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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】発泡耐火塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220914BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220914BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20220914BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220914BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220914BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220914BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220914BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/40
C09D7/43
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
C09D163/00
C09D171/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018198283
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2019077865
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017204312
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 彰典
(72)【発明者】
【氏名】山本 真人
(72)【発明者】
【氏名】新宅 優貴
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508288(JP,A)
【文献】特表2014-509334(JP,A)
【文献】特開2008-138198(JP,A)
【文献】特開2017-039893(JP,A)
【文献】特開2013-018899(JP,A)
【文献】特開平03-237124(JP,A)
【文献】特開昭61-127728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/14
C09D 7/40
C09D 7/43
C09D 7/61
C09D 7/63
C09D 7/65
C09D 163/00
C09D 171/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性樹脂組成物(A)、発泡剤(B)及び炭化剤(C)を含む発泡耐火塗料であって、
架橋性樹脂組成物(A)が、3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物及び/又はその縮合物(A3)を含み、
3級アミノ基含有化合物(A1)が、3級アミノ基含有アクリル樹脂である、発泡耐火塗料。
【請求項2】
エポキシ基含有化合物(A2)が、エーテル結合を有する化合物である請求項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項3】
架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、
3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物(A3)の配合割合が、
3級アミノ基含有化合物(A1)が30~98質量部
エポキシ基含有化合物(A2)が1~50質量部
オルガノシリケート及び/又はその縮合物(A3)が1~50質量部の範囲内にある、請求項1又は2に記載の発泡耐火塗料。
【請求項4】
可塑剤(D)をさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項5】
有機系粘性調整剤(E)をさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項6】
繊維、無機系粘性調整剤及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の無機材料(F)をさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項7】
硬化触媒(G)をさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項8】
分散剤(H)をさらに含む請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
【請求項9】
基材面に、請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させる、塗装方法。
【請求項10】
基材面に、請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させ、保護塗膜を形成する、構造物の耐火被覆方法。
【請求項11】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を用いた保護塗膜を備えた耐火構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に発泡し膨張して断熱層を形成する発泡耐火塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の骨組を構成する鉄骨の材料には不燃建材が用いられているが、火災発生時の際の強烈な加熱状況下ではその強度が著しく低下し、建造物全体の倒壊に繋がる。このため、セメント系の無機バインダーにロックウール等の骨材を混合し、水と混練してペースト状とした耐火被覆材を該鉄骨の表面に吹き付け施工することによって保護し、鉄骨の急激な強度低下を防止することが広く行われている。
【0003】
しかしながら、このロックウール耐火被覆材は、鉄骨に対し25mm以上の厚付けを要する。このため、ロックウール耐火被覆材は工法上制約があるだけでなく、被覆面の凹凸が激しく、鉄骨自体のフォルムを活かした美観を要求される部位には不適当である。
【0004】
そこで、美観を要求される部位に適した耐火被覆材として、有機バインダーに発泡剤や炭素生成材などを混合した発泡耐火塗料が種々提案されている。
【0005】
発泡耐火塗料を用いて形成された塗膜は、平常時(非火災時)には保護塗膜として鉄骨表面を水等の外部刺激から保護し、そして火災時には、高熱により分解し不燃ガスを発生して発泡し、発泡層を形成する。この多孔質の発泡層が断熱層となり鉄骨の温度上昇と急激な強度低下を抑制すると考えられている。
【0006】
発泡耐火塗料として本出願人は特許文献1において、樹脂、発泡剤、炭素供給剤、無機粉末及び難燃剤を含む塗料であって、難燃剤として含臭素リン酸エステル及び/又はこの縮合物を用いることを特徴とする発泡耐火塗料を提案した。かかる塗料によれば、塗膜が高熱により発泡した場合に当該発泡層中に良好に炭化層を保持して断熱性を持続させることが可能である。
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の発泡耐火塗料は塗膜形成成分としてアクリル樹脂等の非架橋型樹脂を用いるものであり、常温での硬化性が十分ではないという問題がある。
【0008】
ところで、火災時の熱により形成される発泡層が鉄骨の温度上昇を抑制させるレベルまで達するためには、鉄骨に塗装する発泡耐火塗料による保護塗膜の膜厚を大きくする必要がある。このため、特許文献1に記載されているような硬化性に劣る塗料では、同じ塗料を複数回に分けて塗り重ね、塗装毎に乾燥を繰り返すという、塗り重ね塗装をしなければならず、塗装に要する合計の時間が例えば2週間程度かかる場合もあり、塗装作業性の改善が必要である。
【0009】
一方、架橋型樹脂を塗膜形成成分に用いる発泡型耐火塗料も種々提案されている。
【0010】
特許文献2には、ポリシロキサン鎖を含む樹脂、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、発泡剤及びチャー形成添加剤を含む熱膨張性被覆用組成物が開示されている。該文献に記載の組成物によれば、エポキシ及びアミンの架橋塗膜によって、平常時には構造物を保護し、火災時には組成物中に含まれるポリシロキサン鎖によって硬い発泡層が得られる。このため、ジェットファイヤーと呼ばれる激しいランクの火災においても発泡層による断熱性によって構造物の温度上昇を抑制することができるものである。
【0011】
特許文献3には、ポリスルフィド、エポキシ樹脂、アミン基またはアミド基含有化合物、ホスホネート、繊維、ポリシロキサンを含む耐熱性組成物が、耐ジェットファイヤー性及び耐発煙性に優れていることが記載されている。
【0012】
しかしながら特許文献2及び3記載の組成物は、ジェットファイヤーが想定される石油、ガス、化学プラント施設への適用を意図し、平常時の塗膜外観よりも発泡層の断熱性の向上を目的として設計されている。このため、塗装作業性が十分とはいえず、発泡層が硬い故に割れやすいという問題がある。
【文献】日本国特開平10-7947号公報
【文献】国際公開2010-054984号パンフレット
【文献】国際公開2014-019947号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、塗装作業性が良好で、硬化性に優れ、そして火災時には構造物の保護に適する発泡耐火塗料、塗装方法、構造物の耐火被覆方法、及び耐火構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記した課題に関して鋭意検討した結果、特定の樹脂組成物を含む架橋性樹脂組成物が発泡耐火塗料に十分適用できること、特に火災時の加熱により構造物を火炎から保護する発泡層に変化しうる保護塗膜が容易に形成し得ることを見出した。
【0015】
項1.架橋性樹脂組成物(A)、発泡剤(B)及び炭化剤(C)を含む発泡耐火塗料であって、架橋性樹脂組成物(A)が、3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物及び/又はその縮合物(A3)を含む、発泡耐火塗料。
項2.3級アミノ基含有化合物(A1)が、3級アミノ基含有アクリル樹脂である項1に記載の発泡耐火塗料。
項3.エポキシ基含有化合物(A2)が、エーテル結合を有する化合物である項1又は2に記載の発泡耐火塗料。
項4.架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、
3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物(A3)の配合割合が、
3級アミノ基含有化合物(A1)が30~98質量部
エポキシ基含有化合物(A2)が1~50質量部
オルガノシリケート及び/又はその縮合物(A3)が1~50質量部の範囲内にある、項1ないし3のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項5.可塑剤(D)をさらに含む項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項6.有機系粘性調整剤(E)をさらに含む項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項7.繊維、無機系粘性調整剤及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の無機材料(F)をさらに含む項1ないし6のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項8.硬化触媒(G)をさらに含む項1ないし7のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項9.分散剤(H)をさらに含む項1ないし8のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
項10.基材面に、項1ないし9のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させる、塗装方法。
項11.基材面に、項1ないし9のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させ、保護塗膜を形成する、構造物の耐火被覆方法。
項12.項1ないし9のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を用いた保護塗膜を備えた耐火構造物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡耐火塗料によれば、塗装作業性が良好である。このため塗装により保護塗膜を容易に形成させることができる。
【0017】
かかる保護塗膜は常温での硬化性に優れている。このため当該保護塗膜が設けられた構造物は、長期にわたって美観を維持することができる。
【0018】
また、本発明の発泡耐火塗料により形成された保護塗膜は、火災の状況下において膨張することで緻密で強度のある発泡層に変化する。このため、構造物基材の温度上昇を抑制させ、火災時における構造物の変形・崩壊を抑制するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の発泡耐火塗料は、架橋性樹脂組成物(A)、発泡剤(B)及び炭化剤(C)を含む組成物である。
【0020】
<架橋性樹脂組成物(A)>
本発明の発泡耐火塗料の塗膜形成成分となりうる架橋性樹脂組成物(A)は、3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物及び/又はその縮合物(A3)を含む。
以下、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基、あるいはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、そして「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸、あるいはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0021】
3級アミノ基含有化合物(A1)
本発明において3級アミノ基含有化合物(A1)としては、分子中に3級アミノ基を有する化合物であればよいが、例えば、アミノ基含有重合性不飽和モノマー及び該重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とするアミノ基含有アクリル樹脂を好適に用いることができる。好ましくは、アミノ基含有重合性不飽和モノマー及び該重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーの一方又は両方の少なくとも一部がアクリロイル基を含有する。より好ましくは、アミノ基含有重合性不飽和モノマー及び該重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーの両方の少なくとも一部がアクリロイル基を含有する。
【0022】
3級アミノ基含有化合物(A1)の製造方法は特に制限されるものではなく、アゾ化合物や過酸化物を開始剤に用いたラジカル重合法など定法により製造してもよいし、又は市販品等を使用することも可能である。
本明細書において重合性不飽和モノマーとは、ラジカル重合しうる不飽和基を有する化合物を意味する。ラジカル重合しうる不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0023】
アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0024】
本発明においては、塗装作業性、保護塗膜の硬化性、発泡層の状態の点で、アミノ基含有アクリル樹脂の製造に使用される全モノマー中、上記アミノ基含有重合性不飽和モノマーの共重合割合が0.2~25質量%、好ましくは0.5~20質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
一方、その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジエチルアンモニウムメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジエチルアンモニウムベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸トリメチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸トリエチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムメチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルアンモニウムエチルサルフェート塩、(メタ)アクリル酸トリメチルアミノエチルp-トルエンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸アミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート塩等の4級アンモニウム基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の含窒素重合性不飽和モノマー;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明において上記3級アミノ基含有化合物(A1)の重量平均分子量としては、1000~150000、好ましくは5000~50000の範囲内にあることが、組成物中に含まれる各成分との相溶性、耐火性、発泡層の状態などの点から好適である。
【0027】
本明細書において重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgelG-4000H×L」、「TSKgel G-3000H×L」、「TSKgelG-2500H×L」、「TSKgel G-2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0028】
エポキシ基含有化合物(A2)
本発明においてエポキシ基含有化合物(A2)としては分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を挙げることができる。その具体例としては例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン等、並びにそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0029】
特にエポキシ基含有化合物(A2)としては、分子中にエーテル結合、特にポリエーテル構造を有する化合物であることが好ましい。これによって、本発明組成物から形成される保護塗膜加熱時の発泡倍率が適度となり、強度があって緻密な発泡層が得られるという効果がある。
【0030】
このようなエーテル結合を有するエポキシ基含有化合物としては、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル等、並びにそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0031】
オルガノシリケート化合物及び/又はその縮合物(A3)
本発明において化合物(A3)としては、下記式で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物を挙げることができる。
(R1O)4Si
(式中、R1は同一または異なって、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基である)。
【0032】
化合物(A3)の具体例としては、たとえばテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ-n-プロピルシリケート、テトラ-i-プロピルシリケート、テトラ-n-ブチルシリケート、テトラ-i-ブチルシリケート、テトラ-t-ブチルシリケートなどの1種または2種以上のテトラアルキルシリケート類、該シリケート類から選択される1種または2種以上の部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0033】
本発明において、3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物(A3)の配合量は、硬化性と耐火性の点から、上記架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、
3級アミノ基含有化合物(A1)が、30~98質量部、特に45~85質量部
エポキシ基含有化合物(A2)が1~50質量部、特に5~30質量部
オルガノシリケート及び/又はその縮合物(A3)が、1~50質量部、特に5~30質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0034】
また、発泡耐火塗料の不揮発分中に占める架橋性樹脂組成物(A)の含有量は、耐火性と塗装作業性の観点から3~40質量%、好ましくは5~30質量%の範囲内が好ましい。
【0035】
尚、本明細書において不揮発分とは揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物としては常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。
不揮発分の量は、水、有機溶剤などの揮発成分が含まれる混合物・組成物等を105℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥して揮発成分を揮散させたときの加熱残分により求めることができる。
【0036】
<発泡剤(B)>
本発明の発泡耐火塗料において、発泡剤(B)は、硬化塗膜が火炎に曝されたときに分解し、発生したガスが硬化塗膜を発泡層へ変化させる成分と考えられる。
【0037】
発泡剤(B)としては、発泡耐火塗料の分野で公知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム(APP)、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸カリウム(例えば、トリポリリン酸カリウムなど)、リン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム及び硫酸ナトリウム等のナトリウム、カリウム又はアンモニウムのリン酸塩又は硫酸塩;メラミン;メラミンホルムアルデヒド、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、メラミンモノホスファート、ジメラミンホスファート、メラミンビホスファート、メラミンポリホスファート、メラミンピロホスファート、ジメラミンホスファート及びメラミンシアヌラート、ヘキサメトキシメチルメラミン等のメラミン誘導体;尿素;ジメチル尿素、ブチル化尿素、アルキル化尿素、ベンゾグアミン、グリコールウリル型化合物、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン型化合物、およびグアニル尿素等の尿素誘導体;グリシン、アミンリン酸塩(例えば、ポリリン酸アンモニウム)、アゾジカルボンアミド、4,4オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p-トルエンヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、5-フェニルテトラゾール、ジアゾアミノベンゼン、膨張性黒鉛、スルファミン酸、タングスタナート塩、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラート等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記発泡剤(B)の配合量としては、上記架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、100~1000質量部、特に150~800質量部の範囲内が好ましい。
【0039】
<炭化剤(C)>
本発明の発泡耐火塗料における炭化剤(C)は、硬化塗膜が火炎に曝され、発泡層へ変化せしめる際に、前記発泡剤(B)と反応して炭化層を形成し、発泡層の断熱性を高めると考えられる成分である。かかる炭化剤(C)としては、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロース粉末、炭化水素樹脂、クロロパラフィン等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
上記炭化剤(C)の配合量としては、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、20~300質量部、特に40~250質量部の範囲内が好ましい。
【0041】
<可塑剤(D)>
本発明の発泡耐火塗料は可塑剤(D)を含むことができる。可塑剤(D)を含むことによって、加熱時に生成する発泡層の強度を保つだけでなく、塗料の塗装作業性を向上せしめ、発泡耐火塗料塗装工程の省工程化に役立つ。
【0042】
可塑剤(D)としては、塗料分野で塗膜の柔軟性を高める目的で添加される公知のものを制限なく使用することができ、具体的には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルイソフタレート、1、2、3、6-テトラヒドロフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジー2-エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジエチルシクロヘキサンジカルボキシレート、及びジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートなどのシクロヘキサンジカルボキシレート等の脂肪酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、イソデシルジフェニルホフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物、これらを各種置換基で変性させた化合物、各種の縮合タイプのリン酸エステル系可塑剤等;が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
特に上記可塑剤(D)としてはリン酸エステル系可塑剤、特にアリール基を有機基に持つ芳香族リン酸エステル系可塑剤が上記架橋性樹脂組成物(A)との相溶性に優れ均一な硬化塗膜を形成できると共に、加熱時には均一な発泡層を形成させることができ、適している。
【0044】
可塑剤(D)の含有量としては、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、1~300質量部、特に35~250質量部の範囲内が好ましい。
【0045】
<有機系粘性調整剤(E)>
本発明の発泡耐火塗料は、耐タレ性などの塗装作業性の観点から有機系粘性調整剤(E)を含むことが好ましい。有機系粘性調整剤(E)としては塗料分野で用いられる公知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、アクリル系粘性調整剤、ポリエチレン系粘性調整剤、ポリアマイド系粘性調整剤、ポリエーテルおよびそのウレタン変性物等のポリエーテル系粘性調整剤、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびその変性物等のセルロース系粘性調整剤などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。とりわけ本発泡耐火塗料が短時間で厚膜に塗装が可能であり、塗装後の外観に優れている点から有機系粘性調整剤(E)としてアマイド系粘性調整剤が適している。
【0046】
前記アマイド系粘性調整剤としては、分子中に-NH-CO-結合をもつ化合物であり、例えば脂肪酸と脂肪族アミンおよび/または脂環式アミンとの反応物、オリゴマー、又はこれらの変性物、混合物を有効成分とするものが挙げられる。
【0047】
具体例としては、例えばラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸モノアマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸モノアマイド、N-ラウリルラウリン酸アマイド、N-ステアリルステアリン酸アマイドなどの置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイドなどのメチロールアマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸ビスアマイド、m-キシリレンビスステアリン酸アマイドなどの芳香族ビスアマイド、脂肪酸アマイドのエチレンオキシド付加体、脂肪酸エステルアマイド、脂肪酸エタノールアマイド、N-ブチル-N’-ステアリル尿素などの置換尿素等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
市販品として入手可能なアマイド系粘性調整剤としては、「DISPARLON 6900-20X」、「DISPARLON 6900-10X」、「DISPARLON 603-20X」、「DISPARLON A603-10X」、「DISPARLON A670-20M」、「DISPARLON 6810-20X」、「DISPARLON 6850-20X」、「DISPARLON 6820-20M」、「DISPARLON 6820-10M」、「DISPARLON FS-6010」、「DISPARLON PFA-131」、「DISPARLON PFA-231」、「DISPARLON F-9020」、「DISPARLON F-9030」、「DISPARLON F-9040」、「DISPARLON F-9050」、「DISPARLON NS-5010」、「DISPALON NS5025」、「DISPARLON NS-5210」、「DISPARLON NS-5310」(以上、商品名、楠本化成社製)、「ターレン7200-20」、「ターレン7500-20」等のターレンシリーズ(商品名、共栄化学株式会社)、「BYK-405」(商品名、BYKケミ-社)、「A-S-A T-75F」(商品名、伊藤製油社)等を挙げることができる。
【0049】
本発明の発泡耐火塗料が有機系粘性調整剤(E)を含有する場合、該有機系粘性調整剤(E)の不揮発分含有量として、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として好ましくは0.1~50質量部、特に好ましくは0.5~25質量部の範囲内である。
【0050】
<無機材料(F)>
本発明の発泡耐火塗料は、耐火性、発泡層の状態などの観点から、繊維、無機系粘性調整剤及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の無機材料(F)を含有することが好ましい。
前記繊維としては、銅又は銅合金、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコンなどの金属単体又は合金形態の繊維や、鋳鉄繊維などの金属を主成分とする繊維等の金属繊維;セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、シリケート繊維、ウォラストナイト等の無機繊維;アラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、フェノール樹脂繊維等の有機繊維;耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、活性炭繊維等の炭素系繊維;これら2種以上の変性物等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記鉱物繊維としては、SiO2、Al23、CaO、MgO、FeO、Na2Oなどが含まれるもの、又はこれら化合物が1種又は2種以上含有されるものを用いることができ、好ましくはAl元素を含む。鉱物繊維の市販品としては、例えばLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズなどが挙げられる。
【0052】
上記繊維として鉱物繊維を使用する場合、その平均繊維長としては好ましくは0.1~4mm、より好ましくは0.3~1mmの範囲内にある。ここで、平均繊維長とは、繊維を無作為に50個選択し、光学顕微鏡で繊維長を測定し、その平均値を求めたものとする。
【0053】
また繊維として炭素系繊維を使用する場合、その平均繊維長としては好ましくは3~12mm、より好ましくは4~10mmの範囲内にある。
【0054】
本発明の発泡耐火塗料が繊維を含有する場合、その含有量としては、耐火性と発泡層の状態などの観点から、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは1~70質量部の範囲内である。
【0055】
また、無機系粘性調整剤としては、例えば、ベントナイト、膨潤性シリカ、疎水性シリカ、モンモリロナイト、サーペンチン、バーミキュライト、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトを含む)、セピオライトなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらは天然品、合成品、有機物等による加工処理品のいずれであってもよい。
【0056】
本発明の発泡耐火塗料が無機系粘性調整剤を含有する場合、その含有量としては、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは0.01~70質量部、特に好ましくは1~40質量部の範囲内である。
【0057】
また、無機顔料としては、特に制限されるものではないが、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄等の無機着色顔料;タルク、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)等の体質顔料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0058】
無機着色顔料の配合量としては、発泡層の強度の点から、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは10~300質量部、特に好ましくは40~250質量部の範囲内である。
【0059】
体質顔料の配合量としては、発泡層の強度及び発泡層の状態などの点から、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは1~50質量部の範囲内である。
【0060】
本発明の発泡耐火塗料が無機材料(F)を含有する場合、その含有量としては、耐火性と発泡層の状態などの観点から、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは1~500質量部、特に好ましくは50~400質量部の範囲内である。
【0061】
<硬化触媒(G)>
本発明の発泡耐火塗料は、常温での硬化性の点から硬化触媒(G)を含むことができる。かかる硬化触媒(G)としては、アルミニウム化合物、錫化合物、チタン化合物、鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、ニッケル化合物、ビスマス化合物、銅化合物、亜鉛化合物、バリウム化合物などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、アルミニウムトリ-tert-ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロポニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、オレイルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ-sec-ブチレート、メチルアセトアセテート-sec-ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)アルミニウム・モノ-tert-ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩;等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
錫化合物としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ビス(2-エチルヘキシルマレ-ト)、ジブチル錫ジオクタノエ-ト、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレ-ト、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ-トとの縮合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナ-ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ-ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ-ト)、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキシルマレ-ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ-ト)、スタナスオクトエ-ト、ステアリン酸錫、ジ-n-ブチル錫ラウレ-トオキサイド、ジブチル錫ビスイソノニル-3-メルカプトプロピオネ-ト、ジオクチル錫ビスイソノニル-3-メルカプトプロピオネ-ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル-3-メルカプトプロピオネ-ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ-ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ-ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ-ト、ジオクチル酸錫、ジステアリン酸錫等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
チタン化合物としては、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシドなどのチタンアルコキシドやチタンアセチルアセトネート、チタン-2-エチルヘキサネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
鉄化合物としては、鉄(II)または(III)のアセテート、アセチルアセトネート、2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
マンガン化合物としては、マンガン(II)アセテート、マンガン(II)アセチルアセテート、マンガン(II)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
コバルト化合物としては、コバルト(II)アセテート、コバルト(II)アセチルアセテート、コバルト(II)ベンゾイルアセトナート、コバルト(II)-2-エチルヘキサネート、コバルトナフタネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム(IV)プロポキシド、ジルコニウム(IV)アセテート、ジルコニウム(IV)アセチルアセテート、ジルコニウム(IV)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
ニッケル化合物としては、ニッケル(II)プロポキシド、ニッケル(II)ステアレート、ニッケル(II)アセテート、ニッケル(II)アセチルアセテート、ニッケル(II)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
ビスマス化合物としては、ビスマス(III)ネオデカネート、ビスマス(III)アセテート、ビスマス(II)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
銅化合物としては、銅(II)アセチルアセテート、銅(II)ブチルフタレート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
亜鉛化合物としては、亜鉛(II)アセテート、亜鉛(II)アセチルアセテート、亜鉛(II)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
バリウム化合物としては、バリウム(II)アセテート、バリウム(II)アセチルアセテート、バリウム(II)-2-エチルヘキサネート等のうちの1種または2種以上が挙げられる。
【0062】
硬化触媒(G)の配合量としては、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは0.01~50質量部、特に好ましくは1~30質量部の範囲内である。
【0063】
また、本発明においては、上記硬化触媒(G)は、アルミニウム化合物と錫系化合物を併用して用いることが常温硬化性の点から適している。この場合におけるアルミニウム化合物及び錫化合物の使用割合としては、アルミニウム化合物/錫化合物質量比で95/5~10/90、好ましくは90/10~50/50の範囲内であり、さらに好ましくはアルミニウム化合物/錫化合物質量比でアルミニウム化合物の割合が50より高い。
【0064】
<分散剤(H)>
また、本発明の発泡耐火塗料組成物は分散剤を含有することができる。作用機構は定かではないが、分散剤を含むことによって、塗料の塗装作業性が向上し、塗装に要する時間を削減でき、且つ加熱膨張後の発泡層が十分な耐火性を発揮する効果がある。
【0065】
このような分散剤としては上述した顔料分、繊維等の粉体を液体中で安定に分散させることができればノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤等、塗料分野で公知の分散剤を使用することができるが、中でも両性分散剤の使用が適している。
【0066】
両性分散剤としては、アニオン性基と前記カチオン性基を共に含有する分散剤であり、例えば酸価が5~300、アミン価が5~300の分散剤を挙げることができる。
【0067】
ここでアミン価とは、分散剤不揮発分1gを中和するのに必要なHClに当量のKOHのmg数を表す。また酸価とは、分散剤不揮発分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0068】
両性分散剤の市販品としては、「Disperbyk-142」(アミン価=43、酸価=46、ビックケミー(BYK)社製)、「Disperbyk-145」(アミン価=71、酸価=76、ビックケミー(BYK)社製)、「Disperbyk-2001」(アミン価=19、酸価=29、ビックケミー(BYK)社製)、「Disperbyk-2020」(アミン価=38、酸価=35、ビックケミー(BYK)社製)、「Disperbyk-9076」(アミン価=44、酸価=38、ビックケミー(BYK)社製)、「ソルスパース24000」(アミン価=42、酸価=25、ルーブリゾール(株)社製)等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0069】
上記分散剤(H)を使用する場合、その配合量としては、塗装作業性と膨張後の発泡層の強度の観点から、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として好ましくは0.1~25質量部、特に好ましくは0.3~15質量部の範囲内である。
【0070】
本発明の発泡耐火塗料は、上記以外に必要に応じて、無機顔料以外の顔料、有機溶剤、表面調整剤、消泡剤、難燃剤等の塗料用添加剤を含ませることができる。
【0071】
これらのうち難燃剤としては、例えば、ホウ素系難燃剤、無機系難燃剤等、塗料分野で公知の難燃剤を制限なく使用することができる。
【0072】
ホウ素系難燃剤としては、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、窒素化ホウ素等が挙げられ、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムカーボネート等が挙げられる。これら難燃剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
上記難燃剤を使用する場合においてその配合量としては、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは1~50質量部の範囲内である。
【0074】
本発明の発泡耐火塗料の塗料形態としては、本発明範囲内にある限り、材料の種類に応じて単成分系塗料もしくは多成分系塗料かを適宜選択することができる。
本発明の発泡耐火塗料は、基材又は構造物に耐火性を与えるために使用することができる。
基材としては、鉄骨、アルミニウム、亜鉛鉄板等の金属だけでなく、壁紙、合板、木材、無機質ボード、コンクリート、モルタル、FRP、プラスチック類、紙、布、繊維、合成樹脂、ゴム、シリコン、電線ケーブル等にも用いることができる。構造物としては、地上構造物、海洋構造物等が挙げられ、特に好適な構造物としては建築基準法第21条及び第27条に規定される建物等が挙げられる。その具体例の一部としては、ビル、学校、病院、ホテル、映画館、店舗、倉庫、空港等が挙げられる。
【0075】
本発明の発泡耐火塗料は塗装作業性が良好であり、所望の膜厚に至るまでに塗装時に要する時間と労力を減らすことができる。このため塗装により保護塗膜を容易に形成させることができる。
また、かかる保護塗膜は常温での硬化性に優れている。このため当該保護塗膜が設けられた構造物は、長期にわたって美観を維持することができる。
また、かかる保護塗膜は火災の状況下において膨張することで、緻密で強度のある発泡層に変化する。このため、構造物基材の温度上昇を抑制させ、火災時における構造物の変形・崩壊を抑制するのに役立つ。さらにはかかる保護塗膜は、構造物を火炎による倒壊から保護することができる。
【0076】
<被覆方法>
本発明は、基材面に、上記発泡耐火塗料を塗装し乾燥させ、保護塗膜を形成する、構造物の耐火被覆方法を提供するものである。機材と構造物については上記に説明した通りである。
【0077】
既存構造物の鉄骨に適用する場合は、錆除去等の下地処理をした後、必要に応じて下塗り塗料を塗装した後に、本発明発泡耐火塗料を塗装してもよい。
【0078】
塗装方法としては特に限定されず、刷毛、コテ、ローラ、スプレー等の一般の塗装方法で簡単に塗装することができ、平滑塗装だけでなく、厚膜で凹凸のあるパターンを形成することが可能である。これらの塗装方法は、基材の使用目的に応じて適宜選択される。
【0079】
乾燥条件としては、常温乾燥で十分に乾燥することができるが必要に応じて強制乾燥、加熱乾燥を行ってもよい。
【0080】
基材面に設けられる保護塗膜の乾燥平均膜厚としては特に限定されないが、1~10mm、3~6mmの範囲内が耐火性と塗装作業性の観点から好ましい。
【0081】
本発明において、保護塗膜の乾燥平均膜厚は、塗装量中の不揮発分を算出し、塗装面積で除することによって求めるものとする。
【0082】
本発明の発泡耐火塗料は、乾燥性に優れているために1回塗装が可能であるが、必要に応じて複数回に分けて塗装してもよい。
【0083】
形成される保護塗膜面には必要に応じて種々の中塗り塗料、上塗り塗料を塗装することができる。
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
(1)架橋性樹脂組成物(A)、発泡剤(B)及び炭化剤(C)を含む発泡耐火塗料であって、
架橋性樹脂組成物(A)が、3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物及び/又はその縮合物(A3)を含む、発泡耐火塗料。
(2)3級アミノ基含有化合物(A1)が、3級アミノ基含有アクリル樹脂である(1)に記載の発泡耐火塗料。
【0084】
(3)3級アミノ基含有化合物(A1)が、アミノ基含有重合性不飽和モノマー及び該重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とするアミノ基含有アクリル樹脂であり、アミノ基含有重合性不飽和モノマー及び該重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーの一方又は両方の少なくとも一部がアクリロイル基を含有する(1)又は(2)に記載の発泡耐火塗料。
(4)前記3級アミノ基含有アクリル樹脂(A1)を構成するモノマー中のアミノ基含有重合性不飽和モノマーの割合が0.2~25質量%である(2)又は(3)に記載の発泡耐火塗料。
【0085】
(5)エポキシ基含有化合物(A2)が、エーテル結合を有する化合物である(1)~(3)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(6)前記エーテル結合を有する化合物が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、またはそれらの組み合わせである(5)に記載の発泡耐火塗料。
(7)前記化合物(A3)が、下記式で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物である(1)~(6)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(R1O)4Si
(式中、R1は同一または異なって、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基である)
【0086】
(8)架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、
3級アミノ基含有化合物(A1)、エポキシ基含有化合物(A2)、並びにオルガノシリケート化合物(A3)の配合割合が、
3級アミノ基含有化合物(A1)が30~98質量部
エポキシ基含有化合物(A2)が1~50質量部
オルガノシリケート及び/又はその縮合物(A3)が1~50質量部の範囲内にある、(1)~(7)に記載の発泡耐火塗料。
(9)可塑剤(D)をさらに含む(1)~(7)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(10)可塑剤(D)が脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、またはこれらの組み合わせを含む(9)に記載の発泡耐火塗料。
【0087】
(11)可塑剤(D)の含有量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、1~300質量部である(9)又は(10)記載の発泡耐火塗料。
(12)有機系粘性調整剤(E)をさらに含む(1)~(11)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(13)有機系粘性調整剤(E)がアマイド系粘性調整剤を含む(12)に記載の発泡耐火塗料。
(14)有機系粘性調整剤(E)の含有量が、その不揮発分含有量として、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として0.1~50質量部である(12)又は(13)に記載の発泡耐火塗料。
【0088】
(15)繊維、無機系粘性調整剤及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の無機材料(F)をさらに含む(1)~(14)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(16)無機材料(F)が繊維を含有し、その含有量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、0.1~100質量部の範囲内である(15)に記載の発泡耐火塗料。
(17)無機材料(F)が無機系粘性調整剤を含み、その含有量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、0.01~70質量部である(15)に記載の発泡耐火塗料。
(18)無機材料(F)が無機着色顔料を含み、無機着色顔料の配合量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、10~300質量部である(15)に記載の発泡耐火塗料。
(19)無機材料(F)が体質顔料を含み、体質顔料の配合量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、0.1~100質量部である(15)に記載の発泡耐火塗料。
【0089】
(20)無機材料(F)の含有量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、1~500質量部である(15)~(19)のいずれかに記載の発泡耐火塗料。
(21)硬化触媒(G)をさらに含む(1)~(20)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(22)硬化触媒(G)がアルミニウム化合物、錫化合物、チタン化合物、鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、ニッケル化合物、ビスマス化合物、銅化合物、亜鉛化合物及びバリウム化合物のうちの1種または2種以上である(21)に記載の発泡耐火塗料。
(23)硬化触媒(G)の配合量は、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として、0.01~50質量部である(21)又は(22)に記載の発泡耐火塗料。
【0090】
(24)分散剤(H)をさらに含む(1)~(23)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料。
(25)分散剤(H)が両性分散剤である(24)に記載の発泡耐火塗料。
(26)分散剤(H)の配合量が、架橋性樹脂組成物(A)100質量部を基準として0.1~25質量部である(24)又は(25)に記載の発泡耐火塗料。
(27)基材面に、(1)~(26)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させる、塗装方法。
【0091】
(28)基材面に、(1)~(26)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を塗装し乾燥させ、保護塗膜を形成する、構造物の耐火被覆方法。
(29)基材が鉄骨、アルミニウム、亜鉛鉄板等の金属だけでなく、壁紙、合板、木材、無機質ボード、コンクリート、モルタル、FRP、プラスチック類、紙、布、繊維、合成樹脂、ゴム、シリコン、又は電線ケーブルである(27)又は(28)に記載の方法。
(30)(1)~(26)のいずれか1項に記載の発泡耐火塗料を用いた保護塗膜を備えた耐火構造物。
(31)前記構造物がビル、学校、病院、ホテル、映画館、店舗、倉庫、空港である(30)に記載の耐火構造物。
【実施例
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここで、『部』および『%』はそれぞれ『質量部』および『質量%』を意味する。
【0093】
<発泡耐火塗料の製造>
実施例1~6及び比較例1~3
下記表に示す組成となるように各成分を配合し、プラネタリーミキサを用いて均一になるまで攪拌混合し、発泡耐火塗料組成物(X-1)~(X-9)を製造した。尚、表中の数値は不揮発分の表示である。
【0094】
【表1】
【0095】
(注1)アクリル樹脂(A1-1):イソブチルメタクリレート/n-ブチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート(質量比)=45/13/29/10/3共重合体、アミン当量3100、重量平均分子量35000、
(注2)アクリル樹脂(A4):イソブチルメタクリレート/n-ブチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート(質量比)=45/23/29/3共重合体、重量平均分子量35000、
(注3)アルキルシリケート:テトラメトキシシランの低縮合物、Siの平均個数4、数平均分子量470、
(注4)レオフォス65:商品名、味の素ファインケミカル社製、リン酸トリアリールイソプロピル化物、
(注5)ディスパロンNS5025:商品名、有効成分25%、楠本化成社製、酸化ポリオレフィン変性脂肪酸ポリアマイド、
(注6)ミネラルファイバー:平均繊維長さ500μm、
(注7)カーボンファイバー:平均繊維長さ6mm、
(注8)「プレンアクトALM」:商品名、味の素ファインテクノ社製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、
(注9)DISPER-BYK145:商品名、BYK社製、両性分散剤、アミン価=71、酸価=76。
【0096】
<評価試験>
(1)耐タレ性
鋼材の全面に、各発泡耐火塗料を乾燥膜厚が4mmとなるようにコテ塗りした直後に垂直に立てて23℃、50%RHの条件で1時間放置し、タレの有無を下記基準で評価した。
A:タレが全く認められない、
B:タレが非常にわずかに認められる、
C:タレがわずかに認められる、
D:タレが顕著に認められる。
【0097】
(2)硬化性
鋼材の全面に、各発泡耐火塗料を乾燥膜厚が4mmとなるようにコテ塗りし、23℃、50%RHの条件で1時間放置し、塗膜表面を指で触ったときに、ベタツキ感を下記基準にて評価した。
A:ベトツキ感まったくなし、
B:わずかにベツツキ感があるが手から塗膜がすぐに離れる、
C:ベトツキ感があきらかにある、
D:塗膜が破れる。
【0098】
(3)500℃到達時間
上記硬化性評価で作成した各試験体を、火炎によりISO834で定められた昇温曲線となるように経過時間に対して所定温度に熱せられる炉に入れ、発泡層を形成せしめ、耐火試験に供した。表中の数値は試験体温度が500℃になるまでの時間である。表中、数値が大きいほど良好であり、「-」は試験体が試験中に熱により溶解したため測定不可能であり、不良であることを意味する。
【0099】
(4)発泡層の状態
上記耐火試験後の発泡層が形成された試験体を中央部で切断し、発泡層の表面、および断面を目視で観察し、下記基準で目視評価した。表中、「-」は評価不可能であり不良であることを意味する。
A:緻密で均一な発泡層が形成された、
B:ごくわずかに不均一な部分や空洞が認められる、
C:鋼材に達しない程度の欠陥が認められる、
D:発泡層の脱落や鋼材に達する欠陥が認められる。