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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】イオン溶出ユニット
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220914BHJP
   F24F 6/16 20060101ALI20220914BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
F24F6/16
F24F6/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019023135
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020133916
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 長
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345047(JP,A)
【文献】特開2017-194196(JP,A)
【文献】特開2004-057856(JP,A)
【文献】特開2006-006508(JP,A)
【文献】特開2005-342212(JP,A)
【文献】特開2005-138088(JP,A)
【文献】特開2004-248861(JP,A)
【文献】特開2005-087936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
D06F 1/00-51/02
F24F 6/00- 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が通過する通水経路が形成されたケースと、
当該ケースの前記通水経路に対向して平行となるよう配置され水中に金属イオンを溶出する複数の電極と、
当該電極と接続する端子と、
当該端子を介して前記電極に一定の電流を送る定電流回路と、
前記電極の交換を報知する報知手段と、
前記電極に印加する電圧値が最大電圧値以上になったと判断したら前記報知手段での報知を指示する制御部と、を備え、
前記端子が複数の前記電極の一方側にあると共に、前記端子間の距離が前記電極間の距離より大きくなるよう配置したことを特徴とするイオン溶出ユニット。
【請求項2】
前記端子は、複数の前記電極の同一端面に配置したことを特徴とする請求項1記載のイオン溶出ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属イオンを水中に溶出する電極をケース内に備えたイオン溶出ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、水が通過するケース内の通水経路途中に電気分解で金属イオンを溶出する2枚の電極を逆ハの字となるように設置し、定電流回路により一定値の電流を電極へ送るものがあり、電極の先端同士の距離が最も近接し、電極へ電圧を印加する端子との接続部分における電極同士の距離が最も離れていることで、電極の先端から電極の消耗が進行し抗菌作用のある金属イオンを効率的に水中へ溶出していた。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-56259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、電極間の抵抗値は電極間の距離に比例することから、電極間の電圧値は、電極間の距離が端子方向へ近づくにつれて一定の割合で徐々に大きくなるため、縦軸を電圧値、横軸を経過時間とした図13の実線で示すように時間経過に伴い一定の傾きで上昇する。また、電極間の抵抗値は水に含まれる不純物の濃度でも変化し、不純物が多い水では抵抗値が低く、不純物が少ない水では抵抗値が高くなるので、図13の(a)、(b)で示すように水質の違いで上昇直線の切片が異なるため、電極の消耗により交換を報知する最大電圧値の検知タイミングにズレが生じる。
【0005】
具体的には、不純物が少ない水質である図13の点線で示した(a)の場合、標準的な水質と比較して切片の位置が高くなることから最大電圧値の検知タイミングがαだけ早くなるため、電極が多量に残存しているにも関わらず最大電圧値を検知し電極の交換が促され、電極を最後まで使い切らないまま交換作業が実施される虞がある。逆に、不純物が多く含まれる水質である図13の一点鎖線で示した(b)の場合、標準的な水質と比較して切片の位置が低くなることから最大電圧値の検知タイミングがαだけ遅くなるため、全ての電極が消耗しているにも関わらず最大電圧値が検知されないことで電極の交換が報知されず、電極が設置されたケースから水漏れが発生する虞がある。
よって、電極の消耗の検知について適切なタイミングとのズレが大きいことから、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、水が通過する通水経路が形成されたケースと、
当該ケースの前記通水経路に対向して平行となるよう配置され水中に金属イオンを溶出する複数の電極と、
当該電極と接続する端子と、
当該端子を介して前記電極に一定の電流を送る定電流回路と、
前記電極の交換を報知する報知手段と、
前記電極に印加する電圧値が最大電圧値以上になったと判断したら前記報知手段での報知を指示する制御部と、を備え、
前記端子が複数の前記電極の一方側にあると共に、前記端子間の距離が前記電極間の距離より大きくなるよう配置したことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2では、前記端子は、複数の前記電極の同一端面に配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、端子が電極の一方側にあり、電極間の距離よりも端子間の距離の方が大きくなるよう端子を配置したので、電極の消耗が端子付近まで達したときにおける電極間の抵抗値が高まることで電極へ印加する電圧値が急激に上昇し、最大電圧値が検知され電極の交換が報知されるので、水質に依らず適切なタイミングで電極の交換を報知することができ、電極が多量に残存した状態や端子まで消耗しケースから水漏れする虞がある状態で電極の交換が報知されることを阻止できる。
【0009】
また、端子は、複数の電極の同一端面に配置したので、ケースの一方側から電極の取り付け、及び取り外し作業を実施することができるため、適切なタイミングでの電極の交換を報知できると共に、電極の交換作業性を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図である。
図2】同実施形態の概略構成図である。
図3】同実施形態の制御ブロック図である。
図4】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャートである。
図5】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する正面図である。
図6】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する分解斜視図である。
図7】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明するフタを外した状態の平面図である。
図8】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する正面視断面図である。
図9】同実施形態の電極を説明する図である。
図10】本発明の時間経過に伴う電圧値の変化を説明するグラフである。
図11】本発明の他の実施形態の電極を説明する図である。
図12】本発明の他の実施形態の電極を説明する図である。
図13】従来技術の時間経過に伴う電圧値の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明の一実施形態におけるイオン溶出ユニットを用いた加湿装置を図に基づいて説明する。
1は器具本体、2は器具本体1上部に器具本体1の前面と平行な位置関係となるように形成され複数のルーバー3が設置された送風口、4は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、5は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、6は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部、7は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバー、8は器具本体1の底面及び前面下方に形成され室内空気を器具本体1内に取り込む吸入口である。
【0012】
10は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室であり、この貯水室10内には、水に下端を水没させ駆動軸11に軸支された筒状の回転体12が備えられている。
【0013】
前記回転体12は、中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大するものであり、駆動軸11に接続され回転体12を回転駆動させるミストモータ13を駆動させ、回転体12が回転することによる回転の遠心力で貯水室10の水を汲み上げ、回転体12の外壁および内壁を伝わせて水を押し上げて、回転体12の外壁を伝わせて押し上げた水を周囲に飛散させると共に、回転体12の内壁を伝わせて押し上げた水を回転体12の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散させる。
【0014】
14は回転体12の上部外周に所定間隔を離間させて位置し回転体12と共に回転する円筒状の多孔体で、該多孔体14には、その全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部15が設置されている。
【0015】
前記ミスト発生部を構成するミストモータ13を駆動させ、回転体12を回転させたことで発生する遠心力で貯水室10内の水を汲み上げると共に空気を飛散させ、多孔部15を通過した水滴が破砕されることで、水を微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミスト(以下、微細ミスト)が多量に生成されると共に、比較的粒径の大きな水滴(以下、大径水滴)とが生成され、水の微細化によるレナード効果によって微細ミストに負イオンが帯電し、大径水滴に正イオンが帯電した状態となる。
【0016】
20は下面パネル5内に設置され所定の回転数で駆動することで室内の乾燥空気を吸引して器具本体1の上部方向へ送風する送風ファン、21は当該送風ファン20下流側にあり送風が通過する送風経路であり、器具本体1の下部から吸い込まれた乾燥空気が前記送風経路21を通過して器具本体1の上部へ案内され、貯水室10の上部にありミストモータ13が載置された風洞22を介して貯水室10内へ流入する。
【0017】
なお、前記送風経路21は筐体で外部と区画された形態に限られず、例えば、ホース等による専用の区画壁により流路を形成したものであってもよい。
【0018】
23は貯水室10の上方の他端に風路が鉛直上向きとなるよう接続され貯水室10内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が内部を流通する気水分離風路、24は当該気水分離風路23内の途中に複数設置され鉛直上方へ傾斜する傾斜面を備えたバッフル板であり、気水分離風路23内の上段、中段、下段にそれぞれ設置されている。
【0019】
25は気水分離風路23の壁面を貫通し送風経路21を流通する空気の一部が流入可能なバイパス流入口であり、バイパス流入口25から気水分離風路23内へ空気が流入することで、貯水室10から上昇してきた加湿空気の風量を増大させ、送風口2から室内へ送風される加湿空気の送風量を上昇させることができる。
【0020】
30は貯水室10内に設置され貯水を加熱する加熱ヒータであり、貯水室10の外壁に設置され貯水温度を検知する貯水温度センサ31で検知される温度が所定温度となるよう、ON/OFF状態が適宜切り替えられる。
【0021】
32は貯水室10内に設置されフロートが上下することで水位を検知する水位センサであり、貯水室10内の水位が低下して所定水位以下になったらOFF信号を出力し、水位が上昇して所定水位以上になったらON信号を出力し、更に水位が上昇して貯水室10内が満水となったら満水信号を出力する。
【0022】
40は貯水室10側面に接続され貯水室10内に市水を給水する給水管であり、該給水管40の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内への給水を制御する給水弁41と、給水圧を所定値まで減圧する減圧弁42と、後述するイオン溶出ユニット43と、が備えられている。
【0023】
50は貯水室10底部に接続され貯水室10内の水を器具本体1外部に排水する硬質塩化ビニル管で構成された排水管であり、該排水管50の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内の水の排水を制御する排水切り替え手段としての排水弁51が備えられている。
【0024】
60は送風口2の上壁面に設置され送風口2から室内へ向けて送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ、61は送風ファン20の近傍に設置され器具本体1の下部から吸い込まれた室内空気の温度を検知する吸気温度センサ、62は前記吸気温度センサ61の近傍に設置され器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサであり、各センサで検知された温度や湿度に基づいて、ミストモータ13や送風ファン20の回転数を変化させ、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替える。
【0025】
70は各センサで検知された検知値や操作部6上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部であり、ミストモータ13を所定の回転数で駆動させるミストモータ制御手段71と、送風ファン20を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段72と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の水温を制御する加熱ヒータ制御手段73と、が備えられている。
【0026】
74は制御部70に備えられた定電流回路であり、商用電源Eから供給された電源が図示しないリレー回路、降圧トランスを介した後に定電流回路74を介して電極90と接続することで、電極90へ一定値の電流を送ることができる。
【0027】
なお、電極90間の抵抗値に依らず一定値の電流を電極90へ送り続けるため、制御部70は、電極90間の抵抗値に合わせて電極90への印加する電圧値を可変させる。
【0028】
75は制御部70に備えられた報知手段としてのスピーカであり、電極90間の抵抗値が高まり電極90へ印加する電圧値が最大電圧値に達したと判断したら、電極90の交換を報知音や音声アナウンス等の報知手段をスピーカ75で報知するものである。
【0029】
(運転動作の説明)
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、操作部6の図示しない運転スイッチが操作されたら、制御部70は、排水弁51を開放して貯水室10内の水を排水する。水位センサ32でOFF信号が検知されたら、給水弁41を開放して貯水室10内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁51を閉止する。排水弁閉止の後、イオン溶出ユニット43内にあり後述する電極90へ電圧を印加することで銀イオンを溶出し、給水管40を介して貯水室10へ銀イオンを含んだ水を流入させる。そして、水位センサ32でON信号が検知されたら、所定量の水が貯水室10内に供給されたとして給水弁41を閉止し、電極90への電圧印加を停止する水入替モードを行う(ステップS101)。
【0030】
ステップS101の水入替モードが終了したら、制御部70は、貯水温度センサ31で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段73で加熱ヒータ30をON状態にして、ミストモータ13及び送風ファン20が所定の回転数となるようミストモータ制御手段71及び送風ファン制御手段72で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0031】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部70は、設定された加湿レベルと風量レベルとに基づいてミストモータ13と送風ファン20とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段71と送風ファン制御手段72とで回転数を制御し、加熱ヒータ30のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段73で切り替えて制御して、加湿レベルと風量レベルとに合わせた所定の温度範囲内にするミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0032】
この通常運転モード時、貯水室10内の水位が低下し水位センサ32でOFF信号が検知されたら、制御部70は、給水弁41を開放すると共にイオン溶出ユニット43内にある電極90へ電圧を印加し、貯水室10内へ銀イオンを含んだ水を供給する。これにより、貯水室10内の水への抗菌作用が働き、貯水室10周辺でのぬめり発生を抑制することができる。
【0033】
ステップS103の通常運転モード中に図示しない運転スイッチが操作され運転終了の指示があったと判断したら、制御部70は、ミストモータ13を停止させてから排水弁51を開弁して貯水室10内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁41を開放すると共にイオン溶出ユニット43内にある電極90へ電圧を印加し、貯水室10内を洗浄してから排水弁51を閉止して貯水室10内に所定量だけ貯水する水入替運転を行う。その後、加熱ヒータ30をON状態にして水を加熱することで除菌を行う除菌運転を所定時間行い、その後、所定時間経過後に貯水室10内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が所定温度以下になったら排水弁51を開放して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0034】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部70は、送風ファン20が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段72で制御し、貯水室10や送風経路21に送風して乾燥させることで菌の増殖を防止する乾燥モードを行い(ステップS105)、送風ファン20の駆動時間が所定時間(例えば、3時間)をカウントしたか判断し、3時間カウントしたら、送風ファン20を停止させて運転を終了する。
【0035】
なお、各ステップ中において電極90へ印加する電圧値が最大値以上になったと制御部70が判断したら、制御部70は、排水弁51を開放し貯水室10内の水を排水し、送風ファン20を所定の回転数で駆動させることで貯水室10内の乾燥動作を実施すると共に、スピーカ75から報知音、あるいは電極90の交換を促すアナウンスを報知することで、装置の使用者に電極90の交換が必要である旨を知らせる。
【0036】
(イオン溶出ユニットの説明)
次に、給水管40の途中に設置したイオン溶出ユニット43について詳述する。
図5、及び図6を参照する。イオン溶出ユニット43はティーズ形状のケース80で構成されている。当該ケース80は、上流側の給水管40と接続しケース80内へ水が流入する流入口81と、下流側の給水管40と接続しケース80内から水が流出する流出口82と、電極90が挿入可能な電極挿入口83と、を有している。
【0037】
図5、及び図8を参照する。ケース80内には、流入口81から流出口82まで水が通過可能とする通水経路88が形成されている。当該通水経路88はエルボ状の流路であり、流入口81が下方向、流出口82が右方向に位置している。そして、上方向に電極挿入口83が位置している。
【0038】
図6を参照する。前記電極挿入口83に挿入される電極90は、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い2つの銀板である電極90F、90Lで構成されている。電極90は、接続部である上端90aの左右幅がその他の部分より短く形成されている。電極90の一方側である上方向に位置する上端90aに電極90とは異なる金属である真鍮で構成された端子91が接続可能となる。当該端子91には、Oリング92が設置可能な凹部91aが形成されている。電極90の上端90aにあるビス穴90bと端子91の下端に形成されたビス穴91bとにビス93を挿入することで、端子91と電極90の接続が完了する。
【0039】
図6を参照する。84は電極挿入口83に取り付けられるフタである。当該フタ84は、端子91が接続された電極90をケース80内へ挿入した後、電極挿入口83の内周面との間にOリング85を挟み込んだ状態で電極挿入口83へ取り付けられる。フタ84を取り付けた後、電極挿入口83に形成されたビス穴83aとフタ84に形成されたビス穴84aとにビス86を装着することで、電極挿入口83へのフタ84の取り付けが完了する。また、フタ84が電極挿入口83に取り付けられると、フタ84に形成された貫通穴84bから端子91の上端が突出する。
【0040】
電極挿入口83へのフタ84の取り付けが完了すると、ケース80と電極挿入口83との間はフタ84及びOリング85で水密及び気密とされ、貫通穴84bと端子91との間はOリング92により水密及び気密とされる。よって、漏水防止手段として機能するフタ84、Oリング85及びOリング92によりケース80外への漏水を防止することができる。
【0041】
図7、及び図8を参照する。87はケース80内部の電極挿入口83付近にある仕切壁である。当該仕切壁87には電極90の左右幅及び前後幅より少し大きな幅の開口面積を有するスリット87aが2つ平行に形成されている。このスリット87aに電極90がそれぞれ挿入されて嵌め込まれることで、ケース80内にあり流入口81から流出口82までの水の流路である通水経路88が仕切壁87により仕切られ、電極90F、Lが平行な位置関係で固定される。
【0042】
図7、及び図8を参照する。仕切壁87のスリット87aへ上下方向が左右方向より長いたて長の電極90F、Lを流入口81の軸方向と一致するよう電極挿入口83から挿入することで、電極90がスリット87aに密着して装着が完了する。よって、左右方向が上下方向より長い横長の電極90を電極挿入口83から挿入する場合と比較し、電極挿入口83及びスリット87aの開口面積を大きくせず、電極90を仕切壁87のスリット87aへ装着することができることから、ケース80の大型化を防止できる。
【0043】
また、通水経路88がエルボ状であり流入口81の軸方向と一致するようにたて長の電極90F、Lを電極挿入口83から挿入するので、ストレート型の通水経路88が形成されたケース80に本実施形態と同様の開口面積を持つ電極挿入口83を配置した場合と比較し、大きな面積の電極90を通水経路88内に配置することができる。よって、電食の影響で電極90が消耗しても長期間に渡り電極90を継続して使用することができるため、電極90の交換頻度を少なくすることができる。
【0044】
図8を参照する。電極90F、Lを仕切壁87のスリット87aへ嵌め込むと、電極90F、Lの上部及び電極90と端子91との接続部である幅狭の上端90aが仕切壁87の上部に突出し、電極90F、Lがスリット87aと密着するので仕切壁87により電極挿入口83側への水の侵入が阻止される。これにより、ケース80内の仕切壁87とフタ84との間に水が侵入しない空気層である空気室89が形成され、当該空気室89内に電極90の上部及び電極90と端子91との接続部である幅狭の上端90aが配置される。よって、スリット87a内に電極90を嵌め込むだけで、電極90と端子91との接続部が仕切壁87により水に濡れない。
【0045】
図8を参照する。前記空気室89は通水経路88よりも上方に位置し、電極90の上端90a全体と上端90a付近の電極90の上部、及び端子91が配置される。よって、空気室89を通水経路88より下方に位置した場合と比較し、通水経路88内を通過する水が仕切壁87から空気室89側へ漏水するリスクが小さく、電極90の上端90a全体と上端90a付近の電極90、及び端子91が水に濡れない。
【0046】
また、万一空気室89内へ水が侵入する事態が生じても、漏水防止手段としてのフタ84、Oリング85及びOリング92によりケース80外への漏水が阻止される。よって、空気室89内に水が侵入してもケース80外への漏水を未然に阻止することができ、製品の信頼性低下を防ぐことができる。
【0047】
図6、及び図7を参照する。仕切壁87のスリット87aに電極90F、90Lを挿入することで、電極90F、90Lの全体が所定距離dだけ離間した平行な状態で固定される。電極90Fの上端90aは電極90Fの右端側にあり、電極90Lの上端90aは電極90Lの左端側に配置されている。本配置により、電極90F、90L間の距離dより電極90F、90Lの上端90aに接続される端子91間の距離jの方が大きくなる(d<j)。
【0048】
(電極間の消耗と最大電圧値の関係の説明)
図10を参照する。図10は縦軸を電圧値、横軸を経過時間とし、電極90への印加電圧値の変化を示す。電極90への通電開始から端子91近くの対向する電極90が残存する(1)の時点までは、電極90の消耗による電極90F、L間の距離がほぼ一定で抵抗値の変化はあまりみられないことから、電圧値の上昇はほとんどない。
【0049】
図9、及び図10を参照する。(1)の時点を経過した後、端子91へ向けて徐々に電極90F、Lが消耗し、電極90Fの残存する範囲が上端90aから点線xまで、電極90Lの残存する範囲が上端90aから点線yまでというように、対向する電極90の面積が小さくなることから、電極90F、L間の距離が大きくなる。よって、電極90間の距離の増大に応じて抵抗値が増大することから、電圧値の上昇傾きが(1)以前よりも急になる。
【0050】
図9、及び図10を参照する。(1)の時点経過後、電極90がほぼ消耗し残存する範囲がない(2)の時点まで達したら、電極90F、Lそれぞれの端子91間の距離jが電極90F、L間の距離dよりも大きくなるため、電圧値の上昇傾きが(2)以前よりも急になる。これにより、(2)の時点を経過した後、早期に最大電圧値に達したことを制御部70が検知し、スピーカ75から電極90を交換する旨が報知される。これにより、電極90を構成する銀板がほぼ消耗し切った適正なタイミングで電極90の交換を実施することができる。
【0051】
図10を参照する。不純物の含有率が低く水質のよい点線で示す(a)の場合、実線で示す標準的な水質と比較し電極90間の抵抗値が高いことから電圧値が高くなるので、図10のグラフ上で標準的な水質のものより切片が高くなる。しかし、電極90がほぼ消耗した(2)の時点までは電圧値の上昇傾きが緩やかであり、(2)の時点を過ぎた後に電圧値の上昇傾きが急になることから、標準的な水質と比較し、電極90の交換報知のタイミングが標準的な水質のものとのズレ幅が小さいズレ幅βで可能となる。よって、端子91付近まで電極90が消耗した適切なタイミングで電極90の交換を報知することができる。
【0052】
図10を参照する。不純物の含有率が高く水質が悪い一点鎖線で示す(b)の場合、実線で示す標準的な水質と比較し電極90間の抵抗値が低いことから電圧値が低くなるので、図10のグラフ上で標準的な水質のものより切片が低くなる。しかし、電極90がほぼ消耗した(2)の時点までは電圧値の上昇傾きが緩やかであり、(2)の時点を過ぎた後に電圧値の上昇傾きが急になることから、標準的な水質と比較し、電極90の交換報知のタイミングが標準的な水質のものとのズレ幅が小さいズレ幅βで可能となる。よって、端子91付近まで電極90が消耗した適切なタイミングで電極90の交換を報知することができる。
【0053】
(他の実施形態の説明)
次に、他の実施形態の説明をする。
図11を参照する。電極90F、Lが対向し平行な位置関係で配置され、電極90Fの端子91は上端面の右端側に配置され、電極90Lの端子91は上端面の略中央に配置されている。
【0054】
このように、上端90aが電極90F、Lの同一端面において両端にない場合であっても、端子91が電極90の一方側である上方向に位置し、かつ電極90F、L間の距離dより端子91間の距離jの方が大きくなる位置関係であれば、電極90Fが消耗すると残存範囲が上端90aから点線xまで、電極90Lが消耗すると残存範囲が上端90aから点線yまで減少し、電極90が端子91付近まで消耗したとき、抵抗値の増大により印加電圧値が急激に上昇して最大電圧値を適切なタイミングで検知することができるので、水質に依る最大電圧値の検知タイミングのズレを最小限に抑えることができる。
【0055】
図12を参照する。電極90F、Lが対向し平行な位置関係で配置され、電極90Fの端子91は右端面の上端側に配置され、電極90Lの端子91は左端面の上端側に配置されている。
【0056】
このように、上端90aが電極90F、Lの同一端面にない場合であっても、端子91が電極90の一方側である上方向に位置し、かつ電極90F、L間の距離dより端子91間の距離jの方が大きくなる位置関係であれば、電極90Fが消耗すると残存範囲が上端90aから点線xまで、電極90Lが消耗すると残存範囲が上端90aから点線yまで減少し、電極90が端子91付近まで消耗したとき、抵抗値の増大により印加電圧値が上昇して最大電圧値を適切なタイミングで検知できるので、水質に依る最大電圧値の検知タイミングのズレを最小限に抑えることができる。
【0057】
次に、本発明の効果について説明する。
【0058】
図7を参照する。電極90F、Lの上端90a及び端子91が電極90F、Lの一方側である上方向にあり、電極90F、L間の距離dよりも端子91間の距離jの方が大きくなるよう端子91を配置したので、電極90が端子91付近まで消耗したときにおける電極90F、L間の抵抗値が高まることで電極90へ印加する電圧値が急激に上昇し、最大電圧値が検知されスピーカ75により電極90の交換が報知されるため、水質に依らず適切なタイミングで電極90の交換を報知することができ、電極90が多量に残存した状態や端子91まで消耗しケース80から水漏れする虞がある状態で電極90の交換が報知されることを阻止できる。
【0059】
また、端子91が電極90F、Lの同一端面に配置されたことで、ケース80の一方側から電極90の取り付け、及び取り外し作業を実施することができるため、適切なタイミングでの電極90の交換を報知できると共に、電極90の交換作業性が向上する。
【0060】
なお、他の実施形態の説明にもあるように、端子91と接続する上端90aの位置は電極90F、Lの同一端面における両端、及び同一端面に限定されず、電極90F、Lの一方側に位置し、電極90F、L間の距離dよりも端子91間の距離jの方が大きくなるよう配置すれば、本発明の作用効果が発生するものである。
【0061】
また、本実施形態では、電極90F、Lの上端90a、及び端子91が位置する一方側を上方向として説明しているが、これに限らず下方向や左右方向等の各種方向を一方側として設定してもよく、上端90a、及び端子91の位置を上方向に限定した内容の発明ではないものである。
【0062】
また、本実施形態ではイオン溶出ユニット43を加湿装置の給水管40途中に設置した内容で説明したが、これに限らず給湯器等の他の電気機器の配管途中にイオン溶出ユニット43を配置したものであってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
43 イオン溶出ユニット
70 制御部
74 定電流回路
75 スピーカ(報知手段)
80 ケース
90 電極
91 端子
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図11
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図13