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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】加熱処理パック
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
B65D81/34 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016212695
(22)【出願日】2016-10-31
(65)【公開番号】P2018070224
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】金井 清一
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】葉山 知人
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035944(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174600(US,A1)
【文献】国際公開第2008/082283(WO,A1)
【文献】実開昭60-148272(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/34
A47J36/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ね合わせて袋状に形成した外装体と、前記外装体との間に密閉空間を形成するように前記外装体の内側に支持された状態で収容されるとともに、加熱されるべき被加熱対象物を内側に収容可能であり、シート状部材を袋状に形成した内装体とを有する内外二重構造の袋状を成すパック本体と、
前記外装体と内装体との間の密閉空間内に配置されるとともに、水と反応して発熱する発熱剤を収容する透水性の発熱剤収容体と、
前記外装体と内装体との間の密閉空間内に配置されて、前記発熱剤と反応するための反応水を収容するとともに、前記パック本体の外側から押圧することで開封して前記反応水を密閉空間内に放出する反応水収容体と、
を備え、
前記内装体は、前記被加熱対象物を内部に受け入れるための開口部を有し、前記開口部の周縁の内面には、開口部を閉鎖して前記加熱対象物を内装体内に保持する粘着剤が塗布されており、
前記開口部は、前記発熱剤と前記反応水との反応に伴って発生する蒸気による前記密閉空間の体積膨張によって変形されることにより、互いに対向するその内面同士が前記粘着剤を介してシール状態で密着して閉じられるようになっている、
ことを特徴とする加熱処理パック。
【請求項2】
前記被加熱対象物は、その一部が前記開口部を通じて前記パック本体の外部に露出した状態で前記内装体に収容可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱処理パック。
【請求項3】
前記パック本体は、前記発熱剤の発熱を伴う加熱処理時に上昇する前記密閉空間内の圧力を逃がすための易開封性シール部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱処理パック。
【請求項4】
前記密閉空間は、前記発熱剤と前記反応水との反応に伴って発生する蒸気によりその体積が膨張することによって、前記内装体の内側に収容される前記被加熱対象物を衝撃から保護する緩衝作用を成すことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱処理パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の被加熱対象物を密封状態のまま加熱処理できる加熱処理パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加熱対象物を加熱処理するための加熱処理用包装体及びそれに食品としての被加熱対象物が収納された包装食品が知られている(例えば、特許文献1参照)。そのような加熱処理用包装体及び包装食品は、被加熱対象物(食品)を密封状態のまま電子レンジ等で加熱処理できるとともに、加熱により内部圧力が上昇したときには所定の位置が開封して圧力を逃がすことで、包装体の破裂を防止できるようになっている。
【0003】
しかしながら、このような加熱処理用包装体及び包装食品は、電子レンジ等の加熱機器を利用できない状況では使用できない。
【0004】
そこで、アウトドアでのキャンプ中や災害時の緊急避難中など、電子レンジ等の加熱機器を利用できない場面においても食品等を容易に温めることができるように、本件出願人は、水と反応することで発熱する発熱剤と、この発熱剤を水と共に収容可能であるとともに発熱時の蒸気圧によって蒸気口が開くチャック付き加熱袋とにより構成される加熱処理パック(スチームパック(登録商標))を製品化している(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-113132号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】http://www.sun‐a‐kaken.co.JP/ir_information/business_pdf_file/suna106m.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に開示されるような加熱処理パックでは、使用の際に、発熱剤と、発熱剤と反応させるための反応水と、加熱されるべき食品とをそれぞれ個別にチャック付き加熱袋の中に入れる手間が生じる。
【0008】
また、災害時を考えると、ライフラインが断たれているため、清浄な反応水を確保することも難しく、仮に汚水を反応水として利用した場合には、食品の汚染など、衛生上の問題も懸念され、特に免疫力の低い幼児や高齢者向けには配慮が必要となる。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、災害時等のためにそのまま備蓄が可能で、電子レンジ等の加熱機器を利用できない環境でも容易に加熱処理できるとともに、衛生的にも優れた加熱処理パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の加熱処理パックは、外装体と、前記外装体との間に密閉空間を形成するように前記外装体の内側に支持された状態で収容されるとともに、加熱されるべき被加熱対象物を内側に収容可能な内装体とを有するパック本体と、前記密閉空間内に配置されるとともに、水と反応して発熱する発熱剤を収容する透水性の発熱剤収容体と、前記密閉空間内に配置されて、前記発熱剤と反応するための反応水を収容するとともに、所定圧力の作用下で開封して反応水を外部に放出する反応水収容体とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、パック本体の外側から、パック本体の密閉空間内に配置されている反応水収容体に対して、例えば手で叩いたり押圧するなどして所定の圧力(又は衝撃)を作用させると、反応水収容体が開封して内部の反応水が密閉空間内(反応水収容体の外部)に放出され、その放出された反応水が同じく密閉空間内に配置されている透水性の発熱剤収容体内に入り込んでその中の発熱剤と反応することにより、発熱剤が発熱する。また、そのようにして発生した熱は、発熱反応前に内装体の内側(密閉空間の内側)に予め収容しておいた或いは発熱反応後に所定のタイミングで内装体の内側に収容した被加熱対象物を加熱する。その後、被加熱対象物の加熱処理が終了したら、処理済みの被加熱対象物を内装体から取り出せばよい。
【0012】
このように、上記構成の加熱処理パックは、加熱処理に必要な構成要素(発熱剤収容体、反応水収容体、及び、パック本体)が一体となってユニット化されており、内装体の内側に被加熱対象物を挿入するだけで被加熱対象物を加熱処理できるため、食品などの被加熱対象物と共にそのまま備蓄すれば災害等に備えることができる。また、電子レンジ等の加熱機器を利用できない環境下でも、発熱剤と、反応水と、被加熱対象物とを個別に加熱袋の中に入れる手間を要することなく、単に反応水収容体に圧力を外側から作用させるだけで被加熱対象物を容易に加熱処理できる。さらに、反応水がパック本体(密閉空間)内に予め確保されているため、劣悪な環境下で汚水等を反応水として利用する必要もなく、したがって、被加熱対象物の汚染などを生じさせずに済み、衛生的にも優れる。
【0013】
なお、上記構成において、被加熱対象物としては、食料品・飲料(水、スープ、おかゆなどの流動食)の他、例えば薬液(透析液などの薬液)、接着剤などの非食料品を挙げることもできる。また、発熱剤としては例えば石灰を挙げることができ、透水性の発熱剤収容体としては例えば不織布等を挙げることができる。また、パック本体は、透明、半透明、不透明であってもよい。
【0014】
上記構成において、前記パック本体は、発熱剤の発熱を伴う加熱処理時に上昇する密閉空間内の圧力を逃がすための易開封性シール部を有することが好ましい。一般に、発熱剤の発熱を伴う加熱処理時には、反応水が蒸発して蒸気が発生し、その蒸気圧により密閉空間内の圧力が上昇するが、その上昇した圧力を易開封性シール部によって外部へと逃がすことができれば、加熱処理中にパック本体が破損等することを防止できる。
【0015】
また、上記構成では、内装体が被加熱対象物を内部に受け入れるための開口部を有し、開口部の周縁の内面にホットタック性の粘着剤が塗布されていることが好ましい。このような構成によれば、開口部を通じて被加熱対象物を内装体の内部に容易に挿入できるとともに、その後、粘着剤を介して開口部をシール状態で閉じれば、開口部の閉鎖によって被加熱対象物を内装体内に保持することができ、したがって、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気による密閉空間の体積膨張時に、被加熱対象物が内装体から押し出されて抜け落ちることを防止できる。
【0016】
なお、この場合、被加熱対象物は、その一部が開口を通じてパック本体の外部に露出された状態で、粘着剤による密着シール部に取着されることが好ましい。そのようにすれば、加熱処理後に、パック本体の外側に露出される被加熱対象物の露出部を手で掴んでパック本体(内装体)から被加熱対象物を取り出すことができ、したがって、被加熱対象物を取り出し易くできるとともに、被加熱対象物の露出部が外気に晒されることにより過剰に加熱されることもないため、被加熱対象物を手で掴んで取り出し易くなる。
【0017】
また、このホットタック性の粘着剤に関連して、開口部は、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気による密閉空間の体積膨張によって変形されることにより、互いに対向するその内面同士が粘着剤を介してシール状態で密着して閉じられるようになっていることが好ましい。このような変形特性を開口部が備えていれば、加熱処理中(密閉空間の体積膨張中)に開口部が自動的に密閉状態で閉じるため、ユーザがわざわざ開口部を閉める手間を省くことができる。
【0018】
また、上記構成において、密閉空間は、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気によりその体積が膨張することによって、内装体の内側に収容される被加熱対象物を衝撃から保護する緩衝作用を成すことが好ましい。このように、発熱反応に伴って発生して密閉空間の体積を膨張させる蒸気をそのまま緩衝エアーとして緩衝作用をもたらせば、安価に且つ効率的に被加熱対象物を衝撃から保護することができ、加熱処理中に不用意に加熱処理パックを落下させるなどした場合であっても被加熱対象物を傷付けずに済む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、災害時等のためにそのまま備蓄が可能で、電子レンジ等の加熱機器を利用できない環境でも容易に加熱処理できるとともに、衛生的にも優れた加熱処理パックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱処理パックの概念図である。
図2図1の加熱処理パックの概略的な斜視図である。
図3図2のA-A線に沿う概略断面図であり、(a)は密閉空間の体積膨張前の状態、(b)は密閉空間の体積膨張後の状態をそれぞれ示す図である。
図4図2のB-B線に沿う概略断面図(密閉空間体積膨張後の状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図4を参照しながら本発明に係る加熱処理パック1の一実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る加熱処理パック1が概念的に示されている。図示のように、本実施形態の加熱処理パック1は、内外二重構造の袋状を成すパック本体2を備える。このパック本体2は、袋状を成す外装体2Aと、外装体2Aとの間に密閉空間Sを形成するように外装体2Aの内側に支持された状態で収容される内装体2Bとを有し、内装体2Bは、加熱処理パック1によって加熱されるべき被加熱対象物20(本実施形態では加熱対象内容物20aを収容する内容物収容体)を内側の収容空間S’内に収容できるように袋状を成している。また、内装体2Bは、被加熱対象物20を内部に受け入れるための開口部9を有し、この開口部9の周縁の内面にはホットタック性の粘着剤35(図2及び図4参照)が塗布されている。なお、加熱処理パック1によって加熱されるべき被加熱対象物(内容物)20としては、スープ、おかゆなどの流動食を含む食料品や飲料の他、例えば薬液(透析液などの薬液)、接着剤などの非食料品を挙げることもできる。
【0022】
前記外装体2Aと内装体2Bとの間の密閉空間S内には、水と反応して発熱する発熱剤を収容する透水性の発熱剤収容体12と、前記発熱剤と反応するための反応水を収容するとともに、所定圧力の作用下で開封して反応水を外部に放出する反応水収容体14とが配置される。
【0023】
また、外装体2Aと内装体2Bとから構成されるパック本体2は、透明、半透明、不透明であってもよく、複数枚のシート状部材を重ね合わせて周囲を溶着するか、或いは、シート状部材を折り曲げて側部を溶着することで袋状に形成される。特に、本実施形態の外装体2Aは、一対のシート状部材2Aa,2Abを重ね合わせ、図2に斜線で示される部分、すなわち、パック本体2の両側縁部(側縁溶着部)a,b及び下縁部(下縁溶着部)cでシート状部材2Aa,2Ab同士をヒートバー等によって熱溶着することによって袋状に形成される(図3及び図4も参照)。一方、内装体2Bは、略U字状に折り曲げられた1枚のシート状部材2Baによって形成されており、パック本体2の両側縁部(側縁溶着部)a,bでシート状部材2Baの両側縁部をシート状部材2Aa,2Ab間に挟み込んだ状態でヒートバー等によって熱溶着するとともに、パック本体2の上縁部(上縁溶着部)dでシート状部材2Baを外装体2Aのそれぞれの対応するシート状部材2Aa,2Abの部位と重ね合わせてヒートバー等によって熱溶着することによって、外装体2Aの内側に支持された状態で袋状に形成される。
【0024】
このようにして形成されるパック本体2は、非自立袋であってもよいし、自立袋であってもよい。また、前記パック本体2(外装体2A及び内装体2B)を形成するシート状部材2Aa,2Ab,2Baは、例えば耐熱性を有するプラスチック素材(プラスチックフィルム)により形成されることが好ましい。そのようなプラスチック素材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のポリアクリル酸エステル;及びこれらを形成するモノマーの共重合体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0025】
ポリエチレンの具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン系ポリエチレンなどが挙げられる。ポリプロピレンの具体例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンや1-ブテンとのランダム又はブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0026】
前記プラスチックフィルムは、単層でもよいが、共押出しなどにより2層以上に積層されていてもよい。例えば、プラスチックフィルムは、基材層とイージーオープン層からなることが好ましく、さらに基材層とイージーオープン層の間に他の層を有していてもよい。プラスチックフィルムは、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化薄膜が付与されたガスバリアー性の複合フィルムでもよい。この複合フィルムは、酸化アルミニウムや酸化ケイ素の単体又は混合物を真空下で加熱気化させ、前記フィルムの表面に蒸着することで得ることができる。
【0027】
また、本実施形態において、パック本体2は、発熱剤収容体12内の発熱剤の発熱を伴う加熱処理時に上昇する密閉空間S内の圧力を逃がすための易開封性シール部40を有する。そのような易開封性シール部40は、例えばプラスチックフィルムの同一面側を互いに当接させてヒートシールにより合掌状に接合された合掌接合部によって形成することができる。特に、本実施形態における易開封性シール部40は、パック本体2を構成するプラスチックフィルムとは別個の一対のプラスチックフィルム同士を必要に応じてイージーオープンテープ(不図示)を挿入した状態でヒートシールすることで形成される。
【0028】
このような易開封性シール部40は、本実施形態では、図2に示されるように、パック本体2の上縁部dにおいて、外装体2Aの一方のシート状部材2Aaまたは2Abと内装体2Bのシート状部材2Baとの間に挟み込まれた状態で熱溶着されて、一端側がパック本体2の外部へと延び、他端側が密閉空間S内へと延びている。なお、パック本体2における易開封性シール部40の位置は図示の位置に限定されることはない。すなわち、加熱処理により密閉空間S内の圧力が上昇したときにその圧力を逃がすことができれば、易開封性シール部40の位置は任意に設定できる。例えば、図1の概念図に示されるように、易開封性シール部40がパック本体2の側縁部に配置されていてもよい。
【0029】
また、易開封性シール部40は、90℃雰囲気下でヒートシール強度が1200g/15mm以下であることが好ましく、800g/15mm以下であることがより好ましい。易開封性シール部40の90℃雰囲気下でのヒートシール強度は、0g/15mmでも構わないが、100g/15mm以上であることが好ましい。なお、ヒートシール強度とは、JIS Z0238「密封軟包装袋の試験方法」に従い、90℃雰囲気下で測定された値である。
【0030】
また、易開封性シール部40は、常温においては完全シールでもよく、イージーオープンでもよい。易開封性シール部40の常温雰囲気下でのヒートシール強度は、150~2000g/15mmが好ましく、300~1500g/15mmがより好ましい。なお、常温雰囲気下でのヒートシール強度とは、JIS Z0238「密封軟包装袋の試験方法」に従い、常温(23℃65%RH)雰囲気下で測定された値である。
【0031】
常温において完全シール、90℃雰囲気下でのヒートシール強度が1200g/15mm以下となる例としては、易開封性シール部40のシーラントとして、ポリオレフィン、例えば融点120℃以下(好ましくは110℃以下)のポリエチレンや融点140℃以下(好ましくは130℃以下)のポリプロピレンを用い、他の部分のシーラントとして、これより融点が10℃以上高いものを用いることで実現できる。なお、融点はASTM2117に基づいて測定した値である。
【0032】
また、本実施形態では、易開封性シール部40を構成するプラスチックフィルムの一方に、易開封性シール部40を形成するヒートシールの幅方向と垂直の方向に並んだ複数の貫通孔(図示せず)を設けることが好ましい。このようにすることで、加熱により密閉空間Sの内部圧力が上昇したとき、易開封性シール部40がヒートシールの幅方向全体にわたって開封する前に前記貫通孔の位置で通蒸し、破裂音が発生しにくくなる。また、パック本体2が破裂しない程度に水蒸気を逃がすことができ、必要以上に密閉空間Sの内部圧力が低下したり上昇したりすることを抑制できる。
【0033】
以上のようにして形成されるパック本体2の密閉空間S内に配置される前記発熱剤収容体12は、例えば透水性の不織布から形成され、発熱剤として例えば石灰を収容する。特に本実施形態において、発熱剤は、金属を含有して水素ガスを発生させる従来のものとは異なり、石灰100%であり、不織布の目付け量などによってその発熱が制御される。なお、発熱剤収容体12は、内装体2Bの収容空間S’内に収容される被加熱対象物20よりも下側に配置されており、密閉空間S内で移動しないように外装体2Aの内面または内装体2Bの外面に対して溶着等により仮り止めされていてもよい。しかしながら、密閉空間S内における発熱剤収容体12の配置形態はこれに限定されることはない。
【0034】
前記密閉空間S内に配置される前記反応水収容体14は、衝撃力又は圧力によって開封し易いフィルムにより形成(易カット性を有し、例えばイージーピールフィルム、ポロソ加工などにより形成)されており、一辺に圧がかかり易い扁平の形状を成すことが望ましい。また、反応水収容体14は、内装体2Bの収容空間S’内に収容される被加熱対象物20よりも下側に発熱剤収容体12と隣接して配置されており、密閉空間S内で移動しないように外装体2Aの内面または内装体2Bの外面に対して溶着等により仮り止めされていてもよい。しかしながら、密閉空間S内における反応水収容体14の配置形態はこれに限定されることはない。
【0035】
また、本実施形態において、内装体2Bの開口部9は、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気による密閉空間Sの体積膨張によって変形されることにより、互いに対向するその内面同士が粘着剤35を介してシール状態で密着して閉じられるようになっている。すなわち、本実施形態では、そのような開口部9の変形特性が得られるように、密閉空間Sの延在形態を含むパック本体2の構造形態が設定されている。さらに、本実施形態では、前記密閉空間Sは、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気によりその体積が膨張することによって、内装体2Bの内側に収容される被加熱対象物20を衝撃から保護する緩衝作用を成すことができるように構成されている。具体的には、密閉空間Sが、外装体2Aと内装体2Bとの間で略U字状の形態を成してパック本体2の全体にわたって広がって延びるように外装体2Aと内装体2Bが構成されている(図3及び図4参照)。
【0036】
以上のようにして構成される本実施形態の加熱処理パック1の使用態様について説明する。
まず、パック本体2の外側から、パック本体2の密閉空間S内に配置されている反応水収容体14を例えば手で叩いたり押圧するなどして反応水収容体14に所定の圧力(又は衝撃)を作用させる。これにより反応水収容体14が開封して内部の反応水が密閉空間S内(反応水収容体14の外部)に放出され、その放出された反応水が同じく密閉空間S内に配置されている透水性の発熱剤収容体12内に入り込んでその中の発熱剤と反応することにより、発熱剤が発熱する。また、そのようにして発生した熱は、発熱反応前に内装体2Bの収容空間S’内(密閉空間Sの内側)に予め収容しておいた被加熱対象物20、或いは、発熱反応後に所定のタイミングで内装体2Bの収容空間S’内に収容した被加熱対象物20を加熱する。
【0037】
なお、被加熱対象物20は、内装体2Bの収容空間S’内に完全に入り込むように収容されてもよく、或いは、図1及び図2に示されるようにその一部が外部に露出された状態で収容されてもよい。被加熱対象物20をその一部が外部に露出された状態で内装体2Bの収容空間S’内に収容すれば、加熱処理後に、パック本体2の外側に露出される被加熱対象物20の露出部を手で掴んでパック本体2(内装体2B)から被加熱対象物20を取り出すことができ、被加熱対象物20を取り出し易くできるとともに、被加熱対象物20の露出部が外気に晒されることにより過剰に加熱されることもないため、被加熱対象物20が高熱により手で掴めない等の問題が生じることは無い。
【0038】
また、このようにして発熱剤と反応水とが反応して発熱剤が発熱する加熱処理が始まると、反応水が蒸発して蒸気が発生し、密閉空間Sの体積が図3(a)の状態から図3(b)及び図4の状態へと膨張し始める。また、この膨張に伴って、内装体2Bの開口部9は、その前述した変形特性により、図2に示されるように互いに対向するその内面同士が(被加熱対象物20の周囲の部位を除き)粘着剤35を介してシール状態で密着して閉じられるようになる(或いは、ユーザが粘着剤35を介して開口部9を積極的に閉じてもよい)。これにより、閉鎖された開口部9が被加熱対象物20を内装体2B内に保持するようになり、密閉空間Sの体積膨張に伴って被加熱対象物20が内装体2Bから押し出されて抜け落ちることが防止される。
【0039】
また、このような密閉空間Sの体積膨張に伴って、密閉空間S内の圧力も上昇するが、その上昇した圧力は易開封性シール部40によって外部へと逃がされるため、加熱処理中にパック本体2が破損(破裂等)することはない。この場合、この密閉空間Sの体積膨張は、密閉空間Sが略U字形の延在形態に形成されていることからパック本体2の全体にわたって及ぶようになる。
【0040】
その後、所定時間が経過して、発熱反応が収まり、被加熱対象物20の加熱処理が終了したら、開口部9の閉鎖状態を解除して処理済みの被加熱対象物20を内装体2Bの収容空間S’から取り出せばよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の加熱処理パック1は、加熱処理に必要な構成要素(発熱剤収容体12、反応水収容体14、及び、パック本体2)が一体となってユニット化されており、内装体2Bの内側に被加熱対象物20を挿入するだけで被加熱対象物20を加熱処理できるため、食品などの被加熱対象物20と共にそのまま備蓄すれば災害等に備えることができる。また、電子レンジ等の加熱機器を利用できない環境下でも、発熱剤と、反応水と、被加熱対象物とを個別に加熱袋の中に入れる手間を要することなく、単に反応水収容体14に圧力を外側から作用させるだけで被加熱対象物20を容易に加熱処理することができる。さらに、反応水がパック本体2(密閉空間S)内に予め確保されているため、劣悪な環境下で汚水等を反応水として利用する必要もなく、したがって、被加熱対象物20の汚染などを生じさせずに済み、衛生的にも優れる。
【0042】
また、本実施形態では、内装体2Bが被加熱対象物20を内部に受け入れるための開口部9を有し、開口部9の周縁の内面にホットタック性の粘着剤35が塗布されているため、開口部9を通じて被加熱対象物20を内装体2Bの内部(収容空間S’)に容易に挿入できる。その後、粘着剤35を介して開口部9がシール状態で閉じられれば、開口部9の閉鎖によって被加熱対象物20が内装体2B内に保持されるため、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気による密閉空間Sの体積膨張時に、被加熱対象物20が内装体2Bから押し出されて抜け落ちることを防止できる。
【0043】
また、これに関連して、本実施形態において、開口部9は、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気による密閉空間Sの体積膨張によって変形されることにより互いに対向するその内面同士が粘着剤35を介してシール状態で密着して閉じられるようになっている変形特性を有するため(加熱処理中(密閉空間の体積膨張中)に開口部9が自動的に密閉状態で閉じるため)、ユーザがわざわざ開口部9を閉める手間を省くことができる。
【0044】
また、本実施形態において、密閉空間Sは、発熱剤と反応水との反応に伴って発生する蒸気によりその体積が膨張することによって、内装体の内側に収容される被加熱対象物を衝撃から保護する緩衝作用(密閉空間Sの体積を膨張させる蒸気が緩衝エアーとして作用)を果たすため、安価に且つ効率的に被加熱対象物20を衝撃から保護することができ、加熱処理中に不用意に加熱処理パック1を落下させるなどした場合であっても被加熱対象物20を傷付けずに済む。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、発熱剤が石灰100%であったが、発熱剤を構成する成分材料はこれに限定されない。また、パック本体2内における発熱剤収容体12及び反応水収容体14の配置形態、素材等、並びに、密閉空間Sの延在形態も、前述した実施形態に限定されず、任意に設定できる。また、パック本体2における易開封性シール部の位置も任意に設定できる。
【符号の説明】
【0046】
1 加熱処理パック
2 パック本体
2A 外装体
2B 内装体
9 開口部
12 発熱剤収容体
14 反応水収容体
20 被加熱対象物
35 粘着剤
40 易開封性シール部
S 密閉空間
図1
図2
図3
図4