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特許7141391重複印字ヘッドセグメントに対するとじアーチファクトを最小化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】重複印字ヘッドセグメントに対するとじアーチファクトを最小化する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220914BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20220914BHJP
   B41J 2/155 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/205
B41J2/155
B41J2/01 451
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019521732
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017073372
(87)【国際公開番号】W WO2018077536
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】62/412,742
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ダニエル
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-103597(JP,A)
【文献】特表2016-506000(JP,A)
【文献】特開2014-213608(JP,A)
【文献】特開2006-192892(JP,A)
【文献】特開2016-112829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の幅にわたって部分的に重複した重複領域を有する少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含む印刷システムを用いて画像を印刷する方法において、
(i)前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントの前記重複領域で印刷されるべき前記画像の片を識別するステップと、
(ii)シームカービングアルゴリズムを用いて、費用関数に基づいて前記片で連続するシームを判定するステップであって、前記費用関数は、(a)前記シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)前記シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)前記重複領域における前記画像の片を前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを用いて印刷して、前記シームにわたって前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントをとじるステップと、
を含み、
前記片は、可変画像内容を含み、前記シームは、前記片内で変動位置を有し、
前記シームを、前記片に含まれる前記可変画像内容について前記印刷媒体の幅方向の1行毎の解析から判定し、各行は、前記費用関数によって判定される1つのとじ点を有し、
連続する行において連続するとじ点のセットが前記シームを形成し、各とじ点は各行において所定の位置を有しており
前記シームカービングアルゴリズムにおいて、隣接する2つの行における2つのとじ点の間の前記印刷媒体の幅方向の最大距離は、1つの画素又はドットの大きさであることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記片は、相対的に高いインク濃度の領域と相対的に低いインク濃度の領域とを含み、前記シームは、相対的に低いインク濃度の前記領域の少なくとも一部を通過する連続経路であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを、
(a)前記シームの一方の側で前記第1の重複印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて印刷すること、及び前記シームの他方の側で前記第2の重複印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて印刷するとじ技法を使用すること、により前記シームにわたってとじることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを、さらに、
(b)前記シームの何れかの側で前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて印刷するとじ技法を使用することにより、前記シームにわたってとじることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、前記とじ技法は、前記片における前記可変画像内容に依存することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記片における前記可変画像内容を前景画像及び背景画像に区分するステップを更に含み、前記(a)のとじ技法を、前記前景画像のために使用し、前記(b)のとじ技法を、前記背景画像のために使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、前記(b)のとじ技法は、前記第1または第2の重複印字ヘッドが、前記重複領域において、前記シームから他方の重複印字ヘッドの方向へ印刷インクの濃度を減少させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントは、無相関ディザーを用いて前記画像を印刷することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントは、印字ヘッドの個々の印字ヘッドチップであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントは、複数の印字ヘッドチップを各々が含む個々の印字ヘッドであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、プリンタは、n個の重複印字ヘッドセグメントの1つ又は複数のセットを含み、各セットは、n-1個の重複領域を有し、nは、2から50の整数であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記重複領域は、1mmから20mmの範囲にある幅を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記シームを、前記重複領域における画像内容を表すラスタグラフィックス画像、ベクトルグラフィックス画像又はビットマップ画像の解析から判定することを特徴とする方法。
【請求項14】
印刷媒体の幅にわたって部分的に重複した重複領域を有する少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを有するプリンタから印刷する画像を処理する方法において、
(i)前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントの前記重複領域で印刷されるべき前記画像の片を識別するステップと、
(ii)シームカービングアルゴリズムを用いて、費用関数に基づいて前記片で連続するシームを判定するステップであって、前記費用関数は、(a)前記シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)前記シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)前記重複領域における前記画像の片を前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを用いて印刷して、前記シームにわたって前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントに対する印刷データをとじるステップと、
を含み、
前記片は、可変画像内容を含み、前記シームは、前記片内で変動位置を有し、
前記シームを、前記片に含まれる前記可変画像内容について前記印刷媒体の幅方向の1行毎の解析から判定し、各行は、前記費用関数によって判定される1つのとじ点を有し、
連続する行において連続するとじ点のセットが前記シームを形成し、各とじ点は各行において所定の位置を有しており
前記シームカービングアルゴリズムにおいて、隣接する2つの行における2つのとじ点の間の印刷媒体の幅方向の最大距離は、1つの画素又はドットの大きさであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法を用いて印刷する印刷システムにおいて、
(A)印刷媒体の幅にわたって部分的に重複した重複領域を有する少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含むプリンタと、
(B)画像プロセッサであって、
(i)前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき前記画像の片を識別するステップと、
(ii)シームカービングアルゴリズムを用いて、費用関数に基づいて前記片で連続するシームを判定するステップであって、前記費用関数は、(a)前記シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)前記シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)前記重複領域における前記画像の片を前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを用いて印刷して、前記シームにわたって前記第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントに対する印刷データをとじるステップと、
を実行するように構成されている画像プロセッサと、
を含み、
前記片は、可変画像内容を含み、前記シームは、前記片内で変動位置を有し、
前記シームを、前記片に含まれる前記可変画像内容について前記印刷媒体の幅方向の1行毎の解析から判定し、各行は、前記費用関数によって判定される1つのとじ点を有し、
連続する行において連続するとじ点のセットが前記シームを形成し、各とじ点は各行において所定の位置を有しており、
前記シームカービングアルゴリズムにおいて、隣接する2つの行における2つのとじ点の間の印刷媒体の幅方向の最大距離は、1つの画素又はドットの大きさであることを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、重複印字ヘッドセグメントを有する印刷システムに関する。本発明は、重複領域におけるとじアーチファクトを最小化するために主に開発されている。
【背景技術】
【0002】
全ページ印刷では、従来の走査印字ヘッドに比べて印刷速度が劇的に増加する。多くのタイプの全ページプリンタは、重複印字ヘッドセグメントを使用して、必要な媒体幅にわたって印刷するように構成されている全ページ配列を形成する。例えば、国際公開第2011/011824号パンフレットに記載の出願人の幅広形式の全ページプリンタは、幅広形式媒体にわたって延在するA4サイズの多色印字ヘッドの交互重複配列を使用する。2016年5月2日に出願の米国仮特許出願第62/330,779号明細書に記載の出願人のモジュラー印刷システムは、単色印字ヘッド(「印刷モジュール」)の交互重複配列を各々が有する複数の単色全ページ印字バーを使用する。米国特許第8,662,636号明細書に記載の全ページプリンタなどの他の全ページプリンタは、全ページ印字ヘッドを形成する印字ヘッドチップの交互重複配列を使用する。本文脈において、用語「印字ヘッドセグメント」は、印字ヘッドチップ、及び複数の印字ヘッドチップからなる印字ヘッド(又は印刷モジュール)の両方を含む。
【0003】
重複印字ヘッドセグメントに関する問題は、対の隣接印字ヘッドセグメントをそのセグメントの重複領域でとじる必要があることである。ここで使用されるように、用語「とじ」は、画像内容を1対の重複印字ヘッドセグメントから印刷する任意の方法を意味する。どんなとじ方法を使用しても、印刷アーチファクトは一般的に、ページについた明るい又は暗い筋の形で、とじによって生じる。
【0004】
最も単純な形において、突き合わせ接合を、とじるために使用してもよく、これによって、1つの印字ヘッドセグメントは、固定とじ点の一方の側に画像内容を印刷し、隣接重複印字ヘッドセグメントは、固定とじ点の他方の側に画像内容を印刷する。試験印刷を使用して、重複領域における固定とじ点の位置を選択してもよく、これによって、好ましくない最小印刷アーチファクトが与えられる。
【0005】
とじ点を隠すより高性能の方法が、当技術分野でも記載されている。例えば、欧州特許出願公開第A-0034060号明細書には、重複印字ヘッドセグメントに対するとじ点の位置を変更する方法が記載されている。異なる印刷行で、とじアーチファクトを隠すために、とじ点をランダム又は周期的な方法で変更してもよい。
【0006】
米国特許第7331646号明細書には、重複領域における重複印字ヘッドセグメントの間で印刷を共用するとじ方法が記載されている。典型的に、専用重複ディザーに従って、印刷を、重複領域にわたって一方の印字ヘッドから他方の印字ヘッドに退色させる。このタイプのとじは、当技術分野で「フェザリング」と時々呼ばれる。
【0007】
先行技術は一般的に、とじを向上させて印刷アーチファクトを最小化するために、様々なタイプの重複ディザーに注目している。しかし、全てのとじ技法に関する問題は、重複印字ヘッドセグメントの相対位置決めは、決して正確に知られず、更に、印字ヘッド製造又は印字ヘッド交換の間に必要な精度まで制御不可能であることである。更なる問題は、互いの上部に印刷された2つのドットは典型的に、別々に2つの同じドットを単に印刷した場合よりも高い光学濃度を生成することである。従って、重複印字ヘッドからの重複ディザーは、印字ヘッドの正確な位置合わせによって予測不可能な数のドットオンドットアーチファクトを生成するので、重複領域で予測可能な光学濃度を生成することは、実質的に不可能である。従って、ドットオンドット印刷が重複領域で行われる場合、重複ディザーは、ページについた暗い筋を生成する傾向がある。驚いたことに、単純な突き合わせ接合は、より高性能のディザリング方法に関する上述の問題のために、多くのタイプの画像内容に対して最良の結果を出すことが多い。それにもかかわらず、印字ヘッドセグメントがずれる、及び/又は印字ヘッドセグメントが互いに若干回転する場合、突き合わせ接合は、満足からは程遠い。
【0008】
重複印字ヘッド及び/又は印字ヘッドチップを有する全ページプリンタの商業成長に伴って、特に多くの市場区分の印刷品質に対する顧客の感受性を考慮して、目立つとじアーチファクトを減らして全体的な印刷品質を向上させるように、とじ方法を改良することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含む印刷システムを用いて画像を印刷する方法において、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)費用関数に基づいて片で連続シームを判定するステップであって、費用関数は、(a)シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)第1及び第2の印字ヘッドセグメントを用いて画像を印刷するステップであって、シームにわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントをとじるステップを含むステップと、
を含み、
片は、可変画像内容を含み、シームは、片内で変動位置を有する
ことを特徴とする方法を提供する。
【0010】
第1の態様による方法は、有利なことに、より詳細に後述されるように、印字出力におけるとじアーチファクトを最小化する。
【0011】
好ましくは、片は、相対的に高いインク濃度の領域と相対的に低いインク濃度の領域とを含み、シームは、相対的に低いインク濃度の領域の少なくとも一部を通過する連続経路である。
【0012】
好ましくは、シームを、片に含まれる画像内容の1行毎の解析から判定し、各行は、費用関数によって判定されるとじ点を有する。
【0013】
好ましくは、費用関数は、片における隣接とじ点の間の最大閾値距離を定義するパラメータを含む。
【0014】
好ましくは、費用関数は、画像内容でエッジの方へシームを重み付けするパラメータを含む。
【0015】
好ましくは、シームを、シームカービングアルゴリズムを用いて判定する。
【0016】
好ましくは、第1及び第2の印字ヘッドセグメントを、
(a)シームの一方の側で第1の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて印刷すること、及びシームの他方の側で第2の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて印刷すること、及び
(b)重複領域にわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて印刷すること
のうち少なくとも1つから選択されるとじ技法を用いて、シームにわたってとじる。
【0017】
幾つかの実施形態において、とじ技法は、片における画像内容に依存する。
【0018】
幾つかの実施形態において、方法は、片における画像内容を前景画像及び背景画像に区分するステップを含み、とじ技法(a)を、前景画像のために使用し、とじ技法(b)を、背景画像のために使用する。
【0019】
好ましくは、とじ技法(b)は、重複領域にわたって第1の印字ヘッドセグメントから第2の印字ヘッドセグメントへの退色遷移を使用する。典型的に、とじ技法(b)は、シームにわたって専用重複ディザーを使用する。使用される重複ディザーのタイプは、片に含まれる画像内容に依存してもよい。
【0020】
第1及び第2の印字ヘッドセグメントは、印字ヘッドの個々の印字ヘッドチップであってもよい。代わりに又は更に、第1及び第2の印字ヘッドセグメントは、全ページ印字バーの重複印字ヘッド(又は印刷モジュール)などの個々の印字ヘッドである。典型的に、各印字ヘッドは、単列で突き合わせられた、又は交互重複配列で位置決めされた複数の印字ヘッドチップを含む。
【0021】
好ましくは、第1及び第2の印字ヘッドセグメントは、無相関ディザーを用いて画像を印刷する。
【0022】
典型的に、プリンタは、n個の重複印字ヘッドセグメントの1つ又は複数のセットを含み、各セットは、n-1個の重複領域を有し、nは、2から50の整数である。
【0023】
好ましくは、重複領域は、1mmから20mmの範囲にある幅を有する。最小とじアーチファクトを引き起こすシームの判定を可能にするために、より広い重複領域が一般的に好ましい。
【0024】
好ましくは、シームを、重複領域における画像内容を表すラスタグラフィックス画像、ベクトルグラフィックス画像又はビットマップ画像の解析から判定する。典型的に、印刷用の単色色チャンネル(例えば、CMYKチャンネル)への画像の区分及び中間調処理の前に、シームを判定する。しかし、中間調処理後のシームの判定は、当然、本発明の範囲内である。
【0025】
幾つかの実施形態において、シームは、重複領域の幅未満の幅を有するシーム包絡線に含まれてもよい。
【0026】
更なる態様において、重複領域を有する少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含むプリンタを用いて画像を印刷する方法において、シームにわたって第1及び第2の印字ヘッドをとじることによって画像を印刷するステップを含み、シームは、第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域に対応する画像の片内で変動連続経路に続き、片は、相対的に高いインク濃度の領域と相対的に低いインク濃度の領域とを有する可変画像内容を含み、連続経路は、相対的に低いインク濃度の領域の少なくとも一部を通過することを特徴とする方法を提供する。
【0027】
更なる態様において、少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを有するプリンタを用いて印刷する画像を処理する方法において、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)費用関数に基づいて片で連続シームを判定するステップであって、費用関数は、(a)シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)シームにわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントに対する印刷データをとじるステップと、
を含み、
片は、可変画像内容を含み、シームは、片内で変動位置を有する
ことを特徴とする方法を提供する。
【0028】
更なる態様において、画像を印刷する印刷システムにおいて、
(A)少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含むプリンタと、
(B)画像プロセッサであって、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)費用関数に基づいて片で連続シームを判定するステップであって、費用関数は、(a)シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むステップと、
(iii)シームにわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントに対する印刷データをとじるステップと、
を実行するように構成されている画像プロセッサと、
を含み、
片は、可変画像内容を含み、シームは、片内で変動位置を有する
ことを特徴とする印刷システムを提供する。
【0029】
第2の態様において、少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含む印刷システムを用いて画像を印刷する方法において、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)片に含まれる画像内容に対して前景画像及び背景画像を識別するステップと、
(iii)前景画像でシームを判定するステップと、
(iv)シームの一方の側で第1の印字ヘッドセグメントからのノズルだけ、及びシームの他方の側で第2の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて、前景画像を印刷するステップと、
(v)重複領域にわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて、背景画像を印刷するステップと、
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0030】
第2の態様による方法は、有利なことに、より詳細に後述されるように、前景画像及び背景画像を含む印刷画像におけるとじアーチファクトを最小化する。
【0031】
好ましくは、前景画像は、テキスト及び線画のうち1つ又は複数を含む。
【0032】
好ましくは、背景画像は、コントーングラフィックスを含む。
【0033】
一実施形態において、ラスタグラフィックス画像における閾値画像強度を用いて、前景画像を、背景画像から区分する。別の実施形態において、前景画像は、ベクトルグラフィックス画像に基づく。
【0034】
好ましくは、シームを、(a)片内で固定位置を有する線形シーム、及び(b)片内で変動位置を有する連続シームから選択する。
【0035】
好ましくは、シームを、片に含まれる画像内容の1行毎の解析から判定し、各行は、費用関数によって判定されるとじ点を有する。費用関数は、(a)シームに沿って印刷インクの濃度を最小化すること、及び(b)シームに沿って輝度を最大化することからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを含んでもよい。費用関数は、片における隣接とじ点の間の最大閾値距離を定義するパラメータ、及び/又は画像内容でエッジの方へシームを重み付けするパラメータを更に含んでもよい。
【0036】
好ましくは、第1の印字ヘッドセグメントから第2の印字ヘッドセグメントへの退色遷移を用いて、背景画像を印刷する。
【0037】
更なる態様において、重複領域を有する少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含むプリンタを用いて画像を印刷する方法において、画像は、前景画像及び背景画像を含み、
(i)シームの一方の側で第1の印字ヘッドセグメントからのノズルだけ、及びシームの他方の側で第2の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて、前景画像を印刷するステップと、
(ii)重複領域にわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて、背景画像を印刷するステップと、
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0038】
更なる態様において、少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを有するプリンタから印刷する画像を処理する方法において、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)片に含まれる画像内容に対して前景画像及び背景画像を識別するステップと、
(iii)片でシームを判定するステップと、
(iv)シームの一方の側で第1の印字ヘッドセグメントからのノズルだけ、及びシームの他方の側で第2の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて、前景画像を印刷するステップと、
(v)重複領域にわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて、背景画像を印刷するステップと、
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0039】
更なる態様において、画像を印刷する印刷システムにおいて、
(A)少なくとも第1及び第2の重複印字ヘッドセグメントを含むプリンタと、
(B)画像プロセッサであって、
(i)第1及び第2の印字ヘッドセグメントの重複領域で印刷されるべき画像の片を識別するステップと、
(ii)片に含まれる画像内容に対して前景画像及び背景画像を識別するステップと、
(iii)片でシームを判定するステップと、
(iv)シームの一方の側で第1の印字ヘッドセグメントからのノズルだけ、及びシームの他方の側で第2の印字ヘッドセグメントからのノズルだけを用いて、前景画像を印刷するステップと、
(v)重複領域にわたって第1及び第2の印字ヘッドセグメントの両方からのノズルを用いて、背景画像を印刷するステップと、
を実行するように構成されている画像プロセッサと、
を含むことを特徴とする印刷システムを提供する。
【0040】
ここで使用されるように、用語「輝度」は、表面から放出される光の強度を意味するために使用される。名目上、黒色は、0%の輝度を有し、白色は、100%の輝度を有する。
【0041】
ここで使用されるように、用語「シーム」は、隣接とじ点のセットを意味し、各とじ点は、印刷の各行に対して所定の位置を有する。固定とじ点のセットは、線形シームを生成するのに対して、可変隣接とじ点のセットは、ゆらぐ経路を有する連続シームを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の1つ又は複数の実施形態について、図面を参照してここで説明する。
【0043】
図1図1は、5つの重複印字ヘッドを有する印字バーを概略的に示す。
図2図2は、1つの印字ヘッドから別の印字ヘッドへ印字出力を退色させる方法を示す。
図3図3は、重複領域を有する2つの重複印字ヘッドを有するプリンタを概略的に示す。
図4図4は、とじ点を判定する非最適化方法を用いた図3に示すプリンタからの印字出力を示す。
図5図5は、とじ点を判定するシームカービング方法を用いた図3に示すプリンタからの印字出力を示す。
図6図6は、図5に示す印字出力の拡大部分を示す。
図7図7は、左側及び右側の印字ヘッドの重複領域におけるテキスト画像の一部に対するインク濃度マップである。
図8図8は、図7に示すテキスト画像のシームカービング後に左側の印字ヘッドに割り当てられた画像内容に対するインク濃度マップである。
図9図9は、図7に示すテキスト画像のシームカービング後に右側の印字ヘッドに割り当てられた画像内容に対するインク濃度マップである。
図10図10は、左側及び右側の印字ヘッドの重複領域におけるコントーン背景画像上の前景テキスト画像の一部に対するインク濃度マップである。
図11図11は、図10の前景テキスト画像に対するインク濃度マップである。
図12図12は、図10の背景コントーン画像に対するインク濃度マップである。
図13図13は、図11に示す前景テキスト画像のシームカービング後に左側の印字ヘッドに割り当てられた前景画像内容に対するインク濃度マップである。
図14図14は、図11に示す前景テキスト画像のシームカービング後に右側の印字ヘッドに割り当てられた前景画像内容に対するインク濃度マップである。
図15図15は、図12に示す背景コントーン画像に重複ディザーを適用した後に左側の印字ヘッドに割り当てられた背景画像内容に対するインク濃度マップである。
図16図16は、図12に示す背景コントーン画像に重複ディザーを適用した後に右側の印字ヘッドに割り当てられた背景画像内容に対するインク濃度マップである。
図17図17は、図13及び図15に示すインク濃度マップを結合した左側の印字ヘッドに対するインク濃度マップである。
図18図18は、図14及び図16に示すインク濃度マップを結合した右側の印字ヘッドに対するインク濃度マップである。
図19図19は、シームカービング方法を実施するのに適している印刷システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1について説明する。固定配列の5つの重複印字ヘッドセグメントを含む印字バー1を概略的に示す。各印字ヘッドセグメントは、インクの放出用のノズル(図示せず)の列を有する細長いインクジェット印字ヘッド10(例えば、A4サイズの印字ヘッド)の形をとる。図1では、5つの印字ヘッドを、左から右へ、印字ヘッド1(Printhead 1)、印字ヘッド2(Printhead 2)、印字ヘッド3(Printhead 3)などで名目上示す。図1に示す印字バー1において、多色印字ヘッドは本開示の範囲に当然あることが分かるけれども、印字ヘッド10は全て、単色印字ヘッドである。
【0045】
隣接重複印字ヘッド10は、重複領域12を有し、重複印字ヘッドの何れか一方からのノズルを使用して、重複領域に対応する画像の片を印刷することができる。これらの重複領域12において、印刷画像の不連続を回避するために、隣接印字ヘッド10をとじる必要がある。
【0046】
(「突き合わせ接合」として当技術分野で知られている)1つの先行技術とじ方法は、重複領域12で固定とじ点を単に設定し、固定とじ点の何れかの側で印刷を印字ヘッドに割り当てる。突き合わせ接合は、平文に対して適切な結果を生成することが多いけれども、コントーン画像に対して比較的悪い結果を典型的に生成する。
【0047】
図2は、重複領域12で印刷する別の先行技術とじ方法を例示する。このとじ方法において、適切な重複ディザーによって重複領域12にわたって印字ヘッド2と印字ヘッド3との間で印刷を共用する。最も単純な形において、重複ディザーは、印字ヘッド2から印字ヘッド3へ重複領域にわたって印刷を線形に退色(「フェザリング」)させる。重複領域12の中間の名目とじ点14において、印字ヘッド2及び印字ヘッド3は、略等しく印刷を共用する。図2は、重複領域にわたって線形遷移を示すけれども、異なる退色勾配などの非線形遷移を使用してもよいことが分かる。
【0048】
上述のように、このようなとじ方法は、許容できる印刷品質を必ずしも提供するとは限らない。理論に縛られることなく、本発明者は、印字ヘッド10の僅かなずれに起因する重複領域12における予測できないドットオンドット印刷は、かなりの程度まで、従来のとじ方法から観察される悪い出力の原因であると了解する。
【0049】
図2に関連した上述のとじ方法を、経験的に改良してもよい。例えば、とじアーチファクトが、ページについた明るい又は暗い筋の形で、試験印刷から特に見える場合、この情報を、適切に調整された重複ディザー及び制御器にフィードバックしてもよい。例えば、制御器は、必要に応じて、重複領域におけるドット濃度を増減するように重複ディザーを調整してもよい。
【0050】
印刷アーチファクトを検出する下流走査器を用いて、又はより通常は、ユーザによる試験印刷の主観解析から、試験印刷の印刷品質に関する情報を収集してもよい。しかし、重複ディザーを調整するこのタイプの経験的フィードバックは一般的に、十分でない。異なる画像内容は典型的に、重複ディザーの異なる最適化を必要とし、経験的ベースでのディザー最適化は、多大な時間を必要とし、個々の印刷ジョブに対して実用的でない。重複ディザーの最適化を使用したとしても、画像内容、重複ディザー及び印字ヘッドセグメントの相対位置に起因する予測できない干渉効果のために、筋は、まだ見えることがある。例えば、1つの印字ヘッド10をその隣接印字ヘッドに対して僅かに回転させた場合、モアレ干渉効果は典型的に、非常に目立つ筋を生成する。これらの本質的な干渉効果は通常、重複ディザーにおけるドット濃度を単に調整することによって、除去不可能である。
【0051】
必要なことは、重複印字ヘッドセグメントをとじる技法であり、この技法は、ずれ印字ヘッドセグメントに対処するのに十分頑強であり、試験印刷からの経験的フィードバックを当てにしなく、任意の印刷画像に対して最適化される。
【0052】
驚いたことに、本発明者は、「シームカービング」として当技術分野で知られているデジタルサイズ変更画像のために使用される技法が、重複印字ヘッドセグメントをとじる際に優れた結果を出すのに修正可能であると分かっている。シームカービングの技法は、Shai Avidan、Ariel Shamir、Seam carving for content-aware image resizing、ACM Transactions on Graphics(TOG)、v.26 n.3、July 2007に詳述されており、その内容を参照により本明細書に引用したものとする。簡単には、シームカービング技法は、画像エネルギー関数などの費用関数に基づいて、上部から下部へ又は左から右へ、画像にわたって画素(「シーム」)の連続経路を生成する。従って、画像のサイズ変更は、サイズ変更すべき画像を単に切り取るのではなく、内容を意識している。例えば、画像のアスペクト比を変更するために、シームカービング技法は、周囲と調和する比較的目立たない画素の連続シームを識別する。画像のより視覚的に重要な成分を保存しながら、これらのいわゆる低エネルギーシームを、原画像で切り出して又は複製して、そのアスペクト比を変更してもよい。画像処理の当業者は、シームカービングで使用される様々なアルゴリズムを容易に知っている。
【0053】
ここに記載の方法において、シームカービングを使用して、重複領域12によって印刷された画像の片の範囲内で連続シームにおけるとじ点のセットを判定する。印刷の各行に対する特定のとじ点の位置は、印刷インクの濃度を最小化する、及び/又は輝度を最大化する第1の要件に基づく。しかし、印刷の隣接行に対して重複領域12の各側を飛び越えるとじ点を回避するために、第2の要件は、片に沿って連続シーム又は経路を形成するように連続とじ点が隣接するべきであることである。
【0054】
有利なことに、第1の要件は、内容依存のとじ点を生成することによって、重複領域におけるドットオンドット印刷の確率を最小化する。しかし、連続とじ点が重複領域を飛び越えるのを可能にする場合、画像の高濃度部分を交互に印刷する隣接印字ヘッドによって、目に見える印刷アーチファクトがまだ生じることがある。図4は、最小インク濃度にだけ基づいてとじ点を選択し、連続とじ点が制限なく飛び越えるのを可能にする技法を用いた(図3に概略的に示す)2つの重複印字ヘッド10を有する印字バーからのサンプル印字出力を示す。突き合わせ接合によって重複印字ヘッドをとじ、これによって、各とじ点の左側における画像内容を左側の印字ヘッドに割り当て、各とじ点の右側における画像内容を右側の印字ヘッドに割り当てる。
【0055】
その結果は、悪い品質出力であり、テキスト領域で特に明白である。例えば、大活字語「oLive」の文字「v」において、連続とじ点を文字の右側から左側へ再度戻って切り換えることによって、とじアーチファクトを引き起こす。従って、画像における最小インク濃度に基づくとじ点の選択は、とじアーチファクトを隠す実行可能な方法であるように見えるけれども、図4に示す結果は、明らかに満足のいかない結果である。
【0056】
図5では、重複領域12によって印刷された片に連続シームの追加要件を課すシームカービングアルゴリズムを使用する。ここで、結果は、図4に示す結果よりも大幅に向上する。シームカービングアルゴリズムは、複数の隣接とじ点からなる連続シーム15を定義し、連続シーム15は、個々のテキスト文字の間及び周りの経路で蛇行している(図6参照)。このようにして、高濃度領域(例えば、テキスト文字)の印刷を、2つの印字ヘッドの間で交互に行うことはできないけれども、その代わりに、一方の印字ヘッド又は他方の印字ヘッドに割り当てる。従って、図4で明らかに見えるとじアーチファクトは、実質的に除去されており、更に、個々のとじ点は一般的に、とじ点にわたってドットオンドット印刷の確率を最小化するように、相対的に低い濃度領域に残っている。当然、シーム15は、単に例示を目的として図5及び図6に示されており、実際の印字出力の一部ではない。
【0057】
図5に示す連続シーム15を生成するために、1行毎に重複領域に対する入力画像を処理する2つのパス手続きを使用した。任意の特定のパスにおいて、行r及び列cを有する入力画像画素x[r、c]を、次式に従って出力画素y[r、c]に変換する。
y[r、c]=x[r、c]+min{y[r-1、c-1]、y[r-1、c]、y[r-1、c+1]}
但し、y[r-1、c-1]は、現在画素の左への1つの画素及び事前処理行からの出力画素であり、y[r-1、c]は、現在画素の真上の事前処理行からの出力画素であり、y[r-1、c+1]は、現在画素の右への1つの画素及び事前処理行からの出力画素である。
【0058】
上部から下部に作業すると、最終行における出力画素y[r、c]は、画像を横切る画像を通る連続経路に対応する。従って、画像を通るシーム又は経路としてこの画素から開始して、最小値を有するy[r-1、c-1]、y[r-1、c]又はy[r-1、c+1]から選択された画素を、シームに追加する。次に、画像の上部に到達して、画像を通る完全な連続シームができるまで、同じ基準を用いて画素を追加することによって、シームを反復的に延長する。
【0059】
1つの単純なシームカービングアルゴリズムを上述しているけれども、必要に応じてシームカービングアルゴリズムを修正してもよいことが分かる。例えば、多数の異なるシームを生成してもよく、1つ又は複数の追加パラメータに基づいて、最適シームを選択してもよい。例えば、ある種の画像内容に対して最低平均インク濃度を有するシームを選択することが望ましい。他の画像内容に対して、高いインク濃度を有する最低数の隣接とじ点を有するシームを選択することが望ましい。典型的に、シームが画像内容でエッジに続く場合、見えにくいとじを達成する。従って、シームカービングアルゴリズムは、エッジ(例えば、テキスト、ボックス、線などのエッジ)の方へシームを重み付けするパラメータを含んでもよい。最適シームを選択するこれら及び他の基準は、当業者に容易に明らかであろう。
【0060】
上述のシームカービングアルゴリズムにおいて、隣接とじ点の間の最大許容水平距離を、デジタル画像の1つの画素に設定する。これにより、シームの滑らかな連続経路が保証される。しかし、隣接とじ点の間の最大距離を、代わりに、シームカービングを画像処理パイプラインでいつ実行するかによってデジタル画素位置と異なる印刷ドット位置によって定義してもよい。更に、シームが連続的であるという条件で、隣接とじ点の間の最大距離を、画像内容、印刷速度、印刷解像度などによって変更してもよい。例えば、シームカービングアルゴリズムは、隣接とじ点の間の1、2、3、4又は5水平画素又はドット位置の距離を可能にする。典型的に、シームカービングを、印刷画像と同じ解像度でデジタルビットマップ画像で実行する。従って、デジタル画素位置は、印刷ドット位置に対応する。
【0061】
上述から、特定の印刷ジョブに対してとじを最適化するために、任意の適切な費用関数によって、シームカービングアルゴリズムを重み付けしてもよいことが分かる。
【0062】
典型的に、シームカービングを、事前にラスタグラフィックス画像で実行する。ラスタグラフィックス画像を、CMYK、RGB又はLab色空間などの任意の適切な色空間で表してもよい。印刷インク濃度を最小化することにシームカービングが基づく場合、CMYK及びRGB色空間を使用して、画像を表してもよい。しかし、シームに沿って輝度を最大化することによって、最適シームカービング結果を達成してもよく、この場合、Lab色空間で表される画像のシームカービングがより適切である。人間の眼は、例えば、黄色よりもマゼンタ色に対してより敏感であるので、輝度の最大化は典型的に、優れた結果を出す。換言すれば、画像の黄色領域は人間の眼に見えにくいので、画像の黄色領域が相対的に高いインク濃度を有しても、シームカービングアルゴリズムは、画像の黄色領域の方へシームを重み付けしてもよい。一実施形態において、シームカービングのために、画像を、RGB又はCMYK色空間からLab空間に変換してから、シームが定義された後に更に画像処理するために、CMYK色空間に戻って変換してもよい。
【0063】
代わりに、シームカービングを、単色中間調画像で別々に実行して、別々にプリンタの各色チャンネルに適用してもよい。例えば、プリンタは、複数の整列単色印字バー(例えば、CMYK)を含んでもよい。各中間調ビットマップ画像の場合、シームカービングアルゴリズムを使用して、各単色印字バーで各重複対の印字ヘッドに対するシームを判定してもよい。従って、異なる印字バーは、画像内容によって対応する重複領域に対して異なるシームを使用してもよい。この場合、インク濃度を最小化し、輝度を最大化するパラメータは、同じものである。
【0064】
適切なシームカービングアルゴリズムを用いて、画像を通るシームの経路を判定すると、シームにわたって重複印字ヘッドセグメントをとじる方法は、特に限定されない。例えば、突き合わせ接合を使用して、シームにわたってとじてもよく、これによって、1つの印字ヘッドを割り当てて、全画像内容をシームの左に印刷し、別の印字ヘッドを割り当てて、全画像内容をシームの右に印刷する。突き合わせ接合は、重複領域で異なる明暗領域(例えば、平文、線画など)を有する画像を印刷するのに適している。
【0065】
コントーン画像を印刷する場合、より高性能のとじ技法が適している。例えば、重複ディザーを使用して、1つの印字ヘッドから重複隣接印字ヘッドへ印刷を退色させてもよい。典型的に、各とじ点は、一方の側から他方の側へ退色するとじ点の何れかの側で同数のノズルを有する重複ディザーの中間点を定義する。幾つかの実施形態において、画像内容によって、突き合わせ接合及び重複ディザーの組み合わせを使用してもよい。同様に、異なる色チャンネルは、画像内容によって、異なるとじ技法を使用してもよい。幾つかの実施形態において、画像の試験印字出力からの経験的フィードバックを用いて、重複ディザーを最適化してもよい。
【0066】
シームカービング方法を重複領域の任意の幅に適用してもよいけれども、最小とじアーチファクトを有するシームを定義する確率をより高くするために、相対的に広い重複領域が一般的に好ましいことが分かる。重複ディザーを使用して1つの印字ヘッドから別の印字ヘッドへ退色する場合、シームを含む包絡線の幅は、重複領域12の幅未満に制限されることが好ましい。従って、重複領域12の先端における幾つかのノズルを確保して、各とじ点にわたって重複ディザーを可能にする。
【0067】
図7図9は、第1の実施形態による、白色背景上の平文に対して画像処理を実行する方法を示す。図7では、重複領域12における画像内容をインク濃度マップとして表す。インク濃度は、白色領域でゼロであり、テキストを含む領域で最大まで急上昇する。平面12A及び12Bは、重複領域12の左右の限界を表すと共に、平面16は、重複領域の名目中間点である。平面16は、重複印字ヘッドをとじる典型的な先行技術固定シームを表す。
【0068】
図7について更に説明する。連続シーム15は、上述のシームカービングアルゴリズムに従って、高いインク濃度インクの領域の間で蛇行する。シーム15は、何れかの側に山を有する谷の最下点をゆらいでいる河床に似ている。
【0069】
図8及び図9に示すように、単純な突き合わせ接合を用いて、2つの重複印字ヘッドをシーム15にわたってとじる。換言すれば、図8に示す画像を左側の印字ヘッドに割り当てる一方、図9に示す画像を右側の印字ヘッドに割り当てる。
【0070】
図10図18は、第2の実施形態による、コントーン背景画像上の平文に対して画像処理を実行する方法を示す。この例において、コントーン背景画像は、テキストを含む領域で最高インク濃度を有する約35%のインク濃度における単純な普通灰色背景である。しかし、コントーン背景画像は、例えば、写真又は他のコントーン画像であってもよい。従って、第2の実施形態による方法は、例えば、コントーングラフィックス上でテキストを含むラベル、パンフレットなどを印刷するのに適していることが分かる。
【0071】
第1のステップで、図10に示す画像内容を、前景画像(図11)及び背景画像(図12)に区分する。当技術分野で既知の任意の適切な方法を用いて、前景画像及び背景画像の区分を実行してもよい。例えば、図10における画像がラスタグラフィックス画像である場合、例えば、所定のインク濃度閾値を超える(又は所定の輝度閾値未満の)全画像内容を選択することによって、前景画像を区分してもよい。例えば、図10におけるテキストがベクトルグラフィックス(例えば、Postscript(商標))に基づく場合、前景画像を容易に判定することができる。前景画像及び背景画像を区分する他のより高性能の方法は、当業者に既知であろう。
【0072】
テキストを含む前景画像を識別すると、図7図9に関連して説明されたものと同じ方法で、前景画像を処理する。従って、シームカービングアルゴリズムを用いて、シーム15を定義し、図13に示す前景画像を左側の印字ヘッドに割り当てる一方、図14に示す前景画像を右側の印字ヘッドに割り当てる(代替の実施形態において、例えば処理要件を最小化するのが望ましい場合、前景画像で定義されるシームは、固定とじ点のセットを含む単純な線形シームであってもよい)。
【0073】
ここで、図15及び図16について説明する。前景画像とは違って、背景画像を処理する。適切な重複ディザーを用いて、2つの印字ヘッド間でフェザリングすることによって、コントーン画像を、より最適に印刷する。従って、図15において、左側の印字ヘッドは、重複領域にわたって右側の印字ヘッドの方へ印刷を退色させる。同様に、図16において、右側の印字ヘッドは、重複領域にわたって左側の印字ヘッドの方へ印刷を退色させる。
【0074】
前景画像及び背景画像の結合結果を図17及び図18に示す。図17において、シームの左側における全前景テキストを、左側の印字ヘッドに割り当てる。しかし、左側の印字ヘッドは、背景コントーン画像に対して重複領域にわたって右側の印字ヘッドの方へ更に退色させる。同様に、図18において、シームの右側における全前景テキストを、右側の印字ヘッドに割り当てる。しかし、右側の印字ヘッドは、背景コントーン画像に対して重複領域にわたって左側の印字ヘッドの方へ更に退色させる。このようにして、印字ヘッドの任意の物理的なずれに関係なく、及びテキスト及び/又はコントーングラフィックスが印刷されているかどうかに関係なく、非常に最適化されたとじ結果が達成可能であることが分かる。
【0075】
典型的に、画像処理パイプラインにおけるプリンタの上流のラスタ画像プロセッサ(RIP)などの画像処理ハードウェアで、シームカービングを実行する。図19は、プリンタ2の複数の単色印字バー1に印刷データを送出するRIP20を有する印刷システム3を概略的に示す。図19に示す各印字バー10は、図1に示すような重複印字ヘッド10を含む。
【0076】
RIP20は、当技術分野で周知のように、画像データを受信し、プリンタ2の各色チャンネルに対して中間調ビットマップを生成する。更に、RIPは、ここに記載のようなシームカービングを実行して、重複領域12における印刷の各行に対してとじ点を判定する。適切なとじ技法(例えば、突き合わせ接合、重複ディザーなど)及びシームカービングから判定されたとじ点に従って、印刷データを、各印字バー1の各印字ヘッド10に割り当てる。各色チャンネルに対してRIP20によって生成された印刷データを、印刷用の印字バー1に供給する。典型的に、1つ又は複数の介在プロセッサによって画像を印刷する前に、印刷データの追加処理(例えば、不動作ノズル補償、乾燥無用吐出など)を実行する。更に、監視制御器は、各印字バー1と通信して、タイミングなどを制御する。様々な画像処理及び印刷システムアーキテクチャは、当業者に周知であり、ここに記載の方法は、任意の特定のタイプのアーキテクチャに限定されない。
【0077】
ここに記載の方法の利点は、シームカービングの追加処理要件が、典型的なRIPに容易に適応でき、同じ画像の繰り返し印字出力を含む印刷実行に特に適していることである。デジタルインクジェット印刷機の成長に伴って、ここに記載のとじ技法は、印刷速度を落とすことなく印刷品質を向上させる強力なツールを提供することが分かる。
【0078】
本発明の幾つかの実施形態を上述しているだけであり、本発明の範囲から逸脱することなく、詳細の変更を行うことができ、実施形態は、例示的であり、限定的でない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19