(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】油入静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/14 20060101AFI20220914BHJP
H01F 27/12 20060101ALI20220914BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01F27/14 D
H01F27/12 A
H01F27/00 D
(21)【出願番号】P 2018111906
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山下 みどり
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-008312(JP,A)
【文献】実開昭55-052814(JP,U)
【文献】実開昭58-085316(JP,U)
【文献】実開平01-135715(JP,U)
【文献】特開昭59-008313(JP,A)
【文献】特開昭59-106109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/14
H01F 27/12
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導機器本体が収容されると共に絶縁油が充填される本体タンクと、
前記本体タンクの側部に配置され、該本体タンクの上部と上部導油管により接続された上部ヘッダと、該本体タンクの下部と下部導油管により接続された下部ヘッダとの間に複数枚の放熱パネルを有して構成され、前記絶縁油を冷却するための
複数個の放熱器と、
前記本体タンクの上方に配置され、前記絶縁油の熱膨張収縮を吸収するためのコンサベータとを備え、
前記本体タンクの下部には、注油口が設けられ、
前記コンサベータの上部には、呼吸管が接続されており、
前記
複数個の放熱器の上部ヘッダは、前記本体タンクの最上部よりも上方に位置し、前記コンサベータは、前記上部ヘッダよりも下方に位置すると共に、
前記コンサベータの底部と、前記
複数個の放熱器の最上部とが接続管により接続されている油入静止誘導機器。
【請求項2】
前記接続管の途中部には、前記放熱器よりも上方に位置して保護用継電器が設けられている請求項1に記載の油入静止誘導機器。
【請求項3】
前記本体タンクの上部と前記コンサベータとを接続する第2接続管を備え、
前記接続管及び第2接続管には夫々開閉弁が設けられている請求項1に記載の油入静止誘導機器。
【請求項4】
前記第2接続管の途中部に、保護用継電器が設けられている請求項3に記載の油入静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油入静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
油入静止誘導機器、例えば高電圧受配電設備用の油入変圧器においては、変圧器本体を絶縁油と共に本体タンク内に収容すると共に、本体タンクの上部に、絶縁油の劣化を防止するためのコンサベータを設け、さらに、本体タンクの側方に絶縁油を冷却するための放熱器を設けて構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
図12は、従来のこの種の変圧器1の外観構成を、片側の放熱器を取外した状態で示している。
【0003】
即ち、矩形箱状をなす本体タンク2内には、
図13~
図16に示すように、変圧器本体3が絶遠油Mと共に収容され、本体タンク2の上部には、コンサベータ4が設けられる。
図13~
図16にも示すように、本体タンク2の上部とコンサベータ4の底部との間が、パイプ5により接続され、
図12に示すように、パイプ5の途中部には、異常時の分解ガスを検出して遮断器を動作させるブッフホルツ継電器6が設けられる。そして、本体タンク2の両側部(片側のみ図示)には、放熱器7が設けられる。
【0004】
詳しい図示及び説明は省略するが、前記放熱器7としては、本体タンク2と連通する上部、下部のヘッダ間に、複数枚の薄板中空状の放熱パネルを並べて配置して構成されるいわゆるパネル式の放熱器7が採用される。このとき、設置面積を抑えつつ放熱効果を高めるために、放熱器7を高さ方向に大型化することが行われている。
図13~
図16に示すように、本体タンク2と上部ヘッダとの間は、上部導油管8により接続され、本体タンク2と下部ヘッダとの間は下部導油管9により接続される。
【0005】
ところで、上記変圧器1の設置時においては、本体タンク2内及び放熱器7(並びにコンサベータ4の油貯留部)を満たすように絶縁油Mの注油作業が行われる。
図13~
図16を参照しながら、変圧器1に対する絶縁油Mの注油の手順について述べる。まず、
図13に示すように、注油作業の開始前においては、本体タンク2の注油口2aの閉塞状態で、放熱器7の上端の気抜き口7a、及び、コンサベータ4に接続された呼吸管10の先端が夫々真空ポンプに接続されて真空引きされる.これにて、本体タンク2内、コンサベータ4内、放熱器7内は、真空引きにより、全て減圧状態とされる。
【0006】
次いで、
図14に示すように、気抜き口7a及び呼吸管10からの真空引きが継続された状態で注油口2aに注油装置(注油ポンプ)が接続され、本体タンク2内への注油が開始される。これにて、本体タンク2内に次第に注油がなされていき、この際、本体タンク2内と放熱器7内とが同等の油面高さになるように、注油が進められる。注油が進んで、本体タンク2内が一杯になった後は、コンサベータ4内へも放熱器7内と同等の油面高さになるように注油がなされていく。
【0007】
そして、
図15に示すように、コンサベータ4内の必要な油面高さまで注油がなされると、注油が停止し、注油口2aが閉塞されると共に、気抜き口7a及び呼吸管10の先端が閉塞される。この状態では、放熱器7内やコンサベータ4内の上部空間Sは真空状態となっている。この後、
図16に示すように、呼吸管10の先端が開放されることにより、コンサベータ4内に大気が導入され、コンサベータ4内の油面が低下し、その分だけ絶縁油Mが押し戻されるようにして、放熱器7内の上端まで絶縁油Mが満たされるようになる。このように、内部を真空引きした状態で、注油作業が行われることにより、放熱器7の上端の高さがコンサベータ4より高くなっても、注油を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来構成の変圧器1では、注油作業に手間が掛かる不具合があった。具体的には、内部を真空引きする際に、放熱器7の気抜き口7aと、コンサベータ4の呼吸管10との2か所において真空引きする必要があり、その分、作業工程が複雑となり、注油作業が面倒なものとなっていた。また、コンサベータ4内において所定の油面高さまで注油を行った後、絶縁油Mを押し戻すようにして放熱器7内の上部空間Sを満たすようにしていたため、手間が掛かると共に、確実性に劣っていた。
【0010】
そこで、本体タンクの側部に高さ方向に大型の放熱器を有すると共に本体タンクの上方にコンサベータを備えるものにあって、注油作業を容易に行うことができる油入静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る油入静止誘導機器は、誘導機器本体が収容されると共に絶縁油が充填される本体タンクと、前記本体タンクの側部に配置され、該本体タンクの上部と上部導油管により接続された上部ヘッダと、該本体タンクの下部と下部導油管により接続された下部ヘッダとの間に複数枚の放熱パネルを有して構成され、前記絶縁油を冷却するための複数個の放熱器と、前記本体タンクの上方に配置され、前記絶縁油の熱膨張収縮を吸収するためのコンサベータとを備え、前記本体タンクの下部には、注油口が設けられ、前記コンサベータの上部には、呼吸管が接続されており、前記複数個の放熱器の上部ヘッダは、前記本体タンクの最上部よりも上方に位置し、前記コンサベータは、前記上部ヘッダよりも下方に位置すると共に、前記コンサベータの底部と、前記複数個の放熱器の最上部とが接続管により接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態を示すもので、注油前の変圧器の全体構成を示す斜視図
【
図2】片側の放熱器を取り外した状態の変圧器の斜視図
【
図3】片側の放熱器を取り外した状態の変圧器の側面図
【
図6】注油前の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図7】注油途中の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図(その1)
【
図8】注油途中の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図(その2)
【
図9】注油完了状態の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図10】第2実施形態を示すもので、注油前の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図11】注油完了状態の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図12】従来例を示すもので、変圧器の全体構成を概略的に示す斜視図
【
図13】注油前の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図14】注油途中の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図(その1)
【
図15】注油途中の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図(その2)
【
図16】注油完了状態の変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、高電圧受配電設備用の油入絶縁変圧器に適用した第1の実施形態について、
図1から
図9を参照しながら説明する。
図1~
図3は、本実施形態に係る油入静止誘導機器としての油入絶縁変圧器11(以下単に「変圧器11」という)の全体構成を示している。また、
図4及び
図5は、放熱器の一つのユニットの構成を示している。尚、本実施形態の説明で方向をいう場合には、本体タンクの長手方向を前後方向、放熱器に端子箱が取付けられている側を前面側とする。
【0014】
図1~
図3に示すように、変圧器11は、誘導機器本体としての変圧器本体12(
図6~
図9参照)を収容する本体タンク13と、この本体タンク13の図で左右の側部に接続される複数個のユニット状の放熱器14と、本体タンク13の上部に設けられたコンサベータ15とを備えている。詳しく図示はしないが、前記変圧器本体12は、鉄心及びその鉄心に装着されたコイル等からなる周知構成を備える。前記本体タンク13は、図で前後方向に長い矩形箱状をなし、内部には、前記変圧器本体12全体が浸されるように、例えば鉱油からなる絶縁油M(
図7~
図9参照)が充填されている。また、本体タンク13の前面部には、変圧器本体12(コイル)と外部との接続用の複数個のブッシング16が設けられている。
【0015】
前記本体タンク13の前面の下部には、注油口17が設けられている。この注油口17は、開閉可能に構成されていると共に、注油装置(注油ポンプ)との接続が可能に構成されている。詳しく図示はしないが、前記コンサベータ15は、内部に縁油Mの貯留部を有する上下にやや平べったいタンク状をなし、絶縁油Mの温度変化に伴う膨張、収縮を吸収するように構成されている。後述するように、本実施形態では、コンサベータ15は、放熱器14に接続(連通)されるようになっている。また、
図6~
図9に示すように、コンサベータ15の上部には、呼吸管18が接続されている。
【0016】
ここで、前記放熱器14について、
図4、
図5も参照して述べる。前記放熱器14は、前記本体タンク13内の絶縁油を冷却するためのもので、
図1に示すように、前記本体タンク13の図で左右の側部に、ユニット状の放熱器14が、前後方向に並んで複数個(図では8個)ずつ設けられる。本実施形態では、放熱器14として、いわゆるパネル式の放熱器が採用されている。具体的には、
図4、
図5に示すように、各放熱器14は、熱伝導性の良い金属から構成され、上部ヘッダ19、下部ヘッダ20、それらの間を接続する複数枚の放熱パネル21を備え、全体として、縦長の矩形ブロック状に構成されている。
【0017】
そのうち上部ヘッダ19は、図で左右方向に延びる円筒パイプ状をなし、先端側が閉塞されていると共に、基端側が後述する上部導油管22に連通するように接続される。詳しく図示はしないが、上部ヘッダ19の外周面のうち下半部には、各放熱パネル21の上端部が差込まれる切込み部が、左右方向に所定間隔で並んで設けられている。前記下部ヘッダ10は、やはり図で左右方向に延びる円筒パイプ状をなし、先端側が閉塞され、基端側が後述する下部導油管23に連通するように接続される。詳しく図示はしないが、下部ヘッダ10の外周面のうち上半部には、各放熱パネル11の下端部が差込まれる切込み部が、左右方向に所定間隔で並んで設けられている。
【0018】
前記放熱パネル21は、図で上下方向に長く、前後方向に幅狭で、左右方向に薄型の薄板状をなすと共に、その内部には、長手方向つまり図で上下方向に延びて、上下両端部で開口する絶縁油流通穴(図示せず)が設けられている。複数の放熱パネル21は、板面(扁平な面)が左右方向を向くようにして、一定の間隔を置いて平行に配置される。このとき、各放熱パネル21の上端部は、上部ヘッダ19の切込み部に差込まれた状態で、溶接等により、絶縁油が漏れないような密閉状に接続される。これと共に、各放熱パネル21の下端部は、下部ヘッダ20の切込み部に差込まれた状態で、溶接等により、絶縁油が漏れないような密閉状に接続される。
【0019】
本体タンク13と、各放熱器14との間は、上部導油管22及び下部導油管23により夫々接続される。
図4、
図5に示すように、前記各上部導油管22は、本体タンク13の側面上端部の上部接続口13a(
図2、
図3参照)から側方に延びた後、上方に折曲がって延び、上端が各上部ヘッダ19の基端部につながっている。前記各下部導油管23は、本体タンク13の側面下端部の下部接続口13b(
図2、
図3参照)から側方に延び、各下部ヘッダ20の基端部につながっている。
【0020】
これにて、本体タンク13内で、変圧器本体12の熱により暖められた絶縁油Mは、対流により、各上部導油管22から上部ヘッダ19を通して、各放熱器14内に流入する。そして、放熱器14内で、上部ヘッダ19から各放熱パネル21内に流入し、放熱パネル21内を下降しながら外部との間で熱交換されて冷却される。この後、放熱パネル21から下部ヘッダ20に流入し、下部導油管23を通って本体タンク13内に戻されるといった循環が行われる。このように絶縁油Mが循環することによって、本体タンク13内の絶縁油を冷却するようになっている。
【0021】
このとき、本実施形態では、
図1~
図3に示すように、前記放熱器14の上部ヘッダ19は、前記本体タンク13の最上部よりも上方に位置し、前記コンサベータ15は、前記上部ヘッダ19よりも下方に位置している。尚、
図1等に示すように、前記放熱器14のうち、本体タンクの右側最前部に位置するものの前面下部には、端子箱24が設けられている。また、図示はしないが、前記コンサベータ15には、内部の油面の高さを視認するための確認窓が設けられている。或いは油面高さを検出する油面計等を設けても良い。
【0022】
さて、本実施形態の油入変圧器11にあっては、
図2、
図3等に示すように、前記コンサベータ15と本体タンク13とは直接的につながっておらず、前記コンサベータ15の底部と、前記各放熱器14の最上部とが接続管25により接続されている。このとき、
図4及び
図5に示すように、各放熱器14の上部ヘッダ19の基端部分(上部導油管22との接続部分)の上部には、接続口19aが設けられている。
【0023】
そして、
図2、
図3に右側のみ示すように、前記接続管25は、前記コンサベータ15の底部から後方に延び、本体タンク13の後端部で折曲がって上方に延び、本体タンク13の側部に沿って前方に延びている。このとき、接続管25の最上部で前後方向に延びる部分が、各放熱器14の接続口19aに夫々接続されている。図示はしないが、本体タンク13の左側においても、同様に接続管25が各放熱器14の接続口19aに夫々接続されている。
【0024】
更に、本実施形態では、
図2、
図3に示すように、接続管25の途中部、この場合最上部の後端側部分には、放熱器14よりも上方に位置して、保護用継電器としてのブッフホルツ継電器26が設けられている。周知のように、ブッフホルツ継電器26は、本体タンク13内の異常発生時に絶縁油Mから発生する分解ガスを検出することに基づき、遮断器を動作させて変圧器本体2への通電等を停止させるものである。
【0025】
以上のように構成された変圧器11においては、絶縁油Mが、本体タンク13内及び各放熱器14並びにコンサベータ15の貯留部を満たすように充填される。この絶縁油Mの注油作業は、変圧器11の組立て時(設置時)において注油口17から行われる。この場合、本体タンク13よりも各放熱器14の高さ寸法が高いため、放熱器14の上部まで絶縁油Mを満たすために、内部を真空引きした状態で、注油が行われる。ここで、変圧器11に対する絶縁油Mの注油の手順について、
図6~
図9を順に参照しながら述べる。
【0026】
即ち、まず、
図6に示すように、変圧器11に対する注油作業の開始前においては、注油口17が閉塞された状態で、呼吸管18が真空ポンプに接続されて真空引きされる。これにて、本体タンク13内、各放熱器14内、コンサベータ15内は、真空引きにより、全て減圧状態とされる。次いで、
図7に示すように、注油作業が開始されて、注油口17に注油装置(注油ポンプ)が接続され、本体タンク13内への注油が実行される。このときには、呼吸管18からの真空引きが継続され、内部の減圧状態が維持される。
【0027】
これにて、本体タンク13内、及び該本体タンク13と下部導油管23により接続された放熱器14内に、同等の油面高さとなるように、次第に注油がなされていく。絶縁油Mが本体タンク13内全体を満たすと、
図8に示すように、更に本体タンク13内から下部導油管23及び上部導油管22を通って放熱器14内に注油がなされていく。このとき、放熱器14の内部が減圧状態とされていることにより、放熱器14内には、本体タンク13の高さを超えて注油がなされていく。
【0028】
更に注油が進んでいくと、
図8に示すように、放熱器14内も絶縁油Mで満たされるようになり、絶縁油Mは、接続管25を通ってコンサベータ15内に注入されていく。作業者は、コンサベータ15内の油面を確認窓から確認し、油面が所定の高さとなったら、注油口17からの注油を停止する。
図9に示すように、注油口17を閉塞状態とすると共に、呼吸管18を開放状態とすることにより、注油作業が完了する。
【0029】
このような本実施形態によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、本実施形態の変圧器11にあっては、放熱器14の上部ヘッダ19は、本体タンク13の最上部よりも上方に位置し、コンサベータ15は、上部ヘッダ19よりも下方に位置するので、放熱器14を上下方向に大型化して、設置面積を抑えつつ放熱効果を高めることができる。コンサベータ15は放熱器14より低い位置にあるので、変圧器11全体として、上下方向に必要以上に大型化することもない。
【0030】
このとき、従来例で述べたような、コンサベータ4の底部と本体タンク2の上部とがパイプ5で接続される場合と異なり、コンサベータ15の底部と、放熱器14の最上部とが接続管25により接続されている。従って、稼動時における絶縁油Mの流れは、本体タンク13内から放熱器14を介してコンサベータ15に至るものとなるが、絶縁油Mの熱膨張時には、膨張した分だけ、放熱器14から接続管25を通してコンサベータ15内に絶縁油Mが流入し、絶縁油Mの熱収縮時には、収縮した分だけ、コンサベータ15から接続管25を通して放熱器14に流出するようになる。このように、接続形態を変更しても、コンサベータ15としての必要な機能を確保することができる。
【0031】
そして、変圧器11に対する注油作業においては、上記したように、コンサベータ15の呼吸管18から真空引きすれば良いだけとなり、真空引きする場所は1か所となる。また、コンサベータ15内の所定の油面高さまで注油されると注油作業は終了するので、注油後の絶縁油Mの押し戻しを必要とせずに済み、確実に必要量の注油が可能となる。この結果、本実施形態によれば、本体タンク13の側部に高さ方向に大型の放熱器14を有すると共に本体タンク13の上方にコンサベータ15を備えるものにあって、2か所において真空引きする必要があって注油作業に手間が掛かり、確実性に劣っていた従来と異なり、注油作業を容易に行うことができる。
【0032】
また、本実施形態では、接続管25の途中部に、放熱器14よりも上方に位置して保護用のブッフホルツ継電器26を設けるようにした。この構成によれば、本体タンク13内の異常発生時に絶縁油Mから発生した分解ガスは、本体タンク13内を上昇し、上部導油管22を通って放熱器14内に進入し、更に放熱器14内から接続管25に至り、そのガスがブッフホルツ継電器26により検出されるようになる。そのため、発生したガスは必ず接続管25に集められるので、検出漏れなくブッフホルツ継電器26によりガスの発生を確実に検出することが可能となる。
【0033】
<第2の実施形態、その他の実施形態>
図10及び
図11は、第2の実施形態に係る変圧器31を示すものである。この第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なるところは、以下の点にある。即ち、変圧器31は、やはり、変圧器本体12を収容した本体タンク13、放熱器14、コンサベータ15を備え、放熱器14の上部ヘッダ19は、本体タンク13の最上部よりも上方に位置し、コンサベータ15は、上部ヘッダ19よりも下方に位置している。
【0034】
この第2の実施形態では、放熱器14の最上部(接続口19a)とコンサベータ15の底部との間が、接続管としての第1接続管32により接続されていると共に、本体タンク13の上部とコンサベータ15の底部との間を接続する第2接続管33が設けられている。このとき、第1接続管32の下端側は、第2接続管33の途中部に接続されている。そして、第1接続管32の途中部には、第1開閉弁34が設けられており、第2接続管33の途中部、この場合第1接続管32の接続部よりも下方(本体タンク13側)に位置して第2開閉弁35が設けられている。更に、第2接続管33の途中部この場合第1接続管32の接続部よりも上方(コンサベータ15側)に位置して保護用継電器としてのブッフホルツ継電器36が設けられている。
【0035】
この構成において、変圧器31に対する注油作業を行うにあたっては、
図10に示すように、第1接続管32の第1開閉弁34を開放し、第2接続管33の第2開閉弁35を閉塞した状態とし、その状態で、呼吸管18が真空ポンプに接続されて真空引きされる。この状態で、本体タンク13の注油口17から絶縁油Mが注油される。すると、上記第1の実施形態と同様に、本体タンク13内と放熱器14内で同等の油面を保ちながら油面上昇し、本体タンク13を満たした後、更に放熱器14内に注油されて放熱器14の上端まで至り、その後、第1接続管32を通してコンサベータ15に注油がなされる。コンサベータ15内の所定の油面高さまで注油されると、注油作業は終了する。
【0036】
この後、変圧器31としての稼動時においては、
図11に示すように、第1接続管32の第1開閉弁34が閉塞され、第2接続管33の第2開閉弁35が開放される。このような使い分けにより、本体タンク13の絶縁油Mの熱膨張、熱収縮が、第2接続管33を通してコンサベータ15との間で流通することにより吸収される。また、放熱器14としての機能が果たされる。そして、異常発生時に発生した分解ガスは、本体タンク13の上部から第2接続管23を通って、ブッフホルツ継電器36により検出されるようになる。
【0037】
このような第2の実施形態によれば、本体タンク13の側部に高さ方向に大型の放熱器14を有すると共に本体タンク13の上方にコンサベータ15を備えるものにあって、第1開閉弁34、第2開閉弁35の開閉の切替えにより、注油作業時は、上記した第1の実施形態と同様の使い方ができるので、注油作業を容易に行うことができる。そして、変圧器31の稼動時には、第1開閉弁34、第2開閉弁35の開閉の切替えにより、本体タンク13とコンサベータ15とを直接的に接続できるので、コンサベータ15により、放熱器14を介さずに絶縁油Mの熱膨張、収縮を吸収することができる。更に、本体タンク13の上部から第2接続管33を通ったガスをブッフホルツ継電器36により検出することができ、より迅速な対応が可能となる。
【0038】
尚、上記実施形態では、保護用継電器としてブッフホルツ継電器を採用するようにしたが、例えば他の油圧継電器やガス検出継電器等であっても良い。保護用継電器を設ける位置としても、様々な変更が可能である。また、上記実施形態では、絶縁油Mとして、鉱油を例にあげたが、鉱油以外の絶縁油全般や液体シリコーンなどであっても良い。変圧器の全体的な構成としても、例えば絶縁油Mを放熱器に対し強制循環させるための循環用ポンプや、強制冷却用のファン装置等を有するものであっても良い等、様々な変更が可能である。コンサベータとしても、隔膜密封方式のものであっても良い。放熱器の構成としても、様々な変更が可能である。その他、静止誘導機器としては、変圧器に限らず、例えばリアクトルに適用することもできる。
【0039】
以上のように、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
図面中、11、31は油入変圧器(油入静止誘導機器)、12は変圧器本体(誘導機器本体)、13は本体タンク、14は放熱器、15はコンサベータ、17は注油口、18は呼吸管、19は上部ヘッダ、20は下部ヘッダ、21は放熱パネル、22は上部導油管、23は下部導油管、25は接続管、26、36はブッフホルツ継電器(保護用継電器)、32は第1接続管(接続管)、33は第2接続管、34は第1開閉弁、35は第2開閉弁、Mは絶縁油を示す。