(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】基板保持部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2018124070
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 教夫
(72)【発明者】
【氏名】手島 貴志
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212374(JP,A)
【文献】特開2010-016176(JP,A)
【文献】特開2007-258668(JP,A)
【文献】特開平10-242255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCからなる基台と、前記基台の上面に柱状に形成され、頂面において基板を保持
し、少なくとも上部がβ-SiCからなる複数の凸部とを備える基板保持部材であって、
前記複数の凸部の任意の一の凸部から当該凸部と最近接する凸部までの間の配置間隔が2[mm]未満、
前記凸部に存在する気孔の平均径が4[μm]以下、
前記頂面の直径が0.08[mm]以下、かつ前記気孔の平均径の5倍以上、
前記基板を前記基台の上面に投影した投影領域の面積に対する前記投影領域内における前記複数の凸部の前記頂面の合計面積の比率が0.5%以下であることを特徴とする基板保持部材。
【請求項2】
前記頂面の直径が0.05[mm]以下であることを特徴とする請求項1に記載の基板保持部材。
【請求項3】
前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の直径d[mm]及び個数N[個]は、前記投影領域のうち最外周に位置する前記凸部が取り囲む領域内の任意の1[cm2]の単位面積の領域において、N≧0.01×d-2.5の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板保持部材。
【請求項4】
前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、
連続する格子の頂点に前記凸部が配置され、
前記上面には、複数の前記凸部及び少なくとも一の前記貫通孔が存在する領域が並進対称性を有して複数配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の基板保持部材。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の基板保持部材の製造方法であって、
前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、
前記基台及び前記複数の凸部となるSiCからなる母材を化学気相成長法により製造する工程と、前記母材の一部を取り除く加工を施すことにより、前記複数の凸部を形成する工程とを備えることを特徴とする基板保持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは高剛性及び高耐摩耗性を有する。そのため、従来から、半導体製造プロセスの各種処理時にウエハなどの基板を保持するための真空チャックなどの基材保持部材をSiCからなるものとすることがある。
【0003】
基材保持部材は、基台の上面に形成された多数の凸部(ピン)の頂面において基板を保持する。凸部の頂面にパーティクルが存在すると、パーティクルが基板に付着する。そのため、凸部の頂面にパーティクルが存在することの抑制を図るために、凸部の頂面の面積を小さくすることがあった。
【0004】
例えば、特許文献1には、突起(凸部)の頂面の面積を0.0005mm2、すなわち直径で換算すると0.079mmにすることが開示されている。また、特許文献2,3においては、ピン(凸部)を2段に形成し、実施例ではその頂面の直径を0.1mmとしている。
【0005】
また、特許文献4においては、実施例ではピン(凸部)の直径を0.05mmとしている。なお、特許文献4,5には、ピン(凸部)をCVD法によって形成されたSiCからなるものとすることにより、パーティクルの発生を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-242255号公報
【文献】国際特許公開公報2017/170738号
【文献】特開2017-212374号公報
【文献】特許第5063797号公報
【文献】特開2010-16176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、各種処理時における基板(シリコンウェハ)の局所的な平面度(ローカルフラットネス:LF)が重要視され、半導体の高精度化に伴いローカルフラットネスに対して一層の高い精度が要求されるようになった。さらに、近年、基板の薄化が進み、従来のSEMI規格で定められる厚さ0.775mmよりも薄い基板においては、基板保持部材により保持された基板の凸部(ピン)間での撓みが顕在化しローカルフラットネスの悪化を招いていた。基板の凸部間での撓みを抑制しローカルフラットネスを高めるには、凸部の配置間隔を小さくする必要があるが、凸部の配置間隔を小さくすると凸部の総数が増加するため、基板と基板保持部材の総接触面積の増加につながっていた。
【0008】
さらに、総接触面積の増加を抑制するために凸部の頂面の面積を小さくするだけでは、保持面積が減少すると共に、凸部に存在する気孔の存在によって凸部の強度が低下し、凸部の頂面が正規の形状を維持し難いので、基板に撓みが生じやすくなる一因となっていた。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、基板のパーティクル付着及び撓みの抑制を両立して良好に図ることが可能な基板保持部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板保持部材は、SiCからなる基台と、前記基台の上面に柱状に形成され、頂面において基板を保持し、少なくとも上部がβ-SiCからなる複数の凸部とを備える基板保持部材であって、前記複数の凸部の任意の一の凸部から当該凸部と最近接する凸部までの間の配置間隔が2[mm]未満、前記凸部に存在する気孔の平均径が4[μm]以下、前記頂面の直径が0.08[mm]以下、かつ前記気孔の平均径の5倍以上、前記基板を前記基台の上面に投影した投影領域の面積に対する前記投影領域内における前記複数の凸部の前記頂面の合計面積の比率が0.5%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の基板保持部材によれば、後述する実施例及び比較例から分かるように、パーティクルが基板に付着するおそれを抑制することが可能であると共に、薄い基板であっても撓みの抑制を図ることが可能となる。
【0012】
これは、凸部に存在する気孔の平均径が4[μm]以下と小さいのでパーティクルの発生のおそれが少なく、かつ、基台の頂面の直径が0.08[mm]以下と小さいと共に前記投影領域内における凸部の頂面の合計面積の比率が0.5%以下と小さいので、凸部と基板の摺動する面積が小さく、凸部から基板にパーティクルが移動するおそれが少ないので、基板にパーティクルが付着するおそれが抑制されるからである。また、凸部の配置間隔が2[mm]未満と小さいので、基板が撓み難く、かつ、凸部の頂面の直径が気孔の平均径の5倍以上と大きいので、凸部の強度が高く維持されるため、基板を保持する凸部の頂面に大きな欠損が存在しないので、基板を安定的に保持することができるので、薄い基板であっても撓みが抑制されるからである。
【0013】
本発明の基板保持部材において、前記頂面の直径が0.05[mm]以下であることが好ましい。
【0014】
この場合、さらに凸部から基板にパーティクルが移るおそれが少なくなるので、基板へのパーティクルの付着のより効果的な抑制を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の基板保持部材において、前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、前記貫通孔の直径d[mm]及び個数N[個]は、前記投影領域のうち最外周に位置する前記凸部が取り囲む領域内の任意の1[cm2]の単位面積の領域において、N≧0.01×d-2.5の関係を満たすことが好ましい。
【0016】
この場合、後述する実施例及び比較例から分かるように、基台の特定の部分における排気孔を介しての局所的な急激な排気によって基板が撓むことの抑制を図ることが可能となると同時に、基板が速やかに基台の凸部の頂面上に静定することによって基板の基台上での摺動が抑制され、基板との凸部との摺動による基板へのパーティクルの付着が抑制される。
【0017】
また、本発明の基板保持部材において、前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、連続する格子の頂点に前記凸部が配置され、前記上面には、複数の前記凸部及び少なくとも一の前記貫通孔が存在する領域が並進対称性を有して複数配置されていることが好ましい。
【0018】
この場合、貫通孔を凸部の群に対して均等に配置することができるので、貫通孔を介した排気によって、基板に局所的な撓みが発生することの抑制を図ることが可能となる。
【0019】
本発明の基板保持部材の製造方法は、上述した本発明の何れかに係る基板保持部材の製造方法であって、前記基台には前記上面に開口する複数の貫通孔が形成されており、前記基台及び前記複数の凸部となるSiCからなる母材を化学気相成長法により製造する工程と、前記母材の一部を取り除く加工を施すことにより、前記複数の凸部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の基板保持部材の製造方法によれば、上述した本発明の基板保持部材を簡易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る基板保持部材の模式上面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る基板保持部材の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る基板保持部材10について
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図1及び
図2は、基板保持部材10の構成を明確化するため、各構成要素はデフォルメされており、実際の比率を表すものではなく、個数も実際とは異なる。
【0023】
基板保持部材10は、SiC(炭化珪素)からなる基台11と、基台11の上面11aに柱状に形成され、頂面12aにおいてウエハなどの基板Wを保持するSiCからなる複数の凸部(ピン、突起部)12とを備えている。ただし、基台11は、例えば、円板状であるが、矩形、六角形等の多角形板状などであってもよい。
【0024】
そして、凸部12の頂面12aの直径は、0.08[mm]以下、より好ましくは、0.05[mm]以下である。このように凸部12の頂面12aの面積が狭いので、頂面12aにパーティクルが存在するおそれが少なくなるので、基板Wにパーティクルが付着することの抑制を図ることが可能となる。
【0025】
また、基板Wに対して基板Wを保持する凸部12の頂面12aの合計面積が大きいと、基板Wにパーティクルが付着するおそれが高まる。そこで、基板Wを基台11の上面11aに投影した投影領域の面積に対する投影領域内における複数の凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは、0.5%以下、より好ましくは、0.1%以下であることが好ましい。
【0026】
なお、基板Wを基台11の上面11aに投影した投影領域とは、上面視において、基板Wの占める領域と基台11の上面11aの占める領域とが重なり合う領域である。
【0027】
また、凸部12の根元部も頂面12aと同様に断面積を小さくすれば、凸部12が折損するおそれが高くなる。そこで、各凸部12は、基台11の上面11aから延在する根元部の断面積に対して、頂面12aの面積又は頂面12aを含む頂部の断面積が小さいものであることが好ましい。この場合、根元部と頂部とは段差を有して接続されているものであっても、滑らかに接続されているものであってもよい。
【0028】
さらに、凸部12に大きなボイドなどの気孔が存在する場合、パーティクルの発生が高まるので、好ましくない。そのため、凸部12に存在する気孔の平均径は、4[μm]以下、より好ましくは2.5[μm]以下であることが好ましい。
【0029】
気孔の平均径は、凸部12の断面を研磨し、研磨後の凸部12の断面を走査型電子顕微鏡を用いて2000倍~5000倍に拡大した視野の写真のうち任意の30μm四方の領域についてImage-Jなどの画像処理ソフトにより2値化して、全ての気孔の円相当径を算出して求める方法や、研磨後の凸部12の断面の任意の30μm四方の領域についてインターセプト法を用いて算出する方法を用いて測定することができる。
【0030】
また、気孔の大きさに対して頂面12aの大きさが相対的に小さいと頂面12aの欠けのために、基板Wを良好に保持することができない。そのため、頂面12aの直径は、気孔の平均径の5倍以上、より好ましくは20倍以上である。
【0031】
複数の凸部12は、基台11の上面11aにおいて、全体に亘って大略等間隔となるように、上面11a全面に亘って大略均等に配置されている。そして、複数の凸部12の任意の一の凸部12から当該凸部12と最近接する凸部12までの間の配置間隔は、0.5[mm]以上2[mm]未満、さらに好ましくは0.8[mm]以上1.7[mm]未満である。このように凸部12間の配置間隔が短いので、基板Wが薄い場合であっても、基板Wの撓みの抑制を図ることが可能となる。なお、凸部12間の配置間隔が0.5[mm]未満となると製作が困難になるおそれがある。
【0032】
なお、頂面12aの形状は、円形の他、三角形、矩形、六角形などの多角形、楕円形などの任意の形状であってもよく、凸部12によって頂面12aの形状が異なっていてもよい。そして、本願においては、凸部12間の配置間隔は、凸部12の頂面12aの重心位置の配置間隔を意味する。
【0033】
さらに、凸部12は、連続する格子の頂点に配置されていることが好ましい。格子は、例えば、矩形、特に好ましくは正方形の他、正三角形などの三角形、正六角形などの各頂点の位置に凸部12が位置するものである。これにより、凸部12を均等に配置することの簡易化が図られる。
【0034】
なお、基板保持部材10を真空チャックなどとして用いる場合、基台11には上下方向に貫通する貫通孔13が形成されている。この場合、貫通孔13が形成している箇所には凸部12は形成されない。
【0035】
そして、凸部12が格子の交点に配置されている場合、基台11の上面11aには、少なくとも一の貫通孔13が存在する領域が並進対称性を有して複数配置されていることが好ましい。これにより、貫通孔13を凸部12の群に対して均等に配置することができるので、貫通孔13を介した排気によって、基板Wが静置されるまでの揺動を抑え均一な保持を図ることが可能となる。
【0036】
さらに、基台11の特定の部分において、貫通孔13の個数Nが多過ぎる、又は、貫通孔13の大きさが大き過ぎる場合、この部分における局所的な急激な排気によって、基板Wが薄い場合、撓みが生じ易くなる。そこで、前記実施例及び比較例から分かるように、貫通孔13の直径d[mm]及び個数N[個]は、上記した投影領域のうち最外周に位置する凸部12が取り囲む領域内の任意の1[cm2]の単位面積の領域において、以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
N≧0.01×d-2.5 ・・・ (1)
【0037】
さらに、凸部12は、上述したように気孔が小さいほうが好ましく、また、高剛性であることが好ましい。そこで、凸部12は、α-SiCからなるものではなく、β-SiCからなるものである。これは、β-SiCは、α-SiCと比較すると緻密であって高強度であり、かつ耐摩耗性に優れるからである。このようなβ-SiCは、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によって形成することが可能である。
【0038】
このとき、ナノインデンテーション法を用いた試験方法であるISO 14577に準拠して測定されるヤング率が400[GPa]~480[GPa]、より好ましくは450[GPa]~480[GPa]であることが好ましい。また、凸部12のピッカース硬さは、22[GPa]~31[GPa](荷重0.5[kgf])、より好ましくは28[GPa]~31[GPa]であることが好ましい。気孔率は上述した気孔の平均径の測定方法と同様の測定方法を用いたときに、1%以下、より好ましくは0.5%以下であることが好ましい。なお、上記の物性を示すものであれば、凸部12の製法はCVD法に限定されない。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る基板保持部材10の製造方法について図面を参照して説明する。
【0040】
本製造方法は、
図3に示すように、基材11及び複数の凸部12となるSiCからなる母材(不図示)をCVD法により製造する母材形成工程STEP1と、母材の一部を取り除く加工を施すことにより、複数の凸部12を形成する凸部形成工程STEP2とを備える。
【0041】
母材形成工程STEP1においては、CVD法によって、基材11及び複数の凸部12を含む形状、例えば円板状の母材を形成する。CVD法は、熱CVD法、プラズマCVD法、スーパーグロース法、アルコールCVD法等の従来公知のCVD法の何れであってもよい。
【0042】
凸部形成工程STEP2においては、母材の上面を部分的に除去して上面よりも低い位置に基台11の上面11aを形成すると共に、この上面11aから突出する複数の凸部12を形成する。母材の上面を部分的に除去することにより、除去されずに残存した部分が凸部12となる。
【0043】
さらに、複数の凸部12の頂面12aを、上面11aから同じ高さ突出し、かつ面一となるように平坦に加工することが好ましい。この場合、平面研削機、マシニングセンタ等により研削加工したうえで、砥石を用いて研磨加工することが好ましい。また、砥石を用いて研磨加工した後、さらに、ラッピング加工機、ポリッシュ加工機等により研磨加工することも好ましい。
【0044】
なお、本発明の実施形態に係る基板保持部材10及びその製造方法は、上述されたものに限定されない。例えば、基台11及び凸部12が全て同じSiCからなるものについて説明したが、これに限定されない。例えば、基台11の下部がα-SiCからなり、基台11の上部及び凸部12がβ-SiCからなり、これらが接合されているものであってもよい。さらに、基台11及び凸部12の下部がα-SiCからなり、凸部12の頂面12aを含む上部がβ-SiCからなり、これらが接合されているものであってもよい。
【実施例】
【0045】
まず、母材を形成する母材形成工程STEP1を行った。具体的には、高純度等方性黒鉛材上に加熱成膜によって炭化珪素体を形成する熱CVD法によってβ-SiCからなる部材を作製した。原料ガスとして、トリクロロメチルシラン(CH3SiCl3:MTS)と水素ガスとの混合ガスを用いた。成膜後に黒鉛材を除去することにより部材を得た。そして、この部材を研削加工して、直径300mm、厚さ3mmの円板状の母材を得た。
【0046】
次に、円板状の母材に対して凸部12を形成する凸部形成工程STEP2を行った。具体的には、円板状の母材の上面を部分的に除去して上面よりも低い位置に基台11の上面11aを形成すると共に、この上面11aから突出する複数の凸部12を形成した。このとき、各凸部12の頂面12aを、上面11aから同じ高さ突出し、かつ面一となるように平面研削機を用いて平坦に加工した後に、砥石を用いて研磨加工した。
【0047】
凸部12は、
図1を参照して、正三角形の頂点に各凸部12の頂面12aの中心が位置するように形成した。凸部12の頂面12aの直径及び頂面12aの中心点の間隔は、表1から表3に示す通りであった。なお、図示しないが凸部12よりも低い高さであって真空吸着したときに基板Wと接触しない高さの環状の凸部が基台11の上面11aの外縁に設けられていてもよい。
【0048】
凸部12の気孔の平均径は1.2[μm]であり、4[μm]以下であった。なお、気孔径は、凸部12を切断し、切断面を研磨した研磨面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍に拡大した視野の画像を撮影し、2値化処理して、全ての気孔の円相当径を算出して求めた。
【0049】
さらに、穴開け機を用いて貫通穴13を形成した。貫通穴13は、
図1を参照して、凸部12の中央に位置するように形成した。貫通穴13の直径、間隔及び単位面積当たりの個数Nは、表1から表3に示す通りであった。これにより、凸部12及び貫通穴13が形成された基板保持部材10を得た。なお、単位面積当りの貫通穴13の個数Nは、基板Wを基台11の上面に投影した投影領域のうち最外周に位置する凸部12が取り囲む領域内の1[cm
2]当たりの個数である。
【0050】
そして、基板保持部材10の各凸部12の頂面12aに上に、シリコンウェハ直径300mm、厚さ0.3mmのシリコンウェハを基板Wとして載置した。そして、基台11の下面において各貫通穴13と連通するように、図示しない真空化装置を接続し、この真空化装置によって、各貫通穴13を介して基台11の上面11aと基板Wの間の空間を真空化した。これにより、基板保持部材10に基板Wが真空吸着された。
【0051】
この真空吸着状態で、基板Wの平坦度をレーザー干渉計(ZYGO社製GPI Hs)を用いて測定した。測定は基板Wのうち1辺10mmの正方形の領域のPV値を測定し、このPV値をローカルフラットネス値LFとした。測定結果は表1から表3に示す。
真空吸着終了後、基板保持部材10に基板Wを取り外し、基板Wに存在する0.1μm以上のパーティクルの数を計測した。計測は、トプコン社製ウエハ表面検査装置(WM-10)を用いて用いた。計測結果は表1から表3に示す。
【0052】
(実施例1~13)
実施例1~13は、表1に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.05[mm]以下、凸部12の間隔は2[mm]未満、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.1[%]以下であり、上記式(1)の関係を満たしていた。
【0053】
実施例1~13において、ローカルフラットネス値LFは0.005[μm]以下でありローカルフラットネスが良好であると共に、パーティクル数は100[個]でありパーティクルは少なく良好であった。
【0054】
(実施例14,15)
実施例14,15は、表1に示すように、凸部12の頂面12aの直径が0.04[mm]、凸部12の間隔が1[mm]以下、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sが0.1[%]以上0.25[%]以下であり、上記式(1)の関係を満たしていた。
【0055】
実施例14,15において、ローカルフラットネス値LFは0.001[μm]以下でありローカルフラットネスは良好であった。そして、パーティクル数は100[個]を超えており、実施例1~13と比較すると多かったが250[個]以下であり、パーティクルは少なく良好であった。
【0056】
(実施例16~24)
実施例16~24は、表2に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.05[mm]以下、凸部12の間隔は2[mm]未満、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.1[%]以下であるが、上記式(1)の関係を満たしていなかった。
【0057】
実施例16~24において、ローカルフラットネス値LFは0.005[μm]以下でありローカルフラットネスは良好であった。そして、パーティクル数は100[個]を超えており、実施例1~13と比較すると多かったが350[個]以下であり、パーティクルは少なく良好であった。
【0058】
(実施例25~28)
実施例25~28は、表2に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.05[mm]以上0.8[mm]以下、凸部12の間隔は2[mm]未満、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.1[%]以上0.2[%]以下であり、上記式(1)の関係を満たしていた。
【0059】
実施例25~28において、ローカルフラットネス値LFは0.005[μm]以下でありローカルフラットネスは良好であった。そして、パーティクル数は100[個]を超えており、実施例1~13と比較する多かったが250[個]以下であり、パーティクルは少なく良好であった。
【0060】
(実施例29,30)
実施例29,30は、表2に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.05[mm]以上0.8[mm]以下、凸部12の間隔は2[mm]未満、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.1[%]以上0.2[%]以下であり、上記式(1)の関係を満たしていなかった。
【0061】
実施例29,30において、ローカルフラットネス値LFは0.005[μm]以下でありローカルフラットネスは良好であった。そして、パーティクル数は100[個]を超えており、実施例1~13と比較すると多かったが350[個]以下であり、パーティクルは少なく良好であった。
【0062】
(比較例1~3)
比較例1~3は、表3に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.05[mm]以下、且つ、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.1[%]以下であるが、凸部12の間隔は2[mm]以上であった。
【0063】
比較例1~3において、パーティクル数は100[個]以下であり、パーティクルは少なく良好であった。しかし、ローカルフラットネス値LFは0.011[μm]以上でありローカルフラットネスが劣っていた。
【0064】
(比較例4~6)
比較例4~6は、表3に示すように、凸部12の頂面12aの直径は0.06[mm]以上0.08[mm]以下であり、凸部12の間隔は1[mm]以下であり、上記式(1)の関係を満たしていたが、凸部12の頂面12aの合計面積の比率Sは0.5[%]を超えていた。
【0065】
比較例4~6において、ローカルフラットネス値LFは0.001[μm]以下でありローカルフラットネスは良好であった。しかし。パーティクル数は500[個]以上であり、パーティクルが多く劣っていた。
【0066】
【0067】
【0068】
【符号の説明】
【0069】
10…基板保持部材、 11…基台、 11a…上面、 12…凸部、 12a…頂面、 13…貫通孔、 W…基板。