IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ニュージーランド・インスティチュート・フォー・プラント・アンド・フード・リサーチ・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図1
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図2
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図3
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図4
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図5
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図6
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図7
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図8
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図9
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図10
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図11
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図12
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図13
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図14
  • 特許-植物病原性微生物の生物学的防除 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】植物病原性微生物の生物学的防除
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/16 20060101AFI20220914BHJP
   A01N 63/32 20200101ALI20220914BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C12N1/16 G
A01N63/32
A01P3/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019513906
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 IB2017055453
(87)【国際公開番号】W WO2018047123
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/393,641
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】724271
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(31)【優先権主張番号】725641
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【微生物の受託番号】CBS  CBS141880
(73)【特許権者】
【識別番号】517335721
【氏名又は名称】ザ・ニュージーランド・インスティチュート・フォー・プラント・アンド・フード・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】エルマー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ホイテ,スティーヴン
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-176969(JP,A)
【文献】Trevelyan's KiwifruitNews,2016年08月,P.1-8
【文献】Journal of Food Protection,2005年,Vol.68, No.10,P.2100-2106
【文献】Crop Protection,2013年,Vol.54,P.114-120
【文献】Postharvest Biology and Technology,1997年,Vol.10,P.169-178
【文献】US EPA Pesticide Product Lael ("Botector"),P.1-12,[retrieved from internet on 28 May 2021]<URL: https://www3.epa.gov/pesticides/chem_search/ppls/086174-00003-20150129.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/16
A01N 63/00
A01P 3/00
A01N 63/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)。
【請求項2】
YBCA5および農学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項3】
YBCA5は、生殖に適した生細胞の形態で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
YBCA5生細胞の濃度は、固体組成物について約1×10~約1×1014、好ましくは約1×10~約1×1011、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約2×10~約2×10CFU、好ましくは約2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲であり、好ましくは固体組成物について約2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について約2×10CFU/ミリリットルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の農学的に許容可能なアジュバントをさらに含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除する方法であって、前記植物またはその一部をYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項7】
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌の少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)、P.アミグダリア(P.amygdalia)、P.アベルラナエ(P.avellanae)、P.カリカパパヤエ(P.caricapapayae)、P.シコリイ(P.cichorii)、P.コロナファシエンス(P.coronafaciens)、P.フィクセレクタエ(P.ficuserectae)、P.ヘリアンティ(P.helianthi)、P.レミアエ(P.lemiae)、P.サバスタノイ(P.savastanoi)およびP.ビリディフラバ(P.viridiflava)もしくはその病原型またはそれらの組合せからなる群から選択される細菌の菌株であり、好ましくは、前記少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)またはその病原型であり、より好ましくは、前記少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物であり、好ましくは、前記農業的に重要な果樹またはその栽培品種は、オリーブの樹木、リンゴの樹木、西洋ナシの樹木、柑橘類の樹木、バナナの樹木、パイナップルの樹木、モモの樹木、アンズの樹木、チェリーの樹木、クルミの樹木およびハシバミの樹木から選択され、かつ前記その生産物は、それぞれオリーブ、リンゴ、西洋ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アンズ、チェリー、クルミおよびハシバミであり、好ましくは、前記農業的に重要な蔓作物またはその栽培品種は、ジャガイモの蔓作物、ビートルートの蔓作物、マメの蔓作物、エンドウマメの蔓作物、トマトの蔓作物、キュウリの蔓作物、メロンの蔓作物、ベリーの蔓作物、ブドウの蔓作物およびキウイフルーツの蔓作物から選択され、かつ前記その生産物は、それぞれジャガイモ、ビートルート、マメ、エンドウマメ、トマト、キュウリ、メロン、ベリー、ブドウおよびキウイフルーツであり、好ましくは、前記農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ前記生産物は、キウイフルーツである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記キウイフルーツの蔦作物は、グリーンの果肉のキウイフルーツ(アクチニジア・キネンシスvar.デリキオサ(Actinidia chinensis var.deliciosa))、ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))またはその栽培品種の種からなる群から選択され、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)およびA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種からなる群から選択され、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシス(A.chinensis)の種であり、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)であり、好ましくは、前記栽培品種は、「Hayward」、「Hort16A」または「Hongyang」品種の栽培品種である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
キウイフルーツ植物またはその一部上においてP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するための方法であって、前記キウイフルーツ植物またはその一部をYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物と共にA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)もしくはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)またはその栽培品種の種に接触させることを含む方法。
【請求項11】
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)によって感染されたかまたはそれに感染されやすい、好ましくはPsaに感染されたか、好ましくはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるための方法であって、前記キウイフルーツ植物またはその一部にYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物を施用することを含む方法。
【請求項12】
植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、前記植物またはその一部をYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項13】
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、前記果実もしくは野菜植物またはその一部にYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物を施用することと、前記植物またはその一部を成長させることとを含む方法。
【請求項14】
植物またはその一部上、好ましくはキウイフルーツ植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するための、YBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
果実もしくは野菜植物またはその一部上において植物病原性真菌を防除するための、YBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させるための、YBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるための、YBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
キウイフルーツ植物またはその一部上において植物病原性を防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)で感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または請求項2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、酵母を使用して植物病原性細菌および真菌を生物学的防除する方法に関する。より詳細には、本発明は、生物学的防除活性を有する新規な酵母菌株と、この菌株を使用して果実または野菜植物上で植物病原性細菌および真菌の生存、成長および/または増殖を抑制する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の病気は、近代農業にとって大きい経済的コストを意味する。現代の農業システムでは、多くの場合、広い面積全体で1種類または数種類の作物または植物を成長させることが必要である。そのような生態学的に不安定なシステムは、病気の影響を受けやすい。
【0003】
植物に病気を起こさせる細菌および真菌などの病原体を防除することは、従来、化学的農薬を使用して実施されてきた。しかしながら、化学物質を使用することは、多くの不利益を受ける。病原体は、経時的に化学物質に対する耐性を獲得することが可能であり、農薬抵抗性が一層強い個体群を作り出している。化合物の残留物は、環境災害も招き得、かつ健康問題を引き起こし得る。具体的には、植物上ならびに食品およびワイン中への化学物質の残留物と、人の健康および環境へのその影響とに対して消費者の関心が高まっている。
【0004】
生物学的防除は、植物の病気を防除するための代替手段を意味し、化学物質に対する依存性を抑制する。そのような「天然の」方法がより広く一般的に受容されるようになり、化学的な防除方法よりも効果が高くかつ持続可能であり得る。
【0005】
シュードモナス(Pseudomonas)は、グラム陰性で好気性のガンマプロテオ細菌の属であり、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)に属する。その属は、191の分類学的に認められた種を含み、そのうちの多くは、植物病原体である。シュードモナス属(Pseudomonas spp.)の中でも、P.シリンガエ(P.syringae)は、繁殖力の強い植物病原体であり、50種を超える異なる病原型(pv.)として存在し、それらの多くは、高度の宿主植物特異性を示す。多くの他のシュードモナス(Pseudomonas)種も植物病原体として作用し得、他のメンバーの中でもとりわけP.シリンガエ(P.syringae)亜群がある。例えば、P.シリンガエ(P.syringae)病原型によって起きる商業的に重要な病気としては、石果の細菌性イモチ病、トマトの細菌性斑点病およびエンドウマメの胴枯れ病が挙げられる。
【0006】
シュードモナス・シリンガエpv.アクチニジアエ(Pseudomonas syringae pv.actinidiae)(Psa)は、キウイフルーツに影響を及ぼす深刻な細菌性疾患である。Psaは、最初に2010年11月初旬にニュージーランドで記録され、2013年7月18日には果樹園のキウイフルーツのヘクタールの75%が何らかのPsa感染を受けていた。ニュージーランドのキウイフルーツ産業にPsaが与えた直接的なコストは、2013年~2018年で3億1千万ドル~4億1千万ドルであり、長期的には開発の喪失によりその倍を超えると推定される。
【0007】
多くの細菌性植物疾患と同様に、防除の選択肢は限られている。現在使用されている主な解決策は、作物衛生学、化学物質をベースとした処理、例えば銅ベースの製剤および/または植物防御機能誘発剤、例えばアシベンゾラル-S-メチル(Actigard/Bion、Syngenta)ならびに抗生物質、例えば硫酸ストレプトマイシンおよびカスガマイシンである。しかしながら、それらの製剤の使用が厳しく規制されており、それを使用することができるのは、(例えば、ニュージーランドでは)成長期である。加えて、いくつかの主要な輸出地域では、それらの製剤のいくつかの使用が禁止されており、例えばヨーロッパでは園芸にストレプトマイシンを使用することは許可されていない。
【0008】
2012年のシーズンにおいて、ニュージーランドでは、Psaに対してキウイフルーツを保護する目的で散布に1千3百万ドルが費やされたと推定された。これは、化学物質のコストのみである。他の管理コストは、この推定に含まれていない。ニュージーランド以外でも、Psaは、ヨーロッパ(イタリア/フランス)、南アフリカならびに潜在的に中国および韓国でも重大な問題となっている。
【0009】
ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)および最近同定されたB.シュードシネレア(B.pseudocinerea)は、植物病原性真菌(テレモルフ・ボトリオチニア・フケリアナ(telemorph Botryotinia fuckeliana)であり、灰色かび病(ボトリチス(Botrytis)胴枯れ病)の病原体である。ボトリチス属(Botrytis spp.)に起因する全世界での作物損失の推定のいくつかは、ヨーロッパで年間100~1000億ユーロ程度である(http://www.genoscope.cns.fr)。ボトリチス属(Botrytis spp.)は、ブドウの房腐れ病の病原でもあり、ニュージーランドのワイン産業のみでも年間1千800万ドルの損害の原因となっていると推定される。ボトリチス属(Botrytis spp.)の防除は、殺真菌剤によるものであった。病原性細菌を防除する目的で化学物質による処理を用いた場合と同様に、この方法は、多くのブドウ園で殺真菌剤への耐性が広まり、農薬残留物を低減することに対する消費者圧力が存在するために持続可能でない。
【0010】
果実での褐色腐敗病は、モニリニア属(Monilinia spp.)真菌が原因である。モニリニア属(Monilinia spp.)は、チェリー、プラム、モモ、アンズ、イチゴ、キイチゴ、リンゴおよび西洋ナシを含め、バラ科(Family Rosaceae)における多くの経済的に重要な作物の病原体である。モニリニア属(Monilinia spp.)は、ツツジ科(Family Ericaceae)に属する多くの顕花植物の病原体でもある。モニリニア属(Monilinia spp.)によってもたらされる損害は、多くの場合、作物および貴重な観賞用の花に対する大きい損失の原因となり得る。モニリニア(Monilinia)属は、約30の分類記載種を含む。
【0011】
重要なことに、植物病原性真菌の影響に起因する収入損失は、世界中におけるこれらの病原体による経済的影響全体の一部のみである。ボトリチス(Botrytis)の場合と同様に、経済的に重要な作物におけるモニリニア属(Monilinia spp.)およびスクレロティニア属(Sclerotinia spp.)の防除も、従来、殺真菌剤によるものであった。いくつかの推定では、病気を有する1つのみの作物に対するボトリチス属(Botrytis spp.)の化学的防除のコストは、単独で7億8千万ドルに達し得、処理された植物は、顕著な生産損失をさらにもたらすと考えられる(Genescope,2002);(Laluk,Kristin and Tesfaye Mengiste;2010,in Arabidopsis Book 2010,Vol.8)。
【0012】
したがって、上で述べてきたように経済的、健康的および環境的な多くの理由から、化学物質をベースとする処理、植物防御機能誘発剤および抗生物質を使用することには限度がある。したがって、これらの病気を持続可能に管理することを目的とした、化学物質をベースとする処理と同様のコスト、健康および環境的な問題点を有さない新規な生物学的防除の解決方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少なくとも1種の酵母生物学的防除剤、および/または少なくとも1種の酵母生物学的防除剤を含む組成物、および/または少なくとも1種の植物もしくはその一部上でシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌、好ましくはシュードモナス・シリンガエpv.アクチニジアエ(Pseudomonas syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するためのそのような薬剤および/またはそのような組成物を使用する方法を提供すること、ならびに/あるいは少なくとも人々に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、本発明は、分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)および農学的に許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)および農学的に許容可能な担体から実質的になる組成物に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するための方法であって、キウイフルーツ植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0021】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるための方法であって、キウイフルーツ植物またはその一部にYBCA5またはYBCA5を含む組成物を施用することと、キウイフルーツ植物またはその一部を成長させることとを含む方法に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0023】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、植物病原性真菌に感染されたかまたはそれに感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、果実もしくは野菜植物またはその一部YBCA5にYBCA5またはYBCA5を含む組成物を施用することと、植物またはその一部を成長させることとを含む方法に関する。
【0028】
別の態様では、本発明は、果実もしくは野菜植物またはその一部上において植物病原性真菌を防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、植物病原性真菌に感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0030】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0031】
別の態様では、本発明は、果実もしくは野菜植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0032】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種の植物病原性真菌に感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0033】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の植物またはその一部に関する。
【0034】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の果実もしくは野菜植物またはその一部に関する。
【0035】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の植物またはその一部に関する。いくつかの実施態様では、植物は、果実もしくは野菜植物またはその一部である。1つの実施態様では、植物は、キウイフルーツの蔓作物、チェリーの樹木またはブドウの蔓作物である。
【0036】
本発明のある種の態様の様々な実施形態を上に述べてきたが、本発明は、それらに限定されない。上に言及された本発明の態様の追加の実施形態は、詳細な説明でさらに記述され、かつ本出願の特許請求の範囲に示される。
【0037】
本発明の他の態様および実施形態は、以下の記述から明らかになり得、それらの記述は、添付の図面を参照しながら単に例として挙げられる。
【0038】
本明細書に開示された数の範囲の参照(例えば、1~10)は、その範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)およびまたその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5および3.1~4.7)の参照を組み入れ、したがって、本明細書に明示的に開示されたすべての範囲のすべての「部分範囲」が本明細書で明示的に開示されることが意図されている。これらは、具体的に意図されていることの単なる例であり、表明された最低値と最高値との間の数値の可能なすべての組合せが同様に本出願で明示的に述べられていると考えられる。
【0039】
ここで、単なる例を挙げ、図面を参照しながら本発明を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】水溶性の顆粒製剤(YBCA5顆粒)と比較した(Psaを2種の用量(5×10/液滴および2×10/10uL(液滴))で接種)、新たに発酵させたYBCA5の各種の濃度を用いて処理した鉢植えの「Hayward」幼苗でのPsa発病度(葉のネクローシスの平均面積)である。葉の片面あたりそれぞれの用量のPsの3滴の10uL液滴を使用した。Psaを接種(2014年9月18日)する8日前および1日前に処理を施し、28日後に評価した。
図2】未処理物(Nil)と比較した、鉢植えのキウイフルーツ植物(「Hayward」)におけるPsaによる葉の病斑の発病度に及ぼすアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の各種の分離株の効果(2016年4月)である。
図3】Te Puke Research Orchardにおいて天然のPsa接種物に曝露させ、30日の期間中に4回にわたって処理を施された鉢植えの「Hayward」植物における葉のPsaネクローシスの罹患率である。葉のネクローシスの評価は、最初の処理を施してから44日目に実施した。
図4】YBCA5の有効性の圃場試験である。Nilは、未処理の対照植物において観察された斑点病の罹患率である。栽培業者標準は、Actigardおよび銅を用いて処理した植物において観察されたPsa斑点病の罹患率である。「低」および「高」は、それらの植物に対して施用したYBCA4およびYBCA5のそれぞれの量を示す。圃場は、Maketuであった。キウイフルーツの品種は、「Hayward」であった。すべての処理は、蕾のふくらみから開花直前までに施した。6~12日の間隔を空けて合計で5回の散布処理を実施した。図4~8のそれぞれにおいて、「高」の量は、2×10細胞/mLであり、「低」の量は、1×10細胞/mLである。
図5】YBCA5の有効性の圃場試験である。Nilは、未処理の対照植物において観察された傷の罹患率である。栽培業者標準は、Actigardおよび銅を用いて処理した植物において観察されたPsa斑点病の罹患率である。「低」および「高」は、それらの植物に対して施用したYBCA4およびYBCA5のそれぞれの量を示す。圃場は、Maketuであった。キウイフルーツの品種は、「Hayward」であった。すべての処理は、蕾のふくらみから開花直前までに施した。6~12日の間隔を空けて合計で5回の散布処理を実施した。
図6】葉のネクローシスの平均発病度を示すYBCA5の有効性の圃場試験である。キウイフルーツの品種は、「Hayward」であった。栽培業者標準は、銅+抗生物質である。Maketuの2つのサイトにおいて、蕾のふくらみから第一開花まで処理を施した。それぞれ7~14日の間隔を空けて6回の処理(散布)を施した。
図7】芽の褐変の平均発病度を示すYBCA5の有効性の圃場試験である。キウイフルーツの品種は、「Hayward」であった。栽培業者標準は、銅+抗生物質である。Maketuの2つのサイトにおいて、蕾のふくらみから第一開花まで処理を施した。それぞれ7~14日の間隔を空けて6回の処理(散布)を施した。
図8】収量(新鮮重量/乾物/果実/m)の平均増加を示すYBCA5の有効性の圃場試験である。キウイフルーツの品種は、「Hayward」であった。栽培業者標準は、銅+抗生物質である。蕾のふくらみから第一開花まで、一度は開花中、一度は着果後に処理を施した。それぞれ7~14日の間隔を空けて全部で7回の処理(散布)を施した。新鮮重量、乾物、果実/m(Gold3)および果実/m(「Hayward」)のそれぞれのカテゴリーにおいて、グラフ上の棒は、左から右に順に無処理、栽培業者の標準処理(銅および抗生物質)およびYBCA5を表す。
図9】実験室ベースのアッセイ(アッセイ1)における、殺真菌剤イプロジン(Rovral(登録商標)Aquaflo)と比較した、チェリー(「Sweet Valentine」)の、モニリニア(Monilinia)による果実腐敗の罹患率に及ぼすYBCA5の効果(2016年1月~2月)である。
図10】実験室ベースのアッセイ(アッセイ2)における、殺真菌剤イプロジンと比較した、チェリー(「Sweet Valentine」)の、ボトリチス属(Botrytis spp.)による果実腐敗の罹患率に及ぼすYBCA5の効果(2016年1月~2月)である。
図11】実験室ベースのアッセイ(アッセイ3)における、殺真菌剤キャプタンと比較した、チェリー(「Sweet Valentine」)の、モニリニア(Monilinia)による果実腐敗の罹患率に及ぼすYBCA5の効果(2016年2月~3月)である。
図12】実験室ベースのアッセイ(アッセイ2)における、殺真菌剤キャプタンと比較した、チェリー(「Sweet Valentine」)の、ボトリチス属(Botrytis spp.)による果実腐敗の罹患率に及ぼすYBCA5の効果(2016年2月~3月)である。
図13】実験室ベースのアッセイ(アッセイ5)における、殺真菌剤キャプタンと比較した、食用のブドウ(「Autumn King」)のボトリチス属(Botrytis spp.)による腐敗の発病度に及ぼすYBCA5の効果(2015年10月~11月)である。データは、2種のボトリチス属(Botrytis spp.)分離株の平均値である。
図14】植物病原性真菌感染による、収穫後のキウイフルーツ腐敗の発病度に及ぼすYBCA5の効果である。傷をつけた「Hongyang」キウイフルーツの、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ボトリチス属(Botrytis spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)またはホモプシス属(Phomopsis spp.)を接種し、6日間インキュベーションした後の病変サイズ(mm)。LSD(5%)=3.482、Pfr≦0.001。
図15】植物病原性真菌感染による、収穫後のキウイフルーツ腐敗の発病度に及ぼすYBCA5の効果である。傷をつけた「Hongyang」キウイフルーツの、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)を接種し、7日間インキュベーションした後の病変サイズ(mm)。LSD(5%)=1.945、Pfr≦0.001。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
本発明をより良く規定するため、および本発明の実施における当業者のための指針として以下の定義を提供する。
【0042】
特に断らない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関わる関連する技術分野の当業者に理解されているのと同じ意味を有するものと理解されたい。
【0043】
植物学、微生物学、分子生物学および生化学における一般的な用語の定義の例は、Biology of Plants,Raven et al.(eds.),W.H.Freeman and Company,(2005);Plant Physiology,Taiz et al.(eds.),Sinauer Associates,Incorporated,(2010);Botany:An Introduction to Plant Biology,J.D.Mauseth,Jones&Bartlett Learning,(2003);Methods for General and Molecular Microbiology,3rd Edition,C.A.Reddy,et al.(eds.),ASM Press,(2008);Encyclopedia of Microbiology,2nd ed.,Joshua Lederburg,(ed.),Academic Press,(2000);Microbiology By Cliffs Notes,I.Edward Alcamo,Wiley(1996);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singleton et al.(2d ed.)(1994);Biology of Microorganisms 11th ed.,Brock et al.,Pearson Prentice Hall,(2006);Biodiversity of Fungi:Inventory and Monitoring Methods,Mueller et al.,Academic Press,(2004);Genes IX,Benjamin Lewin,Jones&Bartlett Publishing,(2007);The Encyclopedia of Molecular Biology,Kendrew et al.(eds.),Blackwell Science Ltd.,(1994);およびMolecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,Robert A.Meyers(ed.)、VCH Publishers,Inc.,(1995)に見出すことができる。
【0044】
また、本発明の実施は、例えば、以下の文献に記述されているような当技術分野で公知の標準的な植物学、微生物学、分子生物学および生化学のプロトコルおよび手順を使用して実施することが可能であると考えられる:Environmental Microbiology:Methods and Protocols,J.F.T.Spencer et al.,Humana Press,(2004);Environmental Microbiology,P.D.Sharma,Alpha Science International,(2005);Environmental Microbiology,J.R.Leadbetter,Gulf Professional Publishing、(2005)ならびに他の一般的に入手可能である、本開示が関わる技術分野の関連する参考資料(これらは、すべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0045】
「植物」という用語には、本明細書で使用するとき、植物のライフサイクルのすべてのステージからの植物および植物のすべての部分全体が包含され、それらの例を非限定的に挙げれば、例えば、栄養および生殖細胞および組織、むかご、種子、胚、果実、苗条、茎、葉、葉鞘および葉身、花序、根、花やく、小舌、柵状組織、葉肉、表皮、葉耳、内えい、外花えいならびに分げつなどである。
【0046】
「キウイフルーツ」という用語は、本明細書では、アクチニジア(Actinidia)属からのすべての市場出荷の熟した果実の一般名として使用される。最も一般的なキウイフルーツは、アクチニジア・キネンシスvar.デリキオサ(Actinidia chinensis var.deliciosa)からのグリーンの果肉のキウイフルーツである。一般的に食用に供される他の種としては、以下のものが挙げられる:ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra);A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis),)、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))。
【0047】
「生物学的防除剤」という用語は、本明細書で使用するとき、1種または複数の植物病原体の拮抗物質として作用する薬剤を指す。拮抗物質は、いくつかの形態を取ることができる。1つの形態では、生物学的防除剤は、利用可能な栄養素および/または宿主植物の空間について病原体を克服することができる。別の形態では、生物学的防除剤は、病原体にとって望ましくない環境を作ることができる。したがって、拮抗物質の作用機構としては、抗生作用、菌寄生、栄養素の競合および物理的な排除などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0048】
「防除する」、「防除」、「生態的防除」または「生物学的防除」という用語は、本明細書では相互に置き換え可能に使用され、1種または複数の微生物によるかまたはそれらを介して達成される病原体の接種量または病害活性の抑制を指す。一般的に理解されているのは、植物病原性細菌または真菌、特に植物病原性のシュードモナス属(Pseudomonas spp.)、ボトリチス属(Botrytis spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)、モニリニア属(Monilinia spp.)およびスクレロティニア属(Sclerotinia spp.)による感染の予防または抑制、特にそのような感染の速度または程度の抑制であり、それは、細菌または真菌の生存、成長および/または増殖を抑制することを含む。治療的処理も想定される。
【0049】
「統計的に有意な」という用語は、本明細書で使用するとき、ある結果または関係が偶然の機会以外のものによって引き起こされる可能性を指す。当技術分野で公知でありかつ使用されている統計的仮説の検証を使用して、結果が統計的に有意であることを照明することができる。統計的仮説の検証により、当技術分野で公知の「P値」が得られ、それは、測定された結果が偶然の機会のみに基づいている確率を表す。有意水準が5%(0.05)以下であれば、統計的に有意であるとみなすことが当技術分野で一般的に受け入れられていると考えられる。
【0050】
「有効量」という用語は、本明細書で使用するとき、植物内および/または上において植物病原性細菌または真菌感染から保護するか、それを遅らせるか、低減するか、安定化させるか、改良するか、または処理するのに有効な量を意味する。
【0051】
「果実または野菜植物の収量を増大させる」および「キウイフルーツ植物の収量を増大させる」という用語は、本明細書で使用するとき、収穫可能な果実および/またはキウイフルーツの生産速度の増大、収穫可能な果実および/またはキウイフルーツの合計数の増大(果実および/またはキウイフルーツの絶対数の増大または病気症状を呈するものを減らすことにより販売可能な果実の数が増大することを含む)ならびに本発明により処理された果実植物もしくは野菜植物またはキウイフルーツ植物で生産される個々の果実および/またはキウイフルーツのサイズの何らかの増大であることを一般的に意味する。増大は、一般的に、本発明の菌株または組成物を用いて処理していない対応する植物と比較することにより決められる。
【0052】
「農学的に許容可能なアジュバント」という用語は、本明細書で使用するとき、農業分野において農業的な配合物中で有用な添加物であると一般的にみなされているかまたは農業的な処理を用いて実施される化合物または物質を指す。
【0053】
「追加の活性薬剤」という用語は、本明細書で使用するとき、本発明において有用な酵母による植物病原性のシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌または植物病原性真菌のボトリチス属(Botrytis spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)、モニリニア属(Monilinia spp.)およびスクレロティニア属(Sclerotinia spp.)の(本明細書で定義されたような)防除に寄与することが可能であるか、または植物病原性細菌および真菌によって引き起こされる植物の病気の防除において本発明で有用な酵母の効果を増強することが可能な任意の化合物または物質を意味する。
【0054】
「配合剤」という用語は、本明細書で使用するとき、(本明細書で定義されたような)植物に対する本発明の組成物または本発明において使用するための組成物の製造、取り扱い、貯蔵、輸送、施用および/または持続性を容易にするかまたは最適化する任意の化合物または物質を指すが、それらに限定されない。
【0055】
「農学的に許容可能な担体」という用語は、当技術分野で一般的に理解されているのと同じように本明細書で使用される。好ましい農学的に許容可能な担体は、水であるが、それに限定されない。
【0056】
「含む」という用語は、本明細書で使用するとき、「少なくとも部分的になる」ことを意味する。本明細書において、「含む」という用語を含むそれぞれの記述を解釈する場合、この文言の後に続くものと別の特性も存在する可能性がある。「含む(comprise)」または「含む(comprises)」などの関連する用語も同様に解釈されるべきである。
【0057】
本発明は、一般的に、新規なアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5ならびにYBCA5および農学的に許容可能な担体を含む組成物に関する。いくつかの実施態様では、組成物は、農学的に許容可能なアジュバントも含む。本発明の新規な菌株および組成物は、植物病原性細菌および植物病原性真菌、特にシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌ならびにボトリチス属(Botrytis spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)真菌によって起きる植物の病気を生態的防除するのに有用である。本発明は、植物またはその一部上において、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌、ボトリチス属(Botrytis spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)真菌からなる群から選択される植物病原性細菌および/または真菌を、植物またはその一部をYBCA5と接触させることによって防除する方法にも関する。
【0058】
本出願人らは、植物上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌および植物病原性真菌を防除するのに有効な分離された酵母菌株YBCA5ならびにYBCA5および農学的に許容可能な担体を含む組成物を初めて提供するものである。いくつかの実施態様では、YBCA5またはYBCA5を含む組成物はまた、農学的に許容可能なアジュバントと共に配合され得る。本出願人らは、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を生物学的に防除するために酵母、A.プルランス(A.pullulans)を使用する方法も初めて提供するものである。具体的には、本出願人らは、A.プルランス(A.pullulans)酵母の菌株またはA.プルランス(A.pullulans)酵母の菌株を含む組成物が、果実または野菜植物、特に果実または野菜の蔓作物、特にキウイフルーツの蔓作物上においてシュードモナス・シリンガエpv.アクチニジアエ(Pseudomonas syringae pv.actinidiae)(Psa)の生存、成長および/または増殖を抑制するのに有効であることを初めて示すものである。
【0059】
理論に束縛されることを望むものではないが、本出願人らは、本発明の酵母菌株および組成物の有効性が、1種または複数の抗菌性化合物を排出するかまたは植物の防御メカニズムを誘発することにより、Psaおよび/または植物病原性真菌を競合的に排除する酵母菌株の能力またはそれらの組合せに関連すると考えている。特定の作用機構とは無関係に、本発明者らは、驚くべきことに、YBCA5が、キウイフルーツの蔓作物におけるPsa病を処理するため、チェリーおよびブドウにおけるボトリチス属(Botrytis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)の感染を処理するため、リンゴおよびキウイフルーツにおけるアルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)を処理するために効果的であることを見出した。
【0060】
YBCA5は、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌および植物病原性真菌に対する特に効果的な生物学的防除剤である。YBCA5は、配合および施用プロトコルで生存し、処理された植物に迅速に定着し、処理された植物およびその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌および植物病原性真菌の増殖を抑制する能力を示す。YBCA5は、異なる程度において、キウイフルーツの蔓作物におけるP.シリンガエ(P.syringae)細菌、特にP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)細菌の防除ならびにボトリチス属(Botrytis spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)による収穫後の果実の腐敗の抑制および/または防除に特に有効であることを示した。
【0061】
YBCA5および組成物
したがって、1つの態様では、本発明は、分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)に関する。
【0062】
本発明の特定の分離されたA.プルランス(A.pullulans)菌株YBCA5は、特許手続の目的で、Budapest Treaty at Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)(Uppsalalaan 8,3584,CT Utrecht,The Netherlands)に従って2016年9月26日に受託された。この分離物は、CBS受理番号141880を付与された。
【0063】
分離されたA.プルランス(A.pullulans)酵母菌株YBCA5は、ドチデアレス目(Dothideales)、アウレオバシジアケアエ科(Aureobasidiaceae)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属の単細胞の真菌である。細胞は、広範囲の形態変化を示す。ポテトデキストロース寒天上で培養したA.プルランス(A.pullulans)は、滑らかで薄桃色の酵母様のコロニーを産生する。時間を経たコロニーは、厚膜胞子の産生のためにいくぶん黒ずむ。A.プルランス(A.pullulans)の一次分生子は、単細胞であり、ガラスのように透明であり、滑らかであり、楕円体であり、形状およびサイズが可変である。A.プルランス(A.pullulans)の分生子柄は、未分化であり、挿入型もしくは末端型であるか、または短い側枝として出ている。内生分生子は、A.プルランス(A.pullulans)の挿入型細胞により産生される。菌糸は、薄膜でガラスのように透明かつ滑らかであり、横行性の隔壁を有する。増殖は、10~35℃で起こり、最適な増殖温度は、22~25℃である。
【0064】
別の態様では、本発明は、YBCA5(CBS受理番号141880)および農学的に許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0065】
別の態様では、本発明は、YBCA5(CBS受理番号141880)および農学的に許容可能な担体から実質的になる組成物に関する。
【0066】
1つの実施態様では、農学的に許容可能な担体は、水である。
【0067】
この場合にも、理論に束縛されることを望むのものではないが、生物学的防除剤として使用した場合、YBCA5は、生殖に適した生存形態にあるはずであると本発明者らは考えている。ほとんどの目的では、YBCA5を生殖に適した生菌の形態で組成物中に組み入れることが好ましい。乾燥させた細胞としてYBCA5を組成物中に組み入れることが好ましい。
【0068】
本発明の組成物中での細胞濃度は、組成物を施用する用途に依存するであろう。特定の施用のために細胞濃度を最適化することは、当技術分野の技量の範囲に入ると考えられる。
【0069】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10~約1×1014、好ましくは約1×10~約1×1011、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約2×10~約2×10CFU、好ましくは約2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0070】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について1×10~約1×1014、好ましくは1×10~約1×1011、好ましくは1×10~約1×10、好ましくは1×10~約1×10、好ましくは2×10~約2×10CFU、好ましくは2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0071】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10~1×1014、好ましくは約1×10~1×1011、好ましくは約1×10~1×10、好ましくは約1×10~1×10、好ましくは約2×10~2×10CFU、好ましくは約2×10~2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0072】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について1×10~1×1014、好ましくは1×10~1×1011、好ましくは1×10~1×10、好ましくは1×10~1×10、好ましくは2×10~2×10CFU、好ましくは約2×10~2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について1×10~1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0073】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について約2×10CFU/ミリリットルである。
【0074】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について少なくとも2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について少なくとも2×10CFU/ミリリットルであり、好ましくは、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について2×10CFU/ミリリットルである。
【0075】
本発明の組成物は、YBCA5を含むかまたはYBCA5から実質的になり得る。
【0076】
本発明の組成物における生物学的防除剤として有効なYBCA5の濃度は、以下の条件に応じて変化する:植物の生理学的条件において使用される酵母の形態;病原体感染のタイプ、濃度および程度;温度;季節;湿度;土壌のタイプ;栽培期におけるステージ;植物の齢;施用される通常の農薬および殺真菌剤の量とタイプ;ならびに植物に対する手入れ(例えば、限定されないが、剪定)。本発明の組成物中にYBCA5を配合する場合または本発明の方法において使用するための組成物では、それらすべての因子が考慮され得る。
【0077】
本発明において使用するためのYBCA5は、当技術分野において公知である、本明細書の実施例に記載したような標準的な液体発酵法を使用して調製することができる。増殖は、一般的に、バイオリアクター中、好気性条件下、増殖に適した温度およびpHで実施する。典型的な増殖温度は、10~30℃、好ましくは15~28℃、好ましくは25℃である。約36~38℃の範囲内に最適な増殖温度を有する酵母は、人の健康に危害を与える可能性があるために好ましくない。増殖培地のpHは、通常、やや酸性から中性のpH4.0~7.0であり、好ましくは6.0である。
【0078】
増殖培地は、アウレオバシジウム(Aureobasidium)種の培養に適した任意の公知である従来技術の培地であり得る。1つの実施態様では、増殖培地は、ポテトデキストロース寒天(PDA)である。他の好適な増殖培地としては、以下のものが挙げられる:Malt Yeast Extract Agar;糖蜜および尿素を含む独自の液体ブロス培地;ならびに糖、尿素、酵母抽出物およびリン酸モノアンモニウム(MAP)を含む独自の液体増殖培地。
【0079】
YBCA5の細胞は、慣用される濾過法もしくは沈降法、例えば遠心分離を使用して収集され得、または連続遠心分離を使用して乾燥状態で収集され得る。細胞は、直ちに使用され得るか、または冷蔵条件(1℃~7℃、好ましくは2℃)で貯蔵され得るか、または乾燥され得る。細胞を乾燥させて乾燥酵母顆粒として配合することが好ましい。例えば、流動床乾燥機を使用して細胞を乾燥させ得るが、それに限定されない。乾燥酵母顆粒は、少なくとも90%の固形分、好ましくは少なくとも95%の固形分、好ましくは約96%の固形分を含むことが好ましい。細胞が少なくとも2年の棚持ち期間を有することが好ましい。1つの実施態様では、その細胞を冷蔵条件下で保存して、棚持ち期間が少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年である。冷蔵条件は、10℃以下であるが、0℃より高いことが好ましい。好ましくは、冷蔵条件は、以下のものからなる群から選択される:1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃および10℃または約1℃~約10℃などの温度内での変動。
【0080】
1つの実施態様では、組成物は、農学的に許容可能なアジュバントを含む。1つの実施態様では、農学的に許容可能なアジュバントは、追加の活性薬剤および配合剤からなる群から選択される。
【0081】
1つの実施態様では、農学的に許容可能なアジュバントは、1種または複数の追加の活性薬剤である。1つの実施態様では、農学的に許容可能なアジュバントは、1種または複数の配合剤である。
【0082】
1つの実施態様では、組成物は、1種または複数の追加の活性薬剤と1種または複数の配合剤との組合せを含む。いくつかの実施態様では、組成物は、予備調製された組成物として配合されるか、または濃縮された形態である。いくつかの実施態様では、組成物は、固体または液体の配合物を含む。
【0083】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1種または複数の農学的に許容可能なアジュバントを含む。1つの実施態様では、農学的に許容可能なアジュバントは、追加の活性薬剤および配合剤の群から選択される。1種または複数の農学的に許容可能なアジュバントは、追加の活性薬剤であることが好ましい。1種または複数の農学的に許容可能なアジュバントは、配合剤であることが好ましい。
【0084】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1種または複数の追加の活性薬剤と1種または複数の配合剤との組合せを含む。
【0085】
いくつかの場合、本発明の組成物中に1種または複数の追加の活性薬剤を含めることも望ましく、そのような追加の活性薬剤は、これらに限定されないが、植物病原性のシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌または植物病原性真菌、例えばボトリチス属(Botrytis spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)を防除(例えば、処理および/または予防)することに寄与し得る。
【0086】
本発明において使用するのに好適な追加の活性薬剤は、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)、特に直接的にPsaまたは植物病原性真菌、例えばボトリチス属(Botrytis spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびモニリニア属(Monilinia spp.)(ただし、それらに限定されない)を防除することが可能であるか、またはシュードモナス属(Pseudomonas spp.)、特にPsaを防除するためのYBCA5の生態的防除効果を強化することが可能であり得る。追加の活性薬剤は、本発明の組成物もしくは本発明において有用な組成物中に直接含まれ得るか、または本発明の方法に従って適切であるように同時もしくは順次に別々に施用され得る。
【0087】
好適な追加の活性薬剤としては、植物防御機能誘発剤に限定されないが、以下のものが挙げられる:アシベンゾラル-S-メチル(Actigard/Bion、Syngenta)、アゼライン酸、ピペコリン酸、ジャスモン酸、Seaweed Mix、Lema oil、Foodcoat(DOMCA)、Fungicover(bioDURACAL agricultura)およびイブプロフェン、拮抗性微生物、カルシウム、カリウムまたはナトリウム塩を含む無機塩、ウロン酸を含めた刺激剤、アムナン(amnnan)およびβ1-3グルカン、抗生物質ならびに他の抗菌性および抗真菌性の化合物(小さい有機および無機分子を含む)。
【0088】
非限定に例を挙げれば、本発明の組成物または本発明において使用するための組成物に含めることが可能な1つの追加の活性薬剤は、植物防御機能誘発剤のアシベンゾラル-S-メチル(Actigard/Bion、Syngenta)である。Actigardは、ユニークな作用機構を有する植物活性化剤であり、ほとんどの植物種に見出される天然の全身獲得抵抗反応を刺激する。葉面散布を介して施用すると、Actigardは、目標の病原体に対して直接的な活性を有さないが、宿主植物抵抗性を誘発することにより、キウイフルーツにおけるPsa症状を抑制することに役立つ。Actigardは、水分散性顆粒の形態の500g/kgのアシベンゾラル-S-メチルを含む組成物である。
【0089】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1種または複数の配合剤を含む。
【0090】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1種または複数の追加の活性薬剤と1種または複数の配合剤との組合せを含む。
【0091】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、固体または液体の配合剤として配合される。
【0092】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、1種または複数の固体または液体の配合剤を含み得る。当技術分野において公知の任意の好適な配合剤を使用することができる。好適な配合剤の選択は、当業者の技量の範囲内であると考えられる。例えば、好適な配合剤は、本発明の組成物または植物もしくはその一部上で本発明において使用するための組成物の製造、取り扱い、貯蔵、輸送、施用および/または持続性を容易にするかまたは最適化する化合物または他の物質であり得るが、それらに限定されない。
【0093】
配合剤は、これらに限定されないが、生産設備からの輸送中、サイトでの貯蔵または最終処理混合物の調製中における、本発明の組成物または本発明において使用するための組成物に含まれる酵母の生物学的防除活性の保存および保持などの特定の用途のために個別に適合され得る。配合剤は、植物上への付着および持続ならびに植物組織中への浸透を容易にするなどの他の目的で使用することもできるが、それらに限定されない。適切な配合物は、固体、液体、単独、組合せなどであり得る。特に適切な配合剤としては、界面活性剤、分散剤、保存剤、濡れ剤、乳化剤、湿潤剤、固着剤、展着剤、安定剤、浸透剤、粘着剤、pH緩衝剤および栄養素などが挙げられ、単独でまたは当業者によって決めることが可能な各種の組合せで使用される。
【0094】
本発明の組成物は、直ちに使用できるように予備調製された組成物として提供され得るか、または濃縮された固体もしくは液体の形態で供給され得る。
【0095】
1つの実施態様では、組成物は、固体または液体の配合を有する予備調製された組成物である。1つの実施態様では、予備調製された組成物は、粉末、ペレット、顆粒およびプリルから選択される固体の配合物である。1つの実施態様では、予備調製された組成物は、液体の配合物である。
【0096】
本発明の組成物または本発明において使用するための組成物は、予備調製された形態または濃縮された形態で提供することができる。乾燥された形態で提供される場合、予備調製された組成物は、粉末、顆粒、ペレットまたはプリルとして提供することができるが、それらに限定されない。乾燥された形態の場合、組成物中のYBCA5は、脱水、乾燥および/またはカプセル化された形態であることが好ましい。いくつかの実施態様では、脱水、乾燥および/またはカプセル化された形態は、例えば凍結防止剤などの当技術分野で公知の追加の保護剤を含む。
【0097】
1つの実施態様では、YBCA5を顆粒の形態で提供することができる。例えば、YBCA5を、少なくとも0.5×1010CFU/gm、好ましくは1×1010CFU/gm、好ましくは2×1010CFU/gmを有する顆粒で提供することができる。予備調製された組成物が液体、特に水性の形態で提供される場合、組成物を分散液、懸濁液、スラリー、クリーム、ペーストまたはゲルとして提供することができるが、それらに限定されない。予備調製された形態が噴霧に適しており、および/または噴霧するために適合させた水性の液体の形態として提供されることが好ましい。1つの実施態様では、予備調製された液体の形態を、果実、野菜、種子または植物(植物の切り枝を含む)に接種するための浸漬液としてそれ自体使用することもできる。
【0098】
本発明の予備調製された組成物では、YBCA5は、植物、特にキウイフルーツの蔓作物に使用するように配合される。例えば、酵母を、散布施用を可能とする農学的に許容可能な担体液体、肥料、誘発剤、アジュバント、濡れ剤または必要に応じて他の任意の適切な添加剤と混合する。本発明に従って使用するための予備調製された組成物では、YBCA5を、散布施用を可能にする農学的に許容可能な担体液体、肥料、誘発剤、アジュバント、濡れ剤または必要に応じて他の任意の適切な添加剤と混合することもできる。
【0099】
本発明の予備調製された組成物中へのYBCA5の配合および植物またはその一部に対して施用するための予備調製された組成物の最終的な形態は、当技術分野の技量の範囲内であると考えられる。例えば、組成物の最終的な形態を、例えば水などの農学的に許容可能な担体を用いて配合して、散布剤、発泡剤、灌液、注射剤、ゲル剤、浸漬液またはペーストを形成するが、それらに限定されない。1つの実施態様では、本発明の組成物を、植物またはその一部に散布法、浸漬法、なすり付け法もしくはブラシ法またはそれらの組合せによって施用することができる。組成物を水性の懸濁液または分散液として配合して、キウイフルーツの蔓作物、チェリーの樹木および/または果実、ならびにブドウの蔓作物、および/または果実、および/または野菜に対してスプレーまたはミスト散布することが好ましい。
【0100】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、濃縮された形態である。1つの実施態様では、濃縮された形態は、ケーキ、粉末、顆粒、ペレットおよびプリルから選択される固体の形態である。1つの実施態様では、濃縮された形態は、液体配合物である。
【0101】
本発明の組成物を濃縮された形態で提供する場合、植物またはその一部に対して直ちに施用できるような組成物を作成するには、使用者による追加の配合物が必要となる可能性がある。例えば、濃縮された形態のものを、植物に施用するための最終組成物を形成するための各種の配合剤と混合することができる。好ましい配合剤は、水または水性溶液であり、その中に組成物の濃縮された形態の適切な量を溶解させるか(例えば、顆粒または粉末)、または希釈する(例えば、液体懸濁液または分散液)ことにより、植物に施用するための最終的な組成物を得る。
【0102】
YBCA5を脱水して濃縮された形態にし、植物に施用するための組成物を液体の形態にする場合、当技術分野で公知のように再水和させることが必要となるであろう。再水和は、酵母を再水和させるための当技術分野で公知の一般的な注意に従って実施され得、例えば、再水和は、20~25℃の温度で実施することが有利であるが、ただし、それに限定されない。
【0103】
方法 - シュードモナス属(Pseudomonas spp.)
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除する方法であって、植物またはその一部を、YBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0104】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0105】
1つの実施態様では、方法または使用は、植物またはその一部をYBCA5の生殖に適した細胞と接触させることを含む。
【0106】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10~約1×1014、好ましくは約1×10~約1×1011、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約2×10~約2×10CFU、好ましくは約2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0107】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について1×10~約1×1014、好ましくは1×10~約1×1011、好ましくは1×10~約1×10、好ましくは1×10~約1×10、好ましくは2×10~約2×10CFU、好ましくは2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0108】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10~1×1014、好ましくは約1×10~1×1011、好ましくは約1×10~1×10、好ましくは約1×10~1×10、好ましくは約2×10~2×10CFU、好ましくは約2×10~2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0109】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について1×10~1×1014、好ましくは1×10~1×1011、好ましくは1×10~1×10、好ましくは1×10~1×10、好ましくは2×10~2×10CFU、好ましくは約2×10~2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について1×10~1×10CFU/ミリリットルの範囲である。
【0110】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について約2×10CFU/ミリリットルである。
【0111】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について少なくとも2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について少なくとも2×10CFU/ミリリットルであり、好ましくは、本発明の組成物におけるYBCA5生菌の濃度は、固体組成物について2×1010CFU/グラムおよび液体組成物について2×10CFU/ミリリットルである。
【0112】
1つの実施態様では、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)の少なくとも1つの菌株は、以下のものからなる群から選択される:P.シリンガエ(P.syringae)、P.アミグダリア(P.amygdalia)、P.アベルラナエ(P.avellanae)、P.カリカパパヤエ(P.caricapapayae)、P.シコリイ(P.cichorii)、P.コロナファシエンス(P.coronafaciens)、P.フィクセレクタエ(P.ficuserectae)、P.ヘリアンティ(P.helianthi)、P.レミアエ(P.lemiae)、P.サバスタノイ(P.savastanoi)およびP.ビリディフラバ(P.viridiflava)もしくはその病原型またはそれらの組合せ。少なくとも1つの菌株がP.シリンガエ(P.syringae)またはその病原型であることが好ましく、少なくとも1つの菌株がP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)であることがより好ましい。
【0113】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、以下の群から選択される:単子葉植物、双子葉植物、一年生、二年生および多年生植物、野菜植物および収穫後の野菜、果実植物もしくは樹木もしくは収穫後の果実、着花植物もしくは樹木もしくは収穫した花、穀物用植物、油質植物、タンパク質植物、リグニン質植物および観賞用植物。
【0114】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物、農業的に重要な野菜および農業的に重要な果実植物ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、栽培品種またはその生産物である。好ましくは、農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物または栽培品種であり、かつ生産物は、キウイフルーツである。
【0115】
1つの実施態様では、キウイフルーツの蔦作物は、以下の種からなる群から選択される:グリーンの果肉のキウイフルーツ(A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa))、ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))またはその栽培品種。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)およびA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種からなる群から選択されることが好ましい。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種であることが好ましい。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)であることが好ましい。栽培品種は、「Hayward」または「Hort16A」または「zesy002」(略式には「Gold3」または「Hongyang」として知られる)であることが好ましい。
【0116】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)、「Hort16A」である。1つの実施態様では、栽培品種は、米国植物特許第11066号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hort16A」である。
【0117】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)「Hayward」である。1つの実施態様では、栽培品種は、米国植物特許第6815号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hayward」である。
【0118】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)「Hongyang」である。1つの実施態様では、栽培品種は、Wang,2011およびLi,et al,2015(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hongyang」である。
【0119】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0120】
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するため、および/またはキウイフルーツ植物の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用は、本発明の方法に従い、本明細書に記述されているように実施される。例えば、YBCA5および組成物は、本発明に従い、本明細書に記述されているように調製され得、配合され得、植物またはその一部、特にキウイフルーツ植物またはその一部に施用され得る。
【0121】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0122】
別の態様では、本発明は、植物病原性真菌に感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、果実もしくは野菜植物またはその一部にYBCA5またはYBCA5を含む組成物を施用することと、植物またはその一部を成長させることとを含む方法に関する。1つの実施態様では、組成物は、YBCA5から実質的になる。
【0123】
1つの実施態様では、少なくとも植物病原性真菌は、以下のものからなる群から選択される:ボトリチス属(Botrytis spp.)、モニリニア属(Monilinia spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)およびペニシリウム属(Penicillium spp.)。
【0124】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、以下の群から選択される:単子葉植物、双子葉植物、一年生、二年生および多年生植物、野菜植物および収穫後の野菜、果実植物もしくは樹木もしくは収穫後の果実、着花植物もしくは樹木もしくは収穫した花、穀物用植物、油質植物、タンパク質植物、リグニン質植物および観賞用植物。
【0125】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹、農業的に重要な野菜ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物である。1つの実施態様では、農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ生産物は、キウイフルーツである。
【0126】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、果実もしくは野菜植物またはその一部であり、方法は、果実もしくは野菜植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、果実または野菜植物は、チェリーの樹木またはブドウの蔦作物である。いくつかの実施態様では、果実植物は、リンゴの樹木である。
【0127】
1つの実施態様では、チェリーの樹木は、スモモ属(Prunus spp.)またはその栽培品種、好ましくはP.アビウム(P.avium)またはその栽培品種である。P.アビウム(P.avium)は、「Sweet Valentine」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、チェリーである。
【0128】
1つの実施態様では、ブドウの蔦作物は、ブドウ属(Vinus spp.)またはその栽培品種、好ましくはV.ヴィニフェラ(V.vinifera)またはその栽培品種である。V.ヴィニフェラ(V.vinifera)は、「Thompson Seedless」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、ブドウである。
【0129】
1つの実施態様では、リンゴの樹木は、リンゴ属(Malus spp.)またはその栽培品種、好ましくはM.プミラ(M.pumila)またはその栽培品種である。M.プミラ(M.pumila)またはその栽培品種は、「Pacific Rose」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、リンゴである。
【0130】
Psaの防除
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するための方法であって、キウイフルーツ植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0131】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるための方法であって、キウイフルーツ植物またはその一部にYBCA5またはYBCA5を含む組成物を施用することと、キウイフルーツ植物またはその一部を成長させることとを含む方法に関する。
【0132】
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0133】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0134】
1つの実施態様では、組成物は、実質的にYBCA5からなる。
【0135】
1つの実施態様では、キウイフルーツ植物は、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)またはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種、好ましくはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種である。1つの実施態様では、キウイフルーツ植物は、「Hort16A」である。
【0136】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)「Hongyang」である。1つの実施態様では、栽培品種は、Wang,2011およびLi,et al,2015(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hongyang」である。
【0137】
1つの実施態様では、植物またはその一部を、Psaを防除するのに十分な時間接触させる。
【0138】
1つの実施態様では、接触は、植物またはその一部の種子、葉、茎、花、果実、幹および/または根に施用することにより、YBCA5またはYBCA5を含むかもしくはそれから実質的になる組成物を植物またはその一部に施用することを含む。好ましくは、施用法は、散布法、ミスト散布法、浸漬法、ドリップ法、散粉法またはスプリンクラー法である。施用は、一度のみであり得るか、または必要に応じて繰り返され得る。ここで、当業者の適切な判断に従って様々な時点および/または植物のライフサイクルの様々なステージで施用されることも想定される。
【0139】
YBCA5は、当業者による判断に従って適切な時点および植物の発育の適切なステージで施用され得る。例えば、YBCA5は、蕾のふくらみから開花まで、開花している間および開花後/着果期に施用され得るが、それらに限定されない。
【0140】
1つの実施態様では、施用は、葉の表面上、および/または花上、および/または果実上、および/または野菜上への散布により実施する。
【0141】
1つの実施態様では、根への施用は、通常の方法で施用する前に地上散布法、機械的鋤込み法によるか、または肥沃化剤または肥料と混合することにより実施する。
【0142】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、以下のものから選択される:単子葉植物、双子葉植物、一年生、二年生および多年生植物、野菜植物および収穫後の野菜、果実植物もしくは樹木もしくは収穫後の果実、着花植物もしくは樹木もしくは収穫した花、穀物用植物、油質植物、タンパク質植物、リグニン質植物および観賞用植物。
【0143】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、以下のものから選択される農業的に重要な作物植物、栽培品種またはその生産物である:トウモロコシ植物、タバコ植物、コムギ植物、サトウキビ植物、セイヨウアブラナ植物、オオムギ植物、イネ植物、モロコシ植物、キビ植物、ダイズ植物、レタス植物およびキャベツ植物。
【0144】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物である。農業的に重要な果樹またはその栽培品種は、オリーブの樹木、リンゴの樹木、西洋ナシの樹木、柑橘類の樹木、バナナの樹木、パイナップルの樹木、モモの樹木、アンズの樹木、チェリーの樹木、クルミの樹木およびハシバミの樹木から選択することが好ましく、かつ生産物は、それぞれオリーブ、リンゴ、西洋ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アンズ、チェリー、クルミおよびハシバミである。農業的に重要な蔓作物またはその栽培品種は、ジャガイモの蔓作物、ビートルートの蔓作物、マメの蔓作物、エンドウマメの蔓作物、トマトの蔓作物、キュウリの蔓作物、メロンの蔓作物、ベリーの蔓作物、ブドウの蔓作物およびキウイフルーツの蔓作物から選択することが好ましく、かつ生産物は、それぞれジャガイモ、ビートルート、マメ、エンドウマメ、トマト、キュウリ、メロン、ベリー、ブドウおよびキウイフルーツである。好ましくは、農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ生産物は、キウイフルーツである。
【0145】
キウイフルーツは、ツツジ目(Ericales)、マタタビ科(Actinidiaceae)の植物の仲間である。1つの実施態様では、キウイフルーツの蔦作物は、以下の種からなる群から選択される:ファジイキウイフルーツ(A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa))、ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))またはその栽培品種。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種からなる群から選択されることが好ましい。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種であることが好ましい。キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)であることが好ましい。好ましくは、栽培品種は、「Hayward」、または「Hort 16A」、または「Zesy002」、または「Zesy004」、または「Hongyang」品種の栽培品種である。
【0146】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)、「Hort 16A」である。1つの実施態様では、栽培品種は、米国植物特許第11066号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hort 16A」である。
【0147】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)「Hayward」である。1つの実施態様では、栽培品種は、米国植物特許第6815号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hayward」である。
【0148】
1つの実施態様では、栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)「Hongyang」である。1つの実施態様では、栽培品種は、Wang,2011およびLi,et al,2015(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された「Hongyang」である。
【0149】
別の態様では、本発明は、キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0150】
別の態様では、本発明は、Psaに感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0151】
Psaを防除するため、および/またはキウイフルーツ植物の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用は、本発明の方法に従い、本明細書に記述されているように実施される。例えば、YBCA5および組成物は、本発明に従い、本明細書に記述されているように調製され得、配合され得、植物またはその一部、特にキウイフルーツ植物またはその一部に施用され得る。
【0152】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の植物またはその一部に関する。いくつかの実施態様では、植物は、果実もしくは野菜植物またはその一部である。1つの実施態様では、植物は、キウイフルーツの蔓作物、チェリーの樹木またはブドウの蔓作物である。
【0153】
植物病原性真菌の防除
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0154】
別の態様では、本発明は、植物病原性真菌に感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、果実もしくは野菜植物またはその一部にYBCA5またはYBCA5を含む組成物を施用することと、植物またはその一部を成長させることとを含む方法に関する。
【0155】
別の態様では、本発明は、果実もしくは野菜植物またはその一部上において植物病原性真菌を防除するためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0156】
別の態様では、本発明は、植物病原性真菌に感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含む組成物の使用に関する。
【0157】
別の態様では、本発明は、植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0158】
別の態様では、本発明は、果実もしくは野菜植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0159】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種の植物病原性真菌に感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5またはYBCA5を含む組成物に関する。
【0160】
以下の実施形態は、具体的には、YBCA5の使用またはYBCA5を含むかもしくはそれから実質的になる組成物の使用に関連する、植物病原性真菌を防除するため、および/または植物病原性真菌に感染されやすい植物もしくはその一部または果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるための本発明のその態様についても想定される。
【0161】
1つの実施態様では、植物病原性真菌は、以下のものからなる群から選択される:ボトリチス属(Botrytis spp.)、モニリニア属(Monilinia spp.)、スクレロティニア属(Sclerotinia spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)およびペニシリウム属(Penicillium spp.)。
【0162】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、以下の群から選択される:単子葉植物、双子葉植物、一年生、二年生および多年生植物、野菜植物および収穫後の野菜、果実植物もしくは樹木もしくは収穫後の果実、着花植物もしくは樹木もしくは収穫した花、穀物用植物、油質植物、タンパク質植物、リグニン質植物および観賞用植物。
【0163】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹、農業的に重要な野菜ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物である。1つの実施態様では、農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ生産物は、キウイフルーツである。
【0164】
1つの実施態様では、植物またはその一部は、果実もしくは野菜植物またはその一部であり、方法は、果実もしくは野菜植物またはその一部をYBCA5またはYBCA5を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、果実または野菜植物は、チェリーの樹木またはブドウの蔦作物である。いくつかの実施態様では、果実植物は、リンゴの樹木である。
【0165】
1つの実施態様では、チェリーの樹木は、スモモ属(Prunus spp.)またはその栽培品種、好ましくはP.アビウム(P.avium)またはその栽培品種である。P.アビウム(P.avium)は、「Sweet Valentine」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、チェリーである。
【0166】
1つの実施態様では、ブドウの蔦作物は、ブドウ属(Vinus spp.)またはその栽培品種、好ましくはV.ヴィニフェラ(V.vinifera)またはその栽培品種である。V.ヴィニフェラ(V.vinifera)は、「Thompson Seedless」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、ブドウである。
【0167】
1つの実施態様では、リンゴの樹木は、リンゴ属(Malus spp.)またはその栽培品種、好ましくはM.プミラ(M.pumila)またはその栽培品種である。M.プミラ(M.pumila)は、「Pacific Rose」品種であることが好ましい。1つの実施態様では、その一部は、花もしくはその一部または果実もしくはその一部である。1つの実施態様では、果実は、リンゴである。
【0168】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の植物またはその一部に関する。
【0169】
別の態様では、本発明は、YBCA5またはYBCA5を含む組成物を用いて処理された少なくとも1種の果実もしくは野菜植物またはその一部に関する。
【0170】
1つの実施態様では、組成物は、YBCA5から実質的になる。
【0171】
植物病原性真菌を防除するため、および/または植物もしくはその一部または果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるためのYBCA5またはYBCA5を含むかもしくはそれから実質的になる組成物の使用は、本明細書に記述されている本発明の方法および使用に従って実施される。例えば、YBCA5および組成物は、本明細書に記述されている本発明に従い、調製され、配合され、植物またはその一部、特に果実もしくは野菜植物またはその一部、特にチェリーの樹木またはブドウの蔦作物に施用することができる。
【0172】
ここで、以下の実施例を参照することにより、本発明の各種の態様を非限定的に説明する。
【実施例
【0173】
実施例1 - 生態的防除活性を有する酵母の同定
酵母のスクリーニング
YBCA5は、2000年代初めに中央Otago産のアンズ(「Clutha Gold」)から以下のように分離された。収穫直後のフレッシュなアンズを-20℃で一晩冷凍してから、20℃で最大5日間にわたってインキュベートした。選択されたアンズの表面上で増殖させた酵母または酵母様のコロニーを、酵母増殖に適した一般的な培地上で標準プロトコルを使用して分離した。
【0174】
実施例2 - シュードモナス・シリンガエvar.アクチニジアエ(Pseudomonas syringae var.actinidiae)(Psa)の酵母生態的防除
一般的な手順
植物ベースのスクリーニングアッセイは、Ruakura Research Centre(Hamilton)およびTe Puke Research Orchard(Te Puke,New Zealand)において実験室およびガラス温室で実施した。Plant and Food(PFR)アッセイは、生物学的防除剤(BCA)、特にYBCA5およびPFR独自の他の酵母菌株の葉面散布に焦点を当てている。
【0175】
Zespriアッセイ26 - YBCA5の供与量率
このアッセイの目的は、Psaに対するその有効性について、いくつかの供与量率において、新たに発酵させたYBCA5をYBCA5の配合および乾燥させた調製物と比較することであった。
【0176】
植物材料
Zespriアッセイ26は、1Lのポット内で成長させた組織培養したA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)「Hayward」植物を使用し、RuakuraにあるPC1ガラス温室で実施した。植物は、高さ30~50cmであり、それぞれが処理時に植物1本あたり少なくとも4~5枚の使用可能な葉を有し、1つの処理あたり10本の植物で反復試験を実施した。
【0177】
酵母調製物
フレッシュに発酵させたYBCA5は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることによって得られた。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。ウェットペレットのサブサンプルを再懸濁させ、血球計算器を利用して細胞密度を計算し、適切に希釈することにより、6×10、1.25×10、2.5×10および5.0×10CFU/mLの最終散布濃度とした。
【0178】
YBCA5の顆粒は、10L発酵槽内での先の発酵から得られたウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通してそれを押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成することにより調製した。
【0179】
YBCA5の乾燥顆粒中のCFUの数は、0.2gの顆粒を20mLのPBSTw中に完全に溶解させることにより計算した。この菌株の系列希釈(10-6まで)を実施して、それぞれの希釈液の10μLの液滴を3滴、MYA上へ移植させた。それぞれの液滴から増殖させた酵母コロニーの数を25℃で24時間インキュベーションした後にカウントし、続いてさらに24時間にわたり冷蔵庫(4~6℃)中でインキュベーションした。適切な量の顆粒を500mLの水中に量り込んで、2.5×10CFU/mLの散布濃度に調製した。
【0180】
Psa接種調製物
2010年に、Te Puke地区に植えられていた感染されたアクチニジア・キネンシスvar.キネンシス(Actinidia chinensis var.chinensis)の「Hort16A」キウイフルーツの蔦作物から分離されたPsa培養菌(分離コード10627、生物型3)を、本報告に含まれるすべての穿刺接種および噴霧接種アッセイで使用した(Vanneste et al.,2013)。Psa接種物は、このPsa菌株をKing’s B(KB)培地上で2~3日間にわたって増殖させ、滅菌蒸留水(SDW)を用いてプレートを洗浄して、接種物の菌株の懸濁液を作成することによって細菌を回収することによって調製し、それは、目視によりc.>1×10CFU/mLであると判断された。このPsa菌株のサブサンプルを系列的に希釈し、10μLの液滴をフレッシュなKB培地の上に置くと、2日間のインキュベーション後にCFU/mLの数をカウントすることが可能であった。ガラス温室(Ruakura)内での液滴接種を容易とするために、Psa接種物(標準溶液c.×10CFU/mL)の光学濃度を、分光光度計(600nm)を用いて求め、次いであらかじめ作られた検量線に基づいてその溶液を滅菌PBSで希釈し、その結果、5×10CFU/mLおよび2×10CFU/mLの懸濁液を得た。次いで、アジュバントのDu-Wettをその懸濁液に添加して0.03%(v/v)の最終濃度を得た。
【0181】
葉の噴霧接種アッセイ
2014年9月11日および18日に、新たに発酵させたYBCA5の濃縮物および顆粒調製物のそれぞれの散布処理を、2種の用量のPsaを用いる接種の7日前および1日前(dbi)にガラス温室中でポット内において成長させたそれぞれの植物の全部の葉に流れ落ちるまで施用し、植物をスプレー隔離小屋内で自然乾燥させた。乾燥したら、その散布処理した植物をガラス温室に戻した。二回目のYBCA5散布処理の翌日、2014年9月19日に4枚または5枚の選択した葉(最も古い葉および最も若い葉を除く)のそれぞれの葉の裏側上、中央脈の両側に対称的にPsaをピペットで量り取って(10μL)接種した。次いで、Psaを接種した後、植物をPFR Ruakuraでの隔離用ガラス温室中の高湿度テント内において最長3週間入れてから、Psa発病度について評価付けした。
【0182】
Psa症状の測定
Psaの液滴接種の21日後に、それぞれの接種ポイントについて、Psaにより生じたネクローシスの面積(mm)を目視で評価した。一貫性を確保する目的のため、スタッフ二人のみで通常の発病度スコアのクロスチェックにより、Psaによる葉の発病度の評価を実施した。
【0183】
統計的分析
すべてのデータは、GenStatを使用し、自然対数変換法に従って解析した。生データの平均を与え、統計的差異は、対数変換解析に基づく。
【0184】
KRIP-BCAアッセイ39
このアッセイの目的は、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の各種の分離株の発酵、配合およびPsaに対する有効性をYBCA5と比較して調べることであった。
【0185】
植物材料
KRIP-BCAアッセイ39は、1.5Lのポット内で成長させた組織培養したA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)「Hayward」植物を使用し、RuakuraにあるPC1ガラス温室で実施した。植物は、高さ30~50cmであり、それぞれが処理時に植物1本あたり少なくとも4~5枚の使用可能な葉を有し、1つの処理あたり10本の植物で反復試験を実施した。
【0186】
酵母調製物
YBCA5の顆粒は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることにより調製した。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。このウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、これを、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通して押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成した。
【0187】
菌株保存コレクションから選択した12種のA.プルランス(A.pullulans)分離株をフラスコ培養液(500mLの三角フラスコ中、200mLの4%糖蜜、1.2g/Lの尿素の滅菌液体培地)中で3日間発酵させた。1mLの発酵液をサブサンプリングすることによって生存可能なコロニー形成単位(CFU)の数を求め、0.05Mのリン酸緩衝生理食塩液+0.05%のTween80(PBSTw)中での希釈系列(10-7まで)を実施した。それぞれの希釈について10μLの液滴を3滴、Malt Yeast Extract Agar(MYA)上へ移植させた。このそれぞれの液滴から増殖させた酵母コロニーの数を25℃で24時間インキュベーションした後にカウントし、続けてさらに24時間にわたり冷蔵庫(4~6℃)中でインキュベーションした。次いで、その発酵液を、上でYBCA5について記述したように加工して、乾燥させた配合顆粒を形成した。
【0188】
それぞれのA.プルランス(A.pullulans)分離株の乾燥顆粒中のCFUの数は、0.2gの顆粒を20mLのPBSTw中に完全に溶解させることにより計算した。この菌株の系列希釈(10-6まで)を実施して、それぞれの希釈液の10μLの液滴を3滴、MYA上へ移植させた。このそれぞれの液滴から増殖させた酵母コロニーの数を25℃で24時間インキュベーションした後にカウントし、続けてさらに24時間にわたり冷蔵庫(4~6℃)中でインキュベーションした。散布施用のための組成物は、適切な量の顆粒を500mLの水中に量り込むことにより調製した。
【0189】
Psa接種調製物
2010年に、Te Puke地区に植えられていた感染されたアクチニジア・キネンシスvar.キネンシス(Actinidia chinensis var.chinensis)の「Hort16A」キウイフルーツの蔦作物から分離されたPsa培養菌(分離コード10627、生物型3)を、本報告に含まれるすべての穿刺接種および噴霧接種アッセイで使用した(Vanneste et al.,2013)。Psa接種物は、このPsa菌株をKing’s B(KB)培地上で2~3日間にわたって増殖させ、滅菌蒸留水(SDW)を用いてプレートを洗浄して、接種物の菌株の懸濁液を作成することによって細菌を回収することによって調製し、それは、目視によりc.>1×10CFU/mLであると判断された。このPsa菌株のサブサンプルを系列的に希釈し、10μLの液滴をフレッシュなKB培地の上に置くと、2日間のインキュベーション後にCFU/mLの数をカウントすることが可能となった。 ガラス温室(Ruakura)内での液滴接種を容易とするために、Psa接種物(標準溶液c.×10CFU/mL)の光学濃度を、分光光度計(600nm)を用いて求め、次いであらかじめ作られた検量線に基づいてその溶液を滅菌PBSで希釈して、その結果、1×10CFU/mLの懸濁液を得た。次いで、アジュバントのDu-Wettをその懸濁液に添加して0.03%(v/v)の最終濃度を得た。
【0190】
葉の噴霧接種アッセイ
2016年5月9日に、A.プルランス(A.pullulans)分離株およびYBCA5それぞれの散布処理を、Psa(1×10CFU/mL)を用いる接種の7日前(dbi)にガラス温室中でポット内において成長させたそれぞれの植物の全部の葉に流れ落ちるまで施用した。YBCA5を含むすべてのA.プルランス(A.pullulans)処理を2×10CFU/mLの最終濃度で実施し、植物をスプレー隔離小屋内で自然乾燥させた。乾燥したら、その散布処理した植物をガラス温室に戻した。散布処理の7日後、2016年5月16日に4枚または5枚の選択した葉(最も古い葉および最も若い葉を除く)のそれぞれの葉の裏側上、中央脈の両側に対称的にPsaの接種用量をピペットで量り込んだ(10μL)。次いで、Psaを接種した後、植物をPFR Ruakuraでの隔離用ガラス温室中の高湿度テント内に最長3週間入れてから、Psa発病度について評価付けした。
【0191】
Psa症状の測定
Psaの液滴接種の21日後、それぞれの接種ポイントについて、Psaにより生じたネクローシスの面積(mm)を目視で評価した。一貫性を確保する目的のため、スタッフ二人のみで通常の発病度スコアのクロスチェックにより、Psaによる葉の発病度の評価を実施した。
【0192】
統計的分析
すべてのデータは、GenStatを使用し、自然対数変換法に従って解析した。生データの平均を与え、統計的差異は、対数変換解析に基づく。
【0193】
結果 - 供与量率アッセイ
図1は、YBCA5が「Hayward」キウイフルーツの葉上においてPsa症状の発病度を抑制するのに極めて有効であることを示す。この実験で使用したすべての供与量率において、未処理物での防除と比較して葉のネクローシスの発病度を有意に(P<0.001)抑制した。YBCA5の顆粒調製物でも、新たに発酵させたYBCA5と比較して有効性に差がなかった。
【0194】
結果 - 発酵および配合
12種のフラスコで成長させたA.プルランス(A.pullulans)分離株での発酵収量は、1.3×10CFU/mL~2.3×10CFU/mLの範囲であり、フラスコで成長させたYBCA5での発酵収量は、3.3×10CFU/mLであり(表1)、これは、いくつかの分離株ではYBCA5と比較してより高い発酵収量を得ることが可能であるが、他のものではより低い発酵収量となることを示唆する。
【0195】
YBCA5(10L発酵からの)の乾燥顆粒でのCFU/gの数は、2.3×1010であり、12種のA.プルランス(A.pullulans)の分離株では、乾燥顆粒でのCFU/gの数は、3.1×10CFU/gという低い値から2.0×1010CFU/gの範囲であり(表1)、これは、ほとんどのA.プルランス(A.pullulans)分離株が、YBCA5よりも生存可能なCFU/gの収量が低いことを示唆する。
【0196】
1mLの発酵液体あたりの顆粒中のCFUの数を比較すると(YBCA5の10L発酵と、12種のA.プルランス(A.pullulans)分離株のフラスコ培養とのより直接的な比較が可能となる)、YBCA5は、最高の収量(4×10CFU/mL)を有するが、他のA.プルランス(A.pullulans)分離株では、それは、4.2×10CFU/mLという低い値から2.4×10CFU/mLの範囲であったことが示される(表1)。
【0197】
【表1】
【0198】
結果 - 葉の液滴接種アッセイ - 有効性(KRIP-BCA 39)
Nil(濡れ剤のみ)処理では、その平均Psa病変面積は、57mmであった(図2)。1つの分離株(MSB8-6-2)は、Nil対照と比較してPsa発病度を有意に抑制しなかった(病変サイズ=54mm)(P>0.05)。YBCA5は、Psa病変面積を43mmまで有意に抑制した(有効性=25%)。このアッセイでは、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)分離株の全部は、鉢植えのキウイフルーツ植物のPsa発病度を有意に抑制する能力を有さず、Psaに対する有効性は、選択された分離株に依存することが示された。
【0199】
Zespriアッセイ31
このアッセイの目的は、研究果樹園における天然のPsa接種物に曝露された鉢植えの植物上においてPsaを防除するために、YBCA5を単独で施用した場合と、銅またはActigardと組み合わせて施用した場合との有効性を比較することであった。
【0200】
植物材料
このアッセイは、Te Puke Research Orchardのシェードハウス構造物(Block 20)中で実施した。その植物は、1.5Lのポット内で成長させた組織培養したA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)「Hayward」植物を使用し、Ruakuraのガラス温室でもともと成長させたものであった。その植物の背丈が25cmになったら、それらを2.5Lのポットに鉢替えして、Ruakuraのシェードハウスに移し、2015年10月30日にドリッパー灌漑につなぎ込んだ。2015年11月3日の処理の時点では、それぞれの植物は、植物1本あたり少なくとも4枚の使用可能な葉を有し、1つの処理あたり15本の植物で反復試験を実施した。処理および葉への散布日を表2に示す。
【0201】
【表2】
【0202】
酵母調製物
YBCA5の顆粒は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることにより調製した。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。このウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、これを、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通して押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成した。
【0203】
すべてのYBCA5処理は、2×10CFU/mLの最終濃度で施用し、植物は自然乾燥させた。調製した最終容積は、処理される植物のサイズに応じて500mL~1リットルの範囲であった。
【0204】
Psa接種調製物
このプロジェクトの目的は、Te Puke Research Orchard(Block 20)で鉢植えの植物にPsa接種物を曝露させることであった。このブロックは、Psaの既往歴を有する成熟したキウイフルーツの蔓作物で囲まれ、それにより時間が経つとこのアッセイのための接種物が得られた。
【0205】
葉への散布
2016年11月3日にRuakuraで第一の散布処理を施し、その後、10~14日の間隔を空けた。(詳細は、上の表2に記述されている)。すべての処理は、手持ちポンプ式の噴霧器を使用し、流れ落ちる寸前まで施用した。水酸化銅(Kocide Opti)は、0.7g/Lで施し、Actigardは、0.1g/Lで施した。YBCA5は、濡れ剤/粘着剤アジュバント、Nu-Film(250uL/500mL)を用いて施用した。
【0206】
病気の評価は、2015年12月17日に、処理したすべての葉について、葉のネクローシスの面積パーセントを評価することにより実施した。
【0207】
結果 - アッセイ Zespri 31
何らの処理も施さない場合(Nu-フィルムのみ、対照)、Psaによる葉の病斑罹患率は、66%であり、これは、Kocide Opti(18%)、YBCA5(35%)、YBCA5およびKocide Opti(複合プログラムI)(15%)、YBCA5およびActigard(複合プログラムII)(22%)では有意に抑制された(図3)。
【0208】
このアッセイでは、YBCA5は、シェード構造物の下の鉢植え植物上で天然のPsa接種物に曝露させた場合のPsa斑点病の罹患率を有意に抑制することが示された(P<0.05)。病気の防除レベルは、Kocide Optiをベースとするプログラムほど有効ではなかったものの、このアッセイでは、YBCA5は、銅ベースの製剤およびActigardと組み合わせると、銅のみの処理に比べて有効性に有意な低下なしに満足のいくレベルとすることが可能であることが示された。
【0209】
実施例3 - 植物病原性真菌の酵母による生態的防除
モニリニア・フルクチコラ(Monilinia fructicola)およびボトリチス属(Botrytis spp.)のYBCA5による生態的防除
方法
果実ベースのスクリーニングアッセイをPlant and Food Research(Ruakura Research Centre,Hamilton、New Zealand)(PFR)の実験室において実施した。PFRアッセイでは、YBCA5および殺真菌剤防除剤の浸漬処理施用に焦点を当てた。
【0210】
果実材料(アッセイ1~4)
モニリニア・フルクチコラ(Monilinia fructicola)およびボトリチス属(Botrytis spp.)に対する果実についての果実ベースのアッセイ1および2のために、2016年1月8日にCentral OtagoのPFR Clyde Research Orchardで収穫成熟ステージにおいて摘果し、そこから調達したスイートチェリー(プルヌス・アビウム(Prunus avium)「Sweet Valentine」)に関する接種アッセイを実施した。果実ベースのアッセイ3および4のために2016年1月13日に第二の収穫を実施した。
【0211】
次いで、それぞれのチェリーを二重洗浄プロセスにかけた。洗浄1は、ロータリーシェーカー(110rpm)中において水道水中での10分間からなり、その後、5分間にわたりSDW中で洗浄した(洗浄2)。すべてのチェリーを、滅菌したプラスチック製のミートトレー中の滅菌した黒色のプラスチック製のグリッド上に2枚の滅菌したペーパータオルと共に載せ、層流フード中で自然乾燥させた。それぞれのチェリーを処理液中に60秒間浸漬させ、上に述べたように再び自然乾燥させた。40mLの脱イオン水をそのペーパータオルに添加して高い相対湿度を確保し、次いでプラスチックバッグ内に密封し、23℃で24時間(アッセイ1)および48時間(アッセイ2)インキュベートして、その果実の表面上にYBCA5処理が定着できるようにした。
【0212】
アッセイ5 果実材料
果実アッセイを、ばらばらにされた白色の食用ブドウの果粒(「Thompson seedless」 - アッセイ5)について実施し、これは、Californiaからの輸入品であり、Hamiltonの地方スーパーマーケットで入手した。それぞれの果粒は、3~4mmの小果柄を残して房から切り離してから二重洗浄プロセスにかけた。洗浄1は、ロータリーシェーカー(110rpm)中において水道水中での10分間からなり、その後、5分間にわたりSDW中で洗浄した(洗浄2)。すべての果粒を、滅菌したプラスチック製のミートトレー中の滅菌した黒色のプラスチック製のグリッド上に2枚の滅菌したペーパータオルと共に載せ、層流フード中で自然乾燥させた。それぞれの果粒に、細かいサンドペーパー(等級P220)を使用して軽く傷をつけてから、処理液に60秒間浸漬させ、再び自然乾燥させた。
【0213】
YBCA5調製物(アッセイ1~5)
YBCA5の顆粒は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることにより調製した。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。このウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、これを、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通して押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成した。
【0214】
YBCA5処理剤は、冷蔵庫で5~7℃で貯蔵したその水分散性顆粒から調製し、懸濁液は、1リットルの脱イオン水あたり1g添加し(最終濃度=2×10CFU/mL)、穏やかに撹拌して懸濁液を形成した。すべての細胞が懸濁液中に均等に分散され、留まっているようにするために、濡れ剤(Nu-Film)を1リットルあたり0.5mLの量で添加した。
【0215】
殺真菌剤(アッセイ1~5)
アッセイ1および2のために、500g/Lを含む液状懸濁液を0.85mL/Lの推奨フィールドレート(石果におけるモニリニア(Monilinia)に対する推奨フィールドレート0.75mL/Lと、ベリー果実におけるボトリチス(Botrytis)に対する推奨フィールドレート1.0mL/Lとの平均値)で調製した。濡れ剤は、使用しなかった。
【0216】
アッセイ3および4のために、Captan Flo(Nufarm,NZ製)(キャプタンを600g/L含む)から、キャプタンの液状懸濁液を、160mL/リットルの石果で使用する場合の推奨フィールドレートで調製した。濡れ剤は、使用しなかった。
【0217】
モニリニア(Monilinia)接種用調製物(アッセイ1および3)
モニリニア・フルクチコラ(Monilinia fructicola)培養菌(分離コードMFGQ3)(これは、もともと1998年にHamilton地区に植えられていた感染されたモモの樹木から分離されたものである)を、このセクションに含まれる噴霧接種アッセイのために使用した(Ruakuraベースのアッセイ)。モニリニア(Monilinia)接種物は、このモニリニア(Monilinia)の菌株をPDA(Difco(Fort Richard))培地上で7日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の1×10分生子/mLとした。
【0218】
ボトリチス属(Botrytis spp.)接種用調製物(アッセイ2および4)
ボトリチス属(Botrytis spp.)培養菌(分離コード09-2)(これは、もともと2000年代にBay of Plenty地区に植えられていた感染されたキウイフルーツから分離されたものである)を、チェリーに対する、このセクションに含まれる噴霧接種アッセイのために使用した。ボトリチス属(Botrytis spp.)接種物は、このボトリチス属(Botrytis spp.)の菌株をPDA(DIFCO(Fort Richard))培地上で5~7日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、菌糸体の断片を除去するために細胞濾過器(70μmメッシュ)を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.01%v/v)を用いて希釈することにより、最終濃度の1×10分生子/mLとした。
【0219】
ボトリチス(Botrytis)接種用調製物(アッセイ5)
2種のボトリチス属(Botrytis spp.)培養菌(分離コード189および547)(これらは、もともと2010年にAuckland地区で感染されたトマトから分離されたものである)を、このアッセイに含まれる液滴接種アッセイのために使用した。1つの分離株は、2種の一般的に使用される殺真菌剤(ジカルボキシイミドおよびカルベンダジム)に感受性があったが、もう1つの分離株は、それらと同一の殺真菌剤のそれぞれに対する耐性を有した。
【0220】
ボトリチス属(Botrytis spp.)接種物は、このボトリチス属(Botrytis spp.)のそれぞれの分離株をPDA(DIFCO(Fort Richard))培地上で5~7日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.01%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、菌糸体の断片を除去するために細胞濾過器(70μmメッシュ、Falcon)を使用して濾過し、血球計算器を使用してその濃度を測定し、10μLの液滴のそれぞれの中に200個の分生子があるのと均等な所望の濃度(2×10分生子/mL)に調節した。傷をつけた果粒の表面に分生子の懸濁液が確実に留まっているようにするために、ガラススライドの上にパラフィンワックスを、そのパラフィンワックス層の上を1mLのピペットチップの底で軽くたたきながら、1~2mmの厚みの層を塗りつけることにより、傷をつけた表面の周りにパラフィンの「ワックスの堤防」を構築してから、その「パラフィンワックスリング」を傷つけた表面上に移した。これにより、直径5~6mmのパラフィンワックスのリング(「堤防」)が効率的に作られ、それが分生子の懸濁液を保持し、それが丸い果粒の表面から転がり落ちるのを防止した。次いで、傷つけて処理した果粒に対し、ボトリチス属(Botrytis spp.)分生子の懸濁液を、10μLの液滴を用いて接種した。
【0221】
病原体を接種した後、トレー内のすべての接種した果実試料を実験台上において23℃(アッセイ1~4)または21℃(アッセイ5)の温度でプラスチックバッグ内に48時間密封した。すべてのチェリーおよび果粒のアッセイにおいて、プラスチック製のグリッドの底に2枚の滅菌したペーパータオルを置き、その上に果粒を横たえてから40mLSDWを用いて湿り気を与え、それぞれのトレーを清浄なプラスチックバッグ内に入れ、次いでシールして、最初の72時間にわたり高い相対湿度を維持した。その後、バッグを開き、(トレーのそれぞれの両端が十分な空気の流れに確実に開かれているようにするために)トレー上で折り重ねて、相対湿度が15時間(夕方の午後5時から翌朝の午前8時まで)にわたって徐々に低下するようにし、その後、それらを再びシールした。インキュベーションチャンバー内で相対湿度を交替させるこのプロセスは、実験の継続時間にわたって繰り返し、この方法は、菌糸体の過度の成長を避けることが示された。5日のインキュベーション後、典型的なモニリニア属(Monilinia spp.)またはボトリチス属(Botrytis spp.)の症状を有する果実を記録して、それぞれの反復トレーから取り除いた。腐敗を毎日記録し、モニリニア属(Monilinia spp.)またはボトリチス属(Botrytis spp.)の腐敗の累積罹患率(%)を13日後(アッセイ1および2)、16日後(アッセイ3および4)および9日後(アッセイ5)に計算した。アッセイ5では、ボトリチス属(Botrytis spp.)感染の発病度は、それぞれの処理について、ボトリチス属(Botrytis spp.)の分生子柄で覆われた果粒表面の比率を目視で評価することにより求めた。
【0222】
リンゴにおけるYBCA5によるコレトトリカム属(Colletotrichum spp.)およびペニシリウム属(Penicillium spp.)の生態的防除
リンゴアッセイ6および7
リンゴ果実(「Pacific Rose」)は、Hawkes Bayにある有機果樹園から入手し、10Lのバケツにおいて水道水で洗浄した。次いで、リンゴをバイオハザードフード内で45分後に裏返し、約1.5時間にわたって乾燥させてから、エタノールをしみこませたティッシューでぬぐい、再度自然乾燥させた。次いで、リンゴを、プラスチック製のクラムシェル型コンテナーの底に敷いた湿らせたペーパータオル上に1つのコンテナーあたりリンゴ2個ずつ置いた。アッセイ6および7では、それぞれの処理に10個のリンゴでの反復試験を実施した。
【0223】
5種の処理を実施した:Nil対照(0.05%のTween80)、殺真菌剤(0.5mL/LのProlific(500g/Lのカルベンダジムを含む))、病原体の24時間前にYBCA5を1×10CFU/mLで施用、病原体の2時間前にYBCA5を1×10CFU/mLで施用、および病原体のみ(アッセイ6ではコレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、アッセイ7ではペニシリウム属(Penicillium spp.))。YBCA5の顆粒は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることにより調製した。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。このウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、これを、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通して押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成した。
【0224】
YBCA5処理剤は、冷蔵庫で5~7℃で貯蔵したその水分散性顆粒から調製し、懸濁液は、1リットルの脱イオン水あたり0.5g添加し(最終濃度=1×10CFU/mL)、穏やかに撹拌して懸濁液を形成した。
【0225】
病原体胞子の懸濁液は、PDAの上で成長させたコレトトリカム属(Colletotrichum spp.)およびペニシリウム属(Penicillium spp.)の培養菌から調製した。PDAペトリ皿から培養菌の1/3を取り出し、30mLのSDW(0.05%のTween80入り)を入れた50mLのFalconチューブ内に移した。これを1分間激しく振盪させて、胞子を懸濁液中に取り込ませ、次いで70μの細胞濾過器を通して、菌糸体の断片をすべて取り除いた。血球計算器を用いて胞子濃度を計算し、希釈して最終濃度の1×10胞子数/mLとした。
【0226】
リンゴを洗浄し、調製した日(第1日)にリンゴの側面に小さい傷(直径3mm、深さ2~3mm)をつけ、処理3の番号を付けた。YBCA5懸濁液の10μLアリコートをその傷に加え、傷を十分に覆うようにした。その翌日(第2日)にさらに4箇所に傷をつけ、処理1、2、4および5の番号を付けた。それぞれの傷にそれぞれの溶液の10μLアリコートを加えることにより、処理1、2および4を傷に対して実施した。2時間後、アッセイ6では10μLアリコートのコレトトリカム属(Colletotrichum spp.)をそれぞれの傷に加え(処理2、3、4および5)、アッセイ7では10μLアリコートのペニシリウム属(Penicillium spp.)をそれぞれの傷に加える(処理2、3、4および5)ことにより、病原体を適用した。30mLの追加のSDWをクラムシェル型コンテナー内のペーパータオルに加えて、相対湿度を維持し、そのコンテナーをSanyoインキュベーター内において23℃で1~2週間インキュベートして腐敗を進ませた。
【0227】
8日後にデジタルキャリパーを使用して腐敗の病変直径を測定した。それぞれの測定において、傷の直径から3mmを引き算することにより病変サイズを補正し、次いでGenstatを使用してANOVAを実施して、最小有意差に基づく処理差のための試験を行った。
【0228】
実験計画
チェリーアッセイ(アッセイ1~4)は、一反復あたり10個のチェリーからなり、乱塊レイアウト法でそれぞれの処理あたり6回の反復(アッセイ1および2)および8回の反復(アッセイ3および4)を実施した。
【0229】
ブドウ果粒アッセイ(アッセイ5)は、一反復あたり5個の果粒からなり、乱塊レイアウト法でそれぞれの処理あたり4回の反復を実施した。
【0230】
統計的分析
データは、乱塊実験計画法および分散分析法を用い、GenStat,13th editionを使用して解析した。平均の果実感染(%罹患率)は、対数変換して、分散を平坦化させ、解析の正規分布仮説により良く適合するようにした。生データの平均値および最小有意差(LSD)を提示するが、すべての統計的比較は、対数解析に基づくものである。
【0231】
チェリー接種アッセイの結果
アッセイ1
図9は、チェリーにおけるモニリニア(Monilinia)果実腐敗に対するYBCA5の効果をまとめている。モニリニア(Monilinia)果実腐敗の罹患率は、Nil処理では50%であり、YBCA5(34%)およびイプロジン処理(22%)では、モニリニア(Monilinia)の罹患率がより低く、これらは、Nil処理と比較して有意な抑制ではなかった(図9)。
【0232】
アッセイ2
図10は、チェリーにおけるボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗に対するYBCA5の効果をまとめている。ボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗の罹患率は、無処理では35%であり、これは、YBCA5(24%)およびイプロジン処理(22%)において有意に抑制されなかった(P>0.05)(図10)。
【0233】
アッセイ3
図11は、別のアッセイ(アッセイ3)でのチェリーにおけるモニリニア(Monilinia)果実腐敗に対するYBCA5の効果をまとめている。モニリニア(Monilinia)果実腐敗の罹患率は、無処理では88%であり、これは、YBCA5(59%)によっても有意に抑制されなかった(P>0.05)。キャプタン殺真菌剤処理(12%)は、Nil処理と比較してモニリニア(Monilinia)果実腐敗の罹患率を有意に抑制した(P<0.001)(図11)。
【0234】
アッセイ4
図12は、別のアッセイでのチェリーにおけるボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗に対するYBCA5の効果をまとめている。ボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗の罹患率は、無処理では67%であり、これは、YBCA5(49%)およびキャプタン処理(43%)では有意に抑制されなかった(P>0.05)(図12)。
【0235】
ブドウ接種アッセイの結果
アッセイ5
図13は、別のアッセイ(アッセイ5)での食用のブドウにおけるボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗に対するYBCA5の効果をまとめている。ボトリチス属(Botrytis spp.)果実腐敗の罹患率は、無処理で30%であり、これは、YBCA5(7%)およびキャプタン処理(10%)によって有意に抑制された(P<0.001)(図13)。
【0236】
他の病気の処理 - リンゴアッセイ6および7でのリンゴの結果
アッセイ6
未処理のコレトトリカム(Colletotrichum)対照における平均病変サイズは、10.1mmであり、これは、殺真菌剤および2つのYBCA5処理で有意に抑制された(P<0.05)(表3)。
【0237】
病原体に接触させる24時間前にYBCA5を施用すると、病原体に接触させる2時間前に施用するよりも良好な保護作用が得られる。
【0238】
【表3】
【0239】
アッセイ7:
未処理のペニシリウム(Penicillium)対照における平均病変サイズは、15.2mmであり、これは、殺真菌剤および2つのYBCA5処理で有意に抑制された(P<0.05)(表4)。上記のアッセイと同様に、病原体に接触させる24時間前にYBCA5を施用すると、病原体に接触させる2時間前に施用するよりも有意に良好な保護作用が得られる。
【0240】
【表4】
【0241】
アッセイ8:「Hongyang」キウイフルーツにおける植物病原性真菌による収穫後の腐敗
中国からの最も重要な輸出栽培品種は、「Hongyang」であり、この赤黄色の果肉の栽培品種は、以下の一連の貯蔵時病原体の攻撃を受ける:ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびボトリチス属(Botrytis spp.)。
【0242】
本発明者らは、特に以下の一連の果実の貯蔵時の真菌性病原体に対する傷の保護として施用したYBCA5の有効性を検討した:ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびボトリチス属(Botrytis spp.)。
【0243】
予備試験を実施して、何らの処理もしない傷をつけた後の果実を腐敗させるのに必要なそれぞれの病原体の濃度を明らかにした。
【0244】
方法
キウイフルーツ「Hongyang」ベースのスクリーニングアッセイ(アッセイ8および9)をPlant and Food Research,Ruakura Research Centre(Hamilton,New Zealand)(PFR)の実験室で実施した。PFRアッセイでは、YBCA5処理の傷への施用に焦点を当て、市場で実施されている生物学的防除処理および殺真菌剤を比較対照として使用した。
【0245】
果実材料(アッセイ8)
果実ベースのアッセイ8および9のための「Hongyang」キウイフルーツは、2017年4月12日にPFR Riwaka Research Orchard(Motueka)から入手した。ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、アルテルナリア属(Alternaria spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)、クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)およびボトリチス属(Botrytis spp.)の接種アッセイは、収穫成熟ステージで摘果した「Hongyang」キウイフルーツについて実施した。
【0246】
1℃の冷蔵貯蔵庫から取り出した後、それぞれの果実を三重洗浄プロセスにかけた。洗浄1は、70%エタノール中30秒間からなり、次いでロータリーシェーカー(80rpm)上において水道水で10分間洗浄し(洗浄2)、続けてSDW中で5分間の最後の洗浄をした(洗浄3)。すべての果実を、滅菌したプラスチック製のミートトレー中の滅菌した黒色のプラスチック製のグリッド上に2枚の滅菌したペーパータオルと共に載せ、層流フード中で一晩自然乾燥させた。
【0247】
それぞれの果実に、滅菌したステンレス鋼製のスパイク(深さ4mm×幅3mm)を用いて側面に傷をつけた傷つけ処理の直後にその傷内にそれぞれの処理懸濁液10μLをピペットで量り込み、自然乾燥させた。
【0248】
処理物および比率の詳細は、次表に記載した。
【0249】
【表5】
【0250】
アッセイ8および9のために、2枚の滅菌したペーパータオルをPlixカットアウトの底に敷き、40mLのSDWを用いて湿らせ、それぞれの果実を使い捨てのランチボックス(Plix Extra Deep 45/45、果実の移動を防ぐ、5個のPlix果実カットアウトを含む)内に置き、密封してから大型の(40L)プラスチック容器内に入れ、それを閉じて、最初の24時間にわたり高い相対湿度が保持できるように実験台上において24℃でインキュベートした。24時間後にそのPlixランチボックスを容器から取り出し、それぞれの真菌病原体の10uLの懸濁液を、処理された傷内にピペットで量り込んだ。すべてのランチボックスを再び密封し、大型プラスチック容器内に置き戻し、次の48時間にわたり高い相対湿度に保った。この時間が過ぎたら、Plixランチボックスを大型プラスチック容器から取り出し、Plixボックスの蓋と本体との間にピンを差し込んで、空気が幾分か循環し、15時間(夕方の午後5時から翌朝午前8時まで)にわたって相対湿度が下がることができるようにし、その後、それらを再び密封した。インキュベーションチャンバー内で相対湿度を交替させるこのプロセスは、実験の継続時間にわたって繰り返し、この方法は、菌糸体の過度の成長を避けることが示された。6日後(アルテルナリア属(Alternaria spp.)、ボトリチス属(Botrytis spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ホモプシス属(Phomopsis spp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum spp.))および7日後(クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.))に、それぞれの処理について果実の軸方向で病変の長さ(mm)を測定することにより、真菌腐敗の発病度を評価した。データは、平均病変長さから最初の傷の幅(3mm)を引き算して表した。
【0251】
YBCA5調製物(アッセイ8および9)
YBCA5の顆粒は、10Lのバイオリアクター(Labfors)中において滅菌液体培地(4%糖蜜および1.2g/Lの尿素)を使用して3日間酵母を発酵させることにより調製した。その発酵液を遠心分離器(Sorvall RC-5C)(ローター番号SLC-4000、ローターコード33)中において5000rpmで15分間遠心分離にかけると、上清を廃棄した後に細胞濃縮物のウェットペレットが得られた。このウェットペレットをほぼ30%(w/w)のコーンスターチと混合して、硬くて生地状の粘稠物を形成し、これを、スチール製のメッシュ(穴径3mm)を通して押出成形し、層流フード(20~25℃)中で一晩乾燥させて乾燥顆粒を形成した。
【0252】
YBCA5処理剤は、冷蔵庫で5~7℃で貯蔵したその水分散性顆粒から調製し、懸濁液は、1リットルの脱イオン水あたり0.5g添加し(最終濃度=1×10CFU/mL)、穏やかに撹拌して懸濁液を形成した。
【0253】
貯蔵時病原体の調製物
アルテルナリア属(Alternaria spp.)接種用調製物(アッセイ8)
アルテルナリア属(Alternaria spp.)の培養菌(分離コード=「アルテルナリア属exチェリー(Alternaria ex cherry)(これは、もともと2016年にCentral Otagoからの感染されたチェリー果実から分離されたものである)をこのアッセイの有傷接種の一部のために使用した。アルテルナリア属(Alternaria spp.)接種物は、このアルテルナリア属(Alternaria spp.)の菌株をOat Meal Agar培地上で21日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の2×10分生子/mLとした。
【0254】
ボトリチス属(Botrytis spp.)接種用調製物(アッセイ8)
ボトリチス属(Botrytis spp.)培養菌(分離コード09-2)(これは、もともと2000年代にBay of Plenty地区に植えられていた感染されたキウイフルーツから分離されたものである)を、チェリーに対する、このセクションに含まれる噴霧接種アッセイのために使用した。ボトリチス属(Botrytis spp.)接種物は、このボトリチス属(Botrytis spp.)の菌株をOat Meal Agar培地上で12日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、菌糸体の断片を除去するために70μmの細胞濾過器(70μmメッシュ)を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.01%v/v)を用いて希釈することにより、最終濃度の1×10分生子/mLとした。
【0255】
コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)接種用調製物(アッセイ8)
コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)培養菌(分離コード=‘ex G3)(これは、もともと2017年にRuakura Research Orchardからの感染されたGold3キウイフルーツから分離されたものである)をこのアッセイの有傷接種の一部のために使用した。コレトトリカム属(Colletotrichum spp.)接種物は、このコレトトリカム属(Colletotrichum spp.)の菌株をPDA(Difco(Fort Richard))培地上で21日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の2×10分生子/mLとした。
【0256】
ペニシリウム属(Penicillium spp.)接種用調製物(アッセイ8)
ペニシリウム属(Penicillium spp.)培養菌(分離コード=「ペニシリムexレモン(Penicillium ex lemon)」)(これは、もともと2017年にスーパーマーケットからの感染されたレモン果実から分離されたものである)をこのアッセイの有傷接種の一部のために使用した。ペニシリウム属(Penicillium spp.)接種物は、このペニシリウム属(Penicillium spp.)の菌株をPDA(Difco(Fort Richard))培地上で12日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の2×10分生子/mLとした。
【0257】
ホモプシス属(Phomopsis spp.)接種用調製物(アッセイ8)
ホモプシス属(Phomopsis spp.)培養菌(分離コード=「ホモプシスex G3」(Phomopsis ex G3)(これは、もともと2017年にRuakura Research Orchardからの感染されたGold3キウイフルーツから分離されたものである)をこのアッセイの有傷接種の一部のために使用した。ホモプシス属(Phomopsis spp.)接種物は、このホモプシス属(Phomopsis spp.)の菌株をPDA(Difco(Fort Richard))培地上で21日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の2×10分生子/mLとした。
【0258】
クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)接種用調製物(アッセイ9のみ)
クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)培養菌(分離コード=「クリプトスポリオプシスex G3」(Cryptosporiopsis ex G3))(これは、もともとTe Puke Research Orchardからの感染されたGold3キウイフルーツから分離されたものである)をアッセイ9の有傷接種のために使用した。クリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)接種物は、このクリプトスポリオプシス属(Cryptosporiopsis spp.)の菌株をPDA(Difco(Fort Richard))培地上で28日間成長させ、そのプレートを、SDWプラスTween80(0.05%)を用いて洗浄して分生子を収集して、接種物の菌株懸濁液を作成することにより調製した。次いで、この菌株懸濁液を、(菌糸体の断片を除去するために)70μmの細胞濾過器を使用して濾過し、血球計算器を使用して濃度を測定してから、SDW+Tw80(0.05%)を用いて希釈することにより、最終濃度の2×10分生子/mLとした。
【0259】
アッセイ8および9における病原体接種後、すべての接種された果実試料は、使い捨てのランチボックス(Plix Extra Deep 45/45、果実の移動を防ぐ、5個のPlix果実カットアウトを含む)内に置き、Plixカットアウトの底に置いた2枚の滅菌したペーパータオルに40mLのSDWを添加し、次いで大型の(40L)プラスチック容器内に置き、それを閉じて、最初の48時間にわたり高い相対湿度が保持できるように天然光および蛍光灯下において24℃で最大3日間、実験台上でインキュベートした。48時間が過ぎたら、Plixランチボックスをその容器から取り出し、蓋と本体との間にピンを差し込んで、空気が循環し、15時間(夕方の午後5時から翌朝午前8時まで)にわたって相対湿度が下がることができるようにし、その後、それらを再び密封した。インキュベーションチャンバー内で相対湿度を交替させるこのプロセスは、実験の継続時間にわたって繰り返し、この方法は、菌糸体の過度の成長を避けることが示された。6~7日後、それぞれの処理について果実の軸方向で病変の長さ(mm)を測定することにより、真菌腐敗感染の発病度を評価した。データは、平均病変長さから最初の傷の幅(3mm)を引き算して表した。
【0260】
実験計画
キウイフルーツ「Hongyang」のアッセイ8は、一反復あたり4個の「Hongyang」キウイフルーツからなり、乱塊レイアウト法でそれぞれの処理あたり5回の反復を実施した。合計して22回の処理が存在し、それは、Nil(傷つけなし、処理なし)で病原体接種なしの対照実験と、Nil(傷つけてから、SDW+Tw80)で病原体接種なしの対照実験とを含んだ。
【0261】
アッセイ9において
キウイフルーツ「Hongyang」のアッセイ9は、一反復あたり4個の「Hongyang」キウイフルーツからなり、乱塊レイアウト法でそれぞれの処理あたり4回の反復を実施した。合計して5回の処理が存在し、それは、Nil(傷つけなし、処理なし)で病原体接種なしの対照実験と、Nil(傷つけてから、SDW+Tw80)で病原体接種なしの対照実験とを含んだ。
【0262】
統計的分析
データは、乱塊実験計画法および分散分析法を用い、GenStat、13th editionを使用して解析した。平均病変直径は、データ変換して分散を平坦化させる必要はなく生データの平均値および最小有意差(LSD)を示す。
【0263】
結果
アッセイ8
果実にアルテルナリア(Alternaria)、コレトトリカム(Colletotrichum)、ペニシリウム(Penicillium)およびホモプシス(Phomopsis)を接種した場合、YBCA5で処理した果実は、「Hongyang」果実中にRovral Aquaflo処理、Serenade Opti処理および未処理の対照よりも有意に小さい病変のみを有した。果実にボトリチス属(Botrytis spp.)を接種した場合、YBCA5で処理した果実は、Rovral Aquafloよりも有意に小さい病変を有さなかったが、Serenade Opti処理および未処理の対照より有意に小さかった。
【0264】
果実にボトリチス属(Botrytis spp.)およびペニシリウム属(Penicillium spp.)を接種した場合、Rovral Aquafloで処理した果実は、未処理の対照より有意に小さい病変を有した。果実にホモプシス(Phomopsis)を接種した場合、Serenade Optiで処理した果実は、未処理の対照より有意に小さい病変を有した(図14)。
【0265】
アッセイ9では、YBCA5で処理した果実はまた、果実にクリプトスポリオプシス(Cryptosporiopsis)を接種した場合、Rovral Aquaflo処理、Serenade Opti処理および未処理の対照よりも「Hongyang」果実における病変が有意に小さかった(図15)。
【0266】
考察
傷つけた部位に病原体を導入する24時間前にYBCA5をそれと同じ傷に定着させると、YBCA5は、一連の収穫後のキウイフルーツの果実への病原体に対して活性を有することが示された。傷つけ法は、いくつかのバイオ農薬の活性を示すための実験手法として良好に機能する。
【0267】
全体として、Rovral Aquafloは、これらの実験では効果が低かったため、この農薬は、傷保護アッセイおよび本研究に使用した病原体に対して適していない可能性がある。
【0268】
Serenade Optiは、これらのアッセイでは効果が低かったため、このバイオ農薬は、これらのアッセイにおいて使用された病原体に対する、傷をつけた果実の傷保護剤として適していない可能性がある。
【0269】
実施例5 - 圃場におけるPSAの酵母による生態的防除
要約
【0270】
【表6】
【0271】
試験方法:すべての植物に対して蕾のほころび時に銅を施用し、次いで処理グループに酵母処理を施した一方、対照は、それぞれ処理を施さないかまたは栽培業者標準処理であった。
【0272】
圃場試験、2015~16年
方法
2015年の春に、連続2シーズンにわたる実験をする目的で2つの圃場試験サイトを設定した。2つの「Hayward」ブロック(ブロックBおよびCとして表記)をMaketu(Bay of Plenty)の近くの別々の果樹園に置いた。ブロックCは、2014~15年での試験と同じ果樹園であったが、ブロック内の別の地区を使用した。すべてのブロック内の蔓植物は、1柱間あたり1本の蔓としてパーゴラ状に整枝した。その蔓作物は、試験の開始時、一般的に健全に見えたが、栽培者によると2~3年前にかなり重度のPsa病にかかっていた。
【0273】
乱塊計画法のレイアウトに従って個々の蔓作物に散布処理を施した(1つの処理あたり8回の反復)。その処理は、以下の通りであった:
1.Nil - 成長期中にPsa防除剤を施用せず。
2.栽培業者標準 - 銅ベースの葉面散布プログラム、1回の抗生物質散布を含む。
3.YBCA5 - 酵母ベースの葉面散布プログラム(2×10CFU/mL)。
【0274】
表5のスケジュールに従って栽培業者標準における散布施用およびYBCA5処理を施した。一般的な農業用アジュバントを栽培業者標準(0.04%Du-Wett(登録商標))およびYBCA5施用(0.03%Nu-Film-17(登録商標))に添加した。
【0275】
【表7】
【0276】
YBCA5酵母は、液体発酵により産生させたものであり、次の3つの生産設備から入手した:PFR(Ruakura)、AgResearch(Lincoln)およびCallaghan Innovation(Lower Hutt)。遠心分離後の濃縮された酵母ペレットをRuakuraの実験室に送り、それを不活性な担体と混合し、押出成形して顆粒とし、それを層流フード中で一晩風乾させた。20mLの0.05%のTween80を用いて変性したリン酸緩衝生理食塩液(PBSTw)中に0.2gの試料を溶解させることにより、コロニー形成単位の数/gを計算した。これを系列的に希釈し、それぞれの希釈液の10μLの液滴を、クロラムフェニコールを用いて変性したMalt Yeast Extract Agarを入れたペトリ皿に移し込んだ。ペトリ皿を25℃で24時間、次いで4~6℃でさらに24時間インキュベートしてからコロニーの数をカウントした。顆粒におけるYBCA5の濃度は、2.1×1010CFU/gであった。すべての顆粒は、冷蔵庫(4~6℃)中の密閉したコンテナー内で貯蔵し、100g/100Lの割合で量り取って目標散布濃度の2×10CFU/mLとした。
【0277】
Psa病の評価は、2015年11月11日に開花直前の「Hayward」ブロックにおいて実施し、それは、葉についてPsaの病斑の発病度(ネクローシスを発症した葉の面積%)を目視で評価された。評価は、主コルドンから第二および第三のワイヤアウト間にある葉について実施した。評価は、試験区の端から一段(すなわち1m)離れたところから開始し、25葉を1セットとして評価付けした。このプロセスをさらに一段下がった試験区で繰り返した。次いで、これを他の側の蔓植物でも繰り返して、それぞれの試験区内で25葉を4セット(合計=100葉)として評価付けを行った。上記と同様に、1試験区あたり100個の蕾について蕾の褐変の発病度の評価付けも行った。
【0278】
データは、Psa罹患率(Psa病斑を有する葉の比率/褐色の萼片を有する蕾の比率に基づく)および平均Psa発病度(壊死した葉の面積の平均%/蕾上の褐変した萼片の平均数)として表した。データの対数変換を行い、Genstat(ver.16)を使用したANOVAにより解析して、処理差の判定を行った。生データは、対数変換したデータをベースにして示される統計的差異で表す。解析は、サイト×処理の何らかの有意差のある相互作用をチェックしてから、両方の果樹園サイトからのデータを組み合わせることによっても実施した。
【0279】
結果
斑点病(ネクローシス)を有する葉の罹患率および発病度ならびに同様に蕾の症状を解析することから、有意差のある処理×果樹園の相互作用が存在しないことが示唆されたため、それにより、2つの果樹園(ブロックBおよびC)の平均としてデータを提示する。
【0280】
Nil対照は、50%の、ネクローシスを有する葉の罹患率の平均値を有し、これは、Kocide Optiおよび2種のYBCA5処理(表6)により有意に抑制された(P<0.05)。YBCA5の有効性は、33%であった。栽培業者の標準処理(Kocide Opti+Kasumin)は、74%の有効性を有し、ネクローシスを有する葉の罹患率では、YBCA5およびKocide Opti処理と比較してさらに有意な抑制が得られた。
【0281】
Nil対照では、斑点病の平均発病度がわずか0.24%であった(表6)。しかしながら、それでもなお葉のネクローシスの平均発病度について、2つのYBCA5処理を含めたそれぞれの処理において、Nil対照と比較して有意な抑制が存在した(P<0.05)。YBCA5の平均有効性は、58%であり、それと比較して、栽培業者標準およびKocide Opti処理は、それぞれ91%および73%の有効性を有した。
【0282】
Nil対照における壊死萼片を有する花の蕾の罹患率は、61%であり、これは、それぞれの処理によって有意に抑制された(P<0.05)(表6)。2種のYBCA5処理は、ネクローシスを有する蕾の罹患率が39%および37%であり、38%の平均有効性であった。栽培業者標準処理は、それぞれの他の処理と比較して有意に低い(P<0.05)蕾のネクローシス(13%)を有した(有効性、79%)。Kocide Opti処理は、40%の有効性を有した。
【0283】
蕾のネクローシスの平均発病度(壊死萼片の数/蕾)は、Nil対照では1.29であり、ネクローシスを有する蕾の罹患率と同等であり、これは、それぞれの処理によって有意に抑制され(P<0.05)、栽培業者標準処理(0.21、有効性=84%)が最大の抑制を与えた(表6)。YBCA5処理の平均有効性は、46%であり、これは、Kocide Opti処理(有効性38%)と同等であった。
【0284】
【表8】
【0285】
圃場試験、2016~17年
方法
冬の数ヶ月間中、栽培業者は、その標準的なKocide Opti冬期散布プログラムを実行し、春には上記と同じ処理を同じ蔓作物に実施した。栽培業者がKocide Optiを試験ブロック全体にわたって蕾のふくらみ始めの頃(2016年10月2日)に施用することで散布施用が開始され、表7にまとめたスケジュールがそれに続いたが、ここで、Nil対照試験区では、散布施用を実施しなかった。これら2つの圃場試験では、トリコデルマ(Trichoderma)処理も続けられた。
【0286】
このシーズンに使用したYBCA5酵母顆粒は、生産会社のe-nema GmbHにより液体発酵および流動床乾燥でプレコマーシャルバッチ(YBCA5 e-nema-2)として生産されたものである。YBCA5の顆粒は、2016年9月23日にNew Zealandに輸入され、処理で必要となるまで気密コンテナー中において4~6℃で保存された。その顆粒は、2016年9月26日に3×1010の平均CFU/gを有したが、2016年11月2日に生存度試験をしたときに2.6×1010であった。
【0287】
このシーズンのYBCA5の散布量は、ほぼ実用量の50g/100L(最小濃度の1×10CFU/mLを達成するために)に設定したが、顆粒中での実際の生存度での調節を行わなかったため、実際の撒布量は、1.25~1.5×10CFU/mLであったことが示唆される。葉および蕾での病気の評価は、上述の先のシーズンで記述したのと同様に実施した。
【0288】
【表9】
【0289】
花の蕾におけるPsa病の評価は、「Hayward」ブロックで2016年11月11日に開花直前に実施したが、上記と同様に1試験区あたり100個の蕾について蕾の褐変の発病度を目視で評価した。葉について、2016年11月18日にこれらの試験区においてPsa病斑の発病度(ネクローシスを有する葉の面積%)を評価した。先に記したように、評価は、主コルドンから第二および第三のワイヤアウト間にある葉について実施した。評価は、試験区の端から一段(すなわち1m)離れたところから開始し、25葉を1セットとして評価付けした。このプロセスをさらに一段下がった試験区で繰り返した。次いで、これを他の側の蔓植物でも繰り返して、それぞれの試験区内で25葉を4セット(合計=100葉)として評価付けを行った。
【0290】
結果
この圃場試験での第二年目において、Nil対照における斑点病の罹患率は、31%であり、これは、2つのYBCA5処理によって有意に抑制された(表8)。YBCAのみの処理での有効性は、42%であった。殺菌剤Kasuminを含む栽培業者の標準処理では、YBCA5処理と比較して斑点病の罹患率においてさらに有意な抑制を与えた(有効性=74%)。
【0291】
Nil対照における斑点病の平均発病度は、0.19%であったが、YBCA5処理では、Nil対照と比較して有意に抑制された(表8)。YBCAのみの処理での有効性は、53%であった。栽培業者の標準処理ではさらなる抑制があったが、ただし、この場合、栽培業者標準とYBCA5処理との間で互いに有意な差はなかった。
【0292】
Nil対照では、蕾のネクローシス罹患率は、18%であり、ネクローシスの発病度は、0.27であった。2つのYBCA5処理は、Nil対照と比較して蕾罹患率および発病度を有意に抑制した(YBCA5単独の有効性は、それぞれ56%および59%であった)。栽培業者標準では、YBCA5処理よりも病気が少なかったが、それらは有意な差ではなかった。
【0293】
【表10】
【0294】
結論:
YBCA5処理は、「Hayward」の蔓作物において、斑点病および蕾の褐変の罹患率および発病度における有意な抑制を示した。
【0295】
ここまでの記述は、例示のためにのみ提供されたものであり、使用される物質および方法の両方における当業者に公知の変形形態が想定されることを理解されたい。
【0296】
例を挙げ、特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく修正形態および/または改良形態がなされ得ることを理解されたい。
【0297】
さらに、本発明の特徴または態様がMarkushグループの用語で記述される場合、当業者は、それによりMarkushグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの用語でも本発明が記述されることを認識するであろう。
【0298】
本明細書において特許明細書、他の外部文献または他の情報源を参照する場合、これは、一般的に、本発明の特徴を論じるための文脈を与えることを目的とする。具体的にそうでないと断らない限り、そのような外部文献を参照することは、そのような文献またはそのような情報源が、いかなる管轄においても、従来技術であるかまたは当技術分野における共通の一般知識の一部であることを許容すると解釈してはならない。
【数1-1】
【数1-2】
【数1-3】
【0299】
付番した以下の段落は、本発明の特定の態様を定義するものである:
1.分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)。
2.YBCA5および農学的に許容可能な担体を含む組成物。
3.YBCA5および農学的に許容可能な担体から実質的になる組成物。
4.YBCA5は、生殖に適した細胞の形態で存在する、段落2または段落3に記載の組成物。
5.YBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10~約1×1014、好ましくは約1×10~約1×1011、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約1×10~約1×10、好ましくは約2×10~約2×10CFU、好ましくは約2×10~約2×1010CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10~約1×10CFU/ミリリットルの範囲である、段落2~4のいずれか一項に記載の組成物。
6.農学的に許容可能な担体は、水である、段落2~5のいずれか一項に記載の組成物。
7.少なくとも1種の農学的に許容可能なアジュバントをさらに含む、段落2~6のいずれか一項に記載の組成物。
8.農学的に許容可能なアジュバントは、追加の活性薬剤および配合剤からなる群から選択される、段落2~7のいずれか一項に記載の組成物。
9.農学的に許容可能なアジュバントは、1種または複数の追加の活性薬剤である、段落2~7のいずれか一項に記載の組成物。
10.農学的に許容可能なアジュバントは、1種または複数の配合剤である、段落2~7のいずれか一項に記載の組成物。
11.農学的に許容可能なアジュバントは、追加の活性薬剤と1種または複数の配合剤との組合せを含む、段落2~7のいずれか一項に記載の組成物。
12.組成物は、固体または液体の配合物として配合されている、段落2~11のいずれか一項に記載の組成物。
13.組成物は、予備調製された組成物であるか、または組成物は、濃縮された形態である、段落2~12のいずれか一項に記載の組成物。
14.植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む方法。
15.少なくとも1種のシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)、P.アミグダリア(P.amygdalia)、P.アベルラナエ(P.avellanae)、P.カリカパパヤエ(P.caricapapayae)、P.シコリイ(P.cichorii)、P.コロナファシエンス(P.coronafaciens)、P.フィクセレクタエ(P.ficuserectae)、P.ヘリアンティ(P.helianthi)、P.レミアエ(P.lemiae)、P.サバスタノイ(P.savastanoi)およびP.ビリディフラバ(P.viridiflava)もしくはその病原型またはそれらの組合せからなる群から選択される細菌の菌株であり、好ましくは、少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)またはその病原型であり、より好ましくは、少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)である、段落14に記載の方法。
16.植物またはその一部は、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌、好ましくはPsa細菌を防除するのに十分な時間にわたって接触される、段落14または15に記載の方法。
17.接触は、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌、好ましくはPsa細菌の生存、成長および/または増殖を十分に抑制するのに十分な時間にわたるものである、段落16に記載の方法。
18.接触は、YBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物を植物の葉、茎、花、果実、幹および/もしくは根またはその一部に施用することを含む、段落14~17のいずれか一項に記載の方法。
19.施用は、散粉法、散布法、ドリップ法、スプリンクラー法もしくは混合法またはそれらの組合せを含む、段落18に記載の方法。
20.根への施用は、地上散布法、機械的鋤込み法または肥沃化剤もしくは肥料との、前記肥沃化剤もしくは肥料を施用する前の混合法による、段落18に記載の方法。
21.植物またはその一部は、単子葉植物、双子葉植物、一年生、二年生および多年生植物、野菜植物および収穫後の野菜、果実植物もしくは樹木もしくは収穫後の果実、着花植物もしくは樹木もしくは収穫した花、穀物用植物、油質植物、タンパク質植物、リグニン質植物および観賞用植物の群から選択される、段落14~20のいずれか一項に記載の方法。
22.植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物であり、好ましくは、農業的に重要な果樹またはその栽培品種は、オリーブの樹木、リンゴの樹木、西洋ナシの樹木、柑橘類の樹木、バナナの樹木、パイナップルの樹木、モモの樹木、アンズの樹木、チェリーの樹木、クルミの樹木およびハシバミの樹木から選択され、かつその生産物は、それぞれオリーブ、リンゴ、西洋ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アンズ、チェリー、クルミおよびハシバミであり、好ましくは、農業的に重要な蔓作物またはその栽培品種は、ジャガイモの蔓作物、ビートルートの蔓作物、マメの蔓作物、エンドウマメの蔓作物、トマトの蔓作物、キュウリの蔓作物、メロンの蔓作物、ベリーの蔓作物、ブドウの蔓作物およびキウイフルーツの蔓作物から選択され、かつその生産物は、それぞれジャガイモ、ビートルート、マメ、エンドウマメ、トマト、キュウリ、メロン、ベリー、ブドウおよびキウイフルーツであり、好ましくは、農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ生産物は、キウイフルーツである、段落14~21のいずれか一項に記載の方法。
23.キウイフルーツの蔦作物は、ファジイキウイフルーツ(アクチニジア・デリキオサ(Actinidia deliciosa)A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa))、ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))またはその栽培品種の種からなる群から選択され、好ましくは、キウイフルーツは、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)およびA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種からなる群から選択され、好ましくは、キウイフルーツは、A.キネンシス(A.chinensis)の種であり、好ましくは、キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)であり、好ましくは、栽培品種は、「Hayward」または「Hort16A」栽培品種である、段落22に記載の方法。
24.栽培品種は、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)の「Hort16A」である、段落23に記載の方法。
25.栽培品種は、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)の「Hayward」である、段落23に記載の方法。
26.植物またはその一部は、トウモロコシ植物、タバコ植物、コムギ植物、サトウキビ植物、セイヨウアブラナ植物、オオムギ植物、イネ植物、モロコシ植物、キビ植物、ダイズ植物、レタス植物およびキャベツ植物から選択される農業的に重要な作物植物、栽培品種またはその生産物である、段落12~25のいずれか一項に記載の方法。
27.キウイフルーツ植物またはその一部上においてP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するための方法であって、キウイフルーツ植物またはその一部をYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物と共にA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)またはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種、好ましくはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種と接触させることを含み、好ましくは、キウイフルーツ植物は、「Hort16A」または「Hayward」である、方法。
28.シュードモナス属(Pseudomonas spp.)によって感染されたかまたはそれに感染されやすい、好ましくはPsaで感染されたか、好ましくは感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるための方法であって、YBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物をキウイフルーツ植物またはその一部に施用することを含む方法。
29.植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、植物またはその一部をYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む方法。
30.植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、YBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物を果実もしくは野菜植物またはその一部に施用することと、植物またはその一部を成長させることとを含む方法。
31.植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するためのYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
32.キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除するためのYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
33.果実もしくは野菜植物またはその一部上において植物病原性真菌を防除するためのYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
34.Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させるためのYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
35.植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるためのYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
36.植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
37.キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
38.キウイフルーツ植物またはその一部上において植物病原性を防除することおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
39.シュードモナス属(Pseudomonas spp.)で感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
40.Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
41.植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させることおいて使用されるかまたは使用される場合のYBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物。
42.段落14~30のいずれか一項に記載の方法または段落31~35のいずれか一項に記載の使用により、YBCA5または段落2~13のいずれか一項に記載の組成物で処理された少なくとも1種の植物またはその一部。
【0300】
本発明の分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5およびYBCA5を含むかまたはそれから実質的になる組成物は、植物病原性細菌および真菌の防除における用途を見出す。
本発明の態様は、下記も包含する。
態様1
分離されたアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)酵母菌株YBCA5(CBS受理番号141880)。
態様2
YBCA5および農学的に許容可能な担体を含む組成物。
態様3
YBCA5は、生殖に適した細胞の形態で存在する、態様1または2に記載の組成物。
態様4
YBCA5生菌の濃度は、固体組成物について約1×10 ~約1×10 14 、好ましくは約1×10 ~約1×10 11 、好ましくは約1×10 ~約1×10 、好ましくは約1×10 ~約1×10 、好ましくは約2×10 ~約2×10 CFU、好ましくは約2×10 ~約2×10 10 CFU/グラムの範囲であり、かつ液体組成物について約1×10 ~約1×10 CFU/ミリリットルの範囲であり、好ましくは固体組成物について約2×10 10 CFU/グラムおよび液体組成物について約2×10 CFU/ミリリットルである、態様3に記載の組成物。
態様5
少なくとも1種の農学的に許容可能なアジュバントをさらに含む、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
態様6
植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除する方法であって、前記植物またはその一部をYBCA5または態様1~5のいずれかに記載の組成物と接触させることを含む方法。
態様7
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌の少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)、P.アミグダリア(P.amygdalia)、P.アベルラナエ(P.avellanae)、P.カリカパパヤエ(P.caricapapayae)、P.シコリイ(P.cichorii)、P.コロナファシエンス(P.coronafaciens)、P.フィクセレクタエ(P.ficuserectae)、P.ヘリアンティ(P.helianthi)、P.レミアエ(P.lemiae)、P.サバスタノイ(P.savastanoi)およびP.ビリディフラバ(P.viridiflava)もしくはその病原型またはそれらの組合せからなる群から選択される細菌の菌株であり、好ましくは、前記少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエ(P.syringae)またはその病原型であり、より好ましくは、前記少なくとも1種の菌株は、P.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)である、態様6に記載の方法。
態様8
前記植物またはその一部は、農業的に重要な蔓作物および農業的に重要な果樹ならびにその栽培品種および生産物からなる群から選択される農業的に重要な植物、その栽培品種またはその生産物であり、好ましくは、前記農業的に重要な果樹またはその栽培品種は、オリーブの樹木、リンゴの樹木、西洋ナシの樹木、柑橘類の樹木、バナナの樹木、パイナップルの樹木、モモの樹木、アンズの樹木、チェリーの樹木、クルミの樹木およびハシバミの樹木から選択され、かつ前記その生産物は、それぞれオリーブ、リンゴ、西洋ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アンズ、チェリー、クルミおよびハシバミであり、好ましくは、前記農業的に重要な蔓作物またはその栽培品種は、ジャガイモの蔓作物、ビートルートの蔓作物、マメの蔓作物、エンドウマメの蔓作物、トマトの蔓作物、キュウリの蔓作物、メロンの蔓作物、ベリーの蔓作物、ブドウの蔓作物およびキウイフルーツの蔓作物から選択され、かつ前記その生産物は、それぞれジャガイモ、ビートルート、マメ、エンドウマメ、トマト、キュウリ、メロン、ベリー、ブドウおよびキウイフルーツであり、好ましくは、前記農業的に重要な蔦作物は、キウイフルーツの蔦作物またはその栽培品種であり、かつ前記生産物は、キウイフルーツである、態様6または7に記載の方法。
態様9
前記キウイフルーツの蔦作物は、グリーンの果肉のキウイフルーツ(アクチニジア・キネンシスvar.デリキオサ(Actinidia chinensis var.deliciosa))、ゴールデンキウイフルーツ(A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、チャイニーズエッググーズベリー(A.コリアケア(A.coriacea))、ベビーキウイフルーツ(A.アルグータ(A.arguta))、アークティックキウイフルーツ(A.コロミクタ(A.kolomikta))、レッドキウイフルーツ(A.メラナンドラ(A.melanandra)、A.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis))、シルバーバイン(A.ポリガマ(A.polygama))およびパープルキウイフルーツ(A.プルプレア(A.purpurea))またはその栽培品種の種からなる群から選択され、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)およびA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)の種またはその栽培品種からなる群から選択され、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシス(A.chinensis)の種であり、好ましくは、前記キウイフルーツは、A.キネンシスvar.キネンシス・プランク(A.chinensis var.chinensis Planch)であり、好ましくは、前記栽培品種は、「Hayward」、「Hort16A」または「Hongyang」品種の栽培品種である、態様8に記載の方法。
態様10
キウイフルーツ植物またはその一部上においてP.シリンガエpv.アクチニジアエ(P.syringae pv.actinidiae)(Psa)を防除するための方法であって、前記キウイフルーツ植物またはその一部をYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物と共にA.キネンシスvar.デリキオサ(A.chinensis var.deliciosa)もしくはA.キネンシスvar.キネンシス(A.chinensis var.chinensis)またはその栽培品種の種に接触させることを含む方法。
態様11
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)によって感染されたかまたはそれに感染されやすい、好ましくはPsaに感染されたか、好ましくはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物の収量を増大させるための方法であって、前記キウイフルーツ植物またはその一部にYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物を施用することを含む方法。
態様12
植物またはその一部上において少なくとも1種の植物病原性真菌を防除する方法であって、前記植物またはその一部をYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物と接触させることを含む方法。
態様13
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実または野菜植物の収量を増大させるための方法であって、前記果実もしくは野菜植物またはその一部にYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物を施用することと、前記植物またはその一部を成長させることとを含む方法。
態様14
植物またはその一部上、好ましくはキウイフルーツ植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除するための、YBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物の使用。
態様15
果実もしくは野菜植物またはその一部上において植物病原性真菌を防除するための、YBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物の使用。
態様16
Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させるための、YBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物の使用。
態様17
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させるための、YBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物の使用。
態様18
植物またはその一部上においてシュードモナス属(Pseudomonas spp.)細菌を防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様19
キウイフルーツ植物またはその一部上においてPsaを防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様20
キウイフルーツ植物またはその一部上において植物病原性を防除することにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様21
シュードモナス属(Pseudomonas spp.)で感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様22
Psaで感染されたかまたはそれに感染されやすいキウイフルーツ植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様23
植物病原性真菌によって感染されたかまたはそれに感染されやすい果実もしくは野菜植物またはその一部の収量を増大させることにおいて使用されるかまたはそのために使用される場合のYBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物。
態様24
態様7~13のいずれかに記載の方法または態様14~17のいずれかに記載の使用により、YBCA5または態様1~6のいずれかに記載の組成物で処理された少なくとも1種の植物またはその一部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15