(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】空中移動式蜂の巣駆除装置及び蜂の巣駆除方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A01M7/00 H
(21)【出願番号】P 2020556067
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2019043230
(87)【国際公開番号】W WO2020095884
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018207877
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517177338
【氏名又は名称】株式会社Queen Bee and Drone
(74)【代理人】
【識別番号】100092923
【氏名又は名称】石垣 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187757
【氏名又は名称】石垣 春樹
(72)【発明者】
【氏名】桜井 俊秀
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104063(JP,A)
【文献】実開昭61-106367(JP,U)
【文献】米国特許第10011352(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0231213(US,A1)
【文献】特開2007-275028(JP,A)
【文献】特開昭63-054967(JP,A)
【文献】特開2018-062324(JP,A)
【文献】特開2000-004757(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01029599(EP,A1)
【文献】Amazon|SK11(エスケー11)エアダスター用シールド SADG-6 ノズル径6mm用|DIY・工具・カーテン,[オンライン],2018年07月05日,https://www.amazon.co.jp/SK11-エスケー11-エアダスター用シールド-SADG-6-ノズル径6mm用/dp/B07F8MJPMM/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP,検索日 2019.12.10
【文献】Amazon|TRUSCO(トラスコ)エアダスター用 跳ね返り防止板 ノズル外径5Φ TD-HB5|DIY・工具・カーテン,[オンライン],2009年05月16日,https://www.amazon.co.jp/TRUSCO-エアダスター用-跳ね返り防止板-ノズル外径5Φ-TD-HB5/dp/B002A5NED8/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP,検索日 2019.12.10
【文献】Amazon.co.jp:Honbobo DJI Spark専用プロペラガード着陸装置・360度全方位ガード・ランディングギア:カメ,[オンライン],2018年05月07日,https://www.amazon.co.jp/Honbobo-DJI-Spark専用プロペラガード着陸装置・360度全方位ガード・ランディングギア/dp/B07CXQ4FT4/ref=sr_1_97?__mk_ja_JP,検索日 2019.12.10
【文献】Amazon.co.jp:SHEAWA DJI Tello用全面保護カバー プロテクター 丸形ガード ケージ アクセサリー 360度完全,[オンライン],2018年07月03日,https://www.amazon.co.jp/XBERSTAR-Tello用全面保護カバー-プロテクター-アクセサリー-360度完全保護/dp/B07F7SWCLW/ref=sr_1_34?__mk_ja_JP,検索日 2019.12.10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B05B 3/00
B64C 13/16
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によりモータを駆動源として空中を自由に移動できる空中移動手段に搭載して使用できる蜂の巣駆除装置であって、
所定内容量の薬剤が充填された容器本体と、該容器本体の先端部に取り付けられたノズルと、該ノズルを押し下げて薬剤を噴射する押下げレバーを有するキャップと、を備えたスプレー容器と、
上記スプレー容器を保持する保持手段と、該スプレー容器を空中移動手段に取り付ける取付け手段と、を備えた取付けフレームと、
上記取付けフレームに対して取り付けられるモータとバッテリーとを備えた電源駆動ユニットと、
上記モータの出力軸の回転を所定ストロークの直線方向の動きに変換して上記押下げレバーを操作するレバー操作機構と、を有する薬剤噴射手段と、
上記スプレー容器または取付けフレームに基端部が接続され、先端部が外方に延びる延長杆と、該延長杆の先端部に着脱可能に取り付けられ、蜂の巣に突き刺した後、蜂の巣側に残るように係止爪が付いた突刺し管と、上記ノズルと突刺し管とを接続する延長ホースと、を有する突刺し噴射手段と、を具備していることを特徴とする空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項2】
上記
延長杆には、噴射後に蜂の巣に当たって戻って来た薬剤や、空気中に漂っている薬剤が空中移動式蜂の巣駆除装置に付着するのを抑制する付着抑制板が設けられていることを特徴とする請求項
1記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項3】
上記スプレー容器と取付けフレームを支持部材として外方に延びる支持杆と、該支持杆の先端部に取り付けられ、蜂の巣に当接することで蜂の巣にダメージを与える打突アタッチメントと、を有する損傷・破壊手段を更に具備していることを特徴とする請求項1
または2記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項4】
上記支持杆の伸長方向は、上記
延長杆の伸長方向に沿う反対の方向に設定されていることを特徴とする請求項
3記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項5】
上記支持杆には、空中移動中または空中に留まって薬剤を噴射中の空中移動式蜂の巣駆除装置のあおりを抑制する、あおり抑制板が設けられていることを特徴とする請求項
3または4記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項6】
上記支持杆には、支持杆の伸長方向に沿ってスライドするスライダーが設けられており、
上記スライダーと上記取付けフレームとの間に両者を回転可能な状態で接続する補助ステーが設けられていることを特徴とする請求項
3~5のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項7】
上記スプレー容器と取付けフレームとの間には薬剤の噴射角度を可変する噴射角度可変機構が設けられていることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項8】
上記噴射角度可変機構は、上記取付けフレームに対して取り付けられるモータ及びバッテリーと、
上記モータの出力軸に取り付けられる回動アームと、
上記モータの出力軸とスプレー容器の保持手段とを連結し、上記回動アームの先端部と接続される接続点を力点、上記モータの出力軸を支点、上記スプレー容器の保持部材との連結点を作用点として動作する連結アームと、を備えていることを特徴とする請求項
7記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【請求項9】
上記薬剤噴射手段には、薬剤噴射手段の衝突によるダメージを未然に防止ないし軽減させるガード部材が設けられていることを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所や危険な場所に作られたスズメバチ等の巣に対して、遠隔操作で安全に薬剤を噴射して駆除できる空中移動式蜂の巣駆除装置及び蜂の巣駆除方法に係り、特に薬剤の効果的な噴射に加えて蜂の巣の損傷ないし破壊までを可能にした空中移動式蜂の巣駆除装置及び蜂の巣駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から攻撃的で毒性を有するスズメバチ等の駆除の要請が多くあり、スズメバチ等の巣を発見した場合には、自治体等に連絡し、自治体等から委託された養蜂業者や害虫駆除業者等が現場に出向いてスズメバチ等の駆除と巣の撤去に当たっている。
また、スズメバチ等の駆除に当たっては、下記の特許文献1~3に示すような先端にノズルが付いた伸縮式の操作竿と、長尺な可撓性チューブと、スプレー缶と、を備えた手持ち操作式の薬剤噴霧装置が一例として使用されている。
【0003】
一方、農薬等の散布の分野では、1980年代初頭から遠隔操作により空中を自由に移動できるラジコンヘリコプターが使用されている。また近年では、より安価で手軽に操作できるドローンが新たな空中移動手段として注目されており、種々のメディア等を通じてドローンの活用事例や実証実験の様子が頻繁に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-275708号公報
【文献】実開昭51-141809号公報
【文献】実開昭63-86777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スズメバチ等の巣の多くは、背の高い樹木や構造物の軒下等、高所作業を要する場所にあるため、上記手持ち操作式の薬剤噴霧装置を使用して高所でスズメバチ等の駆除を行うことは多分に危険を伴う。
そこで、近年急速に普及しているドローンを使用し、該ドローンに薬剤が充填されたスプレー缶を搭載してスズメバチ等の駆除に利用できないかという検討が一部で始められている。
【0006】
この場合、大型の専用のドローンを開発すれば、遠隔操作によってスズメバチ等を駆除することができるが、その場合には多大な設備投資が必要になってくる。
一方、市販のドローンが使用できれば、低コストの空中移動式薬剤噴霧装置が提供できるようになるが、市販のドローンには搭載物の重量制限があり、搭載物の軽量化が課題になってくる。
【0007】
また、上記ドローン等の空中移動手段を使用して蜂の巣の近くに移動して蜂の巣に目掛けて薬剤を噴射しただけでは、蜂の巣内にいるスズメバチ等に薬剤が充分に行き渡らないため必ずしも薬剤の効果的な噴射は行われていない。また一旦、蜂の巣内にいたスズメバチ等が巣の外に出ても、蜂の巣がそのまま残っている場合には、再びその蜂の巣に逃げたスズメバチ等が戻って来ることが予想されるし、働き蜂をすべて駆除できたとしても、女王蜂が生きている限り子供を生んで、その蜂の巣を使用して再び営巣活動を活発にすることが考えられる。
【0008】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、比較的安価で扱い易いドローン等を空中移動手段として利用することを前提として、より効果的な薬剤の噴射を可能にすると共に、積極的に蜂の巣に作用して蜂の巣を損傷ないし破壊し、当該蜂の巣の再利用を防止することができる安全で実効性の高い空中移動式蜂の巣駆除装置及び蜂の巣駆除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明の請求項1による空中移動式蜂の巣駆除装置は、遠隔操作によりモータを駆動源として空中を自由に移動できる空中移動手段に搭載して使用できる蜂の巣駆除装置であって、
所定内容量の薬剤が充填された容器本体と、該容器本体の先端部に取り付けられたノズルと、該ノズルを押し下げて薬剤を噴射する押下げレバーを有するキャップと、を備えたスプレー容器と、
上記スプレー容器を保持する保持手段と、該スプレー容器を空中移動手段に取り付ける取付け手段と、を備えた取付けフレームと、
上記取付けフレームに対して取り付けられるモータとバッテリーとを備えた電源駆動ユニットと、
上記モータの出力軸の回転を所定ストロークの直線方向の動きに変換して上記押下げレバーを操作するレバー操作機構と、を有する薬剤噴射手段と、
上記スプレー容器または取付けフレームに基端部が接続され、先端部が外方に延びる延長杆と、該延長杆の先端部に着脱可能に取り付けられ、蜂の巣に突き刺した後、蜂の巣側に残るように係止爪が付いた突刺し管と、上記ノズルと突刺し管とを接続する延長ホースと、を有する突刺し噴射手段と、を具備していることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項1記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記延長杆には、噴射後に蜂の巣に当たって戻って来た薬剤や、空気中に漂っている薬剤が空中移動式蜂の巣駆除装置に付着するのを抑制する付着抑制板が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項1または2記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記スプレー容器と取付けフレームを支持部材として外方に延びる支持杆と、該支持杆の先端部に取り付けられ、蜂の巣に当接することで蜂の巣にダメージを与える打突アタッチメントと、を有する損傷・破壊手段を更に具備していることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項3記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記支持杆の伸長方向は、上記延長杆の伸長方向に沿う反対の方向に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項3または4記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記支持杆には、空中移動中または空中に留まって薬剤を噴射中の空中移動式蜂の巣駆除装置のあおりを抑制する、あおり抑制板が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項3~5のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記支持杆には、支持杆の伸長方向に沿ってスライドするスライダーが設けられており、
上記スライダーと上記取付けフレームとの間に両者を回転可能な状態で接続する補助ステーが設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項7による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項1~6のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記スプレー容器と取付けフレームとの間には薬剤の噴射角度を可変する噴射角度可変機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項8による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項7記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記噴射角度可変機構は、上記取付けフレームに対して取り付けられるモータ及びバッテリーと、
上記モータの出力軸に取り付けられる回動アームと、
上記モータの出力軸とスプレー容器の保持手段とを連結し、上記回動アームの先端部と接続される接続点を力点、上記モータの出力軸を支点、上記スプレー容器の保持部材との連結点を作用点として動作する連結アームと、を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項9による空中移動式蜂の巣駆除装置は、請求項1~8のいずれかに記載の空中移動式蜂の巣駆除装置において、上記薬剤噴射手段には、薬剤噴射手段の衝突によるダメージを未然に防止ないし軽減させるガード部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
【0019】
【発明の効果】
【0020】
そして、上記手段によって以下のような効果が得られる。即ち、本発明による空中移動式蜂の巣駆除装置によれば、遠隔操作によりモータを駆動源として空中を自由に移動できるドローン等の空中移動手段に搭載して使用できるから、農薬等の散布に使用されているエンジンを駆動源とする高価なラジコンヘリコプターに比べて小型、軽量であり、低コストで安全、操作が容易で人手不足の解消にも寄与し得る空中移動式蜂の巣駆除装置が提供できるようになる。
また、突刺し管を有する突刺し噴射手段を具備しているから、薬剤噴射手段を使用して行う、蜂の巣周囲の薬剤噴射に加えて、薬剤噴射手段と突刺し噴射手段を使用して行う蜂の巣内部への薬剤噴射が可能になって効果的な薬剤の噴射が可能になる。
【0021】
また、スプレー容器または取付けフレームに接続される延長杆と延長杆の先端部に取り付けられる係止爪が付いた突刺し管と、スプレー容器のノズルと突刺し管とを接続する延長ホースと、を有する突刺し噴射手段を採用した場合には、蜂の巣に突刺し管を突き刺した状態で空中移動手段はその場に留まっている必要はなく、空中移動手段がその場を移動しても蜂の巣内への薬剤の噴射を継続して行うことが可能になる。
【0022】
また、上記延長杆に対して付着抑制板を設けた場合には、突刺し管から噴射された薬剤が蜂の巣に当たって戻って来た薬剤や、空気中に漂っている薬剤の空中移動式蜂の巣駆除装置側への移動を防止できるから、空中移動式蜂の巣駆除装置への薬剤の付着を少なくすることが可能になる。
また、スプレー容器と取付けフレームに対して打突アタッチメントを有する損傷・破壊手段を更に設けた場合には、打突アタッチメントを蜂の巣に押し当てることで、蜂の巣に口径の大きな穴を開け、蜂の巣を崩すことが可能になるから、当該蜂の巣を使用しての蜂の営巣活動の継続を防止することが可能になる。また、形成した口径の大きな穴に薬剤を噴射することで、一層効果的な薬剤の噴射が可能になる。
【0023】
また、打突アタッチメントが先端に設けられる支持杆の伸長方向を、突刺し管が先端に取り付けられる延長杆の伸長方向に沿う反対の方向に設定した場合には、突刺し管側と打突アタッチメント側の重量バランスが取れるから、空中移動式蜂の巣駆除装置の傾きが防止されて、走行性能が向上し、姿勢が安定する。
更に、上記支持杆に対してあおり抑制板を設けた場合には、空中移動中または空中に留まって薬剤を噴射中の空中移動式蜂の巣駆除装置に対して風が当たって機体を傾けるような力が働いても、上記あおり抑制板が抵抗になって当該機体のあおりを抑制することができる。
【0024】
また、上記支持杆に対してスライダーを設け、スライダーと取付けフレームとの間に両者を回転可能な状態で接続する補助ステーを設けた場合には、支持杆の支持姿勢が安定し、支持杆による打突アタッチメントの支持強度を向上させることが可能になる。
また、補助ステー両端を回転可能に接続することによって支持杆の傾きに伴って生じるスライダーの位置の移動にも対応できるようになる。
【0025】
また、スプレー容器と取付けフレームとの間に、薬剤の噴射角度を可変する噴射角度可変機構を設けた場合には、蜂の巣が作られている場所の構造等に応じて空中移動手段の姿勢はそのままで薬剤の噴射角度のみを可変することが可能になるから、空中移動式蜂の巣駆除装置の対応範囲が拡大する。
更に、噴射角度可変機構として、モータ及びバッテリーと、回動アームと、連結アームと、を備える電動式の機構を採用した場合には、遠隔操作で薬剤の噴射角度を自由に可変することができるから、噴射角度可変機構の操作性が向上する。
【0026】
また、薬剤噴射手段にガード部材を設けた場合には、作業中、誤って薬剤噴射手段を建物の屋根や外壁あるいは岩壁や樹木等に衝突させた場合でも、上記ガード部材がその衝撃を吸収するため薬剤噴射手段等に与えるダメージを小さくすることができる。
【0027】
また、本発明の蜂の巣駆除方法によれば、薬剤噴射手段を使用する外周噴射工程を備えているから、蜂の巣の周りに薬剤を噴射して蜂の巣内の蜂を巣外に追い出すことが可能になる。また、薬剤噴射手段と突刺し噴射手段を使用する突刺し噴射工程を備えているから、蜂の巣の内部に直接薬剤を噴射することができるようになり、より効果的な蜂の巣内の蜂の駆除が可能になる。
更に、損傷・破壊手段を使用する損傷・破壊工程を備えているから、蜂の巣に口径の大きな穴を形成する等、ダメージを与えて、当該蜂の巣を継続して使用する蜂の営巣活動の再開を防止することができる。また、形成した口径の大きな穴から薬剤を噴射させて更に一層効果的な薬剤の噴射を行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動式蜂の巣駆除装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動手段に空中移動式蜂の巣駆除装置を搭載した状態を示す斜め前方からの斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動手段に空中移動式蜂の巣駆除装置を搭載した状態を示す斜め後方からの斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動式蜂の巣駆除装置を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動手段に空中移動式蜂の巣駆除装置を搭載した状態を示す平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、容器本体からキャップを取り外した状態の側断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、容器本体にキャップを取り付けた状態の側断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、延長ノズルと形状の違う種々の突刺し管を示す側面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、損傷・破壊手段を拡大して示す側面図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空中移動式蜂の巣駆除装置を使用することによって実行される蜂の巣駆除方法を示す説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態を示す図で、空中移動式蜂の巣駆除装置における容器本体の先端部から突刺し管までの部分を拡大して示す側面図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態を示す図で、空中移動式蜂の巣駆除装置における容器本体の先端部から突刺し管までの部分を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1~
図10に示す第1の実施の形態と、
図11及び
図12に示す第2の実施の形態と、の二つの実施の形態を例にとって、本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置の構成と作動態様を説明する。また、上記第1の実施の形態の説明の中で、当該第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置を使用した場合を例にとって本発明の蜂の巣駆除方法の内容を説明する。
【0030】
尚、以下の説明では最初に、本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置の取付け対象となる空中移動手段の構成について簡単に説明し、次いで第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置の構成について具体的に説明する。
続いて、上記第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置の作動態様を、該空中移動式蜂の巣駆除装置を使用することによって実行される本発明の蜂の巣駆除方法の内容の説明の中で併せて説明する。
【0031】
次に、第2の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置の構成と作動態様を、上記第1の実施の形態との相違点を中心に具体的に説明し、最後に上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態とは部分的構成を異にする他の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置の構成と蜂の巣駆除方法の内容とに言及する。
【0032】
[第1の実施の形態]
(1)空中移動手段の構成(
図1~
図3参照)
図示の空中移動手段3は、小型無人航空機いわゆるドローンであり、コントローラユニット5を使用して行う遠隔操作によって、一例として6組設けられる回転翼ユニット7を所定の回転方向に所定の回転速度で回転させることによって、上昇、下降、前後左右(X、Y、Z)への移動、空中での静止(ホバリング)ができるように構成されている。
この空中移動手段3は、放射状に6本のアーム16が等間隔で延びる本体部15と、各アーム16の先端部に設けられる上述した6組の回転翼ユニット7と、上記6本のアーム16の付け根付近から下方に向けて湾曲して延びる一例として4本の脚部17と、該脚部17の上端を接続するように水平に設けられる設置板18と、該設置板18上に配置される受信器、姿勢制御装置、メインコントローラー等を含む制御装置19と、を一例として備えている。
【0033】
また、上記制御装置19には、後述する本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置1の取付けフレーム35の取付けホルダー34における一例として前方の下面に設けられるカメラ21から延びる配線が接続されている。
また、上記回転翼ユニット7は、回転翼9と、モータ11と、図示しないバッテリーと、を個別に備えることによって一例として構成されている。また、上記コントローラユニット5は、上記カメラ21によって撮影した画像等を表示するモニタ23と、空中移動手段3の各部の動きを制御するコントローラ25と、を備えている。
【0034】
(2)空中移動式蜂の巣駆除装置の構成(
図1~
図9参照)
本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置1は、上述した空中移動手段3に搭載して使用できる蜂の巣Cの駆除を目的とする装置である。具体的には、所定内容量の薬剤Lが充填された容器本体29と、該容器本体29の先端部に取り付けられたノズル31と、該ノズル31を押し下げて薬剤Lを噴射する押下げレバー33を有するキャップ32と、を備えたスプレー容器27と、該スプレー容器27を保持する保持手段37と、該スプレー容器27を空中移動手段3に取り付ける取付け手段39と、を備えた取付けフレーム35と、該取付けフレーム35に対して取り付けられるモータ43とバッテリー45とを備えた電源駆動ユニット41と、上記モータ43の出力軸の回転を所定ストロークの直線方向の動きに変換して上記押下げレバー33を操作するレバー操作機構47と、を有する薬剤噴射手段49を基本的に備えている。
【0035】
また、本実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aにあっては、上記ノズル31に対して接続される延長ノズル51と、該延長ノズル51の先端部に着脱可能に取り付けられる突刺し管53と、を有する突刺し噴射手段55を備えており、更に上記スプレー容器27と取付けフレーム35を支持部材として外方に延びる支持杆57と、該支持杆57の先端部に取り付けられ、蜂の巣Cに当接することで蜂の巣Cにダメージを与える打突アタッチメント59と、を有する損傷・破壊手段61を備えている。
【0036】
スプレー容器27は、本実施の形態では水平に寝かした状態で使用しており、スプレー容器27としては、重量が400g程度までの市販のスプレー容器が使用できる。このスプレー容器27には、スズメバチB等の駆除に使用できる所定内容量(例えば100mLから400mL)の薬剤Lが充填された金属製の容器本体29と、該容器本体29の先端部に設けられるノズル31を薬剤Lの噴射時に押し下げる、一例として回動式の押下げレバー33を一体に備えるプラスチック製のキャップ32と、が備えられている。
【0037】
また、上記スプレー容器27には、
図4に示すように前方+Yにスプレー容器27より一回り大きな前方カバー63、後方-Yに前方カバー63より一回り大きな後方カバー65がそれぞれ反対方向から挿し込まれ、その一部を重ね合わせるようにして設けられている。前方カバー63と後方カバー65は、ペットボトルの底部を切り落としたような一端面が閉塞された筒状の部材で、閉塞されたそれぞれの一端面には、上述した突刺し噴射手段55の延長ノズル51の基端部を保持するためのスクリューキャップ67と、上述した損傷・破壊手段61の支持杆57の基端部を保持するためのスクリューキャップ68と、が設けられている。
尚、このうち前方+Yに設けられるスクリューキャップ67と前方カバー63の閉塞された一端面の中央には突刺し噴射手段55の延長ノズル51をスプレー容器27のノズル31に導くための図示しない開口部が形成されている。
【0038】
また、スプレー容器27のキャップ32内に設けられている押下げレバー33にも
図6及び
図7に示すように図示しない開口部が設けられていて、容器本体29の先端部から延びるノズル31は、この開口部を通って上述した延長ノズル51の基端部に内嵌されて接続されるように構成されている。
取付けフレーム35は、取付け手段39として一例として取付けホルダー34と脚部フレーム36を備えており、保持手段37として一例として取付け手段39としても機能する上記取付けホルダー34と締付けベルト38とを備えている。
【0039】
このうち、取付け手段39は一例としてアルミニウム等の軽量な金属製の部材によって構成されており、上記前方カバー63と後方カバー65によって被覆されたスプレー容器27を水平に寝かせてその胴部を支持する正面視凹字形状の取付けホルダー34と、該取付けホルダー34の下面から下方に向けて延び、その下方に位置する空中移動手段3における本体部15上に取り付けられている取付けフレーム35における基台13上に固定され、立ち上げられている脚部フレーム36と、を備えることによって一例として構成されている。
一方、保持手段37としては、上記スプレー容器27の保持部材としても機能する取付けホルダー34に加えて、バックル40によって締付け位置を可変できる帯状の締付けベルト38が一例として使用でき、他に面状ファスナ等を締付けベルト38として使用することも可能である。
【0040】
電源駆動ユニット41は、次に述べるレバー操作機構47を駆動するための一組のモータ43A及びバッテリー45Aと、後述する噴射角度可変機構71を駆動するための他の一組のモータ43B及びバッテリー45Bと、の二組のモータとバッテリーを備えることによって一例として構成されている。
このうち、レバー操作機構47を駆動するためのモータ43Aは、一例としてサーボモータによって構成されており、上述した取付けホルダー34の前方+Y寄りの一例として右側面に取り付けられている。一方、噴射角度可変機構71を駆動するためのモータ43Bは、同じく一例としてサーボモータによって構成されており、上述した基台13上に取り付けられている。また、2つのバッテリー45A、45Bも上述した基台13上に配置されている。
【0041】
レバー操作機構47は、上述したモータ43Aの出力軸に取り付けられる回動レバー73と、該回動レバー73の回動自由端に設けられる当接部材75と、を備えることによって一例として構成されている。
因みに、モータ43Aの出力軸が
図4中、時計方向に所定の角度、回転すると回動レバー73は、
図4中、矢印で示す反時計方向に回動して押下げレバー33を
図4中、右方に押し下げる。これにより、ノズル31を同方向に押し下げて薬剤Lを噴射する。そして、必要な量の薬剤Lを噴射したら、モータ43Aの出力軸を逆方向に回転させて薬剤Lの噴射を停止する。
【0042】
突刺し噴射手段55は、一例としてアルミニウム等の軽量な金属によって形成される長尺なパイプ材によって構成される延長ノズル51を備えている。延長ノズル51の内径は、上述したノズル31が内嵌する大きさに形成されており、その先端から幾分、基端寄りに一例として円環状のストッパ77が設けられている。尚、このストッパ77は、延長ノズル51の先端部に外嵌する突刺し管53の嵌合深さを規定するものである。
【0043】
また、突刺し噴射手段55は、一例としてアルミニウム等の軽量な金属によって形成される短寸のパイプ材によって構成される突刺し管53を備えている。突刺し管53は、上記延長ノズル51より一回り大きく、突刺し管53の内径は、上述した延長ノズル31が内嵌する大きさに形成されている。
突刺し管53の先端部の形状は、蜂の巣Cに突き刺し易いように先が尖った形状が望ましく、
図8(a)に示すようにパイプ材の先端を斜めにカットした形状や
図8(b)に示すようにパイプ材の先端の外周のエッジを面取りした形状や
図8(c)に示すようにパイプ材の先端をギザギザに山型にカットした形状等が採用可能である。
【0044】
また、突刺し管53の胴部の形状は、
図8(a)(b)(c)に示すような直管状のものに限らず、
図8(d)に示すように例えば45°に折り曲げた曲管状のものや
図8(e)に示すように90°に折り曲げた曲管状のものであってもよい。
更に、後述する蜂の巣Cの損傷・破壊後に行う薬剤Lの噴射で使用する場合には、突刺し管53の先端部に例えば
図8(e)で示すような拡散用の噴射口79を取り付けるようにすることも可能である。
【0045】
また、本実施の形態では噴射後に蜂の巣Cに当たって戻って来た薬剤や、空気中に漂っている薬剤Lを浴びて空中移動式蜂の巣駆除装置1Aに薬剤Lが付着するのを抑制する付着抑制板81が、延長ノズル51の前後方向Yの中間位置に設けられている。
付着抑制板81は、一例として円板状の部材によって構成されており、その外周の対向する一対の縁部は前方+Y側に幾分、変位するよう湾曲して設けられている。
【0046】
また、損傷・破壊手段61の支持杆57の伸長方向は、突刺し噴射手段55の延長ノズル51の伸長方向に沿う反対の方向に設定されている。即ち、支持杆57と延長ノズル51は、前後方向Yに延びる同一直線状上に配置されており、その前方+Y側に突刺し管53、その後方-Y側に打突アタッチメント59が位置するように設けられている。
【0047】
また、損傷・破壊手段61の支持杆57には、空中移動中または空中に留まって薬剤Lを噴射中の空中移動式蜂の巣駆除装置1Aのあおりを抑制する、あおり抑制板83が設けられている。
あおり抑制板83は、一例として平面視矢羽根形状をした板材が使用されており、該矢羽根の先端が前方+Yを向いた水平姿勢で支持杆57の前後方向Yの中間位置に当該あおり抑制板83は設けられている。
【0048】
また、損傷・破壊手段61の支持杆57を支持する構造として、スライダー85と補助ステー87が設けられている。即ち、支持杆57には支持杆57の伸長方向となる前後方向Yに沿ってスライドするスライダー85が設けられており、該スライダー85と上記取付けフレーム35との間に両者を回転可能な状態で接続する補助ステー87が設けられている。
尚、上記補助ステー87は、支持杆57の上下方向Zの傾き等に対応して角度を変え、その角度変化に伴って移動するスライダー85を介して支持杆57を支持するように構成されている。
【0049】
また、損傷・破壊手段61の支持杆57の先端に設けられる打突アタッチメント59は、
図9に示すように上記突刺し管53に比べて径の大きな一例としてカップ状の部材によって構成されている。そして、打突アタッチメント59の先端には、一例として山型の多数の刃が形成されている。
このようにして構成される打突アタッチメント59を蜂の巣Cに押し当てると、蜂の巣Cには口径の大きな穴が形成されるため蜂の巣Cとしての機能を保てなくなって当該蜂の巣Cは損傷・破壊に至ることになる。
【0050】
更に、上記スプレー容器27と取付けフレーム35との間には、薬剤Lの噴射角度θを可変する噴射角度可変機構71が設けられている。噴射角度可変機構71は、上記取付けフレーム35の基台13上に設けられている上述したモータ43B及びバッテリー45Bと、上記モータ43Bの出力軸に取り付けられる回動アーム89と、該回動アーム89の先端部と接続される接続点を力点O、上記モータ43Bの出力軸を支点P、上記スプレー容器27の保持部材となる取付けホルダー34との連結点を作用点Qとして動作する一例としてコの字状の連結アーム91と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0051】
また、本実施の形態では、上記連結アーム91の作用点Qとなる連結アーム91の連結点は、取付けホルダー34の後部寄りに設けられており、取付けホルダー34の前方寄りには、一例として湾曲したガイド溝93が形成されたガイド板95が設けられている。
また、上記ガイド溝93には、基台13上に設けられる支持台99に取り付けられているガイドピン97が係合するように構成されている。
【0052】
この他、空中移動式蜂の巣駆除装置1Aには、薬剤噴射手段49が周辺の障害物に衝突してダメージを受けないように未然に防止する、あるいは、そのダメージを軽減させるために上記薬剤噴射手段49の周囲を覆うガード部材101が設けられている。
本実施の形態では、複数本のワイヤーWを放射状に配置して上方に湾曲させてドーム状に形成したワイヤーフレーム構造のガード部材101が一例として採用されている。尚、上記ワイヤーWの両端は、空中移動手段3における6つの回転翼9の下方に設けられているガイドフレーム10に固定されており、湾曲した複数本のワイヤーWの頂部は、一例として結束材103によって1点でまとめられている。
【0053】
(3)空中移動式蜂の巣駆除装置の作動態様と蜂の巣駆除方法の内容(
図10参照)
次に、このようにして構成される本実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aの作動態様を、該空中移動式蜂の巣駆除装置1Aを使用することによって実行される本発明の蜂の巣駆除方法の内容の説明の中で併せて説明する。
本発明の蜂の巣駆除方法は、遠隔操作によりモータ11を駆動源として空中を自由に移動できる空中移動手段3に搭載して使用され、容器本体29内に充填された薬剤Lを外部に噴射する薬剤噴射手段49と、突刺し管53を蜂の巣Cに突き刺して薬剤Lを噴射する突刺し噴射手段55と、打突アタッチメント59を蜂の巣Cに当接することで蜂の巣Cにダメージを与える損傷・破壊手段61と、を使用して蜂の巣Cの駆除を行う蜂の巣駆除方法であって、以下詳述する外周噴射工程S1と、突刺し噴射工程S2と、損傷・破壊工程S3と、の三つの工程を有することによって基本的に構成されている。
【0054】
(A)外周噴射工程
外周噴射工程S1は、薬剤噴射手段49を使用して蜂の巣Cの周りに薬剤Lを噴射して蜂の巣C内のスズメバチB等を巣外に追い出す工程である。
即ち、最初にコントローラユニット5のコントローラ25を操作して空中移動手段3を飛び立たせ、駆除を行う蜂の巣Cに向けて空中移動手段3を移動させる。この際、空中移動手段3の操縦者は、カメラ21で撮影した画像をモニタ23で確認しながら空中移動手段3をスズメバチB等のいる蜂の巣Cに接近させる。蜂の巣Cの近くに空中移動手段3が到達したら空中移動手段3をホバリングに移行させて空中に停止させる。そして薬剤Lの噴射を行う最適な位置と角度を探して空中移動手段3の位置と方向を調整し、リモコン送信器105により噴射角度可変機構71を操作してノズル31の噴射角度θを調整する。
【0055】
この状態でリモコン送信器105のONボタン107を押すと、モータ43Aが駆動を開始し、モータ43Aの出力軸に取り付けられている回動レバー73を所定の方向に所定角度回転させてスプレー容器27の押下げレバー33を所定ストローク押し下げる。
これによりノズル31から薬剤Lの噴射が開始され、蜂の巣Cの外周を中心とする薬剤Lの噴射が実行される。この場合の薬剤Lの噴射時間は一例として30~60秒程度である。所定時間経過後リモコン送信器105のOFFボタン109を押して薬剤Lの噴射を停止する。
【0056】
(B)突刺し噴射工程
突刺し噴射工程S2は、薬剤噴射手段49と突刺し噴射手段55を使用して蜂の巣Cに突刺し管53を突き刺して蜂の巣C内に薬剤Lを直接噴射する工程である。
即ち、空中移動手段3を蜂の巣Cに更に近付けて行き、延長ノズル51の先端に取り付けてある突刺し管53を蜂の巣Cに突き刺し、この状態でリモコン送信器105のONボタン107を押して薬剤Lの噴射を実行する。この状態では薬剤Lは蜂の巣Cの内部に重点的に作用し、当該蜂の巣Cに大きな打撃を与える。そして、必要な量の薬剤Lが噴射されたら、リモコン送信器105のOFFボタン109を押して薬剤Lの噴射を停止し、空中移動手段3を後退させて蜂の巣Cに突き刺した突刺し管53を蜂の巣Cから引き抜く。
【0057】
(C)損傷・破壊工程
損傷・破壊工程S3は、損傷・破壊手段61を使用して蜂の巣Cに致命的なダメージを与えてスズメバチB等の営巣活動の再開を防止する工程である。
即ち、空中移動手段3を180°回転させて打突アタッチメント59を蜂の巣Cに臨ませる。この状態で再び空中移動手段3を蜂の巣Cに近付けて押し当てると、打突アタッチメント59が蜂の巣Cを突き破って大きな穴が形成される。同様の動作を繰り返すことによって当該蜂の巣Cの外殻の損傷が大きくなり、最終的に破壊されて崩壊に至る。
【0058】
また、打突アタッチメント59のよって形成された蜂の巣Cの大きな穴に再び突刺し管53を刺し込んで、更に薬剤Lを噴射することも可能である。
蜂の巣Cの駆除の完了後は、コントローラユニット5のコントローラ25を操作して空中移動手段3を当初待機していた所定の場所に移動させて着地させる。
【0059】
そして、このようにして構成される本実施の形態により空中移動式蜂の巣駆除装置1Aと蜂の巣駆除方法によれば、装置の小型、軽量化と低コスト化が図れ、ドローン等の小型の空中移動手段3に搭載可能な空中移動式蜂の巣駆除装置1が提供できるようになる。また、この空中移動式蜂の巣駆除装置1Aは遠隔操作が可能であるから、スズメバチB等の蜂の巣Cの駆除に使用しても作業者はスズメバチB等に刺される心配がなく、高所作業等も不要であるから安全であり、操作が容易で、人を選ばず、人手不足の解消にも寄与し得るようになる。
更に、本実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aと蜂の巣駆除方法によれば蜂の巣Cの外からだけでなく、蜂の巣Cの内部に直接、薬剤Lを噴射できるから、より効果的な薬剤Lの噴射が可能になり、蜂の巣Cに重大な損傷を与えて、崩壊に至る破壊をもたらし、当該蜂の巣Cの再利用を防止することが可能になる。
【0060】
[第2の実施の形態]
(1)空中移動式蜂の巣駆除装置の構成(
図11及び
図12参照)
第2の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Bは、突刺し噴射手段55の構成が上記第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aと相違するだけで、他の構成については上記第1の実施の形態と同様である。
従って、ここでは上記第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略し、上記第1の実施の形態と相違する突刺し噴射手段55の構成を中心に説明する。
【0061】
即ち、本実施の形態では突刺し噴射手段55としては、スプレー容器27(前方カバー63を含む)または取付けフレーム35に基端部が接続され、先端部が外方(前方+Y)に延びる延長杆111と、該延長杆111の先端部に着脱可能に取り付けられ、蜂の巣Cに突き刺した後、蜂の巣C側に残るように係止爪113が付いた突刺し管115と、上記ノズル31と突刺し管115とを接続する延長ホース116と、を有する突刺し噴射手段55Bが採用されている。
【0062】
具体的には、アルミニウム等の軽量な金属製パイプ等によって構成される延長杆111を、上記損傷・破壊手段61の支持杆57とスプレー容器27の中心を通る軸線Mの近傍のオフセットされた位置に配置し、延長杆111の基端部を適宜の支持部材117を介してスプレー容器27または取付けフレーム35に固定する支持構造が採られている。
上記延長杆111には前方+Y側の端部に延長ホース116の先端部を受け入れる開口部112が形成されている。
【0063】
突刺し管115は、上述した第1の実施の形態の突刺し管53と同様、先端部が蜂の巣Cに突き刺し易い形状になっており、突刺し管115の内径は上記延長杆111の外径よりも幾分大きめに形成されている。
また、突刺し管115の外周部には、一例として側面視三角形状の係止爪113が周方向に等間隔で複数個設けられている。
【0064】
延長ホース116は、基端部が例えば接続具118によってノズル31に接続されており、延長ホース116の先端部は、上記延長杆111の開口部112を通って上記突刺し管115内に至るように配置されている。
尚、この延長ホース116は、上記延長杆111よりも長く、余裕を持たせた長さに形成されている。そして、このように長い延長ホース116が大きく下方に弛まないようにする構成として図示のような保持リング119とホースリール120が一例として設けられている。
【0065】
(2)空中移動式蜂の巣駆除装置の作動態様
本実施の形態では、突刺し噴射工程S2で行う突刺し管115を蜂の巣Cに突き刺した後の空中移動式蜂の巣駆除装置1Bの作動態様のみが上記第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aの作動態様と相違している。
従って、ここでは突刺し管115を蜂の巣Cに突き刺した後の空中移動式蜂の巣駆除装置1Bの作動態様を中心にその前後の作動態様と併せて説明する。
【0066】
本実施の形態では上記第1の実施の形態と同様、外周噴射工程S1の終了後に空中移動手段3を蜂の巣Cに更に近付けて行き、延長杆111の先端に取り付けられている突刺し管115を蜂の巣Cに突き刺す。
その後、空中移動手段3を後退させると、延長杆111から突刺し管115が外れて蜂の巣Cに突刺し管115が残る。これは突刺し管115の外周に設けられている係止爪113が蜂の巣Cに引っ掛かり、その引っ掛かり力の方が延長杆111と突刺し管115間の摩擦力よりも大きくなるからである。
【0067】
この状態で空中移動手段3が更に後退して行くと、ホースリール120に巻かれていた延長ホース116が繰り出され伸長して行く。空中移動手段3が蜂の巣Cから所定の距離離れたところでリモコン送信器105のONボタン107を押して薬剤Lを噴射する。
薬剤Lは、上記第1の実施の形態と同様、蜂の巣Cの内部で噴射し、蜂の巣C内の空間を薬剤Lで充満させる。そして、必要な量の薬剤Lの噴射された後、リモコン送信器105のOFFボタン109を押して薬剤Lの噴射を停止する。
【0068】
この状態で空中移動手段3を更に後退させると、延長ホース116が引っ張られた状態になって、その先端部に接続されている突刺し管115を引き抜く。この際、突刺し管115の外周に設けられている係止爪113の存在により蜂の巣Cの損傷は上記第1の実施の形態よりも大きくなり、次工程の損傷・破壊工程S3への移行を円滑にする。
そして、このようにして構成される本実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Bによっても、上述した第1の実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Aと同様の作用、効果が発揮できる。更に、本実施の形態による空中移動式蜂の巣駆除装置1Bによれば、空中移動式蜂の巣駆除装置1Bを蜂の巣Cから離れた位置に移動させてから突刺し噴射工程S2における薬剤Lの噴射を行うことができ、より安全、確実に蜂の巣Cの駆除を実行できるようになる。
【0069】
[他の実施の形態]
本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置1及び蜂の巣駆除方法は、上述した実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、既存の空中移動手段3を使用して該空中移動手段3に本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置1を取り付けて使用するといった態様で説明したが、空中移動手段3に本発明の機能を組み込んだ専用機とすることも可能である。
この場合には、空中移動式蜂の巣駆除装置1の駆動源を空中移動手段3の駆動源から取る等、部品の共通化ができ、装置の一層の小型、軽量化が図られるようになる。また、リモコン送信器105の機能を空中移動手段3のコントローラユニット5におけるコントローラ25に組み込むことも可能である。
【0070】
また、突刺し噴射手段55と損傷・破壊手段61は、それぞれ一組ずつ設ける他、それぞれ複数組ずつ設けることも可能である。また、噴射角度可変機構71は、必ずしも電動式でなくてもよく、作業者が現場の状況を確認して手動で噴射角度θを可変する手動式の噴射角度可変機構71とすることも可能であるし、噴射角度θを左右方向Xにも可変できる構成とすることも可能である。
この他、ガード部材101のワイヤーWを骨組みとしてビニール等の被膜を被せること、剛性のあるカバーを設置することも可能である。因みに、このように構成した場合には、薬剤Lの付着を更に少なくでき、多少の雨なら雨中での蜂の巣Cの駆除作業にも使用できるようになる。
【0071】
更に、上記二つの実施の形態では、基本的に薬剤噴射手段49と突刺し噴射手段55と損傷・破壊手段61の三つの手段を具備することによって空中移動式蜂の巣駆除装置1を構成したが、突刺し噴射手段55の突刺し管53の形状や大きさを工夫することで損傷・破壊手段61の打突アタッチメント59と同様の作用、効果を行うことができるときには、損傷・破壊手段61を省略して、基本的に薬剤噴射手段49と突刺し噴射手段55の二つの手段を具備することのみによって空中移動式蜂の巣駆除装置1を構成することが可能である。
同様に、本発明の蜂の巣駆除方法においても、損傷・破壊工程S3を省略して、外周噴射工程S1と突刺し噴射工程S2の二工程のみによって本発明の蜂の巣駆除方法を構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の空中移動式蜂の巣駆除装置及び蜂の巣駆除方法は、高所に作られたスズメバチ等の蜂の巣の撤去等、危険を伴う薬剤噴霧の作業現場で利用でき、特に装置の小型、軽量化を図り、低コストで安全、そして操作が簡単、且つ薬剤の効果的な噴射が可能で蜂の巣に損傷・破壊に至るダメージを与えたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0073】
1 空中移動式蜂の巣駆除装置
3 空中移動手段
5 コントローラユニット
7 回転翼ユニット
9 回転翼
10 ガードフレーム
11 モータ
13 基台
15 本体部
16 アーム
17 脚部
18 設置板
19 制御装置
21 カメラ
23 モニタ
25 コントローラ
27 スプレー容器
29 容器本体
31 ノズル
32 キャップ
33 押下げレバー
34 取付けホルダー
35 取付けフレーム
36 脚部フレーム
37 保持手段
38 締付けベルト
39 取付け手段
40 バックル
41 電源駆動ユニット
43 モータ
45 バッテリー
47 レバー操作機構
49 薬剤噴射手段
51 延長ノズル
53 突刺し管
55 突刺し噴射手段
57 支持杆
59 打突アタッチメント
61 損傷・破壊手段
63 前方カバー
65 後方カバー
67 スクリューキャップ
68 スクリューキャップ
71 噴射角度可変機構
73 回動レバー
75 当接部材
77 ストッパ
79 噴射口
81 付着抑制板
83 あおり抑制板
85 スライダー
87 補助ステー
89 回動アーム
91 連結アーム
93 ガイド溝
95 ガイド板
97 ガイドピン
99 支持台
101 ガード部材
103 結束材
105 リモコン送信器
107 ONボタン
109 OFFボタン
111 延長杆
112 開口部
113 係止爪
115 突刺し管
116 延長ホース
117 支持部材
118 接続具
119 保持リング
120ホースリール
B スズメバチ
C 蜂の巣
L 薬剤
O 力点
P 支点
Q 作用点
X 左右方向
Y 前後方向
Z 上下方向
θ 噴射角度
W ワイヤー
S1 外周噴射工程
S2 突刺し噴射工程
S3 損傷・破壊工程
M 軸線