(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】バケット用のツース取付構造、及びバケット用のツース
(51)【国際特許分類】
E02F 9/28 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
E02F9/28 A
(21)【出願番号】P 2019167277
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】永田 貴則
(72)【発明者】
【氏名】田中 大次郎
(72)【発明者】
【氏名】古館 侑大
(72)【発明者】
【氏名】姶良 達雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聞太
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518342(JP,A)
【文献】特表2018-518618(JP,A)
【文献】特開2012-072658(JP,A)
【文献】特開昭57-009931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット用のツース取付構造であって、
内部空間と、内面に設けられるガイド溝と、前記ガイド溝に設けられるピン孔とを、有するツースと、
前記ピン孔に配置されるピン部材と、
前記ガイド溝に配置され、前記ピン部材に向けてスライドすることによって前記ピン部材に係合し、前記ピン部材を抜け止めするロック部材と、
を備えるバケット用のツース取付構造。
【請求項2】
前記ピン孔は、前記ガイド溝の底部を貫通する、
請求項1に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記ピン部材に向かう方向にスライドすることによって、前記ピン部材に係合する、
請求項1又は2に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記ピン部材から離れる方向にスライドすることによって、前記ピン部材に係合する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記ピン部材に係合する係合部を、有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項6】
前記ロック部材は、前記ピン部材を前記係合部に案内する開口部を、さらに有する、
請求項5に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項7】
前記ロック部材は、爪部をさらに有する、
請求項5又は6に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項8】
前記ピン部材は、前記係合部が係合する環状溝を、有する、
請求項5から7のいずれか1項に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項9】
前記バケットに設けられ、前記ツースの前記内部空間に配置されるツースアダプタ、
をさらに備え、
前記ロック部材は、前記ツースアダプタ及び前記ツースの間において、前記ピン部材に係合する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項10】
前記ツースアダプタの外面には、前記ロック部材を配置するための凹部が、形成される、
請求項9に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項11】
前記ツースアダプタは、前記ピン部材が配置される貫通孔を、有し、
前記貫通孔の端部は、前記貫通孔の中央部より拡径されている、
請求項9又は10に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項12】
前記ツースアダプタは、前記ロック部材を位置決めするための凸部を、有する、
請求項9から11のいずれか1項に記載のバケット用のツース取付構造。
【請求項13】
バケット用のツースであって、
内部空間を有するツース本体と、
ピン孔が設けられ、前記ピン孔に配置されるピン部材に向けてロック部材をスライドさせるために、前記ツース本体の内面に設けられるガイド溝と、
を備えるバケット用のツース。
【請求項14】
前記ピン孔は、前記ガイド溝の底部を貫通する、
請求項13に記載のバケット用のツース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケット用のツース取付構造、及びバケット用のツースに、関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、バケット用のツース取付構造が開示されている。従来のバケット用のツース取付構造では、ツース及びツースアダプタが、ピン部材を介して連結されている。この場合、リテーナをピン部材に係合させることによって、ピン部材は抜け止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバケット用のツース取付構造では、リテーナがツース及びツースアダプタの間に配置された状態で、ピン部材をツース及びツースアダプタのピン孔に挿入することによって、ツース及びツースアダプタが連結される。
【0005】
この場合、ピン部材がリテーナを通過する際の摩擦抵抗が大きいため、ピン部材をツース及びツースアダプタに装着することが難しい。また、ツースを交換する際にも、ピン部材をツース及びツースアダプタから取り外すことが難しい。
【0006】
本発明の目的は、ツースを容易に脱着することができるバケット用のツース取付構造を、提供することにある。また、本発明の目的は、取付対象に容易に脱着することができるバケット用のツースを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るバケット用のツース取付構造は、ツースと、ピン部材と、ロック部材とを、備える。ツースは、内部空間と、内面に設けられるガイド溝と、ガイド溝に設けられるピン孔とを、有する。ピン部材は、ピン孔に配置される。ロック部材は、ピン部材を抜け止めする。ロック部材は、ガイド溝に配置される。ロック部材は、ピン部材に向けてスライドすることによってピン部材に係合する。
【0008】
第2の態様に係るバケット用のツースは、ツース本体と、ガイド溝と、ピン孔とを、備える。ツース本体は、内部空間を有する。ガイド溝は、ツース本体の内面に設けられる。ピン孔は、ガイド溝に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバケット用のツース取付構造は、ツースを容易に脱着することができる。また、本発明のバケット用のツースは、取付対象に対して容易に脱着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るバケット用のツース取付構造の斜視図である。
【
図2】本実施形態におけるツース取付構造の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態におけるツースアダプタの斜視図である。
【
図4A】本実施形態におけるツースアダプタの側面図である。
【
図4B】本実施形態におけるツースアダプタの貫通孔を説明するための断面図である(
図4Aの切断線IVB-IVB)。
【
図4C】本実施形態におけるピン部材及びピン孔の位置関係を示す側面図である。
【
図5A】本実施形態におけるツース取付構造の側面図である。
【
図5B】本実施形態におけるツース取付構造の断面図である(
図5Aの切断線(a)~(e))。
【
図7A】本実施形態におけるロック部材の斜視図である。
【
図7B】本実施形態におけるツースアダプタにロック部材及びピン部材が配置された状態の斜視図である。
【
図8A】本実施形態におけるツース取付構造の側面図である(ロック解除状態)。
【
図8B】本実施形態におけるツース取付構造の側面図である(ロック状態)。
【
図9A】本実施形態の変形例Aにおけるツース取付構造の側面図である(ロック解除状態)。
【
図9B】本実施形態の変形例Aにおけるツース取付構造の側面図である(ロック状態)。
【
図9C】本実施形態の変形例Aにおけるロック部材の側面図である。
【
図10A】本実施形態の変形例Bにおけるピン部材及びピン孔の位置関係を示す側面図である。
【
図10B】本実施形態の変形例Bにおけるピン孔の部分拡大側面図である。
【
図11A】他の実施形態におけるツースアダプタにピン部材及びロック部材が配置された状態の斜視図である。
【
図11B】他の実施形態におけるツースアダプタにピン部材及びロック部材が配置された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るバケット用のツース取付構造1の構成について、図面を参照しながら説明する。例えば、
図1に示すように、ツース取付構造1は、バケット2に装着される。ツース取付構造1は、ツース5と、ピン部材7と、ロック部材9とを、備える。詳細には、ツース取付構造1は、ツースアダプタ3と、ツース5と、ピン部材7と、ロック部材9とを、備える。
【0012】
(ツースアダプタ)
図1に示すように、ツースアダプタ3は、バケット2に設けられる。
図2に示すように、ツースアダプタ3は、バケット2の開口部から突出するように、バケット2に装着される。ツースアダプタ3は、一方向に長い部材である。例えば、
図2に示すように、ツースアダプタ3の長手方向は、軸A1が延びる方向に対応している。軸A1は、ノーズ部21(後述する)の長手方向にも対応している。
【0013】
図3に示すように、ツースアダプタ3は、アダプタ本体11と、第1ピン孔13(貫通孔の一例)と、凹部15とを、有する。
図4Aに示すように、第1ピン孔13は、ツースアダプタ3の軸A1に直交する方向に延びる。第1ピン孔13には、ピン部材7(
図2を参照)が配置される。
【0014】
図4Bに示すように、第1ピン孔13の端部13bは、第1ピン孔13の中央部13aより拡径されている。例えば、第1ピン孔13における中央部13aの内周面は、円形状に形成される。第1ピン孔13の中央部13aの直径は、ピン部材7の直径より大きい。第1ピン孔13における端部13bの内周面は、円形状に形成される。
【0015】
図3及び
図4Aに示すように、凹部15は、ツースアダプタ3の第1ピン孔13が形成される面に、形成される。凹部15には、ロック部材9が配置される(
図7Bを参照)。例えば、凹部15には、ロック部材9の一部が配置される。
【0016】
詳細には、ツースアダプタ3は、装着部19と、ノーズ部21とを、有する。装着部19及びノーズ部21は、上述したアダプタ本体11を構成する。装着部19は、バケット2に固定される。装着部19には、上述した凹部15が形成される。
【0017】
ノーズ部21は、装着部19から延びる。例えば、ノーズ部21は、装着部19と一体に形成される。ノーズ部21は、バケット2から離れるように、装着部19から突出する。ノーズ部21は、先細り形状に形成される。ノーズ部21は、一方向に長い部材である。ノーズ部21の長手方向は、軸A1が延びる方向に対応している。例えば、ノーズ部21の先端面を外側から見た正面視において、軸A1は、ノーズ部21の先端部23の中心及びノーズ部21の重心を通過する。ノーズ部21には、上述した第1ピン孔13が形成される。
【0018】
図4Aに示すように、ノーズ部21は、先端部23と、基端部25と、連結部27とを、有する。
図5Aに示すように、先端部23は、ノーズ部21の軸A1が延びる軸方向においてツース5の内面に当接可能なように、ツース5の内部空間Sに配置される。
【0019】
図5A及び
図5B(a)に示すように、ノーズ部21の軸A1に直交する平面(a)によって先端部23を切断した断面の外周は、矩形状に形成される。なお、“外周”は、“外形”と解釈してもよい。以下では、ノーズ部21の軸A1に直交する“平面”は、“切断面”と記載される。
【0020】
図4Aに示すように、基端部25は、装着部19から連なって設けられる。例えば、基端部25は、装着部19と一体に形成される。
図5A及び
図5B(e)に示すように、切断面(e)によって基端部25を切断した断面の外周は、矩形状に形成される。
【0021】
図5Aに示すように、連結部27は、先端部23及び基端部25の間に設けられる。例えば、連結部27は、先端部23及び基端部25と一体に形成される。連結部27には、上述した第1ピン孔13が形成される。
【0022】
連結部27の外面は、8角形に形成される。例えば、切断面(b)及び切断面(c)によって連結部27を切断した断面の外周は、8角形に形成される。第1ピン孔13を通過する切断面(d)によって連結部27を切断した断面の外周は、8角形に形成される。このように、断面の外周が8角形に形成される部分が、連結部27として定義される。
【0023】
より詳細には、連結部27において互いに対向する辺L1の両端部それぞれは、基端部25の隅角部及び先端部23の隅角部を連結する第1稜線R1を、形成する。例えば、連結部27では、8角形の辺L1が、ノーズ部21の軸A1及びピン部材7の軸心A2を含む平面P1に平行に形成される。連結部27において平面P1に平行な面は、8角形の辺L1によって形成される。
図3、
図4A、
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、8角形の辺L1の両端部によって、連結部27の外面には第1稜線部R1が形成される。
【0024】
また、連結部27において辺L1の両端部に隣接する隅角部は、基端部25の隅角部及び先端部23の隅角部を連結する第3稜線R3を、形成する。例えば、
図3、
図4A、
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、第1稜線部R1を形成する隅角部に隣接する隅角部によって、連結部27の外面には第3稜線部R3が形成される。
【0025】
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、連結部の辺L1に隣接する辺L3は、連結部27の8角形の外周における一辺である。辺L3は、第1稜線部R1及び第3稜線部R3の間の面を、形成する。
【0026】
ここで、
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、長手方向における連結部27の中央部の辺L1の長さ(
図5B(c)の辺L1の長さ)は、連結部27における基端部25側の辺L1の長さ(
図5B(d)の辺L1の長さ)より、短い。また、長手方向における連結部27の中央部の辺L1の長さ(
図5B(c)の辺L1の長さ)は、連結部27における先端部23側の辺L1の長さ(
図5B(b)の辺L1の長さ)より、短い。
【0027】
詳細には、
図3に示すように、辺L1は、基端部25から連結部27の中央部に向けて、徐々に短くなる(
図5B(d)及び
図5B(c)を参照)。また、辺L1は、連結部27の中央部から先端部23に向けて、徐々に長くなる(
図5B(c)及び
図5B(b)を参照)。
【0028】
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、長手方向における連結部27の中央部の辺L3の長さ(
図5B(c)の辺L3の長さ)は、連結部27における基端部25側の辺L3の長さ(
図5B(d)の辺L3の長さ)より、長い。また、長手方向における連結部27の中央部の辺L3の長さ(
図5B(c)の辺L3の長さ)は、連結部27における先端部23側の辺L3の長さ(
図5B(b)の辺L3の長さ)より、長い。
【0029】
詳細には、
図3に示すように、辺L3は、基端部25から連結部27の中央部に向けて、徐々に長くなる(
図5B(d)及び
図5B(c)を参照)。また、辺L3は、連結部27の中央部から先端部23に向けて、徐々に短くなる(
図5B(c)及び
図5B(b)を参照)。
【0030】
(ツース)
図1、
図2、及び
図5Aに示すように、ツース5は、ツースアダプタ3に取り付けられる。
図6に示すように、ツース5は、ツースアダプタ3を挿入するための内部空間Sを、有する。ツース5の内面は、ツースアダプタ3の外面に沿って形成される。例えば、ツース5は、ガイド溝31と、第2ピン孔33(ピン孔の一例)とを、有する。詳細には、ツース5は、ツース本体29と、ガイド溝31と、第2ピン孔33とを、有する。
【0031】
ツース本体29は、有底筒状に形成される。ツース本体29の内面は、ノーズ部21の外面に沿って形成される。例えば、ツース本体29の内面は、先細り形状に形成される。このようにツース本体29を形成することによって、上述した内部空間Sが形成される。内部空間Sには、ツースアダプタ3のノーズ部21が配置される(
図5Aを参照)。
【0032】
第2ピン孔33は、ツース本体29を貫通する。例えば、第2ピン孔33は、第1ピン孔13(
図4Aを参照)と連通可能なように、ツース本体29に形成される。第2ピン孔33は、ガイド溝31に設けられる。第2ピン孔33は、ガイド溝31の底部を貫通する。第2ピン孔33には、ピン部材7が配置される。
【0033】
ガイド溝31は、ロック部材9をピン部材7に向けて案内するためのものである。ガイド溝31は、ツース5の内面に設けられる。例えば、ガイド溝31は、ツース本体29の内面に設けられる。ガイド溝31は、ツース本体29の開口端からツース本体29の先端部に向かって、延びる。詳細には、ガイド溝31は、ツース本体29の内面に沿って、ツース本体29の開口端からツース本体29の先端部に向かって、延びる。
【0034】
図5A及び
図5Bに示すように、ツース5を上記の切断面(a)~(e)によって切断した断面の内周は、次のように形成される。
【0035】
図5Bに示すように、ツース本体29においてノーズ部21に対向する部分は、第1部分35と、第2部分37と、第3部分39とを、有する。
【0036】
図5B(a)に示すように、第1部分35は、ツース本体29がノーズ部21の先端部23に対向する部分である。第1部分35の内面は、ノーズ部21の先端部23の外面に沿って形成される。第1部分35を切断面(a)によって切断した断面の内周は、矩形状に形成される。
図5B(e)に示すように、第2部分37は、ツース本体29がノーズ部21の基端部25に対向する部分である。第2部分37の内面は、ノーズ部21の基端部25の外面に沿って形成される。第2部分37を切断面(e)によって切断した断面の内周は、矩形状に形成される。
【0037】
図5(b)、
図5(c)、及び
図5(d)に示すように、第3部分39は、ツース本体29がノーズ部21の連結部27に対向する部分である。第3部分39の内面は、ノーズ部21の連結部27の外面に沿って形成される。例えば、切断面(b)、切断面(c)、及び切断面(d)によって第3部分39を切断した断面の内周は、8角形に形成される。
【0038】
第3部分39では、8角形の辺L2が平面P1に平行に形成される。
図6、
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、8角形の辺L2の両端部によって、第3部分39の内面には、第2稜線部R2が形成される。第2稜線部R2は、ツースアダプタ3(連結部27)の第1稜線部R1(
図3を参照)に対向するように配置される。
【0039】
また、辺L2の端部に隣接する隅角部によって、第3部分39の内面には、第4稜線部R4が形成される。第4稜線部R4は、ツースアダプタ3の第3稜線部R3(
図3を参照)に対向するように配置される。
【0040】
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、第3部分39の辺L2に隣接する辺L4は、第3部分39の8角形の内周における一辺である。辺L4は、第2稜線部R2及び第4稜線部R4の間の面を、形成する。
【0041】
ここで、
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、長手方向における第3部分39の中央部の辺L2の長さ(
図5B(c)の辺L2の長さ)は、第3部分39における第2部分37側の辺L2(
図5B(d)の辺L2の長さ)より、短い。また、長手方向における第3部分39の中央部の辺L2の長さ(
図5B(c)の辺L2の長さ)は、第3部分39における第1部分35側の辺L2の長さ(
図5B(b)の辺L2の長さ)より、短い。
【0042】
詳細には、
図6に示すように、辺L2は、第2部分37から第3部分の中央部に向けて、徐々に短くなる(
図5B(d)及び
図5B(c)を参照)。また、辺L2は、第3部分の中央部から第1部分35に向けて、徐々に長くなる(
図5B(c)及び
図5B(b)を参照)。
【0043】
図5B(b)、
図5B(c)、及び
図5B(d)に示すように、長手方向における第3部分39の中央部の辺L4の長さ(
図5B(c)の辺L4の長さ)は、第3部分39における第2部分37側の辺L4の長さ(
図5B(d)の辺L4の長さ)より、長い。また、長手方向における第3部分39の中央部の辺L4の長さ(
図5B(c)の辺L4の長さ)は、第3部分39における第1部分35側の辺L4の長さ(
図5B(b)の辺L4の長さ)より、長い。
【0044】
詳細には、
図6に示すように、辺L4は、第2部分37から第3部分の中央部に向けて、徐々に長くなる(
図5B(d)及び
図5B(c)を参照)。また、辺L4は、第3部分の中央部から第1部分35に向けて、徐々に短くなる(
図5B(c)及び
図5B(b)を参照)。
【0045】
このようにツース5の内面に第2稜線部R2及び第4稜線部R4を形成し、上述したようにツースアダプタ3に第1稜線部R1及び第3稜線部R3を形成することによって、ツース5をツースアダプタ3に対して位置決めすることができる。すなわち、ツースアダプタ3に対するツース5のガタを抑制することができる。
【0046】
(ピン部材)
図2に示すように、ピン部材7は、ツースアダプタ3及びツース5を連結する。ピン部材7は、第1ピン孔13及び第2ピン孔33に配置される。ピン部材7は、円柱状に形成される。なお、ピン部材7は、円筒状に形成されてもよい。ピン部材7は、軸心A2を有する。
【0047】
例えば、
図4Cに示すように、ノーズ部21の先端部23がツースアダプタ3の内面に当接した状態で、ピン部材7は、第1ピン孔13及び第2ピン孔33に配置される。この状態において、ピン部材7は、ノーズ部21の先端部23側において第1ピン孔13の内周面に接触する。また、ピン部材7は、ノーズ部21の基端部25側において第2ピン孔33の内周面に接触する。この状態において、軸心A2は、第1ピン孔13における中央部13aの中心C1及び端部13bの中心C2から、ノーズ部21の先端部23側にオフセットしている。
【0048】
ピン部材7は、環状溝7aを有する。環状溝7aは、ピン部材の外周面に形成される。環状溝7aは、ツースアダプタ3及びツース5の間に配置される。環状溝7aには、ロック部材9が係合する。詳細には、環状溝7aには、ロック部材9の係合部41a(後述する)が係合する。
【0049】
この構成によって、ピン部材7がツースアダプタ3の第1ピン孔13及びツース5の第2ピン孔33に配置された状態では、ノーズ部21の基端部25側において、ピン部材7及び第1ピン孔13の間には、隙間が形成される。この隙間によって、バケット2による掘削作業時及び貫入作業時に、ピン部材7が第1ピン孔13の基端部25側に接触しづらくなる。これにより、ピン部材7及び第1ピン孔13の耐久性を向上することができる。
【0050】
(ロック部材)
ロック部材9は、ピン部材7を抜け止めするためのものである。
図7Aに示すように、ロック部材9は、ピン部材7に向けてスライドすることによって、ピン部材7に係合する。詳細には、ロック部材9は、ピン部材7に向かう方向にスライドすることによって、ピン部材7に係合する。より詳細には、ロック部材9は、バケット2からピン部材7に向かう方向にスライドすることによって、ピン部材7に係合する。
【0051】
ロック部材9は、ツースアダプタ3及びツース5の間に配置される。詳細には、ロック部材9は、アダプタ本体11の外面及びツース本体29の内面の間に配置される。ロック部材9は、ガイド溝31に配置される(
図8Aを参照)。ロック部材9は、ロック本体41と、爪部43とを、有する。
【0052】
ロック本体41は、例えば、矩形板状の部材である。ロック本体41は、係合部41aと、開口部41bとを、有する。係合部41aは、ピン部材7に係合する部分である。係合部41aは、C字形状の内周面を有する。係合部41aは、ピン部材7の環状溝7aに嵌合される。開口部41bは、ピン部材7を係合部41aに案内する部分である。開口部41bにおける開口端の間隔は、ピン部材7の環状溝7aの直径より大きい。
【0053】
図7Aに示すように、爪部43は、ロック本体41から突出する部分である。例えば、爪部43は、ロック本体41と一体に形成される。
図7Bに示すように、爪部43は、ツースアダプタ3の凹部15に配置される。
【0054】
上記の構成を有するロック部材9は、次のように取り付けられる。まず、ロック部材9は、ツースアダプタ3に配置される。例えば、ロック本体41は、アダプタ本体11の外面に配置される。詳細には、開口部41bが、アダプタ本体11の第1ピン孔13の位置に配置される。爪部43は、アダプタ本体11の凹部15に配置される。
【0055】
次に、ツース5が、ツースアダプタ3に取り付けられる。その後、ピン部材7が、ツース本体29の第2ピン孔33及びアダプタ本体11の第1ピン孔13に、挿入される。ピン部材7の環状溝7aは、ロック本体41の開口部41bに対向して配置される(
図8Aを参照)。この状態は、ロック部材9及びピン部材7の係合が解除された状態(ロック解除状態)である。
【0056】
このロック解除状態において、爪部43がピン部材7に向けて押圧される。これにより、ロック本体41がピン部材7に向けてスライドし、ロック本体41の係合部41aがピン部材7の環状溝7aに嵌合する(
図8Bを参照)。この状態は、ロック部材9及びピン部材7が係合した状態(ロック状態)である。
【0057】
このように、ロック解除状態においてロック部材9をピン部材7に向けてスライドさせることによって、ピン部材7が抜け止めされる。また、ロック状態においてロック部材9をピン部材7から離れる方向にスライドさせることによって、ピン部材7の抜け止めが解除される。
【0058】
(変形例A)
前記実施形態では、ロック部材9が、バケット2からピン部材7に向かう方向にスライドされることによってピン部材7に係合する場合の例が、示された。これに代えて、
図9A及び
図9Bに示すように、ツース取付構造101が構成されてもよい。なお、ここで説明が省略された構成については、前記実施形態の構成に準ずる。
【0059】
この場合、
図9A及び
図9Bに示すように、ロック部材109は、ピン部材7から離れる方向にスライドされることによってピン部材7に係合する。例えば、ロック部材109は、ピン部材7からバケット2に向かう方向にスライドすることによって、ピン部材7に係合する。ロック部材109は、ロック本体141と、爪部43とを、有する。爪部43の構成は、前記実施形態の構成と同じである。
【0060】
図9Cに示すように、ロック本体141は、例えば、矩形板状に形成される。ロック本体141は、係合部141aと、開口部141bとを、有する。係合部141aは、ピン部材7に係合する部分である。係合部141aは、C字形状の内周面を有する。係合部141aは、ピン部材7の環状溝7aに嵌合される。
【0061】
開口部141bは、ピン部材7を係合部141aに係合させる前にピン部材7が配置される部分である。開口部141bは、係合部141a及び爪部43の間に設けられる。開口部141bは、C字形状の内周面を有する。開口部141bの直径は、ピン部材7の直径より大きい。
【0062】
上記の構成を有するロック部材109は、次のように取り付けられる。まず、ロック部材109は、ツースアダプタ3に配置される。例えば、ロック本体141は、アダプタ本体11の外面に配置される。開口部141bは、アダプタ本体11の第1ピン孔13の位置に、配置される。
【0063】
次に、ツース5が、ツースアダプタ3に取り付けられる。その後、ピン部材7が、ツース本体29の第2ピン孔33、ロック部材109の開口部141b、及びアダプタ本体11の第1ピン孔13に、挿入される。ピン部材7の環状溝7aは、ロック本体41の開口部141bに対向して配置される(
図9Aを参照)。この状態は、ロック部材109及びピン部材7の係合が解除された状態(ロック解除状態)である。
【0064】
このロック解除状態において、爪部43がバケット2に向けて押圧される。これにより、ロック本体141が、ピン部材7から離れる方向にスライドする。その結果、ロック本体141の係合部141aがピン部材7の環状溝7aに嵌合する(
図9Bを参照)。この状態は、ロック部材109及びピン部材7が係合した状態(ロック状態)である。
【0065】
このように、ロック解除状態においてロック部材9をピン部材7から離れる方向にスライドさせることによって、ピン部材7が抜け止めされる。また、ロック状態においてロック部材9をピン部材7に近づく方向にスライドさせることによって、ピン部材7の抜け止めが解除される。
【0066】
(変形例B)
前記実施形態では、第1ピン孔13の内周面が拡径される場合の例が、示された(
図4B及び
図4Cを参照)。これに代えて、
図10A及び
図10Bに示すように、第1ピン孔113の内周面は、非拡径で形成されてもよい。なお、ここで説明が省略された構成については、前記実施形態の構成に準ずる。
【0067】
この場合、例えば、
図10A及び
図10Bに示すように、第1ピン孔113の内周面は、長孔形状に形成される。
図10Bに示すように、ノーズ部21の先端部23側に形成される第1ピン孔113の第1内周面113aは、円弧状に形成される。第1内周面113aを形成する半径は、ピン部材7の半径より大きい。
【0068】
ノーズ部21の基端部25側に形成される第1ピン孔113の第2内周面113bは、円弧状に形成される。第2内周面113bを形成する半径は、ピン部材7の半径より大きい。第1内周面113a及び第2内周面113bの間隔(長軸)は、ピン部材7の直径より大きい。
【0069】
第1内周面113a及び第2内周面113bの間に形成される1対の第3内周面113cは、平面状に形成される。1対の第3内周面113cの間隔(短軸)は、ピン部材7の直径より大きい。
【0070】
この場合も、
図10Aに示すように、前記実施形態と同様に、ノーズ部21の先端部23がツースアダプタ3の内面に当接した状態で、ピン部材7は、第1ピン孔113及び第2ピン孔33に配置される。この状態において、ピン部材7は、ノーズ部21の先端部23側において第1ピン孔113の第1内周面113aに接触する。また、ピン部材7は、ノーズ部21の基端部25側において第2ピン孔33の内周面に接触する。この状態において、軸心A2は、第1ピン孔113の中心C3から、ノーズ部21の先端部23側にオフセットしている。第1ピン孔113の中心C3は、上述した長軸及び短軸の交点である。
【0071】
このように構成しても、ピン部材7がツースアダプタ3の第1ピン孔113及びツース5の第2ピン孔33に配置された状態では、ノーズ部21の基端部25側において、ピン部材7及び第1ピン孔113の間には、隙間が形成される。この隙間によって、バケット2による掘削作業時及び貫入作業時に、ピン部材7が第1ピン孔113の基端部25側に接触しづらくなる。これにより、ピン部材7及び第1ピン孔113の耐久性を向上することができる。
【0072】
なお、ここでは、第1ピン孔113の内周面が、第1内周面113a、第2内周面113b、及び第3内周面113cによって形成される場合の例が示されたが、第1ピン孔113の内周面は、長孔形状であれば、どのように形成してもよい。
【0073】
(特徴)
上述したツース取付構造1では、ロック解除状態において、ツース5及びツースアダプタ3に対してピン部材7が装着される。これにより、ピン部材7を、ツース5及びツースアダプタ3に容易に装着することができる。また、ロック解除状態においてロック部材9,109をスライドさせることによって、ピン部材7がロック部材9,109によって抜け止めされる。これにより、ツース5を、ロック部材9,109及びピン部材7によって、ツースアダプタ3に容易に装着することができる。
【0074】
一方で、ロック状態においてロック部材9,109をスライドさせることによって、ピン部材7の抜け止めが解除される。これにより、ピン部材7を、ツース5及びツースアダプタ3から容易に取り外すことができる。また、ツース5を、ツースアダプタ3から容易に取り外すことができる。
【0075】
このように、ツース取付構造1では、ツース5をツースアダプタ3から容易に脱着することができる。
【0076】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0077】
(A)前記実施形態では、ツース取付構造1がバケット2に適用される場合の例を示したが、ツース取付構造1は、バケット2とは異なる構造に適用してもよい。例えば、ツース取付構造1は、バケット2だけでなく、バケットシュラウド及びリッパーポイント等に適用することができる。
【0078】
(B)前記実施形態では、第1ピン孔13が拡径される場合の例が示されたが、第1ピン孔13は、ピン部材7の軸心A2が延びる軸方向において、同径であってもよい。
【0079】
(C)前記実施形態では、ロック部材9を位置決めするための構成をバケット用のツース取付構造1が有していない場合の例が、示されている。
図11A及び
図11Bに示すように、バケット用のツース取付構造1は、ロック部材9を位置決めするための構成を有していてもよい。
【0080】
この場合、例えば、ツースアダプタ3は、凸部17,18をさらに有する。凸部17,18は、ツースアダプタ3の外面に設けられる。例えば、凸部17,18は、ノーズ部21の外面に形成される。
【0081】
図11Aの凸部17は、ロック解除状態において、ロック部材9例えばロック本体41を、支持する。ツース5がツースアダプタ3に配置された状態において、凸部17は、ツース5のガイド溝31に配置される。このようにツースアダプタ3に凸部17を設けることによって、ロック部材9をツースアダプタ3に対して容易に位置決めすることができる。
【0082】
図11Bの凸部18は、ロック状態において、ロック部材9例えばロック本体41に、係合する。ツース5がツースアダプタ3に配置された状態において、凸部18は、ツース5のガイド溝31に配置される。このようにツースアダプタ3に凸部18を設けることによって、ロック部材9をツースアダプタ3に対して容易に位置決めすることができる。なお、バケット用のツース取付構造1は、
図11A及び
図11Bの両方の構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 ツース取付構造
2 バケット
3 ツースアダプタ
5 ツース
7 ピン部材
7a 環状溝
9 ロック部材
13 第1ピン孔
15 凹部
17,18 凸部
31 ガイド溝
33 第2ピン孔
41 ロック本体
41a 係合部
41b 開口部
43 爪部
A1 軸
A2 軸心
S 内部空間