(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】貼着装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20220914BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20220914BHJP
H05K 3/32 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
B65H37/04 B
B23P21/00 305Z
H05K3/32 B
(21)【出願番号】P 2021083723
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2022-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149011
【氏名又は名称】株式会社大橋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 尚克
(72)【発明者】
【氏名】冨田 明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 祐輔
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004336(JP,A)
【文献】特開2001-220057(JP,A)
【文献】特開平10-260422(JP,A)
【文献】特開2012-059799(JP,A)
【文献】特開2011-096956(JP,A)
【文献】特開2012-138453(JP,A)
【文献】特開2011-139080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00
H05K 3/32
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のセパレータに複数の個片フィルムが積層されたテープ部材に対してツールを押し付けて当該個片フィルムをワークに貼着させる貼着装置であって、
前記テープ部材が取り付けられ、先頭に位置する前記個片フィルムを貼着基準位置に向けて送り出す送り出し手段と、
積層した前記セパレータが位置する側に設けられ、前記ツールを前記テープ部材に向けて移動させる第一移動手段と、当該ツールを前記テープ部材が送り出される向きに沿って移動させる第二移動手段とを有する貼着手段と、
積層した前記個片フィルムが位置する側に設けられ、前記ワークを保持するテーブルと、当該テーブルを移動させるテーブル移動手段とを有する搬送手段と、
積層した前記個片フィルムが位置する側に設けられ、前記テープ部材における先頭に位置する前記個片フィルムを撮像する撮像手段と、
前記第一移動手段に指令を送って前記ツールを前記テープ部材に押し付けるよう制御することが可能であり、且つ、前記ツールを前記テープ部材に押し付けるにあたって、前記撮像手段からの撮像データに基づいて先頭に位置する前記個片フィルムの現在位置を算出するとともに当該現在位置と前記貼着基準位置とのずれ量を算出し、当該ずれ量に基づいて前記ツールと前記ワークを前記現在位置に対応する位置に移動させるよう前記第二移動手段及び前記テーブル移動手段に指令を送る制御手段と、を備える貼着装置。
【請求項2】
前記貼着手段は、前記制御手段からの指令に基づいて、前記ツールを前記テープ部材が送り出される向きに対して交差する向きに沿って移動させる第三移動手段を備える請求項1に記載の貼着装置。
【請求項3】
前記個片フィルムが下側に位置して前記セパレータが上側に位置する位置関係において前記貼着基準位置の直上へ移動可能であって、前記撮像手段で前記個片フィルムを撮像するにあたって当該貼着基準位置の直上に位置する状態で前記テープ部材の前記セパレータに向けて光を照射する照明ユニットを備える、請求項1又は2に記載の貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個片化された異方性導電フィルム(以下「個片フィルム」と称する)をワーク(電子部品を実装する基板等)に貼着するための貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子部品を基板等のワークに実装するにあたっては、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含んだ異方性導電フィルム(ACF)をワークに貼着させる貼着装置が使用される。
【0003】
下記の特許文献1に示されている貼着装置は、ともに長尺状になるセパレータと異方性導電フィルムとを積層させたテープ部材を使用する。またこの貼着装置は、テープ部材を送り出す送り出し手段と、テープ部材の上方に設けられ、ツールをテープ部材に向けて移動させる貼着手段と、テープ部材の下方に設けられ、ワークを保持したテーブルを移動させる搬送手段とを備えている。そして送り出し手段によって、異方性導電フィルムにおける送り出し方向先頭部分がツールの直下に位置するようにテープ部材を送り出し、更に搬送手段によってワークをツールの直下に移動させる。その後、貼着手段でツールをテープ部材に押し付けることによって、異方性導電フィルムをワークに貼着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年は、電子部品等をより高密度で実装したいとする要望が高まっていて、ワークに対して異方性導電フィルムをより高精度で貼着させる必要性が増している。また従来のワークは、形状が単純(例えば外形が矩形状であって厚みは一定)なものが大半であったが、最近は複雑な形状のワーク(例えば外形が単純な矩形状ではなかったり、表面に凸部や開口部が設けられていたりする等)も出現している。このため、異方性導電フィルムをワークの形状に合わせて個片化した個片フィルムを使用することがある。ここで、上記のような貼着装置で個片フィルムを自動的に貼着するには、複数の個片フィルムをセパレータに積層させたテープ部材を使用し、個片フィルムがツールの真下に位置するようにテープ部材を送り出する手段が考えられる。しかし従来の貼着装置におけるツールに対するテープ部材の送り精度は、様々な調整を行っても平均で±0.1mm程度のばらつきが生じている。このため、個片フィルムをツールの真下に正確に位置させることは難しい。なお、テープ部材の送り速度を十分に遅くすれば、送り精度のばらつきを抑制することは可能であるが、送り速度の低下に伴って生産性が大きく損なわれることになる。また送り速度を十分に遅くした場合でも、近年求められる精度要求を満たせないことがあり、根本的な解決が求められている。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明は、ワークに対して個片フィルムをより高い精度で貼着させることができる貼着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における貼着装置は、長尺状のセパレータに複数の個片フィルムが積層されたテープ部材に対してツールを押し付けて当該個片フィルムをワークに貼着させる貼着装置であって、前記テープ部材が取り付けられ、先頭に位置する前記個片フィルムを貼着基準位置に向けて送り出す送り出し手段と、積層した前記セパレータが位置する側に設けられ、前記ツールを前記テープ部材に向けて移動させる第一移動手段と、当該ツールを前記テープ部材が送り出される向きに沿って移動させる第二移動手段とを有する貼着手段と、積層した前記個片フィルムが位置する側に設けられ、前記ワークを保持するテーブルと、当該テーブルを移動させるテーブル移動手段とを有する搬送手段と、積層した前記個片フィルムが位置する側に設けられ、前記テープ部材における先頭に位置する前記個片フィルムを撮像する撮像手段と、前記第一移動手段に指令を送って前記ツールを前記テープ部材に押し付けるよう制御することが可能であり、且つ、前記ツールを前記テープ部材に押し付けるにあたって、前記撮像手段からの撮像データに基づいて先頭に位置する前記個片フィルムの現在位置を算出するとともに当該現在位置と前記貼着基準位置とのずれ量を算出し、当該ずれ量に基づいて前記ツールと前記ワークを前記現在位置に対応する位置に移動させるよう前記第二移動手段及び前記テーブル移動手段に指令を送る制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような貼着装置において、前記貼着手段は、前記制御手段からの指令に基づいて、前記ツールを前記テープ部材が送り出される向きに対して交差する向きに沿って移動させる第三移動手段を備えることが好ましい。またこのような貼着装置は、前記個片フィルムが下側に位置して前記セパレータが上側に位置する位置関係において前記貼着基準位置の直上へ移動可能であって、前記撮像手段で前記個片フィルムを撮像するにあたって当該貼着基準位置の直上に位置する状態で前記テープ部材の前記セパレータに向けて光を照射する照明ユニットを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
このような構成になる本発明の貼着装置によれば、ワークに対して個片フィルムをより高い精度で貼着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る貼着装置の一実施形態を正面から模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示した貼着装置を側面から模式的に示した図である。
【
図3】
図1に示した貼着装置で個片フィルムをワークに貼着する手順について示した図である。
【
図4】
図3に引き続く手順について示した図である。
【
図5】
図1に示した貼着装置の変形例を側面から模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る貼着装置の一実施形態(貼着装置1)について、図面を参照しながら説明する。なお、図示した矢印Yに沿う向きは、貼着装置1を操作する作業者が貼着装置1に正対した状態での左右方向であり、矢印Zに沿う向きは上下方向であり、矢印Xに沿う向きは前後方向であって、本明細書等では便宜上、上記の方向により説明する。
【0012】
貼着装置1は、テープユニット2Aと、ヘッドユニット2Bと、テーブルユニット3と、撮像ユニット4と、不図示の制御ユニットを備えている。なお制御ユニットは、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)や各種の記憶装置を含んで構成されるものであって、後述するように各種のモータやカメラと電気的に接続されてこれらを制御する。また本実施形態のテープユニット2Aは、本明細書等における「送り出し手段」に相当し、ヘッドユニット2Bは、本明細書等における「貼着手段」に相当する。そしてテーブルユニット3は、本明細書等における「搬送手段」に相当し、撮像ユニット4は、本明細書等における「撮像手段」に相当し、制御ユニットは、本明細書等における「制御手段」に相当する。
【0013】
テープユニット2Aは、本実施形態では門型になるベース5を備えている。ベース5には、制御ユニットによって制御される不図示のモータによって矢印の向きに回転する巻き出しリール6が設けられていて、巻き出しリール6には、ロール状に巻き回したテープ部材Tがセットされる。本実施形態のテープ部材Tは、
図1のA部拡大図及びB矢視図に示したように、長尺状になるセパレータt2に対して異方性導電フィルムを所定の形状に個片化した複数の個片フィルムt1を積層させたものである。本実施形態の個片フィルムt1は、外形は六角形であって内側には矩形状の貫通穴を有する形状で形作られている。なお、個片フィルムt1の形状は後述するワークWとの関係で種々選択可能であって、図示した形状に限られるものではない。このような個片フィルムt1は、図示したようにセパレータt2に対して直列状に配置されている。
【0014】
またテープユニット2Aは、
図1に示すように巻き出しリール6の右側に位置する第一支持ローラ7と、第一支持ローラ7に対して左斜め下に位置する第二支持ローラ8と、第二支持ローラ8に対して左斜め下に位置するダンシングローラ9と、ダンシングローラ9に対して右斜め上に位置する第三支持ローラ10を備えている。第一支持ローラ7、第二支持ローラ8、及び第三支持ローラ10は、ベース5に対して固定された軸部を中心として回転するよう構成されている。またダンシングローラ9は、ベース5に対して上下方向に移動する不図示の移動体に対し、この移動体に固定された軸部を中心として回転するよう構成されている。
【0015】
第三支持ローラ10の下方には、円柱状の第一案内ピン11が設けられている。そして第一案内ピン11の下方には、第二案内ピン12が設けられ、第二案内ピン12に対して右斜め下には、第三案内ピン13が設けられている。
【0016】
第三案内ピン13の右側には、制御ユニットで制御される不図示の駆動源(モータ等)によって左右方向に移動する移動部材14が設けられている。移動部材14には、第三案内ピン13に対して略同一の高さに位置する第四案内ピン15が設けられている。
【0017】
第四案内ピン15の右斜め上には、駆動ローラ16が設けられている。駆動ローラ16は、不図示のモータによって矢印の方向に回転する。駆動ローラ16の上方には、従動ローラ17が設けられている。従動ローラ17の外周部は、弾性体(ゴム等)で形成されている。また従動ローラ17は、駆動ローラ16に向けて押し付けられるように構成されていて、駆動ローラ16が回転すると従動ローラ17も連れ回る。
【0018】
従動ローラ17の右斜め上には、第五案内ピン18が設けられている。そして第五案内ピン18の上方には、テープ部材Tを吸引して回収することができる回収ユニット19が設けられている。
【0019】
本実施形態のテープ部材Tは、第一支持ローラ7等に対して図示したように支持される。すなわち巻き出しリール6に取り付けられたテープ部材Tは、第一支持ローラ7から第二支持ローラ8、ダンシングローラ9・・・を経由し、第三案内ピン13から水平に延在して第四案内ピン15に至り、更に駆動ローラ16と従動ローラ17に挟持された後、第五案内ピン18を経由して回収ユニット19に至る経路で支持される。このときのテープ部材Tの表裏方向は、
図3に示すように個片フィルムt1が下側であって、セパレータt2が上側である。そして、制御ユニットからの指令に基づいて、巻き出しリール6や駆動ローラ16を回転させるモータが駆動することによって、第三案内ピン13から第四案内ピン15に向かう向きにテープ部材Tを送り出すことができる。
【0020】
なお制御ユニットは、
図3(a)において仮想線で示した個片フィルムt1の貼着基準位置A0(テープ部材Tが理想的に送り出されるとした場合に個片フィルムt1が貼着される位置)や、後述するツール基準位置B0等の各種の情報を記憶している。
【0021】
ヘッドユニット2Bは、下端部にツール20を保持するヘッド21を備えている。ツール20は、個片フィルムt1やワークWに対応する形状で形作られていて、ヘッド21に対して着脱可能である。なおツール20は、第三案内ピン13と第四案内ピン15に掛け渡されたテープ部材Tの上方に位置する。そしてヘッド21は、ベース5に対して上下方向に移動可能であって、また左右方向にも移動可能である。本実施形態においては
図2に示すように、Z方向に沿って延在するZレール22、Zレール22に案内されて移動するZナット23の他、不図示のZモータやボールねじ等によって、ヘッド21を上下方向に移動させることができ、またY方向に沿って延在するYレール24、Yレール24に案内されて移動するYナット25の他、不図示のYモータやボールねじ等によって、ヘッド21を左右方向に移動させることができる。なお、ZモータやYモータは制御ユニットに接続されていて、制御ユニットからの指令によって動作する。また制御ユニットは、貼着基準位置A0の直上であって、ツール20が下方に向けて移動する直前の位置(ツール基準位置B0、
図3(a)~(c)参照)を記憶している。Zレール22等は、本明細書等における「第一移動手段」に相当し、Yレール24等は、本明細書等における「第二移動手段」に相当する。
【0022】
テーブルユニット3は、
図3に示したワークW(例えば基板)が載置されるテーブル26を備えている。本実施形態のワークWは、個片フィルムt1よりも一回り大きな六角形の外形であって、表面には個片フィルムt1の貫通孔よりも一回り小さな矩形状の凸部が設けられた形状をなしている。なおテーブル26には、載置したワークWの位置ずれを防ぐ手段(例えばワークWの外形に応じた凹状のポケットや、ワークWを吸着保持する機構等)が設けられている。またテーブル26は、第三案内ピン13と第四案内ピン15に掛け渡されたテープ部材Tの下方に位置していて、前後方向及び左右方向に移動可能である。本実施形態のテーブルユニット3は、
図1に示すように、X方向に沿って延在するXレール27、Xレール27に案内されて移動するXナット28の他、不図示のXモータやボールねじ等を備えていて、これらによってテーブル26を前後方向に移動させることができる。またテーブルユニット3は、不図示のYレール、Yナット、Yモータ、ボールねじ等も備えていて、これらによってテーブル26を左右方向に移動させることができる。なおXモータ等は、制御ユニットに接続されていて、制御ユニットからの指令によって動作する。また、制御ユニットは、貼着基準位置A0の直下であって、個片フィルムt1が貼着される直前のワークWの位置(ワーク基準位置C0、
図3(c)参照)を記憶している。テーブル26を前後方向及び左右方向に移動させるXレール27等は、本明細書等における「テーブル移動手段」に相当する。
【0023】
またテーブルユニット3は、ワークWを撮像するワーク用カメラ29を備えている。本実施形態のワーク用カメラ29は、テーブル26が移動する範囲の内側においてテーブル26の上方に位置する高さでベース5に取り付けられていて、テーブル26に保持されたワークWを撮像する。ワーク用カメラ29は上述した制御ユニットに接続されていて、ワークWの撮像は制御ユニットの制御の下で行われる。またワーク用カメラ29で撮像したワークWの撮像データは、制御ユニットによって画像処理され、テーブル26に対するワークWの前後方向及び左右方向の位置(X方向及びY方向の位置)は制御ユニットによって把握される。なお撮像データからは、ワークWのX方向及びY方向の位置の他、XY平面におけるワークWの傾き、及びワークWの形状も把握することが可能である。
【0024】
そして撮像ユニット4は、個片フィルムt1を撮像する個片フィルム用カメラ30を備えている。個片フィルム用カメラ30は、
図1、
図2に示すようにテーブルユニット3におけるテーブル26を移動させる部材の内側に取り付けられていて、第三案内ピン13と第四案内ピン15に掛け渡されたテープ部材Tに対し、このテープ部材Tの送り方向先頭に位置する個片フィルムt1を下方から撮像する。なお、個片フィルム用カメラ30の光軸は、
図3(a)において仮想線で示した貼着基準位置A0が撮像範囲の中心になるように合わせられている。
【0025】
また撮像ユニット4は、個片フィルム用カメラ30で個片フィルムt1を撮像する際に使用する照明ユニット31を備えている。本実施形態の照明ユニット31は、ベース5に対して、テープ部材Tとツール20との間に位置する高さでもって前後方向に移動可能に取り付けられていて、貼着基準位置A0の直上まで前進させることができる。また貼着基準位置A0の直上に位置させた状態において、照明ユニット31は、テープ部材Tに向けて光を照射する。すなわち照明ユニット31で照射した光は、セパレータt2のみが存在する部分に対して個片フィルムt1とセパレータt2が積層された部分では透過しにくいため、個片フィルム用カメラ30ではこの明暗を利用して個片フィルムt1を撮像する。
【0026】
個片フィルム用カメラ30と照明ユニット31は、上述した制御ユニットに接続されていて、個片フィルムt1の撮像は、制御ユニットの制御の下で行われる。また個片フィルム用カメラ30で撮像した個片フィルムt1の撮像データは、制御ユニットによって画像処理され、個片フィルムt1の左右方向の位置(Y方向の位置)は制御ユニットによって把握される。なお撮像データからは、個片フィルムt1のY方向の位置の他、個片フィルムt1のX方向の位置、XY平面における個片フィルムt1の傾き、及び個片フィルムt1の形状も把握することが可能である。
【0027】
このような構成になる貼着装置1は、
図3、
図4に示した手順で個片フィルムt1をワークWに貼着させることができる。以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図3(a)は、テープ部材Tの送り方向先頭に位置する個片フィルムt1が、仮想線で示した貼着基準位置A0に向けて送り出される直前の状態を示している。本実施形態ではこの状態において照明ユニット31を前進させて、貼着基準位置A0の直上に照明ユニット31を位置させる。そして、巻き出しリール6や駆動ローラ16を回転させてテープ部材Tを送り出し、送り方向先頭に位置する個片フィルムt1を貼着基準位置A0に向けて移動させる(
図3(b))。このときのテープ部材Tの送り出し速度は、従来の貼着装置と同等でよく、特段遅くする必要はない。その後は、照明ユニット31から光を照射するとともに個片フィルム用カメラ30で送り方向先頭に位置する個片フィルムt1を撮像する。これにより制御ユニットは、送り方向先頭に位置する個片フィルムt1の現在位置A1を把握する。
【0029】
なお図示は省略するが、制御ユニットは、テーブルユニット3に指令を送ってテーブル26に保持されたワークWをワーク用カメラ29で撮像する。これにより制御ユニットは、テーブル26に対するワークWの位置を把握する。すなわち、テーブル26に対して載置されるワークWの位置が理想とする位置からずれていても、
図3(c)に示したワーク基準位置C0にワークWを移動させることができる。
【0030】
ところで従来の貼着装置におけるテープ部材の送り精度は、上述したように平均で±0.1mm程度のばらつきが生じている。従って、
図3(b)における送り方向先頭に位置する個片フィルムt1の現在位置A1は、貼着基準位置A0に対してY方向に平均で±0.1mm程度ずれることがある。ここで制御ユニットは、個片フィルム用カメラ30で得られた個片フィルムt1の貼着基準位置A0と現在位置A1とのずれ量を算出し、そのずれ量に基づいて、記憶しているツール基準位置B0へツール20を移動させるための指令を補正して、ツール20が現在位置A1の直上に位置するようにヘッドユニット2BのYモータに指令を送る。これによりツール20を、
図3(c)に示すように現在位置A1の直上であるツール補正位置B1に位置させることができる。また制御ユニットは、算出したずれ量に基づいて、記憶しているワーク基準位置C0へワークWを移動させるための指令も補正して、ワークWが現在位置A1の直下に位置するようにテーブルユニット3のYモータに指令を送る。これによりワークWを、
図3(c)に示すように現在位置A1の直下であるワーク補正位置C1に位置させることができる。
【0031】
なお、上述したように本実施形態の制御ユニットは、ワーク用カメラ29で得られるワークWの撮像データに基づいて、XY平面におけるワークWの傾きやワークWの形状を把握し、また個片フィルム用カメラ30で得られる個片フィルムt1の撮像データに基づいて、個片フィルムt1のX方向の位置、XY平面における個片フィルムt1の傾き、及び個片フィルムt1の形状も把握する。従って、上述したワークWや個片フィルムt1の傾き等が所定の条件から外れていて、個片フィルムt1を意図した通りに固着できないと判断される場合には、制御ユニットがエラー処理を行う(例えば光や音を発して作業員にエラーであることを伝える等)ように構成してもよい。
【0032】
次いで制御ユニットは、貼着基準位置A0の直上に位置していた照明ユニット31を後退させ、更にヘッドユニット2BのZモータに指令を送って、
図4(a)に示すようにツール20を下方に向けて移動させ、テープ部材Tにツール20を押し付ける。これにより、個片フィルムt1をワークWに固着させることができる。
【0033】
このように本実施形態の貼着装置1によれば、テープ部材Tの送り精度は従来と同等であっても、テープ部材Tで送り出された個片フィルムt1の現在位置A1を把握して、現在位置A1の直上にツール20を移動させ、また現在位置A1の直下にワークWを移動させることができるため、ワークWに対して個片フィルムt1をより高い精度で固着させることができる。
【0034】
その後制御ユニットは、ヘッドユニット2BのZモータに指令を送って、
図4(b)に示すようにツール20を上方に向けて移動させる。なお図示は省略するが、ツール20を上昇させた後は、移動部材14(
図1参照)を左側に移動させることによって、個片フィルムt1をセパレータt2から剥離させることができる。しかる後は、
図3(a)からの手順を繰り返すことにより、個片フィルムt1をワークWに対して順次固着させることができる。
【0035】
ところで個片フィルムt1の位置は、Y方向においては上述したようにテープ部材Tの送り精度がそれ程高くないためにばらつきやすい一方、X方向においてはテープ部材Tを幅方向に規制するガイド等を設けることによってばらつきが抑えられている。しかし、本実施形態の貼着装置1のようにテープ部材Tの送り精度によらずに個片フィルムt1をワークWに対して高い精度で固着できる場合、X方向においてもより高い精度での固着が求められることが想定される。この場合、貼着装置1のヘッドユニット2Bは、ツール20を上下方向と左右方向に移動させるに加えて、前後方向にも移動させることができるように構成することが好ましい。
図5は、ツール20を前後方向にも移動させることができる構成の一例を示していて、ヘッドユニット2Bは、X方向に沿って延在するXレール32、Xレール32に案内されて移動するXナット33の他、不図示のXモータやボールねじ等を備えている。なおXレール32等は、本明細書等における「第三移動手段」に相当する。
【0036】
図5に示した貼着装置1によれば、個片フィルム用カメラ30で送り方向先頭に位置する個片フィルムt1を撮像した際、現在位置A1が貼着基準位置A0に対してX方向にずれていた場合であっても、ツール20を現在位置A1の直上に位置させることができるため、X方向においても個片フィルムt1をワークWに対して高い精度で固着することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0038】
例えば上述した実施形態におけるテープユニット2Aでは、テープ部材Tを送り出す駆動ローラ16がツール20に対して送り方向下流側に設けられていたが、駆動ローラ16をツール20に対して送り方向上流側に設けたテープユニットを使用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:貼着装置
2A:テープユニット(送り出し手段)
2B:ヘッドユニット(貼着手段)
3:テーブルユニット(搬送手段)
4:撮像ユニット(撮像手段)
5:ベース
6:巻き出しリール
7:第一支持ローラ
8:第二支持ローラ
9:ダンシングローラ
10:第三支持ローラ
11:第一案内ピン
12:第二案内ピン
13:第三案内ピン
14:移動部材
15:第四案内ピン
16:駆動ローラ
17:従動ローラ
18:第五案内ピン
19:回収ユニット
20:ツール
21:ヘッド
22:Zレール(第一移動手段)
23:Zナット(第一移動手段)
24:Yレール(第二移動手段)
25:Yナット(第二移動手段)
26:テーブル
27:Xレール
28:Xナット
29:ワーク用カメラ
30:個片フィルム用カメラ
31:照明ユニット
32:Xレール(第三移動手段)
33:Xナット(第三移動手段)
A0:貼着基準位置
A1:現在位置
B0:ツール基準位置
B1:ツール補正位置
C0:ワーク基準位置
C1:ワーク補正位置
T:テープ部材
W:ワーク
t1:個片フィルム
t2:セパレータ
【要約】
【課題】ワークに対して個片フィルムをより高い精度で貼着させることができる貼着装置を提供する。
【解決手段】貼着装置1は、ツール20をテープ部材Tに向けて移動させる第一移動手段及びツール20をテープ部材Tが送り出される向きに沿って移動させる第二移動手段を有する貼着手段2Bと、ワークWを保持するテーブル26を移動させる搬送手段3と、先頭に位置する個片フィルムt1を撮像する撮像手段4と、第一移動手段に指令を送ってツール20をテープ部材Tに押し付けるよう制御することが可能であり、撮像手段4からの撮像データに基づいて先頭に位置する個片フィルムt1の現在位置を算出するとともに現在位置と貼着基準位置とのずれ量を算出し、ずれ量に基づいてツール20とワークWを現在位置に対応する位置に移動させるよう第二移動手段及びテーブル移動手段に指令を送る制御手段と、を備える。
【選択図】
図1