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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】餅調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20220914BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20220914BHJP
【FI】
A47J43/046
A23L7/10 102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018246744
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103701
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 智
(72)【発明者】
【氏名】久保田 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弥生
(72)【発明者】
【氏名】春日 伸一
(72)【発明者】
【氏名】有井 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大屋 七海
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051223(JP,A)
【文献】実開昭62-111394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/046
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餅米や水などの材料が収容される調理容器と、
該調理容器に取り付けられる回転羽根と、
該回転羽根を駆動する駆動手段と、
材料を所定の温度に加熱保持する加熱手段とを備え、
前記駆動手段と加熱手段とを制御し、
餅米から餅を調理するコースが選択されると餅米に水を給水させる給水工程と餅米を炊飯する炊飯工程と餅を蒸らす蒸らし工程と餅を搗く搗き工程とを実行する炊き搗き機能と、
硬い餅を軟らかくして搗き直すコースが選択されると硬い餅を加温する加熱工程と硬い餅を軟化させる低速撹拌工程と餅を練り上げる高速撹拌工程とを実行する餅再生機能と
を備える、ことを特徴とする餅調理器。
【請求項2】
前記餅調理器は、餅のやわらかさを選択するかたさキーを備え
前記かたさキーの「やわらかめ」が選択されると、前記炊き搗き機能の搗き工程において、前記加熱手段を停止させ、
前記かたさキーの「ふつう」が選択されると、前記炊き搗き機能の搗き工程において、前記加熱手段をt1時間駆動させ、
前記かたさキーの「かため」が選択されると、前記炊き搗き機能の搗き工程において、前記加熱手段をt2時間駆動させ
前記加熱手段の駆動時間は、t1よりもt2のほうが長い
ことを特徴とする請求項記載の餅調理器。
【請求項3】
餅米や水などの材料が収容される調理容器と、
該調理容器の底面に回転軸が設けられる回転羽根と、
該回転羽根を駆動する駆動手段と、
材料を所定の温度に加熱保持する加熱手段と、
前記駆動手段と加熱手段とを制御して、硬い餅を軟らかくして搗き直す餅再生機能と、
を備え、
前記調理容器の内面には、前記回転軸から前記調理容器の内面までの距離が前記回転羽根の回転方向に従って離れていく箇所が複数ある
ことを特徴とする餅調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り餅や硬くなった餅をつきたての餅に再生する機能を備えた餅調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる餅調理器として、特許文献1に示すような、餅米を炊き上げた後、餅を搗き上げる炊き搗き方式の餅調理器がある。この餅調理器では、調理容器に餅米と水を入れ、ヒータで加熱しながら容器底面の回転羽根を回転させて餅を搗き上げる。
【0003】
さて、餅は、時間の経過とともに表面から水分が抜け出してβ化し硬くなり、煮たり焼いたりして、加水・加熱することで再びα化して軟らかくなる。この軟らかくなった餅を搗きたてのコシのある状態に戻すには、再度練り上げる必要があるが、特許文献1に例示される従来の餅調理器には、硬い餅を軟らかく戻し、再びコシのある状態に練り上げる機能がなく、これら一連の動作を連続して行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許2610504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、切り餅や硬くなった餅を簡単につきたての餅に再生することができる機能を備えた餅調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明は、餅米や水などの材料が収容される調理容器と、該調理容器に取り付けられる回転羽根と、該回転羽根を駆動する駆動手段と、材料を所定の温度に加熱保持する加熱手段とを備え、駆動手段と加熱手段とを制御して、硬い餅を軟らかくして搗き直す餅再生機能を備えたものである。
【0007】
餅再生機能は、餅と餅量に応じた量の水を調理容器に投入し、該調理容器を加熱手段で所定温度に保持しながら駆動手段で回転羽根を低速で回転させて餅と水を撹拌する撹拌工程と、餅が軟化したら駆動手段で回転羽根を高速で回転させて餅を練り上げる練り工程とを順次実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の餅調理器によれば、市販されている切り餅や家庭で作って硬くなった餅を、コシのあるつきたての状態に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】餅調理器の外観を示す説明図である。
図2】餅調理器の内部構成を説明図である。
図3】調理容器9の平面視を示す説明図である。
図4】餅調理器の制御系を示すプロック図である。
図5】炊き搗きコースのタイムチャート図である。
図6】炊き搗きコースのフローチャート図である。
図7】再練りコースのタイムチャート図である。
図8】再練りコースのフローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る餅調理器の構造について、図1図3を用いて説明する。
1は本体ケースで、底部に基台2を固定し、該基台2上に調理室3とモータ4を並べて載置している。5は蓋体で、本体ケース1の上面における調理室3側の上面に取り付けられ、本体ケース1の背面に設けたヒンジに開閉自在で、且つ着脱自在に取り付けられている。6は基板ケースで、モータ4の上面に前記蓋体5と並列して固定され、内部に回路基板7を備え、上面に操作パネル8を備えている。
【0011】
9は調理容器で、円筒状・角筒状・ホッパー状いずれかの形状をなし、底面下部に円筒状の取付部10を取り付けている。調理容器9の底面中心には、回転軸11が設けられ、回転軸11の上端に回転羽根12、下端に上カップリング13がそれぞれ取り付けられている。調理容器9の内面には、内側に膨出させたリブ14が形成され、容器の底面付近から容器の中心高さ付近に渡って複数箇所に設けられる。リブ14は、図3に示すように、水平断面で緩傾斜と急傾斜の斜面を形成した凸形状をなし、容器内面における回転羽根12の回転方向に対してリブ14の上り面を急傾斜、下り面を緩傾斜としている。
【0012】
15は容器支持部で、調理室3の底面に設けられ、調理容器9の取付部10が内嵌する円筒状をなしている。容器支持部15は、底部中心に回転軸16を貫通し、回転軸16の上端に調理容器9の上カップリング13と係合する下カップリング17が取り付けられ、回転軸16の下端に大プーリ18が取り付けられている。19はモータ4の駆動軸で、先端には小プーリ20が設けられ、ベルト21を介して回転軸16の大プーリ18に連係されている。22はヒータで、調理室3の内部下方において調理容器9を囲むように略水平に配設されている。23は温度センサで、調理室3の壁面に取り付けられ、調理室3の内部温度を監視している。その他、24は調理室3内の様子を確認する覗き窓、25は調理室3内の蒸気を排気する蒸気排出口、26は蓋体5の開く操作レバー、27は本体ケース1の脚部である。
【0013】
このように構成する餅調理器は、主に炊き搗き方式で餅を作る餅つき機として用いられる。調理に際し、調理容器9の回転軸11に回転羽根12を取り付け、生の餅米と水をセットしたら、調理容器9の取付部10を調理室3の容器支持部15に嵌めて、調理容器9を調理室3に収容する。取付部10と容器支持部15は、バヨネット結合等の周知の構造で連結され、この連結により上カップリング13と下カップリング17が係合し、モータ4の回転駆動が回転羽根12に伝動されるようになる。その後、操作パネル8で選択した調理プログラムを実行し、モータ4とヒータ22を制御して餅を作る。
【0014】
図4は調理器の制御系を示すプロック図である。
回路基板7は、マイコンボード28とパワーボード29とを備えている。マイコンボード28には、餅調理コースの実行プログラムが記憶されたメモリ30が内蔵されるとともに、操作パネル8とパワーボード29が接続されており、パワーボード29には、ブザー31が設けられるとともに、モータ4・ヒータ22・温度センサ23がそれぞれ接続されている。
【0015】
操作パネル8は、表示パネル32と、餅調理コースを選択するコースキー33、餅のかたさを選択するかたさキー34と、調理完了時間を選択する予約キー35と、調理を開始する開始キー36と、調理の停止や設定の取消を行う停止キー37とを備えている。コースキー33では、餅米を炊いてから搗き上げて餅を作る炊き搗きコースと、この炊き搗きコースを時短で実行するスピードコースと、市販の切り餅や硬くなった餅をつきたての状態に戻す再練りコースと、調理前の餅米を洗米する洗米コースとが選択できる。かたさキー34では、できあがった餅の軟らかさを「かため・ふつう・やわらかめ」の三段階から選択できる。予約キー35では、餅のできあがりまでの時間を1時間後~12時間後までの範囲で30分毎に設定できる。
【0016】
これにより、マイコンボード28では、操作パネル8で選択される餅調理コースに応じてメモリ30からプログラムを読み出し、このプログラムに応じてパワーボード29に接続されたモータ4やヒータ22を制御する。以下、餅調理コースの<炊き搗きコース>と、<再練りコース>について説明する。
【0017】
<炊き搗きコース>
このコースは、調理容器に餅米と、餅米の合数に応じた量の水を入れるだけで、全自動で餅を作るコースである。操作パネル8のコースキー33で「炊き搗き」を選択し、かたさキー34で餅のかたさを選択したあと、開始キー36を入力すると調理が開始する。
【0018】
「炊き搗き」コースは、炊き混ぜ工程-蒸らし工程-練り工程が順次実行される。
まず、炊き混ぜ工程では、ヒータ22と温度センサ23で調理室内が所定温度(140℃)に保持されるよう温度制御(1)しながら、モータ4を低速駆動(2)して回転羽根12をゆっくりと回転して餅米をかき混ぜて吸水させる。この吸水区間では、餅米を加熱しながらゆっくりとかき混ぜることで、調理容器内の餅米が位置替えされ、米全体がムラなく吸水される。尚、モータ4を所定のタイミングで高速駆動させて回転羽根12を素早く回転させることで、餅米の部分的な焦げ付きを防止している。
【0019】
餅米の吸水が進むと、餅米が糊化して粘性が増するため、モータの回転負荷は徐々に高くなっていく。更に糊化が進むと、餅米が1つの塊にまとまってくるため、回転羽根12の回転負荷が瞬間的に低くなるポイントがある。このポイントをモータの消費電力の経時変動が所定値よりも下降に転じたら、餅米が所定の吸水状況に達したと判断(3)する。この判断ポイントを検知すると、規定時間T1のタイマーをセットし、ヒータ22と温度センサ23による温度制御とモータ4による低速駆動を規定時間T1の間実行して、餅米を炊き上げていく。この炊飯区間では、米粒の芯部に渡って水分を浸透させ、米粒の糊化をより進行させる。また、米粒をゆっくりとかき混ぜることで、糊化する前の餅米が糊化が進んだ餅米と混ざり込んで粒残りすることを防ぐ。
【0020】
規定時間T1が経過(4)すると、モータ4とヒータ22を停止(5)し、規定時間T2の間、餅米の蒸らし工程が実行される。蒸らし工程では、米粒の加熱とかき混ぜを停止することで、米粒内の水分バランスを均一化させ、米粒の性状安定を図り、餅米のコシと弾力を引き出す。
【0021】
規定時間T2が経過(6)すると、モータ4を高速駆動(7)して回転羽根12を回転させ、規定時間T3の間、炊きあがった餅米を搗き上げる搗き工程が実行される。搗き工程は、調理容器9の内面に膨出したリブが抵抗となって餅に捻転・展延の作用を与えることで、コシのある餅が搗き上げる。規定時間T3が経過(8)すると、モータ4を停止(9)して調理終了となり、ブザーを発動して報知する。
【0022】
搗き上がる餅の軟らかさは、搗き工程の開始と同時に駆動するヒータ22の時間によって調整する。餅米を再加熱することで、餅米の水分量が蒸気として排出されるため、搗き上がったときに餅をかために仕上げることができる。そのため、かたさキー34で「ふつう」が選択されると、再加熱時間t1を設定し、搗き工程開始から時間t1の間、ヒータ22を駆動する。尚、かたさキー34で「かため」が選択されると、時間t1より長い再加熱時間t2を設定する一方、かたさキー34で「やわらかめ」が選択されると、再加熱は行わない。
【0023】
このように、炊き搗きコースは、炊き混ぜ→蒸らし→搗きの各工程を順次実行して餅を作るコースである。炊き混ぜ工程は、餅米が所定の吸水状況になったと判断してから、規定時間の炊飯を行うことを特徴としている。これにより、米量・水量・米の種類等に関係なく、安定した仕上がりの餅を提供することができる。
【0024】
また、搗き工程では、搗き始めに餅米を再加熱する時間によって、仕上がりの餅の軟らかさを調整することを特徴としている。これにより、搗き工程の時間は変えることなく、餅の軟らかさを変えることができる。
【0025】
尚、上記した処理(3)では、消費電力の経時変動が所定値よりも下降したら餅米が所定の吸水状況に達したと判断しているが、これは特に限定されるものではなく、モータ4の電流値や電圧値に基づいて判断しても良い。
【0026】
<再練りコース>
このコースは、市販の切り餅もしくは家庭で硬くなった餅を軟らかいつきたての餅に戻すためのコースである。調理容器に市販の切り餅と、切り餅の枚数に応じた量の水を入れ、操作パネル8のコースキー33で「再練り」を選択した後、開始キー36を入力すると調理が開始する。
【0027】
調理が開始すると、ヒータ22が駆動(10)して調理室内を所定温度(140℃)に加熱する。調理室内が所定温度に到達(11)したら、調理室内を所定温度(140℃)に保持するよう温度制御(12)しながら、モータ4を低速で駆動(13)して回転羽根12を回転させる。これにより、切り餅は、加熱された水とともにゆっくり撹拌されることで軟化していく。モータ4の低速駆動から規定時間T4が経過(14)すると、切り餅が1つの塊にまとまってくるので、この時点からモータ4を高速駆動(15)して餅を練り上げる。規定時間T5が経過(16)すると、モータ4とヒータ22を停止(17)して調理終了となり、ブザーを発動して報知する。
【0028】
この再練りコースでは、切り餅や硬くなった餅をつきたての餅に再生できるため、軟らかくなった餅に具材を添加する混ぜ餅を作ることもできる。この場合、調理中の所定タイミングでブザーを発動し、餅に混ぜ込む具材の投入を促す報知を行う。ブザーによる報知のタイミングは、混ぜ込む具材によって変えるのが望ましい。例えば、ヨモギなどを添加する草餅であれば餅全体に分散させるために、モータ4を高速駆動するタイミングで報知する。また、黒豆などを添加する豆餅であれば、豆を潰さないようにモータ4を高速駆動してから所定時間後に報知する。この選択は、添加する具材毎にメニューを設けても良いし、練り込みと混ぜ込みとで選択できるようにしても良い。
【0029】
以上のように、本発明の餅調理器は構成され、炊き搗き方式で餅を作ることができる。むろん、調理容器に回転羽根を備えた構成であるため、パン・うどん等の生地作りをしたり、うるち米の炊飯を行うこともできる。また、主にパン焼き器・炊飯器・オーブンとして機能する調理器に、餅調理コースを追加した場合であっても、本発明の餅調理機能を付加することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体ケース
3 調理室
4 モータ
9 調理容器
22 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8