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特許7141326構造物の構築方法、及び、岩盤の保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】構造物の構築方法、及び、岩盤の保護方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220914BHJP
   E21C 37/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
E21C37/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018234355
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094448
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】富樫 昇
(72)【発明者】
【氏名】田中 恵祐
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151155(JP,A)
【文献】特開平11-293885(JP,A)
【文献】特開昭51-036735(JP,A)
【文献】特開昭52-124728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E21C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊する破壊工程と、
破壊された前記モルタル又は前記コンクリートを前記岩盤面から除去する除去工程と、
前記モルタル又は前記コンクリートが除去された前記岩盤面を所定の厚さ分掘削して掘削面を形成する掘削工程と、
前記掘削面上に構造物を構築する構築工程と、
を含み、
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートに対する前記熱膨張性粒子の混合割合が、前記岩盤面に近づくほど高くなっている、構造物の構築方法。
【請求項2】
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊する破壊工程と、
破壊された前記モルタル又は前記コンクリートを前記岩盤面から除去する除去工程と、
前記モルタル又は前記コンクリートが除去された前記岩盤面上に構造物を構築する構築工程と、
を含み、
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートに対する前記熱膨張性粒子の混合割合が、前記岩盤面に近づくほど高くなっている、構造物の構築方法。
【請求項3】
前記吹付工程に先立って網状の熱伝導性部材を前記岩盤面上に敷設する敷設工程を更に含み、
前記破壊工程では、前記熱伝導性部材を加熱することにより、前記岩盤面上の、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱する、請求項1又は請求項2に記載の構造物の構築方法。
【請求項4】
前記熱伝導性部材は、前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートから外部に露出する露出部を有し、
前記破壊工程では、前記露出部を加熱することにより、前記熱伝導性部材を加熱する、請求項3に記載の構造物の構築方法。
【請求項5】
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートのうち、前記熱膨張性粒子が混合している領域が、前記岩盤面に隣接しており、かつ、前記熱伝導性部材に接触している、請求項3又は請求項4に記載の構造物の構築方法。
【請求項6】
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度が70℃以上である、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
【請求項7】
前記熱膨張性粒子は、前記モルタル又は前記コンクリートに対して目立つ色に着色されている、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
【請求項8】
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程を含み、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊することが可能であり、
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートに対する前記熱膨張性粒子の混合割合が、前記岩盤面に近づくほど高くなっている、岩盤の保護方法。
【請求項9】
前記吹付工程に先立って網状の熱伝導性部材を前記岩盤面上に敷設する敷設工程を更に含み、
前記熱伝導性部材を加熱することによって、前記岩盤面上の、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することが可能である、請求項8に記載の岩盤の保護方法。
【請求項10】
前記熱伝導性部材は、前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートから外部に露出する露出部を有し、
前記露出部を加熱することにより、前記熱伝導性部材を加熱することが可能である、請求項9に記載の岩盤の保護方法。
【請求項11】
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートのうち、前記熱膨張性粒子が混合している領域が、前記岩盤面に隣接しており、かつ、前記熱伝導性部材に接触している、請求項9又は請求項10に記載の岩盤の保護方法。
【請求項12】
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度が70℃以上である、請求項8~請求項11のいずれか1つに記載の岩盤の保護方法。
【請求項13】
前記熱膨張性粒子は、前記モルタル又は前記コンクリートに対して目立つ色に着色されている、請求項8~請求項12のいずれか1つに記載の岩盤の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤上に構築される構造物の構築方法、及び、岩盤の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム堤体などの構造物を構築する場合、地震などの地殻変動の影響を避けて構造物を長期にわたり安定的に保持するために、地盤を岩盤(基礎地盤)が露出するまで掘削した後に岩盤上に構造物を構築することがある。地盤を掘削して岩盤を露出させた後、構造物を構築するまでに、岩盤面が降雨・気温変化などの気候変動により劣化するのを抑制するために、例えば、当該岩盤面を吹付モルタルで覆う工法が採用され得る。このような工法は非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】(財)ダム技術センター編,「多目的ダムの建設」,平成17年度版,第6巻,施工編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の構造物がコンクリート製であって岩盤面に岩着させるものである場合には、当該構造物の構築に先立って前述の吹付モルタルを除去する必要がある。この吹付モルタルの除去では、岩盤面を傷つけないようにブレーカーやピックハンマーなどを用いて人力でモルタルの除去を行う必要があり、それゆえ、この除去作業は多大な労力と手間を要していた。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、岩盤面の保護用として岩盤面を覆うモルタル又はコンクリートを岩盤面から除去するときの作業負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の第1態様では、構造物の構築方法として、外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、岩盤面上の、硬化したモルタル又はコンクリート内の熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリートを破壊する破壊工程と、破壊されたモルタル又はコンクリートを岩盤面から除去する除去工程と、モルタル又はコンクリートが除去された岩盤面を所定の厚さ分掘削して掘削面を形成する掘削工程と、掘削面上に構造物を構築する構築工程と、を含む。ここにおいて、岩盤面に吹き付けられたモルタル又はコンクリートに対する熱膨張性粒子の混合割合が、岩盤面に近づくほど高くなっている。
【0007】
本発明の第2態様では、構造物の構築方法として、外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、岩盤面上の、硬化したモルタル又はコンクリート内の熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリートを破壊する破壊工程と、破壊されたモルタル又はコンクリートを岩盤面から除去する除去工程と、モルタル又はコンクリートが除去された岩盤面上に構造物を構築する構築工程と、を含む。ここにおいて、岩盤面に吹き付けられたモルタル又はコンクリートに対する熱膨張性粒子の混合割合が、岩盤面に近づくほど高くなっている。
【0008】
本発明の第3態様では、岩盤の保護方法として、外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程を含む。岩盤面上の、硬化したモルタル又はコンクリート内の熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリートを破壊することが可能である。ここにおいて、岩盤面に吹き付けられたモルタル又はコンクリートに対する熱膨張性粒子の混合割合が、岩盤面に近づくほど高くなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、岩盤面上の、硬化したモルタル又はコンクリート内の熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリートを破壊することが可能である。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面から除去するときの作業負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態におけるダム堤体の構築方法を示すフローチャート
図2】前記第1実施形態における掘削計画面とカバーロックと吹付モルタルと熱伝導性部材とを示す図
図3図1の部分Pの部分拡大図
図4】前記第1実施形態におけるモルタルの吹付方法の一例を示す図
図5】本発明の第2実施形態におけるダム堤体の構築方法を示すフローチャート
図6】前記第2実施形態における掘削計画面と第1の掘削面と吹付モルタルと熱伝導性部材とを示す図
図7】本発明の第3実施形態における熱伝導性部材の配置を示す図
図8】本発明の第4実施形態における熱伝導性部材を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態におけるダム堤体の構築方法を示すフローチャートである。図2は、掘削計画面とカバーロックと吹付モルタルと熱伝導性部材とを示す図である。
尚、本実施形態では、本発明に係る構造物の構築方法としてダム堤体の構築方法を例に挙げて以下説明するが、本発明に係る構造物はダム堤体に限らない。
また、本実施形態では、ダム堤体がコンクリート製である(すなわち、ダム堤体が、コンクリートダムの堤体である)として以下説明するが、ダム堤体の構成はこれに限らない。
【0013】
図示しないダム堤体は、水をせき止める機能を有する水理構造物である。
ダム堤体は、その基礎地盤となる岩盤の掘削後に、岩盤上に構築される。
【0014】
この岩盤の掘削では、大量の土や岩を短期間で掘削することが要求される一方で、掘削計画面α付近の岩盤に損傷を与えないようにする必要がある。そのため、一般に、掘削計画面αまでの掘削は、粗掘削(後述するステップS1)と仕上げ掘削(後述するステップS7)とに分けて行われる。
【0015】
図1に示すように、ダム堤体の構築方法では、まず、ステップS1にて、地盤の粗掘削(基礎掘削)を行う。この粗掘削により、岩盤面(基礎地盤の表面)である第1の掘削面1が外部に露出する。すなわち、第1の掘削面1は、地盤を掘削して形成されたものである。
粗掘削では、地盤が硬岩である場合には火薬を用いた爆破掘削工法が採用され、表土や軟岩、風化岩などである場合にはブルドーザ、リッパなどを用いた機械掘削方法が採用される。
【0016】
粗掘削では、掘削計画面αまでの所定の厚さt1分の岩盤を残す。すなわち、第1の掘削面1と掘削計画面αとの間の距離(厚さ)が、所定の厚さt1となるように、粗掘削が行われる。ここで、岩盤のうち所定の厚さt1に対応する部分は、カバーロックCと呼ばれる。また、所定の厚さt1については、掘削計画面αを覆って保護することが可能なように予め設定されている。所定の厚さt1は例えば50cm程度である。
【0017】
次に、ステップS2では、第1の掘削面1上に網状の熱伝導性部材3を敷設する。熱伝導性部材3は、例えば、金属製の網状部材である。熱伝導性部材3は、例えば、ラス網、網状鉄筋、及び、エキスパンドメタルのいずれかであり得る。尚、ステップS2が本発明の「敷設工程」に対応する。ここで、第1の掘削面1が傾斜面(法面)である場合には、熱伝導性部材3は、第1の掘削面1からの落石を防止する機能を実現し得る。
【0018】
熱伝導性部材3は、後述する吹付モルタル5から外部に露出する複数の露出部4を有する。本実施形態では、露出部4は鉄筋棒によって構成されている。この鉄筋棒は、基端部(下端部)が熱伝導性部材3に連結されており、吹付モルタル5を貫通して、少なくとも先端部(上端部)が吹付モルタル5から外部に露出し得る。
【0019】
露出部4の設置間隔については、後述するステップS5に露出部4に加えられる熱量や、露出部4、熱伝導性部材3、及び吹付モルタル5の熱伝導性に応じて適宜設定される。例えば、露出部4の設置間隔は1m程度である。
【0020】
次に、ステップS3では、熱伝導性部材3が敷設された第1の掘削面1上に(すなわち第1の掘削面1のうち熱伝導性部材3が敷設された部分上に)モルタルを吹き付けることにより、第1の掘削面1を吹付モルタル5で覆う。ここにおいて、吹付モルタル5の厚さt2は例えば10cm程度である。尚、ステップS3が本発明の「吹付工程」に対応する。
【0021】
ここで、本実施形態における「吹付工程」の詳細について、前述の図1及び図2に加えて、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、図1の部分Pの部分拡大図である。図4は、本実施形態におけるモルタルの吹付方法の一例を示す図である。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、吹付モルタル5は、第1の掘削面1に隣接する第1層11と、その上に積層される第2層12とからなる2層構造となっている。第1層11の厚さ(第1の掘削面1に接する下面から上面までの距離)t3は例えば3cm程度である。第1層11内に熱伝導性部材3が位置している。第1層11は、吹付モルタル5のうち、熱伝導性部材3を被覆し得る範囲に対応している。
【0023】
第1層11では、モルタルに熱膨張性粒子が混合している。ここで、熱膨張性粒子は、例えば、熱可塑性の重合体で形成された外殻と、この外殻中に内包された揮発性の膨張剤とを含んで形成されている。揮発性の膨張剤としては、低沸点有機溶剤で形成されたものが好ましい。熱膨張性粒子は、1μm~100μmの範囲内の平均粒径を有するものが好ましく、5μm~70μmの範囲内の平均粒径を有するものが更に好ましい。熱膨張性粒子は、膨張開始温度(発泡開始温度)が70℃以上であることが好ましい。つまり、熱膨張性粒子は、70℃未満では膨張(発泡)しないことが好ましい。これにより、熱膨張性粒子が気象変化やセメントの水和熱で膨張することを防止することができる。熱膨張性粒子としては、例えば、松本油脂製薬株式会社製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F、FNシリーズや、積水化学工業株式会社製のアドバンセル(登録商標)EMなどを用いることができる。
第1層11において、モルタルと熱膨張性粒子との体積比は、1:0.001~1:0.2の範囲内であることが好ましい。
【0024】
本実施形態において、第2層12では、モルタルに熱膨張性粒子が混合していない。ゆえに、吹付モルタル5に対する熱膨張性粒子の混合割合は、第2層12よりも第1層11のほうが高い。従って、吹付モルタル5に対する熱膨張性粒子の混合割合は、第1の掘削面1に近づくほど高くなっている。
【0025】
本実施形態の「吹付工程」における第1層11の形成時には、図4に示すように、モルタル供給ホース15の噴出口からモルタルが熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて吹き付けられると同時に、熱膨張性粒子供給ホース16の噴出口から熱膨張性粒子が熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて吹き付けられる。
【0026】
一方、本実施形態の「吹付工程」における第2層12の形成時には、熱膨張性粒子供給ホース16への熱膨張性粒子の供給を停止した状態で、モルタル供給ホース15の噴出口からモルタルが熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて吹き付けられる。
【0027】
以上のように、モルタルの吹き付けと熱膨張性粒子の吹き付けとを別系統に分けることで、モルタルに熱膨張性粒子を混合させるか否かの切り替えや、モルタルに対する熱膨張性粒子の混合割合の変更などを容易に行うことができる。
また、傾斜している第1の掘削面1の、予め区画された領域において、熱膨張性粒子が混合する第1層11の形成作業に続けて、熱膨張性粒子が混合しない第2層12の形成作業を行うことができるので、前述の区画された領域で、作業員が第1層11の形成作業と第2層12の形成作業とを一気に行うことができ、その結果、作業員の傾斜面(法面)での作業を大幅に効率化することができる。
【0028】
尚、本実施形態では、モルタルと熱膨張性粒子とを各別に熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて噴射しているが、この他、モルタルと熱膨張性粒子とを熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて噴射する直前にモルタルと熱膨張性粒子とを混合し、その混合した状態のモルタルと熱膨張性粒子とを熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて噴射するようにしてもよい。
この「吹付工程」の後に吹付モルタル5が硬化する。
【0029】
次に、ステップS4では基礎処理を行う。この基礎処理では、例えば、監査廊工の施工などが行われる。この基礎処理工程は、例えば数ヶ月間~数年間程度の放置期間が発生し得る。基礎処理工程が完了すると、ステップS5に進む。
【0030】
ステップS5では、吹付モルタル5の表面5a上にて、露出部4を加熱することにより、熱伝導性部材3を加熱する。露出部4の加熱に、例えば、アスファルト舗装用のガスバーナーを用いてもよい。又は、露出部4の加熱にエンジンの排熱(排ガス)を用いてもよい。尚、この露出部4の加熱時に、吹付モルタル5の表面5aを加熱してもよい。
【0031】
露出部4に加えられた熱は熱伝導性部材3を介して吹付モルタル5の第1層11に伝わる。これにより、第1層11内の熱膨張性粒子が加熱されて膨張(発泡)することで、第1層11及び第2層12内に亀裂が発生して、その結果、吹付モルタル5の第1層11及び第2層12が破壊される。この破壊時には、吹付モルタル5と第1の掘削面1との付着が解消され得る。
尚、ステップS5が本発明の「破壊工程」に対応する。
【0032】
次に、ステップS6では、破壊された吹付モルタル5を第1の掘削面1から除去する。ここで、前述のステップS5にて、吹付モルタル5と第1の掘削面1との付着が解消され得るので、吹付モルタル5の除去作業が容易となる。また、除去された吹付モルタル5への岩盤片の混入が大幅に抑制されるので、産廃産出量を必要最小限とすることができる。
尚、ステップS6が本発明の「除去工程」に対応する。この「除去工程」では熱伝導性部材3が第1の掘削面1から撤去される。
【0033】
次に、ステップS7では仕上げ掘削を行う。仕上げ掘削では、カバーロックCを除去して、掘削計画面αを外部に露出させる。換言すれば、ステップS7では、吹付モルタル5が除去された第1の掘削面1を所定の厚さt1分掘削して第2の掘削面2を形成する。ここで、第2の掘削面2は、掘削計画面αに対応するものである。
【0034】
仕上げ掘削では、火薬などを使わずに人力やブレーカーなどによる丁寧な掘削が行われる。
仕上げ掘削にて発生する掘削ズリは、盛土などの構築に利用することができる。
尚、ステップS7が本発明の「掘削工程」に対応する。
【0035】
次に、ステップS8では、第2の掘削面2の清掃(岩盤清掃)を行う。この工程では、ダム堤体を構成するコンクリートと岩盤との密着性を高めるために、第2の掘削面2をウォータージェットなどで洗浄することで、第2の掘削面2の付着物などを取り除く。
【0036】
第2の掘削面2の清掃を完了すると、ステップS9にてダム堤体を構築する。本実施形態では、ステップS9にて、ダム堤体を構成するコンクリートの打設が行われる。このダム堤体は、第2の掘削面2上に構築されて、岩盤に岩着する。
このようにして、ダム堤体の構築が行われる。
尚、ステップS8が本発明の「構築工程」に対応する。
【0037】
本実施形態では、ステップS9にて、コンクリートダムの堤体の構築を行っているが、これに代えて、フィルダムの堤体の構築を行ってもよい。ステップS9にてフィルダムの堤体の構築を行う場合には、ステップS9にて、ダム堤体を構成する土や岩石の盛立が行われる。
【0038】
尚、本実施形態では、第1の掘削面1上にモルタルを吹き付けることにより、第1の掘削面1を吹付モルタル5で覆っているが、これに代えて、第1の掘削面1上にコンクリートを吹き付けることにより、第1の掘削面1を吹付コンクリートで覆ってもよい。この場合には、前述の説明において「モルタル」を「コンクリート」と読み替えればよい。
【0039】
本実施形態によれば、構造物(ダム堤体)の構築方法として、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程(ステップS3)と、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)内の熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊する破壊工程(ステップS5)と、破壊されたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を岩盤面(第1の掘削面1)から除去する除去工程(ステップS6)と、モルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)が除去された岩盤面(第1の掘削面1)を所定の厚さt1分掘削して掘削面(第2の掘削面2)を形成する掘削工程(ステップS7)と、掘削面(第2の掘削面2)上に構造物(ダム堤体)を構築する構築工程(ステップS9)と、を含む。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。また、岩盤面(第1の掘削面1)以深の岩盤に対し不必要な緩みを生じさせないことが可能となる。
【0040】
また本実施形態によれば、構造物(ダム堤体)の構築方法は、吹付工程(ステップS3)に先立って網状の熱伝導性部材3を岩盤面(第1の掘削面1)上に敷設する敷設工程(ステップS2)を更に含む。破壊工程(ステップS5)では、熱伝導性部材3を加熱することにより、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)内の熱膨張性粒子を加熱する。これにより、第1層11内で広範囲にわたって分布する熱膨張性粒子を効率良く加熱することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、熱伝導性部材3は、岩盤面(第1の掘削面1)に吹き付けられたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)から外部に露出する露出部4を有する。破壊工程(ステップS5)では、露出部4を加熱することにより、熱伝導性部材3を加熱する。これにより、露出部4を介して、熱伝導性部材3を簡易に加熱することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、岩盤面(第1の掘削面1)に吹き付けられたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)のうち、熱膨張性粒子が混合している領域(第1層11)が、岩盤面(第1の掘削面1)に隣接しており、かつ、熱伝導性部材3に接触している。これにより、岩盤面(第1の掘削面1)と吹付モルタル5又は吹付コンクリートとの付着を確実に解消することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、岩盤面(第1の掘削面1)に吹き付けられたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)に対する熱膨張性粒子の混合割合が、岩盤面(第1の掘削面1)に近づくほど高くなっている。ゆえに、岩盤面(第1の掘削面1)と吹付モルタル5又は吹付コンクリートとの付着を確実に解消することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、熱膨張性粒子の膨張開始温度が70℃以上である。これにより、熱膨張性粒子が気象変化やセメントの水和熱で膨張することを防止することができる。
【0045】
また本実施形態では、熱膨張性粒子は、モルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)に対して目立つ色(例えば赤色、オレンジ色、ピンク色など)に着色されていることが好ましい。このようにすることで、第1層11における熱膨張性粒子の混合の均質性や混合割合などを吹付作業中の作業員が容易に視認することができる。また、熱膨張性粒子供給ホース16の噴出口から熱膨張性粒子が噴射されているか否かを作業員が容易に視認することができる。
【0046】
また本実施形態によれば、岩盤面(第1の掘削面1)は、地盤を掘削して形成された掘削面である(ステップS1)。構造物(ダム堤体)はコンクリート製である。これにより、構造物(ダム堤体)を構成するコンクリートと岩盤とを水密的に密着させることができる。
【0047】
また本実施形態によれば、図1に示すフローチャートにより構築される構造物は水理構造物(ダム堤体)である。これにより、水理構造物(ダム堤体)と岩盤とを水密的に密着させた状態で岩盤が水理構造物(ダム堤体)を安定的に支持することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、岩盤の保護方法として、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程(ステップS3)を含む。岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)内の熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊することが可能である。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。
【0049】
また本実施形態によれば、岩盤の保護方法は、吹付工程(ステップS3)に先立って網状の熱伝導性部材3を岩盤面(第1の掘削面1)上に敷設する敷設工程(ステップS2)を更に含む。熱伝導性部材3を加熱することによって、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)内の熱膨張性粒子を加熱することが可能である。ゆえに、第1層11内で広範囲にわたって分布する熱膨張性粒子を効率良く加熱することができる。
【0050】
また本実施形態によれば、露出部4を加熱することにより、熱伝導性部材3を加熱することが可能である。これにより、露出部4を介して、熱伝導性部材3を簡易に加熱することができる。
【0051】
次に、本実施形態の第1変形例及び第2変形例について説明する。
【0052】
本実施形態の第1変形例では、第2層12についても、第1層11と同様に、モルタルに熱膨張性粒子が混合している。このようにすることで、前述の「破壊工程」において第2層12の破壊を簡易に行うことができる。尚、この変形例では、前述の「吹付工程」において、予め熱膨張性粒子が混合されたモルタルをモルタル供給ホース15で搬送してその噴出口から熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けて吹き付けることで、第1層11及び第2層12を連続的に形成してもよい。すなわち、吹き付けのための材料の供給系統が1系統のみであってもよい。
【0053】
本実施形態の第2変形例では、前述の第1変形例において、熱伝導性部材3及び露出部4を省略している。この変形例では、前述の「破壊工程」において、吹付モルタル5の表面5aが加熱され得る。
【0054】
尚、前述の第1変形例及び第2変形例の説明においても「モルタル」を「コンクリート」と読み替えることが可能であることは言うまでもない。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態におけるダム堤体の構築方法を示すフローチャートである。図6は、掘削計画面と第1の掘削面と吹付モルタルと熱伝導性部材とを示す図である。
図1図4に示した第1実施形態と異なる点について説明する。
【0056】
本実施形態では、ダム堤体が、フィルダムの堤体であるとして以下説明するが、ダム堤体の構成はこれに限らない。
【0057】
前述の第1実施形態では、掘削計画面αまでの掘削を、粗掘削(ステップS1)と仕上げ掘削(ステップS7)とに分けていたが、本実施形態では、掘削計画面αまでの掘削を、図5に示すステップS11に集約している。
【0058】
ステップS11では、地盤の掘削を行う。この掘削により、岩盤面(基礎地盤の表面)である第1の掘削面1(図6参照)が外部に露出する。すなわち、第1の掘削面1は、地盤を掘削して形成されたものである。ここで、第1の掘削面1は、掘削計画面αに対応するものである。
【0059】
ステップS11以降は、ステップS7が省略される以外は、前述の第1実施形態における図1に示したフローチャートと同様である。
ここで、本実施形態では、ステップS8において、第1の掘削面1の清掃(岩盤清掃)を行う。また、ステップS9において、ダム堤体を構成する土や岩石の盛立が行われる。このダム堤体は、第1の掘削面1上に構築される。
【0060】
尚、本実施形態では、ステップS9にて、フィルダムの堤体の構築を行っているが、これに代えて、コンクリートダムの堤体の構築を行ってもよい。ステップS9にてコンクリートダムの堤体の構築を行う場合には、ステップS9にて、ダム堤体を構成するコンクリートの打設が行われる。
【0061】
特に本実施形態によれば、構造物(ダム堤体)の構築方法として、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程(ステップS3)と、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)内の熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊する破壊工程(ステップS5)と、破壊されたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を岩盤面(第1の掘削面1)から除去する除去工程(ステップS6)と、モルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)が除去された岩盤面(第1の掘削面1)上に構造物(ダム堤体)を構築する構築工程(ステップS9)と、を含む。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。また、岩盤面(第1の掘削面1)以深の岩盤に対し不必要な緩みを生じさせないことが可能となる。
【0062】
尚、本実施形態において、前述の第1変形例及び第2変形例を適用可能であることは言うまでもない。
【0063】
次に本発明の第3実施形態について図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態における熱伝導性部材の配置を示す図である。詳しくは、前述の「敷設工程」の後であって、かつ、「吹付工程」よりも前に、第1の掘削面1に対して垂直な方向から見た、互いに隣り合う2つの熱伝導性部材3-1,3-2の一部を図示している。
本実施形態は、前述の第1実施形態及び第2実施形態の双方(前述の第1変形例を含む)に適用可能である。
【0064】
本実施形態では、ダム堤体の構築を段階的に行うに際して(例えば所定のリフト高さの構築を繰り返すことでダム堤体を構築するに際して)、各段階ごとに、前述のステップS5~S9を実施することができるように、各段階に対応するように、熱伝導性部材3が分割されている。この点、前述の熱伝導性部材3-1,3-2は、熱伝導性部材3の分割された部分(分割部分)に対応する。熱伝導性部材3の分割部分(例えば熱伝導性部材3-1,3-2)の形状は、各段階において破壊される吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)の範囲の形状に対応している。
【0065】
図7に示すように、熱伝導性部材3の分割部分同士の間(例えば熱伝導性部材3-1,3-2間)には間隔20が空いている。この間隔20の距離D1は例えば5cm~20cm程度である。
【0066】
例えば、吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)のうち熱伝導性部材3-1を含む領域が前述の「破壊工程」で破壊されても、間隔20が存在することにより、吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)のうち熱伝導性部材3-2を含む領域は破壊されない。このようにして、吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)の撤去領域を限定化することができる。
【0067】
次に、本発明の第4実施形態について、図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態における熱伝導性部材を示す図である。
本実施形態は、前述の第1~第3実施形態(前述の第1変形例を含む)に適用可能である。
【0068】
本実施形態では、第1の掘削面1が鋸刃状に凸凹していて、複数の凹部1aを有している。凹部1aの深さは例えば5cm程度である。凹部1a内にも第1層11と同様の混合割合の熱膨張性粒子及びモルタル(又はコンクリート)が吹き付けられて充填されている。
【0069】
本実施形態では、前述の「破壊工程」で露出部4から熱伝導性部材3に伝わった熱を凹部1a内の熱膨張性粒子及びモルタル(又はコンクリート)に良好に伝えるために、金属製の棒状の熱伝導性部材18が設置されている。熱伝導性部材18は例えば鉄筋棒である。熱伝導性部材18は、その基端部(上端部)が熱伝導性部材3に連結されており、先端部(下端部)が凹部1aの底部(最下部)に臨んでいる。
【0070】
第1の掘削面1上に熱伝導性部材3を敷設したときに、第1の掘削面1と熱伝導性部材3との間に大きな間隙が形成される場合には、当該間隙に吹き付けられて充填された熱膨張性粒子及びモルタル(又はコンクリート)に熱伝導性部材3からの熱を良好に伝えるために、前述の熱伝導性部材18などを当該間隙内に位置させるように熱伝導性部材3に設けることが好ましい。
【0071】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
前述の第1~第4実施形態と異なる点について説明する。
【0072】
前述の第1~第4実施形態では、モルタル(又はコンクリート)と熱膨張性粒子とを同時に熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に吹き付けている。
これに対し、本実施形態では、モルタル(又はコンクリート)を熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に吹き付けるに先立って、熱膨張性粒子を熱伝導性部材3に接着剤などで接着し、この熱膨張性粒子が接着された熱伝導性部材3及び第1の掘削面1に向けてモルタル(又はコンクリート)を吹き付ける。
【0073】
特に本実施形態によれば、構造物(ダム堤体)の構築方法として、網状の熱伝導性部材3に熱膨張性粒子を接着する接着工程と、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)上に熱伝導性部材3を敷設する敷設工程と、熱伝導性部材3が敷設された岩盤面(第1の掘削面1)に、モルタル又はコンクリートを吹き付ける吹付工程と、熱伝導性部材3を加熱することで、熱伝導性部材3に接着された熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊する破壊工程と、破壊されたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を岩盤面(第1の掘削面1)から除去する除去工程と、モルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)が除去された岩盤面(第1の掘削面1)を所定の厚さt1分掘削して掘削面(第2の掘削面2)を形成する掘削工程と、掘削面(第2の掘削面2)上に構造物(ダム堤体)を構築する構築工程と、を含む。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。また、岩盤面(第1の掘削面1)以深の岩盤に対し不必要な緩みを生じさせないことが可能となる。
【0074】
また本実施形態によれば、構造物(ダム堤体)の構築方法として、網状の熱伝導性部材3に熱膨張性粒子を接着する接着工程と、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)上に熱伝導性部材3を敷設する敷設工程と、熱伝導性部材3が敷設された岩盤面(第1の掘削面1)に、モルタル又はコンクリートを吹き付ける吹付工程と、熱伝導性部材3を加熱することで、熱伝導性部材3に接着された熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊する破壊工程と、破壊されたモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を岩盤面(第1の掘削面1)から除去する除去工程と、モルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)が除去された岩盤面(第1の掘削面1)上に構造物(ダム堤体)を構築する構築工程と、を含む。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。また、岩盤面(第1の掘削面1)以深の岩盤に対し不必要な緩みを生じさせないことが可能となる。
【0075】
また本実施形態によれば、岩盤の保護方法として、網状の熱伝導性部材3に熱膨張性粒子を接着する接着工程と、外部に露出した岩盤面(第1の掘削面1)上に熱伝導性部材3を敷設する敷設工程と、熱伝導性部材3が敷設された岩盤面(第1の掘削面1)に、モルタル又はコンクリートを吹き付ける吹付工程と、を含む。熱伝導性部材3を加熱することで、熱伝導性部材3に接着された熱膨張性粒子を加熱することによって当該熱膨張性粒子を膨張させることにより、岩盤面(第1の掘削面1)上の、硬化したモルタル又はコンクリート(吹付モルタル5又は吹付コンクリート)を破壊することが可能である。これにより、前述のブレーカーやピックハンマーなどを用いる作業を大幅に削減することができるので、モルタル又はコンクリートを岩盤面(第1の掘削面1)から除去するときの作業負荷を軽減することができる。
【0076】
尚、前述の「接着工程」は、前述の「敷設工程」より前の時期に実施してもよく、又は、前述の「敷設工程」より後の時期に実施してもよい。又は、前述の「接着工程」は、前述の「敷設工程」の途中で(換言すれば、前述の「敷設工程」と並行して)実施してもよい。つまり、前述の「接着工程」は、前述の「吹付工程」より前の任意の時期に実施され得る。現場での作業効率化を勘案すると、前述の「接着工程」は、前述の「敷設工程」より前に実施されることが好ましい。
【0077】
本実施形態において、熱膨張性粒子が接着された熱伝導性部材3及び第1の掘削面1にモルタル(又はコンクリート)と熱膨張性粒子とを同時に吹き付けてもよいことは言うまでもない。この場合において、第1層11のモルタル(又はコンクリート)のみに熱膨張性粒子が混合してもよいし、又は、第1層11及び第2層12の双方のモルタル(又はコンクリート)に熱膨張性粒子が混合してもよい。
【0078】
前述の第1~第5実施形態では露出部4が鉄筋棒で構成されているが、露出部4の構成はこれに限らない。例えば、吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)の一部を斫ることで外部に露出する熱伝導性部材3の一部分を露出部4としてもよい。又は、露出部4を金属製の網状部材(例えば、ラス網、網状鉄筋、及び、エキスパンドメタルのいずれか)で構成してもよい。露出部4を金属製の網状部材で構成する場合には、露出部4の一側が熱伝導性部材3に連結されて、他側が吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)から外部に露出し得る。
【0079】
前述の第1~第5実施形態において、モルタル(又はコンクリート)と、熱膨張性粒子との少なくとも一方に、鉄粉などの熱伝導性粉粒体を混合した状態で、当該混合物を第1の掘削面1に吹き付けることで、吹付モルタル5(又は吹付コンクリート)の熱伝導性を向上させることができる。
【0080】
前述の第1~第5実施形態では、本発明に係る水理構造物の構築方法としてダム堤体の構築方法を例に挙げて説明したが、本発明に係る水理構造物はダム堤体に限らない。例えば、水理構造物は、岩盤面上に構築される水門の本体であり得る。また、本発明に係る構造物の構築方法が適用される構造物は前述の水理構造物に限らず、例えば、原子力発電所や橋脚基礎などの構造物であってもよい。
【0081】
また、前述の第1~第5実施形態では、本発明に係る岩盤の保護方法として、ダム堤体の基礎地盤となる岩盤の保護方法を例に挙げて説明したが、本発明に係る岩盤の保護方法が適用可能な岩盤はこれに限らない。長期間にわたって掘削面が外部に露出することを抑制するために、当該掘削面が仮処置されて、当該期間の経過後に改めて掘削面上に構造物が構築されるようなあらゆる岩盤の保護に、本発明に係る岩盤の保護方法が適用され得る。例えば、本発明に係る岩盤の保護方法は、原子力発電所や橋脚基礎などの構造物を支持する予定の岩盤の保護に適用され得る。
【0082】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊する破壊工程と、
破壊された前記モルタル又は前記コンクリートを前記岩盤面から除去する除去工程と、
前記モルタル又は前記コンクリートが除去された前記岩盤面を所定の厚さ分掘削して掘削面を形成する掘削工程と、
前記掘削面上に構造物を構築する構築工程と、
を含む、構造物の構築方法。
[請求項2]
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程と、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊する破壊工程と、
破壊された前記モルタル又は前記コンクリートを前記岩盤面から除去する除去工程と、
前記モルタル又は前記コンクリートが除去された前記岩盤面上に構造物を構築する構築工程と、
を含む、構造物の構築方法。
[請求項3]
前記吹付工程に先立って網状の熱伝導性部材を前記岩盤面上に敷設する敷設工程を更に含み、
前記破壊工程では、前記熱伝導性部材を加熱することにより、前記岩盤面上の、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱する、請求項1又は請求項2に記載の構造物の構築方法。
[請求項4]
前記熱伝導性部材は、前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートから外部に露出する露出部を有し、
前記破壊工程では、前記露出部を加熱することにより、前記熱伝導性部材を加熱する、請求項3に記載の構造物の構築方法。
[請求項5]
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートのうち、前記熱膨張性粒子が混合している領域が、前記岩盤面に隣接しており、かつ、前記熱伝導性部材に接触している、請求項3又は請求項4に記載の構造物の構築方法。
[請求項6]
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートに対する前記熱膨張性粒子の混合割合が、前記岩盤面に近づくほど高くなっている、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
[請求項7]
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度が70℃以上である、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
[請求項8]
前記熱膨張性粒子は、前記モルタル又は前記コンクリートに対して目立つ色に着色されている、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
[請求項9]
外部に露出した岩盤面に、熱膨張性粒子と、モルタル又はコンクリートとを吹き付ける吹付工程を含み、
前記岩盤面上の、硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することによって膨張させることにより、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリートを破壊することが可能である、岩盤の保護方法。
[請求項10]
前記吹付工程に先立って網状の熱伝導性部材を前記岩盤面上に敷設する敷設工程を更に含み、
前記熱伝導性部材を加熱することによって、前記岩盤面上の、前記硬化した前記モルタル又は前記コンクリート内の前記熱膨張性粒子を加熱することが可能である、請求項9に記載の岩盤の保護方法。
[請求項11]
前記熱伝導性部材は、前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートから外部に露出する露出部を有し、
前記露出部を加熱することにより、前記熱伝導性部材を加熱することが可能である、請求項10に記載の岩盤の保護方法。
[請求項12]
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートのうち、前記熱膨張性粒子が混合している領域が、前記岩盤面に隣接しており、かつ、前記熱伝導性部材に接触している、請求項10又は請求項11に記載の岩盤の保護方法。
[請求項13]
前記岩盤面に吹き付けられた前記モルタル又は前記コンクリートに対する前記熱膨張性粒子の混合割合が、前記岩盤面に近づくほど高くなっている、請求項9~請求項12のいずれか1つに記載の岩盤の保護方法。
[請求項14]
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度が70℃以上である、請求項9~請求項13のいずれか1つに記載の岩盤の保護方法。
[請求項15]
前記熱膨張性粒子は、前記モルタル又は前記コンクリートに対して目立つ色に着色されている、請求項9~請求項14のいずれか1つに記載の岩盤の保護方法。
【符号の説明】
【0083】
1 第1の掘削面
1a 凹部
2 第2の掘削面
3,3-1,3-2 熱伝導性部材
4 露出部
5 吹付モルタル
5a 表面
11 第1層
12 第2層
15 モルタル供給ホース
16 熱膨張性粒子供給ホース
18 熱伝導性部材
20 間隔
C カバーロック
α 掘削計画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8