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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20220914BHJP
   B25J 13/02 20060101ALI20220914BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20220914BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
B25J13/02
A61B34/35
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022503985
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035016
【審査請求日】2022-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ソルモン
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510671(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156250(WO,A1)
【文献】特開2004-114171(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
A61B 34/00-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作の際に用いられる操作装置であって、
主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部と、
主に操作者の指でつままれるピンチ部と、を備え、
前記ピンチ部は、指で保持される第1の保持部を有し、前記グリップ部に対して回動するとともに、前記グリップ部に対してスライドするように構成されており、
前記第1の保持部は、該第1の保持部を通る第1の回転軸及び該第1の保持部を通り前記第1の回転軸と交差する第2の回転軸に対して回動するように構成されていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記第1の保持部は、操作者の指の動きを、遠隔操作の対象である機器の把持動作に反映させる入力部を有することを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記グリップ部は、手の一部を載置するハンドレストが一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作装置。
【請求項4】
遠隔操作の際に用いられる操作装置であって、
主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部と、
主に操作者の指でつままれるピンチ部と、を備え、
前記ピンチ部は、指で保持される第1の保持部を有し、前記グリップ部に対して回動するとともに、前記グリップ部に対してスライドするように構成されており、
前記第1の保持部は、該第1の保持部を通る第1の回転軸及び該第1の回転軸と交差する第2の回転軸に対して回動するように構成されており、
前記第1の保持部を前記グリップ部に対して離間又は接近するようにガイドするガイド部を更に備え、
前記グリップ部は、手のひらで直接保持される第2の保持部と、前記第2の保持部に対して相対的に回転可能な回転部と、を有することを特徴とする操作装置。
【請求項5】
前記回転部は、前記第2の保持部に設けられた回転軸であり、
前記ガイド部は、前記回転軸と交差する方向に延びているガイドレールを有していることを特徴とする請求項4に記載の操作装置。
【請求項6】
互いに交差する3つの軸を中心として回動可能に構成されたジンバル部を更に備え、
前記ジンバル部は、前記グリップ部の下部と接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項7】
互いに交差する3つの軸方向に前記ジンバル部を移動可能に構成された移動機構を更に備え、
前記移動機構は、前記ジンバル部の下方に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータに用いられる操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡を用いた手術において手術支援ロボットの使用が増加しており、様々な医療分野での活用が広がっている。手術支援ロボットでは、操作者が自分の手元のマニピュレータを操作することで、患者の体内に挿入されたマニピュレータを操作する「マスタ・スレーブ」と呼ばれる操作方式が一般的である。マスタ・スレーブシステムでは、操作者の動きを入力する機器を「マスタ機」、マスタ機の制御下で動作する機器を「スレーブ機」と呼ぶ。手術支援ロボットの場合は、操作者の手元のマニピュレータがマスタ機、患者の体内に挿入されたマニピュレータがスレーブ機にあたる。
【0003】
手術支援ロボットにおけるマスタ機の操作は、親指と人差し指でつまむピンチグリップ式と、手のひら全体で握るパワーグリップ式がある。ピンチグリップ式は繊細な作業に適しているが手指への負担が大きく、逆にパワーグリップ式は繊細な作業ではピンチグリップ式に劣るが、操作者に対する負担は小さい。
【0004】
例えば、特許文献1には、マスタ機の操作を行う操作ハンドルが開示されている。この操作ハンドルは、細長い形状のマスタ操作本体部に対して操作者の二本の指を用いて開閉する一対の操作部が設けられており、一対の操作部の開閉により把持鉗子などの開閉操作が可能な手術器具の開閉操作が行われる。また、マスタ操作本体部の端部には、操作者の手のひらにより把持される把持部が着脱可能に装着されている。そして、操作ハンドル全体を3次元の操作領域内で動かすことで、スレーブ機のスレーブマニピュレータの手術器具の位置及び姿勢を制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第19/026654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の操作ハンドルは、スレーブ機のスレーブマニピュレータの手術器具の位置及び姿勢を制御する際に、操作者の手又は指によって全体が動かされる。そのため、把持部を外して指だけでスレーブマニピュレータの手術器具の位置や姿勢を制御しようとすると、従来のピンチグリップ式と同様に操作者の手指への負担が大きくなる。一方、把持部を装着した状態で手のひら全体でスレーブマニピュレータの手術器具の位置や姿勢を制御しようとすると、従来のパワーグリップ式と同様に繊細な作業が難しくなる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能な新たな操作部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の操作装置は、遠隔操作の際に用いられる操作装置であって、主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部と、主に操作者の指でつままれるピンチ部と、を備える。ピンチ部は、指で保持される第1の保持部を有し、グリップ部に対して回動するとともに、グリップ部に対してスライドするように構成されており、第1の保持部は、該第1の保持部を通る第1の回転軸及び該第1の回転軸と交差する第2の回転軸に対して回動するように構成されている。
【0009】
この態様によると、操作装置全体をパワーグリップ式として動かすだけでなく、手のひらでグリップ部を把持しながらピンチ部を回動したりスライドさせたりできる。そのため、パワーグリップ式とピンチグリップ式の両方の機能を兼ね備えることができ、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能となる。また、操作者によるピンチ部の操作において、第1の保持部を2つの軸を中心に回動させることができるため、遠隔操作の対象である機器をこれまでよりも複雑な動きで繊細に操作することができる。
【0010】
第1の保持部は、操作者の指の動きを、遠隔操作の対象である機器の把持動作に反映させる入力部を有してもよい。これにより、機器による把持動作を繊細に行える。
【0011】
グリップ部は、手の一部を載置するハンドレストが一体化されていてもよい。これにより、グリップ部を動かしても常に手の一部をハンドレストに載置できるので、固定型のハンドレストよりも操作者の操作の負担が低減される。
【0012】
第1の保持部をグリップ部に対して離間又は接近するようにガイドするガイド部を更に備えてもよい。グリップ部は、手のひらで直接保持される第2の保持部と、第2の保持部に対して相対的に回転可能な回転部と、を有してもよい。これにより、グリップ部の第2の保持部を手のひらで固定した状態で回転部が回転できる。また、第1の保持部を指でつまみながらグリップ部に対して離間したり接近させたりできる。
【0013】
回転部は、第2の保持部に設けられた回転軸であり、ガイド部は、回転軸と交差する方向に延びているガイドレールを有していてもよい。これにより、第1の保持部をグリップ部に対して所定の方向に動かすことができる。
【0014】
互いに交差する3つの軸を中心として回動可能に構成されたジンバル部を更に備えてもよい。ジンバル部は、グリップ部の下部と接続されていてもよい。これにより、操作装置の奥行き方向のスペースを小さくできる。
【0015】
互いに交差する3つの軸方向にジンバル部を移動可能に構成された移動機構を更に備えてもよい。移動機構は、ジンバル部の下方に配置されていてもよい。これにより、操作者の腕の下方にジンバル部や移動機構を配置できるため、操作装置の奥行き方向のスペースを小さくできる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能な新たな操作部を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】参考例に係る操作装置の概略構成を示す側面図である。
図2】参考例に係る操作装置の概略構成を示す上面図である。
図3】参考例に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための側面図である。
図4】参考例に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための上面図である。
図5図5(a)~図5(d)は、操作装置の可動範囲を説明するための模式図である。
図6】本実施の形態に係る操作装置の概略構成を示す側面図である。
図7】本実施の形態に係る操作装置の概略構成を示す上面図である。
図8】本実施の形態に係る操作装置の主な関節の動きを示す模式図である。
図9】本実施の形態に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための側面図である。
図10】本実施の形態に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための上面図である。
図11】本実施の形態に係る操作装置を用いたマスタスレーブ方式の手術支援ロボットの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(参考例)
初めに、ピンチ部がグリップ部に対して回動するとともに、ピンチ部がグリップ部に対してスライドするように構成された参考例に係る操作装置を説明する。参考例に係る操作装置は、マスタスレーブ方式の手術支援ロボットにおけるマスタ側マニピュレータの操作に用いられる。手術支援ロボットとしては、例えば、内視鏡外科手術に用いられる鉗子の操作を行うものが挙げられる。なお、操作装置の用途は手術支援ロボットに限らない。例えば、物流工場や製造工場において用いられるロボットを遠隔操作する際の入力装置として用いてもよい。特に、繊細な作業を長時間行う必要のある工程をロボットを介して遠隔で実行する際の操作装置として好適である。
【0021】
なお、遠隔とは、操作者と操作対象との距離が物理的に遠隔である場合だけでなく、操作者が操作するマスタ機と操作対象であるスレーブ機とが機構的に分離されている場合も含まれる。この場合、マスタ機とスレーブ機とが近くに配置されていても遠隔操作であることに違いはない。
【0022】
図1は、参考例に係る操作装置の概略構成を示す側面図である。図2は、参考例に係る操作装置の概略構成を示す上面図である。操作装置10は、遠隔操作の際に用いられるものであり、主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部12と、主に操作者の指でつままれるピンチ部14と、を備える。ピンチ部14は、グリップ部12に対して軸Aを中心に回動(矢印R1方向)するとともに、グリップ部12に対してスライド(矢印S1方向)するように構成されている。
【0023】
これにより、操作装置10全体をパワーグリップ式として動かすだけでなく、手のひらでグリップ部12を把持しながらピンチ部14を回動したりスライドさせたりできる。そのため、パワーグリップ式とピンチグリップ式の両方の機能を兼ね備えることができ、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能となる。
【0024】
グリップ部12は、手のひらで直接保持される円筒状の保持部12aと、保持部12aに対して相対的に回転可能な回転部12bと、を有している。保持部12aは、中心に円柱状の穴が設けられており、その穴に円柱状の回転部12bが回転可能に収納されている。ピンチ部14は、指で直接保持される保持部14aと、保持部14aをグリップ部12に対して離間又は接近するようにガイドするガイド部14bと、を有している。
【0025】
これにより、グリップ部12の保持部12aを手のひらで固定した状態で回転部12bが回転できる。また、保持部14aを指でつまみながらグリップ部12に対して離間したり接近させたりできる。
【0026】
回転部12bは、保持部12aの内部に設けられた回転軸である。ガイド部14bは、回転部12bである回転軸に結合し、固定されている。また、ガイド部14bは、回転軸の軸Aと交差する方向に延びている直線状のガイドレール14cを有している。これにより、保持部14aをグリップ部12に対して所定の方向(矢印S1方向)に動かすことができる。なお、本実施の形態に係る操作装置10においては、軸Aとガイドレール14cの延伸方向とが成す角は90°として記載しているが、角度は90°でなくてもよく、90°±45°の範囲で設定されていてもよく、90°±30°の範囲で設定されていてもよく、90°±15°の範囲で設定されていてもよい。
【0027】
また、保持部14aは、回転軸に対して基準点Pを中心に±5mm以上動くようにガイドレール14cにガイドされている。換言すると、保持部14aは、ガイドレール14cに沿って少なくとも10mmの範囲で動くことができるように構成されている。
【0028】
図3は、参考例に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための側面図である。図4は、参考例に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための上面図である。
【0029】
操作装置10の保持部14aは、ジンバル部20により移動可能に支持されている。ジンバル部20は、互いに交差(直交)する3つの回転軸を中心として回動可能に構成されている。ジンバル部20は、X軸Ax、Y軸Ay、Z軸Azを中心として回動可能である。
【0030】
具体的には、保持部14aのZ軸方向の端部がZ軸部22に連結されており、Z軸部22は、L字状の第1のアーム24に対して回転可能に保持されている。また、第1のアーム24は、Y軸部26を回転可能に保持しており、Y軸部26と連結している第2のアーム28に対して回転可能に設けられている。第2のアーム28は、L字状であり、Y軸部26を保持している端部と反対側の端部にX軸部30を回転可能に保持している。X軸部30は、3次元方向の移動を行うためのXYZステージやXYZリンク機構等の並進機構に連結されている。
【0031】
これにより、操作装置10の移動情報は、ジンバル部20や並進機構を介して、スレーブ機のマニピュレータの位置や姿勢の制御に利用できる。例えば、鉗子の操作が可能な手術支援ロボットがスレーブ機の場合、操作者はグリップ部12を把持しつつ操作装置10全体を所望の方向へ移動させたり、所望の向きへ回転させたりする。操作装置10の移動は、Z軸部22、Y軸部26及びX軸部30の回転角度の情報(移動情報)を取得するセンサ(図示せず)によって検知される。センサにより検知された移動情報は、手術支援ロボットに伝達される。手術支援ロボットは、伝達された移動情報に基づいて鉗子の位置を移動させる制御を行う。
【0032】
なお、保持部14aは、ジンバル部20の3つの軸(X軸Ax、Y軸Ay、Z軸Az)が交差する点(図3図4に示すC)を基準にグリップ部12に対してスライドするように構成されている。これにより、スレーブ機のマニピュレータの特定の位置の動きとグリップ部12のスライドを対応させることができる。
【0033】
(操作装置の可動範囲)
手術支援ロボットによる手術では、実際に手で執刀するよりも小さなスケールで手術を行うことから、スレーブ機の位置制御の高精度化は非常に重要である。スレーブ機は微細な手術操作を行うことから、マスタ機の動作はスレーブ機に縮小して伝えられる。そのため、マスタ機の操作においてはスレーブ機の動作の数倍に相当する大きな動きが必要であり、手術中にはマスタ機とスレーブ機の可動範囲や位置関係の調整が必要という問題がある。
【0034】
参考例に係る操作装置10は、全体を大きく動かす場合はグリップ部12及びピンチ部14を手のひら全体で把持した状態で操作される。これにより、大きな動きでも操作者に余り負担を掛けずにスレーブ機の移動操作が可能となる。加えて、参考例に係る操作装置10は、手のひらでグリップ部12を把持した状態で、指でピンチ部14を独立して操作することもできる。以下に、グリップ部12に対するピンチ部14の相対移動で実現できる可動範囲ついて説明する。
【0035】
図5(a)~図5(d)は、操作装置の可動範囲を説明するための模式図である。図5(a)に示す操作装置10の状態は、ピンチ部14をグリップ部12に最も近づけた状態である。この状態から、図5(b)に示すように、指でつまんだ保持部14aを図の左方に移動することで、ピンチ部14をグリップ部12に対してスライドさせることができる。一方、図5((a)の状態から、図5(c)に示すように、指でつまんだ保持部14aを図の下方に回転することで、ピンチ部14をグリップ部12に対して回動することができる。その結果、参考例に係る操作装置10は、図5(d)に示す扇形の領域Dの範囲においてピンチ部14の動きだけで繊細な動きが可能となる。
【0036】
(実施の形態)
マスタ機の動作を行う上述の操作装置10は、ピンチ部14の保持部14aをスライドすることで、スレーブ機の微細な動作を行うことができる。そこで、本実施の形態では、保持部のスライドに加えて、保持部の更なる動きを実現する操作装置について説明する。図6は、本実施の形態に係る操作装置の概略構成を示す側面図である。図7は、本実施の形態に係る操作装置の概略構成を示す上面図である。なお、参考例と重複する構成については説明を適宜省略する。
【0037】
操作装置50は、遠隔操作の際に用いられるものであり、主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部52と、主に操作者の指でつままれるピンチ部54と、を備える。ピンチ部54は、グリップ部52に対して軸Aを中心に回動(矢印R1方向)するとともに、グリップ部52に対してスライド(矢印S1方向)するように構成されている。
【0038】
また、操作装置50のピンチ部54は、指で保持される第1の保持部54aを有している。第1の保持部54aは、第1の保持部54aを通る第1の回転軸A1及び該第1の回転軸A1と交差(直交)する第2の回転軸A2に対して回動(矢印R2方向及び矢印R3方向)するように構成されている。
【0039】
具体的には、第1の保持部54aの軸部54bは支持部材56に支持されており、第1の保持部54aは軸部54bとともに支持部材56に対して回動する、あるいは、支持部材56に固定された軸部54bに対して第1の保持部54aが回動する。また、支持部材56は、スライド部58の下部に設けられた吊り下げ部60の内部にある軸部62を中心に回動することで、第1の保持部54aが間接的に矢印R3方向に回動する。
【0040】
また、第1の保持部54aは、操作者の指の動きを、遠隔操作の対象である機器の把持動作に反映させる入力部64を有している。本実施の形態に係る入力部64は、第1の保持部54aの両側から押されたり引かれたりすることで、その変位量や圧力を検知するものである。そして、検知した変位量や圧力に応じて、スレーブ機側の機器の把持動作における開閉や把持力を調整できる。
【0041】
図8は、本実施の形態に係る操作装置50の主な関節の動きを示す模式図である。図8における符号Bは、後述するジンバル部の3つの軸が交差する中心点であり、グリップ部52の下部に位置する。図8に示すように、操作装置50は、それぞれ回転軸を有する3つの関節と、スライド移動が可能な1つの関節と、1つの把持動作(開閉動作)が可能な機構と、を有する。
【0042】
このように構成された操作装置50は、操作装置50全体をパワーグリップ式として動かすだけでなく、手のひらでグリップ部52を把持しながらピンチ部54を回動したりスライドさせたりできる。そのため、パワーグリップ式とピンチグリップ式の両方の機能を兼ね備えることができ、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能となる。また、操作者によるピンチ部54の操作において、第1の保持部54aを第1の回転軸A1及び第2の回転軸A2を中心に回動させることができるため、遠隔操作の対象である機器をこれまでよりも複雑な動きで繊細に操作することができる。例えば、スレーブ機の操作対象が手術用の鉗子の場合、ピンチ部54のみの操作によって、鉗子の開閉、鉗子先端の屈曲動作及び鉗子長手方向を軸とする回転動作が可能である。また、入力部64の操作は指で行われるため、鉗子による把持動作を繊細に行える。
【0043】
次に、グリップ部52について更に詳述する。上述のように繊細な作業が可能な操作装置50であるが、手で把持したグリップ部52を空中で動かしたり、空中で保持したりしながら作業を続けることは操作者にとって負担である。そこで、操作装置50のグリップ部52は、手の一部を載置するハンドレスト66が下部に一体化されている。なお、ハンドレストは手から腕の間の一部を載置するものであってもよい。これにより、グリップ部52を動かしても常に手や腕の一部をハンドレスト66に載置できるので、固定型のハンドレストよりも操作者の操作の負担が低減される。
【0044】
また、グリップ部52は、第1の保持部54aをグリップ部52に対して離間又は接近するようにスライド部58の一部をガイドするガイド部52aを備えている。グリップ部52は、手のひらで直接保持される第2の保持部52bを有しており、ガイド部52aは、第2の保持部52bに対して相対的に回転可能な回転部である。これにより、グリップ部52の第2の保持部52bを手のひらで固定した状態でガイド部52aが回転できる。また、第1の保持部54aを指でつまみながらグリップ部52に対して離間したり接近させたりできる。
【0045】
ガイド部52aは、第2の保持部52bに設けられた回転軸52cと、回転軸52cの軸方向と交差する方向に延びているガイドレールとしてのスライド部58を有している。これにより、第1の保持部54aをグリップ部52に対して所定の方向に動かすことができる。
【0046】
次に、操作装置50と接続されるジンバル部について説明する。本実施の形態に係る操作装置50は、マスタ側マニピュレータに用いられるものであり、グリップ部52の下部にジンバル部が接続されている。図9は、本実施の形態に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための側面図である。図10は、本実施の形態に係る操作装置が備えるジンバル部の概略構成を説明するための上面図である。
【0047】
操作装置50のグリップ部52は、ジンバル部70により移動可能に支持されている。ジンバル部70は、互いに交差(直交)する3つの回転軸を中心として回動可能に構成されている。ジンバル部20は、X軸Ax、Y軸Ay、Z軸Azを中心として回動可能である。
【0048】
具体的には、グリップ部52のZ軸方向の下端部がZ軸部72に連結されており、Z軸部72は、L字状の第1のアーム74に対して回転可能に保持されている。また、第1のアーム74は、X軸部76を回転可能に保持しており、X軸部76と連結している第2のアーム78に対して回転可能に設けられている。第2のアーム78は、L字状であり、X軸部76を保持している端部と反対側の端部に、第3のアーム82を介してY軸部80を回転可能に保持している。図9図10に示すように、操作装置50の下部にジンバル部70を配置することで、特に操作装置50の奥行き方向Eのスペースを小さくできる。
【0049】
第3のアーム82の端部82aは、3次元方向の移動を行うためのXYZステージやXYZリンク機構(パラレルリンク機構)等の移動機構84に連結されている。移動機構84は、互いに交差(直交)する3つの軸方向(X軸、Y軸、Z軸)にジンバル部70や操作装置50のグリップ部を並進移動可能に構成されている。また、移動機構84は、ジンバル部70の下方に配置されている。これにより、操作者の手や腕の下方にジンバル部70や移動機構84を配置できるため、操作装置50の奥行き方向Eのスペースを小さくできる。
【0050】
図11は、本実施の形態に係る操作装置50を用いたマスタスレーブ方式の手術支援ロボットの機能ブロック図である。手術支援ロボット100は、マスタ機110とスレーブ機120とで構成されており、マスタ機110での操作信号やスレーブ機120でのセンサ信号が互いに送受信される。
【0051】
マスタ機110は、前述のようにジンバル部70及び移動機構84を備える操作装置50と、操作装置50等のアクチュエータや機構を制御する制御部86と、を備える。移動機構84は、自身の動きをロック及びアンロックするロック機構88を有する。ロック機構88は、機械的な係合や電磁的な力、油圧等によってロックとアンロックの状態が切り替え可能に実現される。また、マスタ機110は、操作装置50や移動機構84の動きのロック及びアンロックを切り替える操作部90を備える。操作部90は、例えば、タッチパネルや、手や足で操作するスイッチである。
【0052】
スレーブ機120は、マスタ機110から受信した信号に基づいて制御部122を介して、スレーブ側のマニピュレータ124の位置や姿勢を制御する。具体的には、操作装置50の移動情報は、ジンバル部70や移動機構84を介して、スレーブ機120のマニピュレータ124の位置や姿勢の制御に利用できる。例えば、鉗子の操作が可能な手術支援ロボットがスレーブ機の場合、操作者はグリップ部52を把持しつつ操作装置50全体を所望の方向へ移動させたり、所望の向きへ回転させたりする。操作装置50の移動は、Z軸部72、X軸部76及びY軸部80の回転角度の情報(移動情報)を取得するセンサ(図示せず)によって検知される。センサにより検知された移動情報は、手術支援ロボット100のスレーブ機120に伝達される。スレーブ機120は、伝達された移動情報に基づいてマニピュレータ124である鉗子の位置を移動させる制御を行う。
【0053】
本実施の形態に係る操作装置50のピンチ部54は、ロック機構88により移動機構84がロックされた状態で、グリップ部52に対して回動するとともに、グリップ部52に対してスライドするように構成されている。これにより、操作装置50全体をパワーグリップ式として動かすだけでなく、手のひらでグリップ部52を把持しながらピンチ部54を回動したりスライドさせたりできる。そのため、パワーグリップ式とピンチグリップ式の両方の機能を兼ね備えることができ、操作者の操作の負担を低減するとともに、繊細な作業が可能となる。また、操作装置50を所望の位置に移動する場合、主としてグリップ部52を動かすことで移動機構84によって移動がスムーズに行われる。また、操作装置50が所望の位置に到達した際には、ロック機構88により移動機構84によるグリップ部52の動きを制限し、主としてピンチ部54による繊細な作業が可能となる。
【0054】
なお、ロック機構88は、ロックされた状態であっても、移動機構84の水平方向の移動を許容できるように構成されていてもよい。これにより、ロックされた状態であっても、操作装置50の水平方向の微調整が可能である。
【0055】
また、移動機構84の各軸方向の位置はセンサで計測され、アンロック時には計測された位置が制御部86等に入力され様々な制御に利用できる。また、移動機構84の各軸方向への動きは、モータ等のアクチュエータにより駆動される。また、アンロック時に移動機構84を動かす場合、スレーブ機120のマニピュレータ124が操作対象から受ける力を力覚フィードバックとしてアクチュエータの駆動力に反映させてもよい。また、移動機構84がアンロックの状態で各軸方向に移動させる場合に必要な力F1と、移動機構84がロックの状態で水平方向に移動させる場合に必要な力F2とを変化させてもよい。本実施の形態に係る移動機構84は、F1<F2となるように構成されている。力を変化させる方法は、アクチュエータを駆動する際の抵抗力を変化させることで実現できる。
【0056】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、マスタ機のマニピュレータに利用できる。
【符号の説明】
【0058】
A1 第1の回転軸、 A2 第2の回転軸、 50 操作装置、 52 グリップ部、 52a ガイド部、 52b 第2の保持部、 52c 回転軸、 54 ピンチ部、 54a 第1の保持部、 58 スライド部、 64 入力部、 66 ハンドレスト、 70 ジンバル部、 84 移動機構、 86 制御部、 88 ロック機構、 100 手術支援ロボット、 110 マスタ機、 120 スレーブ機、 122 制御部、 124 マニピュレータ。
【要約】
操作装置50は、遠隔操作の際に用いられる操作装置であって、主に操作者の手のひらで把持されるグリップ部52と、主に操作者の指でつままれるピンチ部54と、を備える。ピンチ部54は、指で保持される第1の保持部54aを有し、グリップ部52に対して回動するとともに、グリップ部52に対してスライドするように構成されており、第1の保持部54aは、該第1の保持部を通る第1の回転軸A1及び該第1の回転軸と交差する第2の回転軸A2に対して回動するように構成されている。
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