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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/24 20060101AFI20220914BHJP
   H02K 19/10 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H02K19/24 A
H02K19/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018105408
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019213291
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】桂 斉士
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
(72)【発明者】
【氏名】植村 公貴
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136902(JP,A)
【文献】特開2016-208569(JP,A)
【文献】特開2012-253912(JP,A)
【文献】特開2013-176183(JP,A)
【文献】実公昭50-025283(JP,Y1)
【文献】実開昭54-026017(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/24
H02K 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と固定ケースとの間に位置する、ブラシレス巻線界磁型の回転電機であって、
前記固定ケースに保持され、交流電流により回転磁界を発生する交流コイルを内部に備えた、固定子と、前記固定ケースに保持され、直流電流により励磁する界磁コイルを内部に備えた界磁コアと、前記回転部材の外周に配置され、前記固定子及び前記界磁コイルに対し回転自在に保持された、回転子と、を備えており、
前記界磁コイルは、前記固定子及び前記回転子に対して、前記回転部材の回転軸の軸方向にずらせて並列して配置されており、
前記回転子は、
前記回転軸の軸方向に延びた複数の第1爪部を有する、第1磁極と、
前記回転軸の軸方向に延びた複数の第2爪部を有する、第2磁極と、
円環状のロータコアと、
を備えており、
前記第1磁極と前記第2磁極とは、お互いに接触することなく、それぞれ、前記第1爪部と前記第2爪部とを介して前記ロータコアに固定されており、
前記ロータコアは、電磁鋼板を前記回転軸の軸方向に積層して構成されており、
積層された前記電磁鋼板は、相互に、磁束を通すが電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1磁極は、第1円環部を有しており、
前記第1爪部は、前記第1円環部から前記回転軸の軸方向に突き出ており、
前記第2磁極は、第2円環部を有しており、
前記第2爪部は、前記第2円環部から前記回転軸の軸方向に突き出ている、
請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記第1爪部が嵌合される第1嵌合部と、前記第2爪部が嵌合される第2嵌合部とを、周方向に沿って交互に有しており、
前記第1磁極と前記第2磁極とは、前記第1爪部が前記第1嵌合部に嵌合され且つ前記第2爪部が前記第2嵌合部に嵌合されて、前記ロータコアに固定されている、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータコアは、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に貫通空洞部を有している、
請求項3記載の回転電機。
【請求項5】
前記貫通空洞部には、永久磁石が配置されており、
前記永久磁石は、前記第1爪部側が前記第1磁極と同じ磁極を示し、且つ、前記第2爪部側が前記第2磁極と同じ磁極を示すように、設けられている、
請求項4記載の回転電機。
【請求項6】
前記第1爪部及び前記第2爪部は、前記回転軸の軸方向の先端に、前記ロータコアから露出するかしめ部を有しており、前記第1磁極及び前記第2磁極は、前記かしめ部がかしめられることによって前記回転軸の軸方向に固定されている、
請求項3~5のいずれか一つに記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータコアは、前記回転軸の軸方向の先端側に、非磁性体からなるエンドプレートを有しており、前記非磁性体はアルミニウム又はオーステナイト系ステンレス鋼である
請求項6記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の外周に配置されるブラシレス巻線界磁型の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば回転軸沿いのエンジンと変速機との間に配置される回転電機としては、従来から、回転子に対して静止した界磁コイルから磁束を供給する型の回転電機が、提案されている。例えば、特許文献1に示されるブラシレス巻線界磁型の回転電機110では、図8に示されるように、固定子113と回転子111との間には第1エアギャップ11Aがあり、界磁コイル112と回転子111との間には第2エアギャップ12Aがあり、両方とも回転軸117の軸方向沿いに延在している。そして、回転子111は、鉄を削って製作されている。更に、特許文献2では、発進装置の外周に回転電機を配置する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3445492号
【文献】特表2010-516558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転電機110は、界磁コイル112と回転子111と固定子113とが回転軸117の同軸異径上に配置されるので、狭小空間に配置する上で厳しい制約があり、設計自由度が限られてしまい、回転電機110の出力性能が限定されてしまう、という課題を有していた。
【0005】
更に、従来の回転子111では、鉄系材料の塊状部材からなるために渦電流が発生し電気抵抗による発熱が生じる、すなわち、所謂「鉄損」が大きい、という課題があった。
【0006】
本発明の目的は、設計自由度を向上できるだけでなく、「鉄損」を低減できる、回転電機を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転部材と固定ケースとの間に位置する、ブラシレス巻線界磁型の回転電機であって、
前記固定ケースに保持され、交流電流により回転磁界を発生する交流コイルを内部に備えた、固定子と、前記固定ケースに保持され、直流電流により励磁する界磁コイルを内部に備えた界磁コアと、前記回転部材の外周に配置され、前記固定子及び前記界磁コイルに対し回転自在に保持された、回転子と、を備えており、
前記界磁コイルは、前記回転子に対して、前記回転部材の回転軸の軸方向に並列して配置されており、
前記回転子は、
前記回転軸の軸方向に延びた複数の第1爪部を有する、第1磁極と、
前記回転軸の軸方向に延びた複数の第2爪部を有する、第2磁極と、
円環状のロータコアと、
を備えており、
前記第1磁極と前記第2磁極とは、お互いに接触することなく、それぞれ、前記第1爪部と前記第2爪部とを介して前記ロータコアに固定されており、
前記ロータコアは、電磁鋼板を前記回転軸の軸方向に積層して構成されており、
積層された前記電磁鋼板は、相互に、磁束を通すが電気的に絶縁されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定ケースの内周側且つ回転部材の外周側という狭小なる空間において、回転軸の同軸異径上には、回転子と、固定子又は界磁コイルのいずれか一方のみとを、配置するだけでよいので、設計自由度が大きくなり、回転電機の出力性能を向上させることができる。しかも、回転子のロータコアは、電磁鋼板を回転軸の軸方向に積層して構成されているので、「鉄損」を低減でき、よって、エネルギー効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる回転電機の、回転軸と垂直な方向沿いに大略切断したときの断面と、エンジン及び変速機との配置関係とを、示す図である。
図2】回転子の側面図である。
図3】回転子を軸方向前方から見た斜視図である。
図4】回転子を軸方向後方から見た斜視図である。
図5】回転子の分解斜視図である。
図6】回転子の第1磁極の第1爪部の、かしめ部とかしめた状態とを、示す側面部分図である。
図7】回転子の縦断面部分図である。
図8】従来の回転電機の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の回転電機は、図1に示されるように、回転軸7沿いのエンジン8と変速機9との間に配置され、発進装置4を内包するケース5と発進装置4との間に位置する、ブラシレス巻線界磁型の回転電機10である。この回転電機10は、少なくとも、固定子3と、界磁コイル2と、回転子1とを、備えている。
【0012】
固定子3は、ケース5に回転不可に固定保持され、交流コイル31を巻回するための複数のスロットを具備する円筒状の部材で構成され、交流コイル31を内部に備えて、交流コイル31に流れる交流電流により回転磁界を発生する。
【0013】
界磁コイル2は、固定子3及び回転子1よりも回転軸7沿いにずらせて配置されて、固定子3の変速機9側でケース5に固定保持され、直流電流により磁束を励磁する。界磁コア6は、界磁コイル2を内部に備えている。なお、界磁コイル2は、固定子3及び回転子1よりも回転軸7沿いに、固定子3の変速機9側ではなく、第2エアギャップ102を介して固定子3のエンジン8側にずらせて配置してもよい(図1の一点鎖線の領域89を参照)。
【0014】
回転子1は、発進装置4の外周に固定配置され、回転子1の外周面が固定子3の内周面に対向し、かつ、回転子1の変速機9側の端面が界磁コイル2のエンジン8側の端面に対向して、回転軸7の周りで固定子3及び界磁コイル2に対して回転自在に保持されている。
【0015】
固定子3と回転子1との間には、第1エアギャップ101が形成されて、固定子3と回転子1との間で磁束を受け渡している。第1エアギャップ101は、固定子3の内周面と回転子1の外周面との間で回転軸7の軸方向沿いに延在する隙間である。
【0016】
界磁コア6と回転子1との間には、第2エアギャップ102が形成されて、界磁コイル2と回転子1との間で磁束を受け渡している。第2エアギャップ102は、界磁コア6と回転子1との間で回転子1の回転軸7の軸方向の変速機9側の端面と界磁コア6のエンジン8側の端面において、回転軸7の軸方向とは垂直な径方向沿いに延在する隙間である。
【0017】
よって、界磁コイル2は、回転子1に対して、第2エアギャップ102を介して回転軸7の軸方向にずらされて並列して配置されている。
【0018】
更に、図2図5に示されるように、回転子1は、第1磁極1Aと、第2磁極1Bと、ロータコア1Cとが、組み合わされて構成されている。図2は、回転子1の側面図である。図3は、回転子1を軸方向前方(エンジン8側)から見た斜視図である。図4は、回転子1を軸方向後方(変速機9側)から見た斜視図である。図5は、回転子1の分解斜視図である。なお、図2図5では、永久磁石(後述する)を示していない。
【0019】
第1磁極1Aは、例えば鉄などの軟磁性体で構成され、第1円環部11から回転軸7の軸方向に突き出た複数の例えば矩形薄板状の第1爪部13を有している。第1爪部13は、周方向に一定間隔、例えば等間隔に配置されている。また、全ての第1爪部13の軸方向の長さL1は、同じである。第1爪部13の基部には、周方向両側に張り出した段部131が形成されている。また、第1爪部13の先端部には、かしめ部132が形成されている。かしめ部132は、周方向に延びた溝1321を有しており、図6に示されるように、溝1321に圧力を加えて溝1321に沿った両縁部1322を押し拡げることによって、すなわち、径方向に拡げることによって、かしめられるようになっている。
【0020】
第2磁極1Bは、例えば鉄などの軟磁性体で構成され、第2円環部14から回転軸7の軸方向に突き出た複数の例えば矩形薄板状の第2爪部15を有している。第2爪部15は、周方向に一定間隔、例えば等間隔に配置されている。また、全ての第2爪部15の軸方向の長さL2は、同じである。なお、ここでは、L1=L2である。第2爪部15の基部には、周方向両側に張り出した段部151が形成されている。また、第2爪部15の先端部には、かしめ部152が形成されている。かしめ部152も、周方向に延びた溝1521を有しており、図6に示されるように、径方向に拡げることによって、かしめられるようになっている。なお、第1磁極1Aの第1円環部11の内径をD1とし、第2磁極1Bの第2円環部14の外径をD2とすると、D1>D2である。
【0021】
ロータコア1Cは、円環状の部材であり、第1爪部13が嵌合される第1嵌合部16と、第2爪部15が嵌合される第2嵌合部17とを、周方向に沿って交互に有しており、更に、第1嵌合部16と第2嵌合部17との間に貫通空洞部18を有している。そして、ロータコア1Cは、電磁鋼板が回転軸7の軸方向に積層されて構成されている。積層された電磁鋼板は、相互に、磁束を通すが電気的に絶縁されている。ロータコア1Cの軸方向の最前方には、アルミニウム又はオーステナイト系ステンレス鋼などの非磁性体からなる円環板状のエンドプレート(図示せず)を、配置してもよい。なお、電磁鋼板は、概念的に、ソフトフェライト等を含んでいる。
【0022】
回転子1は、次のように組み立てられている。すなわち、第1磁極1Aの第1爪部13をロータコア1Cの第1嵌合部16に軸方向後方から挿入し、段部131をロータコア1Cに当接させ且つかしめ部132をロータコア1Cから露出させるとともに、第2磁極1Bの第2爪部15をロータコア1Cの第2嵌合部17に軸方向後方から挿入し、段部151をロータコア1Cに当接させ且つかしめ部132をロータコア1Cから露出させる。そして、第1爪部13のかしめ部132をかしめるとともに、第2爪部15のかしめ部152をかしめる。その際、好ましくは、全てのかしめ部132を一度にかしめ、また、全てのかしめ部152を一度にかしめる。更に、貫通空洞部18に、永久磁石181、182を嵌め込む。その際、回転子1の縦断面部分図である図7に示されるように、貫通空洞部18の第1爪部13側には、第1磁極1Aと同じ磁極を示す永久磁石181を配置し、第2爪部15側には、第2磁極1Bと同じ磁極を示す永久磁石182を配置する。
【0023】
なお、永久磁石181、182は、ネオジムを主原料とした磁石又はフェライトを主原料とした磁石を使用できる。具体的には、永久磁石181、182としては、例えば、SmCo磁石、AlNiCo磁石、又は、ネオジムボンド磁石など、多様な種類の永久磁石を使用できる。
【0024】
こうして組み立てられた回転子1においては、前述したようにD1>D2であるので、径方向における第1磁極1Aと第2磁極1Bとの間に、隙間S1(図4)が存在している。すなわち、第1磁極1Aと第2磁極1Bとは、径方向において接触していない。また、第1磁極1Aの第1円環部11とロータコア1Cの軸方向後方の端面との間には、第1爪部13の段部131による隙間S2(図2図4)が存在している。更に、第2磁極1Bの第2円環部14とロータコア1Cの軸方向後方の端面との間には、第2爪部15の段部151による隙間S3(図2図3)が存在している。
【0025】
以上のように構成された回転電機10においては、まず、永久磁石181、182による磁束191が、図7に示されるように発生し、更に、界磁コイル2が通電されると、磁束192が、図1に示されるように発生する。磁束192は、界磁コア6から、第2エアギャップ102と回転子1の第1磁極1Aと第1エアギャップ101と固定子3と第1エアギャップ101と回転子1の第2磁極1Bと第2エアギャップ102とを介して、界磁コア6に戻ることにより構成されている。第1爪部13及び第2爪部15は、薄板状を有しているので、磁束192は、低い磁気抵抗で伝達される。このとき、例えば、直流電流が界磁コイル2に通電されれば、磁束192を励磁して、第1磁極1Aと第2磁極1Bとは、それぞれ、例えばN極とS極とにそれぞれ磁化されている。
【0026】
このような回転電機10において、まず、回転電機10をスタータとして始動機能を発揮させる場合について説明する。エンジン8の始動指令に基づき、図示しないインバータを駆動して固定子3に三相交流電流を流して固定子3を磁化するとともに、界磁コイル2に電流を流す。界磁コイル2に電流を流して、回転子1の第1磁極1Aと第2磁極1Bとを励磁する。この結果、回転子1が固定子3に対して回転を開始するとともに、固定子3において誘起電圧を有する起電力が発生する。
【0027】
その後、誘起電圧は回転子1の回転速度に応じて増加し、回転速度がエンジン8のアイドリングに対応するアイドリング回転速度より低い初爆の回転速度に到達し、エンジン8の始動を完了したとき、インバータの駆動を停止し、以後、所定の誘起電圧(要求電圧)を保持するように、自動的に発電モード、すなわち、回転電機10を発電機として発電機能を発揮させる場合に移行する。
【0028】
この発電モードでは、界磁コイル2を励磁し続けるときは、誘起電圧が所定の誘起電圧で一定になるように、励磁電流を調整する。励磁電流は、回転速度の上昇にあわせて回転子の磁化力が減じるように調整し、誘起電圧が一定となるようにする。また、界磁コイル2を励磁しないときは、誘起電圧が所定の誘起電圧で一定になるようにインバータで三相交流電流の進角を調整する。さらに、上記2つの方法を組み合わせて調整してもよい。このように制御することで、回転子1が回転すると、回転電機10は発電機として機能することになる。
【0029】
この結果、エンジン8と回転電機10とを連結することで、エンジン始動を可能とし、且つ、走行中はジェネレータ(発電機)として機能することができる。
【0030】
本実施形態によれば、次のような効果を発揮できる。
(a)発進装置4の外周に配置するブラシレス巻線界磁型の回転電機10において、界磁コイル2と回転子1との間の第2エアギャップ102を回転軸7に対して垂直な平面上に配置している。すなわち、界磁コイル2を、固定子3及び回転子1に対して回転軸7の軸方向にずらせて並列配置している。これにより、発進装置4の径方向外側には、固定子3及び回転子1の2つの部材だけとなり、発進装置4の径方向外側に界磁コイル2の配置スペースは不要となる。このため、少なくとも界磁コイル2の配置スペース分だけ、発進装置4の外側の径方向寸法が小さくなる、又は、配置スペース分だけ固定子3又は回転子1の厚みを増加できるなど、有効に活用することができる。また、固定子3及び回転子1のスペースを考慮することなく、界磁コイル2の径方向の厚みを大きくして、界磁コイル2の磁束を大きくすることができる。よって、設計自由度を大きくすることができる。
【0031】
(b)ロータコア1Cは、電磁鋼板が回転軸7の軸方向に積層されて構成されている。よって、ロータコア1Cにおける「鉄損」を低減できる。したがって、回転電機10のエネルギー効率を向上できる。
【0032】
(c)回転子1において、第1磁極1Aは、第1爪部13をロータコア1Cの第1嵌合部16に軸方向後方から挿入することによって、ロータコア1Cに取り付けられるので、ロータコア1Cに対する周方向及び径方向の位置決めを容易に実施できる。また、第2磁極1Bは、第2爪部15をロータコア1Cの第2嵌合部17に軸方向後方から挿入することによって、ロータコア1Cに取り付けられるので、ロータコア1Cに対する周方向及び径方向の位置決めを容易に実施できる。
【0033】
(d)回転子1において、第1磁極1Aは、第1爪部13のかしめ部132をかしめることによって、ロータコア1Cに固定されるので、ロータコア1Cに対する軸方向の位置決めを容易に実施できる。また、第2磁極1Bは、第2爪部15のかしめ部152をかしめることによって、ロータコア1Cに固定されるので、ロータコア1Cに対する軸方向の位置決めを容易に実施できる。
【0034】
(e)ロータコア1Cが永久磁石181、182を備えているので、界磁コイル2によって回転子1に発生する磁束192に加えて永久磁石181、182によって発生する磁束191を利用でき、よって、出力性能を向上させることができる。
【0035】
(f)ロータコア1Cの軸方向の最前方のエンドプレートは、他の電磁鋼板よりも高剛性を有しているので、かしめ部132、152をかしめる際にロータコア1Cが傷付くのを防止でき、更に、軸方向最前方の電磁鋼板の捲れ上がりを防止する機能も有している。
【0036】
[変形構成]
(1)ロータコア1Cは、永久磁石181、182を備えていなくてもよい。なお、この場合でも、貫通空洞部18は存在しているのが好ましい。
【0037】
(2)かしめ部132、152は、前記実施形態のように径方向に拡がってかしめられる形態に限るものではなく、周方向に、又は、径方向と周方向の両方に、拡がってかしめられる形態を有してもよい。
【0038】
(3)固定子3の位置と界磁コイル2の位置とを交換してもよい。すなわち、界磁コイル2を回転子1の径方向外側に配置し、固定子3を回転子1の回転軸7の軸方向にずらして配置してもよい。この場合、回転子1と固定子3との間の第1エアギャップ101は回転軸7の軸方向とは垂直な径方向沿いに延在する隙間として形成される。一方、界磁コイル2と回転子1との間の第2エアギャップ102は、回転軸7の軸方向沿いに延在する隙間として形成される。この構成によれば、前記実施形態と同様の作用効果に加えて、固定子3の設計時に、回転子1の遠心力による膨らみなどの厚みの変化を考慮しなくてもよい。
【0039】
(4)回転電機10は、発進装置4以外の他の回転部材の外周に配置してもよい。他の回転部材としては、例えば、駆動系のフライホイールやドライブプレートなどを挙げることができる。
【0040】
(5)前記実施形態では、回転電機10を回転軸7沿いのエンジン8と変速機9との間に配置しているが、このような配置に限るものではない。回転電機10は、例えば、オルタネータと置換して配置したり、変速機9と車輪との間に配置したりするなど、任意の位置に配置してもよい。
【0041】
(6)第1磁極、第2磁極、及びロータコアは、前記実施形態の形態に限るものではなく、例えば、次のような形態を有することができる。
(6-1)第1磁極が、第1爪部のみを有し第1円環部を有していない。また、第2磁極が、第2爪部のみを有し第2円環部を有していない。すなわち、第1磁極及び第2磁極が、それぞれ、分離独立した爪部のみからなっている。
(6-2)ロータコアが、第1嵌合部及び第2嵌合部を有しておらず、第1磁極及び第2磁極が、ロータコアの内周端に固定されている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両に限らず、広く一般に駆動・発電装置に使用される回転電機として有用であり、よって、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0043】
1 回転子
1A 第1磁極
11 第1円環部
13 第1爪部
132 かしめ部
1B 第2磁極
14 第2円環部
15 第2爪部
152 かしめ部
1C ロータコア
16 第1嵌合部
17 第2嵌合部
18 貫通空洞部
181、182 永久磁石
2 界磁コイル
3 固定子
31 交流コイル
4 発進装置(回転部材)
5 ケース
6 界磁コア
7 回転軸
10 回転電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8