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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】作業分析装置および作業分析方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220914BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018051801
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019163626
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 みなみ
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190114(JP,A)
【文献】特開2016-009317(JP,A)
【文献】特開2000-204606(JP,A)
【文献】特開2014-214566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データの時系列を取得する状態データ取得部と、
前記取得した状態データの時系列に基づいて前記複数の時刻それぞれについて前記作業機械の作業の区分を特定し、前記作業の区分を時系列に集計する作業特定部と、
特定された前記作業の区分の時系列を出力する出力部と
を備える作業分析装置。
【請求項2】
前記作業特定部は、時刻ごとに複数の作業の区分それぞれの尤度を特定し、
前記出力部は、複数の作業の区分の尤度の時系列を出力する
請求項1に記載の作業分析装置。
【請求項3】
前記出力部は、時刻を表す軸と前記作業の区分を表す軸とを含む空間に、前記尤度に応じた色を着色したヒートマップを出力する
請求項2に記載の作業分析装置。
【請求項4】
前記作業特定部は、前記作業機械の一の作業目的を遂行する作業を示す単位作業の区分と、前記単位作業を構成する要素であって目的別に区分される一連の動作または作業を示す要素作業の区分とを特定する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業分析装置。
【請求項5】
前記作業特定部は、単位時間における前記作業の区分の尤度を特定し、
前記単位作業に係る単位時間は、前記要素作業に係る単位時間より短い
請求項4に記載の作業分析装置。
【請求項6】
複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データの時系列を取得するステップと、
前記取得した状態データの時系列に基づいて前記複数の時刻それぞれについて前記作業機械の作業の区分を特定し、前記作業の区分を時系列に集計するステップと、
特定された前記作業の区分の時系列を出力するステップと
を備える作業分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の作業分析装置および作業分析方法に係る。
【背景技術】
【0002】
作業機械の動作に関する動作情報を収集し、作業機械の作業を推定する技術が知られている。特許文献1には、作業機械の稼働状態に依存する複数の運転変数の時間変化に基づいて、作業機械の作業内容を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-214566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オペレータの技量判定および評価、ならびに作業の解析を行う場合、作業分析装置には、評価を行いやすいように作業の推定結果を俯瞰的に認識できる情報を出力する必要がある。
本発明の目的は、作業の推定結果を俯瞰的に認識できる情報を出力する作業分析装置および作業分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、作業分析装置は、複数の時刻における作業機械の状態を示す状態データを取得する状態データ取得部と、前記取得した状態データに基づいて前記複数の時刻それぞれについて前記作業機械の作業の区分を特定し、前記作業の区分を時系列に集計する作業特定部と、特定された前記作業の区分の時系列を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、作業分析装置は、作業機械の作業の推定結果を俯瞰的に認識できる情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る作業分析システムの構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るラベリング装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る作業分析装置の構成を示す概略ブロック図である。
図5】作業の区分を表すヒートマップの例を示す図である。
図6】作業の区分の内訳を表す内訳グラフの例を示す図である。
図7】掘削積込ごとの要素作業の内訳を表すグラフの例を示す図である。
図8】掘削積込ごとの積込回数を表すグラフの例を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る作業分析装置の学習処理を示すフローチャートである。
図10】第1の実施形態に係る作業分析装置による作業分析方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《全体構成》
図1は、一実施形態に係る作業分析システムの構成を示す概略図である。
状態分析システム1は、作業機械100と作業分析装置300とラベリング装置200を備える。
【0009】
作業機械100は、作業分析装置300による作業分析の対象である。作業機械100の例としては、油圧ショベルやホイルローダなどが挙げられる。なお、第1の実施形態においては、作業機械100の例として油圧ショベルを挙げて説明する。作業機械100には、複数のセンサおよび撮像装置が設けられ、各センサの計測値に係る情報および動画像が作業分析装置300に送信される。
ラベリング装置200は、作業分析装置300に記憶された動画像に、そのときの作業機械100の作業の区分を示すラベルを付したラベルデータを生成する。つまり、ラベルデータは、作業の区分を示すラベルの時系列である。
【0010】
作業分析装置300は、作業機械100から受信する情報とラベリング装置200から受信するラベルデータとに基づいて学習されたモデルに基づいて、作業機械100の作業の区分を表す画面を出力する。利用者は、作業分析装置300が出力する画面を視認することで、作業機械100の作業を認識することができる。
【0011】
《油圧ショベル》
図2は、第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
作業機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心を中心として走行体110に旋回自在に支持される。
【0012】
走行体110は、左右に設けられた無限軌道111と、各無限軌道111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。
【0013】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136とを備える。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンP1を介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンP2を介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃先と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピンP3を介して取り付けられる。なお、バケット133は、例えば法面バケットのように整地を目的としたバケットでもよいし、収容部を備えないバケットでもよい。また、作業機130は、バケット133に代えて、打突によって粉砕力を与えるためのブレーカや、対象物を把持するグラップルなどの他のアタッチメントを備えてもよい。
【0015】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0016】
旋回体120には、オペレータが搭乗する運転室121が備えられる。運転室121は、旋回体120の前方かつ作業機130の左側に備えられる。
旋回体120は、エンジン122、油圧ポンプ123、コントロールバルブ124、旋回モータ125、操作装置126、撮像装置127、データ集約装置128を備える。なお、他の実施形態においては、作業機械100がネットワークを介した遠隔操作によって動作してもよいし、自動運転によって動作してもよい。この場合、作業機械100は、運転室121および操作装置126を備えなくてもよい。
【0017】
エンジン122は、油圧ポンプ123を駆動する原動機である。
油圧ポンプ123は、エンジン122により駆動され、コントロールバルブ124を介して各アクチュエータ(ブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136、走行モータ112、および旋回モータ125)に作動油を供給する。
コントロールバルブ124は、油圧ポンプ123から供給される作動油の流量を制御する。
旋回モータ125は、コントロールバルブ124を介して油圧ポンプ123から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回させる。
【0018】
操作装置126は、運転室121の内部に設けられる2つのレバーである。操作装置126は、ブーム131の上げ操作および下げ操作、アーム132の押し操作および引き操作、バケット133の掘削操作およびダンプ操作、旋回体120の右旋回操作および左旋回操作、ならびに走行体110の前進操作および後退操作の指令を受け付ける。具体的には、右側操作レバーの前方向の操作は、ブーム131の下げ操作の指令に対応する。右側操作レバーの後方向の操作は、ブーム131の上げ操作の指令に対応する。右側操作レバーの右方向の操作は、バケット133のダンプ操作の指令に対応する。右側操作レバーの左方向の操作は、バケット133の掘削操作の指令に対応する。左側操作レバーの前方向の操作は、アーム132の引き操作の指令に対応する。左側操作レバーの後方向の操作は、アーム132の押し操作の指令に対応する。左側操作レバーの右方向の操作は、旋回体120の右旋回操作の指令に対応する。左側操作レバーの左方向の操作は、旋回体120の左旋回操作の指令に対応する。
操作装置126の傾きに応じて、コントロールバルブ124の各アクチュエータへつながる流路の開度が制御される。操作装置126は、例えば傾きに応じてパイロット作動油の流量を変化させるバルブを有し、パイロット作動油がコントロールバルブ124のスプールを作動させることで、コントロールバルブ124の開度を制御する。
【0019】
撮像装置127は、運転室121の上部に設けられる。撮像装置127は、運転室121の前方の画像であって作業機130が写る動画像を撮像する。撮像装置127が撮像した動画像は、タイムスタンプと共にデータ集約装置128に記憶される。
【0020】
データ集約装置128は、作業機械100が備える複数のセンサから検出値を収集し、タイムスタンプに関連付けて記憶する。またデータ集約装置128は、複数のセンサから収集した検出値の時系列、および撮像装置127が撮像した動画像を作業分析装置300に送信する。センサの検出値および動画像は、作業機械100の状態を示す状態データの一例である。データ集約装置128は、図示しないプロセッサ、メインメモリ、ストレージ、インタフェースを備えるコンピュータである。データ集約装置128のストレージは、データ集約プログラムを記憶する。データ集約装置128のプロセッサは、データ集約プログラムをストレージから読み出してメインメモリに展開し、データ集約プログラムに従った検出値および動画像の収集処理、ならびに送信処理を実行する。なお、データ集約装置128は、作業機械100の内部に設けられてもよいし外部に設けられてもよい。
【0021】
作業機械100は、複数のセンサを備える。各センサは、計測値をデータ集約装置128に出力する。具体的には、作業機械100は、回転数センサ141、トルクセンサ142、燃料センサ143、パイロット圧センサ144、ブームシリンダヘッド圧センサ145、ブームシリンダボトム圧センサ146、ブームストロークセンサ147、アームストロークセンサ148、バケットストロークセンサ149を備える。
【0022】
回転数センサ141は、エンジン122に設けられ、エンジン122の回転数を計測する。
トルクセンサ142は、エンジン122に設けられ、エンジン122のトルクを計測する。
燃料センサ143は、エンジン122に設けられ、エンジンの消費燃料量(瞬時燃費)を計測する。
【0023】
パイロット圧センサ144は、コントロールバルブ124に設けられ、操作装置126からの各パイロット作動油の圧力(PPC圧)を計測する。具体的には、パイロット圧センサ144は、ブーム131の上げ操作に係るPPC圧(ブーム上げPPC圧)、ブーム131の下げ操作に係るPPC圧(ブーム下げPPC圧)、アーム132の押し操作に係るPPC圧(アーム押しPPC圧)、アーム132の引き操作に係るPPC圧(アーム引きPPC圧)、バケット133の掘削操作に係るPPC圧(バケット掘削PPC圧)、バケット133のダンプ操作に係るPPC圧(バケットダンプPPC圧力)、旋回体120の右旋回操作に係るPPC圧(右旋回PPC圧)、旋回体120の左旋回操作に係るPPC圧(左旋回PPC圧)、左側の無限軌道111の前進操作に係るPPC圧(左前進PPC圧)、左側の無限軌道111の後退操作に係るPPC圧(左後退PPC圧)、右側の無限軌道111の前進操作に係るPPC圧(右前進PPC圧)、および右側の無限軌道111の後退操作に係るPPC圧(右後退PPC圧)を計測する。なお、他の実施形態においては、パイロット圧センサ144に代えて、操作装置126が出力する操作信号を検出する検出器を備えてもよい。
【0024】
ブームシリンダヘッド圧センサ145は、ブームシリンダ134のヘッド側の油室の圧力を計測する。
ブームシリンダボトム圧センサ146は、ブームシリンダ134のボトム側の油室の圧力を計測する。
【0025】
ブームストロークセンサ147は、ブームシリンダ134のストローク量を計測する。
アームストロークセンサ148は、アームシリンダ135のストローク量を計測する。
バケットストロークセンサ149は、バケットシリンダ136のストローク量を計測する。なお、他の実施形態においては、各ストロークセンサに代えて、作業機130の角度を直接測る角度計を備えてもよいし、ブーム131、アーム132、およびバケット133のそれぞれに傾斜計またはIMUを備えてもよい。また他の実施形態においては、撮像装置127が撮像した作業機130が写る画像から作業機130の角度を算出してもよい。
【0026】
データ集約装置128は、各センサの計測値に基づいて、作業機械100の他の状態データを特定してもよい。例えば、データ集約装置128は、ブームシリンダボトム圧センサ146の計測値に基づいて、作業機130の実加重を算出してもよい。また例えばデータ集約装置128は、ブームストロークセンサ147、アームストロークセンサ148およびバケットストロークセンサ149に基づいて、作業機130の揚程を算出してもよい。
【0027】
《ラベリング装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係るラベリング装置の構成を示す概略ブロック図である。
ラベリング装置200は、プロセッサ21、メインメモリ22、ストレージ23、インタフェース24を備えるコンピュータである。ラベリング装置200の例としては、PC、スマートフォン、およびタブレット端末などが挙げられる。ラベリング装置200は、どこに設置されてもよい。つまり、ラベリング装置200は、作業機械100に搭載されてもよいし、作業分析装置300に搭載されてもよいし、作業機械100および作業分析装置300と別個に設けられてもよい。ストレージ23は、ラベリングプログラムを記憶する。プロセッサ21は、ラベリングプログラムをストレージ23から読み出してメインメモリ33に展開し、ラベリングプログラムに従った処理を実行する。
【0028】
ストレージ23の例としては、半導体メモリ、ディスクメディアおよびテープメディア等が挙げられる。ストレージ23は、ラベリング装置200の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース24を介してラベリング装置200に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ23は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0029】
プロセッサ21は、ラベリングプログラムの実行により、動画像取得部211、動画像表示部212、ラベル入力部213、ラベルデータ生成部214、ラベルデータ送信部215を備える。
【0030】
動画像取得部211は、作業分析装置300から動画像を受信する。動画像の各フレーム画像には、撮像時刻を示すタイムスタンプが関連付けられている。
動画像表示部212は、動画像取得部211が取得した動画像をディスプレイに表示させる。
ラベル入力部213は、動画像の再生中に、利用者から、再生タイミングにおいて作業機械100が実行している作業の区分を示すラベル値の入力を受け付ける。
ラベルデータ生成部214は、ラベル入力部213に入力されたラベル値を、入力された再生タイミングを示すタイムスタンプに関連付けたラベルデータを生成する。ラベルデータは、例えば、作業の区分を行とし、時刻を列とする行列であって、その時刻にその区分に係る作業がなされたか否かを表す値を要素に持つ行列であってよい。つまり、ラベルデータは、i列j行目の要素の値wijを、時刻tに区分aに係る作業がなされているときに1とし、時刻tに区分aに係る作業がなされていないときに0とする行列であってよい。
ラベルデータ送信部215は、ラベルデータを作業分析装置300に送信する。
【0031】
《作業の区分の例》
ラベル入力部213に入力される作業の区分の例について説明する。
ラベル入力部213は、利用者から、単位作業に係るラベル値と要素作業に係るラベル値の入力を受け付ける。単位作業とは、一の作業目的を遂行する作業である。要素作業とは、単位作業を構成する要素であって目的別に区分される一連の動作または作業を示す作業である。
【0032】
要素作業の区分の例としては、「掘削」、「積荷旋回」、「排土」、「空荷旋回」、「排土待ち」、「荷台抑え」、「転圧」、「押し均し」、「ホウキ」が挙げられる。
掘削は、バケット133によって土砂または岩石を掘り、削り取る作業である。
積荷旋回は、削り取った土砂または岩石をバケット133に抱えたまま、旋回体120を旋回させる作業である。
排土は、削り取った土砂または岩石を、バケット133から運搬車両または所定の場所に下ろす作業である。
空荷旋回は、バケット133に土砂および岩石が無い状態で、旋回体120を旋回させる作業である。
排土待ちは、削り取った土砂または岩石をバケット133に抱えたまま、積み込むための運搬車両を待機している作業である。
荷台押えは、運搬車両の荷台に積み込んだ土砂を上からバケット133で押えて平らにする作業である。
転圧は、乱れた地盤に対してバケット133で土砂を押し込み、地盤を成形し、また強化する作業である。
押し均しは、バケット133の底面で土砂を払い均す作業である。
ホウキは、バケット133の側面で土砂を払い均す作業である。
【0033】
単位作業の区分の例としては、「掘削積込」、「溝掘削」、「埋戻し」、「鋤取り」、「法面(上から)」、「法面(下から)」、「積荷集め」、「走行」、「停車」が挙げられる。
掘削積込は、土砂または岩石を掘り、削り取り、削り取った土砂または岩石を運搬車両の荷台に積み込む作業である。掘削積込は、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回、排土待ちおよび荷台押えで構成される単位作業である。
溝掘削は、地盤を溝状に細長く掘り、削り取る作業である。溝掘削は、掘削、積荷旋回、排土、および空荷旋回で構成され、押し均しを含み得る単位作業である。
埋戻しは、地盤に既に空いている溝または穴に土砂を入れて平らに埋め戻す作業である。埋戻しは、掘削、積荷旋回、排土、転圧、および空荷旋回で構成され、押し均しおよびホウキを含み得る単位作業である。
鋤取りは、地面の余分な起伏を所定の高さにするため平らに削り取る作業である。鋤取りは、掘削および排土、または掘削、積荷旋回、排土、および空荷旋回で構成され、押し均しおよびホウキを含み得る単位作業である。
法面(上から)は、対象箇所の上方に位置する作業機械100によって斜面を作る作業である。法面(上から)は、転圧、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押し均しを含み得る単位作業である。
法面(下から)は、対象箇所の下方に位置する作業機械100によって斜面を作る作業である。法面(下から)は、転圧、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押し均しを含み得る単位作業である。
積荷集めは、掘削等によって出た土砂を、運搬車両に積む前に集めておく作業である。積荷集めは、掘削、積荷旋回、排土、空荷旋回で構成され、押し均しを含み得る単位作業である。
走行は、作業機械100を移動させる作業である。単位作業としての走行は、要素作業としての走行から構成される単位作業である。
停車は、バケット133に土砂および岩石が無く、かつ所定時間以上停止している状態である。単位作業としての停車は、要素作業としての停車から構成される単位作業である。
【0034】
なお、「掘削積込」、「溝掘削」、「埋戻し」、「鋤取り」、「法面(上から)」、および「法面(下から)」、は、仕事の直接的な目的に寄与する作業である主体作業の一例である。「積荷集め」、「走行」は、主体作業を行うための付帯作業の一例である。
【0035】
《作業分析装置の構成》
図4は、第1の実施形態に係る作業分析装置の構成を示す概略ブロック図である。
作業分析装置300は、プロセッサ31、メインメモリ33、ストレージ35、インタフェース37を備えるコンピュータである。ストレージ35は、作業分析プログラムを記憶する。プロセッサ31は、作業分析プログラムをストレージ35から読み出してメインメモリ33に展開し、作業分析プログラムに従った処理を実行する。なお、第1の実施形態に係る作業分析装置300は、作業機械100の外部に設けられるが、他の実施形態においては作業分析装置300は、機能の一部または全部が作業機械100の内部に設けられてもよい。
【0036】
ストレージ35の例としては、半導体メモリ、ディスクメディアおよびテープメディア等が挙げられる。ストレージ35は、作業分析装置300の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース37を介して作業分析装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ35は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0037】
プロセッサ31は、作業分析プログラムの実行により、状態データ取得部311、動画像取得部312、ラベルデータ取得部313、学習部314、作業特定部315、平滑化部316、ヒートマップ生成部317、内訳グラフ生成部318、掘削積込グラフ生成部319、出力部320を備える。またプロセッサ31は、作業分析プログラムの実行により、メインメモリ33に状態データ記憶部331、動画像記憶部332、ラベルデータ記憶部333、モデル記憶部334の記憶領域を確保する。
【0038】
状態データ取得部311は、作業機械100のデータ集約装置128から作業機械100の状態を示す状態データの時系列を取得する。つまり、状態データ取得部311は、タイムスタンプと状態データの複数の組み合わせを取得する。状態データは、作業機械100の各センサの計測値および計測値に基づいてデータ集約装置128が求めた値を含んでよい。状態データ取得部311は、取得した状態データの時系列を、作業機械100のIDに関連付けて状態データ記憶部331に記憶させる。
【0039】
動画像取得部312は、作業機械100のデータ集約装置128から撮像装置127が撮像した動画像を取得する。動画像取得部312は、取得した動画像を作業機械100のIDに関連付けて動画像記憶部332に記憶させる。
【0040】
ラベルデータ取得部313は、ラベリング装置200から単位作業のラベルデータと要素作業のラベルデータとを取得する。ラベルデータ取得部313は、撮像装置127のフレーム周期と各センサの検出周期とが異なる場合、ラベルデータのタイムスタンプと状態データのタイムスタンプとを一致させる。例えば、ラベルデータ取得部313は、ラベルデータのタイムスタンプが、状態データのタイムスタンプに一致するように、ラベルデータの時系列を再構成する。ラベルデータ取得部313は、取得したラベルデータの時系列を作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる。つまり、ラベルデータ取得部313は、タイムスタンプとラベルデータの複数の組み合わせを、それぞれ作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる。
【0041】
学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶するラベルデータの時系列との組み合わせを教師データとして、状態データの時系列を入力して、作業の区分の時系列を出力するように予測モデルを学習させる。予測モデルの例としては、ニューラルネットワークモデル、決定木モデル、サポートベクターマシンモデルなどが挙げられる。学習部314は、学習済みの予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる。
【0042】
作業特定部315は、状態データ取得部311が取得した新たな状態データの時系列と、モデル記憶部334が記憶する予測モデルとに基づいて、作業の区分に係る尤度の時系列を得る。例えば、作業特定部315は、以下の手順で作業の区分に係る尤度の時系列を得る。作業特定部315は、状態データの時系列から、作業を特定する時点の状態データを取得する。次に作業特定部315は、取得した状態データに基づいて各作業の区分の尤度を特定し結果を取得する。作業特定部315は、各時点について特定した作業の区分の尤度を時系列として集計する。
具体的には、作業特定部315は、作業の区分を行とし、時刻を列とする行列であって、その時刻にその区分に係る作業の尤度を要素に持つ行列を得る。つまり、尤度の時系列は、i列j行目の要素の値wijを、時刻tにおける作業が区分aに係る作業である尤度とする行列であってよい。作業特定部315は、単位作業に係る尤度の時系列を得ることで、作業機械100による単位作業の区分を特定する。作業特定部315は、要素作業に係る尤度の時系列を得ることで、作業機械100による要素作業の区分を特定する。
【0043】
平滑化部316は、作業特定部315が得た作業の区分ごとの尤度の時系列の平滑化処理を行う。例えば、平滑化部316は、尤度の時系列を時間平均フィルタに掛けることで、尤度の時系列を平滑化する。つまり、平滑化部316は、単位作業の尤度の時系列および要素作業の尤度の時系列のそれぞれについて、単位時間当たりの代表値を特定する。
このとき、要素作業に係る時間平均フィルタの窓関数の大きさ(単位時間の長さ)は、単位作業に係る時間平均フィルタの窓関数の大きさより小さい。なお、平滑化の方法は時間平均に限られないが、要素作業に係る窓関数の大きさは単位作業に係る窓関数の大きさより小さいことが好ましい。これは、単位作業が要素作業によって構成されているように、一の要素作業が継続する時間は一の単位作業が継続する時間より短いためである。
【0044】
図5は、作業の区分を表すヒートマップの例を示す図である。
ヒートマップ生成部317は、平滑化部316によって平滑化された尤度の時系列に基づいて、縦軸に作業の区分をとり横軸に時刻をとる平面に、作業の区分の尤度を表す色を付したヒートマップを生成する。ヒートマップに係る色は、例えば作業の区分の尤度が低いほど色相が青色に近づき、作業の区分の尤度が高いほど色相が赤色に近づいてよい。またヒートマップに係る色は、例えば作業の区分の尤度が低いほど明度が低く、作業の区分の尤度が高いほど明度が高くなってよい。ヒートマップの色の態様は、尤度の値を表示するものであればどのような態様であってもよい。つまり、ヒートマップは、尤度の値を色相、明度、濃度、彩度、輝度、またはその他の色の態様で表してよい。
具体的には、ヒートマップ生成部317は、単位作業に係る尤度の時系列に基づいて、時刻ごとの単位作業の尤度を表す単位作業ヒートマップH1を生成する。ヒートマップ生成部317は、要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、時刻ごとの要素作業の尤度を表す要素作業ヒートマップH2を生成する。このとき、要素作業ヒートマップH2の横軸のスケールは、単位作業ヒートマップH1の横軸のスケールより大きい(より短い時間を表す)。
【0045】
図6は、作業の区分の内訳を表す内訳グラフの例を示す図である。
内訳グラフ生成部318は、平滑化部316によって平滑化された尤度の時系列に基づいて、所定の時間帯における作業の区分の内訳を表す円グラフを生成する。具体的には、内訳グラフ生成部318は、単位作業に係る尤度の時系列に基づいて、各単位作業について、他の単位作業と比較して尤度が最も大きくなる時間を積算する。内訳グラフ生成部318は、積算した単位作業別の時間を円グラフに描くことで、単位作業内訳グラフG1を生成する。内訳グラフ生成部318は、単位作業ごとに、要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、その単位作業に係る時間において、各要素作業の尤度が相対的に最も大きくなる時間を積算する。内訳グラフ生成部318は、単位作業ごとに、積算した要素作業別の時間を円グラフに描くことで、単位作業ごとの要素作業内訳グラフG2を生成する。
【0046】
図7は、掘削積込ごとの要素作業の内訳を表すグラフの例を示す図である。
図8は、掘削積込ごとの積込回数を表すグラフの例を示す図である。
掘削積込グラフ生成部319は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、掘削積込ごとの情報を示すグラフを生成する。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、図7に示すような掘削積込ごとの要素作業の内訳を表すグラフ、および図8に示すような掘削積込ごとの積込回数を表すグラフなどを生成する。
【0047】
具体的には、掘削積込グラフ生成部319は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、掘削積込の開始時刻と終了時刻とを特定する。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、掘削積込に係る時間帯における「排土待ち」の終了時刻を掘削積込の開始時刻として特定する。また例えば、掘削積込グラフ生成部319は、掘削積込に係る時間帯における「荷台押え」の開始時刻を掘削積込の終了時刻として特定する。つまり、排土待ちは、積込開始タイミングを特定可能な要素作業の一例であり、荷台押えは、積込終了タイミングを特定可能な要素作業の一例である。
掘削積込グラフ生成部319は、特定された掘削積込ごとに、状態データまたは要素作業に関する集約値を求め、運搬車両ごとの掘削積込について、当該集約値を表すグラフを生成する。集約値の例としては、各要素作業の時間の積算値、積込回数、平均燃費などが挙げられる。なお、単位作業の「掘削積込」は、複数の積込作業によって構成されており、「積込回数」とは、1回の「掘削積込」における積込作業の回数である。1回の「掘削積込」は、例えば「排土」または「荷台押え」に基づいて判定される。例えば、掘削積込グラフ生成部319は、掘削積込に係る時間帯において「積荷旋回」が支配的な時間帯の出現回数を、積込回数として特定する。つまり、積荷旋回は、積込サイクルに係る要素作業の一例である。
【0048】
出力部320は、ヒートマップ生成部317が生成したヒートマップ、内訳グラフ生成部318が生成した内訳グラフ、および掘削積込グラフ生成部319が生成した掘削積込ごとの情報を示すグラフを出力する。出力部320による出力は、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタによる紙等のシートへの印刷、ネットワークを介して接続される外部サーバへの送信、インタフェース37に接続された外部記憶媒体への書き込みなどが挙げられる。これにより、解析者等は、作業された時刻と異なる時刻に、別の場所で、俯瞰的に作業内容の解析を行うことができる。
【0049】
《学習方法》
作業分析装置300は、一の作業機械100の作業分析を実行する前に、予め、予測モデルを生成しておく。
図9は、第1の実施形態に係る作業分析装置の学習処理を示すフローチャートである。
【0050】
作業分析装置300の状態データ取得部311は、複数の作業機械100のそれぞれから、当該作業機械100の状態データの時系列を受信する(ステップS1)。状態データ取得部311は、受信した状態データの時系列を、作業機械100のIDに関連付けて状態データ記憶部331に記憶させる(ステップS2)。また動画像取得部312は、複数の作業機械100のそれぞれから、当該作業機械100の撮像装置127が撮像した動画像を受信する(ステップS3)。動画像取得部312は、受信した動画像を、作業機械100のIDに関連付けて動画像記憶部332に記憶させる(ステップS4)。
【0051】
ラベリング装置200は、動画像記憶部332に記憶された動画像を取得し、利用者の操作によってラベルデータを生成する。ラベリング装置200は、生成したラベルデータを作業機械100のIDに関連付けて作業分析装置300に送信する。ラベリング装置200は、上記処理により複数の動画像それぞれについて、単位作業のラベルデータおよび要素作業のラベルデータを生成する。
【0052】
作業分析装置300のラベルデータ取得部313は、ラベリング装置200から複数のラベルデータを受信する(ステップS5)。ラベルデータ取得部313は、複数のラベルデータを、それぞれ作業機械100のIDに関連付けてラベルデータ記憶部333に記憶させる(ステップS6)。
【0053】
次に、学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する複数の状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶する複数の単位作業のラベルデータとを教師データとして単位作業予測モデルを学習させ(ステップS7)、学習された単位作業予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる(ステップS8)。また、学習部314は、状態データ記憶部331が記憶する複数の状態データの時系列と、ラベルデータ記憶部333が記憶する複数の要素作業のラベルデータとを教師データとして要素作業予測モデルを学習させ(ステップS9)、学習された要素作業予測モデルをモデル記憶部334に記憶させる(ステップS10)。
このとき、学習部314は、状態データの時系列を入力とし、ラベルデータ(作業の区分ごとの時系列を示す行列)を出力とするように予測モデルを学習させる。
【0054】
《作業分析方法》
作業分析装置300は、上記の準備が完了すると、任意の作業機械100の作業を分析することができる。
図10は、第1の実施形態に係る作業分析装置による作業分析方法を示すフローチャートである。
【0055】
作業分析装置300の状態データ取得部311は、一の作業機械100から状態データの時系列を受信する(ステップS51)。次に、作業特定部315は、受信した状態データの時系列を、モデル記憶部334が記憶する単位作業予測モデルに入力することで、単位作業に係る尤度の時系列を得る(ステップS52)。これにより作業特定部315は、時系列に係る各時刻における単位作業を特定する。また作業特定部315は、受信した状態データの時系列を、モデル記憶部334が記憶する要素作業予測モデルに入力することで、要素作業に係る尤度の時系列を得る(ステップS53)。平滑化部316は、単位作業に係る尤度の時系列および要素作業に係る尤度の時系列を、それぞれ時間平均フィルタに掛けることで、尤度の時系列を平滑化する(ステップS54)。
【0056】
ヒートマップ生成部317は、図5に示すように、平滑化された単位作業に係る尤度の時系列を表す単位作業ヒートマップH1および平滑化された要素作業に係る尤度の時系列を表す要素作業ヒートマップH2を生成する(ステップS55)。
【0057】
内訳グラフ生成部318は、平滑化された単位作業に係る尤度の時系列の各時刻について、最も尤度が高い単位作業を特定する(ステップS56)。つまり、内訳グラフ生成部318は、各時刻について尤度が支配的な単位作業を特定する。次に、内訳グラフ生成部318は、各単位作業について尤度が支配的になる時間の積算値を求める(ステップS57)。内訳グラフ生成部318は、積算した単位作業別の時間を円グラフに描くことで、図6に示すような単位作業内訳グラフG1を生成する(ステップS58)。
【0058】
次に、内訳グラフ生成部318は、単位作業の区分を1つずつ選択し、以下のステップS60からステップS63の処理を実行する(ステップS59)。
内訳グラフ生成部318は、ステップS59で選択した単位作業の尤度が支配的な複数の時刻を特定する(ステップS60)。内訳グラフ生成部318は、平滑化された要素作業に係る尤度の時系列に基づいて、特定した各時刻について尤度が支配的な単位作業を特定する(ステップS61)。次に、内訳グラフ生成部318は、各要素作業について尤度が支配的になる時間の積算値を求める(ステップS62)。内訳グラフ生成部318は、積算した要素作業別の時間を円グラフに描くことで、図6に示すような要素作業内訳グラフG2を生成する(ステップS63)。
【0059】
次に、掘削積込グラフ生成部319は、平滑化された単位作業に係る尤度の時系列に基づいて、「掘削積込」の尤度が支配的な時間帯を特定する(ステップS64)。次に、掘削積込グラフ生成部319は、特定した時間帯において、「排土待ち」の尤度が支配的な複数の時間帯および「荷台押え」の尤度が支配的な複数の時間帯を特定する(ステップS65)。掘削積込グラフ生成部319は、「排土待ち」の尤度が支配的な時間帯の終了時刻から、「荷台押え」の尤度が支配的な時間帯の開始時刻までの期間を、それぞれ一の運搬車両について掘削積込を行っている時間帯と特定する(ステップS66)。
【0060】
掘削積込グラフ生成部319は、特定された掘削積込ごとに、各要素作業の時間の積算値を特定し、図7に示すような掘削積込ごとの要素作業の内訳を表すグラフを生成する(ステップS67)。また掘削積込グラフ生成部319は、ステップS66で特定された掘削積込ごとに、「積荷旋回」が支配的な時間帯の出現回数を特定し、図8に示すような掘削積込ごとの積込回数を表すグラフを生成する(ステップS68)。
【0061】
出力部320は、ヒートマップ生成部317が生成したヒートマップ、内訳グラフ生成部318が生成した内訳グラフ、および掘削積込グラフ生成部319が生成した掘削積込ごとの情報を示すグラフを出力する(ステップS69)。
【0062】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、作業分析装置300は、作業機械100の状態を示す状態データに基づいて作業機械が実行した単位作業の区分および要素作業の区分を特定し、これらを出力する。これにより、利用者は、オペレータの技量判定および評価、ならびに作業の解析を行うに際し、作業機械100の単位作業の作業状態および要素作業の作業状態、ならびに一の単位作業を構成する要素作業の割合などを認識することができる。これにより、利用者は、作業機械100の作業について、多角的に解析を行うことができる。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、作業分析装置300は、作業機械100の状態を示す状態データに基づいて作業機械が実行した作業の区分を特定し、特定した作業の区分を時系列で出力する。これにより、利用者は、作業機械100の作業を俯瞰的に認識し、オペレータの作業から個々の技量の良否を判定することができる。
【0064】
特に、第1の実施形態においては、作業分析装置300は、時刻ごとに作業機械100の作業の区分の尤度を特定し、作業の区分の尤度の時系列を出力する。具体的には、作業分析装置300は、図5に示すように、時刻を表す軸と作業の区分を表す軸とから構成される平面に尤度に応じた色を着色したヒートマップ生成する。これにより、作業分析装置300は、複数の単位作業または複数の要素作業を複合的に行う作業状態や、停車している未稼動の状態、および異なる作業の区分へシームレスに移る作業状態をヒートマップに表すことができる。つまり、作業の区分を時系列で表示することで、オペレータが適正に作業および休憩しているかを把握できるようになる。また、ヒートマップで表すことにより、複数の単位作業または複数の要素作業を複合的に行う作業状態や、異なる作業の区分へシームレスに移る作業状態は、同時刻において複数の作業の区分の尤度が高い状態として表れる。
【0065】
複数の要素作業を複合的に行うことで、単位作業に係る時間を短縮することができる。また、主体作業と付帯作業とを複合的に行っている場合、付帯作業による段取りが不十分である可能性がある一方、一の主体作業と同時に他の主体作業に係る付帯作業を行うことで効率よく段取りを行っている可能性もある。このように、複数の作業の区分が複合的に行われている状態は、オペレータの技量の良否の評価に寄与するものであり、作業分析装置300がこのような状態が分かる情報を出力することで、オペレータはオペレータの技量の評価を容易に行うことができる。
【0066】
なお、複数の単位作業を複合的に行う作業状態の例としては、掘削積込を行いながら積荷集めを行う状態、鋤取りを行いながら積荷集めを行う状態などが挙げられる。複数の要素作業を複合的に行う作業状態の例としては、掘削しながら押し均しを行う状態、排土しながら荷台押えを行う状態などが挙げられる。また異なる作業へシームレスに移る例としては、集荷旋回の途中から排土を始める状態などが挙げられる。
【0067】
また、作業分析装置300は、単位作業の尤度の時系列および要素作業の尤度の時系列のそれぞれについて平滑化処理を行うことで、単位時間当たりの代表値を特定する。このとき、要素作業に係る単位時間の長さは、単位作業に係る単位時間の長さより短い。これは、単位作業が要素作業によって構成されているように、一の要素作業が継続する時間は一の単位作業が継続する時間より短いためである。
【0068】
また、第1の実施形態に係る単位作業には、主体作業と付帯作業とが含まれる。具体的には、作業分析装置300は、図5に示すように、掘削積込などの主体作業と、積荷集めや走行などの付帯作業とを含む単位作業ヒートマップH1を出力する。これにより、利用者は、作業機械100が掘削積込などの主体作業以外にどのような作業を行っていたかを認識することができる。これにより、利用者は、掘削積込を効率よく行うために必要な付帯作業を特定することができる。
【0069】
また、第1の実施形態によれば、作業分析装置300は、一の単位作業を構成する各要素作業の時間および割合を示す要素作業内訳グラフG2を出力する。これにより、利用者は、作業機械100の単位作業の評価を行うに当たり、その単位作業を構成する要素作業の区分を特定することができる。
具体的には、作業分析装置300が図6に示すような要素作業内訳グラフG2を出力することで、利用者は、「掘削積込」の評価を行うにあたり、当該「掘削積込」における「掘削」、「積荷旋回」、「排土」、「空荷旋回」、「排土待ち」および「荷台押え」の割合を認識することができる。これにより、利用者は、適切に掘削積込について評価することができる。
【0070】
特に、作業分析装置300は、「排土待ち」を特定することで、積込開始タイミングを特定し、「荷台押え」を特定することで、積込終了タイミングを特定することができる。また、作業分析装置300は、「掘削」、「積荷旋回」、「排土」、および「空荷旋回」を特定することで、作業状態を統計的に集計した場合にオペレータの作業評価や計画に対する実績の比較が出来るようになる。
【0071】
第1の実施形態に係る作業分析装置300は、図7に示すような掘削積込ごとの要素作業の内訳を表すグラフを出力する。これにより、利用者は、運搬車両への積込に掛かる時間を認識することができ、さらに積込に掛かる時間が長い場合にその原因を認識することができる。図7に示す例において、14:44の掘削積込の時間が他の掘削積込と比較して長いことが分かる。14:44の掘削積込を構成する要素作業の内訳をみると、他の掘削積込と比較して排土待ちの時間が長いことが分かる。このことから、14:44の掘削積込においては、運搬車両の到着間隔が長いために、掘削積込の時間が長くなったことが分かる。
【0072】
第1の実施形態に係る作業分析装置300は、図8に示すような掘削積込ごとの積込回数を表すグラフを出力する。これにより、利用者は、運搬車両への積込回数を認識することで、オペレータによる操作の巧拙を認識することができる。図8に示す例において、15:00の積込回数が他の掘削積込と比較して多いことが分かる。このことから、15:00の掘削積込において、バケット133に積み込む土砂が少なかったり、積込時に運搬車両から土砂がこぼれたりするといった事象が生じたことが推測できる。
【0073】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0074】
上述した実施形態においては、作業機械100のデータ集約装置128が、各センサの計測値を作業分析装置300に送信し、作業分析装置300がこれに基づいて作業の区分を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、データ集約装置128が各センサの計測値に基づいて作業の区分を特定してもよい。例えば、他の実施形態においては、作業分析装置300によって生成された予測モデルをデータ集約装置128に記憶させ、データ集約装置128が当該予測モデルを用いて作業の区分を特定してもよい。つまり、他の実施形態においては、作業分析装置300がデータ集約装置128に実装されてもよい。この場合、データ集約装置128は、作業機械100に搭載されるディスプレイに、リアルタイムに現在の作業の区分の分析結果を表示させてもよい。これにより、オペレータは、作業の区分を認識しながら作業を行うことができる。
【0075】
上述した実施形態に係る作業分析装置300は、各作業の区分の尤度の時系列を特定するが、他の実施形態においてはこれに限られず、各作業の区分の真偽値の時系列を特定してもよい。この場合においても、作業分析装置300は、特定された時系列を平滑化することにより、作業の区分の尤度の時系列を得ることができる。
【0076】
また、上述した実施形態に係るラベリング装置200は、利用者の操作に基づいてラベルデータを生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るラベリング装置200は、画像処理等によって自動的にラベルデータを生成してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態に係る作業分析装置300は、学習済みの予測モデルに基づいて作業機械100の作業の区分を特定するがこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業分析装置300は、機械学習によらないプログラムに基づいて作業機械100の作業の区分を特定してもよい。機械学習によらないプログラムとは、状態データの入力に基づき予め規定する操作の組み合わせから作業区分を特定するプログラムである。この場合、状態分析システム1は、撮像装置127、ラベリング装置200、動画像取得部312、ラベルデータ取得部313、学習部314、動画像記憶部332、およびラベルデータ記憶部333を備えなくてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態に係る作業分析装置300は、複数のセンサの検出値、または検出値に基づいて計算された値に基づいて作業の区分を推定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業分析装置300は、撮像装置127が撮像した動画像に基づいて、作業の区分を推定してもよい。つまり、撮像装置127が撮像した画像は、作業機械100の状態を表す状態データの一例となりうる。
【0079】
また、上述した実施形態に係るデータ集約装置128は、状態データをタイムスタンプに関連付けて記憶部に記憶しておき、状態データの時系列として作業分析装置300に送信するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るデータ集約装置128は、収集した状態データを、逐次タイムスタンプに関連付けて作業分析装置300に送信してもよい。この場合、作業分析装置300は、状態データとタイムスタンプの組み合わせを逐次取得し、時系列として集計する。
【符号の説明】
【0080】
1…状態分析システム 100…作業機械 200…ラベリング装置 211…動画像取得部 212…動画像表示部 213…ラベル入力部 214…ラベルデータ生成部 215…ラベルデータ送信部 300…作業分析装置 311…状態データ取得部 312…動画像取得部 313…ラベルデータ取得部 314…学習部 315…作業特定部 316…平滑化部 317…ヒートマップ生成部 318…内訳グラフ生成部 319…掘削積込グラフ生成部 320…出力部 331…状態データ記憶部 332…動画像記憶部 333…ラベルデータ記憶部 334…モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10