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特許7141124安息香酸ナトリウムの多形体およびその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】安息香酸ナトリウムの多形体およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C07C 63/08 20060101AFI20220914BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220914BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/4465 20060101ALI20220914BHJP
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   A61K 31/495 20060101ALI20220914BHJP
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   A61K 31/5415 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20220914BHJP
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   A61K 45/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220914BHJP
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   A61K 47/26 20060101ALI20220914BHJP
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   A61K 47/36 20060101ALI20220914BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C07C63/08 CSP
A23L33/10
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/30
A61K9/48
A61K31/12
A61K31/192
A61K31/198
A61K31/4465
A61K31/4468
A61K31/454
A61K31/495
A61K31/496
A61K31/5415
A61K31/5513
A61K31/7024
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A61K47/12
A61K47/14
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A61K47/38
A61P1/00
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P29/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019521650
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2017107436
(87)【国際公開番号】W WO2018077157
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/412,160
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/452,137
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518343246
【氏名又は名称】シニュークス インターナショナル(タイワン)コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ クオチョアン エミル
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】シエ ティエン-ラン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515720(JP,A)
【文献】特表2003-506329(JP,A)
【文献】特表2005-521636(JP,A)
【文献】A Process Analytical Technology Based Investigation of the Polymorphic Transformations during the Antisolvent Crystallization of Sodium Benzoate from IPA/Water Mixture,Crystal Growth and Design,2009年,Vol. 9, No. 9,pp. 3964-3975
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,pp. 17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 63/08
A23L 33/10
A61K 9/14
A61K 9/16
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A61K 31/7024
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A61P 25/24
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A61P 29/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.3、5.9、7.1、8.6、10.1、10.7、12.9、13.8、14.4、17.2、17.7、18.5、21.5、22.0、22.6、23.7、25.1、25.9、26.2、26.9、27.9、28.2、28.8、29.1、29.7、30.2、31.2、33.2、34.9、35.8、36.1、および39.3度の反射角2θに、特徴的なピークを含むX線回折パターンを有する、安息香酸ナトリウムの多形体。
【請求項2】
(i) 請求項1に記載の、安息香酸ナトリウムの多形体の有効量、および
(ii) 薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、添加剤、充填剤、および滑沢剤、またはそれらの混合物
を含む、組成物。
【請求項3】
神経医薬をさらに含む、請求項2に記載の、組成物。
【請求項4】
神経医薬は、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、イロペリドン、ピマバンセリン、ルラシドン(luradisone)、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフロペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、ラモトリギン(lamatrogine)、テトラベナジン、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド(eemoxipride)、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、テトラベナジン、ビラゾドン、レボミルナシプラン、ボルチオキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン(milnacipram)、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン(nortriptiline)、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、セレギリン、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラモトリギン(lamatrogine)、リチウム、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド、スタチン、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミンメシル酸塩、アンフェタミン混合塩、アトモキセチン、クロニジン塩酸塩、グアンファシン塩酸塩、アレコリン、ぺモリン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、メマンチン、フィゾスチグミン、リチウム塩、ニコチン、アレコリン、フペルジンアルファ、セレギリン、リルゾール、サルコシン、ビタミンC、ビタミンE、カルテノイド、タンニン酸、およびイチョウエキス、からなる群から選択される、請求項3に記載の、組成物。
【請求項5】
前記組成物中の、前記安息香酸ナトリウムの多形体、および前記神経医薬の重量比は1:1~100:1である、請求項2~4のいずれか一項に記載の、組成物。
【請求項6】
前記神経医薬は、クロザピン、ドネペジル、サルコシン、またはタンニン酸である、請求項5に記載の、組成物。
【請求項7】
前記組成物は、医薬組成物、栄養補助食品組成物、健康食品、または医療食品である、請求項2~6のいずれか一項に記載の、組成物。
【請求項8】
対象の精神神経疾患の治療、またはリスクの低減のための、請求項1に記載の、安息香酸ナトリウムの多形体を、治療上有効量で含む、組成物。
【請求項9】
前記精神神経疾患は、統合失調症、精神障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害も含まれる)、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮、自殺行為、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、慢性痛、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、および筋萎縮性側索硬化症、からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を製造する方法であって、当該方法は、
(i) 合溶媒中で安息香酸ナトリウムのスラリーを調製すること、ここで該混合溶媒は5:1の体積比のイソプロピルアルコールおよび水からなる
(ii) 前記スラリーを日間撹拌し、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成すること;および
(iii) (ii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を製造する方法であって、当該方法は、
(i) 合溶媒中で安息香酸ナトリウムのスラリーを調製すること、ここで該混合溶媒は5:1の体積比のイソプロピルアルコールおよび水からなる
(ii) スラリーを日間撹拌し、その間に前記安息香酸ナトリウムの第一の多形体が形成すること;
(iii) (ii)で形成された前記安息香酸ナトリウムの第一の多形体を収集すること、
(iv) 2~10%の水の存在下で、6%の水を含むアセトニトリルからなる溶媒中において、前記安息香酸ナトリウムの第一の多形体のスラリーを調製すること;
(v) 前記スラリーを拌し、請求項1に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を形成すること;および
(vi) 請求項1に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、
を含む、方法。
【請求項12】
50~1000mgの請求項1に記載の安息香酸ナトリウム化合物、25~300mgのクロザピン、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、ここで当該医薬組成物は固形の剤形である、医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、非晶形の安息香酸ナトリウムをさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記賦形剤は、ホウ酸、アルギン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、クロスポビドン、およびタンニン酸からなる群から選択される、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
50~1000mgの前記安息香酸ナトリウム化合物、25~300mgのクロザピン、50~500mgのアルギン酸ナトリウム、50~400mgのクエン酸ナトリウム、5~100mgのステアリン酸マグネシウム、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記固形の剤形は、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤、散剤、および顆粒剤からなる群から選択される、請求項1215のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記固形の剤形は、フィルムコーティングをさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
精神神経疾患の治療および/またはリスクの低減のための、請求項1217のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記精神神経疾患は、統合失調症、精神障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮および/または自殺行為、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、慢性痛、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、または筋萎縮性側索硬化症、から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象は、前記精神神経疾患を有する、有すると疑われる、または前記精神神経疾患のリスクがあるヒト患者である、請求項18または19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
全身経路によって前記対象に投与される、請求項1820のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記全身経路は、経腸投与または非経口投与である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記対象は、前記医薬組成物を1日に4回から2か月に1回の頻度で投与される、請求項1822のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記対象は、前記精神神経疾患の治療および/またはリスクの低減のための、一つまたは複数の追加の治療薬と同時に、それより前に、またはそれより後に治療される、請求項1823のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年3月7日に出願された米国特許出願番号15/452,137、および2016年10月24日に出願された米国特許仮出願番号62/412,160の優先権を主張し、それぞれの特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
中枢神経系(CNS)は、脳と脊髄を含む。CNSは、遺伝性、心的外傷、感染、変性、構造的欠陥および/または損傷、腫瘍、血流の途絶、および自己免疫疾患を含む、様々な要因によって引き起こされうる、様々な疾患に対して弱い。CNS疾患の症状は、関与する神経系の領域、および疾患の原因によるだろう。
【0003】
CNS疾患のための効果的治療法の発展は、それら疾患の複雑さ、および血液脳関門を越えて治療薬を送達する効率の良い技術の欠如により、他の治療分野に後れを取っている。したがって、CNS疾患のための新しい治療法アプローチを開発することは、大変興味深い。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供されるのは、安息香酸ナトリウムの新規の多形体、そのようなものを含む組成物およびキット、そのようなものを作る方法、および精神神経疾患(たとえば、統合失調症、精神障害、疼痛、またはアルツハイマー病)を治療および/またはリスクを低減するための安息香酸ナトリウムの多形体の使用である。本明細書で提供されるのは、また、安息香酸ナトリウム化合物およびクロザピンを含む医薬組成物;およびそのような医薬組成物の投与により精神神経疾患を予防、治療、および/またはリスクを低減するための方法でもある。
【0005】
一つの態様では、本開示は、約5.9、30.2、および31.2度の反射角2θに特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンを有する安息香酸ナトリウムの多形体を提供する。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約3.6、7.2、7.5、14.9、15.9、16.6、17.6、18.8、20.4、22.9、23.7、25.1、25.8、26.6、28.1、29.1、29.4、29.7、31.5、32.9、34.2、および35.7度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約3.7、6.8、7.5、11.3、11.6、17.6、22.7、23.5、26.2、27.6、28.3、29.3、32.2、32.9、34.0、および35.7度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約3.7、6.3、6.8、7.5、11.7、17.7、23.6、24.5、26.5、27.0、27.7、28.4、29.0、31.0、32.3、34.2、および35.9度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約4.3、7.1、8.6、10.1、10.7、12.9、13.8、14.4、17.2、17.7、18.5、21.5、22.0、22.6、23.7、25.1、25.9、26.2、26.9、27.9、28.2、28.8、29.1、29.7、33.2、34.9、35.8、36.1、および39.3度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。
【0006】
別の態様では、本開示は、約3.7、5.9、および26.6度の反射角2θに特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンを有する安息香酸ナトリウムの多形体を提供する。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約5.5、6.7、7.4、12.5、14.7、16.5、17.7、22.0、23.6、24.6、25.8、27.6、28.4、30.2、31.1、32.3、34.3、および35.9度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体のX線粉末回折パターンは、約6.6、7.4、9.4、11.2、12.5、22.8、25.1、26.3、28.2、29.5、30.2、31.1、31.2、33.0、および34.0度の反射角2θに特徴的なピークをさらに含んでもよい。
【0007】
別の態様では、本開示は、(i) 本明細書に記載される、一つまたは複数の安息香酸ナトリウムの多形体の有効量、および(ii) 担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、添加剤、充填剤、滑沢剤、またはそれらの混合物を含む、組成物(たとえば、医薬組成物、栄養補助食品組成物、健康食品、または医療食品)を提供する。本明細書に記載される、有効量は、治療上有効量、または予防上有効量であってもよい。
【0008】
さらに別の態様では、本開示は、精神神経疾患(たとえば、統合失調症、精神障害、うつ病、疼痛、アルツハイマー病、または認知症)の治療および/またはリスクを低減する方法であって、治療を必要とする対象への、本明細書に記載の組成物のいずれかの治療上有効量の投与を含む、方法を提供する。
【0009】
標的の精神神経疾患は、統合失調症、精神障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮、自殺行為、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、慢性痛、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、または筋萎縮性側索硬化症、を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書に記載される治療法のいずれにおいても、治療される対象は哺乳類(たとえば、ヒトまたは非ヒト哺乳類)であってもよい。たとえば、対象は、本明細書に記載される標的疾患を有する、または有すると疑われる、ヒト患者であってもよい。
【0011】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される、安息香酸ナトリウムの多形体、またはその組成物、が設置される容器を含むキットに関する。本明細書に記載されるキットは、上記多形体、または組成物の、単回投与量または反復投与量を含んでもよい。上記キットは、本開示の方法において有用でありうる。特定の実施形態では、上記キットは、上記多形体、または組成物の使用のための説明書をさらに含む。
【0012】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載される精神神経疾患の治療、および/または、リスクの低減における使用のための、本明細書に記載される安息香酸ナトリウムの多形体、および組成物を提供する。本開示はまた、本明細書に記載の標的精神神経疾患の治療における使用のための薬剤の製造のための、安息香酸ナトリウムの一つまたは複数の多形体の使用を提供する。
【0013】
本開示はまた、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの新規の多形体を製造する方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、安息香酸ナトリウムの多形体を製造する方法であって、(i) 周囲圧力および温度において、安息香酸ナトリウムの過剰量を単一または混合溶媒に溶解し、飽和溶液を形成すること、(ii) 飽和溶液をろ過し、不溶性成分を除去すること;(iii) 周囲圧力または減圧下で、および約40~110℃の高温で、(ii)で得られた飽和溶液を濃縮し、安息香酸ナトリウムの多形体を形成すること;および(vi) (iii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含む方法である。
【0015】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、安息香酸ナトリウムの多形体を製造する方法であって、(i) 約50~110℃の温度で、安息香酸ナトリウムを単一または混合溶媒に溶解し、溶液を形成すること、(ii) 撹拌しながら溶液を周囲温度まで冷却すること;(iii) 冷却溶液を周囲温度におき、安息香酸ナトリウムの多形体を形成させること;および(iv) (iii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含む方法である。
【0016】
さらに他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、安息香酸ナトリウムの多形体を製造する方法であって、(i) 安息香酸ナトリウムを約90%を超える相対湿度(RH)に1~10日間おき、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成すること;および(ii) (i)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含む方法である。
【0017】
あるいは、本明細書に記載される安息香酸ナトリウムの一つまたは複数の多形体は、(i) 単一または混合溶媒中で安息香酸ナトリウムのスラリーを調製すること;(ii) スラリーを6時間~10日間撹拌し、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成すること;および(iii) (ii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含む方法で製造されてもよい。
【0018】
他の例では、そのような方法は、(i) 安息香酸ナトリウムを単一または混合溶媒に溶解し、溶液を形成すること;(ii) 貧溶媒を(i)で得られた溶液と混合してスラリーを形成し、ここで当該貧溶媒と当該(i)で得られた溶液の体積比は約4:1~15:1であること;(iii) スラリーを、周囲圧力および温度において、2~10日間撹拌し、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成すること;および(iv) (iii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含んでもよい。
【0019】
さらに他の例では、製造方法は、(i) 2~10%の水の存在下で、単一または混合溶媒中において、本明細書に記載の、安息香酸ナトリウムの任意の好適な多形体のスラリーを調製すること;(ii) スラリーを、周囲圧力および温度において、2~10日間撹拌し、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成すること;および(iii) (ii)で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集すること、を含んでもよい。
【0020】
さらに別の態様では、本開示は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム化合物、および25~300mgのクロザピンを固形の剤形、たとえば錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤、散剤、または顆粒剤で含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、固形の剤形は、さらにフィルムコーティングを含んでもよい。
【0021】
上記安息香酸ナトリウム化合物は、非晶形、多形体、または両方であってもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウム化合物は、本明細書に記載される安息香酸ナトリウムの任意の多形体(たとえば、多形体#4)を含む。
【0022】
本明細書に記載される任意の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよく、それはホウ酸、アルギン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、クロスポビドン、タンニン酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム化合物、25~300mgのクロザピン、50~500mgのアルギン酸ナトリウム、50~400mgのクエン酸ナトリウム、5~100mgのステアリン酸マグネシウム、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含んでもよい。
【0023】
別の態様では、本開示は、精神神経疾患を治療、および/またはリスクを低減する方法であって、治療を必要とする対象への、本明細書に記載の、任意の医薬組成物の、治療上有効量の投与を含む方法を提供する。標的の精神神経疾患は、統合失調症、精神障害、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、自殺念慮および/または自殺行為、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、慢性痛、摂食障害、嗜癖障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、または筋萎縮性側索硬化症、を含むが、これらに限定されない。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象は、精神神経疾患を有する、有すると疑われる、または精神神経疾患のリスクがあるヒト患者であってもよい。医薬組成物は、全身経路、たとえば経腸投与、または非経口投与によって対象に投与されてもよい。場合によっては、対象は、医薬組成物を1日に4回から2か月に1回の頻度で投与される。あるいはまたはさらに、対象は、精神神経疾患の治療および/またはリスクの低減のための、一つまたは複数の追加の治療薬と同時に、それより前に、またはそれより後に治療される。
【0025】
また、本開示内には、精神神経疾患の治療における使用のための、本明細書に記載される任意の医薬組成物、および標的疾患の治療のための薬剤を製造するためのそのような使用がある。
【0026】
本開示の一つまたは複数の実施形態の詳細は、本明細書内に示されている。本開示の他の特徴、対象、および利点は、発明の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲から明らかである。
【0027】
定義
特定の官能基および化学用語の定義は以下により詳細に記載されている。化学元素は、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、表紙の内側、に従って特定されており、特定の官能基は一般にそこに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般原理も、特定の官能基、および反応性と同様に、トーマス・ソレル、Organic Chemistry、University Science Books、Sausalito、1999年;スミスとマーチ、March's Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons、Inc.、ニューヨーク、2001年;ラロック、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、Inc;およびカルザーズ、Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3版、Cambridge University Press、Cambridge、1987年、に記載されている。本開示は、本明細書に記載される官能基の例示的な列挙による、いかなる方法によっても、制限されることを意図しない。
【0028】
「安息香酸ナトリウム」は、この式の化合物を指す。
【0029】
【化1】
【0030】
用語「クロザピン」は、3-クロロ-6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-5H-ベンゾ[b] [1,4]ベンゾジアゼピンのIAPUC名を有する化合物を指す。
【0031】
用語「市販の安息香酸ナトリウム」は、商業的供給源から入手できる安息香酸ナトリウムを指し、これは非晶形であってもよく、既知の単一の多形体を含んでもよく、非晶形および/または一つもしくは複数の多形体の混合物を含んでもよい。
【0032】
用語「薬学的に許容される塩」は、理にかなった医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織に接触して使用するのに好適であり、そして合理的な利益/リスク比と釣り合っている。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。たとえば、Bergeらは、本明細書に引用によって組み込まれるJ. Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において、薬学的に許容される塩を詳細に記載している。
【0033】
本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩は、好適な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容される、毒性のない酸付加塩の例は、無機酸、たとえば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または、有機酸、たとえば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸と、または、当技術分野において公知の他の方法、たとえばイオン交換を用いることで、形成された、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチナート、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、等が含まれる。好適な塩基から誘導された塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN+(C1-4 アルキル)4 -塩を含む。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、等を含む。さらに薬学的に許容される塩は、適切な場合、毒性のないアンモニウム、四級アンモニウム、および対イオン、たとえばハロゲン化合物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩を用いて形成されたアミノカチオン、を含む。
【0034】
用語「溶媒和物」は、通常、加溶媒分解反応によって、溶媒と会合している化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含んでもよい。従来の溶媒は、水、メタノール、エタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、等を含む。本明細書に記載される化合物は、たとえば結晶形で製造されてもよく、溶媒和されてもよい。好適な溶媒和物は、薬学的に許容される塩を含み、化学量論的溶媒和物、および非化学量論的溶媒和物の両方を、さらに含んでもよい。ある場合には、たとえば、一つまたは複数の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子内に包含される場合、溶媒和物は単離することができうる。「溶媒和物」は、溶液相、および単離できる溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物は、水和物、エタノール和物、およびメタノール和物を含む。
【0035】
用語「結晶(crystalline)」、または「結晶形(crystalline form)」は、実質的に三次元秩序を示す固形形態(solid form)を指す。特定の実施形態では、固形の結晶形(a crystalline form of a solid)は、実質的に非晶質ではない固形形態(solid form)である。特定の実施形態では、結晶形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、一つまたは複数の明瞭なピークを含む。
【0036】
用語「非晶質(amorphous)」、または「非晶形(amorphous form)」は、実質的に三次元秩序を欠く固体の形を指す。特定の実施形態では、固形の非晶形(an amorphous form of a solid)は、実質的に結晶ではない固体形態(solid form)である。特定の実施形態では、非晶形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、CuKα線を使用して、たとえば、20~70度の間の(両端を含む)2θにおいて、広い散乱するバンドを含む。特定の実施形態では、非晶形のXRPDのパターンは、結晶構造に起因する、一つまたは複数のピークをさらに含む。特定の実施形態では、20~70度の間の(両端を含む)の2θで観察される結晶構造に起因する一つまたは複数のピークのいずれか一つの最大強度は、広い散乱するバンドの最大強度の300倍未満、100倍未満、30倍未満、10倍未満、または3倍未満である。特定の実施形態では、非晶形のXRPDパターンは、結晶構造に起因するピークを含まない。
【0037】
用語「多形体(polymorph)」または、「多形体(polymorphic form)」は、化合物の結晶形(または、それらの塩、水和物、もしくは溶媒和物)を指す。すべての多形体は、同一の元素組成を有する。異なる結晶形は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学特性および電気特性、安定性、ならびに溶解度を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および他の要因が、一つの結晶形に大半を占めさせうる。異なる条件下での結晶化により、一つの化合物の種々の多形体を製造することができる。
【0038】
用語「阻害」、「阻害すること」、「阻害する」、または「阻害剤」は、媒体と比較して細胞内における特定の生物学的プロセスの活性を減らし、遅らせ、中止させ、または防止させる、多形体の能力を指す。
【0039】
多形体、医薬組成物、方法、用途、またはキットが、「選択的に」、「特異的に」、または「競合的に」第一のタンパク質に結合すると言われる場合、多形体は、第二のタンパク質、または第一のタンパク質と異なるタンパク質に結合する場合より、第一のタンパク質に、高い結合親和性(たとえば、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約30倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1,000倍、または少なくとも約10,000倍)で結合する。多形体が、「選択的に」、「特異的に」、または「競合的に」第一のタンパク質の活性を調節している(たとえば、増加する、または阻害する)と言われる場合、多形体は、第一のタンパク質と異なる少なくとも一つのタンパク質の活性よりも、第一のタンパク質の活性をより大きな程度(たとえば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも30倍、少なくとも100倍、少なくとも1,000倍、少なくとも10,000倍)で制御する。
【0040】
用語「異常な活性」は、正常な活性から逸脱している活動を指す。用語「活性の増加」は、正常な活性より高い活性を指す。
【0041】
用語「組成物」および「製剤」は、同義で用いられる。
【0042】
用語「溶媒」および「貧溶媒」は、従来の、または非従来の溶媒のいずれかを指し、水、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、ジオキサン、エタノール、エチルアセテート、イソブタノール、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチル-1-ブタノール、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびトルエンを含むが、これらに限定されない。用語「溶媒」は、溶液を形成するために、溶質(他の物質(たとえば、固体))を溶かすために追加される物質(たとえば、液体)を指す。用語「貧溶媒」は、溶質が、より溶けにくい溶媒を指す。
【0043】
投与が予期される「対象」は、ヒト(すなわち、あらゆる年齢層の男性または女性、たとえば、小児対象(たとえば、幼児、子供、または青年)または成人対象(若年成人、中年成人、または老人))、または非ヒト動物を指す。「患者」は、疾患の治療の必要がある、ヒト対象を指す。たとえば、対象は、本明細書に記載される標的疾患を有する、有すると疑われる、または標的疾患のリスクがある、ヒト患者でもよい。
【0044】
用語「投与する」、「投与すること、または「投与」は、対象に、本明細書に記載される安息香酸ナトリウムの多形体、またはその組成物を、移植すること、吸収すること、摂取すること、注入すること、吸入すること、あるいは導入することを指す。
【0045】
用語「治療」、「治療する」、および「治療すること」は、本明細書に記載される疾患の進行を、食い止めること、軽減すること、発病を遅らせること、または阻害すること、を指す。いくつかの実施形態では、治療は、疾患の一つまたは複数の徴候または症状が発現したか、または観察された後に、行われる。他の実施形態では、治療は、疾患の徴候または症状がない状態で行われてもよい。たとえば、治療は、疾患の発症を遅らせ、または予防するために、症状(たとえば、過去の症状の観点、および/または、病原体への暴露の観点から)の発現に先立ち、感染しやすい被検者に投与されてもよい。治療はまた、症状が解消された後も、たとえば、再発を遅らせ、または予防するために、継続されてもよい。
【0046】
用語「症状」、「疾患」、および「障害」は、同義で用いられる。
【0047】
本明細書に記載の任意の活性成分(たとえば、安息香酸ナトリウム化合物、および/または、クロザピンのいずれか)の「有効量」は、所望の生物学的反応を引き出す、すなわち、疾患を治療する、のに十分な量を指す。当業者には理解されるように、本明細書に記載の任意の活性成分の有効量は、所望の生物学的評価項目(biological endpoint)、多形体の薬物動態、治療される疾患、投与方法、ならびに年齢および被検者の健康状態等の要因によって変わりうる。特定の実施形態では、有効量は、治療上有効な量である。特定の実施形態では、有効量は、予防上有効な量である。特定の実施形態では、有効量は、単回投与量中の、本明細書に記載の任意の活性成分の量である。特定の実施形態では、有効量は、反復投与量中の、本明細書に記載の任意の活性成分の量の総量である。
【0048】
本明細書に記載の任意の活性成分の「治療上有効量」は、疾患の治療において治療効果を提供するか、または疾患に関連する一つ以上の症状を遅らせるか、または最小限に抑えるのに十分な量である。任意の活性成分の治療上有効な量は、単独または他の治療法と組み合わせて、疾患の治療において治療効果をもたらす、治療薬の量を意味する。用語「治療上有効量」は、治療全体を改善し、疾患の症状、徴候、または原因を軽減または回避し、および/または、別の治療薬の治療効果を増強する量を包含しうる。
【0049】
本明細書に記載の任意の活性成分の「予防上有効量」は、疾患、またはその疾患に関連する一または複数の症状を予防する、またはその再発を予防するのに十分な量である。任意の活性成分の予防上有効な量は、単独または他の治療法と組み合わせて、疾患の予防において予防効果をもたらす、治療薬の量を意味する。用語「予防上有効量」は、予防全体を改善し、または、別の予防薬の予防効果を増強する量を包含しうる。
【0050】
本明細書において同義で用いられる用語「約(about)」または「約(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値に対する許容誤差範囲内を意味し、それは値がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界、に部分的に依存する。たとえば、「約(about)」または「約(approximately)」は、所与の値の±10%未満、好ましくは±5%未満、より好ましくは±1%未満、より好ましくは±0.5%未満を意味する。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、用語「約(about)」は暗黙的であり、そしてこの文脈においては特定の値に対する許容誤差範囲内を意味する。
【0051】
用語「神経疾患」は、中枢神経系(脳、脳幹、脊髄、および小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)、および自律神経系(その一部は中枢神経系と末梢神経系の両方に位置する)に関わる疾患を含む、任意の神経系の疾患を指す。神経変性疾患は、神経細胞の喪失を特徴とする神経疾患の一種を指し、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、タウオパチー(前頭側頭型認知症を含む)、多系統萎縮症、およびハンチントン病を含むが、これらに限定されない。神経疾患の例は、頭痛、人事不省および昏睡、認知症、発作、睡眠障害、心的外傷、感染症、腫瘍、神経眼症、運動障害、脱髄疾患、脊髄障害、ならびに、末梢神経、筋肉および神経筋接合部の障害を含むが、これらに限定されない。薬物依存および精神障害(mental illness)は、双極性障害、うつ病、および統合失調症を含むがこれに限定されないが、中枢神経系疾患の定義にもまた含まれる。神経疾患のさらなる例は、後天性てんかん性失語症;急性散在性脳脊髄炎;副腎白質ジストロフィー;脳梁欠損症;失認;アイカルディ症候群;アレキサンダー病;アルパーズ症候群;交代性片まひ;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;無脳症;アンジェルマン症候群;血管腫症;酸素欠乏症;失語症;失行症;くも膜嚢胞;くも膜炎;アーノルド・キアリ奇形;動静脈奇形;アスペルガー障害;毛細血管拡張性運動失調症;注意欠陥多動性障害;自閉症;自律神経機能障害;背部痛;バッテン病;ベーチェット病;ベルまひ;良性本態性眼瞼けいれん;良性限局性筋萎縮症;良性頭蓋内圧亢進症;ビンスワンガー病;眼瞼けいれん;ブロッホ・ズルツベルガー症候群;上腕神経叢損傷;脳膿瘍;脳損傷;脳腫瘍(多形性膠芽腫を含む);脊髄腫瘍;ブラウン・セカール症候群;カナバン病;手根管症候群(CTS);灼熱痛;中枢痛症候群;橋中央ミエリン溶解;頭部障害;脳動脈瘤;脳動脈硬化症;脳萎縮症;脳性巨人症;脳性まひ;シャルコー・マリー・ツース病;化学療法起因性の神経障害および神経障害痛;キアリ奇形;舞踏病;慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP);慢性痛;慢性局所疼痛症候群;コフィン・ローリー症候群;昏睡(遷延性植物状態を含む);先天性顔面まひ;大脳皮質基底核変性症;頭部動脈炎;頭蓋骨癒合症;クロイツフェルト・ヤコブ病;蓄積外傷疾患;クッシング症候群;巨大細胞性封入体症(CIBD);サイトメガロウイルス感染症;眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調;ダンディー・ウォーカー症候群;ドーソン病;ドモルシア症候群;Dejerine-Klumpke型まひ;認知症;皮膚筋炎;糖尿病性神経障害;広汎性硬化症;自律神経障害;書字障害;失読症;ジストニア;早期乳児てんかん性脳症;エンプティセラ症候群;脳炎;脳ヘルニア;脳三叉神経領域血管腫症;てんかん;エルブまひ;本態性振戦;ファブリー病;ファール症候群;失神;家族性痙性まひ;熱性発作;フィッシャー症候群;フリードライヒ失調症;前頭側頭型認知症および他の「タウオパチー」;ゴーシェ病;巨細胞性動脈炎;巨大細胞封入体病;球様細胞白質萎縮症;ギラン・バレー症候群;HTLV-1関連脊髄症;ハレルフォルデン・スパッツ病;頭部外傷;頭痛;片側顔面けいれん;遺伝性痙性対まひ;遺伝性多発神経炎性失調;耳帯状疱疹;帯状疱疹;平山病;HIV関連の認知症とニューロパチー(AIDSの神経学的症状も参考にされたい);全前脳症;ハンチントン病および他のポリグルタミンリピート病;水無脳症;水頭症;副腎皮質機能亢進;低酸素症;免疫介在性脳脊髄炎;封入体筋炎;色素失調症;小児フィタン酸蓄積症;小児レフサム病;乳児けいれん;炎症性筋疾患;頭蓋内嚢胞;頭蓋内圧亢進;ジュベール症候群;カーンズ・セイヤー症候群;ケネディ病;キンズボーン症候群;クリッペル・ファイル症候群;クラッベ病;クーゲルバーグ・ウェランダー病;クールー;ラフォーラ病;ランバート・イートン筋無力症候群;ランドウ・クレフナー症候群;外側髄症候群(ワレンベルグ症候群);学習障害;リー病;レノックス・ガストー症候群;レッシュ・ナイハン症候群;大脳白質萎縮症;レビー小体認知症;脳回欠損;閉じ込め症候群;ルー・ゲーリック病(運動ニューロン疾患、または筋萎縮性側索硬化症の別名でも知られている);腰部椎間板症;ライム病-神経学的後遺症;マシャド・ジョセフ病;大脳髄症;巨大脳髄症;メルカーソン・ローゼンタール症候群;メニエール病;髄膜炎;メンケス病;異染性白質ジストロフィー;小頭症;片頭痛;ミラーフィッシャー症候群;軽度の脳卒中;ミトコンドリア性筋障害;メビウス症候群;平山病;運動ニューロン疾患;モヤモヤ病;ムコ多糖症;多発梗塞性認知症;多巣性運動ニューロパチー;多発性硬化症および他の脱髄障害;立ちくらみを伴う多系統萎縮症;筋ジストロフィー;重症筋無力症;髄鞘破壊性びまん性硬化症;小児ミオクロニー脳症;ミオクローヌス;筋疾患;先天性ミオトニア;ナルコレプシー;神経線維腫症;神経弛緩薬性悪性症候群;AIDSの神経症状;ループスの神経学的後遺症;神経性筋強直症;神経セロイドリポフスチン症;神経細胞移動障害;ニーマン・ピック病;オサリバン・マクラウド症候群;後頭神経痛;潜在性脊椎癒合不全症;大田原症候群;オリーブ橋小脳萎縮症;オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群;視神経炎;起立性低血圧;使いすぎ症候群;知覚障害;パーキンソン病;先天性パラミオトニア;腫瘍随伴疾患;発作;パリー・ロンベルグ症候群;ペリツェウス・メルツバッハー病;周期性四肢まひ;末梢神経障害;疼痛を伴う神経障害および神経因性疼痛;遷延性植物状態;広汎性発達障害;光くしゃみ反射;フィタン酸蓄積症;ピック病;圧迫神経;下垂体部腫瘍;多発筋炎;孔脳;ポリオ後症候群;ヘルペス後神経痛(PHN);感染後脳脊髄炎;立ちくらみ;プラダーウィリ症候群;原発性側索硬化;プリオン病;進行性;顔面半側萎縮;進行性多巣性白質脳症;進行性硬化性ポリジストロフィー;進行性核上まひ;偽脳腫瘍;ラムゼイ・ハント症候群(I型およびII型);ラスムッセン脳炎;反射性交感神経性ジストロフィー症候群;レフサム病;反復性運動障害;反復性ストレス障害;むずむず脚症候群;レトロウイルス関連脊髄症;レット症候群;ライ症候群;舞踏病;サンドホフ病;シルダー病;裂脳症;中隔視神経形成異常症;揺さぶられっ子症候群;帯状疱疹;シャイ・ドレーガー症候群;シェーグレン症候群;睡眠時無呼吸;ソトス症候群;痙性;脊椎披裂;脊髄損傷;脊髄腫瘍;脊髄性筋萎縮症;スティッフパーソン症候群;脳卒中;スタージ・ウェーバー症候群;亜急性硬化性全脳炎;くも膜下出血;皮質下動脈硬化性脳症;シデナム舞踏病;気絶;脊髄空洞症;遅発性ジスキネジー;テイ・サックス病;側頭動脈炎;脊髄係留症候群;トムゼン病;胸郭出口症候群;疼痛チック;トッドまひ;トゥレット・シンドローム;一過性脳虚血発作;感染性海綿状脳症;横断性脊髄炎;外傷性脳損傷;振戦;三叉神経痛;熱帯性痙性不全対まひ;結節硬化;血管性認知症(多発梗塞性認知症);側頭動脈炎を含む血管炎;フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL);ワレンベルグ症候群;ウェルドニッヒ・ホフマン病;ウェスト症候群;むち打ち症;ウィリアムズ症候群;ウィルソン病;およびツェルヴェーガー症候群、を含む。
【0052】
用語「精神疾患(psychiatric disorder)」は、精神障害(mental disorders)を指し、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-Fourth Edition and Fifth Edition(DSM-IV、DSM-V)、米国精神医学会、ワシントンDC(1994年、 2013年)において列挙されている疾患および障害を含む。精神疾患は、不安障害(たとえば、急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、社会恐怖症、および特定恐怖症)、小児期障害(たとえば、注意欠陥多動性障害、行為障害、および反抗的行為障害)、摂食障害(たとえば、神経性無食欲症、および神経性多食症)、気分障害(たとえば、うつ病、双極性I型障害および双極性II型障害、気分循環性障害、気分変調性障害、および大うつ病性障害)、人格障害(たとえば、反社会的人格障害、回避性人格障害、境界性パーソナリティー障害、依存性人格障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害、強迫性人格障害、妄想性人格障害、分裂病質人格障害、および統合失調症性人格障害)、精神障害(たとえば、短期精神障害、妄想性障害、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、統合失調症、および共有精神障害)、物質関連障害(たとえば、アルコール依存症または中毒、アンフェタミン依存症または中毒、大麻依存症または中毒、コカイン依存症または中毒、幻覚剤依存症または中毒、吸入剤依存または中毒、ニコチン依存または中毒、オピオイド依存または中毒、フェンシクリジン依存または中毒、および鎮痛剤依存または中毒)、適応障害、自閉症、アスペルガー障害、せん妄、認知症、多発梗塞性認知症、学習記憶障害(たとえば、記憶喪失、および加齢による記憶喪失)、チック障害、およびトゥレット障害を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「人格障害」は、永続的な不適応な行動パターン、認識、および内的経験によって特徴づけられ、多くの文脈において示され、そして個人の文化によって受け入れられるものから著しく逸脱する精神疾患を指す。これらのパターンは早くに発症し、柔軟性がなく、そして重大な苦痛または身体障害と関係している。たとえば、人格障害は、妄想性人格障害、シゾイドパーソナリティー障害、統合失調症型障害、反社会性人格障害、境界性障害、統合失調型人格障害、境界性パーソナリティー障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、および強迫性人格障害を含んでもよく、これらに限定されない。
【0054】
神経疾患または精神障害または中枢神経系障害(CNS障害)のいずれかを含む、用語「精神神経疾患」は、器質性中枢神経系障害によって引き起こされる、精神科的徴候または症候群のいずれかに関与する障害を意味する。精神神経徴候の主な特徴は、様々な精神科的症状の発生、認識機能障害、神経症状、または初期の脳発達症状の可能性を含む。
【0055】
用語「健康食品(health food)」、または「健康食品(health food product)」は、基本的な行動機能、多動、気分、不安、うつ、知覚、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶および/または認知機能、体重の向上のための、または本明細書に記載の任意の標的疾患の治療を容易にするための、ヒトおよび動物に栄養を与えるために使用される、任意の種類の液体および固体/半固体材料を指す。用語「栄養補助食品組成物」は、食物源由来の構成成分を含み、食品に見出される基本的な栄養価に加えてさらなる健康効果をもたらす組成物を指す。
【0056】
用語「医療食品」は、本明細書に記載されているものなど、標的疾患の特定の食事管理のために医師の監督下で通常使用される食品を含む、経腸的に消費または投与されるように処方された食品を指す。「医療食品」組成物は、治療の必要がある患者(たとえば、病気に苦しむ、または、特定の食事療法を通して病気や状態を緩和するための主要な活性剤としての製品の使用を必要とするヒト患者)のために、特別に処方および加工された(自然状態で用いられる、天然由来の食品とは対照的な)、組成物のことを指してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】3.6、5.9、7.2、7.5、14.9、15.9、16.6、17.6、18.8、20.4、22.9、23.7、25.1、25.8、26.6、28.1、29.1、29.4、29.7、30.2、31.2、31.5、32.9、34.2、および35.7度にピークを有する、実施例1の安息香酸ナトリウム多形体#1のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図2】実施例1の安息香酸ナトリウム多形体#1の熱重量分析(TGA)を示す。
図3】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例1の安息香酸ナトリウム多形体#1のプロファイルを示す。
図4】3.7、5.9、6.8、7.5、11.3、11.6、17.6、22.7、23.5、26.2、27.6、28.3、29.3、32.2、32.9、34.0、および35.7度にピークを有する、実施例2の安息香酸ナトリウム多形体#2のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図5】実施例2の安息香酸ナトリウム多形体#2の熱重量分析(TGA)を示す。
図6】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例2の安息香酸ナトリウム多形体#2のプロファイルを示す。
図7】3.7、5.9、6.3、6.8、7.5、11.7、17.7、23.6、24.5、26.5、27.0、27.7、28.4、29.0、30.2、31.0、31.2、32.3、34.2、および35.9度にピークを有する、実施例3の安息香酸ナトリウム多形体#3のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図8】実施例3の安息香酸ナトリウム多形体#3の熱重量分析(TGA)を示す。
図9】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例3の安息香酸ナトリウム多形体#3のプロファイルを示す。
図10】4.3、5.9、7.1、8.6、10.1、10.7、12.9、13.8、14.4、17.2、17.7、18.5、21.5、22.0、22.6、23.7、25.1、25.9、26.2、26.9、27.9、28.2、28.8、29.1、29.7、30.2、31.2、33.2、34.9、35.8、36.1、および39.3度にピークを有する、実施例4の安息香酸ナトリウム多形体#4のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図11】実施例4の安息香酸ナトリウム多形体#4の熱重量分析(TGA)を示す。
図12】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例4の安息香酸ナトリウム多形体#4のプロファイルを示す。
図13】3.7、5.5、5.9、6.7、7.4、12.5、14.7、16.5、17.7、22.0、23.6、24.6、25.8、26.6、27.6、28.4、30.2、31.1、32.3、34.3、および35.9度にピークを有する、実施例5の安息香酸ナトリウム多形体#5のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図14】実施例5の安息香酸ナトリウム多形体#5の熱重量分析(TGA)を示す。
図15】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例5の安息香酸ナトリウム多形体#5の融点を示す。
図16】3.7、5.9、6.6、7.4、9.4、11.2、12.5、22.8、25.1、26.3、28.2、29.5、30.2、31.1、31.2、33.0、および34.0度にピークを有する、実施例6の安息香酸ナトリウム多形体#6のX線粉末回折パターン(XRPD)を示す。
図17】実施例6の安息香酸ナトリウム多形体#6の熱重量分析(TGA)を示す。
図18】示差走査熱量測定(DSC)によって決定された実施例6の安息香酸ナトリウム多形体#6の融点を示す。
図19】5日間の相対湿度90%を超える高湿度条件下における、Merck、Formosa Laboratoriesからの安息香酸ナトリウム(NaBen)、および新規の多形体#4のX線粉末回折(XRPD)を示す。Merck、およびFormosa Laboratoriesからの安息香酸ナトリウムのXRPDは、高湿度条件下におけるXRPDの変化を示すが、実施例7の安息香酸ナトリウム多形体#4のXRPDは、XRPDにおけるそのような変化を示さない。
図20】5日間の高湿度条件(相対湿度90%を超える)下における、クロザピン(300mg)と組み合わせた、Merckからの安息香酸ナトリウム(NaBen)のX線粉末回折(XRPD)の変化を示す。
図21】5日間の高湿度条件(相対湿度90%を超える)下における、クロザピン(300mg)と組み合わせた、安息香酸ナトリウム(NaBen)の新規の多形体#4のX線粉末回折(XRPD)の変化がないことを示す。
図22】新規の多形体#4、Merckからの安息香酸ナトリウム(NaBen)、およびSigma Aldrichからの安息香酸ナトリウム(NaBen)のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図23】8日間の高湿度条件(相対湿度90%を超える、室温)下における、クロザピン(100mg)と組み合わせた、Merckからの安息香酸ナトリウム(NaBen)のX線粉末回折(XRPD)を示す。
図24】8日間の高湿度条件(相対湿度90%を超える、室温)下における、クロザピン(100mg)と組み合わせた、安息香酸ナトリウムの新規の多形体#4のX線粉末回折(XRPD)の変化がないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
発明の詳細な説明
本開示は、安息香酸ナトリウムの新規の多形体を提供する。多形体は、非晶質および既知の多形体よりも安定であり、そして、対象の様々な疾患および障害(精神神経疾患を含む)の治療および/またはリスクの低減において有用である。したがって、また、本明細書で提供されるのは、任意の標的疾患の治療および/またはリスクの低減のための、多形体、組成物、キットを製造する方法、ならびに本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を使用する方法でもある。
【0059】
さらに、本開示は、安息香酸ナトリウムの有効量、およびクロザピンの有効量を含む、医薬組成物を開示する。本発明の結晶性安息香酸ナトリウム(すなわち、安息香酸ナトリウムの多形体)は、非晶質、および他の既知の多形体、またはそれらの組み合わせよりも安定である。さらに、本明細書に記載の医薬組成物に含まれる賦形剤は、安息香酸ナトリウム化合物およびクロザピンの組み合わせの安定性を向上する。本明細書に記載の医薬組成物は、対象の様々な疾患および障害(精神神経疾患を含む)の予防、治療および/またはリスクの低減において有用である。したがって、また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の医薬組成物の投与により、本明細書に記載の任意の標的疾患の予防、治療および/またはリスクの低減の方法でもある。
【0060】
安息香酸ナトリウムの新規の多形体
本開示の一つの態様は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体に関する。これらの多形体は、対象の精神神経疾患の治療および/またはリスクの低減のために有用である。
【0061】
一つの態様では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約5.9、30.2、および31.2度の反射角2θに特徴的なピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約3.6、7.2、7.5、14.9、15.9、16.6、17.6、18.8、20.4、22.9、23.7、25.1、25.8、26.6、28.1、29.1、29.4、29.7、31.5、32.9、34.2、および35.7度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図1に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図2に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図3に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図1に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図2に示されるようなTGAパターン、および実質的に図3に示されるようなDSCパターンを有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約3.7、6.8、7.5、11.3、11.6、17.6、22.7、23.5、26.2、27.6、28.3、29.3、32.2、32.9、34.0、および35.7度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図4に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図5に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図6に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図4に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図5に示されるようなTGAパターン、および実質的に図6に示されるようなDSCパターンを有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約3.7、6.3、6.8、7.5、11.7、17.7、23.6、24.5、26.5、27.0、27.7、28.4、29.0、30.2、31.0、31.2、32.3、34.2、および35.9度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図7に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図8に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図9に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図7に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図8に示されるようなTGAパターン、および実質的に図9に示されるようなDSCパターンを有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約4.3、7.1、8.6、10.1、10.7、12.9、13.8、14.4、17.2、17.7、18.5、21.5、22.0、22.6、23.7、25.1、25.9、26.2、26.9、27.9、28.2、28.8、29.1、29.7、33.2、34.9、35.8、36.1、および39.3度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図10に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図11に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図12に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図10に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図11に示されるようなTGAパターン、および実質的に図12に示されるようなDSCパターンを有する。
【0065】
別の態様では、約3.7、5.9、および26.6度の反射角2θにおいて、特徴的なピークを含むX線回折パターンを有する、安息香酸ナトリウムの多形体。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約5.5、6.7、7.4、12.5、14.7、16.5、17.7、22.0、23.6、24.6、25.8、27.6、28.4、30.2、31.1、32.3、34.3、および35.9度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図13に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図14に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図15に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図13に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図14に示されるようなTGAパターン、および実質的に図15に示されるようなDSCパターンを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、約6.6、7.4、9.4、11.2、12.5、22.8、25.1、26.3、28.2、29.5、30.2、31.1、31.2、33.0、および34.0度に特徴的なピークをさらに含む、反射角2θにおけるX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図16に示されるようなX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図17に示されるようなTGAパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図18に示されるようなDSCパターンを有する。いくつかの実施形態では、多形体は、実質的に図16に示されるようなX線粉末回折パターン、実質的に図17に示されるようなTGAパターン、および実質的に図18に示されるようなDSCパターンを有する。
【0067】
本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの任意の多形体は、約95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上の化学的純度を有し、それは従来の方法、たとえば、HPLCまたは1H核磁気共鳴(1H-NMR)分光学で決定されることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体は、他の多形体または非晶形(XRPDまたはDSCで測定)の安息香酸ナトリウムを、10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、そして最も好ましくは0.1%未満、含有する。
【0068】
組成物
本開示は、有効量の安息香酸ナトリウム化合物、および有効量のクロザピンを含む、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は50~1000mgの安息香酸ナトリウム化合物(たとえば、100~800mg、200~600mg、または300~500mg)、および25~300mgのクロザピン(たとえば、50~250mg、100~200mg、または150~300mg)を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、500mgの安息香酸ナトリウム化合物、および200~300mgのクロザピンを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウム化合物(たとえば、安息香酸ナトリウム)は、非晶形、または一つまたは複数の多形体でありうる。いくつかの例では、安息香酸ナトリウムは、非晶形、および一つまたは複数の多形体の混合物であってもよい。一つの例では、安息香酸ナトリウム化合物は、市販の安息香酸ナトリウムであってもよく、これは非晶質、および安息香酸ナトリウムの様々な多形体(たとえば、Merck、Formosa、Sigma Aldrich等から購入)、ならびに本発明の安息香酸ナトリウムの精製多形体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、安息香酸ナトリウムの化合物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を含む。
【0070】
本開示はまた、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、添加剤、充填剤、および滑沢剤、またはそれらの混合物を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される希釈剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される結合剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される添加剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される充填剤を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、および薬学的に許容される滑沢剤を含む。
【0071】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム化合物、25~300mgのクロザピン、および一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、500mgの安息香酸ナトリウム化合物、200~300mgのクロザピン、および一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0072】
特定の実施形態では、安息香酸ナトリウム化合物とクロザピンの比率は、重量で、約1:10~約1000:1、約1:10~約900:1、約1:10~約800:1、約1:10~約600:1、約1:10~約500:1、約1:10~約400:1、約1:10~約200:1、約1:10~約100:1、約1:10~約75:1、約1:10~約50:1、約1:10~約25:1、約1:10~約10:1、約1:10~約5:1、約1:10~約1:2、約1:10~約1:5、または約1:10~約1:8である。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウム化合物とクロザピンの比率は、重量で、約20:1、約5:1、約2.5:1、または約1.67:1である。
【0073】
特定の実施形態では、本明細書に記載の安息香酸ナトリウム化合物は、医薬組成物中に有効量で提供される。特定の実施形態では、クロザピンは、医薬組成物中に有効量で提供される。特定の実施形態では、有効量は、治療上有効量(たとえば、それを必要とする対象における神経精神障害の治療および/またはそのリスクの低減に有効な量)である。特定の実施形態では、有効量は、予防上有効量(たとえば、それを必要とする対象における神経精神障害の予防に有効な量)である。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム化合物(たとえば、100~800mg、200~600mg、または300~500mg)、25~300mgのクロザピン(たとえば、50~200mg、100~150mg、または150~300mg)、50~500mgのアルギン酸ナトリウム(たとえば、100~400mg、200~300mg、または250~400mg)、50~400mgのクエン酸ナトリウム(たとえば、100~300mg、150~250mg、または200~300mg)、5~100mgのステアリン酸マグネシウム(たとえば、10~80mg、25~70mg、40~60mg、または50~100mg)、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウム(たとえば、100~150mg)を含む。特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、125~500mgの安息香酸ナトリウム、25~300mgのクロザピン、50~500mgのアルギン酸ナトリウム、50~400mgのクエン酸ナトリウム、5~100mgのステアリン酸マグネシウム、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム、25~300mgのクロザピン、50~200mgのアルギン酸ナトリウム、50~400mgのクエン酸ナトリウム、5~100mgのステアリン酸マグネシウム、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、125~500mgの安息香酸ナトリウム、25~300mgのクロザピン、50~200mgのアルギン酸ナトリウム、50~400mgのクエン酸ナトリウム、5~100mgのステアリン酸マグネシウム、および80~200mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0076】
特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、50~1000mgの安息香酸ナトリウム、25~300mgのクロザピン、50~70mgのアルギン酸ナトリウム、50~70mgのクエン酸ナトリウム、5~15mgのステアリン酸マグネシウム、および80~100mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、125~500mgの安息香酸ナトリウム、25~300mgのクロザピン、50~70mgのアルギン酸ナトリウム、50~70mgのクエン酸ナトリウム、5~15mgのステアリン酸マグネシウム、および80~100mgのデンプングリコール酸ナトリウムを含む。
【0077】
特定の実施形態では、組成物は神経医薬をさらに含む。特定の実施形態では、神経医薬は、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフロペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、ラモトリギン(lamotrigine)、テトラベナジン、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド(eemoxipride)、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、テトラベナジン、ビラゾドン、レボミルナシプラン、およびボルチオキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン(milnacipram)、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン(nortriptiline)、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、ネファゾドン、ラモトリギン(lamatrogine)、リチウム、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド、フェネルジン、セレギリン、スタチン、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミンメシル酸塩、アンフェタミン混合塩、アトモキセチン、クロニジン塩酸塩、グアンファシン塩酸塩、アレコリン、ぺモリン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、メマンチン、フィゾスチグミン、リチウム塩、ニコチン、アレコリン、フペルジンアルファ、リルゾール、サルコシン、ビタミンC、ビタミンE、カルテノイド、タンニン酸、およびイチョウエキスからなる群から選択される。本明細書に記載の組成物は、精神神経疾患の治療および/またはそのリスクの低減において有用である。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体と神経医薬の比率は、重量で、約1:10~約1000:1、約1:10~約900:1、約1:10~約800:1、約1:10~約600:1、約1:10~約500:1、約1:10~約400:1、約1:10~約200:1、約1:10~約100:1、約1:10~約75:1、約1:10~約50:1、約1:10~約25:1、約1:10~約10:1、約1:10~約5:1、約1:10~約1:2、約1:10~約1:5、または約1:10~約1:8である。
【0078】
特定の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。特定の実施形態では、組成物は、栄養補助食品組成物である。特定の実施形態では、組成物は、健康食品である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、健康食品(health food)、または健康食品(health food product)であってもよく、これらは、基本的な行動機能、多動、気分、不安、うつ、知覚、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶および/または認知機能の向上のための、または本明細書に記載の任意の標的疾患(たとえば、本明細書に記載のものを含む、精神神経疾患)の治療を容易にするための、ヒトおよび動物に栄養を与えるために使用される、任意の種類の液体および固体/半固体材料であってもよい。健康食品(health food product)は、食品製品(たとえば、茶系飲料、ジュース、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブ抽出物、乳製品(たとえば、アイスクリーム、およびヨーグルト)、食品/栄養補助食品、または栄養処方物であってもよい。
【0079】
本明細書に記載の健康食品は、本明細書に記載されるように、一つまたは複数の利点を製品にもたらす、一つまたは複数の可食担体を含んでもよい。可食担体の例は、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カーボンメトキシセルロース、キサンタンガム、およびそれらの水溶液を含む。他の例は、当業者に知られているように、溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(たとえば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、安定剤、ゲル剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、着色剤、同様の材料、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの例では、本明細書に記載される健康食品は、神経保護食品、たとえば魚油、亜麻油、および/または、安息香酸をさらに含んでもよい。
【0080】
いくつかの例では、健康食品は、食物源由来の構成成分を含み、食品に見出される基本的な栄養価に加えてさらなる健康効果をもたらす組成物を指す、栄養補助食品組成物である。本明細書に記載される一つの栄養補助食品組成物は、本明細書に記載の多形体(たとえば、本明細書に記載の安息香酸ナトリウム化合物および多形体)、および健康を増進し、および/または多形体の安定性および生物活性を高める、追加の成分および栄養補助食品を含む。
【0081】
栄養補助食品組成物の作用は、迅速または/および短期的であってもよく、または本明細書に記載されるような長期的な健康目標、たとえば、精神神経疾患を有する、または精神神経疾患のリスクがある、ヒト対象において、たとえば、基本的な行動機能、多動、気分、不安、うつ、知覚、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶および/または認知機能の向上を達成するのに役立ち得る。栄養処方物は、食用材料に、たとえば、栄養補助食品、または製剤処方として含まれてもよい。栄養補助食品として、追加の栄養素、たとえば、ビタミン、ミネラル、またはアミノ酸が含まれうる。組成物はまた、飲料、または食品製品、たとえば茶、ソフトドリンク、ジュース、ミルク、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、およびスナックバーであってもよい。所望であれば、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップおよび水素化デンプン加水分解物、高フルクトースコーンシロップ、サトウキビ、ビート糖、ペクチン、またはスクラロースなどの甘味料を添加することによって組成物を甘くすることができる。
【0082】
本明細書で開示される栄養補助食品組成物は、溶液の形態でもよい。たとえば、栄養補助食品組成物は、媒体(medium)、たとえば緩衝液、溶媒、希釈剤、不活性担体、油、またはクリームで提供されてもよい。いくつかの例では、製剤は、アルコールなどの非水性共溶媒を任意選択で含む水溶液中に存在する。栄養補助食品組成物はまた、粉剤、ペースト剤、ゼリー剤、カプセル剤、または錠剤の形態でもよい。ラクトース、およびコーンスターチは、カプセル剤の希釈剤として、および錠剤の担体として一般的に使用される。滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムが、典型的には錠剤を形成するために添加される。
【0083】
健康食品は、適切な投与経路、例えば経口投与用に処方されてもよい。経口投与の場合、組成物は、許容される賦形剤、たとえば結合剤(たとえば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(たとえば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプン、またはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の手段によって調製された錠剤、またはカプセル剤の形態をとることができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法でコーティングすることができる。バー、および他のチュアブル製剤もまた含まれる。
【0084】
いくつかの例では、健康食品は、液状であってもよく、一つまたは複数の可食担体は、溶媒または分散媒であってもよく、エタノール、多価アルコール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(たとえば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。良好な流動性は、たとえば、コーティング剤、たとえばレシチンの使用によって;担体、たとえば液体多価アルコールまたは脂質における、分散による必要粒径の維持によって;界面活性剤、たとえば、例として、ヒドロキシプロピルセルロースの使用によって;またはそれらの組み合わせによって、維持されてもよい。多くの場合、等張剤、たとえば、糖類、塩化ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含むことが望ましい。
【0085】
経口投与のための液体製剤は、たとえば、液剤、シロップ剤、または懸濁剤、の形態を取ってもよく、あるいは使用前に水または他の好適な媒体で構成するための乾燥製品として提示されてもよい。一つの実施形態では、液体製剤は、フルーツジュースと一緒に投与するために製剤化されてもよい。そのような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用油脂);乳化剤(たとえば、レシチン、またはアラビアゴム)、非水性媒体(たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油);および保存料(たとえば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、安息香酸塩、またはソルビン酸塩)を用いて、従来の手段によって調製されてもよい。
【0086】
特定の実施形態では、組成物は、医療食品である。医療食品は、経腸的に摂取され、または投与されるために処方された食品である。そのような食品は、通常、標的疾患、たとえば、本明細書に記載されているもの、の特定の食事管理のために医師の監督の下で使用される。場合によっては、そのような医療食品は、治療の必要がある患者(たとえば、病気に苦しむ、または特効がある食事管理を介して疾患または症状を軽減するための主要な活性剤として製品の使用を必要とする、ヒト患者)のために、特別に処方され、そして加工される(自然な状態で用いられる、天然由来の食料とは対照的に)。いくつかの例では、本明細書に記載の医療食品組成物は、症状を管理するため、または疾患もしくは症状リスクを低減するために全般的な食事の一部として医師によって単純に推奨されるものの一つではない。
【0087】
安息香酸ナトリウムの多形体、および少なくとも一つの担体(たとえば、本明細書に記載のもの)を含む、本明細書に記載の任意の医療食品組成物は、以下で詳しく述べるように、溶液;粉末、バー、ウエハース、好適な液体中のまたは好適な乳剤中の懸濁液の形態でもよい。少なくとも一つの担体は、天然由来または合成(非天然由来)のいずれであってもよく、組成物内の安息香酸ナトリウムおよび共形成剤に対し、一つまたは複数の利点、たとえば、安定性、生体利用効率、および/または、生物活性、をもたらす。本明細書に記載の任意の担体は、医療食品を作るのに利用されうる。いくつかの実施形態では、医療食品組成物は、天然香料、人工香料、主要微量および超微量ミネラル、ミネラル、ビタミン、オートムギ、ナッツ、スパイス、ミルク、卵、食塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガムおよび/または甘味剤、を含むが、これらに限定されない群から選択される、一つまたは複数の追加の成分を含んでもよい。医療食品組成物は好適な容器に設置されてもよく、それは、本明細書に記載されるもののような、少なくとも一つの追加の治療薬をさらに含んでもよい。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書に記載の多形体は、医薬組成物中に有効量として提供される。特定の実施形態では、有効量は、治療上有効量(たとえば、それを必要とする対象における精神神経障害の治療および/またはそのリスクの低減に有効な量)である。特定の実施形態では、精神神経障害は、神経障害、たとえば、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、有効量は、予防上有効量(たとえば、それを必要とする対象における精神神経障害の予防に有効な量)である。
【0089】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の分野で知られている任意の方法によって調製されうる。一般に、そのような調製方法は、本明細書に記載の多形形態の安息香酸ナトリウム(すなわち、「活性成分」)を担体または賦形剤、および/または一つまたは複数の他の副成分と会合させ、そしてそれから、必要、および/または望ましい場合は、所望の単回または反復投与単位への製品の成形および/または包装することを含む。
【0090】
医薬組成物は、単回単位用量として、および/または複数の単回単位用量として、大量に調製、包装、および/または販売することができる。「単位用量」は、活性成分を所定量含む、別々の量の医薬組成物である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量、および/またはそのような投与量の都合のよい割合、たとえばそのような投与量の半分または三分の一に等しい。
【0091】
本明細書に記載の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の身元、大きさ、および/または疾患によって、そしてさらには、組成物が投与されるべきである投与経路によって、変わる。組成物は、活性成分を0.1~100%(w/w)の間で含んでもよい。
【0092】
所与の医薬組成物の製造において使用される、薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤および造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝材、滑沢剤、および/または、油を含む。賦形剤、たとえばカカオバターおよび座薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤もまた、組成物内に存在してもよい。
【0093】
経口および非経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性成分に加え、液体剤形は、当技術分野で広く使用される不活性希釈剤、たとえば、例として、水または他の溶剤、可溶化剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(たとえば、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物、を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物はアジュバント、たとえば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤を含んでもよい。非経口投与のための特定の実施形態では、本明細書に記載の抱合体は、可溶化剤、たとえばCremophor(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物と混合される。
【0094】
注射用製剤、例えば、滅菌注射できる水性または油性懸濁液は、好適な分散剤、または湿潤剤、および懸濁剤を使用して既知の技術に従って処方されてもよい。滅菌注射製剤は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、たとえば1,3-ブタンジオール中の滅菌注射できる溶液、懸濁液、または乳剤であってもよい。許容される媒体および溶媒の中で、水、リンゲル液(米国薬局方)、および等張食塩水が用いられてもよい。さらに、滅菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油が用いられてもよい。さらに、脂肪酸、たとえばオレイン酸が、注射剤の調製に用いられる。
【0095】
注射用製剤は、たとえば、細菌保持フィルターを通すろ過によって、または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0096】
薬物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶質または非晶質の物質の懸濁液の使用によって達成することができる。その場合、薬物の吸収速度は、溶解速度にも依存し、それはまた結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の吸収遅延は、薬物を油性媒体に溶解または懸濁することによって達成され得る。
【0097】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性成分は、少なくとも一つの不活性の薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、たとえばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または、 (a)充填剤(fillers)もしくは増量剤(extenders)、たとえば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、 (b)結合剤、たとえば例として、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアラビアゴム、 (c)湿潤剤(humectants)、たとえば、グリセロール、 (d)崩壊剤、たとえば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム(SSG)、クロスカルメロース、クロスポビドン、および炭酸ナトリウム、 (e)溶解遅延剤、たとえば、パラフィン、 (f)吸収促進剤、たとえば、四級アンモニウム化合物、 (g)湿潤剤(wetting agents)、たとえば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、 (h)吸収剤、たとえば、カオリンおよびベントナイト粘土、ならびに (i)滑沢剤、たとえば、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレンレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物、と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤、たとえばクエン酸ナトリウム、およびキトサンを含んでもよい。さらに、本明細書に記載の薬学的に許容される賦形剤は、単一種または複数の種のタンニン酸の混合物、またはそれらの薬学的に許容される塩であってもよい。
【0098】
ラクトースまたは乳糖(milk sugar)、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、類似の種の固体組成物を軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、コーティング、およびシェル(shell)、たとえば、腸溶コーティングおよび薬理学の分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。それらは乳白剤を任意に含んでもよく、それらは活性成分(一つまたは複数)のみを、または選択的に、消化管の特定の部分において、任意に遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用することができる封入組成物の例は、高分子物質およびワックスを含む。ラクトースまたは乳糖(milk sugar)、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、類似の種の固体組成物を軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として使用することができる。
【0099】
活性成分は、上記のように一つまたは複数の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であってもよい。錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティング、およびシェル(shell)、たとえば、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、活性成分は、少なくとも一つの不活性希釈剤、たとえばスクロース、ラクトース、またはデンプンと混合されてもよい。そのような剤形は、通常の慣例のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、たとえば打錠滑沢剤、および他の打錠助剤、たとえばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースを含んでもよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含み得る。それらは乳白剤を任意に含んでもよく、それらは活性成分(一つまたは複数)のみを、または選択的に、消化管の特定の部分において、任意に遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用することができる封入組成物の例は、高分子物質およびワックスを含むが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、ヒトへの投与に好適な医薬組成物を主に対象としているが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与に好適である。
組成物を様々な動物への投与に好適にするための、ヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変は十分に理解されており、そして当業者の獣医薬理学者は通常の実験でそのような改変を設計、および/または実施できる。
【0101】
本明細書で提供される多形体は、通常は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形で処方される。しかしながら、本明細書に記載の組成物の1日の総使用量は、医師によって、正しい医学的判断の範囲内で決定されることが理解されるだろう。任意の特定の対象または生物に対する、具体的な治療上有効な用量レベルは、治療される疾患および障害の重症度;用いられる特定の活性成分の活性;用いられる特定の組成物;対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、および食事;用いられる特定の活性成分の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;用いられる特定の活性成分と組み合わせて、または同時に使用される薬物;および、医学の分野で周知の要因のようなものを含む、様々な要因に依存するだろう。
【0102】
キット(たとえば、医薬品パック)もまた本開示に包含される。提供されるキットは、本明細書中に記載される医薬組成物、または安息香酸ナトリウムの多形体、および容器(たとえば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、および/もしくはディスペンサーパッケージ、または他の好適な容器)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、提供されるキットは、本明細書に記載の医薬組成物、または安息香酸ナトリウムの多形体を希釈または懸濁するための医薬品賦形剤を含む第二の容器を任意にさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、第一の容器、および第二の容器に提供される本明細書に記載の医薬組成物、または安息香酸ナトリウムの多形体は、一つの単位剤形を形成するために組み合わされる。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載のキットは、本明細書に記載の多形体、または組成物を含む、第1の容器を包含する。特定の実施形態では、本明細書に記載のキットは、それを必要とする対象における神経精神障害の治療および/またはそのリスクの低減に有効である。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書に記載のキットは、キットに含まれる多形体または組成物の使用のための説明書をさらに含む。本明細書に記載のキットはまた、規制当局、たとえば米国食品医薬品局(FDA)によって要求される情報を含んでもよい。特定の実施形態では、キットに含まれる情報は、処方情報である。特定の実施形態では、キットおよび説明書は、それを必要とする対象における神経精神障害の治療および/またはそのリスクの低減を提供する。本明細書に記載のキットは、本明細書に記載の一つまたは複数の追加の医薬品を別々の組成物として含んでもよい。
【0105】
合成の方法
本明細書に記載される安息香酸ナトリウムの多形体を調製するための多数の例示的な方法が本明細書に記載される:
一般的方法1:飽和溶液中での蒸発による結晶化
【0106】
結晶化は飽和溶液中での蒸発により行った。過剰量の安息香酸ナトリウムを溶媒に溶解した。溶液はろ過され、ろ液は蒸発乾固され、安息香酸ナトリウムの新規の多形体が得られた。
【0107】
一つの態様では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、過剰量の安息香酸ナトリウムを単一のまたは混合した好適な溶媒に溶解して、周囲圧力および温度で飽和溶液を形成する第一工程を含む。次に、飽和溶液を5~100μmの範囲の孔径を有するフィルターを用いてろ過して不溶性成分を除去することができる。このようにして得られた溶液は好適な条件下で好適な期間蒸発し、安息香酸ナトリウムの多形体(たとえば、下記の実施例1に記載の多形体No.1)を形成することができる。特定の実施形態では、溶液は周囲圧力または減圧で、および/または高温、たとえば約40~110℃で蒸発する。特定の実施形態では、高温は、約40~90℃、約40~80℃、約40~70℃、または約40~60℃の範囲でありうる。次に、蒸発した溶液から形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集することができる。
【0108】
本明細書に記載の合成方法で使用するのに好適な溶媒としては、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、酢酸エチル)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、水、またはそれらの混合物である。
一般的方法2:飽和溶液中での冷却による結晶化
【0109】
安息香酸ナトリウムに、撹拌しながら高温(50~110℃)で、単一のまたは混合溶媒が加えられた。溶液が透明になった時点で溶媒の追加は直ちに中止された。溶液は、撹拌しながら冷却された。懸濁液はろ過され、結晶が回収され、安息香酸ナトリウムの新規の多形体が得られた。
【0110】
たとえば、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムを単一のまたは混合した好適な溶媒に約50~110℃の範囲の温度で溶解して溶液を形成する第一工程を含む。本明細書に記載の合成方法において使用する好適な溶媒は、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、酢酸エチル)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、水、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムを単一のまたは混合溶媒に50~110℃、50~100℃、50~90℃、50~80℃、50~70℃、または60~70℃の範囲の温度で溶解して溶液を形成する第一工程を含む。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムを単一のまたは混合溶媒に50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、または110℃の温度で溶解して溶液を形成する第一工程を含む。
【0111】
特定の実施形態では、溶解した安息香酸ナトリウムの加熱溶液は、次に撹拌しながら周囲温度(たとえば、約20~25℃)に冷却される。特定の実施形態では、次に冷却溶液は周囲温度に置かれ、安息香酸ナトリウムの多形体が形成される。特定の実施形態では、第三段階で周囲温度に置くことによって形成された安息香酸ナトリウムの多形体が収集される。特定の実施形態では、周囲温度に置くことによって形成された安息香酸ナトリウムの多形体は、5~100μmの範囲の孔径を有するフィルターを使用してろ過によって収集される。
一般的方法3:高湿度条件下での変換
【0112】
安息香酸ナトリウムは90%RH(相対湿度)を超える条件下で貯蔵され、安息香酸ナトリウムの新規の多形体が得られた。
【0113】
たとえば、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムを約1~10日間、約90%を超える相対湿度(RH)に置く第一の工程を含み、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成される。特定の実施形態では、第一の工程は、安息香酸ナトリウムを約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の相対湿度に置くことを含む。特定の実施形態では、第一の工程は、安息香酸ナトリウムを約1~10日間、約1~9日間、約1~8日間、約1~7日間、約1~6日間、約1~5日間、約1~4日間、約1~3日間、または約1~2日間、約90%を超える相対湿度(RH)に置く第一の工程を含む。第一の工程で形成された安息香酸ナトリウムの多形体は、それから収集することができる。
一般的方法4:スラリー溶液中での変換
【0114】
溶媒中の安息香酸ナトリウムのスラリー溶液は、一定時間混合され、安息香酸ナトリウムの新規の多形体が得られた。
【0115】
たとえば、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、単一のまたは混合溶媒中で第一の安息香酸ナトリウムの多形体のスラリーを調製する第一の工程を含む。本明細書に記載の合成方法における使用のための好適な溶媒は、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチル-1-ブタノール、または水)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルt-ブチルエーテル、トルエン、またはテトラヒドロフラン)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、水、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、6時間~10日間、6時間~9日間、6時間~8日間、6時間~7日間、6時間~6日間、6時間~5日間、6時間~4日間、6時間~3日間、6時間~2日間、6時間~1日間、6時間~20時間、6時間~15時間、6時間~10時間、または6時間~8時間、スラリーを撹拌する第二の工程を含み、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成する。特定の実施形態では、第二の工程では、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、14時間、15時間、18時間、20時間、22時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、または9日間、スラリーを撹拌する。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、第二の工程で形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集する第三の工程を含む。安息香酸ナトリウムの多形体は、5~100μmの範囲の孔径を有するフィルターを使用してろ過によって収集されてもよい。
一般的方法5:貧溶媒による沈殿による結晶化
【0116】
安息香酸ナトリウムは溶媒に完全に溶解され、続いて貧溶媒が徐々に添加された。スラリーは一定時間攪拌され、結晶が回収され、安息香酸ナトリウムの新規の多形体が得られた。
【0117】
たとえば、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムを単一の溶媒または混合溶媒に溶解して溶液を形成する第一工程を含む。本明細書に記載の合成方法における使用のための好適な溶媒は、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、酢酸エチル)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。次に、溶解した安息香酸ナトリウムの溶液を貧溶媒と混合してスラリーを形成することができ、ここで、第一の工程における貧溶媒と溶液との間の体積比は約4:1から15:1である。本明細書に記載の合成方法における使用のための好適な溶媒は、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、水)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン)、無極性溶媒(トルエン、テトラヒドロフラン、メチルt-ブチルエーテル)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、貧溶媒はアセトン、アセトニトリル、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、酢酸エチル、イソブタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、メチル-1-ブタノール、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、溶解した安息香酸ナトリウム溶液を貧溶媒と混合してスラリーを形成する第二の工程において、第一の工程における貧溶媒と溶液との間の体積比は約4:1~15:1、約4:1~13:1、約4:1~11:1、約4:1~9:1、約4:1~7:1、または約4:1~5:1である。特定の実施形態では、第二の工程において、貧溶媒と第一の工程における溶液との間の体積比は、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、または約10:1である。
【0118】
特定の実施形態では、スラリーは次に周囲圧力および温度で約2~10日間撹拌され、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成する。特定の実施形態では、スラリーは周囲圧力および温度で約2~8日間、約2~7日間、約2~6日間、約2~5日間、約2~4日間、または約2~3日間、撹拌される。特定の実施形態では、スラリーは、周囲圧力および温度で約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間、撹拌される。第三の工程において、安息香酸ナトリウム溶液のスラリーの撹拌によって形成された安息香酸ナトリウムの多形体は、次に収集される。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、5~100μmの範囲の孔径を有するフィルターを使用してろ過によって収集される。
【0119】
あるいは、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、2~10体積%の水の存在下で、単一または混合溶媒中において、安息香酸ナトリウムの多形体のスラリーを調製する第一の工程を含む。本明細書に記載の合成方法における使用のための好適な溶媒は、極性プロトン性溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)、極性非プロトン性溶媒(たとえば、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルt-ブチルエーテル、トルエン、またはテトラヒドロフラン)、またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。特定の実施形態では、第一の工程は、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第一の工程は、約10体積%未満、約9体積%未満、約8体積%未満、約7体積%未満、約6体積%未満、約5体積%未満、約4体積%未満、約3体積%未満、または約2体積%未満の水の存在下で、安息香酸ナトリウムの多形体のスラリーの調製を含む。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、周囲圧力および温度で約2~10日間、スラリーを撹拌する第二の工程を含み、その間に安息香酸ナトリウムの多形体が形成する。特定の実施形態では、第二の工程は、周囲圧力および温度で約2~10日間、約2~8日間、約2~7日間、約2~6日間、約2~5日間、約2~4日間、または約2~3日間、スラリーを撹拌することを含む。特定の実施形態では、第二の工程は、周囲圧力および温度で約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の、スラリーを撹拌することを含む。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体の合成は、安息香酸ナトリウムのスラリーの撹拌によって形成された安息香酸ナトリウムの多形体を収集する、第三の工程を含む。特定の実施形態では、安息香酸ナトリウムの多形体は、5~100μmの範囲の孔径を有するフィルターを使用してろ過によって収集される。
【0120】
本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体の調製の例示的な方法は、下記の実施例において提供される。
治療方法
【0121】
本開示は、それを必要とする対象における神経精神障害の治療および/またはそのリスクを低減する方法であって、対象への本明細書に記載の多形体、または任意の組成物(たとえば、安息香酸ナトリウムの多形体、または安息香酸ナトリウムおよびクロザピンの組み合わせ)の有効量(たとえば、治療上有効量)の投与を含む、方法を開示する。
【0122】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象における神経精神障害を予防する方法であって、対象への本明細書に記載の多形体、またはその組成物の有効量(たとえば、予防上有効量)の投与を含む、方法に関する。
【0123】
本明細書に記載の多形体、および組成物は、神経精神障害の治療および/または予防に有用である。特定の実施形態では、精神神経障害は、統合失調症である。特定の実施形態では、精神神経障害は、精神障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、精神神経障害は、前頭側頭型認知症を含む認知症である。特定の実施形態では、精神神経障害は、軽度認知障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、良性健忘である。特定の実施形態では、精神神経障害は、閉鎖性頭部外傷である。特定の実施形態では、精神神経障害は、アスペルガー障害を含む、自閉症スペクトラム障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、注意欠陥多動性障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、強迫性障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、チック障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、小児期学習障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、月経前症候群である。特定の実施形態では、精神神経障害は、気分変調と死別を含む、うつ病である。特定の実施形態では、精神神経障害は、双極性I型およびII型障害を含む、双極性障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、パニック障害および恐怖性障害を含む、不安障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、心的外傷後ストレス障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、慢性痛である。特定の実施形態では、精神神経障害は、過食症および拒食症を含む、摂食障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、物質依存または中毒を含む嗜癖障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、人格障害である。特定の実施形態では、精神神経障害は、パーキンソン病である。特定の実施形態では、精神神経障害は、ハンチントン病である。特定の実施形態では、精神神経障害は、多発性硬化症である。特定の実施形態では、精神神経障害は、筋萎縮性側索硬化症である。
【0124】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に追加の医薬品を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、生体試料を追加の医薬品と接触させることをさらに含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、組織を追加の医薬品と接触させることをさらに含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞を追加の医薬品と接触させることをさらに含む。
【0125】
本明細書で提供される多形体および組成物は、経腸(たとえば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内(interdermal)、皮下、皮内(intradermal)、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、および/または、点滴による)を含む任意の経路によって投与されてもよい。特に計画される経路は、経口投与、静脈内投与(たとえば、全身静脈内注射)、血液および/またはリンパ供給を介した局所投与、および/または患部への直接投与である。一般に、最も適切な投与経路は、作用薬の性質(たとえば、消化管環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(たとえば、対象が経口投与に耐えられるか)を含む、様々な要因に左右される。
【0126】
有効量を達成するのに必要とされる多形体の正確な量は、たとえば、対象の種、年齢、および全身状態、副作用または障害の重症度、特定の多形体の同一性、投与方法等に応じて、対象ごとに異なるであろう。有効量は、単回投与量(たとえば、単回経口投与量)、または反復投与量(たとえば、反復経口投与量)に含まれてもよい。特定の実施形態では、反復投与量が対象に投与される、または生物試料、組織、または細胞に適用される場合、任意の2回分の反復投与用量は、異なる、または実質的に同一の量の、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、反復投与量が対象に投与される、または生物試料、組織、または細胞に適用される場合、対象に反復投与量を投与する、または組織もしくは細胞に反復投与を適用する頻度は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1か月に1回、または2か月に1回である。特定の実施形態では、対象に反復投与量を投与する、または組織もしくは細胞に反復投与量を適用する頻度は、1日に1回である。特定の実施形態では、対象に反復投与量を投与する、または組織もしくは細胞に反復投与量を適用する頻度は、1日に2回である。特定の実施形態では、反復投与量が対象に投与される、または生物試料、組織、または細胞に適用される場合、反復投与の最初の投与と最後の投与の間の期間は、1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、6か月、9か月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、または対象、生物試料、組織、または細胞の生存期間である。特定の実施形態では、反復投与の最初の投与と最後の投与の間の期間は、3か月、6か月、または1年である。特定の実施形態では、反復投与の最初の投与と最後の投与の間の期間は、対象、生物試料、組織、または細胞の生存期間である。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量(たとえば、単回投与量、または反復投与量の任意の量)は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、1mg~3mg、3mg~10mg、10mg~30mg、30mg~100mg、100mg~300mg、300mg~1,000mg、または1g~10g(両端を含む)、独立して含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、3mg~10mg(両端を含む)、独立して含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、10mg~30mg(両端を含む)、独立して含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、30mg~100mg(両端を含む)、独立して含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、100mg~300mg(両端を含む)、独立して含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体を、300mg~1000mg(両端を含む)、独立して含む。
【0127】
本明細書に記載の用量範囲は、提供された医薬組成物を成人に投与するための指針を提供する。たとえば子供または青年に投与される量は、開業医または当業者によって決定されてもよく、そして成人に投与される量より少なくても同じでもよい。
【0128】
本明細書に記載の多形体または組成物は、精神神経障害の治療、および/またはリスクの低減に有用な、一つまたは複数の追加の医薬品(たとえば、治療用および/または予防用活性剤)と組み合わせて投与されてもよい。多形体または組成物は、それらの活性(たとえば、それを必要とする対象における神経精神障害の治療、および/またはリスクの低減における活性(たとえば、効力(potency)、および/または効力(efficacy))を改善する、生物学的利用能を向上する、安全性を向上する、薬剤耐性を低減する、代謝を低減および/または改変する、排泄の阻害をする、および/または対象、生物試料、組織もしくは細胞内の分布を改変する、追加の医薬と組み合わせて投与され得る。採用される療法が同一の障害に対して所望の効果を達成しうる、および/またはそれが異なる効果を達成しうることもまた理解されるだろう。特定の実施形態では、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体および追加の医薬剤品を含む、本明細書に記載の医薬組成物は、多形体および追加の医薬品の一方を含むが、両方を含まない、医薬組成物には存在しない相乗効果を示す。
【0129】
多形体または組成物は、たとえば、対象における神経精神障害の治療および/またはリスクの低減における併用療法として有用であり得る一つまたは複数の追加の医薬品と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。医薬品は、治療的活性剤を含む。医薬品は、予防的活性剤も含む。医薬品は、有機小分子、たとえば薬剤化合物またはその多形体(たとえば、連邦規制基準(CFR)に規定されているように米国食品医薬品局によってヒトまたは動物用に承認された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、抗体、タンパク質、たとえば抗体に結合した小分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミン、および細胞、を含む。特定の実施形態では、追加の医薬品は、対象における神経精神障害の治療および/またはリスクの低減において有用な医薬品である。特定の実施形態では、追加の医薬品は、対象における神経精神障害の治療および/またはリスクの低減について、規制当局(たとえば、米国FDA、EMA、中国FDA)によって承認された医薬品である。特定の実施形態では、追加の医薬品は、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、イロペリドン、ピマバンセリン、ルラシドン(luradisone)、ブチロフェノン、フェノチアジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフロペラジン、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール、ラモトリギン(lamotrigine)、テトラベナジン、カンナビジオール、LY2140023、ドロペリドール、ピモジド、ブタペラジン、カルフェナジン、レモキシプリド(eemoxipride)、ピペラセタジン、スルピリド、アカンプロセート、テトラベナジン、ビラゾドン、レボミルナシプラン、ボルチオキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン(milnacipram)、デュロキセチン、ミルタザピン、ミアンセリン、レボキセチン、ブプロピオン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン(nortriptiline)、プロトリプチリン、デシプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、セレギリン、トラゾドン、ネファゾドン、ラモトリギン(lamatrogine)、リチウム、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジド、スタチン、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミンメシル酸塩、アンフェタミン混合塩、アトモキセチン、クロニジン塩酸塩、グアンファシン塩酸塩、アレコリン、ぺモリン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、メマンチン、フィゾスチグミン、リチウム塩、ニコチン、アレコリン、フペルジンアルファ、リルゾール、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、タンニン酸、およびイチョウエキスからなる群から選択された、神経医薬である。
【0130】
それぞれの追加の医薬品は、その医薬品について決定された用量および/または日程で投与されてもよい。追加の医薬品はまた、互いに一緒に、および/または本明細書に記載の多形体もしくは組成物と共に単回投与量で投与されてもよく、または異なる用量で別々に投与されてもよい。レジメンで使用するための特定の組み合わせは、本明細書に記載の多形体と追加の医薬品との適合性、ならびに/または達成されるべき所望の治療的、および/もしくは予防的効果を考慮に入れるであろう。一般に、組み合わせた追加の医薬品は、それらが別々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、別々に利用されるレベルよりも低いだろう。
【0131】
特定の実施形態では、追加の医薬品は、精神神経障害の治療および/またはリスクの低減のための薬剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の安息香酸ナトリウムの多形体、または医薬組成物は、精神神経障害の治療および/またはリスクの低減のための療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0132】
さらに詳述しなくとも、当業者であれば、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなることがあっても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用された全ての刊行物は、本明細書で参照された目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例
【0133】
本開示がより十分に理解されうるように、以下の実施例が示される。本出願に記載された合成、および生物学的実施例は、本明細書に提供された多形体、化合物、組成物、および方法を説明するために提供され、そして決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0134】
実施例1:安息香酸ナトリウムの多形体#1の調製
安息香酸ナトリウム199.93mgをフラスコに入れ、そして安息香酸ナトリウムを溶解するためにメタノール4mLを加えた。特に明記しない限り、市販の安息香酸ナトリウムはMerck、Formosa Laboratories Inc.、またはSigma Aldrichから購入し、溶媒は業者、たとえばAcros、Merck、およびSigma Aldrichから購入した。このようにして形成した溶液は10分間撹拌し続けられ、そしてそれからろ過され、不溶性成分は除去された。ろ液は回転蒸発により蒸発させられ、固体の安息香酸ナトリウムの多形体を形成した。得られた固体は、下記のようにXRPD、TGAおよびDSCにより分析された。
【0135】
-熱重量分析(TGA)
総重量減少は、TA Instrument TGA Model Q500で得られた。試料は開放アルミニウムパン中で10℃/分の加熱速度で最終温度まで加熱された。
【0136】
-示差走査熱量測定
熱分析は、TA Instrument DSC Model Q200を用いて行われた。試料は、50mL/分の窒素パージをしながら、アルミニウムパン中で10℃/分の加熱速度で最終温度まで加熱された。
【0137】
-X線粉末回折法
固体試料は、LynxEye検出器を備えたX線粉末回折計(Bruker D8 advance)によって特定された。機器のパラメーターは以下のとおりである。スキャン:3°(2θ)~40°(2θ);増分:0.02°(2θ);スキャン速度:0.1~0.3秒/ステップ;電圧:40KV;電流:40mA;回転:オン;サンプルホールド:ゼロバックグラウンド試料ホルダー。
【0138】
TGA、DSC、およびX線粉末回折法アッセイから得られた結果は、図1~3に提供される。
【0139】
実施例2:多形体#2の調製
2.005mgの市販の安息香酸ナトリウムは丸底フラスコに入れられ、続いて150mLのアセトニトリルが加えられた。このようにして形成した懸濁液は、2日間撹拌し続けられ、そしてろ過され、このようにして形成した固体の安息香酸ナトリウムが収集された。固体の安息香酸ナトリウムの多形体はまた、XPRD、TGA、およびDSCで解析され、結果は図4~6に示される。
【0140】
実施例3:多形体#3の調製
2.006mgの市販の安息香酸ナトリウムは丸底フラスコに入れられ、続いて150mLのイソブタノールが加えられた。このようにして形成した懸濁液は、6日間撹拌し続けられ、そしてその後、ろ過された。このようにして形成した固体の安息香酸ナトリウムは収集され、そしてXPRD、TGA、およびDSCで解析された。結果は図7~9に示される。
【0141】
実施例4:多形体#4の調製
2.182mgの市販の安息香酸ナトリウムは丸底フラスコに入れられ、続いて4mLの水が加えられた。20mLのイソプロピルアルコールがそれから徐々に加えられ、そして得られた懸濁液は3日間撹拌し続けられ、そしてこうして形成された固体を収集するためにろ過された。収集された固体は、XPRD、TGA、およびDSCで解析された。結果は図10~12に示される。
【0142】
実施例5:多形体#5の調製
106.6mgの市販の安息香酸ナトリウムは丸底フラスコに入れられ、70℃でエタノールと酢酸エチル(1:1)を含有する70mLの混合溶媒が加えられた。得られた溶液は10分間撹拌し続けられ、次に周囲温度に冷却され、一晩撹拌されて固体の安息香酸ナトリウム多形体を形成し、それはろ過により集められ、そしてXRPD、TGAおよびDSCによって分析された。結果は図13~15に示される。
【0143】
実施例6:多形体#6の調製
2.006gの市販の安息香酸ナトリウムは丸底フラスコに入れられ、40mLのメタノールが加えられ、安息香酸ナトリウムは溶解させられた。120mLのアセトニトリルは徐々に添加され、このようにして形成された懸濁液は撹拌し続けられた。2日後、懸濁液はろ過され、得られた固体はXRPD、TGAおよびDSCによって分析された。結果は図16~18に示される。
【0144】
実施例7:多形体#4の代替的調製(Alternative preparation)
本明細書に開示されている新規の多形体#1~3、5、または6のいずれかの1~2mgは、約6%の水を含む0.5mLのアセトニトリル中でスラリー化され、新規の多形体#4を形成した。従って、得られた全ての新規の多形体の中で、多形体#4が最も熱力学的に安定であることが証明された。
【0145】
実施例8:多形体#4のスケールアップ製造(Scale-up preparation)
50gの市販の安息香酸ナトリウム(Merckから購入)は丸底フラスコに入れられ、続いて92mLの水が加えられた。688mLのイソプロピルアルコールがゆっくり添加され、得られた懸濁液はオーバーヘッドスターラーで4日間撹拌し続けられ、そしてろ過され、22.3gの固体が収集された。
【0146】
実施例9:高湿度条件下での多形体#4の安定性試験
Merck、およびFormosa Laboratoriesからの各500mgの安息香酸ナトリウム、ならびに多形体#4は高湿度条件下(>90%RH)で5日間貯蔵され、そしてXRPDによって分析された。結果は、5日後に、MerckおよびFormosa Laboratoriesからの安息香酸ナトリウムの、約6.2、16.5、および24.5度の反射角2θにおけるピーク、および22.9度における新しいピークの出現を伴う、XRPDパターンへの有意な変化があったことを示したが、新規の多形体#4のXRPDパターンに対する変化は観察されなかった。結果を図19に示す。従って、多形体#4は、高湿度条件下で試験された市販の安息香酸ナトリウム製品よりも安定であることが示された。
【0147】
実施例10:高湿度条件下での、クロザピンと組み合わせた多形体#4の安定性試験
300mgのクロザピンと組み合わせた、各500mgの、Merckからの安息香酸ナトリウムおよび新規の多形体#4は、高湿度条件下(>90%RH)で5日間保管され、そしてXRPDによって分析された。結果は、5日後に、クロザピンと組み合わせたMerckからの安息香酸ナトリウムの、約6.2、14.9、15.9、16.5、20.5、22.6および25.1度の反射角2θにおけるピーク、および22.9度における新しいピークの出現を伴う、XRPDパターンへの有意な変化があったことを明らかにした。クロザピンと組み合わせた新規の多形体#4のXRPDパターンに対する変化は観察されなかった。結果は、図20~21に示される。このように、第二の治療薬と組み合わせた場合、多形体#4の使用が試験した市販の安息香酸ナトリウム製品よりも好適なことが示された。
【0148】
実施例11:多形体#4とMerckおよびSigma Aldrichからの安息香酸ナトリウムとのさらなる比較
新規の多形体#4、Merckからの安息香酸ナトリウム、およびSigma Aldrichからの安息香酸ナトリウムは、XRPDによって分析され、そして比較された。図22に示されるように、結果は、MerckおよびSigma Aldrichからのこれら2つの市販の安息香酸ナトリウムサンプルのXRPDパターンが互いに非常に重なっていることを示した。市販の安息香酸ナトリウム(Merck、Formosa Laboratories、およびSigma Aldrich)由来の、より熱力学的に安定でない多形体と比較して、新規の多形体#4は安息香酸ナトリウムの最も熱力学的に安定な多形体であることが見出された。
【0149】
実施例12:多形体#4の水への溶解度
バイアル中の新規の多形体#4、Merckからの安息香酸ナトリウム、およびSigma Aldrichからの安息香酸ナトリウムのそれぞれ約1gに、最大溶解度に達するまで水が加えられた。結果は、新しい多形体#4(666mg/ml)の最大水溶性が、Merck(500mg/ml)およびSigma Aldrich(454mg/ml)からの安息香酸ナトリウムのそれより高いことを示した。したがって、本発明の安息香酸ナトリウムの多形体#4の溶解度は、市販の安息香酸ナトリウム製品よりも約1.3~1.5倍高い。
【0150】
実施例13:市販の安息香酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムの多形体#4の安定性試験
1. 高湿度条件下におけるストレス試験
別の安定性試験は、100mgのクロザピンと独立して組み合わせた、500mgのMerckから市販されている安息香酸ナトリウム、または本発明の安息香酸ナトリウムの多形体#4を用いて行われ、室温において8日間、高湿度条件下(>90%RH)で保管された。8日目に、市販の安息香酸ナトリウムとクロザピンの組み合わせのXRPDパターンは、図23~24の矢印で示されるように、11°に追加の新しいピークを示した。しかしながら、11°における追加のピークは、本発明の安息香酸ナトリウムの多形体#4とクロザピンとの組み合わせのXRPDパターンには見られなかった。以下の実験において、11°におけるピークの出現は、クロザピンと市販の安息香酸ナトリウムとの組み合わせにおけるクロザピン多形体の劣化として見なされた。
2. 本発明の安息香酸ナトリウムの多形体#4およびクロザピン、ならびに他の賦形剤の組み合わせの安定性
湿度は、安息香酸ナトリウム化合物とクロザピンの組み合わせの安定性の問題であるので、高湿度条件下(>90%RH、室温)での安定性に対するそれらの影響を試験するためにいくつかの賦形剤が選択された。結果は表1および表2に示される。
【0151】
ホウ酸と比較すると、アルギン酸ナトリウムは安息香酸ナトリウム(Merckから購入)とクロザピンの組み合わせを安定化するのにより良い効果を有する(表1を参照のこと)。さらに、安息香酸ナトリウム(Merckから購入)とクロザピンの組み合わせの劣化を示す11°ピークは、高用量のキトサン(60mg)またはクエン酸ナトリウム(60mg)を組成物内にさらに追加した場合、30日目まで現れない(表2参照)。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
実施例14:市販の安息香酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムの多形体#4の安定性試験
1. 湿式造粒
活性成分(たとえば、任意の安息香酸ナトリウム化合物およびクロザピン)および賦形剤は粉砕され、そして40メッシュの篩で別々に篩い分けされた。粉砕および篩過された粉末は、乳鉢で混合された。バインダー溶液として使用された75%エタノールは、乳鉢にゆっくり加えられ、湿式造粒が行われた。得られた湿塊は、粗塊篩い分けのために20メッシュの篩で篩い分けされた。次に湿った顆粒は50℃で3時間乾燥された。乾燥した顆粒はさらに2回篩い分けされた:(1)40メッシュの篩によって、そして40メッシュより大きい顆粒は保持された;そして、(2)20メッシュの篩によって、そして篩を通過した顆粒は保持された。40および20メッシュの篩で篩過した後、20~40メッシュの間のサイズを有する顆粒が得られた。次に、得られた顆粒は滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムと約3分間混合され、そして、その混合物はZP01シングルパンチ打錠機(Taizhou Liming Pharmaceutical Machinery Co.,Ltd.)によって錠剤に圧縮された。得られた錠剤は秤量され、そしてそれらの硬度、摩損度、崩壊時間、および溶解放出時間が試験された。
2. 硬度試験
得られた錠剤について硬度試験を行われ、試験された錠剤を破壊するのに必要な力(kg)が記録された。錠剤の硬度は5~10kgの間に制御された。
3. 摩損度試験
10個の錠剤は錠剤脆砕装置に入れられ、25±1rpmで100回転させられた。試験された錠剤のいずれかが壊れた場合、試験は不合格と判定された。錠剤が壊れていなかった場合、それらはそれらの重量減少(%)を計算するために加重されるであろう。重量減少(%)は1%未満でなければならない。
4. 崩壊試験
6個の錠剤は、37±2℃の水中に入れられた。これらの錠剤が30分以内に崩壊しなかった場合、試験は不合格と判定された。これらの錠剤の崩壊時間(分)は記録された。
5.溶出試験
溶出試験は、クロザピンの溶出についてUSP法に基づいて行われた。6個の錠剤が溶解媒体(酢酸緩衝液、pH4.0)に添加され、そして溶出試験にかけられた。溶出溶媒の容量は500mLであり、そして回転速度は100rpmであった。これらの錠剤が30分以内に溶解しなかった場合、試験は不合格と判定された。これらの錠剤の溶出時間(分)が記録された。
【0155】
アルギン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムの両方が即時放出効果を増強するが、アルギン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを含む錠剤製剤1~2は、溶出試験中に剥がれ落ち、そして表3に示されるように、崩壊剤としてのデンプングリコール酸ナトリウム(SSG)の添加がこの欠陥を改善した。
【0156】
【表3】
【0157】
次に、表4および5に示すように、クロザピン、および市販の安息香酸ナトリウム(Merckから購入)、または実施例4から得られた安息香酸ナトリウム多形体#4との組み合わせを含む錠剤製剤が試験された。結果は、本発明の安息香酸ナトリウムの多形体#4を含む錠剤は、より短い崩壊時間および溶解放出時間を有することを示し、これは、即時放出剤形の薬物の調製に有益であった。
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
均等物と範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、そうでないと示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、一つまたは二つ以上を意味し得る。一つ、複数、またはすべての群構成要素が所与の製品または方法に存在し、使用され、またはそうでなければ関連する場合、そうでないと示されていない、あるいは文脈から明らかでない限り、群の一つ以上の構成要素の間に「または」を含む請求項または発明の詳細な説明は満たされると見なされる。本発明は、その群の正確に一つの構成要素が所与の製品または方法に存在し、使用され、またはそうでなければ関連する、実施形態を含む。本発明は、二以上の、または全ての群構成要素が所与の製品または方法中に存在し、使用され、またはそうでなければ関連する、実施形態を含む。
【0161】
さらに、本発明は、すべての変形、組み合わせ、および置換を包含し、ここで、一つまたは複数の列挙された請求項からの、一つまたは複数の制限、要素、条項、および記述用語が別の請求項に導入される。たとえば、他の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項にある一つまたは複数の制限を含むよう、変更することができる。要素がリストとして、たとえばマーカッシュ群形式で提示される場合、要素の各部分群も開示され、そして任意の要素を群から削除することができる。一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素および/または特徴を含むものとして言及されている場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素および/または特徴からなるか、または本質的にそれからなることを理解するべきである。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書中で具体的に説明されていない。用語「含む(comprising)」および「含む(containing)」は、開放的であることを意図しており、追加の要素または工程を含めることを容認することにも留意すべきである。範囲が指定されている場合は、端点が含まれる。さらに、他に指示がない限り、または当業者の文脈および理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈上別段の定めがない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態において記載の範囲内の任意の特定の値または部分範囲をとることができる。
【0162】
本出願は、様々な発行された特許、公開された特許出願、学術論文、および他の刊行物を指し、そしてそれらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。さらに、先行技術の範囲内にある本発明の任意の特定の実施形態は、任意の一つまたは複数の請求項から明示的に除外され得る。そのような実施形態は当業者に知られていると考えられるので、除外が本明細書に明示的に記載されていなくてもそれらは除外され得る。本発明の任意の特定の実施形態は、任意の理由で、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、任意の請求項から除外することができる。
【0163】
当業者であれば、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの均等物を日常的な実験を用いて認識するかまたは確かめることができるだろう。本明細書に記載の本実施形態の範囲は、上記の発明の詳細な説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載の通りである。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この説明に対する様々な変更および修正がなされ得ることを理解するだろう。
図1
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