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特許71413042,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/10 20060101AFI20220914BHJP
   C07C 69/767 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C07C67/10
C07C69/767
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018194583
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063197
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼口 正基
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 久美子
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-045048(JP,A)
【文献】特開昭51-008212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下、溶媒中で2,6-ナフタレンジカルボン酸とハロゲン化アリルとを反応させて、式(1)
【化1】
で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルを製造する方法であって、ハロゲン化アリルを反応系内へ複数回に分けて添加する工程を含み、
ハロゲン化アリルを複数回に分けて反応系内へ添加する工程は、2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して2~10当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応させた後、さらに2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して0.3~5当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応せしめる工程である、方法。
【請求項2】
塩基が、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される一種以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに有機溶媒によるによる再結晶化工程を含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒はイソプロパノールである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル(以下、NDC-ALとも称する)は、耐熱性、電気特性および機械特性に優れる樹脂を製造するためのモノマーとして知られ、その樹脂に関して、例えばラミネート(特許文献1)やワニス(特許文献2)等の用途が提案されている。
【0003】
特許文献3には、スズ系触媒の存在下、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアルキルとアリルアルコールとの反応によるNDC-ALの製造方法が提案されている。しかしながら、不安定なアリルアルコールや、有毒なスズ系触媒を用いることから、実用的な製造方法として利用できるものではなく、また、収率および純度をさらに向上させる必要があった。
【0004】
特許文献4には、2,6-ナフタレンジカルボン酸と臭化アリルとの反応によるNDC-ALの製造方法が提案されており、さらにメタノール再結晶化による精製を実施した例が記載されている。しかしながら、収率が約70%程度と低く、また、得られるNDC-ALの詳細な純度は不明であったため、反応性および得られるNDC-ALについて、未だ検討が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭50-007885号公報
【文献】特開昭50-109264号公報
【文献】特開昭48-097833号公報
【文献】特開昭49-045048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高収率かつ高純度な2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルが得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塩基の存在下、溶媒中で2,6-ナフタレンジカルボン酸とハロゲン化アリルとを反応させて、式(1)
【化1】
で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルを製造する方法であって、ハロゲン化アリルを反応系内へ複数回に分けて添加する工程を含む方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によると、反応性が高く、高収率かつ高純度なNDC-ALを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法において、原料となる2,6-ナフタレンジカルボン酸は、市販のものや、当業者に知られた方法、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルを加水分解する方法によって製造したものを用いることができる。
【0010】
本発明の製造方法において、ハロゲン化アリルは式(2)で表され、具体的には、アリルブロマイド、アリルクロライド、アリルアイオダイドが挙げられる。中でも入手容易性および取扱い性に優れる点でアリルブロマイドが好ましい。
【化2】
(式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
【0011】
本発明の製造方法は、塩基の存在下で実施される。塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される一種以上が挙げられ、反応性に優れる点で炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムが好ましい。
【0012】
塩基の使用量としては、特に限定されないが、通常、原料である2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して0.1~10モル当量が好ましく、1.0~3.0モル当量がより好ましい。
【0013】
本発明の製造方法は、ハロゲン化アリルを反応系内へ複数回に分けて添加する工程を含み、特に、2~4回に分けて添加することが好ましい。この工程を含むことで、反応が定量的に進行し、原料の無駄が極めて少なくなるとともに、高収率かつ高純度なNDC-ALを得ることができる。
【0014】
ハロゲン化アリルを複数回に分けて添加する工程としては、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して2~10モル当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応させた後、さらに2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して0.3~5モル当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応せしめる工程が挙げられる。
【0015】
本発明において、ハロゲン化アリルを複数回に分けて添加する工程には、滴下による添加も含まれる。
【0016】
本発明の製造方法は、溶媒の存在下で実施される。溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ニトロベンゼン、二硫化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、ニトロメタン、アセトニトリルおよび軽油からなる群から選択される溶媒が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの溶媒の中でも、反応性に優れる点でDMF、DMA、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される一種または2種以上の組合せが好ましく、特にDMFが好ましい。
【0017】
溶媒の使用量は、原料である2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して通常0.5倍質量以上、好ましくは3~15倍質量、より好ましくは5~10倍質量である。
【0018】
2,6-ナフタレンジカルボン酸とハロゲン化アリルとの反応は、通常40~160℃で行われ、好ましくは60~140℃、より好ましくは70~120℃の低温度下で行うことができる。40℃より低温では、反応が進行し難い傾向があり、160℃より高温では、オートクレーブ等の特殊な装置が必要となる可能性がある。
【0019】
かかる反応により得られたNDC-ALは、さらに有機溶媒による再結晶化工程を経ることで、より高純度のものを得ることが可能である。
【0020】
再結晶化工程では、まず溶解工程において、前記反応工程で得られたNDC-ALを含む粗組成物を有機溶媒に溶解させる。NDC-ALを含む粗組成物とは、目的物であるNDC-AL以外に、反応原料や触媒および反応副生物などの不純物を含む組成物を意味する。不純物の含有量は反応方法によっても異なるが、粗組成物中において通常1~20質量%、好ましくは3~10質量%である。
【0021】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブチルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、o-シメン、m-シメン、p-シメン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)およびシクロオクタンからなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0022】
これらの中でも、安全性および経済性に優れる点で、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび1-ブタノールが好ましく、特に入手容易性および再結晶収率に優れることから2-プロパノールがより好ましい。
【0023】
再結晶化工程における有機溶媒の使用量は、有機溶媒の種類によっても異なるが、原料である2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して通常2~10倍質量であり、好ましくは3~9倍質量である。有機溶媒が2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して2倍質量を下回る場合、原料や触媒あるいは副生物などの不純物が結晶中に取り込まれてしまい高純度の結晶を得ることが困難になる傾向があり、10倍質量を上回る場合、NDC-ALの収量が著しく減少する傾向がある。
【0024】
溶解工程において、NDC-ALを含む粗組成物と有機溶媒の混合物の温度は、用いる有機溶媒の種類および混合比率によって異なるため特に限定されないが、好ましくは30℃~100℃、より好ましくは40℃~90℃、さらに好ましくは45℃~80℃である。
【0025】
粗組成物が溶解した溶液は次いで晶析工程に供される。
【0026】
晶析工程は、好ましくは5~30℃、より好ましくは5~25℃、さらに好ましくは10~20℃の温度下で攪拌しながら行われる。尚、晶析工程の前に不溶物をろ過して除去するのが好ましい。
【0027】
晶析温度が5℃を下回る場合、原料や触媒あるいは副生物などの不純物が結晶中に取り込まれてしまい、高純度の結晶を得ることが困難になる傾向がある。晶析温度が30℃を上回る場合、NDC-ALの収量が減少する傾向がある。
【0028】
晶析工程によって析出した結晶は、濾過等の常套手段により固液分離し、目的物であるNDC-ALを回収する。固液分離に際し、適宜有機溶媒または水を注いで結晶を洗浄するのが好ましい。洗浄に用いる有機溶媒または水は、NDC-ALに対し0.5~2倍質量使用するのが好ましい。
【0029】
固液分離によって回収された結晶は、常圧下において通風乾燥するか、減圧下で乾燥し、溶媒を留去することによって、高純度のNDC-ALを得ることができる。
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【実施例
【0031】
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルは以下の方法によって分析した。
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)>
装置: 日立Chroaster
カラム型番: L-Column ODS
液量: 1.0mL/分
溶媒比: HO(pH2.3)/CHOH=50/50(6分)→30分→10/90(24分)、グラジエント分析
波長: 242nm
カラム温度: 40℃
【0032】
[実施例1]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた300mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF151.2g(NDAに対して7倍質量)、アリルブロマイド36.3g(NDAに対して3モル当量)および炭酸ナトリウム18.1g(NDAに対して1.7モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、100℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。そこへ、さらにアリルブロマイド12.1g(NDAに対して1モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。尚、NDAの残存率が低い程、反応性が良いことを示す。
【0033】
[実施例2]
2度目のアリルブロマイドの添加量を6.1g(NDAに対して0.5モル当量)に変更した以外は実施例1と同様に反応および分析を実施した。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
炭酸ナトリウムの添加量を21.5g(NDAに対して2.0モル当量)に変更した以外は実施例2と同様に反応および分析を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた300mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF151.2g(NDAに対して7倍質量)、アリルブロマイド36.3g(NDAに対して3モル当量)および炭酸カリウム29.1g(NDAに対して2.1モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、100℃まで昇温し、同温度で5時間反応させた。そこへ、さらにアリルブロマイド12.1g(NDAに対して1モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。
【0036】
[実施例5]
炭酸カリウムの添加量を15.9g(NDAに対して1.5モル当量)に変更した以外は実施例4と同様に反応および分析を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例6]
500mLの4口フラスコを用いて、炭酸カリウムの添加量を29.1g(NDAに対して2.1モル当量)に変更し、DMFの添加量を216.0g(NDAに対して10倍質量)に変更した以外は実施例4と同様に反応および分析を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例7]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた500mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF216.0g(NDAに対して10倍質量)、アリルブロマイド36.3g(NDAに対して3モル当量)および炭酸カリウム29.1g(NDAに対して2.1モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、80℃まで昇温し、同温度で7時間反応させた。そこへ、さらにアリルブロマイド12.1g(NDAに対して1モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。
【0039】
[実施例8]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた500mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF216.0g(NDAに対して10倍質量)、アリルブロマイド36.3g(NDAに対して3モル当量)および炭酸カリウム29.1g(NDAに対して2.1モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、100℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。そこへ、さらにアリルブロマイド4.0g(NDAに対して0.33モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した。続いてアリルブロマイド4.0g(NDAに対して0.33モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した後、さらにアリルブロマイド4.0g(NDAに対して0.33モル当量)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。
【0040】
[実施例9](イソプロパノールを用いた再結晶化による精製)
実施例7で得られた反応液を室温まで冷却し、塩をろ過によって除去した。塩をDMF10.8g(NDAに対して0.5倍質量)で洗浄し、洗浄液とろ液を混合し、混合液中のDMFを10hPa・60℃の条件で留去した。そこへイソプロパノール86.4g(NDAに対して4倍質量)を加え、窒素気流下、60℃に昇温し、同温度で1.0時間撹拌した。その後、同温度にて熱時濾過し、得られた濾液を3時間かけて24℃までゆっくりと冷却し、固体を析出させた。析出した固体を濾別した後、10hPa・60℃の条件で乾燥し、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル25.2gを得た(収率85.0%)。得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルのHPLC分析値を表2に示す。
【0041】
[比較例1]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた500mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF216.0g(NDAに対して10倍質量)、アリルブロマイド48.4g(NDAに対して4モル当量)および炭酸カリウム29.1g(NDAに対して2.1モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、100℃まで昇温し、同温度で4時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。
【0042】
[比較例2]
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた500mLの4口フラスコに2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)21.6g、DMF216.0g(NDAに対して10倍質量)、アリルブロマイド96.8g(NDAに対して8モル当量)および炭酸カリウム29.1g(NDAに対して2.1モル当量)を加え、窒素気流下、室温で撹拌し溶解させた後、100℃まで昇温し、同温度で4時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、HPLCによってNDA残存率およびNDC-ALの生成率(生成した化合物中のNDC-ALの割合)を分析した。結果を表1に記す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
※N.D.は検出されなかったことを意味する。
【0045】
実施例1~7および比較例1に記載の通り、臭化アリルを複数回に分けて添加することにより反応性が大幅に改善することが理解される。また、実施例8に記載の通り、さらに有機溶媒による再結晶工程を含むことで高純度のNDC-ALを得ることが可能である。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕塩基の存在下、溶媒中で2,6-ナフタレンジカルボン酸とハロゲン化アリルとを反応させて、式(1)
[化1]
で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリルを製造する方法であって、ハロゲン化アリルを反応系内へ複数回に分けて添加する工程を含む、方法。
〔2〕塩基が、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムである、〔1〕に記載の方法。
〔3〕ハロゲン化アリルを複数回に分けて反応系内へ添加する工程が、2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して2~10当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応させた後、さらに2,6-ナフタレンジカルボン酸に対して0.3~5当量のハロゲン化アリルを添加して1~10時間反応せしめる工程である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される一種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕さらに有機溶媒によるによる再結晶化工程を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕有機溶媒はイソプロパノールである、〔5〕に記載の方法。