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特許7141224車輪モジュール、移動機構、および、車輪モジュールの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】車輪モジュール、移動機構、および、車輪モジュールの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20220914BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20220914BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20220914BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220914BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220914BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20220914BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20220914BHJP
   F16D 127/04 20120101ALN20220914BHJP
   F16D 129/04 20120101ALN20220914BHJP
【FI】
F16D65/18
F16D55/28 B
H02K7/102
B60L3/00 H
B60L15/20 J
B62B5/04 A
F16D121:22
F16D127:04
F16D129:04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018047252
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158047
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 高延
(72)【発明者】
【氏名】笠原 太郎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190861(JP,A)
【文献】特開2008-230782(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
H02K 7/102
B60L 3/00
B60L 15/20
B62B 5/04
F16D 121/22
F16D 127/04
F16D 129/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールを回転させる駆動部の回転シャフトとともに回転する回転体と、前記回転体と摺接して前記回転シャフトの回転を規制する摩擦体と、前記摩擦体を前記回転体側へ付勢する付勢体と、通電によって前記付勢体の付勢力に抗して前記摩擦体を前記回転体から離間させて前記回転シャフトの回転の規制を解除する電磁コイルとを備えるブレーキ部と、
手動操作によって前記回転シャフトの回転の規制を解除する規制解除部と、
前記規制解除部によって前記回転シャフトの回転の規制が解除されたことを検出する解除検出センサと
前記回転シャフトの回転角を検出する回転角センサと、
を備え
前記解除検出センサ及び前記回転角センサは、同一の基板に設けられる、
車輪モジュール。
【請求項2】
前記回転角センサは、
前記回転シャフトの回転軸と同軸上に配置される、請求項に記載の車輪モジュール。
【請求項3】
ホイールを回転させる駆動部の回転シャフトとともに回転する回転体と、前記回転体と摺接して前記回転シャフトの回転を規制する摩擦体と、前記摩擦体を前記回転体側へ付勢する付勢体と、通電によって前記付勢体の付勢力に抗して前記摩擦体を前記回転体から離間させて前記回転シャフトの回転の規制を解除する電磁コイルとを備えるブレーキ部と、
手動操作によって前記回転シャフトの回転の規制を解除する規制解除部と、
前記規制解除部によって前記回転シャフトの回転の規制が解除されたことを検出する解除検出センサと、
前記解除検出センサから、前記規制解除部による前記回転シャフトの回転の規制の解除を示す解除信号が出力されているか否かを判定し、判定結果に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記解除検出センサから前記解除信号が出力されていると判定された場合、前記駆動部の駆動を制限する、
車輪モジュール。
【請求項4】
ホイールを回転させる駆動部の回転シャフトとともに回転する回転体と、前記回転体と摺接して前記回転シャフトの回転を規制する摩擦体と、前記摩擦体を前記回転体側へ付勢する付勢体と、通電によって前記付勢体の付勢力に抗して前記摩擦体を前記回転体から離間させて前記回転シャフトの回転の規制を解除する電磁コイルとを備えるブレーキ部と、
手動操作によって前記回転シャフトの回転の規制を解除する規制解除部と、
前記規制解除部によって前記回転シャフトの回転の規制が解除されたことを検出する解除検出センサとを備え、
前記規制解除部は、
操作部と、
前記操作部に接続されるとともに、前記操作部に対する手動操作によって前記付勢体の前記摩擦体への付勢力を解放することで、前記回転シャフトの回転の規制を解除する解放板と、
を備える、車輪モジュール。
【請求項5】
前記解放板は、
基端部が前記操作部に接続され、前記操作部に対する手動操作に応じて移動自在な第1解放板と、
前記第1解放板の先端部と当接する受け部と、前記受け部とともに前記第1解放板の移動方向に沿って移動自在であって、前記付勢体において前記摩擦体を付勢する方向とは反対側の方向に配置されて前記付勢体を押圧する押圧部とを含む第2解放板と
を備え、
前記第1解放板は、
前記操作部に対する手動操作によって、前記基端部が前記第2解放板の前記受け部から離間する方向へ移動させられ、
前記第2解放板は、
前記第1解放板の移動に応じて前記押圧部が前記付勢体を押圧する方向とは反対側の方向へ移動させられることで、前記付勢体の前記摩擦体への付勢力を解放し、前記回転シャフトの回転の規制を解除する、請求項に記載の車輪モジュール。
【請求項6】
前記ブレーキ部を収容するケース部をさらに備え、
前記第1解放板は、前記ケース部の外部に設けられる、
請求項に記載の車輪モジュール。
【請求項7】
前記操作部は、ねじ機構を含む、請求項4乃至6のいずれか一つに記載の車輪モジュール。
【請求項8】
前記操作部は、
ワイヤ機構を含む、請求項4乃至6のいずれか一つに記載の車輪モジュール。
【請求項9】
前記操作部は、
リンク機構を含む、請求項4乃至6のいずれか一つに記載の車輪モジュール。
【請求項10】
前記解除検出センサは、
前記回転シャフトの回転軸と同軸上に配置される、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の車輪モジュール。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の車輪モジュールを備える、移動機構。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の車輪モジュールの制御方法であって、
前記解除検出センサから、前記規制解除部による前記回転シャフトの回転の規制の解除を示す解除信号が出力されているか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程における判定結果に基づいて前記駆動部を制御する制御工程と
を含む、車輪モジュールの制御方法。
【請求項13】
前記制御工程は、
前記判定工程によって前記解除信号が出力されていると判定された場合、前記駆動部の駆動を制限する、請求項12に記載の車輪モジュールの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪モジュール、移動機構、および、車輪モジュールの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動モータの回転シャフトの回転を規制するブレーキ装置が種々提案されている。ブレーキ装置としては、例えば、バネを用いてアーマチュアを回転シャフトとともに回転する回転円板へ付勢することで回転シャフトの回転を規制する一方、電磁コイルに通電してアーマチュアを回転体から離間させることで制動を解除する電磁ブレーキ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来技術にあっては、例えば電磁ブレーキ装置へ通電できないような故障やバッテリ切れ等が発生した場合、電磁ブレーキ装置が回転シャフトの回転を規制した状態で固定されるため、手動操作によって回転シャフトの回転の規制を解除できるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-39817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、例えば、手動操作による回転規制の解除がなされた状態のまま、駆動モータを再度駆動させてしまうと、電磁ブレーキがかからないため、回転シャフトの回転が規制されず、停止できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、手動操作によって回転シャフトの回転の規制が解除されたときの安全性を向上させることができる車輪モジュール、移動機構、および、車輪モジュールの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る車輪モジュールは、ブレーキ部と、規制解除部と、解除検出センサと、回転角センサと、を備える。ブレーキ部は、ホイールを回転させる駆動部の回転シャフトとともに回転する回転体と、前記回転体と摺接して前記回転シャフトの回転を規制する摩擦体と、前記摩擦体を前記回転体側へ付勢する付勢体と、通電によって前記付勢体の付勢力に抗して前記摩擦体を前記回転体から離間させて前記回転シャフトの回転の規制を解除する電磁コイルとを備える。規制解除部は、手動操作によって前記回転シャフトの回転の規制を解除する。解除検出センサは、前記規制解除部によって前記回転シャフトの回転の規制が解除されたことを検出する。前記回転角センサは、回転シャフトの回転角を検出する。前記解除検出センサ及び前記回転角センサは、同一の基板に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、手動操作によって回転シャフトの回転の規制が解除されたときの安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る車輪モジュールを備えた台車の外観を示す斜視図である。
図2図2は、車輪モジュールの外観を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、図3に示すブレーキ部付近の拡大図である。
図5図5は、規制解除部およびブレーキ部を示す斜視図である。
図6図6は、規制解除部の拡大図である。
図7図7は、車輪モジュールの制御システムの機能的構成を示すブロック図である。
図8図8は、制御装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態に係る車輪モジュールの操作部付近の斜視図である。
図10図10は、図9のX-X線断面図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る車輪モジュールの操作部付近の斜視図である。
図12図12は、図11のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る車輪モジュール、移動機構、および、車輪モジュールの制御方法について図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
<車輪モジュールを備えた台車の構成>
図1は、第1の実施形態に係る車輪モジュールを備えた台車の外観を示す斜視図である。図1に示すように、台車100は、荷台110と、取っ手120と、車輪モジュール200とを備える。荷台110は、機体を構成する。
【0012】
荷台110は、厚板状に形成された部材であり、表面に荷物が載せられる。取っ手120は、利用者が台車100を移動する際に把持するための湾曲した棒状の部材であり、荷台110の上面に取り付けられている。車輪モジュール200は、図示していないバッテリなどの電源から供給される駆動電流によって回転する車輪であり、荷台110の裏面に取り付けられている。
【0013】
車輪モジュール200は、台車100の移動機構として用いられる。例えば、車輪モジュール200は、利用者が荷台110に荷物を載せて運搬する際の補助用に駆動されたり、台車100が他の台車100に追従して自走する機能を有する場合に、他の台車100との間の距離に応じて駆動されたりする。なお、車輪モジュール200は、台車100に前輪として備えられてもよいし、中輪として備えられてもよいし、後輪として備えられてもよいし、前輪・中輪・後輪のいずれか2以上の組み合わせとして備えられてもよい。例えば、6輪の台車とした場合、旋回性能が高くなるが、4輪等、備えられる車輪の数は限定されない。
【0014】
また、車輪モジュール200は、例えば、運送・搬送用ロボットや、清掃用ロボット等の所謂サービスロボットの移動機構として用いることもできる。
【0015】
図2は、車輪モジュール200の外観を示す斜視図である。図2に示すように、車輪モジュール200は、接続部材210と、車輪部220とを有する。なお、車輪モジュール200は、車輪部220のみで構成されてもよい。
【0016】
接続部材210は、台車100と車輪部220とを接続する部材である。例えば、接続部材210は、固定部211と、第1保持部212と、第2保持部213とを備える。なお、固定部211と第1保持部212とは、別体に形成されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0017】
固定部211は、厚板状に形成されるとともに、上面211aが台車100における荷台110(図1参照)の裏面に取り付けられて固定される。第1保持部212は、固定部211の端部から鉛直方向(下方)に延在する部材である。第2保持部213は、第1保持部212の下方に配置され、第1保持部212の下端との間に車輪部220の一部を挟んだ状態で、例えばネジなどにより、第1保持部212に取り付けられる。これにより、車輪部220は、第1保持部212および第2保持部213によって保持されつつ、固定部211を介して台車100に接続される。
【0018】
車輪部220は、タイヤ10と、ホイール11(後述する図3参照)と、駆動部12と、ブレーキ部(制動部)20と、規制解除部40とを備える。
【0019】
図3は、図2のIII-III線断面図であり、また、軸方向に沿った車輪モジュール200の断面図である。図3に示すように、タイヤ10は、ゴムなど弾力性を有する部材によって形成される。例えば、タイヤ10は、円筒状の部材であり、直径は100~300mmであるが、これに限られない。ホイール11は、円筒状に形成され、外周側にタイヤ10が取り付けられる。
【0020】
<駆動部の構成>
駆動部12は、ホイール11の内側、具体的には、ホイール11よりも径方向内側に配置され、回転軸Aを中心にホイール11を回転させる。例えば、駆動部12は、ステータ15と、ロータ16と、回転シャフト17と、筐体18とを備える。
【0021】
例えば、ステータ15とロータ16とはインナーロータ型のモータを構成しており、駆動電流が供給されることによって、回転軸Aを中心にロータ16が回転する。ロータ16の回転によって発生した回転力は、回転シャフト17および歯車機構(例えば遊星歯車機構。図示せず)を介してホイール11に伝達される。これにより、ホイール11とともにタイヤ10が回転する。
【0022】
ステータ15は、駆動電流によって、回転軸Aを中心にロータ16を回転させる。具体的には、ステータ15は、中空の円筒状に形成されたステータ基部の内周面に複数の突極が周方向に並べて配置された構成を有しており、各突極にコイルが巻回される。
【0023】
ロータ16は、ステータ15よりも径方向内側に配置されており、ステータ15に対して回転軸Aを中心に回転することで、ホイール11を回転させる。具体的には、ロータ16は、円柱状に形成された基部の外周面に沿って複数の磁石が周方向に並べて配置された構成を有しており、各磁石が、ステータ15の各コイルと対向するように配置される。これにより、ロータ16は、ステータ15のコイルに駆動電流が流れた際にコイルに発生する電磁力によって、回転軸Aを中心に回転する。
【0024】
回転シャフト17は、軸心が回転軸Aと一致するように配置され、ロータ16の中心を貫通した状態で、ロータ16に固定されている。ここで、回転シャフト17は、ベアリング19a,19bを介して回転自在に筐体18に支持される。これにより、回転シャフト17は、ロータ16の回転に応じて、回転軸Aを中心に回転する。
【0025】
筐体18は、ホイール11の内側に配置され、上記したステータ15、ロータ16、回転シャフト17および図示しない歯車機構などを収容する。
【0026】
<ブレーキ部の構成>
次に、ブレーキ部20について説明する。ブレーキ部20は、回転シャフト17の回転を規制する装置であり、円筒状のケース部30に収容される(図2参照)。ブレーキ部20としては、例えば無励磁作動ブレーキ(負作動電磁ブレーキ)を用いることができる。かかるブレーキ部20などについて図4以降を参照して詳しく説明する。
【0027】
図4は、図3に示すブレーキ部20付近の拡大図である。図4に示すように、ブレーキ部20は、ブレーキディスク21と、摩擦板22と、固定部23と、アーマチュア24と、ばね部材25と、電磁コイル26とを備える。
【0028】
ブレーキディスク21は、例えば円板状に形成される部材である。ブレーキディスク21は、回転シャフト17に固定され、回転シャフト17とともに回転する。なお、ブレーキディスク21は、回転体の一例である。
【0029】
摩擦板22は、ブレーキディスク21と摺接して回転シャフト17の回転を規制する。具体的には、摩擦板22は、第1摩擦板22aと、第2摩擦板22bとを備える。第1、第2摩擦板22a,22bは、例えば環状に形成され、中央の孔には回転シャフト17が貫通するように配置される。
【0030】
また、第1摩擦板22aと第2摩擦板22bとは、ブレーキディスク21を間に挟むようにして回転軸Aの方向に沿って配置される。上記のように構成された第1、第2摩擦板22a,22bは、後述するばね部材25の付勢力によってブレーキディスク21側へ付勢される。これにより、第1、第2摩擦板22a,22bは、ブレーキディスク21に対して摺接して摩擦が生じ、ブレーキディスク21に取り付けられた回転シャフト17の回転を規制する。なお、第1、第2摩擦板22a,22bを含む摩擦板22は、摩擦体の一例である。
【0031】
固定部23は、例えば環状に形成され、中央の孔には回転シャフト17が貫通するように配置される。また、固定部23は、第2摩擦板22bに対して回転軸Aの方向に沿って隣接するように配置される。詳しくは、固定部23は、第2摩擦板22bにおいてブレーキディスク21やばね部材25が配置される側の面とは反対側の面と対向するように配置されて、ケース部30に固定される。
【0032】
アーマチュア24は、磁性を有し、例えば環状に形成される。また、アーマチュア24の中央の孔には、回転シャフト17が貫通するように配置される。アーマチュア24は、上記した第1摩擦板22aをブレーキディスク21との間に挟むようにして回転軸Aの方向に沿って配置される。なお、アーマチュア24は、第1摩擦板22aとは別体とされるが、一体に形成されてもよい。
【0033】
ばね部材25は、一端がアーマチュア24と当接するように配置される。ばね部材25としては、例えばコイルばねを用いることができる。また、ばね部材25は、他端が後述するピン53と当接するように配置される。ばね部材25およびピン53は、アーマチュア24と隣接する電磁コイル26に形成された孔28内に配置される。
【0034】
上記したピン53は、規制解除部40の構成要素である。図4は、規制解除部40が作動する前の状態を示しており、かかる状態では、ばね部材25は、ピン53とアーマチュア24との間に圧縮されて介装される。これにより、ばね部材25は、矢印F1で示すように、アーマチュア24および第1摩擦板22aをブレーキディスク21側へ付勢することとなる。上記したように、かかる付勢により、第1、第2摩擦板22a,22bは、ブレーキディスク21に対して摺接して摩擦が生じ、回転シャフト17の回転が規制される。
【0035】
なお、上記では、第1摩擦板22aをブレーキディスク21側へ付勢する部材をばね部材25としたが、これに限定されるものではなく、付勢できればその他の部材であってもよい。なお、ばね部材25は付勢体の一例である。
【0036】
電磁コイル26は、ヨーク26aと、コイル26bとを備える。ヨーク26aは、円筒状に形成され、中央の孔には、回転シャフト17が貫通するように配置される。コイル26bは、ヨーク26aの外周側に巻回される。なお、ヨーク26aには、上記したばね部材25やピン53が配置される孔28が形成される。
【0037】
そして、ブレーキ部20において、回転シャフト17の回転の規制の解除は、電磁コイル26へ通電することで行われる。例えば、図示しないバッテリなどの電源からコイル26bに駆動電流が供給されると、電磁力が発生し、アーマチュア24は、ばね部材25の付勢力に抗して電磁コイル26側へ吸着される。これにより、第1摩擦板22aは回転シャフト17から離間し、よって回転シャフト17の回転の規制が解除される。
【0038】
このように、電磁コイル26は、通電によってばね部材25の付勢力に抗して第1摩擦板22aをブレーキディスク21から離間させて、回転シャフト17の回転の規制を解除する。
【0039】
ところで、例えば上記した電磁コイル26へ通電できないような故障やバッテリ切れ等が発生した場合、電磁コイル26では、回転シャフト17の回転の規制を解除することができない。
【0040】
そこで、本実施形態に係る車輪モジュール200にあっては、手動操作によって回転シャフト17の回転の規制を解除できる規制解除部40を備えるようにした。また、本実施形態に係る車輪モジュール200においては、規制解除部40を用いた手動操作によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたことを検出できるようにした。
【0041】
<規制解除部の構成>
先ず、規制解除部40について説明する。図5は、規制解除部40およびブレーキ部20を示す斜視図である。なお、図5では、理解の便宜のため、ケース部30から規制解除部40やブレーキ部20を部分的に取り出して示す図である。また、図5において、ケース部30の一部を想像線で示している。
【0042】
規制解除部40は、操作部41と、解放板50と、上記したピン53とを備える。操作部41は、一部がケース部30から露出するように配置され(図2参照)、図示しないユーザによって操作可能に構成される。
【0043】
具体的には、操作部41は、頭部41aと、ねじ部41bとを備える。頭部41aは、略円筒状に形成され、ケース部30の外部に露出するように配置される(図2参照)。操作部41は、ユーザによって操作されるつまみとして機能する。
【0044】
ねじ部41bは、頭部41aから延在し、外周面には、例えば雄ねじが形成される。また、図4に示すように、ケース部30には、ねじ部41bに対応する雌ねじのねじ孔31が回転軸Aに沿って形成される。そして、ねじ部41bは、後述する第1解放板51に形成された挿通孔51a1に挿通されつつ、ケース部30のねじ孔31と係合する。
【0045】
このように、ねじ部41bを備える操作部41は、軸方向が回転軸Aと同軸とされるとともに、第1解放板51の挿通孔51a1を通ってケース部30のねじ孔31に締結固定される。なお、ねじ部41bは、ねじ機構の一例である。
【0046】
解放板50は、操作部41に接続される。そして、解放板50は、操作部41に対する手動操作によってばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力を解放することで、回転シャフト17の回転の規制を解除することができる。
【0047】
以下の解放板50の説明では、先ず回転シャフト17の回転を規制する状態の説明をした後、規制の解除について説明することとする。
【0048】
図5に示すように、解放板50は、第1解放板51と、第2解放板52とを備える。第1解放板51は、平面視において略U字状に形成される部材である。具体的には、第1解放板51は、基端部51aと、側壁部51bとを備える。
【0049】
基端部51aは、長尺状の薄板である。基端部51aにおいて、回転軸Aに対応する部位には、上記した挿通孔51a1が形成される。従って、基端部51aは、操作部41のねじ部41bが挿通孔51a1に挿通されることで、操作部41と接続される。
【0050】
側壁部51bは、長尺状の薄板であり、基端部51aの両端からブレーキ部20側へ向けて、回転軸Aと平行な方向に沿って延在される。
【0051】
上記のように構成された第1解放板51は、ケース部30の外部に設けられる(図2参照)。詳しくは、第1解放板51は、ケース部30の外周面に倣うような形状(例えば略U字状)とされて、ケース部30の外部に設けられる。これにより、本実施形態にあっては、ケース部30内に第1解放板51が設けられないことから、ケース部30を小型化することができる。
【0052】
第2解放板52は、長尺状の薄板であり、受け部52aと、押圧部52bとを備える。受け部52aは、第1解放板51の先端部51b1、詳しくは側壁部51bの先端部51b1と対向する位置に配置され、先端部51b1と当接する。
【0053】
具体的には、操作部41がケース部30のねじ孔31に締結固定された状態のとき、第1解放板51の先端部51b1は受け部52aと当接するとともに、受け部52aをブレーキ部20側へ押圧する。
【0054】
なお、受け部52aを含む第2解放板52は、第1解放板51の先端部51b1と当接せず、押圧されないとき、回転軸Aに沿って移動自在となるように、ケース部30に取り付けられているものとする。
【0055】
押圧部52bは、長尺状の薄板であり、両端側で受け部52aと連続するように形成される。また、図4に示すように、押圧部52bは、シャフト用挿通孔55と、ピン用挿通孔56とを備える。シャフト用挿通孔55は、回転軸Aに対応する部位に形成され、回転シャフト17が回転可能に挿通される。
【0056】
ピン用挿通孔56は、電磁コイル26に形成された、ピン53用の孔28と対応する部位に形成される。そして、ピン用挿通孔56には、ピン53の先端部53aが挿通される。かかる先端部53aには、例えば雄ねじが形成され、先端部53aに締結部材57(例えばナット)が取り付けられることで、第2解放板52の押圧部52bとピン53とが締結されて固定される。
【0057】
上記のように構成された押圧部52bは、第1解放板51の先端部51b1が受け部52aと当接して受け部52aを押圧する状態のとき、ピン53を介してばね部材25を押圧する。これにより、第1摩擦板22aは、ばね部材25の付勢力によってブレーキディスク21側へ付勢され、ブレーキディスク21に対して摺接して、ブレーキディスク21に取り付けられた回転シャフト17の回転を規制する。
【0058】
続いて、回転シャフト17の回転の規制の解除につい説明する。かかる解除は、ユーザの操作部41への操作によって行われる。具体的には、操作部41に対する手動操作に応じて、第1解放板51は移動自在となる。すなわち、例えば手動操作によって操作部41がねじ部41bを緩める方向へ回転されるとする。このとき、第1解放板51は、ケース部30に固定されなくなり、また、ねじ部41bは挿通孔51a1に挿通されたままであることから、矢印D1(図5参照)で示すように、回転軸Aの軸方向に沿って移動自在となる。
【0059】
なお、基端部51aには、軸方向が回転軸Aと平行なガイドピン54が複数(例えば2本)取り付けられる。また、図示は省略するが、ケース部30には、ガイドピン54が挿通されるガイド孔が形成される。これにより、第1解放板51は、ガイドピン54にガイドされながら、回転軸Aの軸方向に沿って移動することができる。
【0060】
すなわち、第1解放板51は、受け部52aから離間する方向へ移動することから、第1解放板51の先端部51b1は受け部52aと当接せず(非当接となり)、よって先端部51b1は受け部52aを押圧しなくなる。
【0061】
第2解放板52は、上記したように、受け部52aが先端部51b1と当接せず、押圧されないとき、回転軸Aに沿って移動自在となる。そのため、第2解放板52は、ばね部材25からピン53を介して伝達される付勢力F2により、矢印D2(図5参照)で示すように、ばね部材25を押圧する方向とは反対側の方向へ移動させられる。これにより、ばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力は解放され、回転シャフト17の回転の規制が解除される。
【0062】
ここで、回転シャフト17の回転の規制が解除された状態について図6を参照して説明する。図6は、規制解除部40の拡大図である。
【0063】
図6においては、図4との対比から分かるように、ユーザの操作部41への操作によってねじ部41bが緩められると、第1解放板51は、ケース部30から離間するように回転軸Aの軸方向に沿って移動する(矢印D1参照)。これによって、第1解放板51の先端部51b1は受け部52aを押圧しなくなるため、第2解放板52は、ばね部材25からの付勢力F2により、ばね部材25を押圧する方向とは反対側の方向へ移動させられる(矢印D2参照)。これにより、ばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力は解放され、回転シャフト17の回転の規制が解除される。
【0064】
このように、本実施形態にあっては、上記のように構成された操作部41や解放板50を備えた規制解除部40を用いることで、簡易な構成で、回転シャフト17の回転の規制を解除することができる。
【0065】
また、第2解放板52は、第1解放板51の移動に応じて押圧部52bがばね部材25を押圧する方向とは反対側の方向へ移動させられることから、ばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力を効果的に解放でき、回転シャフト17の回転の規制を確実に解除することができる。
【0066】
また、上記した規制解除部40は、操作部41などが回転シャフト17の回転軸A方向に沿って配置されることから、車輪モジュール200の径方向に対する小型化を図ることが可能となる。
【0067】
また、操作部41は、ねじ部41bを有るねじ機構を含むため、例えばねじ部41bが緩む方向へ操作部41を回転させるだけで規制解除部40を操作でき、ユーザの操作を容易にすることが可能となる。
【0068】
<センサの構成>
次に、車輪モジュール200が備えるセンサについて図4を参照して説明する。車輪モジュール200は、解除検出センサ61と、回転角センサ71とを備える。
【0069】
解除検出センサ61は、規制解除部40によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたことを検出する。これにより、例えば、後述するように、手動操作によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたときに適した駆動部12の制御などを行うことが可能となり、よって安全性を向上させることができる。
【0070】
上記した解除検出センサ61は、例えば、ホールICなどを含み、検出用マグネット62の移動(スラスト移動)に伴う磁束の変化を検出することで、検出用マグネット62までの距離を検出する近接センサである。
【0071】
詳しくは、本実施形態に係る規制解除部40の操作部41は、上記したように、軸方向が回転軸Aと同軸とされる。そして、かかる操作部41への操作によって、操作部41が回転軸Aに沿って移動し、それに伴う解放板50の移動などによって回転シャフト17の回転の規制が解除される。
【0072】
そこで、本実施形態にあっては、操作部41の端部、具体的にはねじ部41bの端部に検出用マグネット62が設けられ、かかる検出用マグネット62と対向する位置に解除検出センサ61が配置されるようにした。なお、解除検出センサ61は、ケース部30内に設けられた基板60に搭載される。
【0073】
これにより、解除検出センサ61は、操作部41が操作され、検出用マグネット62ととともに操作部41が離間する方向へ移動した場合に、規制解除部40によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたことを検出することができる。具体的には、解除検出センサ61は、操作部41が離間する方向への移動を検出した場合に、規制解除部40による回転シャフト17の回転の規制の解除を示す解除信号を出力する。
【0074】
また、解除検出センサ61は、回転シャフト17の回転軸Aと同軸上に配置されるようにした。これにより、回転シャフト17の回転軸A上にあるスペースを有効に利用できるとともに、車輪モジュール200の径方向に対する小型化を図ることが可能となる。
【0075】
回転角センサ71は、回転シャフト17の回転角を検出する。例えば、回転角センサ71は、ホールICなどを含み、検出用マグネット72の回転に伴う磁束の変化を検出することで、検出用マグネット72の回転角を検出するエンコーダである。
【0076】
詳しくは、回転シャフト17において、第2解放板52のシャフト用挿通孔55に挿通された端部に検出用マグネット72が設けられ、かかる検出用マグネット72と対向する位置、言い換えれば、回転シャフト17と同軸上に回転角センサ71が配置されるようにした。
【0077】
これにより、回転角センサ71は、回転シャフト17の回転角を検出することができ、検出された回転シャフト17の回転角を示す回転角信号を出力する。
【0078】
このように、回転角センサ71は、回転シャフト17の回転軸Aと同軸上に配置されることから、回転シャフト17の回転軸A上にあるスペースを有効に利用できるとともに、車輪モジュール200の径方向に対する小型化を図ることが可能となる。
【0079】
また、回転角センサ71は、基板60に搭載される。すなわち、解除検出センサ61および回転角センサ71は、同一の基板60に設けられる。詳しくは、基板60は、回転シャフト17と操作部41との間に配置されるとともに、2つの主面60a,60bのうち、一方の主面60aに解除検出センサ61が設けられ、一方の主面60aとは反対側の他方の主面60cに回転角センサ71が設けられる。
【0080】
これにより、解除検出センサ61と回転角センサ71とで、基板60を共有化できるとともに、共有化によって不要となる基板の分だけ、車輪モジュール200を小型にすることができる。
【0081】
また、解除検出センサ61と回転角センサ71とがともに、回転シャフト17の回転軸Aと同軸上に配置されることから、回転シャフト17の回転軸A上にあるスペースをより一層有効に利用できるとともに、車輪モジュール200の径方向に対するさらなる小型化を図ることが可能となる。
【0082】
なお、図示は省略するが、車輪モジュール200は、解除検出センサ61や回転角センサ71以外の各種センサ81(図7参照)を備えてもよい。各種センサ81は、例えば車輪モジュール200の駆動制御に用いられるセンサである。各種センサ81としては、ユーザからの始動要求を検出するセンサや、台車100が他の台車100に追従して自走する機能を有する場合に他の台車100との間の距離を検出するセンサなどを含むが、これらに限定されるものではない。各種センサ81は、検出された情報を示す信号を出力する。
【0083】
<制御システムの構成>
次いで、本実施形態に係る車輪モジュール200の制御システムについて説明する。図7は、本実施形態に係る車輪モジュール200の制御システムSの機能的構成を示すブロック図である。
【0084】
図7に示すように、制御システムSは、制御装置80と、駆動部12と、ブレーキ部20とを備える。制御装置80は、解除検出センサ61と、回転角センサ71と、各種センサ81と、制御部90とを備える。
【0085】
解除検出センサ61は、規制解除部40による回転シャフト17の回転の規制の解除が検出された場合、解除信号を制御部90へ出力する。回転角センサ71は、回転シャフト17の回転角が検出された場合、回転角信号を制御部90へ出力する。各種センサ81は、検出された情報を示す信号を制御部90へ出力する。
【0086】
制御部90は、例えばCPUなどを有するマイクロコンピュータである。制御部90は、解除検出センサ61などから出力された種々の信号に基づいて、駆動部12やブレーキ部20を制御する。
【0087】
例えば、制御部90は、回転角センサ71からの回転角信号に基づいて、駆動部12やブレーキ部20へ駆動指令を出力する制御を行うことで、台車100の速度や位置などを制御することができる。
【0088】
ところで、上記した規制解除部40は、例えば、ブレーキ部20へ通電できないような故障やバッテリ切れ等が発生した場合、ブレーキ部20が回転シャフト17の回転を規制した状態で固定されるため、手動操作によって回転シャフト17の回転の規制を解除する。そのため、例えば、手動操作による回転規制の解除がなされた状態のまま、駆動部12を再度駆動させてしまうと、電磁ブレーキがかからないため、回転シャフト17の回転が規制されず、停止できないおそれがあった。
【0089】
そこで、本実施形態に係る制御部90は、解除検出センサ61から解除信号が出力されているか否かを判定し、判定結果に基づいて駆動部12を制御するようにした。例えば、制御部90は、解除検出センサ61から解除信号が出力されていると判定された場合、駆動部12の駆動を制限することができる。
【0090】
なお、駆動部12の駆動の制限には、例えば、台車100の上限速度を下げる、最大旋回角度を狭くするなどの制限を設けることに限られるものではなく、駆動部12での駆動の禁止が含まれてもよい。
【0091】
このように、手動操作による回転規制の解除がなされた状態のままのときの、駆動部12の駆動を制限することで、車輪モジュール200を備えた台車100の安全性を向上させることができる。
【0092】
なお、制御部90は、解除検出センサ61から解除信号が出力されていると判定された場合、手動操作による回転規制の解除がなされていることをユーザに対して通知するようにしてもよい。
【0093】
<制御装置の制御処理>
次に、制御装置における具体的な処理手順について図8を用いて説明する。図8は、制御装置80が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0094】
図8に示すように、制御装置80の制御部90は、回転角センサ71の回転角度信号などに基づいて、駆動部12などへの駆動指令が出力されたか否かを判定する(ステップS10)。制御部90は、駆動指令が出力されたと判定されない場合(ステップS10,No)、以降の処理をスキップする。
【0095】
制御部90は、駆動指令が出力されたと判定された場合(ステップS10,Yes)、解除検出センサ61から解除信号があるか否かを判定する(ステップS11)。制御部90は、解除信号がないと判定された場合(ステップS11,No)、駆動指令に応じて駆動部12を制御する、言い換えると、通常制御(モータ駆動)を行う(ステップS12)。他方、制御部90は、解除信号があると判定された場合(ステップS11,Yes)、駆動部12の駆動の制限(モータ駆動制限)を行う(ステップS13)。
【0096】
上述したように、第1の実施形態に係る車輪モジュール200は、ブレーキ部20と、規制解除部40と、解除検出センサ61とを備える。ブレーキ部20は、ホイール11を回転させる駆動部12の回転シャフト17とともに回転するブレーキディスク(回転体)21と、ブレーキディスク21と摺接して回転シャフト17の回転を規制する摩擦板(摩擦体)22と、摩擦板22をブレーキディスク21側へ付勢するばね部材(付勢体)と、通電によってばね部材25の付勢力に抗して摩擦板22をブレーキディスク21から離間させて回転シャフト17の回転の規制を解除する電磁コイル26とを備える。規制解除部40は、手動操作によって回転シャフト17の回転の規制を解除する。解除検出センサ61は、規制解除部40によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたことを検出する。これにより、手動操作によって回転シャフト17の回転の規制が解除されたときに適した駆動部12の制御などを行うことが可能となり、よって安全性を向上させることができる。
【0097】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
図9は、第2の実施形態に係る車輪モジュール200の操作部41付近の斜視図である。図10は、図9のX-X線断面図であり、また、軸方向に沿った操作部41の断面図である。
【0099】
図9および図10に示すように、第2の実施形態に係る操作部41は、第1の実施形態のねじ機構に代えて、ワイヤ機構300を含む。ワイヤ機構300は、ワイヤ部310と、カバー311と、ワイヤ用ばね部材312とを備える。
【0100】
図10に示すように、ワイヤ部310は、アウターチューブ310aと、アウターチューブ310aの内部に挿設されたインナーワイヤ310bとを備える。インナーワイヤ310bの一端310b1は、ねじ部314を介して操作部41の頭部41aに接続される。
【0101】
また、図示は省略するが、インナーワイヤ310bの他端は、例えば取っ手120付近などユーザの操作し易い位置まで延在してもよい。また、取っ手120付近にハンドルを設け、ハンドルがユーザによって握られることで、インナーワイヤ310bを引っ張ることができるようにしてもよい。
【0102】
カバー311は、インナーワイヤ310bの一端310b1およびワイヤ用ばね部材312を収容するとともに、ケース部30に固定される。ワイヤ用ばね部材312は、カバー311内において、操作部41をケース部30側、言い換えると、第1解放板51が第2解放板52の受け部52a(図9参照)を押圧する側へ付勢する。
【0103】
そして、例えば、インナーワイヤ310bがユーザによって矢印D11の方向に引っ張られると、操作部41の頭部41aとともに第1解放板51が、ワイヤ用ばね部材312の付勢力に抗する向き、すなわち、第2解放板52の受け部52aを押圧しなくなる向きへ移動する。これにより、第2解放板52が移動して、ばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力は解放され、回転シャフト17の回転の規制が解除されることは既に述べた通りである(図6参照)。
【0104】
このように、第2の実施形態にあっては、操作部41は、ワイヤ機構300を含むようにした。これにより、例えばワイヤ部310のインナーワイヤ310bを引っ張るだけで、規制解除部40を操作でき、ユーザの操作を容易にすることが可能となる。
【0105】
また、インナーワイヤ310bの他端を、例えば台車100の取っ手120付近に延在することも可能となり、操作性の向上を図ることも可能である。
【0106】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。図11は、第3の実施形態に係る車輪モジュール200の操作部41付近の斜視図である。図12は、図11のXII-XII線断面図であり、また、軸方向に沿った操作部41の断面図である。
【0107】
図11および図12に示すように、第3の実施形態に係る操作部41は、第1の実施形態のねじ機構に代えて、リンク機構400を含む。リンク機構400は、ワイヤ部410と、フランジ部411と、ばね部材412と、リンクとして機能する第1解放板51と、軸部413とを備える。
【0108】
図11に示すように、ワイヤ部410は、第2の実施形態のワイヤ部310と同様、アウターチューブ410aと、インナーワイヤ410bとを備える。インナーワイヤ410bの一端410b1は、第1解放板51の基端部51aに接続される。なお、インナーワイヤ410bの他端は、第2の実施形態と同様、例えば取っ手120付近などユーザの操作し易い位置まで延在してもよい。
【0109】
フランジ部411は、ケース部30内において、操作部41の先端側に取り付けられる。ばね部材412は、フランジ部411とケース部30との間に介挿され、操作部41をケース部30側、言い換えると、第1解放板51が第2解放板52の受け部52a(図11参照)を押圧する側へ付勢する。
【0110】
図11に示すように、第1解放板51は、上記した基端部51aおよび側壁部51bに加え、延在部51cを備える。延在部51cは、側壁部51bの先端部51b1から第2解放板52の受け部52aへ延在する。第3の実施形態に係る側壁部51bの先端部51b1には、ケース部30に設けられた軸部413が配置される。
【0111】
かかる軸部413は、軸方向が回転軸Aと直交するシャフト413aを備える。そして、図12に破線で示すように、側壁部51bの先端部51b1と延在部51cとが接続する部位には、シャフト413aが挿通される長孔51dが形成される。これにより、側壁部51bおよび延在部51cは、シャフト413aが長孔51d内を移動することで、シャフト413aに対して回転軸Aに沿ってスライド可能とされる。なお、延在部51cの端部51c1は、第2解放板52の受け部52aと当接し、ばね部材412の付勢力によって第2解放板52の受け部52aを押圧している。
【0112】
そして、例えば、インナーワイヤ410bがユーザによって矢印D21の方向に引っ張られると、第1解放板51の基端部51aと操作部41が、ばね部材412の付勢力に抗する向き、すなわち、第2解放板52の受け部52aを押圧しなくなる向きへ移動する。
【0113】
詳しくは、第1解放板51の基端部51aの移動に伴い、側壁部51bおよび延在部51cもシャフト413aに対して回転軸Aと平行な方向に沿ってスライドする、具体的には図12で左方へスライドする。
【0114】
かかるスライドにより、延在部51cは第2解放板52の受け部52aを押圧しなくなる。これにより、第2解放板52が移動して、ばね部材25の第1摩擦板22aへの付勢力は解放され、回転シャフト17の回転の規制が解除されることは既に述べた通りである(図6参照)。
【0115】
このように、第3の実施形態にあっては、操作部41は、リンク機構400を含むようにしたので、操作部41の操作によって第2解放板52を確実に移動させることができ、よって回転シャフト17の回転の規制の解除もより確実に行うことができる。なお、その他の効果は、従前の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
【0116】
なお、上記した各実施形態では、摩擦板22は、ブレーキディスク21を第1摩擦板22aと第2摩擦板22bとで挟むように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数種類の形状に形成された摩擦体を積層させる多板式などその他の摩擦板であってもよい。
【0117】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
11 ホイール、12 駆動部、17 回転シャフト、20 ブレーキ部、21 ブレーキディスク、22 摩擦板、25 ばね部材、26 電磁コイル、40 規制解除部、61 解除検出センサ、200 車輪モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12