(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、コンピュータープログラム及び情報システム
(51)【国際特許分類】
G01F 23/2962 20220101AFI20220914BHJP
【FI】
G01F23/2962
(21)【出願番号】P 2018207481
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501220570
【氏名又は名称】アクセリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 在衣
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】新関 智明
(72)【発明者】
【氏名】石塚 暁弓
(72)【発明者】
【氏名】長田 直之
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-171627(JP,A)
【文献】特開平05-256680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0148845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/296-23/2965
A01F 25/14
A01F 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定部と、
を備え
、
前記取得部は、前記容器の上蓋に取り付けられたジャイロセンサーの測定値をさらに取得し、
前記ジャイロセンサーの測定値に基づいて、前記上蓋が開かれたか閉じられたかを推定する開閉推定部と、
前記残量推定部によって推定された前記物体の量を示す情報と、前記開閉推定部によって推定された情報と、を他の装置に送信する情報提供部と、
をさらに備える推定装置。
【請求項2】
前記取得部は、略同一のタイミングで測定された複数の測定値を取得し、
前記複数の測定値に基づいて前記物体の蓄積形状を推定する、蓄積形状推定部をさらに備える、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記情報提供部は、前記蓄積形状推定部の推定結果に基づいて、前記物体が前記容器の内側でどのような形状で蓄積されているかを示す画像を選択し、選択された画像と、前記容器の形状の概略を示す画像と
、を一つの画像として示し、
前記残量推定部によって推定された前記容器内に格納されている前記物体の量を示す値を他の画像として示す画面のデータを生成
して、前記他の装置に送信する、請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
コンピューターが、所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得ステップと、
コンピューターが、前記取得ステップにおいて取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定ステップと、
を有
し、
前記取得ステップでは、コンピューターが前記容器の上蓋に取り付けられたジャイロセンサーの測定値をさらに取得し、
コンピューターが、前記ジャイロセンサーの測定値に基づいて、前記上蓋が開かれたか閉じられたかを推定する開閉推定ステップと、
コンピューターが、前記残量推定ステップにおいて推定された前記物体の量を示す情報と、前記開閉推定ステップにおいて推定された情報と、を他の装置に送信する情報提供ステップと、
をさらに有する推定方法。
【請求項5】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の推定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【請求項6】
所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーと、推定装置と、を含む情報システムであって、
前記推定装置は、
前記超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定部と、を備え
、
前記取得部は、前記容器の上蓋に取り付けられたジャイロセンサーの測定値をさらに取得し、
前記ジャイロセンサーの測定値に基づいて、前記上蓋が開かれたか閉じられたかを推定する開閉推定部と、
前記残量推定部によって推定された前記物体の量を示す情報と、前記開閉推定部によって推定された情報と、を他の装置に送信する情報提供部と、
をさらに備える
、情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の物体の状態を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業では、畜産飼料のコストが生産コスト全体の約6割を占める。それにもかかわらず、畜産飼料の価格は不安定な相場変動の影響を受けやすい。そのため、畜産飼料の適正な管理は畜産業界にとって喫緊の課題である。畜産飼料の適正な管理を実現するためには、畜産飼料の残量を適正に把握する必要がある。
【0003】
畜産飼料は、一般的に飼料タンク内に備蓄される。飼料タンク内の畜産飼料の残量は、従来はタンク上部又はタンク側面のぞき窓から目視で管理されることが一般的である。また、タンク上部から長竿などの棒状の物体を飼料の山に差し込み深さを測ることによって残量を推測することも行われている。また、このようにタンク等の容器内の格納物の量を計ることについては様々な分野で要求があり、例えば給油のタンク残量を計測する技術なども提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように人手に頼った確認方法は、労力を要することや危険を伴う可能性があるという課題がある。また、赤外線センサーを飼料タンク内にレベルセンサーとして取り付けることで、ある一定量まで飼料が減った場合に報知する技術も提案されている。しかしながら、畜産飼料がある一定量に減少するまでは、残量がわからない。もし複数の段階で報知しようとすると、そのレベル毎に赤外線センサーを取り付ける必要がありコストや労力を要してしまうという問題があった。このような問題は、飼料タンクに限られた問題ではなく、所定の容器内に所定の物体を備蓄する様々なケースに共通する問題である。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、所定の容器内に蓄積された所定の物体の量を推定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定部と、を備える推定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の推定装置であって、前記取得部は、略同一のタイミングで測定された複数の測定値を取得し、前記複数の測定値に基づいて前記物体の蓄積形状を推定する、蓄積形状推定部をさらに備える。
【0009】
本発明の一態様は、所定の物体を格納する容器の形状の概略を示す画像と、前記物体が前記容器の内側でどのような形状で蓄積されているかを示す画像と、を一つの画像として示し、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す値を他の画像として示す画面のデータを生成する情報処理装置である。
【0010】
本発明の一態様は、所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定ステップと、を有する推定方法である。
【0011】
本発明の一態様は、上記の推定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【0012】
本発明の一態様は、所定の物体を格納する容器の内側上部に設けられた超音波センサーと、推定装置と、を含む情報システムであって、前記推定装置は、前記超音波センサーによって測定される、前記容器の内側上部から前記物体の上面までの高さの差を示す測定値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された測定値に基づいて、前記容器内に格納されている前記物体の量を示す情報を推定する残量推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、所定の容器内に蓄積された所定の物体の量を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の情報システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】格納物体の補給と取り出しとの具体例を示す図である。
【
図4】畜産飼料14の蓄積形状(片減り)の具体例を示す図である。
【
図5】畜産飼料14の蓄積形状(中減り)の具体例を示す図である。
【
図6】畜産飼料14の蓄積形状(フラット)の具体例を示す図である。
【
図7】超音波センサーの測定値の概略を示す図である。
【
図8】複数の連続した角度に超音波を発信する超音波センサーの測定値の概略を示す図である。
【
図9】推定装置50の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図10】情報提供部537によって提供される情報に基づいて端末装置40に表示される画面の具体例を示す図である。
【
図12】情報システム100の処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。
【
図13】情報システム100の異常推定処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の情報システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【0016】
情報システム100は、飼料タンク10、センサーユニット20、中継装置30、端末装置40及び推定装置50を備える。中継装置30と、センサーユニット20とは、通信を行うことによってデータを送受信する。中継装置30とセンサーユニット20との間で行われる通信は、無線通信であってもよいし有線通信であってもよい。
図1の例では、無線通信を一例として示している。この無線通信は、例えば短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))であってもよいし、無線LAN(Local Area Network)であってもよいし、LPWA(Low Power, Wide Area)であってもよい。中継装置30、端末装置40及び推定装置50は、ネットワーク60を介して通信する。ネットワーク60は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク60は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。中継装置30は、センサーユニット20から受信されたデータを推定装置50に送信する。推定装置50は、受信されたデータに基づいて飼料タンク内の飼料の状態について推定し、推定結果に基づいて端末装置40にデータを送信する。
【0017】
図2は、飼料タンク10の具体例を示す図である。飼料タンク10は、容器の具体例である。
図2に示されるように、飼料タンク10は、タンク本体11、上蓋12、取り出し口13を備える。上蓋12の裏側には、センサーユニット20が取り付けられる。そのため、センサーユニット20は、飼料タンク10の内側上部に設けられることになる。飼料タンク10の内部には、所定の物体(以下「格納物体」という。)が格納される。本実施形態において飼料タンク10の内部に格納される格納物体は、畜産飼料14である。畜産飼料は、例えば粒状の物体である。
【0018】
図3は、格納物体の補給と取り出しとの具体例を示す図である。上蓋12が持ち上げられることによって、タンク本体11の上部に設けられた開口部が開放される。格納物体は、開放された開口部から飼料タンク10の内部に矢印15で示されるように補給される。取り出し口13には、飼料タンク10の内部に格納された畜産飼料14の一部を下方に取り出すための機構が設けられている。人が取り出し口13を操作することによって、畜産飼料14を飼料タンク10から矢印16で示されるように取り出すことができる。
【0019】
飼料タンク10内における畜産飼料14の蓄積形状は、タンク本体11の内部の形状や、容器の取り出し口13の形状や、飼料タンク10への畜産飼料14の投入方法などに応じて変化する。
図4~
図6は、畜産飼料14の蓄積形状の具体例を示す図である。
図4は、片減りの例である。片減りでは、ある断面で見たときに、左右どちらか一方が他方に比べて高くなっている。
図4の例では、向かって左側には向かって右側に比べてより高く畜産飼料14が積み重なっている。
図5は、中減りの例である。中減りでは、ある断面で見たときに、中央付近が左右に比べて低くなっている。
図5の例では、中央に比べて左右により高く畜産飼料14が積み重なっている。
図6は、フラットの例である。フラットでは、どの断面で見た場合であっても、畜産飼料14の上面の高さが略一致する。
図6の例では、多少のばらつきはあるものの、全体的に同じ高さに畜産飼料14が積み重なっている。
【0020】
センサーユニット20は、飼料タンク10の内側上部に設けられる。センサーユニットは、制御装置、超音波センサー及びジャイロセンサーを備える。制御装置は、所定のタイミングで各センサーから測定値等の情報を取得し、取得した情報を中継装置30に送信する。超音波センサーは、飼料タンク10の内側上部から下方に向けて超音波を発信する。超音波センサーは、飼料タンク10の内壁又は格納物体である畜産飼料によって反射された超音波を受信する。超音波センサーは、超音波の発信タイミングと受信タイミングとの差に基づいて、飼料タンク10の内側上部から、超音波が反射した箇所(以下「反射点」という。)までの高さの差を示す測定値を取得する。反射点が格納物体の上面であれば、超音波センサーは、容器の内側上部から格納物体の上面までの高さの差を示す測定値を得る。超音波センサーは、取得した測定値を示すデータを制御装置に出力する。
【0021】
図7は、超音波センサーの測定値の概略を示す図である。
図7の具体例では、超音波センサーは垂直下方に超音波を発信する。そのため、線分21が測定される超音波の経路となる。
図7において、“H”は容器の内側上部から底までの高さ(以下「容器全長」という。)を示す。
図7において、“K”は容器の内側上部から反射点までの高さの差を示す。“K”の値が超音波センサーの測定値として得られる。
【0022】
超音波センサーは、例えば複数の連続した角度に超音波を発信し、その反射波を受信することによって、所定数の反射点に関する測定値を取得してもよい。この場合の反射点の数は、1つであってもよいし複数(例えば3つ、5つ)であってもよい。
【0023】
図8は、複数の連続した角度に超音波を発信する超音波センサーの測定値の概略を示す図である。
図8の具体例では、超音波センサーは扇形21_Rが示す領域全体にわたって超音波を発信する。発信された超音波は、畜産飼料14の上面や飼料タンク10の内側で反射し、反射波の一部が超音波センサーによって受信される。超音波センサーは、複数の反射点のうち3カ所の反射点における測定値を取得する。
図8の例では、線分21_1、線分21_2、線分21_3が測定される超音波の経路となる。
図8において、“H”は容器全長を示す。
図8において、“K_1”、“K_2”及び“K_3”は、それぞれ容器の内側上部から各経路の反射点までの高さの差を示す。“K_1”、“K_2”及び“K_3”の各値が超音波センサーの測定値として得られる。
【0024】
ジャイロセンサーは、自装置における角度の変化を示す情報(例えば角速度)を測定する。ジャイロセンサーは、取得した測定値を示すデータを制御装置に出力する。
【0025】
なお、センサーユニット20の制御装置が、超音波センサーで取得された測定値を送信するタイミングと、ジャイロセンサーで取得された測定値を送信するタイミングと、は同じであってもよいし異なってもよい。制御装置は、各測定値とともに、各測定値がセンサーユニット20において取得された時刻を対応付けて送信してもよい。
【0026】
中継装置30は、通信装置である。中継装置30は、センサーユニット20との間で通信を行う第一通信インターフェースと、ネットワーク60を介して他装置との間で通信を行う第二通信インターフェースを備える。中継装置30は、第一通信インターフェースによってセンサーユニット20からデータを受信する。中継装置30は、受信されたデータを、第二通信インターフェースによって推定装置50に送信する。
【0027】
端末装置40は、飼料タンク10に関連するユーザーによって使用される情報処理装置である。端末装置40は、例えば携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピューター、テレビ受像器、中央制御装置などの装置である。端末装置40は、推定装置50から、飼料タンク10内の格納物体に関する情報や、ジャイロセンサーの測定値(センサーユニット20の角度の変化を示す情報)を受信する。端末装置40は、受信された情報を出力する。端末装置40は、例えば音声を出力することによって情報を出力してもよいし、画面を表示することによって情報を出力してもよい。画面の表示は、例えばブラウザによって行われてもよいし、特定のアプリケーションによって行われてもよい。ユーザーは、端末装置40の出力を知覚することによって、飼料タンク10内の格納物体の状態(残量、蓄積形状など)や、センサーユニット20の状態を認識することができる。センサーユニット20の状態を示す情報は、センサーユニット20が取り付けられた部材(例えば上蓋)の状態を示す情報として出力されてもよい。
【0028】
推定装置50は、パーソナルコンピューターやサーバー装置等の情報処理装置を用いて構成される。
図9は、推定装置50の機能構成を示す概略ブロック図である。推定装置50は、通信部51、記憶部52及び制御部53を備える。
【0029】
通信部51は、通信インターフェースを用いて構成される。通信部51は、無線通信又は有線通信でネットワーク60に接続し、他の装置との間でデータ通信する。
【0030】
記憶部52は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部52は、制御部53によって記録されるデータを記憶する。記憶部52に記憶されているデータは、制御部53によって読み出される。記憶部52は、例えばセンサーユニット20から送信された測定値のログを記憶する。記憶部52は、例えば制御部53によって推定された結果を示す情報を記憶する。
【0031】
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリとを用いて構成される。制御部53は、CPUがプログラムを実行することによって、測定値取得部531、対象測定値決定部532、残量推定部533、蓄積形状推定部534、開閉推定部535、異常状態推定部536及び情報提供部537として機能する。なお、制御部53の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。プログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されても良い。
【0032】
測定値取得部531は、センサーユニット20から送信されたデータを、通信部51を介して受信する。測定値取得部531は、受信されたデータから、超音波センサー及びジャイロセンサーの測定値を取得する。測定値取得部531は、取得された測定値を記憶部52にログデータとして記録する。例えば、測定値取得部531は、取得された測定値と、各測定値がセンサーユニット20において取得された時刻と、を対応付けて記憶部52に記録してもよい。
【0033】
対象測定値決定部532は、畜産飼料14の残量を推定するために使用される測定値である対象測定値を決定する。超音波センサーによって一つの測定値が得られる場合には、その値が対象測定値として決定される。超音波センサーによって複数の測定値が得られる場合には、複数の測定値に基づいて一つの対象測定値が決定される。対象測定値決定部532は、n個の測定値K_i(i=1,2,・・,n)の統計値として対象測定値を決定してもよい。例えば、対象測定値は、n個の測定値K_iの中の最大値として決定されてもよい。例えば、対象測定値は、n個の測定値K_iの平均値として決定されてもよい。例えば、対象測定値は、n個の測定値K_iの中央値として決定されてもよい。例えば、対象測定値は、n個の測定値K_iの中の大きい値から順にm個の値が選択され、m個の値の中の統計値(平均値、中央値など)として決定されてもよい。対象測定値は、他の基準で決定されてもよい。
【0034】
残量推定部533は、対象測定値に基づいて、飼料タンク10内の畜産飼料14の残量を推定する。例えば、残量推定部533は、対象測定値が示す高さにフラットの状態で畜産飼料14が蓄積していると仮定した場合に得られる残量を推定値として算出してもよい。この場合、例えば以下に示す式1に基づいて推定値が得られてもよい。
【0035】
【0036】
式1において、“I”は対象測定値を示し、“H”は容器全長を示す。式1では、残量の推定値として、飼料タンク10の格納量の最大値に対する割合(パーセント)が得られる。なお、式1は推定値の算出方法の一例にすぎない。残量推定部533は他の式に基づいて算出されてもよい。残量推定部533は、対象測定値と推定値とのルックアップテーブルに基づいて推定値を取得してもよい。この場合、上述したルックアップテーブルが予め記憶部52に記憶されていてもよい。残量推定部533は、推定結果と、その推定結果の元となった測定値が取得された日時と、を対応付けて記憶部52に記録する。
【0037】
蓄積形状推定部534は、飼料タンク10内の畜産飼料14の蓄積形状を推定する。蓄積形状推定部534は、超音波センサーによって略同一のタイミングで取得された複数の測定値の組み合わせに基づいて、蓄積形状を推定してもよい。例えば、複数の測定値のうち、大きさの順番で最大値を除く所定の第一の順番(例えば2番目)の値と第二の順番(例えば3番目)の値との差が、容器全長に対して所定の割合以下(例えば10%以下)である場合には、中減りと推定されてもよい。例えば、複数の測定値のうち、大きさの順番で最大値を除く所定の第一の順番(例えば2番目)の値と第二の順番(例えば3番目)の値との差が、容器全長に対して所定の割合以上(例えば10%以上)である場合には、片減りと推定されてもよい。例えば、複数の測定値のうち最大値と最小値との差が容器全長に対して所定の割合以下(例えば10%以下)である場合には、フラットと推定されてもよい。なお、上述した所定の割合は、容器(飼料タンク10)の形状に応じて適宜設定される。
【0038】
蓄積形状推定部534は、上述した推定処理を、異なるタイミングで取得された測定値で複数回(例えば10回、20回)実施し、その実施結果に基づいて最終的な推定結果を決定してもよい。例えば、蓄積形状推定部534は、複数回の実施で最も多く得られた推定結果を最終的な推定結果として決定してもよい。このように構成されることによって、推定結果の誤差を軽減することが可能となる。蓄積形状推定部534は、推定結果と、その推定結果の元となった測定値が取得された日時の代表値と、を対応付けて記憶部52に記録する。日時の代表値は、推定処理に用いられた複数の測定値がそれぞれ得られた日時に基づいて得られる。例えば、複数の日時のうち最も早い日時であってもよいし、最も遅い日時であってもよいし、複数の日時の中央値であってもよい。
【0039】
開閉推定部535は、ジャイロセンサーの測定値に基づいて、上蓋12が開閉されたことを推定する。例えば、ジャイロセンサーの測定値が所定の閾値以上の加速度で移動したことを示す場合、開閉推定部535は、その測定値が取得されたタイミングで上蓋12が開かれた又は閉じられたと推定する。開閉推定部535は、上蓋12が開かれた又は閉じられたと推定した際の測定値が得られた日時を、開閉時刻として記憶部52に記録する。
【0040】
異常状態推定部536は、ジャイロセンサーの測定値に基づいて、センサーユニット20が異常な状態となっているか否かについて推定する。異常状態推定部536は、例えばジャイロセンサーの測定値が所定の時間以上にわたって、所定の角度以上傾いた状態にあることを示した場合に、センサーユニット20が異常な状態になっていると推定する。上述した条件が満たされる場合には、センサーユニット20が所定の取り付け位置から外れて容器内(飼料タンク10の内部)に落下してしまっている可能性がある。異常状態推定部536は、異常状態と推定された場合には、その推定結果と、その推定結果の元となった測定値が取得された日時と、を対応付けて記憶部52に記録する。
【0041】
情報提供部537は、飼料タンク10の関係者が使用する端末装置40に対し情報を提供する。情報提供部537は、端末装置40に対し、その関係者が使用する飼料タンク10に取り付けられたセンサーユニット20によって得られた測定値に基づいて得られる情報を提供する。例えば、飼料タンク10と、情報の提供先となる端末装置40とが予め対応付けて記憶部52に記録されていてもよい。例えば、端末装置40から、飼料タンク10を示す識別子とともに要求データが送信され、要求データに含まれる識別子が示す飼料タンク10に関する情報がその端末装置40に応答情報として送信されてもよい。この場合、端末装置40から飼料タンク10に関する認証がなされることが望ましい。情報提供部537が提供する情報は、例えば残量の推定結果であってもよいし、蓄積形状の推定結果であってもよいし、開閉の推定結果であってもよい。また、情報提供部537は、異常状態との推定結果が得られた場合には、プッシュ通信で端末装置40に対して異常の発生を通知してもよい。
【0042】
図10は、情報提供部537によって提供される情報に基づいて端末装置40に表示される画面の具体例を示す図である。
図10の例では、表示画面には、前遷移ボタン901、タンク状体画像902、残量推定値903、温度測定値904、湿度測定値905、電池残量値906、直近開閉日時907及び後遷移ボタン908が表示される。
【0043】
前遷移ボタン901は、表示される情報を、一つ前のタイミングで取得された情報に遷移させることを指示するためのボタンである。前遷移ボタン901が操作されると、端末装置40は、現在表示されている情報よりも一つ前のタイミングで取得された情報を要求するデータを推定装置50に送信する。推定装置50の情報提供部537は、要求に応じたタイミングのデータを記憶部52から読み出し、要求元である端末装置40に送信する。端末装置40は、推定装置50からデータを受信すると、受信されたデータに基づいて表示画面を生成し表示する。
【0044】
タンク状体画像902は、飼料タンク10内の畜産飼料14の蓄積形状を示す画像である。タンク状体画像902は、推定装置50の蓄積形状推定部534によって推定された蓄積形状に応じて変化する。
図10の例では、畜産飼料14が左から右に向けて下がっており、片減りの状態を示す画像が表示されている。タンク状体画像902は、少なくとも蓄積形状推定部534によって推定される蓄積形状のパターンと同数の種類が予め準備されていることが望ましい。例えば、蓄積形状のパターンが片減り、中減り及びフラットの3種類であれば、3種類のパターンそれぞれに応じた画像が予め準備されている。準備された画像は、端末装置40において予め記憶されていてもよいし、推定装置50の記憶部52に記憶されていてもよい。推定装置50が画像を記憶している場合には、情報提供部537は端末装置40に対して蓄積形状のパターンに応じた画像を読み出して端末装置40に送信する。タンク状体画像902は、蓄積形状の推定結果に加えてさらに残量の推定結果に応じて変化してもよい。例えば、残量の推定結果が0%~35%である場合と、残量の推定結果が36%~70%である場合と、残量の推定結果が71%~100%である場合とで、それぞれの蓄積形状に応じた画像が予め準備されてもよい。この具体例の場合には、9パターンの画像が準備されてもよい。
【0045】
残量推定値903は、残量推定部533の推定結果である残量の値を示す。残量推定値903は、他の文字列に比べてより大きな文字列で表示されてもよい。温度測定値904は、飼料タンク10内の温度の測定値を示す。このような表示がなされる場合、温度センサーがセンサーユニット20に設けられる。湿度測定値905は、飼料タンク10内の湿度の測定値を示す。このような表示がなされる場合、湿度センサーがセンサーユニット20に設けられる。電池残量値906は、センサーユニット20に設けられた電池の残量を示す。このような表示がなされる場合、電池の残量を測定するセンサーがセンサーユニット20に設けられる。
【0046】
直近開閉日時907は、開閉推定部535によって最も近いタイミングで上蓋12が開閉されたと推定された日時を示す。ユーザーは、直近開閉日時907の値を見ることによって、いつ上蓋12が開閉されたかを知ることができる。もし、ユーザーにとって想定外の日時が表示されている場合には、ユーザーが把握していない第三者によって上蓋12が開閉された可能性がある。直近開閉日時907が表示されることによって、ユーザーは、そのような異常事態の発生を容易に知ることが可能となる。
【0047】
後遷移ボタン908は、表示される情報を、一つ後のタイミングで取得された情報に遷移させることを指示するためのボタンである。後遷移ボタン908が操作されると、端末装置40は、現在表示されている情報よりも一つ後のタイミングで取得された情報を要求するデータを推定装置50に送信する。推定装置50の情報提供部537は、要求に応じたタイミングのデータを記憶部52から読み出し、要求元である端末装置40に送信する。端末装置40は、推定装置50からデータを受信すると、受信されたデータに基づいて表示画面を生成し表示する。
【0048】
その他にも、
図10に示される画面には、表示されている情報が示す飼料タンク10の名称“和牛第1”とタンク容量“2.0t”、飼料タンク10内の畜産飼料14の名称“飼料A”、などが表示されている。
【0049】
図11は、端末装置40の表示例を示す図である。複数の飼料タンク10を管理するユーザーの端末装置40には、
図11に示されるように1つの画面で複数の飼料タンク10の情報が表示されてもよい。
図11の例では、
図10に示される画像が1つの画面で2つ縦に並べて表示されている。
【0050】
図12は、情報システム100の処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。センサーユニット20の制御装置は、超音波センサーの測定値を所定のタイミングで取得する。センサーユニット20の制御装置は、取得された測定値を含むデータを中継装置30に送信する(ステップS101)。中継装置30は、センサーユニット20からデータを受信すると、受信されたデータを推定装置50に中継する(ステップS102)。
【0051】
推定装置50の測定値取得部531は、超音波センサーの測定値を含むデータを受信すると、受信されたデータに含まれる測定値をログデータとして記憶部52に記録する。対象測定値決定部532は、受信されたデータに含まれる測定値に基づいて対象測定値を決定する(ステップS103)。推定装置50の残量推定部533は、対象測定値決定部532によって決定された対象測定値に基づいて畜産飼料14の残量を推定する(ステップS104)。蓄積形状推定部534は、受信されたデータに含まれる複数の測定値に基づいて蓄積形状を推定する(ステップS105)。
【0052】
情報提供部537は、各推定結果を含む提供情報のデータを生成する。情報提供部537は、得られた推定結果の飼料タンク10に対応付けられている端末装置40に対し、提供情報のデータを送信する(ステップS106)。端末装置40は、提供情報のデータを受信すると、受信されたデータに基づいて画面のデータを生成する(ステップS107)。そして、端末装置40は、生成された画面を表示する(ステップS108)。
【0053】
図13は、情報システム100の異常推定処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。センサーユニット20の制御装置は、ジャイロセンサーの測定値を所定のタイミングで取得する。センサーユニット20の制御装置は、取得された測定値を含むデータを中継装置30に送信する(ステップS201)。中継装置30は、センサーユニット20からデータを受信すると、受信されたデータを推定装置50に中継する(ステップS202)。
【0054】
推定装置50の測定値取得部531は、ジャイロセンサーの測定値を含むデータを受信すると、受信されたデータに含まれる測定値をログデータとして記憶部52に記録する。開閉推定部535は、受信されたデータに含まれる測定値に基づいて上蓋12が開閉されたか否か推定する(ステップS203)。開閉推定部535は、上蓋12が開かれた又は閉じられたと推定した際の測定値が得られた日時を、開閉時刻として記憶部52に記録する。
【0055】
異常状態推定部536は、受信されたデータに含まれる測定値に基づいて、センサーユニット20が異常な状態となっているか否か推定する(ステップS204)。異常状態推定部536は、異常な状態になっていないと推定された場合(ステップS204-NO)、処理を終了する。一方、異常な状態になっていると推定された場合(ステップS204-YES)、情報提供部537は、異常状態が生じていることを示す情報である異常情報を生成する。そして、情報提供部537は、測定結果の送信元であるセンサーユニット20に対応付けられている端末装置40に対し、異常情報のデータを送信する(ステップS206)。端末装置40は、異常情報のデータを受信すると、受信されたデータに基づいて異常状態をユーザーに報知する。(ステップS207)。報知はどのような態様で実施されてもよい。例えば、端末装置40は、所定の音声を出力してもよいし、所定の画像を画面に表示してもよい。
【0056】
このように構成された情報システム100では、所定の容器(例えば飼料タンク10)内に蓄積された所定の物体(例えば畜産飼料14)の量を推定することが可能となる。具体的には以下の通りである。
【0057】
情報システム100では、所定の容器内に超音波センサーが設けられる。超音波センサーによって、容器の内側上部から格納物体の上面までの高さの差を示す測定値が得られる。この測定値に基づいて、所定の容器内に格納されている格納物体の量(残量)が推定される。レベルセンサーのように、格納物体の量がある閾値に達しているか否かということが検知されるのではなく、高さの値が測定される。そのため、より少ない数のセンサーで、より高い精度で残量を推定することが可能となる。
【0058】
また、情報システム100では、超音波センサーによって測定された複数の値に基づいて、格納物体の蓄積形状が推定される。そのため、ユーザーは格納物体の蓄積形状についても情報を容易に取得することが可能となる。
【0059】
このように残量や蓄積形状に関する情報をよりリアルタイムに近いタイミングで容易に取得することができるため、畜産生産者や飼料管理者は畜産飼料をより効率的に管理することが可能となる。例えば、補給をしなければならないタイミングをより適切に判断することが可能となる。さらに、畜産生産者や飼料管理者は、品質のよい畜産飼料をオンデマンドで調達することが可能となるため、畜産物の品質を向上させることも可能となる。
【0060】
また、飼料供給会社にとっては、より効率的に畜産飼料を生産することが可能となり、品質を高く維持しつつ、価格を低くすることが可能となる。さらに、飼料供給会社にとっては、酪農地域の特性である広大な営業エリアの供給管理をより容易に行うことが可能となる。
【0061】
(変形例)
図1の例では、容器の具体例として飼料タンクが適用され、容器に格納される物体(格納物体)の具体例として畜産飼料が適用された。しかしながら、容器及び格納物体は、それぞれ飼料タンク及び畜産飼料に限定される必要は無い。例えば、格納物体の具体例として、砂、石、粒状のポリマー、動物の体毛がある。個々の格納物体の大きさが容器の大きさに比べて十分に小さく、格納物体の堆積時の形状(特に上面の形状)が変化するようなものであってもよい。また、格納物体の具体例として上述したような固体が適用されてもよいし、水や石油などのような液体が適用されてもよい。格納物体は、超音波を反射する物体であれば、どのような物体であってもよい。
【0062】
上述した超音波センサーは、超音波センサー(容器の内側上部)から各反射点までの高さの差を示す測定値を取得していた。しかしながら、超音波センサーは、このような測定値に代えて、超音波センサーから各反射点までの直線距離(例えば
図8の線分21_1の長さ)を測定値として取得してもよい。この場合、対象測定値決定部532は、このようにして取得された各測定値の中から対象測定値を決定してもよい。そして、残量推定部533は、このようにして取得された対象測定値に基づいて残量を推定してもよい。同様に、蓄積形状推定部534は、このようにして取得された測定値に基づいて蓄積形状を推定してもよい。
【0063】
このように直線距離が測定値として取得される場合には、1桁目など所定の桁数が切り捨てられた値が用いられてもよい。このように構成されることによって、高さに代えて直線距離が用いられることにより生じる可能性のある誤差を軽減することが可能となる。
【0064】
図10に示されるような画面には、畜産飼料を購入するためのボタン(以下「購入ボタン」という。)が設けられてもよい。例えば、購入ボタンが操作されると、購入ボタンが操作されたことを示す情報と、端末装置40の識別情報又はそのユーザーの識別情報と、を含む購入要求データを端末装置40が生成する。端末装置40は、生成された購入要求データを推定装置50に送信する。推定装置50の情報提供部537は、購入要求データを受信すると、所定の飼料供給会社に対し、受信された購入要求データに基づいて発注処理を行う。飼料供給会社は、発注処理を受けると、購入要求データの送信元である端末装置40に対応付けられた飼料タンク10に対し、畜産飼料の補給を行う。このような購入ボタンは、所定の条件が満たされた場合にのみ表示されてもよい。例えば、推定された残量が所定の閾値未満となった場合にのみ、購入ボタンが表示されてもよい。
【0065】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0066】
100…情報システム100, 10…飼料タンク, 11…タンク本体, 12…上蓋, 13…取り出し口, 14…畜産飼料, 20…センサーユニット, 30…中継装置, 40…端末装置, 50…推定装置, 51…通信部, 52…記憶部, 53…制御部, 531…測定値取得部, 532…対象測定値決定部, 533…残量推定部, 534…蓄積形状推定部, 535…開閉推定部, 536…異常状態推定部, 537…情報提供部, 901…前遷移ボタン, 902…タンク状体画像, 903…残量推定値, 904…温度測定値, 905…湿度測定値, 906…電池残量値, 907…直近開閉日時, 908…後遷移ボタン