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特許7141365ポートフォリオ作成支援装置およびポートフォリオ作成支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ポートフォリオ作成支援装置およびポートフォリオ作成支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20220914BHJP
【FI】
G06Q40/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019094586
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020190829
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 学
(72)【発明者】
【氏名】小川 純
(72)【発明者】
【氏名】山岡 雅直
(72)【発明者】
【氏名】奥山 拓哉
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051350(JP,A)
【文献】特開2009-294765(JP,A)
【文献】特開2004-220196(JP,A)
【文献】渡辺 元,ポートフォリオ最適化・株価予測など量子アニーリングマシンで実証実験中,NEW MEDIA,日本,(株)ニューメディア,2019年05月01日,第37巻 第5号,pp.46-48
【文献】山岡 雅直,CMOSアニーリングマシンの概要,電子情報通信学会2019年総合大会講演論文集 エレクトロニクス2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年03月05日,pp.SS-38~SS-39,ISSN:1349-1369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品それぞれの情報を格納した記憶部と、
前記情報が示す所定の金融商品を組み合わせたポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目と当該項目それぞれの重みとを組み合わせた所定式をイジングモデルとして演算する演算部とを有し、
前記演算部は、前記演算の結果、前記各項目の前記重みのパターンごとに得られる、前記所定式の値を最小化する各ポートフォリオを所定装置に出力することを特徴とするポートフォリオ作成支援装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記各ポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各値に基づき、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面、期待収益率と市場感応度たる金利デルタの二軸で規定される平面、および、期待収益率と市場感応度たる為替デルタの二軸で規定される平面、の各平面の少なくともいずれかに前記各ポートフォリオの位置をプロットし、当該プロットが行われた前記各平面の少なくともいずれかに当該平面に対応する有効フロンティア曲線を描画して所定装置に出力する処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、所定ユーザの現ポートフォリオよりも値下がりリスクが低く期待収益率が高い、かつ前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にあるポートフォリオに関して、所定の強調表示処理を行うものである、
ことを特徴とする請求項2に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定する処理と、前記金利デルタと前記為替デルタの二軸で規定される平面に、前記特定ポートフォリオに関して、前記リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置して所定装置に出力する処理をさらに行うものである、
ことを特徴とする請求項3に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項5】
前記演算部は、
前記演算に際し、前記ポートフォリオを構成する金融商品に関して前記情報が示す、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値を、所定の規定範囲に収まるよう正規化し、前記所定式における該当項目に設定する処理を更に実行するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項6】
前記演算部は、
前記各ポートフォリオの少なくともいずれかと、所定ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品に関して、予め情報を保持する売買コストを適用し、前記現ポートフォリオからのポートフォリオ変更に必要なコストを特定して、当該コストの情報を前記所定装置に出力する処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項7】
前記イジングモデルに関して組合せ最適化問題を解くCMOSアニーリングマシンであることを特徴とする請求項1に記載のポートフォリオ作成支援装置。
【請求項8】
金融商品それぞれの情報を格納した記憶部を備える情報処理装置が、
前記情報が示す所定の金融商品を組み合わせたポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目と当該項目それぞれの重みとを組み合わせた所定式をイジングモデルとして演算し、前記演算の結果、前記各項目の前記重みのパターンごとに得られる、前記所定式の値を最小化する各ポートフォリオを所定装置に出力する、
ことを特徴とするポートフォリオ作成支援方法。
【請求項9】
前記情報処理装置が、
前記各ポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各値に基づき、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面、期待収益率と市場感応度たる金利デルタの二軸で規定される平面、および、期待収益率と市場感応度たる為替デルタの二軸で規定される平面、の各平面の少なくともいずれかに前記各ポートフォリオの位置をプロットし、当該プロットが行われた前記各平面の少なくともいずれかに当該平面に対応する有効フロンティア曲線を描画して所定装置に出力する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項8に記載のポートフォリオ作成支援方法。
【請求項10】
前記情報処理装置が、
前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、所定ユーザの現ポートフォリオよりも値下がりリスクが低く期待収益率が高い、かつ前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にあるポートフォリオに関して、所定の強調表示処理を行う、
ことを特徴とする請求項9に記載のポートフォリオ作成支援方法。
【請求項11】
前記情報処理装置が、
前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定する処理と、前記金利デルタと前記為替デルタの二軸で規定される平面に、前記特定ポートフォリオに関して、前記リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置して所定装置に出力する処理をさらに行う、
ことを特徴とする請求項10に記載のポートフォリオ作成支援方法。
【請求項12】
前記情報処理装置が、
前記演算に際し、前記ポートフォリオを構成する金融商品に関して前記情報が示す、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値を、所定の規定範囲に収まるよう正規化し、前記所定式における該当項目に設定する処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項8に記載のポートフォリオ作成支援方法。
【請求項13】
前記情報処理装置が、
前記各ポートフォリオの少なくともいずれかと、所定ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品に関して、予め情報を保持する売買コストを適用し、前記現ポートフォリオからのポートフォリオ変更に必要なコストを特定して、当該コストの情報を前記所定装置に出力する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項8に記載のポートフォリオ作成支援方法。
【請求項14】
前記情報処理装置が、前記イジングモデルに関して組合せ最適化問題を解くCMOSアニーリングマシンであることを特徴とする請求項8に記載のポートフォリオ作成支援方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートフォリオ作成支援装置およびポートフォリオ作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定条件下で所望のパラメータを最大または最小とする解を探索する、いわゆる組合せ最適化問題の概念は、交通渋滞解消、グローバルサプライチェーンにおける物流コスト低減、など実社会における複雑な問題にも適用されうる。
【0003】
一方、そうした問題においては解候補が爆発的に多くなるため、スーパーコンピュータや量子コンピュータなど相応の計算能力を有した計算機でなければ、当該問題を実用的な時間内に解くことが難しい。
【0004】
例えば、量子コンピュータに関連する従来技術としては、全数探索を必要とするような逆問題や組み合わせ最適化問題に対して高速演算を可能にする計算機に関し、スピンを演算における変数とし、解こうとする問題をスピン間相互作用とスピンごとに作用する局所場で設定し、また、時刻t=0において外部磁場により全スピンを一方向に向かせ、時刻t=τで外部磁場がゼロになるように外部磁場を徐々に小さくし、また、各スピンは時刻tにおける各サイトの外部磁場及びスピン間相互作用のすべての作用で決まる有効磁場に従い向きが定まるとして時間発展させ、その際、スピンの向きが有効磁場に完全に揃うのではなく、量子力学的に補正された向きとすることにより、系が基底状態をほぼ維持するようにする技術(特許文献1参照)などが提案されている。
【0005】
一方、上述のごとき実社会における問題のうち、金融商品のポートフォリオ決定に関する問題の処理について、その効率化を図る技術として、コンピュータに、個々の金融商品の収益率の期待値と、収益に影響を及ぼす金融商品独自の要因である個別変動因子と、金融商品全体の収益に影響する要因である共通変動因子と、金融商品全体の収益率と収益に影響を及ぼすリスクとから構成される効用関数を最適にする際に考慮すべき、制約条件を構成する制約パラメータと、を入力する入力手順と、前記期待値と前記個別変動因子と前記共通変動因子と前記制約パラメータとを記憶する記憶手順と、収益率の制約式を算出するポートフォリオ収益率算出手順と、前記期待値と前記個別変動因子と前記共通変動因子と前記制約パラメータと前記収益率の制約式とに基づいて前記効用関数を最大化するように、購入する金融商品および購入量を、所定の制約式の元で目的関数を最大化する手法である数理計画法を用いて求解する最適ポートフォリオ求解手順と、前記求解手順で求解した購入する金融商品および購入量が、リスクに関する制約式を満足するか否かを判定する制約条件判定手順と、を実行させるためのプログラム(特許文献2参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2016/157333
【文献】特開2006-221679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金融機関等で複数の金融商品を保持している場合、そのポートフォリオを最適化し収益の最大化を図るニーズが存在する。そこで金融機関では、所定の担当者がポートフォリオの見直しを、状況に応じて又は定期的に行っている。
【0008】
一方、そうしたポートフォリオを構成する各金融商品の収益性や各種リスクといった要因は様々で、また、それら要因に対する金融機関の考え方も様々であった。
【0009】
そのため、数多くの金融商品を組み合わせるポートフォリオに関して、その最適化を図ろうとする場合、一般的なコンピュータを採用すれば、上述の要因数に応じて計算量が指数関数的に増加する。その結果、計算終了までに膨大な時間を要するか、或いはオーバーフローに至ることとなる。つまり、ポートフォリオのタイムリーな見直しは困難であった。
【0010】
他方、ポートフォリオに関して量子コンピュータ技術を適宜に適用する形態は提案されていない。勿論、上述のごとく多くの要因を踏まえた適宜な計算結果が得られていない現状においては、その結果をユーザが認識しやすい形で提示することも当然ながらなされていない。
【0011】
そこで本発明の目的は、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明のポートフォリオ作成支援装置は、金融商品それぞれの情報を格納した記憶部と、前記情報が示す所定の金融商品を組み合わせたポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目と当該項目それぞれの重みとを組み合わせた所定式をイジングモデルとして演算する演算部とを有し、前記演算部は、前記演算の結果、前記各項目の前記重みのパターンごとに得られる、前記所定式の値を最小化する各ポートフォリオを所定装置に出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のポートフォリオ作成支援方法は、金融商品それぞれの情報を格納した記憶部を備える情報処理装置が、前記情報が示す所定の金融商品を組み合わせたポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目と当該項目それぞれの重みとを組み合わせた所定式をイジングモデルとして演算し、前記演算の結果、前記各項目の前記重みのパターンごとに得られる、前記所定式の値を最小化する各ポートフォリオを所定装置に出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のポートフォリオ作成支援装置を含むネットワーク構成図である。
図2】本実施形態におけるポートフォリオ作成支援装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本実施形態におけるタイミングチャート例を示す図である。
図4】本実施形態における基本概念に関するフローチャートを示す図である。
図5】本実施形態の金融商品情報のデータ構成例を示す図である。
図6】本実施形態の重みづけ情報のデータ構成例を示す図である。
図7】本実施形態におけるポートフォリオ作成支援方法のフロー例を示す図である。
図8】本実施形態における出力例1を示す図である。
図9】本実施形態における出力例2を示す図である。
図10】本実施形態における出力例3を示す図である。
図11】本実施形態における出力例4を示す図である。
図12】本実施形態における出力例5を示す図である。
図13】本実施形態における出力例6を示す図である。
図14】本実施形態における出力例7を示す図である。
図15】本実施形態における出力例8を示す図である。
図16】本実施形態における出力例9を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
---アニーリングマシンについて---
上述の特許文献1にも示すように、本出願人は量子コンピューティング技術を開発し、例えば、ビッグデータに基づく全数探索問題(組合せ最適化問題の概念含む)における諸問題の解決を図ってきた。
【0017】
こうした全数探索問題に対して、一般的には量子コンピュータヘの期待が大きい。量子コンピュータは、量子ビットと呼ばれる基本素子からなり“0”と“1”を同時に実現する。そのためすべての解候補を初期値として同時に計算可能であり、全数探索を実現しうる可能性を持っている。しかし、量子コンピュータは全計算時間に亘って量子コヒーレンスを維持する必要がある。
【0018】
こういった中で注目されるようになってきたのが断熱量子計算と呼ばれる手法である(参考文献:E. Farhi, et al., ”A quantum adiabatic evolution al gor ithm applied to random instances of an NP-complete problem,” Science292, 472 (2001).)。この方法は、ある物理系の基底状態が解になるように問題を変換し、基底状態を見つけることを通して解を得ようとするものである。
【0019】
問題を設定した物理系のハミルトニアンをH^pとする。但し、演算開始時点ではハミルトニアンをH^pとするのではなく、それとは別に基底状態が明確で準備しやすい別のハミルトニアンH^0とする。次に十分に時間を掛けてハミルトニアンをH^0からH^pに移行させる。十分に時間を掛ければ系は基底状態に居続け、ハミルトニアンH^pの基底状態が得られる。これが断熱量子計算の原理である。計算時間をτとすればハミルトニアンは式(1)となり、
[式1]

式(2)のシュレディンガー方程式に基づいて時間発展させて解を得る。
【0020】
[式2]

断熱量子計算は全数探索を必要とする問題に対しても適用可能で、一方向性の過程で解に到達する。しかし、計算過程が式(2)のシュレディンガー方程式に従う必要があるならば、量子コンピュータと同様に量子コヒーレンスの維持が必要になる。
【0021】
但し、量子コンピュータが1量子ビットあるいは2量子ビット間に対するゲート操作を繰り返すものであるのに対して、断熱量子計算は量子ビット系全体に亘って一斉に相互作用させるものであり、コヒーレンスの考え方が異なる。
【0022】
例えば、ある量子ビットヘのゲート動作を考えてみる。この時、もしその量子ビットと他の量子ビットとで相互作用があれば、それはディコヒーレンスの原因になるが、断熱量子計算ではすべての量子ビットを同時に相互作用させるので、この例のような場合にはディコヒーレンスにならない。この違いを反映して断熱量子計算は量子コンピュータに比べてディコヒーレンスに対して頑強であると考えられている。
【0023】
以上述べたように、断熱量子計算は全数探索を必要とするような難問に対して有効である。そして、スピンを演算における変数とし、解こうとする問題をスピン間相互作用とスピンごとに作用する局所場で設定する。
【0024】
時刻t=0において外部磁場により全スピンを一方向に向かせ、時刻t=τで外部磁場がゼロになるように外部磁場を徐々に小さくする。
【0025】
各スピンは、時刻tにおける各サイトの外部磁場及びスピン間相互作用のすべての作用で決まる有効磁場に従い、向きが定まるとして時間発展させる。
【0026】
その際、スピンの向きが有効磁場に完全に揃うのではなく、量子力学的に補正された向きとすることにより、系が基底状態をほぼ維持するようにする。
【0027】
また、時間発展の際に各スピンを元の向きに維持する項(緩和項)を有効磁場に加え、解の収束性を向上させる。
【0028】
本実施形態におけるポートフォリオ作成支援装置としては、上述の断熱量子計算を行うアニーリングマシンを想定するが、勿論これに限定するものではなく、組合せ最適化問題を本発明のポートフォリオ作成支援方法に沿って適宜に解くことが可能なものであればいずれも適用可能である。具体的には、アニーリング方式において電子回路(デジタル回路
など)で実装するハードウェアだけでなく、超伝導回路などで実装する方式も含む。また
、アニーリング方式以外にてイジングモデルを実現するハードウェアでもよい。例えばレーザーネットワーク方式(光パラメトリック発振)・量子ニューラルネットワークなども含む。また、前述した通り一部の考え方が異なるものの、イジングモデルで行う計算をアダマールゲート、回転ゲート、制御NOTゲートといったゲートで置き換えた量子ゲート方
式においても、本発明を実現することができる。
【0029】
---ネットワーク構成---
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置100を含むネットワーク構成図である。
【0030】
図1に示すポートフォリオ作成支援装置100は、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能とするコンピュータ装置であり、具体的には、一例としてアニーリングマシンを想定する。
【0031】
ただし、アニーリングマシンの概要は特許文献1に基づき既に述べたとおりであり、その具体的な構成や動作等の詳細については適宜省略する(以下同様)。
【0032】
本実施形態のポートフォリオ作成支援装置100は、インターネットなどの適宜なネットワーク10を介して、ユーザ端末200および金融情報配信システム300と、データ通信可能に接続されている。
【0033】
このうちユーザ端末200は、ポートフォリオ作成支援装置100から金融商品のポートフォリオに関する情報提供を受ける端末である。
【0034】
このユーザ端末200のユーザとしては、具体的には、金融機関や保険会社など機関投資家の担当者や、或いは一般の個人投資家などを想定できる。
【0035】
また、ポートフォリオ作成支援装置100が提供する金融商品のポートフォリオに関する情報は、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度(金利デルタ、為替デルタ等)の各項目の間の重みづけ(ユーザが重視する観点に応じたもの)のパターンごとに、種々の金融商品を所定の割合(すなわち保有比率)で組み合わせたポートフォリオ候補各々についてイジングモデル(金融商品における期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目を変数として含む数式)を解いて特定した、最適ポートフォリオ(つまり金融商品群)の情報である。
【0036】
その場合、当該最適ポートフォリオにおける、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度(金利デルタ、為替デルタ等)の各値も当然ながら提示されることとなる。
【0037】
なお、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述のような各項目の間の重みづけ(ユーザが重視する観点)のパターンごとの最適ポートフォリオの情報について、当該最適ポートフォリオの間の比較検討が容易になるよう出力を行うものである。
【0038】
すなわちポートフォリオ作成支援装置100は、各最適ポートフォリオ(以下、単にポートフォリオとする)における期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値に基づき、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面、期待収益率と市場感応度たる金利デルタの二軸で規定される平面、および、期待収益率と市場感応度たる為替デルタの二軸で規定される平面、の各平面の少なくともいずれかに、各ポートフォリオの位置をプロットし、当該プロット済みの平面を、ユーザ端末200など適宜な装置に出力する。この場合、当該プロットが行われた平面には、対応する有効フロンティア曲線を描画するものとする(有効フロンティア曲線の生成等は既存技術を適用すればよい)。
【0039】
こうした出力処理を行うことで、各ポートフォリオの特性を複数の観点から明確に提示し、金融機関の担当者におけるポートフォリオ策定業務を効果的に支援することとなる。
【0040】
またさらに、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面にプロットしたポートフォリオのうち、ユーザの現ポートフォリオ(当然ながら、当該ユーザがポートフォリ
オ作成支援装置100に予め、金融商品とその保有比率、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値を提供している)よりも値下がりリスクが低く収益が高い、かつ有効フロンティア曲線よりも上方領域にあるポートフォリオに関して、所定の強調表示処理を行うとしてもよい。
【0041】
上述の強調表示処理としては特に限定しないが、例えば、対応するポートフォリオのプロット(点)の色、形状、サイズ、柄、明滅や点滅のパターン等を、他のポートフォリオのものと異なるものとする、といったものを想定できる。
【0042】
こうした出力処理を行うことで、現ポートフォリオから、期待収益率およびリスクの両面で改善が期待出来る新たなポートフォリオを明確に提示可能となる。
【0043】
なお、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述の値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面にプロットしたポートフォリオのうち、有効フロンティア曲線よりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定するものとする。
【0044】
この場合、ポートフォリオ作成支援装置100は、金利デルタと為替デルタの二軸で規定される平面に、上述の特定ポートフォリオに関して、リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置して出力する。
【0045】
このオブジェクトは、例えば円や矩形といった所定形状の表示オブジェクトを想定できる。また、その属性とは、リスク対比の収益性の値の大きさに応じたサイズ、色、形状、柄、明滅や点滅のパターン等を想定する。
【0046】
これによれば、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度(金利デルタ、為替デルタ)の各観点を全て踏まえた、すなわち四次元の事象についてポートフォリオを表現し、ポートフォリオ間での差別化を明確に図りつつユーザに提示可能となる。
【0047】
また、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述の各ポートフォリオの少なくともいずれかと、ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品に関して、予め情報を保持する売買コストを適用し、現ポートフォリオから最適ポートフォリオへのポートフォリオ変更に必要なコストを特定して、当該コストの情報を出力する、これによれば、ポートフォリオ変更に伴うコストに関する情報を提示可能となり、ユーザとしては、上述の各項目に関する情報のみならず、コストも含めた総合的観点でポートフォリオ作成業務を遂行しやすくなる。
【0048】
こうしたポートフォリオに関する各種情報の提供を受ける、金融機関の担当者等は、好適なポートフォリオについての選定を簡便かつ精度良く、しかも迅速に判断しうることとなる。
【0049】
なお、上述の重みづけのパターンは、各項目を同等に扱って評価するパターン(各項目で重みづけ値は同一)、収益、値下がりリスクに重きを置き、金利デルタや為替デルタは軽視するパターン(収益、値下がりリスクの各項目の重みづけ値>金利デルタ、為替デルタの各重みづけ値)、収益偏重のパターン(収益の項目の重みづけ値>値下がりリスク、金利デルタ、為替デルタの各項目の重みづけ値)、といったものが想定できる。ただし、こうしたパターンは一例であって、限定はしない。
【0050】
一方、金融情報配信システム300は、各種金融商品の情報をポートフォリオ作成支援装置100に配信するシステムである。
【0051】
この金融情報配信システム300は、種々の金融機関や証券会社、政府機関、など金融商品の情報を保持する組織が運営するサーバ装置を想定できる。
【0052】
上述の各種金融商品としては、例えば、株式、先物商品、外国為替、といったものを想定できる。また取り扱う情報は、期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、為替デルタ等の市場感応度、商品価格(例:株価指数、商品先物価格、外国為替相場、外国為替先渡し相場、ロング/ショート未決済ポジション比率、各種指標のボラティリティ、リスクリバーサル等)、各種手数料(例:売買手数料、管理手数料)といったものを想定できる。
【0053】
従来であれば、最適ポートフォリオの算出に際し、上述の各項目に関する重みづけのバリエーションや金融商品の組み合わせパターンといった要素の増加に対して計算量が指数関数的に増加し、計算完了までに長時間を要することなる。しかしながら、アニーリングマシンを使用したポートフォリオ作成支援装置100を採用することで、要素の増加にさほど依存せず計算を行うことが可能となる。
【0054】
---ハードウェア構成---
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置100のハードウェア構成は、図2に以下の如くとなる。すなわちポートフォリオ作成支援装置100は、記憶部101、メモリ103、演算部104、および通信部105、を備える。
【0055】
このうち、記憶部101は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。また、メモリ103は、RAMなど揮発性記憶素子で構成される。
【0056】
また、演算部104は、記憶部101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUである。
【0057】
また、通信部105は、ネットワーク10と接続して、ユーザ端末200や金融情報配信システム300といった他装置との通信処理を担う、ネットワークインターフェイスカードで構成される。
【0058】
なお、ポートフォリオ作成支援装置100がスタンドアロンマシンである場合、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付ける入力部(キーボード、マウス等で構成)、処理データの表示を行うディスプレイ等の出力部、を更に備えるとすれば好適である。
【0059】
また、記憶部101内には、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置として必要な機能を実装する為のプログラム102に加えて、金融商品情報125、および重みづけ情報126が少なくとも記憶されている。ただし、これらの情報についての詳細は後述する。
【0060】
また、プログラム102、すなわちアニーリングマシンとしての動作を実装するアルゴリズムは、解くべき課題であるイジングモデル1021の情報を保持する。このイジングモデル1021は、情報提供の対象となるポートフォリオやそれを構成する金融商品の各種情報、対象金融機関におけるポートフォリオ運用方針などに基づき管理者等が予め設定しておくものとなる。
【0061】
なお、アニーリングマシンの概要にて述べた断熱量子計算は、別名で量子アニールとも呼ばれ、古典的な焼きなましの概念を量子力学に発展させたものである。即ち、断熱量子計算は本来古典的動作が可能で、高速性や解の正解率に関しで性能を向上させるために量
子力学的効果が付加されたものとも解釈できる。そこで本発明では、演算部そのものは古典的とし、演算過程に量子力学的に定まるパラメータを導入することにより、古典的であるが量子力学的な効果を含んだ演算方法・装置を実現する。
【0062】
以上の概念に基づき、以下の例では断熱量子計算との関連性を説明しながら解としての基底状態を得る古典的アルゴリズムと、それを実現するための装置に関して述べる。
【0063】
こうした前提でのポートフォリオ作成支援装置100は、N個の変数sj (j=1,2,…,N)が-1≦sj ≦1の値域を取り、局所場gjと変数間相互作用Jij(i,j=1,2,…,N)によって課題の設定がなされる。
【0064】
また演算部104では、時刻をm分割して離散的にt=t。(t。=0)からtm(tm =τ)まで演算するものとし、各時刻tkにおける変数Sj(tk)を求めるに当たり、前時刻tk-1の変数Sj(tk-1)(i=1,2,..,N)の値と緩和項の係数9pinaあるいは9pinbを用いてBj(tk)={ΣiJijSi(tk-1)+gj+sgn(sj(tk-1))・9pina}・tk/τあるいはBj(tk)={ΣiJiJSj(tk-1)+gj+9pinb .Sj(tk-1)}・tk/τを求め、上述の変数Sj(tk)の値域が-1≦sj(tk)≦1になるように関数fを定めてSj(tk)=f(Bj(tk),tk)とし、時刻ステップをt=t0からt=tmに進めるにつれて上述の変数Sjを-1あるいは1に近づけ、最終的にsj<0ならば、Sjzd=-1、Sj>0ならば、Sjzd=1として解を定める。
【0065】
係数gpinbは、例えば|Jij|の平均値の50%から200%の値である。また、課題設定の局所場gjに関して、あるサイトj’に対してのみ補正項δgj’をgj’に加え、該サイトj’に対してのみgj’の大きさを大きくすることもできる。また、補正項δgj’は、例えば|Jij|の平均値の10%から100%の値である。
【0066】
続いて、量子力学的な記述から出発して古典的な形式に移行することを通して、アニーリングマシンの基本的原理を述べる。
【0067】
式(3)で与えられるイジングスピン・ハミルトニアンの基底状態探索問題はNP困難と呼ばれる分類の問題を含み、有用な問題であることが知られている(文献:F. Barahona, ”On the computational comp lex ity of Isingspin glass models,” J. Phys. A: Math. Gen. 15, 3241 (1982).)。
【0068】
[式3]

Jij及びgjが課題設定パラメータであり、σ^はパウリのスピン行列のz成分で±1の固有値を取る。i,jはスピンのサイトを表す。イジングスピンとは値として±1だけを取りうる変数のことで、式(3)ではσ^の固有値が±1であることによりイジングスピン系となっている。
【0069】
式(3)のイジングスピンは文字通りのスピンである必要はなく、ハミルトニアンが式
(3)で記述されるのであれば物理的には何でも良い。
【0070】
例えば、金融商品のポートフォリオ採用/非採用を±1に対応付けることや、ロジック回路のhighとlowを±1に対応付けることも可能であるし、光の縦偏波と横偏波を±1に対応付けることや0,πの位相を±1に対応付けることも可能である。
【0071】
ここで例示する方法では、断熱量子計算と同様に、時刻t=0において式(4)で与えられるハミルトニアンの基底状態に演算系を準備する。
【0072】
[式4]

γは全サイトjに一様に掛かる外場の大きさで決まる比例定数であり、σ^jは、パウリのスピン行列のx成分である。演算系がスピンそのものであれば、外場とは磁場を意味する。
【0073】
式(4)は、横磁場を印加したことに相当し、すべてのスピンがx方向を向いた場合(γ>0)が基底状態である。問題設定のハミルトニアンはz成分のみのイジングスピン系として定義されたが、式(4)にはスピンのx成分が登場している。従って、演算過程でのスピンはイジングではなくベクトル的(ブロッホベクトル)である。t=0では式(4)のハミルトニアンでスタートしたが、時刻tの進行と共に徐々にハミルトニアンを変化させ、最終的には式(3)で記述されるハミルトニアンにしてその基底状態を解として得る。
【0074】
[式5]

ここでσ^はパウリのスピン行列の3成分をベクトルとして表示している。基底状態はスピンが磁場方向を向いた場合で、<・>を量子力学的期待値として<σ^>=B/|B|と書ける。断熱過程では常に基底状態を維持しようとするので、スピンの向きは常に磁場の向きに追従する。
【0075】
以上の議論は多スピン系にも拡張できる。t=0ではハミルトニアンが式(4)で与えられる。これは全スピンに対して一様に磁場Bj =γが印加されたことを意味する。t>0では、磁場のx成分が徐々に弱まりBj =γ(1-t/τ)である。z成分に関してはスピン間相互作用があるために有効磁場としては式(6)になる。
【0076】
[式6]

スピンの向きは<σ^>/<σ^>で規定できるので、スピンの向きが有効磁場に追従するならば式(7)によりスピンの向きが定まる。
【0077】
[式7]

式(7)は量子力学的記述であるが期待値を取っているので、式(1)~(6)とは異なり古典量に関する関係式である。
【0078】
古典系では量子力学の非局所相関(量子縫れ)がないので、スピンの向きはサイトごとの局所場により完全に決まるはずであり、式(7)が古典的スピン系の振る舞いを決定する。量子系では非局所相関があるために式(7)は変形されることになるが、それに関しては後述することとし、ここでは発明の基本形態を述べるために式(7)で定まる古典系について記述する。
【0079】
図3にスピン系の基底状態を得るためのタイミングチャート(1)を示す。図3の記述は古典量に関するものなので、サイトjのスピンをσ^jではなくsjにより表した。またそれに伴い、図3の有効磁場Bjは古典量である。t=0において全サイトで右向きの有効磁場Bjが印加され、全スピンSjが右向きに初期化される。
【0080】
時間tの経過に従い、徐々にz軸方向の磁場とスピン間相互作用が加えられ、最終的にスピンは+z方向あるいは-z方向となって、スピンSjのz成分がsj=+1あるいは-1となる。時間tは連続的であることが理想であるが、実際の演算過程では離散的にして利便性を向上させることもできる。以下では離散的な場合を述べる。
【0081】
ここで例示するスピンはz成分だけでなくx成分が加わっているためにベクトル的なスピンになっている。図3からもベクトルとしての振る舞いが理解できる。ここまでy成分が登場してこなかったが、それは外場方向をxz面に取ったために外場のy成分が存在せず、従って<σ^>=0となるためである。
【0082】
演算系のスピンとしては大きさ1の3次元ベクトル(これをブロッホベクトルと呼び、球面上の点で状態を記述できる)を想定しているが、図に示す例における軸の取り方では2次元のみを考慮すればよい(円上の点で状態を記述できる)。
【0083】
またγは一定なのでBj(t)>0(γ>0)あるいはBj(t)<0(γ<0)が成り立つ。この場合、2次元スピンベクトルは半円のみで記述できることになり、[-1,1]でSjを指定すればSjの1変数で2次元スピンベクトルが定まる。従って、ここでの例では、スピンは2次元ベクトルであるが、値域を[-1,1]とする1次元連続変数として表記することもできる。
【0084】
図3のタイミングチャートでは時刻t=tkにおいてサイトごとに有効磁場を求め、その値を用いて式(8)によりt=tkにおけるスピンの向きを求める。
【0085】
[式8]

式(8)は式(7)を古典量に関する表記に書き改めたものなので<・>の記号が付いていない。
【0086】
次に、t=tk+lの有効磁場をt=tkにおけるスピンの値を用いて求める。各時刻の有効磁場を具体的に書けば式(9)及び(10)となる。
【0087】
[式9]

[式10]

以下、図3のタイミングチャートで模式的に示した手順に従い、スピンと有効磁場を交互に求めていく。
【0088】
古典系ではスピンベクトルの大きさは1である。この場合スピンベクトルの各成分は、tanθ=Bj(tk)/Bj(tk)で定義される媒介変数θを用いてSj(tk)=sinθ、Sj(tk)=COSθと記述される。
【0089】
これを書き直せば、Sj(tk)=sin(arctan(Bj(tk)/Bj(tk)))、Sj(tk)=cos(arctan(Bj(tk)/Bj(tk)))である。
【0090】
式(9)から明らかなようにBj(tk)の変数は、tkのみであり、τとγは定数である。 従って、Sj(tk)=sin(arctan(Bj(tk)/Bj(tk)))及びSjx(tk)=cos(arctan(Bj(tk)/Bj(tk)))はBj(tk)とtkを変数とする関数としてSj(tk)=f1(Bj(tk),tk)及びSj(tk)=f2( Bj(tk),tk)のような一般化した表現もできる。
【0091】
スピンを2次元ベクトルとして記述しているので、Sj(tk)とsj(tk)の2成分が登場しているが、Bj(tk)を式(10)に基づき決定するならばSj(tK)は必要ない。
【0092】
これは、[-1,1]を値域とするSj(tk)のみでスピン状態を記述できることに対応している。最終的な解Sjzdは、Sjzd=-1or1になる必要があり、Sj(τ)>0ならばSjzd=1、Sj(τ)<0ならばSjzd=-1とする。
【0093】
図4に、上述のアルゴリズムをフローチャートにまとめたものを示す。ここでtm=τである。図4のフローチャートの各ステップs1~s9は、時間t=0からt=τに到る図3のタイミングチャートの、ある時刻での処理に対応している。すなわち、フローチャートのステップs2、s4、s6がそれぞれ、t=t1,tk+l,tmにおける上記の式(9)及び(10)に対応している。最終的な解はステップs8において、sj<0ならばSjzd=-1、Sj>0ならば、Sjzd=1とすることにより定める(s9) 。
【0094】
ここまでは課題が式(3)で表現された場合に如何に解かれるかを示した。次に具体的課題が如何に局所場gjと変数間相互作用Jij(i,j=1,2,…,N)を含む式(3)で表現されるかに関して具体例を挙げて説明する。
【0095】
ここでの具体的課題すなわちイジングモデル1021は、値下がりリスク-期待収益率-金利デルタ+為替デルタ、の式の結果を最小化する金融商品の所定保有比率での組み合わせ、すなわち最適ポートフォリオを推定する問題を想定する。この時、当該式の変数(値下がりリスク、期待収益率、金利デルタ、および為替デルタ)に乗じられる係数すなわち重みづけの値は、ユーザが望むポートフォリオ運用方針等で様々なバリエーションが想定できる。
【0096】
例えば、値下がりリスクに重きを置く場合、値下がりリスクの重みづけ:0.4、期待収益率の重みづけ:0.2、金利デルタに重みづけ:0.2、為替デルタの重みづけ:0.2、のようになる。なお、各項目の重みづけの値の合計値は、1となる。
【0097】
この場合、局所場gjとして、各運用方針ごとすなわち重みづけのパターンごとの、ポートフォリオそれぞれの、値下がりリスク-期待収益率-金利デルタ+為替デルタ、の式を想定する。
【0098】
また、σ^jzは、所定の金融商品の価格増減に、他の金融商品の価格増減を影響させるための変数と考える。金融商品の間での価格増減の相関強度すなわち感応度は、変数間相互作用Jijを通して表現する。
【0099】
以上のような考察を通して変数間相互作用Jijを具体的に設定し、式(3)で表されるイジングモデル1021の基底状態探索、すなわち上述の、値下がりリスク-期待収益率-金利デルタ+為替デルタ、の式の結果が最小となる基底状態の探索を通して、各金融商品の保有比率が収斂するバランス地点を特定する。この基底状態における金融商品の保有比率が、当該重みづけのパターンに関して予測される最適ポートフォリオ(を構成する金融商品の所定保有比率)となる。
【0100】
---データ構造例---
続いて、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置100が用いる各種情報について説明する。図5に、本実施形態における金融商品情報125の一例を示す。
【0101】
本実施形態の金融商品情報125は、各種金融商品の情報を蓄積したテーブルである。この情報としては、金融情報配信システム300が配信してきた、各種金融商品(例:株式、先物商品、外国為替など)に関する、期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、為
替デルタ等の市場感応度、商品価格(例:株価指数、商品先物価格、外国為替相場、外国為替先渡し相場、ロング/ショート未決済ポジション比率、各種指標のボラティリティ、リスクリバーサル等)、および各種手数料(例:売買手数料、管理手数料)といったものが含まれる。
【0102】
そのデータ構造は、例えば、金融商品の名称をキーとして、その期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、為替デルタ、商品価格、および手数料といったデータから成るレコードの集合体である。
【0103】
なお、図5の金融商品情報125で例示した金融商品の例は、あくまで説明の都合上で限定的であり、その他の様々な金融商品の情報が格納されているものとする(以下同様)。
【0104】
また、図6に本実施形態における重みづけ情報126の一例を示す。本実施形態の重みづけ情報126は、期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、および為替デルタの各項目について、金融機関等のユーザ(現ポートフォリオの改善を想定している者)が想定している重要度の大きさを重みづけ値として規定した情報を蓄積したテーブルである。すなわち、金融機関等が検討対象としているポートフォリオの特性(例:バランス重視、期待収益率および値下がりリスクを重視、期待収益率重視)に対応した、上述の各項目の重みづけを規定した情報となる。
【0105】
そのデータ構造は、例えばポートフォリオ特性の識別情報をキーとして、当該ポートフォリオ特性に対応した、各項目の重みづけの値といったデータから成るレコードの集合体である。
【0106】
---フロー例---
以下、本実施形態におけるポートフォリオ作成支援方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明するポートフォリオ作成支援方法に対応する各種動作は、ポートフォリオ作成支援装置100がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0107】
図7は、本実施形態におけるポートフォリオ作成支援方法のフロー例を示す図である。ここで、ポートフォリオ作成支援装置100は、アニーリングマシンとして、例えば3つの金融商品(図8図9)から構成されるポートフォリオに関して上述のイジングモデル1021を課題として基底状態を算定することを前提とする。なお、ここで例示する3つの金融商品は図8図9に示す銘柄「A」~「C」である。
【0108】
まず、ポートフォリオ作成支援装置100は、既に述べた「値下がりリスク-期待収益率-金利デルタ+為替デルタ」の式における各変数(項目)の値を正規化する(s10)。ここで正規化する値は、図8で期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、および為替デルタのそれぞれに関して例示した値となる。
【0109】
具体的には、各変数の金融商品間における最大値、最小値を踏まえ、各値が1~10の範囲となるよう各変数の値を変換することとなる。図8の例であれば、期待収益率の最大値は銘柄「C」の「20」、最小値は銘柄「B」の「5」である。
【0110】
そこでポートフォリオ作成支援装置100は、最大値に関する「10=20a+b」の式と、最小値に関する「1=5a+b」の式とを連立方程式として解くことで、傾き「0.6」、切片「-2」を得る(図10参照)。同様に、値下がりリスクに関して、傾き「
2.25」、切片「-1.25」を得る(図10参照)。同様に、金利デルタに関して、傾き「0.225」、切片「-1.25」を得る(図10参照)。同様に、為替デルタに関して、傾き「0.12」、切片「-0.8」を得る(図10参照)。
【0111】
この場合、ポートフォリオ作成支援装置100は、図10のように各変数について得た傾きと切片の各値に基づき、上述の銘柄「A」~「C」の各変数について正規化し、図11の結果を得られることになる。図11で示すように、各変数の値は、全て1~10の範囲に収まっている。
【0112】
続いて、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述の各変数に関する係数すなわち重みづけの値の合計が1となる範囲で、各変数の係数の組み合わせを自動生成する(s11)。係数を「C」とした場合、上述の式は、Crisk・値下がりリスク-Cear・期待収益
率-Cir・金利デルタ-Cfx・為替デルタ、と表現される。
【0113】
例えば、変数の数が「5」で10%刻みにて係数の組み合わせを想定すれば、組み合わせ数は「1001」などとなる。
【0114】
続いて、ポートフォリオ作成支援装置100は、アニーリングマシンとして、上述のとおり3つの金融商品から構成されるポートフォリオに関して、s11で生成した係数の組み合わせ数通りのイジングモデル1021を課題として基底状態を算定し、最適ポートフォリオを推定する(s12)。こうした基底状態の探索自体は、既存技術における処理と同様である。
【0115】
図12にて、上述のs12の処理結果、すなわち重みのパターンごとの、目的関数値(式:ポートフォリオそれぞれの、値下がりリスク-期待収益率-金利デルタ+為替デルタ、の値)、期待収益率、値下がりリスク、金利デルタ、および為替デルタの各値を示す。なお、ここではモデルの簡易化のため、変数のうち、期待収益率、値下がりリスク、および金利デルタの各変数のみに関して重みづけのパターンを考慮した例を示す。
【0116】
次に、ポートフォリオ作成支援装置100は、図12で示した処理結果、すなわち各ポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各値に基づき、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面(図13参照)、金利デルタと期待収益率の二軸で規定される平面(図14参照)、および、期待収益率と為替デルタの二軸で規定される平面(不図示)、の各平面の少なくともいずれかに、各ポートフォリオの位置をプロットし、当該プロットが行われた平面に当該平面に対応する有効フロンティア曲線Fcを描画してユーザ端末200に出力する(s13)。
【0117】
この時、ポートフォリオ作成支援装置100は、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面(図13参照)にプロットしたポートフォリオのうち、ユーザの現ポートフォリオNpよりも値下がりリスクが低く期待収益率が高い、かつ有効フロンティア曲線Fcよりも上方領域にあるポートフォリオXpに関して、所定の強調表示処理(図13の例では、ポートフォリオXpの群れを赤い円で囲んでいる)を実行するものとする。
【0118】
また、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述のポートフォリオXpについて、図15に示すように、期待収益率、値下がりリスク、金利デルタの他、リスクアセット、購入銘柄数、売却銘柄数、および必要コストの各値をユーザ端末200に出力する(s14)。
【0119】
この場合、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述のポートフォリオXpそれぞれと、ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品を特定し、ポートフォリオXpに
変更する場合に、購入が必要な金融商品の数を購入銘柄数、売却が必要な金融商品の数を売却銘柄数、として算定する。そしてポートフォリオ作成支援装置100は、例えば、購入銘柄数に購入コスト(証券会社等に支払う各種手数料や商品代金)の単価を乗じて、購入コストを算定する。また、ポートフォリオ作成支援装置100は、売却銘柄数に売却コスト(証券会社等に支払う各種手数料や損金)の単価を乗じて、売却コストを算定する。最後に、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述の購入コストと売却コストを合算し、必要コストを算定する。
【0120】
一方、ユーザは、上述の図13~15をユーザ端末200で閲覧し、例えば、ポートフォリオXpに含まれている各ポートフォリオから、期待収益率や値下がりリスク、金利デルタ等の指標の他、ポートフォリオ変更に伴うコストも認識した上で所望のポートフォリオを選定し、ポートフォリオ組み換え内容の候補として利用できる。
【0121】
なお、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置100は、金利デルタと為替デルタの二軸で規定される平面に、ポートフォリオXpに関して、リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置してユーザ端末200に出力(図16)するとすれば好適である。
【0122】
この場合、ポートフォリオ作成支援装置100は、上述の図13で示した値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面にプロットしたポートフォリオのうち、有効フロンティア曲線Fcよりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定する。
【0123】
例えば、或るポートフォリオにおける期待収益率の値「0.00025」を値下がりリスクの値「0.00001」で除算してリスク対比の収益性の値「25」を算定する。
【0124】
続いて、ポートフォリオ作成支援装置100は、金利デルタと為替デルタの二軸で規定される平面において、特定ポートフォリオすなわちポートフォリオXpに関して、リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置してユーザ端末200に出力する。
【0125】
このオブジェクトは、例えば円や矩形といった所定形状の表示オブジェクトを想定できる。また、その属性とは、リスク対比の収益性の値の大きさに応じたサイズ、色、形状、柄、明滅や点滅のパターン等を想定する。これによれば、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度(金利デルタ、為替デルタ)の各観点を全て踏まえた、すなわち四次元の事象についてポートフォリオを表現し、ポートフォリオ間での差別化を明確に図りつつユーザに提示可能となる。
【0126】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0127】
こうした本実施形態によれば、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0128】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置において、前記演算部は、前記各ポートフォリオにおける期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各値に基づき、値下がりリスクと期待収益率の二軸で規定される平面、期待収益率と市場感応度たる金利デルタの二軸で規定される平面、および、期待収益率と市場感応度たる為替デルタの二軸で規定される平面、の
各平面の少なくともいずれかに前記各ポートフォリオの位置をプロットし、当該プロットが行われた前記各平面の少なくともいずれかに当該平面に対応する有効フロンティア曲線を描画して所定装置に出力する処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0129】
これによれば、各ポートフォリオの特性を複数の観点から明確に提示し、金融機関の担当者におけるポートフォリオ策定業務を効果的に支援することとなる。ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これをさらに認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0130】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置において、前記演算部は、前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、所定ユーザの現ポートフォリオよりも値下がりリスクが低く収益が高い、かつ前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にあるポートフォリオに関して、所定の強調表示処理を行うものである、としてもよい。
【0131】
これによれば、現ポートフォリオから期待収益率およびリスクの両面で改善が期待出来る新たなポートフォリオを明確に提示可能となる。ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これをさらに認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0132】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置において、前記演算部は、前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定する処理と、前記金利デルタと前記為替デルタの二軸で規定される平面に、前記特定ポートフォリオに関して、前記リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置して所定装置に出力する処理をさらに行うものである、としてもよい。
【0133】
これによれば、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度(金利デルタ、為替デルタ)の各観点を全て踏まえた、すなわち四次元の事象についてポートフォリオを表現し、ユーザに提示可能となる。ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これをさらに認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0134】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置において、前記演算部は、前記演算に際し、前記ポートフォリオを構成する金融商品に関して前記情報が示す、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値を、所定の規定範囲に収まるよう正規化し、前記所定式における該当項目に設定する処理を更に実行するものである、としてもよい。
【0135】
これによれば、期待収益率、値下がりリスク、市場感応度の各項目の値の範囲(桁数の規模感)が大きく異なる状況に適宜に対処し、イジングモデルとしての数式を有意なものとできる。ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補をより効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0136】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置において、前記演算部は、前記各ポートフォリオの少なくともいずれかと、所定ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品に関して、予め情報を保持する売買コストを適用し、前記現ポートフォリオからのポートフォリオ変更に必要なコストを特定して、当該コストの情報を前記所定装置に出力す
る処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0137】
これによれば、ポートフォリオ変更に伴うコストに関する情報を提示可能となり、ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補を効率良く生成し、これをさらに認識しやすい形でユーザに提示可能となる。
【0138】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援装置は、前記イジングモデルに関して組合せ最適化問題を解くCMOSアニーリングマシンであるとしてもよい。
【0139】
これによれば、イジングモデルの動作を半導体のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの素子を用いた回路で擬似的に再現し、金融商品のポートフォリオ候補の作成といった組合せ最適化問題の実用解を、室温下で効率良く求めることが可能となる。ひいては、金融機関ごとの運用方針を踏まえた複数のポートフォリオ候補をさらに効率良く生成し、これを認識しやすい形でユーザに提示可能とする。
【0140】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援方法において、前記情報処理装置が、前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、所定ユーザの現ポートフォリオよりも値下がりリスクが低く期待収益率が高い、かつ前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にあるポートフォリオに関して、所定の強調表示処理を行う、としてもよい。
【0141】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援方法において、前記情報処理装置が、前記値下がりリスクと前記期待収益率の二軸で規定される前記平面にプロットしたポートフォリオのうち、前記有効フロンティア曲線よりも上方領域にある特定ポートフォリオを特定し、当該ポートフォリオにおける期待収益率の値を値下がりリスクの値で除算してリスク対比の収益性の値を算定する処理と、前記金利デルタと前記為替デルタの二軸で規定される平面に、前記特定ポートフォリオに関して、前記リスク対比の収益性の値の大きさに応じた属性のオブジェクトを配置して所定装置に出力する処理をさらに行う、としてもよい。
【0142】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援方法において、前記情報処理装置が、前記演算に際し、前記ポートフォリオを構成する金融商品に関して前記情報が示す、期待収益率、値下がりリスク、および市場感応度の各項目の値を、所定の規定範囲に収まるよう正規化し、前記所定式における該当項目に設定する処理を更に実行する、としてもよい。
【0143】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援方法において、前記情報処理装置が、前記各ポートフォリオの少なくともいずれかと、所定ユーザの現ポートフォリオとの差分である金融商品に関して、予め情報を保持する売買コストを適用し、前記現ポートフォリオからのポートフォリオ変更に必要なコストを特定して、当該コストの情報を前記所定装置に出力する処理をさらに実行する、としてもよい。
【0144】
また、本実施形態のポートフォリオ作成支援方法において、前記情報処理装置が、前記イジングモデルに関して組合せ最適化問題を解くCMOSアニーリングマシンであるとしてもよい。
【符号の説明】
【0145】
10 ネットワーク
100 ポートフォリオ作成支援装置(アニーリングマシン)
101 記憶部
102 プログラム
1021 イジングモデル
103 メモリ
104 演算部
105 通信部
125 金融商品情報
126 重みづけ情報
200 ユーザ端末
300 金融情報配信システム
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