておくこと、そして、それを支援するコンピュータシステムを組むことで、賃借人の安全対策と見守りをスムーズに行うことが可能であることに想到した。
すなわち、本発明は、賃借人の安全を見守る運営会社との関係により、賃借人が異常時に対応することが可能な賃借人の見守りシステムを提供するものである。
【0010】
賃借人の安全を見守るべく、見守りサーバと、賃借人端末と、管理会社端末と、債務保証会社端末と、利用現況情報通信装置とをインターネットで接続してなる賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記利用現況情報通信装置から賃借人の賃貸物件利用に関する現況情報を受け取る現況情報受信部と、
前記現況情報受信装置が受け取った現況情報に基づいて、賃借人の安全に関して異常が発生したことを判断する異常判断部と、
前記異常判断部が異常発生と判断した場合に、前記賃借人に対して安否確認を問う安否確認部と、
前記安否確認部が所定期間、前記賃借人から返信を得られない場合に、前記賃貸物件の防犯のため利用停止の措置を講ずる利用禁止措置部と、
前記利用禁止措置部が当該措置を講じたことを前記賃借人端末と、前記管理会社端末と、前記債務保証会社端末とに通知する関係者通知部と
を有し、
前記利用現況情報通信装置は、前記債務保証会社端末から賃料滞納情報を受け取り、その情報を前記異常判断部に伝えることを特徴とする。
これにより、賃借人の異常にいち早く対応することが可能となる。
【0011】
本発明の賃借人の見守りシステムは、
さらに、駆けつけ会社端末が、前記見守りサーバに接続され、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から駆けつけ要請の返信を得た場合に、駆けつけ会社端末又は居住支援法人端末にその旨を通知し、賃借人の安全を確保する措置をとる駆けつけ要請部を
さらに有することを特徴とする。
これにより、賃借人の保護、見守りが可能となる。
【0012】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の解約手続きを希望する旨の返信を得た場合に、前記管理会社端末に対して、賃借人が解約希望をする旨の通知を伝える解約希望伝達部を
さらに有することを特徴とする。
これにより、賃借人の賃料滞納額が増大することを防止することが可能となる。
【0013】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の賃料延滞についての支払い相談を希望する旨の返信を得た場合に、前記債務保証会社端末にその旨を通知する延滞解消相談部を
さらに有することを特徴とする。
これにより、賃料の滞納ができてしまった場合の早期解消が可能となる。
【0014】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記利用現況情報通信装置は、前記賃貸物件に設置された通信機能付き電力量計であり、
当該通信機能付き電力量計が取得した前記賃貸物件における電力消費の現況を電力会社のサーバを介して、前記見守りサーバの現況情報受信部が受信することを特徴とする。
これにより、当該賃貸物件内における賃借人の電力消費状況の異常にいち早く対応可能となる。
【0015】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記利用現況情報通信装置は、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置であり、
前記賃貸物件のドアの施錠及び開錠の情報を、前記見守りサーバの現況情報受信部が受信することを特徴とする。
これにより、長期間において、開錠がなされていない異常に対していち早く対応することが可能となる。
【0016】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、さらに電力会社サーバと接続されて、電力供給の停止を申し入れる電力供給停止部を有し、
前記利用禁止措置部が講ずる措置は、前記電力供給停止部を介して、電力の供給停止を電力会社サーバに申し入れる通知を送ることである
ことを特徴とする。
これにより、賃借人の電気代が膨れ上がることを未然に防ぐことができる。ここで、供給停止を供給契約の解約又は解除にすることで、電気代の発生をゼロにしてしまうことも可能である。
【0017】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置を制御するドア施錠制御部をさらに有し、
前記利用禁止措置部が講ずる措置は、前記ドア施錠制御部が、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置を制御して、当該ドアを施錠することである
ことを特徴とする。
これにより、賃借人が入室することを禁ずることができる。
【0018】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が当該賃借人との間の安否確認のやりとりをこれまでに実行した履歴を記録する安否確認履歴部を
さらに有して、
前記利用禁止措置部が、安否確認から利用禁止措置を講じるまでの所定期間の長さを、前記安否確認履歴部が記録するこれまでの安否確認回数の数値に応じて設定し直す
ことを特徴とする。
これにより、異常が発生する頻度に応じて、賃借人に適した対応が可能となる。
【0019】
本発明の賃借人の見守りシステムであって、
賃借人との間の安否確認が所定回数以上となった場合には、前記安否確認履歴部は、その旨を前記安否確認部に通知し、
それ以降において、異常判断部が異常発生と判断した場合には、安否確認せずに前記利用禁止措置部が賃借人の利用を禁止する措置を講ずる
ことを特徴とする。
これにより、異常発生の頻度が高い賃借人の賃料の滞納額が増大するのを未然に防ぐことが可能となる。
【0020】
本発明の賃借人の見守りシステムを複数接続する本部サーバをさらに設ける賃借人の見守りシステムであって、
前記本部サーバでは、
前記見守りサーバの安否確認部が収集した情報に基づいて、統計処理を行って、異常判断の基準を見直して、見直し後の情報を各見守りサーバに送ることを特徴とする。
【0021】
本発明の賃借人の見守りシステムは、
賃借人の安全を見守るべく、見守りサーバと、賃借人端末と、管理会社端末と、債務保証会社端末と、利用現況情報通信装置とをインターネットで接続してなる賃借人の見守りシステムであって、
前記見守りサーバは、
前記利用現況情報通信装置から賃借人の当該賃貸物件利用に関する現況情報を受け取る現況情報受信部と、
前記現況情報受信装置が受け取った現況情報に基づいて、賃借人の安全に関して異常が発生したことを判断する異常判断部と、
前記異常判断部が異常発生と判断した場合に、前記賃借人に対して安否確認を問う安否確認部と、
前記安否確認部が所定期間、前記賃借人から返信を得られない場合に、前記賃貸物件の防犯のため利用停止の措置を講ずる利用禁止措置部と、
前記利用禁止措置部が当該措置を講じたことを前記賃借人端末と、前記管理会社端末と、前記債務保証会社端末とに通知する関係者通知部と
を有する。
これにより、より大きな統計データに基づく基準の見直しが可能となり、システムの適切な運用ができる。
【0022】
本発明の賃借人の見守りシステムは、
さらに、駆けつけ会社端末が、前記見守りサーバに接続され、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から駆けつけ要請の返信を得た場合に、駆けつけ会社端末又は居住支援法人端末にその旨を通知し、賃借人の安全を確保する措置をとる駆けつけ要請部を有することを特徴とする。
これにより、賃借人の保護、見守りが可能となる。
【0023】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の解約手続きを希望する旨の返信を得た場合に、前記管理会社端末に対して、賃借人が解約希望をする旨の通知を伝える解約希望伝達部を
さらに有することを特徴とする。
これにより、賃借人の賃料滞納額が増大することを防止することが可能となる。
【0024】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が前記賃借人から、前記賃貸物件の賃料延滞についての支払い相談を希望する旨の返信を得た場合に、前記債務保証会社端末にその旨を通知する延滞解消相談部を
さらに有することを特徴とする。
これにより、賃料の滞納ができてしまった場合の早期解消が可能となる。
【0025】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記利用現況情報通信装置は、前記賃貸物件に設置された通信機能付き電力量計であり、
当該通信機能付き電力量計が取得した前記賃貸物件における電力消費の現況を電力会社のサーバを介して、前記見守りサーバの現況情報受信部が受信することを特徴とする。
これにより、当該賃貸物件内における賃借人の電力消費状況の異常にいち早く対応可能となる。
【0026】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記利用現況情報通信装置は、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置であり、
前記賃貸物件のドアの施錠及び開錠の情報を、前記見守りサーバの現況情報受信部が受信することを特徴とする。
これにより、長期間において、開錠がなされていない異常に対していち早く対応することが可能となる。
【0027】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記見守りサーバは、さらに電力会社サーバと接続されて、電力供給の停止を申し入れる電力供給停止部を有し、
前記利用禁止措置部が講ずる措置は、前記電力供給停止部を介して、電力の供給停止を電力会社サーバに申し入れる通知を送ることである
ことを特徴とする。
これにより、賃借人の電気代が膨れ上がることを未然に防ぐことができる。ここで、供給停止を供給契約の解約又は解除にすることで、電気代の発生をゼロにしてしまうことも可能である。
【0028】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記見守りサーバは、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置を制御するドア施錠制御部をさらに有し、
前記利用禁止措置部が講ずる措置は、前記ドア施錠制御部が、前記賃貸物件に設置されたドア施錠遠隔管理装置を制御して、当該ドアを施錠することを特徴とする。
これにより、賃借人が入室することを禁ずることができる。
【0029】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
前記見守りサーバは、
前記安否確認部が当該賃借人との間の安否確認のやりとりをこれまでに実行した履歴を記録する安否確認履歴部をさらに有して、
前記利用禁止措置部が、安否確認から利用禁止措置を講じるまでの所定期間の長さを、前記安否確認履歴部が記録するこれまでの安否確認回数の数値に応じて設定し直すことを特徴とする。
これにより、異常が発生する頻度に応じて、賃借人に適した対応が可能となる。
【0030】
本発明の賃借人の見守りシステムにおいて、
賃借人との間の安否確認が所定回数以上となった場合には、前記安否確認履歴部は、その旨を前記安否確認部に通知し、
それ以降において、異常判断部が異常発生と判断した場合には、安否確認せずに前記利用禁止措置部が賃借人の利用を禁止する措置を講ずる
ことを特徴とする。
これにより、異常発生の頻度が高い賃借人の賃料の滞納額が増大するのを未然に防ぐことが可能となる。
【0031】
本発明の賃借人の見守りシステムを複数接続する本部サーバをさらに設ける賃借人の見守りシステムであって、
前記本部サーバでは、
前記見守りサーバの安否確認部が収集した情報に基づいて、統計処理を行って、異常判断の基準を見直して、見直し後の情報を各見守りサーバに送ることを特徴とする。
これにより、より大きな統計データに基づく基準の見直しが可能となり、システムの適切な運用ができる。
なお、上述の賃借人の見守りシステムが利用現況情報を入手する際に、前述の債務保証会社からの賃料滞納情報に基づいて、それを引き金として、この見守りシステムを稼働させることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
以上、説明したように、本発明の賃貸物件の見守りシステムは、賃借人の異常にいち早く対応し、賃借人の未払い料金が増大することを防止することが可能となる。
これにより、異常が頻繁に起こる賃借人との解約を早期になすことが可能となる。また、債務保証会社は、損害をより少なくすることができる。
また、このシステムの裏づけにより、異常発生頻度の高い賃借人との解約を早期にできるので、管理会社や債務保証会社は賃借人への信頼をしやすくなると言える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる賃貸物件の見守りシステムの概要を示す図である。
【
図2】
図1に示す見守りサーバの内部構成を概略的に示す図である。
【
図3】利用禁止措置をする場合の見守りシステムの動作を説明するシーケンス図である。
【
図4】賃借人から安否確認の応答がある場合の見守りシステムの動作を示すシーケンス図である。
【
図5】見守りシステムを各地域、各地方に置き、さらに本部サーバを設ける際の実施例を示す図である。
【
図6】賃料延滞情報に基づいて本システムを稼働させる場合の見守りサーバの内部構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の賃貸物件の見守りシステムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1から
図3までは、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0035】
≪賃貸物件の見守りシステムの構成≫
図1は、賃貸物件の見守りシステムの構成を示す。
図1で、中央部に描いた横に伸びる長円は、インターネット網などのコンピュータネットワークを示している。
見守りサーバ10、管理会社端末30、債務保証会社端末40、駆けつけ会社端末60、居住支援法人端末65、スマートロック(ドア施錠遠隔管理装置)23、賃借人端末(パソコン)21、賃借人端末(スマホ)20、電力会社サーバ50は、インターネット網(に代表されるコンピュータネットワーク)を介して接続されている。
居住支援法人は、改正住宅セーフティネット法(平成29年10月25日施行)に基づき、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録された住宅の入居者への家賃債務保証、賃貸住宅への入居に係る情報提供・相談、見守りなどの生活支援を行う法人であって、都道府県が指定したものをいう。
見守りサーバ10が一つに対して、管理会社端末30、債務保証会社端末40、駆けつけ会社端末60、居住支援法人端末65、スマートロック23(ドア施錠遠隔管理装置)、賃借人端末(パソコン)21、賃借人端末(スマホ)20、電力会社サーバ50は、それぞれ複数接続され得る。スマートメータ(通信機能付き電力量計)25は、賃貸物件内の電力消費量を電力会社サーバ50を介して見守りサーバ10に伝達する。
【0036】
賃借人端末(スマホ)20や、賃借人端末(パソコン)21を所有する賃借人は、賃貸物件を利用する賃借人である。賃貸物件のオーナーは、
図1では、図示を省略してある。賃貸物件のオーナーと賃借人との間のレンタル契約を仲介する会社が管理会社であり、管理会社端末30を用いて、見守りサーバ10と接続する。
見守りサーバ10及び見守りシステムの運営会社は、賃借人とオーナーとが結ぶレンタル契約の当事者としてレンタル契約に関与する主体となる。本システムを運営する運営会社が、見守りサーバ10を管理する。
債務保証会社は、賃借人がオーナーに対して負う債務を保証する会社である。たとえば月ごとに支払う賃料を賃借人に代わってオーナーに支払い、賃借人から取り立てる。
【0037】
駆けつけ会社は、運営会社からの依頼により、賃貸物件の現場へ駆けつけて賃借人の緊急事態に対応する会社である。例えば、警備会社、介護会社が駆けつけ会社となり得る。
電力会社は、賃借人が賃貸物件において消費する電力を供給する会社である。賃貸物件には、スマートメータ(通信機能付電力量計)25が設置され、そのデータは電力会社サーバ50に収集される。当該賃貸物件内における電力消費の情報は、あらかじめ賃借人と運営会社との間で取り決めた契約内容にしたがって、見守りサーバに送られる。
【0038】
賃貸物件の出入り口のドアには、スマートロック(ドア施錠遠隔管理装置)23が設けられる。スマートロック23は、正常時にあっては、賃借人のスマホなどにより賃借人の都合に合わせた開閉が可能である。しかし、異常発生を運営会社のサーバ10が検知した際には、ロックがかかり、賃借人の意思のみによっては開けることができない状況になる。賃借人と運営会社との間で、あらかじめ取り決めた契約にしたがって、運営会社は、異常発生時に入室禁止措置や、賃貸物件の契約自体の解約までもできることとする。このことは、賃料の滞納額を増大させないという意味において、賃借人の保護になることである。また、このように異常発生時に対応する見守りシステムがあって、その運営会社が存在することで、債務保証会社が賃借人の債務を引き受けやすくなるというメリットがある。それにより、賃借人が契約に際して、一人暮らしであっても賃貸物件の契約が可能となるという意味において、賃借人の保護になる。
【0039】
≪見守りサーバの内部構成≫
図2は、
図1に示す見守りサーバの内部構成を概略的に示す図である。
図2において、右半分に縦長に延びる長方形が見守りサーバ10である。見守りサーバ10の内部には、現況情報受信部110、異常判断部120、安否確認部130、安否確認履歴部140、利用禁止措置部150、関係者通知部160、駆けつけ要請部170、解約希望伝達部180、延滞解消相談部190が機能として設けられている。ここで、○○部とは、見守りサーバ(コンピュータ)10のCPUが必要なソフトウェアをそのつど読み込んで実現するものである。したがって、○○部は、物の発明の構成要素である。
【0040】
現況情報受信部110は、インターネットを介して利用現況情報通信装置70からの情報を取得して、異常判断部120に引き渡す機能を果たす。
ここで、利用現況情報通信装置70が現況情報受信部110に引き渡す情報は、賃貸物件における通信機能付き電力量計25からの電力消費情報(電力消費の時間経過に伴う推移に関する情報)及び/又はドア施錠遠隔管理装置23のドア開閉情報(ドアを開閉した年月日時刻に関する情報)である。
【0041】
異常判断部120は、現況情報受信部から引き渡された賃貸物件における電力消費の推移についての情報及び/又はドア開閉時刻に関する情報を取得して、それに基づいて、異常事態が発生したか否かを判断する。たとえば、電力消費がほとんどゼロの状況が所定期間(たとえば2週間続いた)、逆に、漏電の可能性があるほどの大量の電力消費が所定期間(たとえば3日間続いた)、ドアが10日間開かれていない、などの状況を異常と判断して、その結果を安否確認部に引き渡す。
【0042】
安否確認部130は、異常判断部120が異常と判断したことを受けて、賃借人本人に安否確認を実行する。安否確認は、賃借人端末20,21に対して、メッセージ、メールなどで、「大丈夫ですか? あなたが借りている賃貸物件に出入りしている形跡がこの10日間ありません。 ひょっとして倒れて動けないなど、助けを必要としている状況ではないでしょうか? 次の4択でお返事をください。 1 旅行に出ているだけです。大丈夫です。 2 今、賃貸物件の中で倒れて動けません。助けが欲しい。 3 この賃貸物件をもう使っていません。解約を希望します。 4 賃料の延滞がたまっていてこまっています。保証会社と相談したい。」
【0043】
安否確認に対して、所定期間(たとえば、24時間)返答がない場合、利用禁止措置部150にその情報が伝えられて、ドア施錠制御部152がドアをロックして賃借人が開け閉めできないようにする、及び/又は電力供給停止部153が電力会社サーバ50に働きかけて、電力供給停止を依頼する。
【0044】
安否確認に対して、賃借人から「大丈夫です」との返事がある場合は、何もしない。
安否確認に対して、「賃借人から助けが欲しい」との返事がある場合は、駆けつけ要請部170が働いて、駆けつけ会社端末60又は居住支援法人端末65を介して駆けつけ要請をする。
安否確認に対して、「賃貸物件を解約したい」との返事がある場合は、解約希望伝達部180が管理会社端末を介して管理会社に解約の旨を伝達する。このとき事前に運営会社が賃借人との間で取り決めてある契約に基づいて、運営会社自身が解約手続きを行うこととしてもよい。
安否確認に対して、賃借人が「延滞解消の相談をしたい」との返事であった場合には、延滞解消相談部190が働いて、債務保証会社端末40にその旨が伝えられる。
【0045】
安否確認履歴部140は、当該賃借人に関して、たびたび安否確認の必要が生じる場合に、その頻度に応じて、安否確認の返事を待つ期間(時間)の長さを短くすることを可能とする。たとえば、一度目の安否確認であれば、24時間待つ。二度目の安否確認では、12時間に短縮する。三度目の安否確認では6時間に短縮するという変更をかけることができる。
これにより、安全、賃料の支払い、などについての賃借人の自覚を高めることができる。
【0046】
また、安否確認履歴部140が記憶する安否確認の頻度にしたがって、異常判断部120が電力消費の推移や、ドア開閉の頻度を判断する際の基準を変更するようにすることも可能である。たとえば、賃貸物件を使わないでいるが、賃料はしっかり支払う賃借人に対しては、異常と判断するのを10日の留守ではなく、20日の留守に基準を変更するなどが考えられる。
【0047】
≪利用禁止措置をする場合の見守りシステムの動作≫
図3は、見守りシステムの動作を示すシーケンス図である。
見守りサーバが利用現況情報通信装置から利用現況情報を受け取って、異常と判断すると、賃借人に対して安否確認をする。一定期間経過しても応答がない場合に、利用禁止措置として、ドアの施錠を遠隔制御にて実施し、電力会社に供給停止の依頼をする。ドアの施錠、電力供給停止についてのレポートを受け取って終了となる。
【0048】
≪安否確認の応答がある場合の見守りシステムの動作≫
図4は、安否確認の応答が賃借人からある場合の見守りシステムの動作を示すシーケンス図である。
利用現況情報から異常と判断したが、安否確認に対して応答がある場合には、賃借人からの応答内容にしたがって、関係各社への依頼、すなわち駆けつけ会社(又は居住支援法人)への駆けつけの依頼、管理会社への解約手続きの依頼、債務保証会社への延滞解消相談の依頼がなされる。そして、関係各社からの報告が見守りサーバに対してなされる。
見守りサーバは、それら関係各社からの報告を安否確認履歴部へ格納する。そして、その内容に基づいて、異常判断基準の見直しと、安否確認の賃借人からの返事待ちの期間の見直しとを実施する。見直した基準は、その後の異常判断、安否確認に利用される。
なお、
図4では、見守りサーバの動作の最後に、他のシステムと共有と描かれている。この見守りサーバは、全国に一つのサーバを立てる可能性もあるが、各地域、各地方に一つ、例えば、北海道に一つ、東北に一つ、九州に一つ、四国に一つ、中国に一つ、近畿に一つ、中部地方に一つ、首都圏に一つなどとサーバを立てることができる。その場合に、異常判断の基準、安否確認の返事待ちの期間の見直しを他の地方のシステムと共有することが望ましい場合がある。その場合は、個人情報を捨てて、共有可能な情報にして、他のシステムに送ることとなる。
【0049】
≪複数の見守りサーバを統括する本部サーバを立てる実施例≫
図5は、複数の見守りサーバをたとえば、地域ごとに立てて、それらを統括する本部サーバを立てる実施例を示す。この場合、本部サーバでは、個人情報を含まないビッグデータを収集し、統計処理を行って、適切な判断基準を設定して、各地方のサーバに送ることができる。
【0050】
≪利用現況情報を債務保証会社端末からの賃料延滞情報に基づくものとする実施例≫
利用現況情報を電力消費量、ドアの開閉情報に求めるのみならず、債務保証会社(家賃保証会社)からの賃料延滞情報(家賃滞納情報)に基づいて、本システムを発動させることとする実施例も可能である。
その実施例について、
図6に示す。
図6は、
図2とほぼ同じであるが、唯一異なるのは、債務保証会社端末40から利用現況情報通信装置70内部の家賃滞納情報DB装置43に賃料延滞情報が届き、利用現況情報通信装置70を介して、見守りサーバ10の現況情報受信部110に賃料延滞情報が届くことである。例えば、二か月の延滞情報により、本発明の見守りシステムが稼働させることが可能である。
上述した本システムの詳細は、その場合にも適用可能である。
【0051】
以上、本発明のシステムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における各サーバの構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のシステムは、
図1に示すように、コンピュータのCPU、メモリ、補助記憶装置、ディスプレイ、入力デバイス等を含むハードウェア資源上に構築されたOS、アプリケーションソフトウェア、データベース、ネットワークシステム等によって実現されるものであり、賃借人の保護のための利用停止措置という情報処理が上記のハードウェア資源を用いて具体的に実現されるものであるから、自然法則を利用した技術的思想に該当するものであり、賃貸物件契約等の産業において利用することができるものである。
また、ドアを遠隔制御で開閉制御するシステムへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 見守りサーバ
20、21 賃借人端末
23 スマートロック(ドア施錠遠隔管理装置)
25 スマートメータ(通信機能付き電力量計)
30 管理会社端末
40 債務保証会社端末
50 電力会社サーバ
60 駆けつけ会社端末
65 居住支援法人端末
70 利用現況情報通信装置
110 現況情報受信部
120 異常判断部
130 安否確認部
140 安否確認履歴部
150 利用禁止措置部
152 ドア施錠制御部
154 電力供給停止部
160 関係者通知部
170 駆けつけ要請部
180 解約希望伝達部
190 延滞解消相談部