(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 13/12 20060101AFI20220914BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B23B13/12 B
B23B23/00 Z
(21)【出願番号】P 2018227989
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩明
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 健児
(72)【発明者】
【氏名】酒井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲平
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特許第3359808(JP,B2)
【文献】実開昭55-085201(JP,U)
【文献】特開平11-010405(JP,A)
【文献】実開昭64-009006(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/12,23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持しつつ軸回転させる主軸と、
ベッドに固定される固定台と、
ベルト駆動ガイドブッシュ装置及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装置のうちから選択された一つであり、前記固定台に着脱可能に形成され、前記主軸に把持された前記ワークの周囲を支持する交換式のガイドブッシュ装置と、を備え、
前記ガイドブッシュ装置は、
前記主軸により把持された前記ワークの外周を囲むように前記ワークを支持するワーク支持部と、
前記ワーク支持部の外周側に設けられ、前記ワーク支持部を回転可能に支持するカバー部と、
前記カバー部とは別体で前記カバー部の外周に設けられ、前記固定台に第1ボルトにより固定されるとともに、前記カバー部に第2ボルトにより固定されるフランジと、を備え、
前記フランジには、前記ガイドブッシュ装置を前記主軸に対して軸合わせ可能となるように前記第1ボルトの軸部よりも大きいサイズのボルト穴が形成され、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトは、前記主軸により把持された前記ワークの軸方向に沿って互いに反対を向き、
前記第1ボルトの頭部は、前記軸方向において前記主軸から遠い側を向くように設けられる、
工作機械。
【請求項2】
ワークを把持しつつ軸回転させる主軸と、
ベッドに固定される固定台と、
静止型ガイドブッシュ装置、ケレ式回転ガイドブッシュ装置、ベルト駆動ガイドブッシュ装置
及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装
置のうちから選択された一つであり、前記固定台に着脱可能に形成され、前記主軸に把持された前記ワー
クの周囲を囲む交換式のガイドブッシュ装置と、を備え、
前記ガイドブッシュ装置は、
前記主軸により把持された前記ワークの外周を囲むように前記ワークを支持するワーク支持部と、
前記ワーク支持部の外周側に設けられ、前記ワーク支持部を回転可能又は回転不能に支持するカバー部と、
前記カバー部とは別体で前記カバー部の外周に設けられ、前記固定台に第1ボルトにより固定されるとともに、前記カバー部に第2ボルトにより固定されるフランジと、を備え、
前記フランジには、前記ガイドブッシュ装置を前記主軸に対して軸合わせ可能となるように前記第1ボルトの軸部よりも大きいサイズのボルト穴が形成され、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトは、前記主軸により把持された前記ワークの軸方向に沿って互いに反対を向き、
前記第1ボルトの頭部は、前記軸方向において前記主軸から遠い側を向くように設けられる、
工作機械。
【請求項3】
前記第1ボルト及び前記第2ボルトは、前記軸方向に直交する方向に隣り合うように配置されている、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1及び2に開示されるように、主軸により把持されるワークを支持するガイドブッシュ装置が知られている。例えば、ガイドブッシュ装置のタイプとしては、静止型ガイドブッシュ装置、ケレ式回転ガイドブッシュ装置、ベルト駆動ガイドブッシュ装置、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置及びガイドブッシュ装置なしのガイドブッシュレス装置等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3359808号公報
【文献】特開平11-10406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、1台の旋盤において、ベルト駆動ガイドブッシュ装置とダイレクト駆動ガイドブッシュ装置の間でガイドブッシュ装置を交換することができず、ベルト駆動ガイドブッシュ装置とダイレクト駆動ガイドブッシュ装置の後述するメリットとデメリットを勘案して、加工要求に適したガイドブッシュ装置のタイプを選択することができなかった。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、加工要求に適したタイプのガイドブッシュ装置に交換することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工作機械は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸と、ベッドに固定される固定台と、ベルト駆動ガイドブッシュ装置及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装置のうちから選択された一つであり、前記固定台に着脱可能に形成され、前記主軸に把持された前記ワークの周囲を支持する交換式のガイドブッシュ装置と、を備え、前記ガイドブッシュ装置は、前記主軸により把持された前記ワークの外周を囲むように前記ワークを支持するワーク支持部と、前記ワーク支持部の外周側に設けられ、前記ワーク支持部を回転可能に支持するカバー部と、前記カバー部とは別体で前記カバー部の外周に設けられ、前記固定台に第1ボルトにより固定されるとともに、前記カバー部に第2ボルトにより固定されるフランジと、を備え、前記フランジには、前記ガイドブッシュ装置を前記主軸に対して軸合わせ可能となるように前記第1ボルトの軸部よりも大きいサイズのボルト穴が形成され、前記第1ボルト及び前記第2ボルトは、前記主軸により把持された前記ワークの軸方向に沿って互いに反対を向き、前記第1ボルトの頭部は、前記軸方向において前記主軸から遠い側を向くように設けられる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸と、ベッドに固定される固定台と、静止型ガイドブッシュ装置、ケレ式回転ガイドブッシュ装置、ベルト駆動ガイドブッシュ装置及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装置のうちから選択された一つであり、前記固定台に着脱可能に形成され、前記主軸に把持された前記ワークの周囲を囲む交換式のガイドブッシュ装置と、を備え、前記ガイドブッシュ装置は、前記主軸により把持された前記ワークの外周を囲むように前記ワークを支持するワーク支持部と、前記ワーク支持部の外周側に設けられ、前記ワーク支持部を回転可能又は回転不能に支持するカバー部と、前記カバー部とは別体で前記カバー部の外周に設けられ、前記固定台に第1ボルトにより固定されるとともに、前記カバー部に第2ボルトにより固定されるフランジと、を備え、前記フランジには、前記ガイドブッシュ装置を前記主軸に対して軸合わせ可能となるように前記第1ボルトの軸部よりも大きいサイズのボルト穴が形成され、前記第1ボルト及び前記第2ボルトは、前記主軸により把持された前記ワークの軸方向に沿って互いに反対を向き、前記第1ボルトの頭部は、前記軸方向において前記主軸から遠い側を向くように設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械において、加工要求に適したタイプのガイドブッシュ装置に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るケレ式回転ガイドブッシュ装置の概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るベルト駆動ガイドブッシュ装置の概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るダイレクト駆動ガイドブッシュ装置の概略断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る静止型ガイドブッシュ装置の概略断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るガイドブッシュレス装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ワークWを加工する多機能旋盤であり、ガイドブッシュ装置80を交換可能に構成される。詳しくは、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、ワークWを把持しつつ軸回転させる主軸ユニット10と、主軸ユニット10をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構13と、主軸ユニット10により把持されたワークWを加工するために移動する工具機構30と、を備える。
【0011】
(主軸ユニット10)
主軸ユニット10は、主軸台11と、ワークWを回転可能に支持する主軸14と、を備える。主軸14は、何れも図示しない、ワークWを把持するチャックと、チャックで把持したワークWを回転させるワーク回転用モータと、を備える。Z軸移動機構13は、Z軸モータ13zでボールねじ13aを軸回転させることでナット13bとともに主軸ユニット10をワークWの軸方向に沿うZ軸方向に移動させる。
【0012】
(工具機構30)
図1に示すように、工具機構30は、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に固定されるガイドブッシュ装置80と、工具35aを保持する工具ユニット35と、工具ユニット35をY軸方向に移動させるY軸移動機構32と、
図2に示すように、工具ユニット35をX軸方向に移動させるX軸移動機構33と、を備える。Y軸移動機構32及びX軸移動機構33は、Z軸移動機構13と同様に、モータ、ボールねじ及びナットにより構成される。Z軸移動機構13、Y軸移動機構32及びX軸移動機構33は、図示しない制御部による制御のもと、工具35aを主軸14により回転されるワークWに対して移動させることによりワークWの加工を行う。
【0013】
図3に示すように、固定台41には、主軸14に把持されたワークWを中心とした空洞部41aを有する筒状部41dが形成されている。筒状部41dは、Z軸方向に延び、主軸14から離れるにつれて径が小さくなるように形成される。
図4に示すように、固定台41の筒状部41dには複数のねじ穴41bが形成される。複数のねじ穴41bは、筒状部41dの先端面(
図4の右側端面)に位置し、周方向に沿って配置される。ねじ穴41bには、ガイドブッシュ装置80の後述するフランジ87を固定台41に固定するボルト48aが螺合される。
【0014】
(ガイドブッシュ装置80)
ガイドブッシュ装置80は、主軸14に対してZ軸方向に対向する位置で、工作機械1の固定台41に固定される。ガイドブッシュ装置80は、主軸14により把持されるワークWの外周を工具35aに近い位置にて囲む。
ガイドブッシュ装置80としては、例えば、
図3に示すケレ式回転ガイドブッシュ装置380、
図5に示すベルト駆動ガイドブッシュ装置480、
図6に示すダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580、
図7に示す静止型ガイドブッシュ装置280及び
図8に示すガイドブッシュレス装置180の5つのタイプが存在する。ガイドブッシュ装置80は、固定台41に着脱可能に、かつ、各タイプ間で交換可能に構成されている。
なお、ガイドブッシュレス装置180は、ワークWを支持しない装置であるが、本実施形態では、ガイドブッシュ装置80に含まれるものとする。
以下、ガイドブッシュ装置80の各タイプについて説明する。
【0015】
(ケレ式回転ガイドブッシュ装置380)
図3に示すように、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380は、主軸14に連結されることで、主軸14と一体で軸回転する。ケレ式回転ガイドブッシュ装置380は、主軸14と確実に同期して回転させることができるというメリットを有する。一方、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380は、ケレ式のため製品長を長くすることが困難であるというデメリットを有する。例えば、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380は、直径20mm以下で、かつ長さ100mm以下の製品の加工に適しており、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380のZ軸方向の長さは165mmである。ガイドブッシュ装置80のZ軸方向の長さは長くなるほど残材長が長くなるため、材料の無駄が多くなる。
【0016】
詳しくは、
図4に示すように、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380は、スリーブ381と、複数のピン382と、ホルダ部383と、ワーク支持部384と、カバー部385と、フランジ87と、を備える。
フランジ87は、固定台41に取り付けられる部材であり、カバー部385の外周に沿う円環状をなす。フランジ87には、それぞれ複数のボルト穴87aとねじ穴87bが形成される。
ボルト穴87aは、ねじ穴87bよりも外周側に位置し、Z軸方向に沿って貫通している。ボルト穴87aは、ボルト48aの頭部が収容される大径穴部87a1と、ボルト48aの軸部が通過する小径穴部87a2と、を備える。ボルト穴87aの小径穴部87a2は、筒状部41dに隣接する位置に設けられ、ボルト48aの軸径よりも大きい径を有する丸穴である。すなわち、ボルト穴87aの小径穴部87a2の内周面とボルト48aの軸部の間には、ガイドブッシュ装置80を主軸14の中心軸に合わせるための隙間が形成される。この隙間は、想定される主軸14に対するガイドブッシュ装置80の軸ずれ量より大きく設定される。また、ボルト穴87aの大径穴部87a1の内周面とボルト48aの頭部の間には、ガイドブッシュ装置80を主軸14の中心軸に合わせるための隙間が形成される。
フランジ87のボルト穴87aと固定台41のねじ穴41bがZ軸方向に並んだ状態で、ボルト穴87aとねじ穴41bにボルト48aが挿通されることにより、フランジ87は固定台41に固定される。
ねじ穴87bは、ボルト穴87aよりも内周側に位置し、主軸14の後端側(
図4の左側)に向けて開口するねじ穴である。ねじ穴87bには、フランジ87をカバー部385に固定するボルト48bが螺合される。
【0017】
スリーブ381は円筒状をなす。スリーブ381の後端は、主軸14の外周面に固定されている。スリーブ381の内周面にはZ軸方向に延びる2つの凹部381aが形成される。2つの凹部381aは、スリーブ381の周方向において180°間隔で配置される。凹部381aには、ピン382の頭部382aがZ軸方向に摺動可能に位置する。
【0018】
ホルダ部383は、円環状に形成され、ワーク支持部384の外周面における後端側(
図4の左側)に固定される。ホルダ部383の外周面には、ピン382の軸部382bが嵌まるピン穴383aが形成される。ピン382の軸部382bはピン穴383a内に保持される。
ピン382は、スリーブ381とホルダ部383の間で回転力を伝達する。また、ピン382の頭部382aは、主軸14のZ軸方向の移動に伴い、スリーブ381の凹部381a内を移動する。
【0019】
ワーク支持部384は、円筒状に形成され、主軸14に把持されるワークWを外周から支持する。カバー部385は、ワーク支持部384の外周を囲む略円筒状をなし、軸受を介してワーク支持部384を回転可能に支持する。
カバー部385は、カバー部385の径方向外側に位置する鍔部385aを備える。鍔部385aには複数のボルト穴385bが形成される。ボルト穴385bは、ボルト48bの軸部が挿通されるようにZ軸方向に沿って貫通している。カバー部385のボルト穴385bとフランジ87のねじ穴87bがZ軸方向に並んだ状態で、ボルト穴385bとねじ穴87bにボルト48bが挿通されることにより、カバー部385はフランジ87に固定される。
また、鍔部385aには、主軸14がケレ式回転ガイドブッシュ装置380に近づいたときにスリーブ381の先端部が位置する凹部385hが形成される。凹部385hが形成されることにより、主軸14の移動可能範囲を長くすることができる。
【0020】
ケレ式回転ガイドブッシュ装置380においては、主軸14が軸回転すると、この回転力がスリーブ381、ピン382及びホルダ部383を介してワーク支持部384に伝達される。これにより、ワーク支持部384を主軸14と同期して回転させることができる。
【0021】
(ベルト駆動ガイドブッシュ装置480)
図2に示すように、工作機械1にベルト駆動ガイドブッシュ装置480が搭載される際、工作機械1には、ベルト駆動モータ15及びベルト16が搭載される。ベルト駆動ガイドブッシュ装置480は、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480と離れた位置に設けられるベルト駆動モータ15が駆動されることによりベルト16を介して回転する。ベルト駆動ガイドブッシュ装置480は、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580に比べてZ軸方向のサイズが小さくなるため残材長が短くなるというメリットを有する。一方、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480は、ベルト16を介して駆動されるため、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580に比べて主軸14の回転位相に対してずれが生じやすいことや加工面品位が劣るというデメリットを有する。ベルト駆動ガイドブッシュ装置480のZ軸方向の長さは約192mmである。
【0022】
図5に示すように、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480は、ワーク支持部484と、カバー部485と、フランジ87と、を備える。ベルト駆動ガイドブッシュ装置480におけるワーク支持部484、カバー部485及びフランジ87は、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380におけるワーク支持部384、カバー部385及びフランジ87と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
図2に示すように、ベルト駆動モータ15は、ベッドSの上面であって、主軸14に対してX軸方向(ワークWの軸方向に直交する方向)に並ぶように設置される。ベルト駆動ガイドブッシュ装置480以外のガイドブッシュ装置80が搭載される場合でも、ベッドSの上面にはベルト駆動モータ15が設置可能なスペースが確保されている。ベルト駆動モータ15のZ軸方向に延びる出力軸にはプーリ15aが固定されている。プーリ15aは、ワーク支持部484の後端部に対してX軸方向に対向して位置する。ベルト16は、プーリ15aとワーク支持部484の間で回転力を伝達するように、プーリ15aとワーク支持部484の後端部の間に掛け回される。
図示しない制御部による制御のもとベルト駆動モータ15が駆動すると、プーリ15aが回転し、この回転力はベルト16を介してワーク支持部484に伝達される。これにより、ワーク支持部484は、主軸14と同期して回転する。
【0023】
(ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580)
図6に示すように、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580は、図示しない制御部による制御のもとで内蔵されるダイレクト駆動モータ588が駆動することにより主軸14と同期して回転する。ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580は、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480に比べて安定して駆動するため加工面品位及び静粛性が高いというメリットを有する。一方、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580は、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480に比べてZ軸方向のサイズが大きくなるため、残材長が長くなるというデメリットを有する。例えば、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580は、長さ300mm程度の製品の加工に適しており、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580のZ軸方向の長さは約225mmである。
詳しくは、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580は、ダイレクト駆動モータ588に加えて、ワーク支持部584と、カバー部585と、フランジ87と、を備える。ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580におけるワーク支持部584、カバー部585及びフランジ87は、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380におけるワーク支持部384、カバー部385及びフランジ87と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0024】
ダイレクト駆動モータ588は、コイルを有しカバー部585内に固定されるステータ58Sと、ワーク支持部584の外周面に固定される磁石を有するロータ58Rと、を備える。図示しない制御部による制御のもとステータ58Sのコイルに通電されることにより、ロータ58Rはワーク支持部584とともに回転する。
【0025】
(静止型ガイドブッシュ装置280)
図7に示すように、静止型ガイドブッシュ装置280は、主軸14によるワークWの回転に対して静止した状態でワークWを支持する。静止型ガイドブッシュ装置280は、径が小さいワークW(例えば、直径3mm以下)の加工に適しているというメリットを有する。一方、静止型ガイドブッシュ装置280は、主軸14が高速になると、ワークWと静止型ガイドブッシュ装置280の摩擦によりワークWが発熱して焼き付くおそれがあるというデメリットを有する。静止型ガイドブッシュ装置280のZ軸方向の長さは約95mmである。
静止型ガイドブッシュ装置280は、ワーク支持部284と、カバー部285と、フランジ87と、を備える。
カバー部285内にはワーク支持部284が固定されている。よって、ワーク支持部284は回転しない。この点を除き、静止型ガイドブッシュ装置280におけるワーク支持部284、カバー部285及びフランジ87は、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380におけるワーク支持部384、カバー部385及びフランジ87と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0026】
(ガイドブッシュレス装置180)
図8に示すように、ガイドブッシュレス装置180は、主軸14によって把持されたワークWを支持しない。ガイドブッシュレス装置180は、長さが短い製品を高精度で加工できるというメリットを有する。一方、ガイドブッシュレス装置180は、ワークWを支持しないため長さが長い製品の加工に適さないというデメリットを有する。ガイドブッシュレス装置180は、フランジ87と、カバー189と、を備える。フランジ87は、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380のフランジ87と同様の構成である。カバー189は、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380のカバー部385と同様に、ボルト48bによりフランジ87に固定されている。カバー189は、略円筒状に形成され、主軸14の外周を囲みZ軸方向に貫通する空洞部189aが形成される。空洞部189aは、主軸14の先端のチャックナット14c(
図4参照)を挿入可能なサイズに形成されている。
【0027】
(ガイドブッシュ装置80の取り付け方法)
ユーザは、ガイドブッシュ装置80の上記5つのタイプのメリットとデメリットを勘案して、静止型ガイドブッシュ装置280、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580及びガイドブッシュレス装置180のうち何れかを選択する。この選択する工程は、例えば、ユーザが製品カタログに記載の上記5つのタイプから選択して購入する工程であってもよいし、購入済みの上記5つのタイプから選択する工程であってもよい。そして、ユーザは、選択したタイプのガイドブッシュ装置80のフランジ87を固定台41に取り付ける。
詳しくは、
図4~
図8に示すように、選択されたガイドブッシュ装置80におけるフランジ87のボルト穴87aを固定台41のねじ穴41bにZ軸方向に並べた状態で、各ボルト穴87aとねじ穴41bに各ボルト48aが挿通される。ボルト穴87a(正確には、
図4に示す小径穴部87a2)はボルト48aの軸部に対して隙間を有する。この隙間を利用して、フランジ87の位置を固定台41に対してY軸方向及びX軸方向に調整することで、ガイドブッシュ装置80を主軸14に対して軸合わせさせる。ガイドブッシュ装置80の軸合わせが完了した後、ボルト48aにより固定台41に対してフランジ87が締結されることにより、ガイドブッシュ装置80が固定台41に固定される。以上で、ガイドブッシュ装置80の固定台41への取り付けが完了する。
また、各ボルト48aを固定台41から取り外すことにより、ガイドブッシュ装置80を固定台41から取り外すことができ、その後、別のタイプのガイドブッシュ装置80をボルト48aを介して固定台41に装着することができる。このように、工作機械1におけるガイドブッシュ装置80を各タイプ間で交換することができる。
【0028】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、
図5及び
図6に示すように、ワークWを把持しつつ軸回転させる主軸14と、ベッドSに固定される固定台41と、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580のうちから選択された一つであり、固定台41に着脱可能に形成され、主軸14に把持されたワークWの周囲を支持する交換式のガイドブッシュ装置80と、を備える。
この構成によれば、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480とダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580の上述したメリットとデメリットを勘案して、加工要求に適したガイドブッシュ装置80を選択して、その選択したガイドブッシュ装置80を固定台41に取り付けることが可能となる。従って、加工要求に適したタイプのガイドブッシュ装置80に交換することができる。
【0029】
(2)工作機械1は、ワークWを把持しつつ軸回転させる主軸14と、ベッドSに固定される固定台41と、静止型ガイドブッシュ装置280、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580及びガイドブッシュレス装置180のうちから選択された一つであり、固定台41に着脱可能に形成され、主軸14に把持されたワークW又は主軸14の周囲を囲む交換式のガイドブッシュ装置80と、を備える。
この構成によれば、5つのタイプのガイドブッシュ装置80から加工要求に適したタイプのガイドブッシュ装置80に交換することができる。
【0030】
(3)ガイドブッシュ装置80は、
図5及び
図6に示すように、固定台41にボルト48aにより固定されるフランジ87を備える。フランジ87には、ガイドブッシュ装置80を主軸14に対して軸合わせ可能となるようにボルト48aの軸部よりも大きいサイズのボルト穴87aが形成される。
従来、ガイドブッシュ装置を主軸に対して軸合わせするために、固定台とベッドの間に板材を挟み込む方法が採用されていた。しかし、この方法は、種々の部材が搭載されて重量のある固定台を持ち上げたうえで板材を挟み込む必要があり面倒であった。この点、本実施形態の構成によれば、ボルト48aの軸部とフランジ87のボルト穴87aの隙間を利用して、フランジ87の位置を固定台41に対して調整することができる。この際、ガイドブッシュ装置80を持ち上げるだけで済むため、簡単にガイドブッシュ装置80を主軸14に対して軸合わせ可能となる。
また、各タイプのガイドブッシュ装置80は、それぞれ同一のフランジ87を備える。よって、フランジ87の汎用性を高めることができ、部品の種類を少なくすることができる。
【0031】
(4)ガイドブッシュ装置80を工作機械1に取り付ける方法は、静止型ガイドブッシュ装置280、ケレ式回転ガイドブッシュ装置380、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480、ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580及びガイドブッシュレス装置180のうち何れか一つのガイドブッシュ装置80をユーザが選択する工程と、ユーザにより選択されたガイドブッシュ装置80のフランジ87を固定台41に取り付ける工程と、を含む。
この構成によれば、ベルト駆動ガイドブッシュ装置480及びダイレクト駆動ガイドブッシュ装置580を含む複数のタイプのガイドブッシュ装置80からユーザにより一つのタイプが選択される。この際、上述した各タイプのメリットとデメリットが勘案される。従って、加工要求に適したタイプのガイドブッシュ装置80に交換することができる。
【0032】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0033】
(変形例)
上記実施形態においては、ガイドブッシュ装置80の5つのタイプのうち、ガイドブッシュレス装置180、静止型ガイドブッシュ装置280及びケレ式回転ガイドブッシュ装置380の少なくとも何れかが省略されていてもよい。
【0034】
上記実施形態においては、フランジ87は、ガイドブッシュ装置80の一部であったが、これに限らず、ガイドブッシュ装置80とは別の部材として予め固定台41に取り付けられていてもよい。この場合、ガイドブッシュ装置80のカバー部285,385,485,585がボルト48bによりフランジ87に取り付けられることにより、ガイドブッシュ装置80がフランジ87を介して固定台41に取り付けられる。
【0035】
上記実施形態においては、フランジ87とカバー部285,385,485,585は別体で構成されていたが、これに限らず、一体で形成されてもよい。これにより、ガイドブッシュ装置80における部品点数を削減することができる。
【0036】
上記実施形態においては、
図4に示すように、フランジ87には、ガイドブッシュ装置80を主軸14に対して軸合わせ可能となるようにボルト48aの軸部よりも大きいサイズのボルト穴87aが形成されていた。しかし、これに限らず、鍔部385aのボルト穴385bは、ボルト48bの軸部よりも大きいサイズに形成され、ボルト穴385bとボルト48bの軸部の間の隙間を利用して、ガイドブッシュ装置80を主軸14に対して軸合わせ可能に形成されていてもよい。
また、ボルト48a,48bの軸部とボルト穴87a,385bの間に軸合わせ可能な程度に隙間がなくてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…工作機械、10…主軸ユニット、11…主軸台、15…ベルト駆動モータ、16…ベルト、41…固定台、41b,87b…ねじ穴、41d…筒状部、48a,48b…ボルト、80…ガイドブッシュ装置、87…フランジ、87a,385b…ボルト穴、180…ガイドブッシュレス装置、189…カバー、280…静止型ガイドブッシュ装置、284,384,484,584…ワーク支持部、285,385,485,585…カバー部、380…ケレ式回転ガイドブッシュ装置、381…スリーブ、381a…凹部、382…ピン、383…ホルダ部、385a…鍔部、480…ベルト駆動ガイドブッシュ装置、580…ダイレクト駆動ガイドブッシュ装置、588…ダイレクト駆動モータ、S…ベッド、W…ワーク