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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】鉄道車両用開閉器、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/66 20060101AFI20220914BHJP
   H01H 33/662 20060101ALI20220914BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01H33/66 Q
H01H33/662 F
H01H33/662 R
H01H33/662 H
B60L5/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019173219
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021051870
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 務
(72)【発明者】
【氏名】小林 将人
(72)【発明者】
【氏名】田村 幸三
(72)【発明者】
【氏名】中土 裕樹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137862(JP,A)
【文献】特開平11-164429(JP,A)
【文献】特開2007-312489(JP,A)
【文献】特開2003-68174(JP,A)
【文献】特開2001-338557(JP,A)
【文献】特開平7-15813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60 - 33/68
B60L 5/00 - 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用開閉器であって、
固定電極と該固定電極に対して接触または解離する可動電極とを備える真空インタラプタと、
前記固定電極に接続された固定導体と、
前記固定導体と電気的に接続されている第1のブッシング導体と、
前記可動電極に接続された可動導体と、
前記可動導体と電気的に接続されている第2のブッシング導体と、
前記可動導体と同軸に配置された気中絶縁操作ロッドと、
前記真空インタラプタと前記第1及び第2のブッシング導体を覆う熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材と、
前記気中絶縁操作ロッドの周辺部の気中絶縁空間を形成する前記固体絶縁部材の部分に接合された熱可塑性樹脂製の構造部材を有し、
前記熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材と前記熱可塑性樹脂製の構造部材によって形成される空間で前記気中絶縁空間の一部を形成することを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用開閉器であって、
前記固体絶縁部材の中に内包した金属シールドを有し、
前記金属シールドを前記固体絶縁部材から部分的に露出した状態で形成し、該露出した金属シールドと接触させた状態で前記熱可塑性樹脂製の構造部材を接合したことを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道車両用開閉器であって、
前記固体絶縁部材の中に内包した第1の金属シールドを有し、前記第1の金属シールドを前記固体絶縁部材から部分的に露出した状態で形成し、
前記熱可塑性樹脂製の構造部材の中に内包した第2の金属シールドを有し、前記第2の金属シールドを前記構造部材から部分的に露出した状態で形成し、
前記第1の金属シールドの部分的に露出した部分と前記第2の金属シールドの部分的に露出した部分とを接触させて前記固体絶縁部材と前記構造部材を接合したことを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項4】
請求項1に記載の鉄道車両用開閉器であって、
前記固体絶縁部材と前記構造部材の接合面に封止材を用いることを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項5】
請求項3に記載の鉄道車両用開閉器であって、
金属シールド同士の接合面に導電性材料を用いることを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項6】
請求項1に記載の鉄道車両用開閉器であって、
前記固体絶縁部材と前記構造部材を樹脂製ネジで締結することを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項7】
請求項1に記載の鉄道車両用開閉器であって、
前記固体絶縁部材と前記構造部材を接着剤で締結することを特徴とする鉄道車両用開閉器。
【請求項8】
鉄道車両用開閉器の製造方法であって、
固定電極と該固定電極に対して接触または解離する可動電極を備える真空インタラプタと、前記固定電極が電気的に接続されている第1のブッシング導体と、前記可動電極が電気的に接続されている第2のブッシング導体とが、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材で覆われた一体化成形した部品を形成するステップと、
前記部品を射出成形機の金型に設置した状態で、射出成形プロセスで溶融した熱可塑性樹脂を金型内に充填して構造部材を形成するステップを有し、
前記固体絶縁部材と前記構造部材の締結部を形成して、前記固体絶縁部材と前記構造部材を締結することを特徴とする鉄道車両用開閉器の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄道車両用開閉器の製造方法であって、
前記部品を前記射出成形機の金型に設置する際に、前記真空インタラプタの部分を前記金型の外に設置することを特徴とする鉄道車両用開閉器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載する開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に搭載される開閉器は、鉄道車両の屋根上もしくは床下に配置される。そして、その開閉器は、耐荷重の制約、空気抵抗の低減、トンネル通過時の車両高さ、屋根上/床下スペースの制約等の観点から、特に重量と製品寸法が制限される。
【0003】
鉄道車両用開閉器として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1では高さ寸法と幅寸法を低減でき、且つ、設置場所の制約を受けない鉄道車両用開閉器を提供することを目的とし、製品の長手方向を車両進行方向に沿って設置し、ケーブルを接続するブッシングを車両進行方向とは垂直の上下左右のいずれかに配置するとともに、操作機構ケースを開閉器と略直線上に配置することで、高さ寸法及び幅寸法を抑えた構成が開示されている。
【0004】
この構成により高さ寸法及び幅寸法を抑えることができる半面、略直線状に並べた開閉器と操作機構を絶縁する必要が生じるため、開閉器と操作機構の間に両者を繋ぐ気中絶縁操作ロッドを配することで両者を遠ざけている。また、絶縁距離を長くするには、気中絶縁操作ロッドの寸法を長くする必要があるが、これにより芯出し精度が低下し、開閉器操作の円滑さが損なわれる懸念がある。そこで、特許文献1では、気中絶縁操作ロッドを含む可動軸を二つの軸受で軸支することで気中絶縁操作ロッドの芯出し精度を向上させ、開閉器の円滑な操作を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-137862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、高さ寸法及び幅寸法の低減を可能とする構造に関するものであり、鉄道車両用に求められる軽量化について考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明では高さ寸法及び幅寸法の低減に加えて、軽量化の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、鉄道車両用開閉器であって、固定電極と固定電極に対して接触または解離する可動電極とを備える真空インタラプタと、固定電極に接続された固定導体と、固定導体と電気的に接続されている第1のブッシング導体と、可動電極に接続された可動導体と、可動導体と電気的に接続されている第2のブッシング導体と、可動導体と同軸に配置された気中絶縁操作ロッドと、真空インタラプタと第1及び第2のブッシング導体を覆う熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材と、気中絶縁操作ロッドの周辺部の気中絶縁空間を形成する固体絶縁部材の部分に接合された熱可塑性樹脂製の構造部材を有し、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材と熱可塑性樹脂製の構造部材によって形成される空間で気中絶縁空間の一部を形成するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製品重量を低減可能な鉄道車両用開閉器、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における鉄道車両用開閉器の外観を示す平面図である。
図2】実施例1における鉄道車両用開閉器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
図3】実施例1における鉄道車両用開閉器の中心軸に直交した平面で切断した断面図である。
図4】実施例2における鉄道車両用開閉器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
図5】実施例3における鉄道車両用開閉器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
図6】実施例4における鉄道車両用開閉器の製造方法を説明する図である。
図7】実施例4における鉄道車両用開閉器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施する上で好適となる実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、本実施例の前提となる鉄道車両の概要、及び、それに用いられる開閉器の概要について説明する。
【0013】
特許文献1に記載のように、鉄道車両は複数の車両で編成されており、これらの各車両の屋根上には高圧引き通しケーブルが配置され、この高圧引き通しケーブルに接続されたパンタグラフを経由して、鉄道車両は電線から電力を受電する。また、各車両の高圧引き通しケーブルは、直線ジョイントで車両間を接続され、T分岐ジョイントで車両床下方向に分岐されている。そして、T分岐ジョイントと直線ジョイントは一体の開閉器を構成する。この、開閉器は鉄道車両の固定部に装着して用いられる。
【0014】
例えば、ある車両の高圧引き通しケーブルで地絡故障Faultが発生した場合には、外部からの指令により開閉器を動作させ、直線ジョイントを自動で開放することで、地絡故障Faultの影響を受ける車両に搭載された主変圧器およびそれに接続された電動機を電気的に切り離す。このとき、地絡故障Faultの影響を受けない他の車両の主変圧器は接続されたままであるので、それらに接続された電動機を用いて車両の運転を続行することができる。また、車両の屋根上に作業者が登ることなく、不具合箇所を含む高電圧ケーブルと健全な高電圧ケーブルとを自動的に分離することができる。
【0015】
図1は、本実施例におけるT分岐ジョイントと直線ジョイントを一体化した、鉄道車両用開閉器の外観を示す平面図である。図1において、開閉器70は、電気接続部10A、10B、10Cを有し、電気接続部10Bと10Cは開閉器70の内部で電気的に接続されており、電気接続部10Bと10CがT分岐ジョイントを構成する。また、電気接続部10Aと、10B及び10Cとの間には、開閉器70の内部で、後述する固定電極と可動電極で構成される開閉部を有しており、電気接続部10Aと、10B及び10Cで直線ジョイントを構成する。また、図示はしていないが、開閉器70は、T型ケーブルヘッドを電気接続部10A、10B、10Cに接続した状態で使用する。また、詳細は後述するが、20は気中絶縁操作ロッド、21は固体絶縁部材、30は構造部材である。
【0016】
図2は、図1の開閉器70を、気中絶縁操作ロッド20の中心軸を含む平面で切断した断面図である。また、図3図2に示す開閉器70の気中絶縁操作ロッド20の中心軸に直交した平面のA-A’で切断した断面図である。
【0017】
図2に示すように、開閉器70は、固定電極3aと、固定電極3aに対して接触または解離する可動電極5aと、固定電極3a及び可動電極5aの周囲を覆うアークシールド6と、アークシールド6を支持する外側容器の一部を構成する円筒形状のセラミック絶縁筒7と、ベローズ2等から構成される真空インタラプタ1を備えている。
【0018】
真空インタラプタ1の外側容器は、セラミック絶縁筒7の両端を端板で覆って構成され、内部を真空状態に維持している。固定電極3aは、固定導体3bに接続されており、固定導体3bは真空インタラプタ1の外に引き出され、固定導体3b側のブッシング導体12B、12Cと電気的に接続されている。図面上では、固定電極3aと固定導体3bを合わせたものを符号3で表示する場合もある。
【0019】
可動電極5aは、可動導体5bに接続されており、可動導体5bは真空インタラプタ1の外に引き出され、可動導体5b側のブッシング導体12Aと電気的に接続されている。図面上では、可動電極5aと可動導体5bを合わせたものを符号5で表示する場合もある。真空インタラプタ1や固定導体3b側のブッシング導体12B、12C、可動導体5b側のブッシング導体12Aなどの部品は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21で外周部を覆うように一体化成形され、絶縁される。
【0020】
真空インタラプタ1の可動側では、可動導体5bと可動側の端板の間にベローズ2を配置して、真空インタラプタ1の真空状態を維持したまま可動導体5bが可動できるようにしている。また、アダプタ24は、可動導体5bと気中絶縁操作ロッド20を同軸に連結する部材である。また、27は可とう性導体である。
【0021】
気中絶縁操作ロッド20の先端部には、気中絶縁操作ロッド20を操作する電磁操作部(図示はなし)が設けられている。この電磁操作部は、例えば、バネに永久磁石と電磁石を組み合わせ、電磁石を構成するコイルへの通電をON/OFF切り換えることで駆動力を発生させるものである。電磁操作部は、アダプタ24で一体に連結した可動導体5bと気中絶縁操作ロッド20を、ハウジング25に支持された軸受26を介して、同軸方向に移動させるように操作する。
【0022】
ここで、気中絶縁空間33を形成する円筒形状の固体絶縁部材21の内側に構造部材30を接触させて接合する。これにより、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21と、固体絶縁部材21と接合された熱可塑性樹脂製の構造部材30で形成される気中絶縁操作ロッド20周辺部の気中絶縁空間33により、真空インタラプタ1と電磁操作部間の絶縁性を確保する。すなわち、この絶縁性を確保するために、気中絶縁空間33中の真空インタラプタ1と電磁操作部間の絶縁距離を適正化する。
【0023】
また、固体絶縁部材21の気中絶縁空間33を形成する部分に、電磁波シールド、電界密度の平準化、強度向上などを目的として用いられる金属シールド13が内包されている。
【0024】
固体絶縁部材21に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ(Epoxy)樹脂、フェノール(Phenol)樹脂、ポリエステル(Polyester)樹脂などを主成分とする樹脂材料が用いられる。また、構造部材30に用いられる熱可塑性樹脂として、PBT(Polybutylene Terephthalate)樹脂、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂、PP(Poly Propylene)樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、PS(Polystyrene)樹脂、PE(Poly Ethylene)樹脂、PVC(Polyvinyl Chloride)樹脂、PC(Polycarbonate)樹脂、PET(Polyethyleneterephthalat)樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂、PPO(Polyphenyleneether)樹脂,Si(Silicone)樹脂、などを主成分とする樹脂材料が使用される。また、固体絶縁部材21の熱硬化性樹脂や構造部材30の熱可塑性樹脂には、フィラーが充填されていても良い。フィラーとしては、例えばシリカ、マイカ、タルクなどの成分を含む無機材料、カーボンや高分子材料などの成分を含む有機材料、銅、アルミニウム、金、銀、鉄などの成分を含む金属材料を用いることができる。
【0025】
固体絶縁部材21は、真空インタラプタ1、ブッシング導体12A、12B、12Cを密着して覆う他、気中絶縁操作ロッド20周辺の気中絶縁空間33を形成している。また、固体絶縁部材21と、固体絶縁部材21と接合された熱可塑性樹脂製の構造部材30で形成される気中絶縁空間33には、乾燥空気やSF6ガスなどの絶縁ガスが封入される。なお、図示はしていないが、気中絶縁空間33と気中絶縁操作ロッド20に接続されている電磁操作部を含む空間が外部空間から隔離される密閉構造となっている。
【0026】
熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21は、真空インタラプタ1、ブッシング導体12A、12B、12Cなどの部品を予め設置した金型内に液体樹脂を充填する注型方法を用いて、これらの部品を密着して覆う状態で一体化成形される。
【0027】
ここで、固体絶縁部材21に用いられる熱硬化性樹脂は粘度が低いので、一般的に10MPa以下の低圧で成形することができる。これによって、成形時の圧力によって摺動不良などが生じる真空インタラプタ1などの部品に与える負荷を低減できる。さらに粘度が低いため、電界密度が高く、絶縁不良が許容できない真空インタラプタ1周辺部におけるボイドなどの未充填を防止できる。
【0028】
しかし、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21は、強度向上などの目的でシリカなどのフィラーが充填されているため密度が高い問題と、加熱によって硬化する複雑な樹脂材料処方であるため材料コストが高い問題がある。さらに、固体絶縁部材21は加熱によって樹脂を硬化させる長時間の硬化プロセスが必要となる。
【0029】
そこで、本実施例では、電流が流れる部材の周辺部であり電界密度が高いためボイドによる絶縁不良が許容されない真空インタラプタ1、及び、ブッシング導体12A、12B、12Cは、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21で覆う一方、ボイドによる影響を受けにくい、それ以外の領域である、気中絶縁空間33を形成する構造部材30を低密度で材料コストが安い熱可塑性樹脂で形成する。
【0030】
構造部材30を構成する熱可塑性樹脂は射出成形プロセスで成形され、高温度の樹脂材料を低温度の金型に充填した後、金型内の樹脂冷却で形成される。このため、熱可塑性樹脂は樹脂を硬化させる長時間の硬化プロセスが必要ない。
【0031】
また、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21を真空インタラプタ1などの部品と一体化成形するための注型装置は、ボイド発生を抑制するために金型内を減圧する機構や、熱硬化性樹脂を形成する主剤と硬化剤の2液を分けて保管するタンクと、2液を混合するミキシング部を有しており、設備コストが高い。
【0032】
このため、注型方法で成形する熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21の寸法が大きいと大型の注型設備を用いる必要があり、設備コストが高くなる問題がある。このため、気中絶縁空間33を形成する領域の一部、または全部に熱可塑性樹脂製の構造部材30を用いることによって設備コストを低減することもできる。
【0033】
ここで、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21と熱可塑性樹脂製の構造部材30の接合部において、構造部材30の形状は、固体絶縁部材21と同じ円筒形状として、固体絶縁部材21の内側に構造部材30を挿入するように接続する。なお、構造部材30の内側に固体絶縁部材21を挿入するように接続しても良い。
【0034】
図示はしていないが、固体絶縁部材21と構造部材30は接着剤で接合している。接着剤を用いることで容易に接合でき、また絶縁性も保つことができる。なお、接合にはネジを用いても良く、ネジは絶縁性を向上するために樹脂ネジを用いても良い。また、接合部における絶縁性確保と気中絶縁空間33のガス流出を防ぐために、接合部には絶縁性のグリースや接着剤、Oリングなどの封止材を用いることが望ましい。
【0035】
以上説明したように、本実施例の開閉器70によれば、気中絶縁空間33を形成する領域の一部に密度が低い熱可塑性樹脂製の構造部材30を用いることによって、重量の低減を図ることができる。さらに、熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21の使用量を少なくすることによって、材料コスト、設備コストを低減することも可能となる。
【実施例2】
【0036】
本実施例は、構造部材30との接合時における固体絶縁部材21の割れを防止するとともに、更なる軽量化のために、固体絶縁部材21の体積を更に少なくする構造について説明する。
【0037】
図4は、本実施例における鉄道車両用開閉器の気中絶縁操作ロッド20の中心軸を含む平面で切断した断面図である。図4において、図2と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図4において、図2と異なる点は、固体絶縁部材21と構造部材30の接合部、及び、金属シールド13の構成が異なる点である。
【0038】
実施例1では、金属シールド13を固体絶縁部材21の中に内包した構造を説明した。また、気中絶縁空間33を形成する円筒形状の固体絶縁部材21の内側に構造部材30を接触させて接合する構造を示した。しかし、固体絶縁部材21を形成する熱硬化性樹脂は硬く、構造部材30との接合時における摩擦や衝撃で割れやすい問題がある。
【0039】
そこで、本実施例では、構造部材30との接合時における固体絶縁部材21の割れを防止するとともに、更なる軽量化のために、固体絶縁部材21の体積を更に少なくする構造とする。すなわち、図4に示すように、金属シールド13を固体絶縁部材21から部分的に露出した状態で形成し、露出した金属シールド13と接触させた状態で構造部材30を接合する。
【0040】
本実施例の構造により、図2の構成に比べて、金属シールド露出した分だけ、固体絶縁部材21の体積を小さくでき、構造部材30の割合を増加できるので、更なる軽量化、コスト低減を実現できるとともに、固体絶縁部材21の接合部を金属シールド13で保護することによって、構造部材30との接合時における固体絶縁部材21の割れを防止することができる。
【0041】
なお、図4では、気中絶縁空間33を形成する構造部材30の外側からセルフタップネジ31を用いて締結する構造を示しているが、ネジとボルトを用いた接合や接着剤を用いて締結することもできる。また、ネジの材料として絶縁性を向上するために樹脂製を用いることもできる。
【0042】
また、接合部における絶縁性確保と気中絶縁空間33のガス流出を防ぐために、接合部には絶縁性のグリースや接着剤、Oリングなどの封止材を用いることが望ましい。
【実施例3】
【0043】
本実施例は、実施例2の構造に対して更なる軽量化とコスト低減を図るために、固体絶縁部材21の体積を更に少なくする構造について説明する。
【0044】
図5は、本実施例における鉄道車両用開閉器の気中絶縁操作ロッド20の中心軸を含む平面で切断した断面図である。図5において、図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図5において、図4と異なる点は、金属シールド13を、固体絶縁部材21側と構造部材30側で分割した点である。
【0045】
本実施例では、図5に示すように、金属シールド13を分割して、固体絶縁部材21側の金属シールド13Aと構造部材30側の金属シールド13Bを設置し、円筒形状の気中絶縁空間33を形成する一部または全部に構造部材30を用いる。
【0046】
気中絶縁空間33を形成する固体絶縁部材21における金属シールド13Aは、固体絶縁部材21の内周側において部分的に露出した状態で形成し、構造部材30における金属シールド13Bは、構造部材30の外周側において部分的に露出した状態で形成する。そして、固体絶縁部材21の内周側において部分的に露出した金属シールド13Aと構造部材30の外周側において部分的に露出した金属シールド13Bの少なくとも一部を接触させた状態で接合する。
【0047】
このように、金属シールド同士を接触させて接合する構造によって、固体絶縁部材21と構造部材30接合時の割れや磨耗変形を防止できるとともに、図4の構成に比べて、金属シールド13Bを構造部材30に内包した分だけ構造部材30の体積が増加し、固体絶縁部材21の体積が低減し、よって更なる軽量化とコスト低減が可能となる。
【0048】
なお、図5では、固体絶縁部材21の凹部21Aに構造部材30の凸部30Aを挿入して接合する構造を示しているが、構造部材30の凹部に固体絶縁部材21の凸部を挿入するように接合しても良い。
【0049】
また、図5には図示していないが固体絶縁部材21と構造部材30を接着剤で締結する構造とした。シールド性を確保するために、金属シールド同士の接合部には導電性接着剤や導電性グリースなどの導電性材料を用いることが望ましい。また、セルフタップネジや、ネジとボルトを用いて締結することもでき、ネジの材料として絶縁性を向上するために樹脂製を用いることもできる。
【0050】
また、接合部における絶縁性確保と気中絶縁空間33のガス流出を防ぐために、接合部には絶縁性のグリースや接着剤、Oリングなどの封止材を用いることが望ましい。
【実施例4】
【0051】
本実施例は、鉄道車両用開閉器の製造方法について説明する。図6は、本実施例における鉄道車両用開閉器の製造方法を説明する図である。また、図7は、本実施例における製造方法によって製造した鉄道車両用開閉器の気中絶縁操作ロッド20の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【0052】
図6において、予め、真空インタラプタ1や固定導体3b側のブッシング導体12B、12C、可動導体5b側のブッシング導体12Aなどの部品をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材21で一体化成形した部品71を形成する。この部品71を射出成形機80の金型81に設置した状態で、射出成形プロセスで溶融した熱可塑性樹脂を金型内に充填して構造部材30を形成するとともに、後述する、固体絶縁部材21と構造部材30の締結部32を形成する。
【0053】
なお、図示はしていないが、気中絶縁空間33には、金型部品である置き駒などを設置してこの部分に樹脂が充填されないようにする。
【0054】
ここで、部品71を射出成形用金型81に設置する際に、真空インタラプタ1の部分を金型81の外に設置し、金型81でクランプしない状態で成形する。これにより、真空インタラプタ1に与える、金型81のクランプ時の荷重によって摺動不良などが生じる可能性がある負荷を低減できる。
【0055】
図7に、部品71に、射出成形によって構造部材30で締結した構造を説明する。図7において、図2と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図7において、図2と異なる点は、空洞部34と締結部32を有する点である。
【0056】
図7に示すように、部品71には部分的に空洞部34を設けておき、この部品71の空洞部34の内側から外側へ射出成型プロセスで熱可塑性樹脂を充填することによって、締結部32を形成する。
【0057】
このように締結部32の形成により、固体絶縁部材21と構造部材30を締結することができる。また、図示していないが、構造部材30と固体絶縁部材21との接合面に、予めグリースなどの封止材を設置しておき、接合部における絶縁性確保と気中絶縁空間33のガス流出を防ぐことができる。
【0058】
本実施例の製造方法及び構造により、固体絶縁部材21と構造部材30の接合・締結プロセスの容易化により、接着やネジ止め工程が不要で、その部品も不要となるのでコスト低減を図ることができるとともに、液体状態で締結部を形成するので固体同士の接触がなく接合面における固体絶縁部材21および構造部材30の割れや磨耗変形を防ぐことができる。
【0059】
なお、本実施例では、実施例1の金属シールド13を固体絶縁部材21の中に内包した構造についての例を示したが、実施例2、3における締結についても本製造方法と本構造を用いることができる。
【0060】
また、以上で示した接着剤の主成分は高分子化合物とし、合成高分子化合物は、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂やクロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴムなどの合成ゴムの成分を含むものとする。
【0061】
また、グリースの主成分は鉱物油または合成油とし、合成油は合成炭化水素油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、フェニルエーテル油、ポリグリコール油の成分を含むものとする。
【0062】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:真空インタラプタ、2、2A:ベローズ、3a:固定電極、3b:固定導体、5a:可動電極、5b:可動導体、6:アークシールド、7:セラミック絶縁筒、10A、10B、10C:電気接続部、12A、12B、12C:ブッシング導体、13、13A、13B:金属シールド、20:気中絶縁操作ロッド、21:固体絶縁部材、21A:固体絶縁部材21の凹部、24:アダプタ、25:ハウジング、26:軸受、27:可とう性導体、30:構造部材、30A:構造部材30の凸部、31:セルフタップネジ、32:締結部、33:気中絶縁空間、34:空洞部、70:開閉器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7