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7141392体液中の分析物濃度の判定のための方法および分析物濃度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】体液中の分析物濃度の判定のための方法および分析物濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20220914BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N33/66 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019522266
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2017077137
(87)【国際公開番号】W WO2018077863
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】16195524.0
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒュレン、フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ベルク、マックス
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527591(JP,A)
【文献】特開2007-206078(JP,A)
【文献】特開平09-167952(JP,A)
【文献】特開2014-075690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0144048(US,A1)
【文献】国際公開第02/070734(WO,A1)
【文献】特開2015-198689(JP,A)
【文献】特表2016-502088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
G01N 33/00-G01N 33/98
G01N 35/00-G01N 37/00
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の分析物濃度の判定のための方法であって、
a)携帯型のメータ(12)内の塗布部位に使い捨ての試験エレメント(20)を提供するステップと、
b)ユーザの身体部分(32)から採取した体液を前記試験エレメント(20)の反応領域上に塗布するステップと、
c)前記メータ(12)の検出ユニット(22)により、前記試験エレメント(20)の前記反応領域から一連の測定値を検出し、少なくとも部分的に一連の測定値から前記分析物濃度を判定するステップと、
d)前記試験エレメント(20)の前記反応領域に近位の監視空間(36)内で、前記身体部分(32)の存在を感知するために、前記メータ(12)内に配置される近接センサ(28)を使用するステップと、
e)前記身体部分(32)の存在により引き起こされる、前記分析物濃度の判定におけるバイアスを回避するために、前記近接センサ(28)の出力信号に応じて、前記測定値の処理を制御するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記検出ユニット(22)が、光度検出ユニットである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記監視空間(36)内における前記身体部分(32)の存在が感知されると、警告が前記ユーザに提供される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記監視空間(36)内における前記身体部分(32)の存在が観察されると、測定値の検出が中止される、および/またはエラーメッセージが前記メータ(12)により提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記監視空間(36)内における前記身体部分(32)の存在の時間間隔を測定するステップと、所定の長さの時間間隔の後に、測定値の検出を中止する、および/またはエラーメッセージを前記ユーザに提供するステップとをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
体液による前記試験エレメント(20)の濡れが検出され、前記濡れの検出の時点にて前記時間間隔の測定が開始される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記時間間隔の長さは、0.5~2秒の範囲である、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
測定値の検出は、前記身体部分(32)が前記監視空間(36)内に存在しない場合にのみ完結される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記近接センサ(28)の前記出力信号は、前記測定値の処理の間の、前記メータ(12)のプロセッサユニット(24)のための入力として利用可能にされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記近接センサ(28)の前記出力信号は、前記測定値の検出の間の少なくとも2つの異なる期間中に異なって処理される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記監視空間(36)が、少なくとも1×1×5mmの寸法の直方体を含み、前記直方体の長辺が前記試験エレメント(20)の表面に対し垂直であるように、前記近接センサ(28)を構成するステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記監視空間(36)が、少なくとも3×3×10mmの寸法の直方体を含み、前記直方体の長辺が前記試験エレメント(20)の表面に対し垂直であるように、前記近接センサ(28)を構成するステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記近接センサ(28)の前記出力信号は、前記監視空間(36)内における前記身体部分(32)の存在または不存在のみを示すデジタル値として提供される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
測定値の検出は、体液の塗布前の、前記試験エレメント(20)に対するブランク値を測定するための初期測定段階、前記測定値の展開を追跡するための中間測定段階、および前記分析物の量に特有の終値を判定するための最終測定段階を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
移送テープ上の前記試験エレメント(20)を、試料塗布部位としての偏向先端部(16)上に移送するステップと、前記近接センサ(28)を前記偏向先端部(16)に隣接して、または極めて近位に配置するステップとをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記体液は、前記試験エレメント(20)の自由にアクセス可能な塗布面に塗布され、前記測定値は、前記塗布面の反対の、前記試験エレメント(20)の背面を走査することによって検出される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
分析物濃度測定装置であって、
ユーザの身体部分(32)から体液を塗布するために、反応領域を有する使い捨ての試験エレメント(20)を塗布部位に提供するように適合される携帯型のメータ(12)と、
前記試験エレメント(20)の前記反応領域から測定値を検出するために動作可能である検出ユニット(22)と、
前記試験エレメント(20)の前記反応領域に近位の監視空間(36)内における前記身体部分(32)の存在を感知するために前記メータ(12)内に配置される近接センサ(28)と、を備え、
前記メータ(12)のプロセッサユニット(24)は、
i)前記分析物濃度を判定するために前記測定値を処理する、および
ii)前記身体部分(32)の存在により引き起こされる、前記分析物濃度の前記判定におけるバイアスを回避するために、前記近接センサ(28)の出力信号に応じて前記測定値を処理する
ように構成される、
分析物濃度測定装置。
【請求項18】
前記分析物濃度測定装置が、血糖判定のためのものである、請求項17記載の分析物濃度測定装置。
【請求項19】
前記検出ユニット(22)が、光度検出ユニットである、請求項17または18記載の分析物濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液中の分析物濃度の判定のための方法に関する。本発明はさらに、分析物濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血糖試験の分野において、複数の連続した試験のための複数の試験エレメントを備える携帯型のグルコースメータを提供することが知られている。具体的には、試験エレメントは、交換可能なテープカセットの形態でメータ内に装填可能であるテストテープ上の化学フィールドとして提供することができる。したがって、ユーザは、試験エレメントごとの処分に注意を払う必要がない。しかし、器具は、一般的に、患者によって検査室環境の外部で使用されるため、測定は、ユーザによる意図しない操作の影響を受けやすい可能性がある。ユーザによる操作状況の極端な例では、著しい測定偏差が起こり得る。
【0003】
特許文献1より、体液試料中のグルコースの判定において、テストストリップと共に使用される携帯型のテストメータを提供することが知られている。バッテリ電力を節約するために、近接センサモジュールは、メータをスタンバイモードから起動モードに切り替えるために、ユーザの身体の存在を検出するように構成される。
【0004】
特許文献2は、穿刺および血液採取操作が高い信頼性で成功するように、ユーザの身体部分がハウジング開口部内で必要分だけ突出するかどうかを判定するために、近接センサを使用することを提案している。この文献は、試料の操作および処理が、ハウジング内で完全に自動化されて実行されるので、最終的な測定手順の間の器具の操作には関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/173417号
【文献】米国特許出願公開第2015/0238131号明細書
【発明の概要】
【0006】
これを基礎として、本発明の目的は、データ取得段階または検出段階中に、ユーザによる制御された操作によって、測定結果の正確性および精度を高めるために、既知の測定方法およびシステムをさらに改善することである。
【0007】
独立請求項に記載される特徴の組み合わせが、この目的を達成するために提案される。本発明の有利な実施形態およびさらなる発展が従属請求項から得られる。
【0008】
本発明は、身体部分の存在により測定が歪むことを防止するという着想に基づく。したがって、分析物および特に体液中のグルコースの判定のための方法が、本発明により提案され、方法は、
-携帯型のメータ内の塗布部位に使い捨ての試験エレメントを提供するステップと、
-体液をユーザの身体部分に提供し、体液を試験エレメントの反応領域上に塗布するステップと、
-好ましくはメータの光度検出ユニットにより、試験エレメントの反応領域から一連の測定値を検出し、少なくとも部分的に一連の測定値から分析物濃度を判定するステップと、
-試験エレメントの反応領域に近位の監視空間内で、身体部分の存在を感知するために、メータ内に配置される近接センサを使用するステップと、
-身体部分の存在により引き起こされる、分析物濃度の判定におけるバイアスを回避するために、近接センサの出力信号に応じて、測定値の処理を制御するステップと、
を含む。
なお、これらのステップは、必ずしも厳密な時系列で実行される必要はない。たとえば、検出ユニットの信号、および近接センサの信号は、並列に処理されてもよい。もちろん、これらの測定は、ユーザが不利な影響を測定に及ぼさないことが明らかである、ユーザの身体部分の不存在が検出される間に、定期的なデータ処理を提供する。他方では、ユーザの身体が近位に検出される場合、可能である対抗策により、意図されない使用から保護し、最終的には、正確な試験結果を確保するか、または試験結果を破棄することが可能になる。適切なフェードバックをユーザに提供することも可能である。本発明は、ユーザ自身が、身体部分、具体的には指の前後運動で試料を塗布しなければならない場合、および意図しない長期間の存在が、装置の光学測定路に干渉する場合に特に有用である。
【0009】
有利には、監視空間内における身体部分の存在が感知されると、警告がユーザに提供される。そのような警告は、ユーザによる操作の最適化に寄与する。
【0010】
より強力な対抗策として、監視空間内における長期間の身体部分の存在が観察される場合、測定値の検出が中止される、および/またはエラーメッセージがメータにより提供されることも有利である。
【0011】
この方向における別の改善により、監視空間内における身体部分の存在の時間間隔を測定するステップと、所定の長さの時間間隔後に、測定値の検出を中止する、および/またはエラーメッセージをユーザに提供するステップとが提供される。
【0012】
特定の試料の塗布手順を説明するために、体液による試験エレメントの濡れが検出され、濡れの検出の時点にて時間間隔の測定が開始される。
【0013】
好ましくは、時間間隔の長さは、0.5~2秒の範囲である。
【0014】
意図される使用法を説明するために、測定値の検出は、身体部分が監視空間内に存在しない場合にのみ完結される。
【0015】
測定過程における可能な即座の介入のために、近接センサの出力信号が、測定値の処理の間の、メータのプロセッサユニットのための入力として利用可能にされる場合も有利となる。
【0016】
近接センサの出力信号が、少なくとも2つの異なる測定段階の間に異なって処理される場合、より有利である。このようにして、近接センサの実装により、複数の利益が達成され得る。
【0017】
問題となる近接性の特定の識別のために、監視空間が、少なくとも1×1×5mm、好ましくは、少なくとも3×3×10mmの寸法の直方体を含み、直方体の長辺が試験エレメントの表面に対し垂直であるように、近接センサを構成することは有利である。
【0018】
好ましくは、近接センサの出力信号は、監視空間内における身体部分の存在または不存在のみを示すデジタル値として提供される。
【0019】
好ましい実施によると、測定値の検出は、体液の塗布前の、試験エレメントに対するブランク値を測定するための初期測定段階、測定値の展開を追跡するための中間測定段階、および分析物の量に特有の終値を判定するための最終測定段階を含む。
【0020】
この点についてのさらなる改善は、移送テープ上の試験エレメントを、試料塗布部位としての偏向先端部上に移送するステップと、近接センサを偏向先端部に隣接して、または極めて近位に配置するステップとを含む。
【0021】
さらなる改善は、体液が、試験エレメントの自由にアクセス可能な塗布面に塗布され、測定値が、塗布面の反対の、試験エレメントの背面を走査することによって検出されることをもたらす。
【0022】
本発明のもう一つの態様は、
特に血糖判定のための、分析物濃度測定装置であって、
ユーザの身体部分から体液を塗布するために、反応領域を有する使い捨ての試験エレメントを塗布部位に提供するように適合される携帯型のメータと、
好ましくは、試験エレメントの反応領域上で、または試験エレメントの反応領域から測定値を検出するために動作可能である光度検出ユニットと、
試験エレメントの反応領域に近位の監視空間内における身体部分の存在を感知するためにメータ内に配置される近接センサと、を備え、
メータのプロセッサユニットは、
i)分析物濃度を判定するために測定値を処理する、および
ii)身体部分の存在により引き起こされる、分析物濃度の判定におけるバイアスを回避するために、近接センサの出力信号に応じて測定値を処理する、
ように構成される、
分析物濃度測定装置に関する。
そのような装置は、上で概要を示した同じ利点を達成する本発明の方法を実行することを可能にする。
【0023】
以下では、本発明を、図面にて概略的に示される実施形態の例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】テストテープカセットを使用するように構成される携帯型の血糖メータを含む試験システムを示す。
図2】メータ、および試験エレメントの近位にあるユーザの指を示す拡大部分図である。
図3】近接センサ信号を含む測定過程の時間ダイアグラムである。
図4】ブランク値測定段階中の信号処理ルーチンのフローチャートである。
図5】動的測定段階中の信号読み取りルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面にて、体液中の分析物、具体的には血液試料中のグルコースを試験するための医療用分析物試験システムの例示的な実施形態を示す。
【0026】
図1に示すように、システム10は、少なくとも、使い捨てのテストテープカセット14(別個に示す)を受容するように適合される携帯用の血糖メータ12を備え、テープカセット14は、メータ12の一区画に挿入され得る。挿入されたテープカセット14の先端部16は、先端部カバー18を開けた際に、ユーザによりアクセス可能となる。テープカセット14は、複数の試験エレメント20が先端部16上で連続的に使用するために巻き取り可能な移送テープ上に設けられて、試験用マガジンとして機能する。
【0027】
携帯型メータ12には、光度測定ユニット22、および測定された値から分析物の濃度を判定するためのプロセッサユニット24(電子マイクロプロセッサ)が設けられる。測定結果および他の情報は、ディスプレイ26上にて、ユーザに表示され得る。メータ12には、重要な測定段階中に身体部分の存在を検出し、それによってユーザによる操作を制御することを可能にするために、近接センサ28がさらに設けられる。任意として、血液の採取のために身体部分の穿刺を単純化するための穿刺補助部30が、メータ12に取り付けられる。
【0028】
図2は、システム10の、挿入されたテープカセット14の先端部16を横断する部分断面図で、操作状況を図示する。分析物試験を実行するために、ユーザは、指32から血液の滴を、先端部16上に設けられる有効試験エレメント20の上面に塗布する。試験エレメント20は、移送テープ34上で、分析物に色の変化で反応する層状の化学フィールドにより形成される。そして、反射率計として設けられる測定ユニット22は、試験エレメント20の後側を、透明な移送テープ34を通して光学走査することによって分析物濃度の測定を可能にする。
【0029】
しかし、測定は、不完全に不透明な化学フィールドの背後で暗い背景として反射率計に映る指32の存在により、バイアスがかかる可能性がある。重要な試験フィールド領域までの距離の減少とともに、この影響は大きくなる。別の不利なユーザの操作状況では、試料の塗布後に試験エレメント20に対し指の圧迫が続くと、特に、試料の拡散のために設けられる被覆ネットが、化学フィールド内に押し付けられ、それによって光学測定が損なわれる場合、層状試験構造の望ましくない修正が生じる可能性がある。
【0030】
したがって、近接センサ28は、試験エレメント20に近位の監視空間36内における身体部分の存在を感知するように構成される。合目的に、近接センサ28は、先端部16に隣接するテープ34に対し横方向に設置される。
【0031】
近接センサ28により監視される好ましい立体角は、可能な限り制限されるべきである。センサが、特定の検出領域、特に、たとえばテーブルなど任意の支持表面の外部にある物体を検出しないことを確実にするべきである。理想的には、監視空間36は、約3×3×10mmの寸法の直方体を含むべきであり、その直方体の長辺が、試験エレメント20の上面に対し垂直である、さらに、光学分析物測定ユニット22は、近接センサ28によって妨害されるべきではない。
【0032】
さらなる設計上の考慮事項としては、近接センサ28は、以下の場合だけを示すデジタル信号を伝達するべきである。
(0)偽-物体の検出なし
(1)真-既定の空間内で物体が検出
この信号は、動作中、プロセッサユニット24の測定ルーチンのための入力として利用可能であるべきである。
【0033】
近接センサ28は、任意の種類の物体を検出することが可能である一種の測光センサとして形成されてもよい。作動原理は、分析物測定ユニットのものと類似であってもよい。ある程度変調された光が光源(LED)により送出される。任意の反射光が光検出器により収集される。反射光の量に応じて、アナログ信号が生成される。設定される閾値によって、物体の不存在と存在とのデジタル式の識別がなされる。
【0034】
近接検出のために、物体の存在または不存在を検出するための他のセンサの種類、すなわち、誘導性センサ、静電容量センサおよび超音波センサもある。
【0035】
図3に図示するように、測定過程は、さまざまな測定段階に分割されてもよい。時間ダイアグラムは、測定ユニット22の主光源(記号x)および少なくとも1つの補助光源(記号o)を使用することによって提供される、試験エレメントに対する測定値を示す。初期測定段階(段階I)にて、試料の塗布前の使用前の試験エレメント20に対する二重測定として、ブランク値が検出される。その後に、補助光源が、濡れ検出を可能にするために、好ましくは異なる波長で電力供給される。続く段階IIにおいて、連続する測定値が、ユーザが試料を塗布することによる試験エレメント20の濡れを認識することを可能にするために、たとえば5Hzである、所与のサンプリング速度で記録される。そのような濡れにより、信号が所定の検出閾値よりも下に減少することが引き起こされる。しかし、最初の数秒間は、膨張および拡散過程の結果、試験エレメント20の反応性化学層の信頼できる挙動が存在しない。したがって、所定の待機時間が段階IIIにおいて観察されるべきである。
【0036】
そして、段階IVにて、分析物が存在することによる化学反応を追跡することができ、段階IVでは、反応生成物が、さらなる暗化の増大、そしてそれによる反射光の減少を引き起こす。動的曲線は、複数の測定値の読み取り後に所与の停止基準に達するような漸近挙動を示す。最後に、段階Vにて、終値が記録され、最終的に、試料の塗布の十分性についての制御測定が続く。測定結果として、分析物濃度値は、ブランク値に対する終値の比率から判定される。他のすべての測定値は、この結果を見出すための補助に過ぎない。
【0037】
図3は、また、意図される使用法、すなわち待ち時間後に身体部分32が存在しない場合(段階IIIに示す破線矢印と関連する上側の曲線)との、および意図されない使用法、すなわち身体部分32が存在する場合(下側の動的曲線および段階IIIに示す実線矢印)との比較測定を示す。それに関連して、近接センサ28のデジタル出力信号が、破線および実線で以下に示される。試料の塗布後に身体部分が存在することで、バックグラウンドの緩和(remission)の減少をもたらし、それによって測定結果に著しい干渉を及ぼすことが容易に明らかになる。
【0038】
メータ12にて近接センサ28により取得される情報は、さまざまな測定段階中に異なって処理される。可能であれば、以下においてより詳細に説明するように、適切な(視覚的、聴覚的および/または触覚的な)フィードバックがユーザに提供される。
【0039】
図4は、ブランク値を測定するときの段階Iにおける処理ユニット24の信号処理ルーチンのフローチャートを示す。近接センサにより物体(指)が検出されない場合、ブランク値は、測定ユニット22のバイアスなしで判定することができる。物体が試験エレメント20の近位にある他の場合では、信頼性のあるブランク値は判定することができず、ユーザへのフィードバックとしてエラーメッセージが表示される。
【0040】
図5は、段階IIIにて処理ユニット24内で動作する信号処理ルーチン(測定エンジン)の別の動作原理を示す。ここでは、物体(身体部分)が監視空間に存在しない場合に、動的曲線の追跡が達成される。この段階では、身体部分の存在は、濡れ検出からの所与の経過時間の間、許容されてもよい。この期間内で、ユーザは、有効試験エレメント20を廃棄する必要がないように、指を取り除くよう警告され得る。その後に、エラーメッセージが表示され、測定は中止される。
【0041】
上記の説明から明白であるように、近接センサ28の出力信号および測定ユニット22の測定値の両方が、順次処理または並列処理のために、処理ユニット24に供給されなければならない。さらに、処理ユニット24は、近接信号の持続時間の評価のために構成されなければならない。
【0042】
ユーザによるメータ12の操作の際の他の監視タスクのために近接センサ28を使用することもまた考えられる。たとえば、段階IIにおける信号降下に加えて、近接信号の評価により、血液塗布の第2の確認が取得されてもよい。これは、デジタル近接信号を、メータ12の記憶装置に記憶されている濡れ中の物体の検出の持続時間の経験的データと比較して取得されてもよい。近接センサ28を使用する別の選択肢は、先端部16上のそれぞれの有効位置における試験エレメントの正確な位置決めを確実にするために、物体の認識が肯定的である間に移送テープを停止させることである。
図1
図2
図3
図4
図5