(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する織機用の電磁装置およびその装置用のスライダ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20220914BHJP
D03D 47/36 20060101ALI20220914BHJP
D03D 47/34 20060101ALI20220914BHJP
H01F 7/128 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01F7/16 D
D03D47/36
D03D47/34
H01F7/16 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018092313
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】102017000051526
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513148439
【氏名又は名称】ロイ エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】ROJ S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Vercellone 11, I-13900 Biella, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】レナート コモット
(72)【発明者】
【氏名】エンゾ ダンドロ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ ファッザーリ
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-191512(JP,A)
【文献】特開昭52-015718(JP,A)
【文献】国際公開第2005/098113(WO,A1)
【文献】特開2010-025217(JP,A)
【文献】特開2015-108449(JP,A)
【文献】特開2016-051708(JP,A)
【文献】特開平11-340034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0114089(US,A1)
【文献】特開2000-240838(JP,A)
【文献】実開昭55-003030(JP,U)
【文献】特開2013-183599(JP,A)
【文献】特開2000-034647(JP,A)
【文献】特開平02-175955(JP,A)
【文献】特表2004-526886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
D03D 47/36
D03D 47/34
H01F 7/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置であって、
ケース(6)内に収容した電磁コイル(B)の起動に応答して2つの端部停止位置の間で往復の直線経路に沿って動作するスライダ(C)を備え、
ブッシュ状強磁性コア(3)と、前記ブッシュ状強磁性コア(3)の片側から突出する緯糸を停止する円筒状
セラミック製エンドピース(1)と、前記ブッシュ状強磁性コア(3)と前記
セラミック製エンドピース(1)との間に機械的接続を形成する中間要素(2)とから成るタイプの電磁装置であって、
前記中間要素(2)は、機械的干渉結合を介して前記ブッシュ状強磁性コア(3)の円筒状内側キャビティ内で固定される円筒状アルミニウム要素であり、また、前記円筒状アルミニウム要素は軸方向の円筒状内側キャビティ(2c)をさらに備え、前記軸方向の円筒状内側キャビティ内には機械的干渉結合を介して前記
セラミック製エンドピース(1)が固定さ
れ、
前記スライダ(C)が、前記スライダの往復の直線動作をするよう2つの対向するブッシュ(4)によって導かれ、前記2つの対向するブッシュ内で、前記セラミック製エンドピース(1)と、前記円筒状アルミニウム要素(2)から前記セラミック製エンドピース(1)と反対方向に突出する円筒状付属物(2a)とがそれぞれスライドする、電磁装置。
【請求項2】
前記ブッシュ(4)は前記ケース(6)内に形成された対応するシート(5)内に収容されている、請求項
1に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項3】
前記ブッシュ(4)がセラミック材料またはPEEK系材料のように高性能プラスチック材料で形成されている、請求項
2に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項4】
前記ブッシュ状強磁性コア(3)の外面が一葉双曲面形状を有し、前記ブッシュ状強磁性コア(3)の壁厚が前記ブッシュ状強磁性コアの中央領域における最小値から2つの対向する前記ブッシュ状強磁性コアの端部における最大値まで変化する、請求項1に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項5】
前記スライダ(C)の前記端部停止位置は、前記ブッシュ(4)の前記シート(5)の外壁に
ぶつかる前記ブッシュ状強磁性コア
(3)によって決定され、前記シート(5)の前
記外壁の上方に配置された制動用ワッシャ(8)をさらに備える、請求項
2に記載の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項6】
前記装置は、ほぼ円筒形状を有するカップ容器(11)内に収容され、前記カップ容器の口部はカバー(10)によって閉鎖され、前記カバー(10)の反対の位置にある第1のOリングシーリングガスケット(12)は前記カップ容器(11)の適当な周辺円形シート内に収容される、請求項1に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項7】
電力不足の場合に前記緯糸が停止する前記端部停止位置に押し出した状態
に前記スライダ(C)を保持して、前記円筒状アルミニウム要素(2)の前記付属物(2a)の自由端に作用する円錐形ワイヤスプリング(M)をさらに備え、前記スプリング(M)の基部は、PEEK系材料のような高性能プラスチック材料で形成された摩耗ボウル上に載置され、前記摩耗ボウルは前記カバー(10)に形成された各シート内に収容されている、請求項
6に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項8】
永久磁石をさらに備え、前記永久磁石は、
電力不足の場合に前記緯糸が停止される前記端部停止位置に押し出
された状態
に前記スライダ(C)保持
するように、前記円筒状アルミニウム要素(2)の付属物(2a)の端部内に収容される、請求項
6に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項9】
第2の内側ガスケット(12c)が前記第1のOリングシーリングガスケット(12)に接合されており、前記第2の内側ガスケット(12c)がアセンブリスラックを補いながら前記ケース(6)を正位置に保持する、請求項7に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項10】
前記カップ容器(11)は、前記
セラミック製エンドピース(1)を外側に貫通させる中央開口部を有し、前記中央開口部の内側は前記
セラミック製エンドピース(1)の外面に対しシールする防塵ワッシャ(13)によって保護される、請求項
6に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置。
【請求項11】
強磁性ブッシュ状コア(3)と、前記強磁性ブッシュ状コア(3)の片側から突出する緯糸を端部停止位置で停止する円筒状
セラミック製エンドピース(1)と、前記ブッシュ状強磁性コア(3)と前記
セラミック製エンドピース(1)との間の機械的接続を形成する中間要素(2)とから成るタイプ
の織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置用のスライダであって、
前記中間要素(2)は、機械的干渉結合を介して前記ブッシュ状強磁性コア(3)の円筒状内側キャビティ内で固定される円筒状アルミニウム要素であり、前記円筒状アルミニウム要素は軸方向の円筒状内側キャビティ(2c)をさらに有し、前記軸方向の円筒状内側キャビティ内に機械的干渉結合を介して前記
セラミック製エンドピース(1)が固定されている、スライダ。
【請求項12】
前記ブッシュ状強磁性コア(3)
の外面が一葉双曲面形状を有し、前記強磁性コア(3)の壁厚が前記ブッシュ状強磁性コアの中央領域における最小値から2つの対向する前記ブッシュ状強磁性コアの端部における最大値まで変化する、請求項
11に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置用のスライダ。
【請求項13】
永久磁石をさらに備え、前記永久磁石は、
電力不足の場合に前記緯糸が停止される前記端部停止位置に押し出
された状態
に前記スライダ(C)を保持
するように、前記円筒状アルミニウム要素(2)の付属物(2a)の前記端部内に収容される、請求項
12に記載の
織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置用のスライダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する織機用の電磁装置、およびその装置用のスライダに関する。特に、本発明の停止装置は、具体的には、エアジェット織機やウォータージェット織機に使用される緯糸フィーダ用に特別設計されており、特に過酷な作業環境下において、高頻度の緯糸の挿入ができるようにし、かつ、繊維環境内で常に高い割合で存在する塵による汚染の問題に対処するため、設計した。
【0002】
周知のように、緯糸フィーダは緯糸供給装置であり、緯糸挿入の作業中に、軸方向に緯糸を引き出すことによって、緯糸をドラムに連続的に貯留し、直ちに利用可能な緯糸予備物を作成する。本発明の電磁緯糸停止装置は、前記緯糸フィーダの出口側に配置され、所望の緯糸の量(ドラムから出てくる巻数によって測定される)が緯糸フィーダによって引き出されたらすぐに、ドラムからの緯糸の巻き戻しをブロックし、また、杼口に沿った緯糸の挿入作業およびその後の杼口を閉じる作業を完了する間、恒久的にドラムからの緯糸の巻き戻しをブロックする。
【0003】
上記の停止装置は、通常、スライダの動作を制御する電磁コイルを備え、スライダの自由端は、糸が巻かれたドラムの表面を自由端が貫通した場合には、対応する穴に自由端自体を挿入して、ドラム自体からの他の巻きの巻き戻しを防止する。従って、このタイプの装置に使用される電磁コイルは、スライダの双安定状態をもたらし、すなわち、スライダは、引っ込められた状態であってその間緯糸が供給される状態と、前進位置であってその間緯糸が緯糸フィーダドラムにロックされる位置との間で制御可能である。
【0004】
適切な耐摩耗性を確保すると同時に緯糸の劣化を回避するため、スライダの自由端であって以下においてエンドピースと示すものを、適切なセラミック材料で設けることが知られている。当然のことながら、スライダはまた、コイルによって形成される磁場に感応しやすい強磁性材料のコアを備えなければならず、ここでこれらの2つの異なる材料の間の結合は、熱硬化性プラスチック材料のマトリックスにより行われる。具体的には、現在知られている装置のスライダは、溶融状態での前記熱硬化性プラスチック材料の成形プロセスによって得られ、ここでセラミック材料エンドピースと強磁性コアはインサートとして型内に予め配置され、その後固化プラスチックマトリックスによって相互に一体化される。
【0005】
このタイプの既知のスライダCnの標準的な構成を
図2に示す。
図2では、スライダCnの中央周辺部における円筒ブッシュ形状の強磁性体コアFと、スライダCnの第1の端部であるセラミック材料エンドピースPであって、ほぼ円筒(円柱)の形状を有し、また上述のスライダの中央部分内に軸方向に延在し、コアFの内側においてプラスチック材料マトリクスMの接着を容易にする一連の環状の溝またはくぼみを備えるエンドピースと、スライダCnの中央部分であって、強磁性コアFとエンドピースPとの間の中間の環状空間をプラスチック材料マトリックスMが占める部分から、エンドピースPと反対方向に軸方向に延在し、スライダの第2の端部を形成するプラスチック材料マトリックスMとが明確に特定し得る。マトリックスM用のプラスチック材料の使用はまた、スライダCnを可能な限り軽くし、スライダCnの慣性を減少させ、従って高頻度の緯糸挿入が行われる織機においてもスライダCnの使用を可能にする目的を有する。
【0006】
上記スライダは、コイルケースの内側に軸方向に配置された、プラスチック材料で形成された円筒状ガイドブッシュ内に収容され、スライダCnの強磁性体コアFと円筒状ガイドブッシュとの間に前記動作をするのに必要な最小間隙を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のタイプのスライダCnを使用した既知の緯糸停止装置は、その構成および使用の特徴に密接に関連したいくつかの典型的な欠点を有しており、当該欠点を簡単に説明する。
【0008】
第1の欠点は、スライダの円筒状ガイドブッシュが受ける摩耗に関連する。この点について、スライダはコイルによって制御されたスライダの往復(交互)の経路を動く場合、コイルによって形成される磁場により及ぼされる引力/反発力を受けるのみであり、当該引力/反発力はスライダの軸に関して中心対称を有するので、当該引力/反発力自体によって、スライダがスライダのガイドブッシュ内で完全に中心に位置することを維持することに留意されたい。しかしながら、スライダのエンドピースPが緯糸を停止する機能を発揮する場合には、エンドピースPは、緯糸が杼口にわたって完全に引っ張られた場合に、突然ブロックされた緯糸がエンドピースPに及ぼす横方向の力もまた受ける。この力は比較的小さいものの、作用点、すなわちエンドピースの自由端と、反応点、すなわちコアFと各ガイドブッシュとの間の接触面積との間に存在するハイアームにより、緯糸停止位置において、前記ガイドブッシュにもたらされる力は、ガイドブッシュ壁の漸進的な摩耗を引き起こすのに十分なほどに大きなものとなる。これは、理論上の軸線方向動作線に関するスライダの動作の漸進的な位置ずれと、とりわけ、プラスチック材料塵の形成を引き起こし、当該材料塵はエンドピースを漸次汚染し、そして最終的には緯糸に移されて、緯糸の汚染を引き起こし、そして従って、織物に欠陥を生ずる可能性を引き起こす。
【0009】
次に、従来の停止装置の第2の欠点は、特に重機の(大型の)用途において耐用年数が短めであることが挙げられる。スライダCnの漸進的な位置ずれは、エンドピースのセラミック材料固有の曲げ応力に関する脆弱性にも起因して、緯糸停止中に無視できない実体(物体)を有する非軸構成要素による力の影響をエンドピースが受ける場合に、エンドピースが一定の頻度で壊れる原因となる。
【0010】
装置の耐用年数を短縮する第3の欠点は、プラスチック材料マトリクスMを介して、既知のスライダの特別なアセンブリシステムに最終的に関連づけられ、当該マトリクスMは、明らかに、マトリクスMが相互に一体化させる強磁性材料およびセラミック材料の2つよりもはるかに低い機械的抵抗特性を有する。したがって、エンドピースPがエンドピースPの往復動作の各端部停止部で反復衝撃を受け、続いてエンドピースPと強磁性コアFとの間に含まれるプラスチック材料の構成要素(体積)は高いせん断応力を受けるため構造破損を漸次示し、プラスチック材料の構成要素の反発弾性が失われて完全な分離が生じ、続いて周囲のプラスチック材料マトリクスMからのエンドピースPの滑りが生じ、よって装置が使用不能になることがある。
【0011】
したがって、本発明の根底にある課題は、著しく延長された耐用年数を有する、上記のタイプの緯糸を停止する電磁装置を提供することである。好ましくは、耐用年数は通常の摩耗の基準に基づいて事前に容易に決定できるべきである。なぜなら、耐用年数は、スライダCnの位置ずれおよびプラスチック材料マトリクスMの構造破損としての現象によって決定できず、当該現象の最終的な崩壊(位置ずれや破損)に向かう進展の速度を予測することは非常に困難であるからである。
【0012】
この課題解決を達成するため、本発明の第1の目的は、エンドピースPと強磁性コアFとの間に含まれたプラスチック材料マトリックスMの空間に特に関連して、スライダの複合構造を改善することである。
【0013】
本発明の第2の目的はまた、スライダガイドシステムを改善し、スライダのスライディングガイドの摩耗によるスライダの漸進的な位置ずれを引き起こす、引っ張られた緯糸によって加えられる横方向の力を、より効果的に相殺することでもある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、最終的に、スライダの構造的一体性に対する端部停止部の衝突の悪影響を低減し、また、塵の形成を低減してスライダガイドが配置されている空間を保護し、そして、スライダガイド自体に対する摩耗の影響をさらに低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の特徴を有する織機の緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置によって、また、請求項12に記載の特徴を有するスライダによって、この課題が解決され、またこれらの目的が達成される。本発明の電磁装置の好ましい他の特徴は従属請求項に記載される。
【0016】
本発明による緯糸フィーダにおいて緯糸を停止する電磁装置の更なる特徴及び利点は、単に非限定的な例として述べられ、また添付の図面に示される、以下の好適な実施形態の詳細な説明からより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】緯糸を停止するスライダが前進位置にある、本発明による電磁停止装置の軸方向断面図である。
【
図2】既知のタイプのスライダ(従来技術)の側面部分断面図である。
【
図3】本発明によるスライダの側面部分断面図である。
【
図4】部品を分解して示す、
図1の電磁停止装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、コンパクトかつ特に効果的な解決方法で、上記に強調した課題を解決するため、電磁停止装置のスライダの複合構造が根本的に改変され、セラミック材料のエンドピースと強磁性コアとの間の接続要素としての熱硬化性プラスチック材料マトリクスの使用をやめ、同様のスライダのガイドシステムを改変する。
【0019】
図1及び
図3に明確に示すように、本発明による緯糸停止装置のスライダCは、その延在部全体に円筒形状(円柱形状)を有するセラミック材料エンドピース1から成る。この用途に適したセラミック材料は、緯糸停止段階における摩擦に起因する摩耗に適切に耐えるため高硬度の機械的特性を有する必要があり、また、スライダの動作中のガイドとの摩擦を低減し、緯糸の停止操作における緯糸の損傷を回避するため、高い表面平滑性を有する必要がある。
【0020】
エンドピース1は、アルミニウム円筒中間要素2の対応する軸方向の円筒キャビティ2cに結合され、当該アルミニウム円筒中間要素2は付属物2aを有し、当該付属物2aはエンドピース1と対向し、好ましくは円筒形状を有する。アルミニウム中間要素2の外側にはブッシュ状強磁性コア3があり、
図3から明らかなように、当該強磁性コア3は、強磁性コアの壁厚が中央領域における最小値から強磁性コア3の対向する2つの端部おける最大値まで変化するように、円筒内壁と、一葉双曲面とほぼ同様の形状を有する外壁とを備える。
【0021】
セラミック材料エンドピース1とアルミニウム中間要素2のキャビティ2cとの間の結合は、好ましくは、長期使用期間の後でも絶対的な結合安定性をもたらすプレスを介して行う機械的干渉結合である。結合ステップ中の完全な結合を妨げ得る、キャビティ2c内側の空気圧の増加を避けるため、横方向穴をキャビティ2cの底部に設け、キャビティ2cを外部に接続する。
【0022】
同様に、アルミニウム中間要素2とブッシュ状コア3との間の結合は、好ましくは何らかの既知の方法で行う機械的干渉結合であり、例えば低温状態でのプレス、またはホットコア3を伴うプレスを介して行われる。他のタイプの結合、例えば接着剤または樹脂による結合は、スライダCの端部停止部の各々に発生する反復衝撃荷重と比較すると時間の経過に伴う低抵抗化の観点から好ましくない場合であっても、明らかに可能である。
【0023】
既知のタイプのスライダCnのプラスチック材料マトリックスMに関する、本発明のスライダCにおけるアルミニウム中間要素2のより大きな重量は、強磁性コア3の外面の双曲面形状によって補償され、当該双曲面形状は中間要素2のより大きな重量を補償する程度にまでこの要素の重量を減少させる。この強磁性コア3の重量の減少は、システムの磁気効率を著しく低下させない。これは、コア3の外面の湾曲は依然として、コア3の各部分に十分な鉄系材料を有することを可能にし、当該コア3の各部分は電磁場との適切な相互作用を有することが重要であるからである。
【0024】
強磁性コア3の特定の外側双曲面形状が可能となるのは、本発明によれば、スライダCの往復の軸方向動作のガイドがもはや、既知のスライダCnの場合のように、強磁性コア3の外面とコイルケースの内部に収容された対応する円筒ブッシュとの間の摺動接点の使用によっては得られないという事実による。実際には、スライダCの往復動作を導くために、本発明では、エンドピース1および中間要素2の円筒状(円柱状)付属物2aとの摺動接触においてそれぞれ協働する、2つの対向するブッシュ4を設ける。ブッシュ4は、コイルBが収容されたケース6の対向する平坦な壁に形成された対応するシート5内に収容され、当該ケース内でコイルBは上記のようにそれ自体公知の方法でスライダCの往復の動作を制御する。ブッシュ4は、好ましくはセラミック材料等の低摩擦特性と高い耐摩耗特性とを有する材料で形成される。代替的に、上述と同様の機械的特性を示すプラスチック材料を使用してもよく、例えば、従来からこのような用途に使用される、セラミック材料に比べて低コストであるという利点を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系材料を使用してもよい。好ましい実施形態では、停止段階の間に緯糸によって加えられる横方向の力を高い程度で支持することを企図したエンドピース1と接触するブッシュ4がセラミック材料で形成され、他方、アルミニウム中間要素2の付属物2aと接触するブッシュ4はPEEK系材料の機械的特性と類似の機械的特性を有するプラスチック材料で形成される。
【0025】
装置の使用中、スライダCは、コイルB間において軸方向に設けたチャネル7であって、またコイルBを包含するケース6内側に設けたチャネル7内側を、上記のブッシュ4のシート5の外壁に対してスライダCの中心体をぶつけることによって確定される端部停止位置間を交互に動く(往復する)。前記端部停止位置におけるスライダCの交互の衝突を緩衝するため、チャネル7内側であってシート5上に、反復衝撃によって粉砕化されない適切な緩衝材で形成された制動用ワッシャ8を設ける。
【0026】
付属物2aの自由端に、それ自体公知の方法で、円錐形ワイヤスプリングMを設け、ワイヤスプリングMの頂点部分は付属物2aの最終テーパ部に取り付け、ワイヤスプリングMの基部は装置の外部容器11のカバー10に形成された特殊なシートに配置された摩耗ボウル9(お椀状部材)に載置される(より明確にするために、図面では、スプリングMを部分的にのみ示す)。スプリングMの機能は、電力不足の場合にエンドピース1を前進位置、すなわち緯糸停止位置に押し出した状態を維持し、この場合に緯糸フィーダからの無制御の緯糸の流出を防止することである。スライダCの通常の動作中、スプリングの基部は力の変化を伴って摩耗ボウル9に載置され、したがって摩耗ボウル9の表面は、徐々に、また均一に摩耗する。これは緯糸および電磁場の予測不可能な動作が継続的にスライダC全体を回転させることができ、また実際に回転させるが、実際にはこのタイプの動作に制限されないという事実による。ボウル9の構造に好ましい材料は、ブッシュ4に関連して既に上記したPEEK系材料、または同様の機械的特性を有するプラスチック材料である。
【0027】
ボウル9の周期的な交換を必要とすること、および装置内部の摩耗材料の形成という欠点を有する、スプリングMとボウル9との間の結合の代わりとして、本発明によれば、永久磁石を、電力不足によりコイルBへの通電が行われていない場合にスライダCを前進位置、すなわち緯糸停止位置に維持するのに適した位置に設ける。好適な実施形態では、前記永久磁石は、電力不足の場合に
図1に示す前進位置にスライダCを保持しながら、鉄系材料で形成された固定ケース6によって付属物2aへの引力がもたらされるように、中間要素2の付属物2aの自由端に収容される。
【0028】
装置内部に塵の通路を含有するため、装置の外側エンベロープは、ほぼ円筒形状を有するカップ容器11と、カップ容器11の口部を閉じるカバー10と、カバー10の反対側に位置し、カップ容器11の特別な周辺円形シート内に収容される第1のOリングシーリングガスケット12とによって形成される。有利には、
図4の分解図から明らかなように、第2の内側ガスケット12cはガスケット12に接合されており、ガスケット12cの機能は、コイルBのケース6を正しい位置に維持し、アセンブリスラック(組立てによる緩み)を補うことである。第2の内側ガスケット12cは、電子装置の電力ケーブルの出口ができるようにし、ガスケット12に関しより厚みを持たせることを可能にするC字形状を有する。ガスケット12とガスケット12cとの相互接合のおかげで、第1のOリングシーリングガスケット12がOリングシーリングガスケット12の円形シート内に配置されるとすぐに、内側ガスケット12cは自動的かつ直ちに内側ガスケット12cの正しい作動位置に置かれることは言及するに値する。
【0029】
カップ容器11は、明らかに、エンドピース1の通過を可能にする中央開口部を備え、この開口はエンドピース1の外面に対しシールする防塵ワッシャ13によって内部で保護される。
【0030】
しかしながら、本発明は、上に例示した本発明の例示的な実施形態を示すに過ぎない特定の構成によって限定されるものと解されるものではなく、様々な変形例が考えられ、その全ては本発明の範囲から逸脱することなく当業者が想到し得るものであって、専ら請求の範囲によって定められる、ということが理解されよう。