(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】回転軸と回転部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20220914BHJP
H02N 1/08 20060101ALI20220914BHJP
G04G 19/00 20060101ALN20220914BHJP
G04C 10/00 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
F16D1/06 230
H02N1/08
G04G19/00 Y
G04C10/00 C
(21)【出願番号】P 2018232564
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】徳永 大介
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許出願公開第699680(CH,A2)
【文献】特開2016-185022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00
G04B 13/00
G04C 3/00-99/00
G04G 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が固定される孔が形成され、前記回転軸の軸回りの外周縁が異形に形成された回転規制部材と、
前記回転規制部材の外周縁と係合した異形の内周縁を有する回転板と、
前記回転板を前記回転軸の軸方向の両側から挟んだ、前記回転軸に固定された2つの回転板押さえ板と、を備
え、
前記回転板の内周縁が前記回転規制部材の外周縁より大きく形成され、前記回転規制部材は前記回転板に緩く挿入された状態である、回転板と回転軸との固定構造。
【請求項2】
2つの前記回転板押さえ板のうち1つは、前記回転規制部材と一体に形成されている請求項1に記載の回転板と回転軸との固定構造。
【請求項3】
2つの前記回転板押さえ板のうち1つは、前記回転軸と一体に形成されている請求項1又は2に記載の回転板と回転軸との固定構造。
【請求項4】
前記回転板の少なくとも一方の面に対向して配置された基板を備え、
前記回転板と前記基板とがそれぞれ互いに対向する面のうち一方に、帯電膜が形成され、他方に、対向電極が形成され、
前記基板に対して前記回転板が前記回転軸の軸回りに回転することにより、前記帯電膜と前記対向電極との間で静電誘導変換を行う、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の回転板と回転軸との固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸と回転部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電誘導変換器を備えた時計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この時計に組み込まれた静電誘導変換器は、回転する回転部材と、固定された対向基板と、回転部材又は対向基板の一方に設けられた帯電膜と、他方に、帯電膜に対向して設けられた対向電極と、を有する。
【0003】
回転部材は、例えば機械式時計における、腕の振りによってゼンマイを自動的に巻き上げる自動巻き機構に用いられている回転錘に連結することで回転する。回転部材が回転することで、帯電膜と対向電極との間で相対的な動き(回転)が生じ、この相対的な動きにより、帯電膜と対向電極との平面視で重なる領域の面積が変化して、帯電膜と対向電極との間で交流電流が発生し、発電を行う。帯電膜は、いわゆるエレクトレット材料、つまり電荷を帯びた誘電体で形成され、自ら電場を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、静電誘導変換器は、帯電膜と対向基板との間の隙間が狭い程、発電量やモータとしての駆動力を増大させることができ、隙間の寸法は例えば数十[μm]という極狭い間隔に設定されている。また、帯電膜と対向基板との間の隙間は、上述した極狭い間隔であるため、回転したときに隙間が変化しないように、高い平面度が求められる。
【0006】
回転体は、時計の歯車輪列を構成する個々の歯車部材と同様に、歯車に相当する回転板と、回転板の中心に設けられた、真に相当する回転軸と、で構成されている。歯車部材の場合は、歯車の中心に形成された孔に、真を圧入して構成されるのが一般的である。
【0007】
しかし、静電誘導変換器の回転体においては、上述したように、回転板に対して高い平面度が求められており、歯車部材と同様に回転軸を回転板に圧入すると、回転板は、回転軸の圧入によって歪み、求められる平面度を確保することができない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、回転板に対して回転軸を圧入することなく固定することができる回転板と回転軸との固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転軸が固定される孔が形成され、前記回転軸の軸回りの外周縁が異形に形成された回転規制部材と、前記回転規制部材の外周縁と係合した異形の内周縁を有する回転板と、前記回転板を前記回転軸の軸方向の両側から挟んだ、前記回転軸に固定された2つの回転板押さえ板と、を備えた回転板と回転軸との固定構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転板と回転軸との固定構造によれば、回転板に対して回転軸を圧入することなく固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る回転体と回転軸との固定構造の一実施形態で固定された回転部材を含む静電誘導変換器の一部を示す断面図である。
【
図2】
図1の回転部材の固定構造の詳細を示す断面図である。
【
図3】
図2の回転部材を構成している回転板を示す平面図である。
【
図4】
図4は回転部材を構成している回転止め板(回転規制部材の一例)を示す平面図である。
【
図5】回転部材を構成している2つの回転板押さえ板を示す平面図である。
【
図6】
図2に示した実施形態の変形例1を示す
図2相当の断面図である。
【
図7】
図2に示した実施形態の変形例2を示す
図2相当の断面図である。
【
図8】
図6に示した変形例1のさらなる変形例3を示す
図6相当の断面図である。
【
図9】
図7に示した変形例2のさらなる変形例4を示す
図7相当の断面図である。
【
図10】
図3に示した実施形態の変形例5を示す
図3相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る回転板と回転軸との固定構造の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
<実施形態>
図1は本発明に係る回転体と回転軸との固定構造の一実施形態で固定された回転部材100を含む静電誘導変換器の一部を示す断面図、
図2は
図1の回転部材100の固定構造の詳細を示す断面図、
図3は
図2の回転部材100を構成している回転板20を示す平面図、
図4は回転部材100を構成している回転止め板30(回転規制部材の一例)を示す平面図、
図5は回転部材100を構成している2つの回転板押さえ板41,42を示す平面図である。
【0014】
(静電誘導変換器)
図1に示した静電誘導変換器は、例えば、腕時計の内部に設けられている。回転部材100と、回転部材100の回転板20のおもて面20aに対向して配置されたおもて面側の対向基板210と、回転板20の裏面20bに対向して配置された裏面側の対向基板220と、図示を略した電力制御回路と、を有している。
【0015】
おもて面側の対向基板210及び裏面側の対向基板220は、回転板20のおもて面20a及び裏面20bに対してそれぞれ平行に、かつ、例えば30[μm]程度の間隔を以て、回転板20に接触しないように配置されている。おもて面側の対向基板210及び裏面側の対向基板220は、腕時計の例えばケースやムーブメントの地板等に固定されていて動かない。
【0016】
回転板20は、
図2,3に示すように、おもて面20aと裏面20bとにそれぞれ、帯電膜22,23が形成されている。一方、おもて面側の対向基板210の、回転板20のおもて面20aに対向する面には対向電極212が形成され、裏面側の対向基板220の、回転板20の裏面20bに対向する面には対向電極222が形成されている。
【0017】
そして、回転部材100が回転することで、帯電膜22と対向電極212との間及び帯電膜23と対向電極222との間で相対的な動き(回転)が生じ、この相対的な動きにより、帯電膜22と対向電極212との平面視で重なる領域の面積及び帯電膜23と対向電極222との平面視で重なる領域の面積が変化する。これにより、帯電膜22と対向電極212との間及び帯電膜23と対向電極222との間でそれぞれ交流電流が発生して発電され、この発電された電気エネルギが図示しない電力制御回路に入力される。
【0018】
(回転部材)
回転部材100は、
図2に示すように、回転軸10と、回転板20と、回転止め板30と、2つの回転板押さえ板41,42と、を備えた構成である。回転軸10は金属材料で形成されている。回転軸10は、外部からの駆動力を受けて軸心C回りに回転する。
【0019】
回転止め板30は、金属材料で形成されている。回転止め板30は、
図2,4に示すように、中心(軸心Cに一致)に、回転軸10が圧入される孔31bが形成され、軸心C回りの外周縁31aが、例えば鍵穴状に形成されている。ここで、鍵穴状は、円形と矩形とが、少なくとも一部同士が平面視で重なり合って形成された最外形の形状である。
【0020】
なお、回転止め板30の外周縁31aの形状は鍵穴状に限定されず、軸心C回りの真円以外であればよい。すなわち、軸心Cからの距離が軸心C回りの周方向において一部でも異なる外周縁31aの形状(異形)であれば、多角形や、楕円形、星形等種々の形状を適用することができる。
【0021】
孔31bは回転軸10が圧入されるため、その圧入された状態では、回転止め板30は回転軸10との間で滑りが生じることなく一体に回転する。なお、回転止め板30は、板厚(軸心C方向に沿った寸法)が、後述する回転板20の基板21の板厚よりも薄いことが好ましい。
【0022】
回転板20は、
図2,3に示すように、円板状の基板21と、この基板21の両面(おもて面21a、裏面21b)にそれぞれ形成された帯電膜22,23と、を有する。基板21のおもて面21aは、回転板20のおもて面20aに対応し、基板21の裏面21bは、回転板20の裏面20bに対応している。そして、おもて面21aに帯電膜22が形成され、裏面21bに帯電膜23が形成されている。
【0023】
基板21は、例えば金属材料で形成されているが、樹脂材料等、金属材料以外の材料で形成されていてもよい。基板21は、中心(軸心Cに一致)に、回転止め板30の外周縁31aに対応した内周縁で形成された孔21cを有する。孔21cは、具体的には、回転止め板30の外周縁31aと同じ形状である鍵穴状に形成され、回転止め板30の外周縁31aより僅かに大きく形成されている。したがって、孔21cに回転止め板30を嵌め合わせた状態では、回転止め板30は孔21cに緩く挿入された状態となる。
【0024】
ただし、この緩く挿入された状態であっても、回転止め板30が孔21cに対して空回りすることは無く、回転止め板30が軸心C回りに回転すると、回転止め板30の外周縁31aの鍵穴形状が基板21の孔21cの鍵穴形状に引っ掛かって、基板21も回転止め板30とともに軸心C回りに回転する。
【0025】
帯電膜22,23は、いわゆるエレクトレット材料、つまり電荷を帯びた誘電体で形成されていて、自ら電場を形成する。帯電膜22と帯電膜23とは、基板21に形成されている面の違い(おもて面21aであるか、又は裏面21bであるか、の違い)に対応した符号の違いであり、材質、特性、形状、数量等は全く同じである。
【0026】
帯電膜として用いられるエレクトレット材料は、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
【0027】
エレクトレット材料としてはそのほかに、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0028】
帯電膜22,23は、
図3に示すように、一つ一つは扇状に形成され、その扇状の帯電膜22,23が、中心(軸心C)回りの等角度間隔で周方向に複数(
図3においては、例えば18個)設けられている。
【0029】
回転板押さえ板41,42は、金属材料で形成されている。回転板押さえ板41,42は、
図5に示すように、中心(軸心Cに一致)に、回転軸10が圧入される孔41b,42bが形成され、外周縁41a,42aが中心からの距離が周方向に一定である真円に形成された円板状の部材である。
【0030】
回転板押さえ板41,42は、
図2に示すように、回転板20の基板21を回転軸10の軸方向の両側から挟んだ配置となるように、回転軸10がそれぞれ圧入される。なお、
図2において、回転軸10の、回転板押さえ板41に上側から接している段付きの部分は、回転軸10の軸部11に一体に形成された、腕時計の輪列機構に用いられる車のかな12である。なお、回転軸10にかな12は形成されていなくてもよい。
【0031】
なお、2つの回転板押さえ板41,42は、
図5においては同一のものとして記載しているが、実際は
図2に示すように、外径及び中心に形成されている孔41b,42bの内径が互いに異なる。
【0032】
具体的には、
図2に示すように、回転板押さえ板42の外径は回転板押さえ板41の外径よりも僅かに小さく、回転板押さえ板42の内径は回転板押さえ板41の内径よりも僅かに小さい。ただし、2つの回転板押さえ板41,42は、外径及び内径が同一であってもよいし、外径のみ又は内径のみが互いに異なっていてもよい。
【0033】
両回転板押さえ板41,42は、外径が、回転板20の孔21cよりも大きく設定され、内径が、軸部11が圧入可能の寸法に設定されていればよく、両回転板押さえ板41,42が同じであるか否かを問わない。
【0034】
図2に示した回転部材100は、回転軸10の軸部11に、図示下方から、回転板押さえ板41が、孔41bに軸部11を圧入するように挿入させて、回転板押さえ板41を、かな12の下面に突き当てた状態に配置する。軸部11と孔41bとが圧入されているため、回転板押さえ板41は回転軸10と一体に、軸心C回りに回転する。また、軸部11と孔41bとが圧入されているため、回転板押さえ板41は、軸心C方向についても固定されていて動かない。
【0035】
回転板押さえ板41の図示下方には、孔31bに軸部11を圧入するように挿入させて、回転止め板30を、回転板押さえ板41の下面に突き当てた状態に配置する。軸部11と孔31bとが圧入されているため、回転止め板30は回転軸10と一体に、軸心C回りに回転する。回転止め板30は軸部11に圧入されているため、軸心C方向についても固定されていて動かない。
【0036】
回転止め板30の半径方向外側には、孔21cに回転止め板30の外周縁31aに嵌め合わせて、おもて面20aを図示上方に向けた姿勢で、回転板20を軸部11に挿入し、基板21のおもて面21aを回転板押さえ板41に突き当てた状態に配置する。孔21cは回転止め板30の外周縁31aより大きく形成されているため、回転板20は、回転止め板30が圧入されて状態ではなく、緩く挿入された状態となる。
【0037】
回転止め板30及び回転板20の図示下方には、回転板押さえ板42を、図示下方から、孔42bに軸部11を圧入するように挿入させて、回転板押さえ板42を、回転板20の基板21の裏面21bに突き当てた状態に配置する。軸部11と孔42bとが圧入されているため、回転板押さえ板42は回転軸10と一体に、軸心C回りに回転する。また、軸部11と孔42bとが圧入されているため、回転板押さえ板42は、軸心C方向についても固定されていて動かない。
【0038】
回転止め板30の板厚は、基板21の板厚よりも薄く、しかも、回転止め板30は、上方の回転板押さえ板41に突き当てられた状態で固定されているため、下方から圧入された回転板押さえ板42は、回転止め板30の下面には接触せず、回転板20の基板21の裏面21bにのみ接した状態で配置される。
【0039】
なお、2つの回転板押さえ板41,42は、
図5においては同一のものとして記載しているが、実際は
図2に示すように、外径及び中心に形成されている孔41b,42bの内径が互いに異なる。
【0040】
具体的には、
図2に示すように、回転板押さえ板42の外径は回転板押さえ板41の外径よりも僅かに小さく、回転板押さえ板42の内径は回転板押さえ板41の内径よりも僅かに小さい。ただし、2つの回転板押さえ板41,42は、外径及び内径が同一であってもよいし、外径のみ又は内径のみが互いに異なっていてもよい。
【0041】
以上のように構成された実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造によれば、回転板20は、軸心C方向については、回転軸10に圧入して固定された2つの回転板押さえ板41,42に挟まれた状態となるため、軸心C方向の位置が固定される。
【0042】
また、本実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造によれば、回転板20は、軸心C回りの回転方向については、回転軸10に圧入して固定された回転止め板30の外周縁31aと、回転板20の孔21cとの係合により、回転止め板30と疑似的に一体化され、回転止め板30とともに回転する。
【0043】
したがって、本実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造によれば、回転板20に回転軸10を圧入することなく、回転板20を回転軸10に固定することができる。これにより、回転板20に回転軸10を圧入した場合に生じ得る回転板20の歪が発生せず、回転板20のおもて面20a及び裏面20bの平面度を高く維持することができる。
【0044】
したがって、本実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造が適用されて構成された回転部材100を、
図1に示した静電誘導変換器に用いた場合に、回転板20と対向基板210,220との間の隙間を、例えば数十[μm]という極めて狭い一定寸法で、高精度に維持することができる。
【0045】
このことは、回転板20と対向基板210,220との間の隙間を極めて狭い一定寸法で高精度に維持する必要がある静電誘導変換器を、腕時計という狭い空間内に、初めて実装することを実現したものであり、極めて有用な効果を発揮する。
【0046】
本実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造は、回転止め板30の板厚が、基板21の板厚よりも薄いため、2つの回転板押さえ板41,42は、回転止め板30を挟むことなく回転板20のみを挟むことができ、これにより、回転板20を、軸心C方向にがたつかせることなく固定することができる。
【0047】
上記説明は、2つの回転板押さえ板41,42及び回転止め板30と回転軸10とを圧入によって固定する例であるが、2つの回転板押さえ板41,42及び回転止め板30と回転軸10との固定は、圧入という固定に限定されず、接着や溶接といった固定を適用することもできる。
【0048】
<変形例1>
図6は
図2に示した実施形態の変形例1を示す
図2相当の断面図である。
【0049】
上述した実施形態の、回転板20と回転軸10との固定構造は、回転板20を軸心C方向に固定する回転板押さえ板41,42が、他の部材とは独立した別体の部材であったが、これらの回転板押さえ板41,42は他の部材と一体に形成されたものでもよい。
【0050】
例えば、
図6に示すように、
図2に示した実施形態における回転止め板30と下側の回転板押さえ板42とに代えて、回転止め板30と回転板押さえ板42とが一体に形成された回転止め及び押さえ部材43を適用した変形例1も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、構成部品の点数を低減する効果もある。
【0051】
<変形例2>
図7は
図2に示した実施形態の変形例2を示す
図2相当の断面図である。
【0052】
また、
図7に示すように、
図2に示した実施形態における回転止め板30と上側の回転板押さえ板41とに代えて、回転止め板30と回転板押さえ板41とが一体に形成された回転止め及び押さえ部材44を適用した変形例2も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、構成部品の点数を低減する効果もある。
【0053】
<変形例3>
図8は
図6に示した変形例1のさらなる変形例3を示す
図6相当の断面図である。
【0054】
また、
図8に示すように、
図6に示した変形例1における回転軸10のかな12が上側の回転板押さえ板41を兼用するように、かな12の外径を大きく形成し、かな12が回転板20を押さえる機能を発揮する構成としてもよい。このように構成された変形例3も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、構成部品の点数をさらに低減する効果もある。
【0055】
<変形例4>
図9は
図7に示した変形例2のさらなる変形例4を示す
図7相当の断面図である。
【0056】
また、
図9に示すように、
図7に示した変形例1における回転軸10のかな12が回転止め及び押さえ部材44を兼用するように、かな12の外径を大きく形成し、かな12が回転板20を押さえる機能を発揮する構成としてもよい。このように構成された変形例4も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、構成部品の点数をさらに低減する効果もある。
【0057】
<変形例5>
図10は
図3に示した実施形態の変形例5を示す
図3相当の平面図である。
【0058】
実施形態における回転板20は、
図3に示したように、円板状の基板21に、中心回りに扇状の帯電膜22,23が所定角度間隔で複数形成されたものであるが、回転板20において静電誘導変換器の発電動作を担う部分は、帯電膜22,23の部分のみである。したがって、回転板20のうち基板21に、帯電膜22,23が形成されていない部分は、発電動作の観点からは無くてもよい。
【0059】
そこで、
図10に示すように、回転板120(実施形態における回転板20に対応)の基板121(実施形態における基板21に対応)を、帯電膜122,123(実施形態における帯電膜22,23に対応)の形成されている部分及び中心部(実施形態における孔21cに対応する孔121cが形成された部分)を除いて、除去した構成としてもよい。この場合、帯電膜22,23が形成された扇状の部分125が、隣接した他の扇状の部分125から、中心部を除いて分離した構造となる。
【0060】
このように構成された変形例5も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、基板121が軽量化される効果もある。
【0061】
【0062】
変形例5の回転板120は、帯電膜122,123は扇状の部分125だけに形成されて、基板121の中心部分には形成されていないが、基板121の中心部分も含めて形成してもよく、基板121の全面に形成されていてもよい。
【0063】
すなわち、
図11に示した変形例6の回転板120は、帯電膜122,123が、扇状の部分125だけでなく、基板121の中心部分も含めて基板121の全面に形成されている。
【0064】
このように、基板121の中心部分に帯電膜122,123が形成されている回転板120は、
図12に示すように、回転板押さえ板41は、基板121のおもて面121aを覆った帯電膜122に突き当てた状態となり、回転板押さえ板42は、基板121の裏面121bを覆った帯電膜123に突き当てた状態となる。これにより、回転板120は、回転板押さえ板41,42により、軸心C方向に挟まれた状態で固定される。
【0065】
このように構成された変形例6も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、基板121が軽量化される効果もある。
【0066】
<変形例7>
図13は
図10に示した変形例5の別の変形例7を示す
図10相当の平面図である。
【0067】
変形例5,6における回転板120は、基板121が、帯電膜122,123の形成された扇状の部分125及び中心部を除いて存在しないため、回転中に、各扇状の部分125の外周側の先端が、独立して不規則に、上下方向(軸心C方向)に振れる恐れがある。
【0068】
そこで、
図13に示すように、変形例7における回転板120は、扇状の部分125の外周側の先端同士を連結した状態とするように、基板121の最外周の部分126を環状に残した状態とすることができる。この場合、帯電膜22,23が形成された扇状の部分125は、それぞれの外周側の先端が、隣接した他の扇状の部分125の外周側の先端と、環状に残された基板121の部分126で連結されているため、各扇状の部分125の外周側の先端が、独立して不規則に振れるのを防止又は抑制することができる。
【0069】
このように構成された変形例7も、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。しかも、変形例5の回転板120よりも剛性を高めることもできる。
【0070】
<その他の変形例>
上述した実施形態及び各変形例の、回転板20と回転軸10との固定構造は、回転板20に帯電膜22,23が形成されて、対向基板210,220に、対向電極212,222が形成されたものであるが、回転板20に対向電極212,222が形成されて、対向基板210,220に帯電膜22,23が形成されていてもよい。
【0071】
また、回転板20のおもて面20aに帯電膜22を形成し、裏面20bに対向電極222を形成し、対向基板210に対向電極212を形成し、対向基板220に帯電膜23を形成した構成を採用することもできる。もちろんこれとは反対に、回転板20のおもて面20aに対向電極212を形成し、裏面20bに帯電膜23を形成し、対向基板210に帯電膜22を形成し、対向基板220に対向電極222を形成した構成を採用することもできる。
【0072】
なお、回転板20の両面20a,20bにそれぞれ帯電膜22,23を形成し、これらの両面20a,20bにそれぞれ対向して対向電極212,222を設けた構成でなく、回転板20の一方の面(例えば、おもて面20a)にのみ帯電膜22を形成し、この面に対向する側にのみ対向電極212を形成してもよい。
【0073】
上述した実施形態及び各変形例の、回転板と回転軸との固定構造は、この回転板と回転軸との固定構造を適用して形成された回転部材を、静電誘導変換器の一部として適用する例であるが、本発明に係る回転板と回転軸との固定構造は、静電誘導変換器の一部として適用するものに限定されない。
【0074】
すなわち、本発明に係る回転板と回転軸との固定構造は、回転板に対して回転軸を圧入することなく回転板に回転軸を固定することができるため、圧入によって生じる回転板の歪が発生することが無い。したがって、圧入によって歪が発生し易い板厚の薄い回転板を用いる必要があって、しかも、回転板に、平面度が求められるものについては、本発明は非常に有用であり、そのようなものについては、本発明を適用することができる。
【0075】
また、本発明に係る回転板と回転軸との固定構造は、対向基板210,220にそれぞれ正負が切り替わる電流を流すことで、回転板20を回転させるように、静電誘導変換器をモータとして用いる物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 回転軸
20 回転板
21 基板
30 回転止め板
31a 外周縁
31b 孔
41,42 回転板押さえ板
100 回転部材
C 軸心