(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ミスト回収装置、及びミスト回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 45/14 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
B01D45/14
(21)【出願番号】P 2020081863
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2022-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 健人
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-002178(JP,A)
【文献】特開昭55-094615(JP,A)
【文献】特開平04-334564(JP,A)
【文献】特開2012-139681(JP,A)
【文献】特開2007-229913(JP,A)
【文献】特開2003-126633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00-45/18
B04B 1/00-15/12
B01D 46/00-46/54
B01D 47/00-47/18
B23Q 11/00-13/00
JST7580/JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象のミストを含む気体を内部に導入するための導入口とミスト回収後の前記気体を排出する排気口とを有する容器と、
前記容器内に
前記容器から離隔して設けられ、駆動部により回転軸を中心に回転駆動され、前記回転軸の軸方向に高さを有する板状部が前記回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成され、互いに隣り合う前記板状部の間のミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させる渦巻き板と、
を有するミスト回収装置。
【請求項2】
前記渦巻き形状は、アルキメデス螺旋である請求項1に記載のミスト回収装置。
【請求項3】
前記回転軸の軸方向を上下方向とした場合において、前記容器における前記渦巻き板の少なくとも下側に、前記容器の内部を上下に区画する仕切り部が設けられ、
前記容器の導入口は、前記仕切り部の下側に設けられ、
前記仕切り部のうち前記渦巻き板の中央部分に対向する部分に開口部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のミスト回収装置。
【請求項4】
回収対象のミストを含む気体を内部に導入するための導入口とミスト回収後の前記気体を排出する排気口とを有する容器と、
前記容器内に設けられ、駆動部により回転軸を中心に回転駆動され、前記回転軸の軸方向に高さを有する板状部が前記回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成され、互いに隣り合う前記板状部の間のミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させる渦巻き板と、
を有し、
前記回転軸の軸方向を上下方向とした場合において、前記容器における前記渦巻き板の少なくとも下側に、前記容器の内部を上下に区画する仕切り部が設けられ、
前記容器の導入口は、前記仕切り部の下側に設けられ、
前記仕切り部のうち前記渦巻き板の中央部分に対向する部分に開口部が形成されてい
るミスト回収装置。
【請求項5】
容器内に回収対象のミストを含む気体を導入し、
板状部が回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成された渦巻き板を、前記容器内において
前記容器から離隔させながら前記回転軸を中心に回転させ、互いに隣り合う前記板状部の間の前記ミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させるミスト回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト回収装置、及びミスト回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト回収技術は、切削工業機器の高速稼働を行い、潤滑油が微粒子として空気中に飛散する場面や、超音波霧化分離によってミスト化した液体の分離を行う場面において用いられる。
【0003】
ミスト回収装置におけるミスト捕集手段として、フィルタが用いられるもの(特許文献1参照)、静電気が用いられるもの(特許文献2参照)、サイクロンが用いられるもの(特許文献3、4参照)、及び捕集ディスクが用いられるもの(特許文献5、6参照)がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-122901号公報
【文献】特開2019-113052号公報
【文献】特開2014-161759号公報
【文献】特許第6613519号公報
【文献】特許第5356834号公報
【文献】特許第6518135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルタを用いた場合には、フィルタが目詰まりを起こしやすく、不純物の取り除き効率が低下することから、定期的なフィルタの洗浄や交換等のメンテナンスが必要となる。また、静電気を利用した場合には、電気を用いるため構成が複雑となり、価格も高価となる。また、スパークを生じさせる可能性があることから、頻繁なメンテナンスを必要とする。サイクロンは、水のミストを大量に回収できることから霧化分離にも利用されているが、より小さいミストを回収するためには、サイクロン内にある程度高速な気流を生じさせる必要がある。また、回収できるミストに限界がある。
【0006】
以上の問題を解決するものとして、上記したような捕集ディスクによるオイルミストの回収が提案されている。これは、外部の空気の吸引方向と垂直方向に捕集ディスクを回転させることで、捕集ディスク内に強力な遠心力を発生させ、ミストを外周に吹き飛ばし、空気とオイルミストを分離して、オイルミストを回収する方法である。
【0007】
しかしながら、捕集ディスクの網目が広い場合は捕集効率が悪く、逆に細かい場合にはメッシュの圧損が発生することからメンテナンスが頻繁に必要となる。また、捕集ディスクの中心と捕集部分である外周が離れていることから、高速な回転による遠心力の発生が必要である一方、細かいミストであればあるほど遠心力が作用しにくい。また、捕集ディスクによる遠心力の作用は、捕集ディスクの厚さ分しかないことから、捕集ディスク上での遠心力の作用が一瞬しか働かないミストも存在する。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルタ交換などのメンテナンスが不要でミスト捕集性能が高く効率的なミスト回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係るミスト回収装置は、回収対象のミストを含む気体を内部に導入するための導入口とミスト回収後の前記気体を排出する排気口とを有する容器と、前記容器内に設けられ、駆動部により回転軸を中心に回転駆動され、前記回転軸の軸方向に高さを有する板状部が前記回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成され、互いに隣り合う前記板状部の間のミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させる渦巻き板と、を有する。
【0010】
このミスト回収装置では、回転軸の軸方向に高さを有する板状部が回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成された渦巻き板を用い、該渦巻き板を駆動部により容器内で回転させることで、互いに隣り合う板状部の間のミストに継続した遠心力を作用させ、板状部に当ててミストを凝縮させる。渦巻き板を渦巻き形状の中心に向かう方向に回転させた場合、板状部に当たらなかったミストは渦巻き形状の外側に相対移動しつつ、遠心力により板状部28に当たり、凝縮することで液体となる。この液体は、遠心力で渦巻き板から離れ、容器の側壁に飛び散る。
【0011】
このように、ミストを液体に変化させて回収することができる。渦巻き板を用いるため従来のフィルタのように目詰まりを起こすことがなく、連続的な稼働が可能である。また、装置の構造が簡素となる。更に、フィルタと異なり、定期的な洗浄や交換も不要となる。また、従来のサイクロンのように高速な気流を生じさせる必要もない。また、従来の捕集ディスクと比較して、効率的にミストを回収できる。なお、ミスト回収後の気体は、排気口から排出される。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係るミスト回収装置において、前記渦巻き形状がアルキメデス螺旋である。
【0013】
ここで、アルキメデス螺旋とは、線同士の間隔が等しい渦巻である。したがって、渦巻き板の渦巻き形状がアルキメデス螺旋である場合、隣り合う板状部同士の中心線間隔が等しくなる。渦巻き板の全体でミストを凝縮できるため、ミストの回収効率を向上させることができる。
【0014】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係るミスト回収装置において、前記回転軸の軸方向を上下方向とした場合において、前記容器における前記渦巻き板の少なくとも下側に、前記容器の内部を上下に区画する仕切り部が設けられ、前記容器の導入口は、前記仕切り部の下側に設けられ、前記仕切り部のうち前記渦巻き板の中央部分に対向する部分に開口部が形成されている。
【0015】
このミスト回収装置では、ミストを含む気体が、容器における仕切り部の下側に導入される。このミストは、仕切り部の開口部を通じて渦巻き板の中心部に供給される。そして、渦巻き板を回転させることで、互いに隣り合う板状部の間のミストに遠心力を作用させて板状部でミストを凝縮させる。ミストが凝縮してなる液体は、仕切り部の開口部を通じて、容器の下部へ落下する。
【0016】
第4の態様に係る渦巻き板は、駆動部により回転軸を中心に回転駆動され、前記回転軸の方向の高さを有する板状部が前記回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成され、互いに隣り合う前記板状部の間のミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させる。
【0017】
この渦巻き板を、回転軸を中心に回転させることで、渦巻き形状に形成された板状部の間のミストに遠心力を作用させ、該ミストを凝縮させることができる。
【0018】
第5の態様に係るミスト回収方法は、容器内に回収対象のミストを含む気体を導入し、板状部が回転軸の軸方向から見て渦巻き形状に形成された渦巻き板を、前記容器内において前記回転軸を中心に回転させ、互いに隣り合う前記板状部の間の前記ミストに遠心力を作用させて前記ミストを凝縮させる。
【0019】
このミスト回収方法では、容器内に回収対象のミストを含む気体を導入し、渦巻き板を容器内において回転軸を中心に回転させ、互いに隣り合う板状部の間のミストに遠心力を作用させてミストを凝縮させる。ミストが凝縮することで液体となる。つまり、ミストを液体に変化させて回収することができる。渦巻き板を用いるため従来のフィルタのように目詰まりを起こすことがない。また、従来のサイクロンのように高速な気流を生じさせる必要もない。更に、常温下でミストの回収ができる。また、従来の捕集ディスクと比較して、効率的にミストを回収できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フィルタ交換などのメンテナンスが不要でミスト捕集性能が高く効率的なミスト回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るミスト回収装置の概要を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態に係るミスト回収装置の概要を示す断面図である。
【
図4】第3実施形態に係るミスト回収装置の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1において、本実施形態に係るミスト回収装置10は、容器12と、渦巻き板14とを有している。
【0024】
容器12は、回収対象のミスト16を含む気体を内部に導入するための導入口18と、ミスト回収後の気体を排出する排気口22とを有する、例えば円筒形部材である。図示の例では、導入口18は容器12における側壁12Aの下部に設けられ、排気口22は側壁12Aの上部に設けられている。容器12の導入口18より下側には、回収された液体32が貯留される貯留部12Cが設けられている。なお、液体32を貯留部12Cに貯めずにそのまま外部に排液してもよく、また外部で液体32の貯留や再利用等を行ってもよい。
【0025】
ミスト16は、例えば金属機械加工時に切削油から発生するオイルミスト、食品製造業者や飲食店から発生する排気油煙の他、何らかの混合液をミスト化したものである。鋳造品や焼結晶等の有孔性物体に生ずるピンホール等の粗密部分に充填される含浸材と水の混合液の場合、含浸材よりも先に水がミスト化され易い。アルコールと水の混合液でもの場合、アルコール及び水がミスト化するものの、アルコールミストと水のミストの粒径が異なることから、本実施形態にかかるミスト回収装置では、アルコールミストを捕捉せず、排出することが可能である。したがって、回収対象のミスト16は、オイルミスト、排気油煙、含浸材と水の混合液をミスト化したときに生ずる水のミスト、又はアルコールと水の混合液をミスト化したときに生ずる水のミスト等である。
【0026】
渦巻き板14は、容器12内に設けられ、駆動部の一例としてのモータ24により回転軸26を中心に回転駆動されている。渦巻き板14は、互いに隣り合う板状部28の間のミスト16に遠心力Cを作用させてミスト16を凝縮させるようになっている。具体的には、
図2に示されるように、渦巻き板14においては、回転軸26の軸方向に高さを有する板状部28が回転軸26の軸方向から見て渦巻き形状に形成されている。渦巻き形状とは、旋回するにつれ中心から遠ざかる、又は中心に近づく形状であり、螺旋形状と言い換えることもできる。本実施形態における渦巻き形状は、例えばアルキメデス螺旋である。ここで、アルキメデス螺旋とは、線同士の間隔(板状部28同士の中心線間隔)が等しい渦巻である。
【0027】
板状部28を渦巻き形状に保持するために、板状部28の上端には保持部材34が取り付けられている。モータ24の回転軸26は、この保持部材34に結合されている。保持部材34は円板状であってもよく、また十字に交差した2枚の板であってもよい。つまり、板状部28を渦巻き形状に保持可能な形状であればよい。なお、保持部材34を円板状として、渦巻き板14の上方を塞ぐことにより、隣り合う板状部28の間のミスト16が上方に逃げることを抑制し、ミスト16の回収効率を高めることが可能である。また、渦巻き板14の下方を例えば円板(図示せず)で塞ぎ、該円板の中央部に開口部を設けて、該開口部から渦巻き板14の中央部にミスト16を供給するようにしてもよい。
【0028】
板状部28の巻き数は、例えば2~1000巻程度であり、10巻程度が適切と考えられる。渦巻き板14の回転速度は、例えば毎分10~200000回転であり、毎分6000回転程度が適切と考えられる。渦巻き板14の外径を大きくすることで回収効率を高めることが可能である。また、板状部28の幅(回転軸26の軸方向の高さ)を大きくすることによっても回収効率を高めることが可能である。なお、板状部28の幅(回転軸26の軸方向の高さ)は一定に限られず、場所によって変化していてもよい。
【0029】
渦巻き板14の渦巻き形状はアルキメデス螺旋に限られず、放物螺旋(外側に行くほど間隔が狭くなる渦巻き)、双曲螺旋(外側にいくほど間隔が広くなる渦巻き)等の代数螺旋(代数的な式によって表される螺旋)であってもよい。また、渦巻き形状は代数螺旋でなくてもよく、旋回するにつれ中心から遠ざかる形状であればよい。したがって、例えば回転軸26の軸方向から見て、多数の短い直線状の板状部28が互いに鈍角に交わりながら直列に連なって配置されて、全体として渦巻き形状になっているものであってもよい。
【0030】
図2において、渦巻き板14の回転方向は、渦巻き形状の板状部28が中心に向かう方向(矢印F方向)である。ミスト16が渦巻き板14の中央部に供給される構成においては、この回転方向が望ましい。渦巻き板14を矢印F方向と反対側に回転させてもよいが、矢印F方向に回転させた方がミスト16の回収効率が高いと考えられる。
【0031】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図1において、本実施形態に係るミスト回収装置10では、導入口18を通じて容器12内に回収対象のミスト16が供給される。渦巻き板14をモータ24により容器12内で回転させることで、
図2に示されるように、互いに隣り合う板状部28の間のミスト16に遠心力Cを作用させ、板状部28に当ててミスト16を凝縮させる。ミスト16は、渦巻き板14の矢印F方向への回転に伴い、矢印R方向へ相対移動しつつ、遠心力Cにより板状部28に当たり、凝縮することで液体32となる。この液体32は、遠心力Cで渦巻き板14から離れ、容器12の側壁12Aに飛び散る。容器12の側壁12Aが渦巻き板14から遠い場合には、液体32は直接容器12の下方に落下する。このようにミスト16が遠心力Cで板状部28に捕集される場合、ミスト16の移動範囲は隣り合う板状部28の間であるため、捕集されるまでの移動距離が少なく、強い遠心力Cをミスト16に作用させる必要はない。
【0032】
また、渦巻き板14の渦巻き形状がアルキメデス螺旋であるので、隣り合う板状部28同士の中心線間隔が等しくなる。したがって、渦巻き板14の全体でミスト16を凝縮できるため、ミスト16の回収効率を向上させることができる。このように、本実施形態では、ミスト16を液体に変化させて回収することができる。なお、ミスト回収後の気体は、排気口22から排出される。
【0033】
渦巻き板14を用いるため従来のフィルタのように目詰まりを起こすことがなく、連続的な稼働が可能である。また、装置の構造が簡素となる。更に、フィルタと異なり、定期的な洗浄や交換も不要となる。また、従来のサイクロンのように高速な気流を生じさせる必要もない。更に、常温下でミスト16の回収ができる。含浸材には熱硬化樹脂が用いられるため、含浸材の水溶液から水分を除去して濃縮する際に温度を上げないように例えば減圧蒸留が行われているが、本実施形態によれば、含浸材の水溶液を加熱しなくてもよいので、含浸材が硬化することなく好適である。また、従来の捕集ディスクと比較して、効率的にミスト16を回収できる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、フィルタ交換などのメンテナンスが不要で、ミストを含む気流と、ミスト凝集部分である板上部が近く、ミストへの遠心力が継続してかかりやすいことにより、ミスト捕集性能が向上されたミスト回収装置10を提供することができる。
【0035】
本実施形態を利用することで、例えば、常温常圧での含浸剤と水の混合溶液の分離が可能と考えられる。具体的には超音波処理等を行うことで、ミスト化を行い、含浸剤よりも水がミスト化しやすい性質から、水のミストのみの回収を行い、含浸剤の濃縮を行う手法が考えられる。含浸剤は、鋳造品や焼結晶等の有孔性物体に生ずるピンホール等の粗密部分に、充填、固化を行うことで、有孔性物体を均質化することに用いられている。含浸剤処理後の有孔性物体の表面から、付着した含浸剤を溶剤で洗浄し除去する際に、含浸剤と水の混合液が生じる。この混合液から含浸剤を分離、回収(換言すれば、濃縮)することが行われている。含浸剤には熱硬化樹脂が用いられるため、含浸剤の水溶液から水分を除去して濃縮する際に温度を上げないように例えば減圧蒸留により濃縮を行う装置を株式会社中央発明研究所が製品化している。本実施形態によれば、含浸剤の水溶液を加熱しなくてもよく、また、減圧をしなくてもよいことから、常圧での含浸剤の濃縮に好適である。
【0036】
本実施形態の別の利用法として、アルコールと水の混合溶液の分離が挙げられる。水とアルコールとの分離には、蒸留が一般的に用いられている。しかし、酒類が対象となっている場合加熱処理が加わると風味が低下してしまう。非熱処理として霧化分離によるアルコールのミストと水のミストとの分離が行われている。具体的には、アルコールと水の混合溶液を超音波によってミスト化し、サイクロンを利用することで、水のミストを回収し、エタノールのミストを排出、冷却、液体化を行うことで水とアルコ―ルの分離を行っている。しかし、サイクロンを利用していることから、水のミストを回収しきれない。本実施形態を利用することで、より効率的な水のミストの回収が可能な霧化分離を行うことができる。
【0037】
[第2実施形態]
図3において、本実施形態に係るミスト回収装置20では、回転軸26の軸方向を上下方向とした場合において、容器12における渦巻き板14の下側に、容器12の内部を上下に区画する仕切り部36が設けられている。容器12におけるミスト16の導入口18は、仕切り部36の下側に設けられている。なお、このミスト回収装置20は、回転軸26の軸方向が上下方向以外、例えば水平方向となる状態(横向き)で使用することも可能である。
【0038】
仕切り部36のうち渦巻き板14の中央部分に対向する部分には、開口部36Aが形成されている。これにより、ミスト16が開口部36Aを通じて渦巻き板14の中央部に供給されるようになっている。また、仕切り部36は、開口部36Aが最下部となる例えば漏斗状に形成されている。これにより、ミスト16が凝縮した液体32が仕切り部36の上に落ちた後、円滑に貯留部12Cに落下するようになっている。なお、仕切り部36は平板状に形成されていてもよい。仕切り部36が平板状であっても、仕切り部36の上に溜まった液体32は開口部36Aから適宜落下するためである。
【0039】
本実施形態に係るミスト回収装置20では、ミスト16を含む気体が、容器12における仕切り部36の下側に導入される。このミスト16は、仕切り部36の開口部36Aを通じて渦巻き板14の中心部に供給される。そして、渦巻き板14を矢印F方向(
図2)に回転させることで、第1実施形態と同様にしてミスト16を凝縮させる。ミスト16を渦巻き板14の中央部に供給し、該ミスト16に遠心力Cを作用させることで、ミスト16を効率的に凝縮させることができる。ミスト16が凝縮された液体32は、仕切り部36の開口部36Aを通じて容器12の下部へ落下し、貯留部12Cに貯留される。
【0040】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
[第3実施形態]
図4において、本実施形態に係るミスト回収装置30では、第1実施形態及び第2実施形態と比較して回転軸26が延長され、渦巻き板14が容器12内の例えば上下方向略中央部に配置されている。また、第2実施形態と同様に渦巻き板14の下側に仕切り部36が設けられる一方、渦巻き板14の上側に仕切り板46が追加されている。容器12の側壁12Aにおける仕切り板46の上側には、導入口19が設けられている。
【0042】
仕切り板46のうち渦巻き板14の中央部分に対向する部分には、開口部46Aが形成されている。これにより、ミスト16が開口部46Aを通じて渦巻き板14の中央部に上方から供給されるようになっている。また、ミスト16は、第2実施形態と同様に、仕切り部36の開口部36Aを通じて渦巻き板14の中央部に下方から供給されるようになっている。つまり、ミスト16は、渦巻き板14の中央部に、該渦巻き板14の上方及び下方からそれぞれ供給されるようになっている。
【0043】
図示の例では、渦巻き板14の中央部の上方が塞がれないようにするため、
図1、
図3に記載の保持部材34が省略されている。なお、渦巻き板14の中央部の上方が塞がれない構成であれば、保持部材34が設けられていてもよい。例えば、保持部材34の中央部に開口部を設けることで、渦巻き板14の中央部の上方が塞がれないようにすることができる。
【0044】
本実施形態に係るミスト回収装置30では、ミスト16を含む気体が、容器12における仕切り板46の上側と、仕切り部36の下側にそれぞれ導入される。このミスト16は、仕切り板46の開口部46Aを通じて渦巻き板14の中心部に供給されると共に、仕切り部36の開口部36Aを通じて渦巻き板14の中心部に供給される。そして、渦巻き板14を矢印F方向(
図2)に回転させることで、第1実施形態と同様にしてミスト16を凝縮させる。ミスト16を上方向及び下方向から渦巻き板14の中央部にそれぞれ供給し、該ミスト16に遠心力Cを作用させることで、ミスト16を更に効率的に凝縮させることができる。
【0045】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
(ミスト回収方法)
本実施形態に係るミスト回収方法は、容器12内に回収対象のミスト16を含む気体を導入し、板状部28が回転軸26の軸方向から見て渦巻き形状に形成された渦巻き板14を、容器12内において回転軸26を中心に回転させ、互いに隣り合う板状部28の間のミスト16に遠心力Cを作用させてミスト16を凝縮させる。
【0047】
このミスト回収方法では、容器12内に回収対象のミスト16を含む気体を導入し、渦巻き板14を容器12内において回転軸26を中心に回転させ、互いに隣り合う板状部28の間のミスト16に遠心力Cを作用させてミスト16を凝縮させる。ミスト16が凝縮することで液体となる。つまり、ミスト16を液体に変化させて回収することができる。渦巻き板14を用いるため従来のフィルタのように目詰まりを起こすことがない。また、従来のサイクロンのように高速な気流を生じさせる必要もない。更に、常温下でミスト16の回収ができる。また、従来の捕集ディスクと比較して、効率的にミスト16を回収できる。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 ミスト回収装置
12 容器
14 渦巻き板
16 ミスト
18 導入口
19 導入口
20 ミスト回収装置
22 排気口
24 モータ(駆動部)
26 回転軸
28 板状部
30 ミスト回収装置
32 液体
36 仕切り部
36A 開口部
46 仕切り部
46A 開口部