(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】飲料製造装置、飲料製造用カプセル、および装置と少なくとも2つの異なる飲料製造用カプセルとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/46 20060101AFI20220914BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20220914BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A47J31/46 100
A47J31/36 120
A47J31/06 323
(21)【出願番号】P 2019564932
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2018053604
(87)【国際公開番号】W WO2018215926
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】102017000056286
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514028558
【氏名又は名称】カフィタリー システム エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】CAFFITALY SYSTEM S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ アキュルシ
(72)【発明者】
【氏名】マウリツィオ ディアマンティ
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-199070(JP,A)
【文献】特表2015-521057(JP,A)
【文献】特表2013-526995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/46
A47J 31/36
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル(3)、(4)に含まれる粉末食品物質(2)に熱水を通すことにより飲料を製造する装置であって、
抽出チャンバ(6)を形成する抽出ユニット(5)であって、使用中にカプセル(3)、(4)を抽出チャンバ(6)に入れたり出したりすることができる開放配置と、使用中にカプセル(3)、(4)を抽出チャンバ(6)内に保持できる閉鎖配置との間で切り替え可能な抽出ユニット(5)と、
前記抽出チャンバ(6)に熱水を供給するための熱水供給手段と、
前記抽出チャンバ(6)から飲料を排出するための排出手段と、
少なくとも2つの異なるタイプの飲料から選択するための選択ユニット(23)と、を備え、
前記熱水供給手段は、タンク(14)と、該タンク(14)から前記抽出チャンバ(6)まで延びる給水ダクト(15)と、該給水ダクト(15)に取り付けられたポンプ(16)と、前記タンク(14)の下流に前記
給水ダクト(15)に沿って取り付けられたボイラー(17)と、該ボイラー(17)と関連する温度測定装置(18)と、電子メモリを備えた電子制御ユニット(19)とを備え、該電子制御
ユニット(19)は、一方の側では、前記ポンプ(16)、前記ボイラー(17)、前記温度測定装置(18)と動作可能に関連し、他方の側では、前記選択ユニット(23)と動作可能に関連し、
前記選択ユニット(23)によって選択可能な第1のタイプの飲料に対して、第1の供給開始温度値、第1の定常状態供給温度値、第1の総供給時間、および前記第1の総供給時間中の前記ポンプ(16)の第1の駆動モードを含む、第1のデータが前記電子メモリに保存され、
前記選択ユニット(23)によって選択可能な第2のタイプの飲料に対して、第2の定常状態供給温度値、前記第1の供給開始温度値より高い第2の供給開始温度値、前記第1の総供給時間より長い第2の総供給時間、および前記第2の総供給時間中の前記ポンプ(16)の第2の駆動モードを含む、第2のデータが前記電子メモリに保存され、
前記電子制御ユニット(19)は、第1データを用いて前記ポンプ(16)および前記ボイラー(17)を制御して第1のタイプの飲料の供給をもたらすようにプログラムされ、且つ前記第2データを用いて前記ポンプ(16)および前記ボイラー(17)を制御して第2のタイプの飲料の供給をもたらすようにプログラムされ、
前記第1の総供給時間は、事前注入時間、待機時間、および注入時間を順に含み、
前記ポンプ(16)の前記第1の駆動モードは、前記事前注入時間中および前記注入時間中前記ポンプ(16)を駆動し、前記待機時間中ポンプ(16)を駆動しないことを含み、
前記第2の駆動モードは、前記第2の供給時間全体にわたって前記ポンプ(16)を駆動することを含み、且つ
前記第1の駆動モードは、前記ポンプ(16)の駆動中に、前記第2の駆動モードの前記ポンプ(16)の駆動中に使用される第2の平均電力よりも大きい第1の平均電力で前記ポンプ(16)を給電することを含む、飲料製造装置。
【請求項2】
前記電子制御ユニット(19)は、前記選択ユニット(23)から前記第1のタイプの飲料を供給する指示を受け取った後で、使用中に、
前記温度測定装置(18)によって測定される温度が前記第1の供給開始温度値以上である場合には、飲料の供給を直ちに開始するようにプログラムされ、
前記温度測定装置(18)によって測定される温度が前記第1の供給開始温度よりも低い場合には、最初にボイラー(17)を前記測定温度が第1の供給開始温度値以上になるまで駆動し、その後飲料の供給を開始するようにプログラムされている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電子制御
ユニット(19)は、前記選択ユニット(23)から前記第2のタイプの飲料を供給する指示を受け取った後で、使用中に、
前記温度測定装置(18)によって測定される温度が前記第2の供給開始温度値以上である場合には、飲料の供給を直ちに開始するようにプログラムされ、
前記温度測定装置(18)によって測定される温度が前記第2の供給開始温度よりも低い場合には、最初にボイラー(17)を前記測定温度が前記第2の供給開始温度値以上になるまで駆動し、その後飲料の供給を開始するようにプログラムされている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記電子制御ユニット(19)は、使用中に、前記選択ユニット(23)により指示されたタイプの飲料の供給中に、前記温度測定装置(18)により測定される温度が各自の定常状態供給温度値より少なくとも1つの各自の所定の下偏差だけ低くなったときにボイラー17を作動させ、前記温度測定装置18により測定される温度が各自の定常状態供給温度値より少なくとも1つの各自の所定の上偏差だけ高くなったときにボイラー17を停止させるようにプログラムされている、請求項1~3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記第1の定常状態供給温度値は、前記第2の定常状態供給温度値に等しい、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記電子制御ユニット(19)は、使用中に、飲料の供給が進行中でない場合に、前記温度測定装置(18)により測定される温度が前記第1の供給開始温度値より少なくとも1つの各自の所定の低偏差だけ低いとき、前記ボイラー(17)を駆動するようにプログラムされ、前記温度測定装置(18)により測定される温度が前記第1の定常状態供給温度値よりも少なくとも1つの所定の高偏差だけ高い場合に前記ボイラー(17)を停止するようにプログラムされている請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
電子制御ユニット(19)は、使用中に、本装置のスイッチオン後および/または最後の飲料の供給から所定の時間後に最初の飲料の供給の指示コマンドが発行されるとき、前記第1の供給開始温度値及び前記第2の供給開始温度値を所定の過熱偏差だけ上昇させるようにプログラムされている、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記ポンプ(16)は振動ポンプである、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記ポンプ(16)は、交流電圧の正の半波のみまたは負の半波のみで駆動される、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記ポンプ(16)の電源を調整する電子装置も備え、該電子装置は前記ポンプ(16)への電力供給を、電力供給時間を変化させて調整する、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記ボイラー(17)はインスタントボイラーである、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記第1の平均電力は、前記第2の平均電力よりも30%~60%大きい、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記第1の総供給時間が10秒から30秒の間である、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記第2の総供給時間が40秒から180秒の間である、請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記第1の供給開始温度値が90℃±2℃に等しく、前記第1の定常状態供給温度値が90℃±2℃に等しい、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記第2の供給開始温度値は97℃±2℃に等しく、前記第2の定常状態供給温度値は91℃±2℃に等しい、請求項1~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記事前注入時間が1秒から4秒であり、前記待機時間が2秒から5秒であり、前記注入時間が2秒から10秒である、請求項1~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記選択ユニット(23)は、選択可能な飲料のタイプごとに1つである複数の押しボタン(39)、または各々が前記選択可能な飲料の1つのタイプに対応する複数の位置間で切り替え可能な要素、またはタッチスクリーンディスプレイ、または抽出チャンバ(6)に挿入されたカプセル(3)、(4)を自動的に認識するデバイス、のいずれかを備える、請求項1~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記選択ユニット(23)は、前記第1のタイプおよび前記第2のタイプに加えて、1つ以上の他のタイプの飲料の選択も可能であり、前記選択ユニット(23)により選択可能なそれぞれのタイプの飲料に対してそれぞれのデータが前記電子メモリに保存され、前記それぞれのデータは、それぞれの供給開始温度値、それぞれの定常状態供給温度値、それぞれの総供給時間、およびそれぞれの総供給時間中の前記ポンプ(16)のそれぞれの駆動モードを含む、請求項1~18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の装置と、少なくとも第1の粉末食品物質を含む第1のカプセル(3)および第2の粉末食品物質を含む第2のカプセル(4)との組み合わせであって、
前記第1のカプセル(3)および第2のカプセル(4)は、外部寸法が実質的に同じで、中身が互いに異なり、前記抽出チャンバ(6)に前記第1のカプセル3が挿入された状態で前記第1の駆動モードに従って前記ポンプ(16)が駆動されると、大気圧と比較して少なくとも4barに等しい過圧を前記供給ダクト(15)内に生じ、前記抽出チャンバ(6)に前記第2のカプセル(4)が挿入された状態で前記第2の駆動モードに従って前記ポンプ(16)が駆動されると、大気圧と比較して2bar未満の過圧が前記供給ダクト(15)内に生じる、組み合わせ。
【請求項21】
前記第1の粉末食品物質(2)は前記第2の粉末食品物質(2)の第2の平均粒径測定値より小さい第1の平均粒径測定値を有する、請求項20に記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記第1のカプセル(3)および前記第2のカプセル(4)は両方とも、本体、上蓋、および少なくとも1つのフィルタを備え、前記本体はカップ形状であり、底壁、側壁、および上フランジを備え、前記上蓋は前記上フランジに固定され、前記フィルタは、前記本体内に前記食品物質と前記底壁との間に取り付けられ、前記第2のカプセル(4)の前記フィルタは、複数の貫通開口部を備えた剛性または半剛性の第1フィルタ要素(56)と、該第1フィルタ要素(56)に結合され且つ前記第1フィルタ要素と前記第2の粉末食品物質(2)との間に位置する第2可撓性フィルタ要素(57)とを含む、請求項20または21に記載の組み合わせ。
【請求項23】
前記第2可撓性フィルタ要素(57)は、80から150g/m
2の単位面積当たりの重量、0.6から0.9の気孔率および20℃において200Paで測定した800~1500l/dm
2・minの通気度を有するニードルパンチポリエステルの層からなる、請求項22に記載の組み合わせ。
【請求項24】
前記第2カプセル(4)の前記底壁の少なくとも一部は第2カプセル(4)の側壁の引裂抵抗よりも小さい引裂抵抗を有する、請求項23に記載の組み合わせ。
【請求項25】
前記第1のフィルタ要素(56)は、ボウル形状であって、下壁および外側格納壁を備え、前記開口部は前記下壁と前記格納側壁の両壁に形成され、前記第2可撓性フィルタ要素(57)は、前記第1フィルタ要素(56)により形成されるボウルを少なくとも内部被覆する、請求項20~24のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項26】
前記第1のカプセル(3)が前記抽出チャンバ(6)に挿入された状態で、前記第1の総供給時間に亘って前記ポンプ(16)が第1の駆動モードに従って駆動されると、15mlから50mlの量の飲料が供給され、前記第2のカプセル(4)が前記抽出チャンバ(6)に挿入された状態で、前記第2の総供給時間に亘って前記ポンプ(16)が第2の駆動モードに従って駆動されると、180mlを超える量の飲料が供給される、請求項20~25のいずれかに記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を作るための装置、飲料を作るためのカプセル、および飲料を作るための装置と少なくとも2つの異なるカプセルとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カプセルに収容した粉末食品物質を使用する適切な装置によって、特にコーヒーだけでなく、種々の飲料を作ることがますます普及しつつある。
【0003】
したがって、時間の経過とともに、多くの異なる種類の飲料を作ることができる装置が開発されてきた。
【0004】
しかしながら、本出願人の知る限り、現在のところ、少なくとも良質のすべてのタイプの飲料をそれ自体で製造することができる従来の装置はない。実際、飲料は非常に異なる特性を有するため、単一の装置ですべてのタイプの飲料を製造することは困難であるということを考慮すべきである。しかし、それだけが問題ではない。実際、本出願人の知る限り、現在、あらゆる種類のコーヒーをそれ一台で製造することができる装置は市場に存在しない。実際、「コーヒー」という一般名称は、典型的なイタリアのエスプレッソコーヒーから、特に米国で典型的なブラックコーヒー(またはアメリカンコーヒー)まで、大きく異なる製品をカバーしている。これらの「コーヒー」は両方とも、コーヒー粉末または挽いたコーヒーを熱水に注入することで作られているが、2種類の異なる飲料にはなり得ない。
【0005】
エスプレッソコーヒーは通常、40/50mlを超える製品はなく(量は通常20~40ml)、大きな泡のない高密度で長続きする表面クレマを有し、それは数ミリメートルの厚さで比較的強い(通常4°Bx~7°Bx、既知のように、Brixは液体に溶解した固体状態の物質の測定値であり、1度Brix-°Bxは溶液100中の固体物質1に対応する重量である)。
【0006】
対照的に、ブラックコーヒーまたはアメリカンコーヒーは通常、常に180mlを超える比較的大量の液体で構成され、400mlにもなる(デカンタに満たされた場合には1リットルにもなる)こともあり、その表面にクレマがなく、および比較的弱い(約1°Bx)。
【0007】
以後、エスプレッソコーヒーとブラックコーヒーまたはアメリカンコーヒーに言及する際、今説明した特性を持つ飲料を意味ものとする。
【0008】
多くの面で、アメリカンコーヒーは「フィルタコーヒー」として知られる別の種類のコーヒーに似ており、伝統的に北ヨーロッパで広く普及している。ブラックコーヒーとフィルタコーヒーは、類似する(クレマなし、低強度)ため混同されることがよくあるが、実際には、少なくとも同じ量の粉末コーヒーまたは挽いたコーヒーを使用して得られるコーヒーの量に関してかなり異なる。実際、良質のフィルタコーヒーは通常、180ml未満の総量の飲料を提供する。つまり、それはアメリカのコーヒーとして提供できる量の約半分に相当します。
【0009】
コーヒーを作る観点では、エスプレッソコーヒーは高圧(最大12bar)で抽出されるが、ブラックコーヒーおよびフィルタコーヒーの伝統的な抽出は、単純に重力の影響の下でコーヒーパウダーに熱湯を浸透させるだけで行われる。
【0010】
すでに指摘したように、現在、エスプレッソコーヒーとブラックコーヒーを選択できるように設定されたカプセルを使用する既知の装置はない。対照的に、長年にわたって、エスプレッソコーヒーとフィルタコーヒーを選択するいくつかの装置が開発されている。例えば、本出願人による欧州特許第1554958号の装置がある。
【0011】
しかしながら、本出願人が行った試験では、欧州特許第1554958号に従って製造された装置は、使用されるカプセルの特性に関係なく(すなわち、エスプレッソコーヒー用に設計されたカプセル、フィルタコーヒー用に設計されたカプセル、またはカフェクリーム-クリームコーヒーなどの他の種類のコーヒー用に設計されたカプセルのどれを使用しても)、適切な品質のブラックコーヒーを製造できないことが分かった。
【0012】
さらに、各タイプの飲料の製造を最適化するために、長年にわたって、さまざまなメーカーが、新しいカプセルを徐々に開発しており、また供給されるコーヒーの1つまたは他の特性(たとえば、クレマの有無、強度など)を変更しようとするたびに、既存のカプセルを変更していることに注意されたい。それにもかかわらず、現在のところ、ブラックコーヒーを作るために実際に発売されているカプセルはほとんどなく、常にアメリカンコーヒーを作るためだけの装置と組み合わされているのみである。
【0013】
最も普及しているアメリカンコーヒー製造用カプセルは、米国の会社であるキューリング・グリーン・マウンテン社によって販売され、米国特許第5,325,765号に記載されているカプセルである。このカプセルは、多層のプラスチック材料製のカップ状本体を有し、そのカップ状本体は該本体よりも薄く強度の低いプラスチック材料製の蓋で閉じられ、その内側の上端付近にプリーツ紙フィルタバッグが固定されており、このバッグにコーヒー粉末が充填されている。供給中、カプセルは蓋に穴を開けられ、低圧の水がカプセルに供給されるとともに、底部に穴があけられ、水がコーヒー粉末を通過した後に形成された飲料が排出される。コーヒー粉末が含まれる空間およびフィルタバッグを囲む空間からの飲料または水の通過は、フィルタバッグの任意の点で起こり得る。
【0014】
そのようなカプセルは定性的に許容できる結果を得ることができるが、欠点がないわけではない。
【0015】
主な欠点は、供給中に、湿ったコーヒー粉末が、特にその下部でバッグを構成するフィルタ材料を詰まらせ、底部に向かってますます圧縮され、一種のプラグを形成する傾向があるという事実である。その結果、供給開始後の所定の時間、低圧でカプセルに供給される水は、もはやコーヒー粉末を通過できなくなり、コーヒー粉末を迂回し、上部フランジに最も近い帯域でフィルタを通過する傾向がある。しかし、それが起こると、カップに届くのはもはやコーヒー飲料ではなく、ただの熱水である。
【0016】
この文脈において、本発明の基礎を形成する技術的目的は、上記の欠点を克服した飲料製造装置、飲料製造用カプセル、および装置と少なくとも2つの異なる飲料製造用カプセルとの組み合わせを提供することにある。
【0017】
特に、本発明の技術的目的は、エスプレッソコーヒーおよびブラックコーヒーを必要に応じ製造することができる飲料製造装置を提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる技術的目的は、たとえ短時間でもコーヒーではなくただの熱水を供給する危険性が少ない飲料製造用カプセルを提供することにある。
【0019】
本発明の別の技術的目的は、互いに非常に異なる2つの飲料、すなわちエスプレッソコーヒーとブラックコーヒーを選択することができる、装置と少なくとも2つの異なるカプセルとの組み合わせを提供することにある。
【0020】
上記の技術的目的および狙いは、添付の特許請求の範囲に記載の装置、カプセル、および装置と2つの異なるカプセルとの組み合わせによってそれぞれ実質的に達成される。
【0021】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面に示される、飲料製造装置、カプセル、および装置と少なくとも2つの異なるカプセルとの組み合わせのいくつかの好ましい非限定的な実施形態を参照して、以下の詳細な説明においてさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】閉鎖配置の
図1のマシンの抽出ユニットの拡大図である。
【
図5】
図4のポンプの平面V-Vにおける断面図である。
【
図6】
図1の装置と組み合わせて使用可能な本発明による第1のカプセルの、粉末食品物質が含まれていない状態の不等角投影図である。
【
図7】
図1の装置と組み合わせて使用可能な本発明による第2のカプセルの、粉末食品物質が含まれていない状態の軸測軸方向断面図である。
【
図8】粉末食品物質が含まれた
図6のカプセルの軸測軸方向断面図である。
【
図9】粉末食品物質が含まれた
図7のカプセルの軸測軸方向断面図である。
【
図11】
図1の装置のポンプの全出力での電力供給に対する、交流電圧(y軸)の経時的な傾向(x軸は電圧振動の完全な期間に等しい時間のみを示す)の概略グラフを示す。
【
図12】制限された電力での電力供給に対する経時的な交流電圧の傾向の対応する概略グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
より明確にするために、以下では、最初に本発明に従って作られた装置について説明する。次に、異なる飲料の製造を可能にする装置で使用可能なカプセルのいくつかの好ましい実施形態について説明する。最後に、装置と異なるカプセルとの組み合わせを備えるシステムについて説明する。
【0024】
本発明の主題である装置に関しては、既に示したように、それは、カプセル3、4に含まれる粉末食品物質2に熱水を通すことにより飲料を製造する装置1である。
【0025】
既知の方法で、装置1は、抽出チャンバ6を構成するとともに、開放配置(
図3)と閉鎖配置(
図1および2)との間で切り替え可能な抽出ユニット5を備える。
【0026】
開放配置にあるとき、使用中、抽出ユニット5は、抽出チャンバ6に収容されるのに適したカプセル3、4の抽出チャンバ6への挿入またはそこからの抽出を可能にする。
【0027】
閉鎖配置にあるとき、使用中、抽出ユニット5は、対照的に、抽出チャンバ6にカプセル3、4を保持することができる。さらに、有利には、閉鎖配置では、ユニットは抽出水がカプセル3、4の周りを回らないようにカプセル3、4を液密に保持する。
【0028】
添付の図に示す実施形態では、抽出ユニット5は、抽出ユニット5の開放配置に対応する離れた位置と開放配置に対応する近い位置の間で少なくとも一方が他方に対して移動可能な第1部分7および第2部分8を備える。その移動は、モータまたは手動で駆動し得るコネクティングロッド-クランク機構9によって保証される。
【0029】
熱水供給手段と飲料排出手段の両方が、既知の方法で抽出チャンバ6に連結されている。
【0030】
両手段とも、カプセル3に水を入れたり飲料を出したりするのに適した4つの通路を形成するための適切な穿孔または切断要素を備えている。図示の実施形態では、供給手段の一部である穿孔手段は、カプセル3、4の蓋を穿孔するのに適したスパイク10を備え、飲料排出手段の一部である切断手段は、底部を切断するのに適したブレード11を備える。
【0031】
一般に、飲料排出手段は、飲料を抽出チャンバ6から供給ノズルまで案内するダクト12を備え、供給ノズルの下には、使用中、充填されるカップ13が置かれる。
【0032】
次に、熱水供給手段は、タンク14、タンク14から抽出チャンバ6まで延びる給水ダクト15、給水ダクト15に装着されたポンプ16、およびタンク14の下流に給水ダクト15に沿って装着されたボイラー17を備える。
【0033】
熱水供給手段はさらに、ボイラー17に関連する温度測定装置18、電子制御ユニット19、および有利には、水の流量をチェックするための流量計20を備える。さらに、ボイラー17と抽出チャンバ6との間に装着されたソレノイドバルブ21およびソレノイドバルブ21とポンプ16の両方が必要に応じて排出できる収集槽22も備えてよい。
【0034】
電子制御ユニット19は電子メモリを備えており、一方の側でポンプ16、ボイラー17および温度測定装置18と動作可能に、他方の側で選択ユニット23と動作可能に関連付けられている。選択ユニット23、これも装置1の一部である、は、供給される飲料のタイプの選択を可能にし、一般に、少なくとも2つの異なるタイプの飲料の選択(すなわち、エスプレッソコーヒーまたはアメリカンコーヒーの選択)を可能にする。
【0035】
電子制御ユニット19は、電子メモリに保存された少なくとも対応するデータを使用して、選択ユニット23によって示された飲料のタイプに従って飲料を供給するようにプログラムされている。
【0036】
実際には、選択ユニット23で選択可能な飲料のタイプごとに、電子メモリにそれぞれのデータが保存され、これらのデータには、それぞれの供給開始温度値、それぞれの定常状態供給温度値、それぞれの総供給時間、およびそれぞれの総供給時間中のポンプ16の駆動モードなどが含まれる。ここで、第1のタイプの飲料の場合、「それぞれ」という用語は、「第1の」を意味し、第2のタイプの飲料の場合は、「第2の」、「第nの」の場合は、「第nの」を意味することに注意されたい。これが、以下の説明において「それぞれ」という用語の意味になる。
【0037】
したがって、電子制御ユニット19は、ポンプ16およびボイラー17を制御するためのそれぞれのデータを使用して、それぞれのタイプの飲料を供給するようにプログラムされている。
【0038】
いずれにせよ、本発明によれば、選択可能な飲料のタイプは常に少なくとも2つ、すなわちエスプレッソコーヒー(第1のタイプ)とアメリカンコーヒー(ブラックコーヒー、第2のタイプ)である。これに沿って、以降、第1のタイプへの言及は常にエスプレッソコーヒーを意味し、第2のタイプへの言及はアメリカンコーヒーを意味する。
【0039】
このような2つの異なる飲料の供給を可能にするために、本発明によれば、第2の供給開始温度値は第1の供給開始温度値より大きく、第2の総供給時間は第1の総供給時間より大きい。さらに、第1の総供給時間は、事前注入時間、待機時間、および注入時間を順に含む。ポンプ16の第1の駆動モードは、事前注入時間中および注入時間中にポンプ16を駆動し、待機時間中はポンプ16を駆動しないことを含む。対照的に、第2の駆動モードは、第2の供給時間全体にわたってポンプ16を駆動することを含む。さらに、第1の駆動モードは、ポンプ16の駆動中に、第2の駆動モードでのポンプ16の駆動中に使用される第2の平均電力よりも大きい第1の平均電力でポンプ16を給電することを含む。
【0040】
好ましい実施形態によれば、第1の供給開始温度値は90℃±2℃、好ましくは91℃±1℃に等しく、第1の定常状態供給温度値も91℃±2℃、好ましくは91℃±1℃に等しいが、第2の供給開始温度値は97℃±2℃、好ましくは98℃±1℃に等しく、対照的に第2の定常供給温度値は、第1の定常状態供給温度値に等しい。
【0041】
ポンプ16を給電するために使用される電力に関しては、好ましくは、第1の平均電力は第2の平均電力よりも30%から60%大きい、すなわち、第2の平均電力は第1の平均電力の約62.5%から77%の値に等しい。
【0042】
供給時間に関しては、第1の総供給時間は10秒から30秒の間であるが、第2の総供給時間は40秒から180秒の間である。
【0043】
有利には、事前注入時間は1秒から4秒の間であり、待機時間は2秒から5秒の間であり、注入時間は2秒から10秒の間である。
【0044】
一般に、電子制御ユニット19は、温度測定装置18によるそれぞれの関心最小値より低い温度値の測定に従ってボイラー17を作動させ、ボイラー17を測定温度値がそれぞれの関心最大値に達するまで駆動し続けるようにプログラムすることが好ましい。
【0045】
特に、選択ユニット23によって指示されるタイプの1つによる飲料の供給中は、供給開始温度値および定常状態供給温度値は選択された飲料のタイプによって決定されるが、飲料の供給が進行中でない場合、電子制御ユニット19は、第1定常状態供給温度値に応じてボイラー17の駆動および停止のコマンドを発行するようにプログラムされている(言い換えると、装置1はスイッチオンであるが供給中でない場合、電子制御ユニット19は、装置1をエスプレッソコーヒーの供給に適した状態に保つようにプログラムされている)。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、電子制御ユニット19は、選択ユニット23から第1のタイプの飲料を供給する指示を受け取った後、使用中、温度測定装置18によって測定される温度に応じて、飲料の供給を直ちに開始するか、開始しないようにプログラムされる。特に、温度測定装置18によって測定された温度が第1の供給開始温度値以上である場合、電子制御ユニット19は飲料の供給を直ちに開始するようにプログラムされている。対照的に、温度測定装置18によって測定された温度が第1の供給開始温度よりも低い場合、電子制御ユニット19は最初にボイラー17を駆動して測定される温度が第1の供給開始温度値以上になるまで加熱するようにプログラムされる。そして、電子制御ユニット19は、第1の供給開始温度値になった時点でのみ飲料の供給を開始するようにプログラムされる。
【0047】
電子制御ユニット19は、選択ユニット23から第2のタイプの飲料を供給する指示を受け取った後でも、使用中、温度測定装置18により測定される温度に応じて、ちょうど説明したばかりの第1のタイプの飲料の場合と同様の論理に従って、飲料の供給を直ちに開始するか、開始しないように有利にプログラムされる。実際、この場合も、電子制御ユニット19は、温度測定装置18によって測定された温度が第2の供給開始温度値以上である場合、飲料の供給を直ちに開始するように有利にプログラムされる。対照的に、温度測定装置18によって測定された温度が第2の供給開始温度よりも低い場合、電子制御ユニット19は、最初にボイラー17を作動させ、測定温度が第2の供給開始温度値以上になるまでボイラー17を作動させ続けるように有利にプログラムされる。そして、電子制御ユニット19は、第2の供給開始温度になった時点でのみ飲料の供給を開始するようにプログラムされる。
【0048】
選択ユニット23によって指示されるタイプの飲料の供給が開始されると、電子制御ユニット19は、使用中、温度測定装置18によって測定される温度が各自の定常状態温度値より少なくとも1つの各自の所定の下偏差(有利には-1°に等しい)だけ低くなったときにボイラー17を作動させ、温度測定装置18によって測定される温度が各自の定常状態温度値より少なくとも1つの所定の上偏差(有利には+1°Cに等しい)だけ高くなったときにボイラー17を停止させるようにプログラムされる。
【0049】
機械のより厳密な構造的側面に関しては、さまざまな技術的解決策が可能であるが、それらのいくつかは特に好ましい。
【0050】
ポンプ16に関しては、好ましい解決策は、例えば電源回路(図示せず)に配置された簡単なダイオードにより得られる交流電圧(通常50Hz~60Hzの周波数)の正の半波または負の半波のみで駆動される振動ポンプ(振動ピストンポンプ16としても知られている)の使用を含む。このタイプのポンプ16では、ピストン24はソレノイド25に結合された磁気/強磁性材料からなる(または備える)ことを忘れてはならない。ソレノイド25に電力を供給すると、ピストン24が一方向に移動し、ピストン24自体に接続されたスプリング33が、ソレノイド25に電力が供給されていないときに、ピストンをホーム位置に戻す。特に、
図5に示す実施形態では、ポンプ16は両端が開いた中空管状要素26を含み、該中空管状要素はピストン24の一部であり、磁気/強磁性コア27を含む。中空管状要素26は送出端28を有し、該送出端には第1の逆止弁29が結合され、該逆止弁は送出端をポンプ室30から分離し、中空管状要素26とともにピストン24を形成する。ピストン24は、反対側に第2の逆止弁31を備え、該逆止弁はピストン24をポンプ16の送出口32から分離する。
図5を参照すると、ポンプ16は次のように動作する。電力が供給されていない場合、主スプリング33はピストン24を押し上げた状態に保持し、補助スプリング34と第1逆止弁29の第1逆止バネ35の両方の抵抗力に打ち勝つ。ソレノイド25に電力が供給されると、ピストン24が再び下向きに引かれ、ポンプ室30内に真空が生成され、そこに水が引き込まれる(第1逆止弁29が開く)。電力が停止すると、主スプリング33がピストン24をポンプ室30に押し込み、第1の逆止弁29が閉じ、第2の逆止弁31が開き、水を抽出ユニット5に向けて送ることができる。
【0051】
特に、有利には、ポンプ16は、電力供給時間を変えることにより、すなわち半波が実際にポンプ16に供給される時間を変えることにより、ポンプ16に供給される電力をチョークすることができる、電力供給調整またはチョーク用電子デバイスによって給電される。
図12に示されるように(正の半波のみでポンプ16を電力供給する場合に関して)、この給電は、電圧がゼロを通過する瞬時ではなく、その後の瞬時にポンプへの半波の供給を可能にすることにより達成できる(
図11は対照的にフルパワーで給電する場合を示し、
図11および
図12は両方ともダイオードの上流の電源電圧を示すことに注意されたい)。
【0052】
ボイラー17に関しては、それは好ましくは瞬間ボイラーであり、有利には、加熱される水が流れる比較的長く狭いダクト37を囲む金属体36と、1つ以上の電気加熱要素38とからなる(コーヒーマシンの分野ではこのタイプのボイラー17は「交換機」型または「サーモブロック」型と呼ばれることが多い)。
【0053】
既に示したように、最も単純な実施形態では、本発明による装置1は、選択ユニット23によって選択可能な2つのタイプの飲料、エスプレッソコーヒーとブラックコーヒー(またはアメリカンコーヒー)、を有する。しかし、より複雑な実施形態では、選択ユニット23は、第1のタイプおよび第2のタイプに加えて、1つまたは複数の他のタイプの飲料を選択することができ、それぞれのタイプの飲料に対してそれぞれの供給データが電子メモリに保存される。一例として、ロングエスプレッソコーヒー、紅茶、ホットチョコレート、ホットミルクなどがある。
【0054】
構造レベルでは、選択ユニット23は、目的に適した任意の形態にしてよい。したがって、選択ユニット23は、例えば
図1に示されるように選択可能な飲料のタイプごとに1つずつ、複数の押しボタン39を備えてもよく、またはそれぞれが選択可能な飲料の1つのタイプに対応する複数の位置間で切り替え可能な要素を備えてもよく(解決策は図示されていない)、またはタッチスクリーンディスプレイ(解決策は図示されていない)。また、選択ユニット23は、タッチスクリーンディスプレイにより構成してもよく(解決策は図示されていない)、または抽出チャンバ6に挿入されたカプセル3、4を自動的に認識するデバイスにより構成してもよい(後者の場合も、図示されていないが、このタイプの任意の従来のデバイスを使用することができる)。最初の3つの場合には飲料のタイプはユーザーによって選択されるが、最後の場合には装置1によって自動的に選択される。
【0055】
上述したように、これまで説明した装置1に加えて、本発明は、装置1で使用されるカプセル3、4の構造、特に2つの基本タイプの飲料を作るためのカプセル3、4の構造にも関する。
【0056】
図6および
図8に示されるエスプレッソコーヒーのカプセル3(以下、第1のカプセル3と呼ぶ)は、第一に、第1の底壁41と、第1の側壁42と、第1の底壁41に結合された側とは反対側に第1の側壁42から外側に突出する第1の上フランジ43とを有するカップ状の第1の本体40を備える。好ましくは、第1の本体40は、射出成形プラスチック材料、酸素障壁を有する熱成形多層材料、またはアルミニウムのから構成された単一部品である。
【0057】
第1の上蓋44が第1の上フランジ43に有利に固定され、好ましくは、第1の上蓋44は障壁を有するプラスチックフィルムまたはアルミニウムにより構成される。
【0058】
少なくとも1つの第1のフィルタ45が、第1の本体40の第1の底壁41の近くに配置され、第1の粉末食品物質2が、第1の本体40内に第1の蓋44と第1のフィルタ45との間に収容される(したがって、第1フィルタ45は第1の本体40内に第1の粉末食品2と第1の底壁41との間に位置する。
【0059】
第1の粉末食品物質2は、有利には400μm未満の第1の公称平均粒径測定値を有する。さらに、特に、第1の食品物質がエスプレッソコーヒーを生成することを意図している場合、その食品物質は、有利には、270μmより大きい公称平均粒径測定値を有するであろう。
【0060】
有利には、必ずではないが、第1のフィルタ45は剛性または半剛性であり、第1の公称平均粒径測定値を有する粒子、ならびに有利には第1の公称平均粒径測定値の70%以上、好ましくは50%以上の平均粒径測定値以下の粒子を保持するようなサイズの複数の第1の貫通開口部を備える。好ましくは、第1の要素45はボウル形状であり、第1の底壁46と、第1の側壁42に密閉接合された第1の外側格納壁47とを有する。第1の開口部は第1の底壁46のみにまたは第1の外側格納壁のみに、または両方に形成することができる。
【0061】
好ましくは、必ずではないが、第1のカプセル3は、第1の粉末食品物質2と第1の蓋44との間に配置された第1の穿孔分配要素48を含む。
【0062】
本発明は、1杯の飲料(通常約8g)を作るのに適した量の第1の粉末食品物質2のみを収容できる第1のカプセル3、または、1杯の飲料を作るのに適した量の第1の粉末食品物質2または2杯の飲料を同時に作るのに適した量の第1の粉末食品物質2(通常約13g)のいずれかを満たすことができるより大きな第1のカプセル3の両方に適用することもできる。両方の場合において良い品質の供給を保証するために、第1のカプセル3が1杯の飲料を作るのに適した量の第1の粉末食品物質2を含む場合には、第1のカプセル3が2杯の飲料を作るのに適した量の第1の粉末食品物質2を収容する場合よりも、第1の下側フィルタ45または第1の分配要素48をそれぞれ第1の底壁41または第1の蓋44から遠くに位置させて食品物質を収容する空間を存在する食品物質の量に調節するのが有利である。
【0063】
図7、
図9および
図10に示されるブラックコーヒーを作るためのカプセル(以下、第2のカプセル4と呼ぶ)は、第1のカプセル3と同様の多くの特徴を備えた構造を有する。それらは第2の本体49、第2の上蓋50、少なくとも1つの第2のフィルタ51および第2の本体49内に収容された第2の粉末食品物質を備える。次に、第2の本体49はカップ形状であり、第2の底壁52、第2の側壁53、及び第2の上フランジ54を有する。第2の上蓋50が第2の上フランジ54に固定され、第2のフィルタ51が第2本体49内に、第2粉末食品2と第2底壁52との間に取り付けられている。
【0064】
この場合にも、有利には第2の分配要素55が存在し、第2のカプセル4は、1杯の飲料または2杯の飲料を同時に作るのに適した量の第2の粉末食品物質2を含むことができる。
【0065】
第2の粉末食品物質2は、有利には600μmより大きい第2の公称平均粒径測定値を有する。さらに、特に、第2の食物物質がアメリカンコーヒーを作ることを目的とする場合、有利には600μmを超える公称平均粒径測定値を有する。
【0066】
第2のカプセル4については、以下に示す違いを除いて、第1のカプセル3に関して上述した事項が再び当てはまる。
【0067】
第1に、第2のフィルタ51は、複数の第2の貫通開口部を備える剛性または半剛性の第1フィルタ要素56(したがって、構造的に第1のフィルタ45と類似)と、第1フィルタ要素56に結合され且つフィルタ要素56と第2の粉末食品物質2との間に配置された第2可撓性フィルタ要素57とを備える。
【0068】
有利には、第2可撓性フィルタ要素57は、80から150g/m2の単位面積当たりの重量を有するニードルパンチポリエステルの層、または0.6~0.9の気孔率および20℃において200Paで測定した800~1500l/dm2・minの通気度を有する同様の性能を有する他の材料の層で構成される。
【0069】
第1のフィルタ要素56は、第2の公称平均粒径測定値を有する粒子、好ましくは第2の公称平均粒径測定値の50%に等しい平均粒径を有する粒子を保持するようなサイズの複数の第2の貫通開口部も備えている。
【0070】
第1フィルタ要素56は有利にはボウル形状であり、第2の底壁58と、第2の側壁53に密閉結合された第2の外側格納壁59とを備える。第2の開口部は有利には第2の底壁58と第2の外側格納壁59の両方に形成される。
【0071】
好ましくは、第1のフィルタ45および第2のフィルタ51の第1フィルタ要素56は、それらが形成するボウルの外側に、それらをそれぞれの本体40、49から間隔を空けて保持し、それぞれのフィルタ45、51とそれぞれの本体40、49との間に飲料の通過のための空間(好ましくは底部および側部の両方に)を形成するのに適した隆起要素60を有する。
【0072】
さらに、好ましくは、第1の貫通開口部および第2の貫通開口部は両方ともスロットの形状である。
【0073】
好ましい実施形態では、第2の可撓性フィルタ要素57は、剛性の第1フィルタ要素56によって形成されたボウルを少なくとも内部被覆し、有利にはフィルタ要素56に(好ましくは第2の底壁58の上部と中心域で)1回以上環状にシールされる。
【0074】
さらに、本発明によれば、第2のカプセル4において、第2の底壁52の少なくとも一部は、側壁よりも引裂抵抗が小さい。これは、第1の本体40の全体について上述したものと同様に、第2の側壁53および必要に応じて第2の底壁52の一部と、引裂抵抗が第2の側壁53よりも小さくなければならない第2の底壁52の少なくとも一部は、アルミニウムまたはプラスチック材料(有利にはPET)層を含む単層または多層シートのいずれかで作ることにより有利に達成される。
【0075】
設計の選択に応じて、第2の底壁52全体をこのように作製しても(解決策は図示されていない)、またはインサート61のみを第2の底壁52に存在する穴62を閉じるように配置してもよい(解決策は
図10に明示されている)。したがって、有利には、単層または多層シートは、底壁41の残部または側壁53に接着またはシールされる。
【0076】
第1のカプセル3と第2のカプセル4とのさらなる違いは、粉末食品物質2に関する。実際、第1の公称平均粒径測定値は、有利には第2の公称平均粒径測定値よりも小さい。
【0077】
既知の方法では、各カプセル3、4は識別を所持することもでき、その場合には、カプセル3、4の自動認識に基づいて、それらを対象とする装置1に選択ユニット23が取り付けられる。
【0078】
最後に、別のタイプの飲料を作るための別のタイプのカプセルもあり得る。別の各タイプのカプセルは、第1のカプセル3または第2のカプセル4と共通の構造的特徴を有し得る。対照的に、一般に、それらに含まれる粉末食品物質の特性は異なる。たとえば、粉末食品物質がロングエスプレッソコーヒーを作ることを意図している場合、それは有利には350μmを超える公称平均粒径測定値を有するが、フィルタコーヒーを作ることを意図している場合、それは有利には540μmを超える公称平均粒子径測定値を有する。
【0079】
最後に、本発明は、上述したタイプの装置1と少なくとも1つの第1のカプセルおよび第2のカプセルとの組み合わせにも関し、第1のカプセルと第2のカプセルは実質的に同一の外部寸法を有するが上述したように内部的に互いに異なる。
【0080】
本発明によれば、装置1と第1のカプセル3は、抽出チャンバ6に第1のカプセル3が挿入された状態でポンプ16が第1の駆動モードに従って駆動されると、供給ダクト内に大気圧と比較して少なくとも4barに等しい過圧を生じるように作られる。対照的に、装置1と第2のカプセル4は、抽出チャンバ6に第2のカプセル4が挿入された状態でポンプ16が第2の駆動モードに従って駆動されると、供給ダクト内に大気圧と比較して2bar未満の過圧を生じるように作られる。
【0081】
さらに、装置1とそれぞれ第1のカプセル3および第2のカプセル4は、抽出チャンバ6に第1のカプセル3が挿入された状態でポンプ16が第1の駆動モードに従って駆動されると、第1の供給時間中に、15mlから50mlの量の飲料が供給され、好ましくは20mlから40mlの間の量の飲料が供給され、抽出チャンバ6に第2のカプセル4が挿入された状態でポンプ16が第2の駆動モードに従って駆動されると、第2の供給時間中に、180ml超の量の飲料が供給され、好ましくは180mlから400mlの間の量の飲料が供給されるように作られる。
【0082】
2つ以上のカプセル3、4を直列に使用することにより、より大量の飲料を作ることが可能であることは明らかである。
【0083】
装置1及び装置とカプセル3、4の組み合わせの両方の動作は上記の構造説明に直ちに関連づけられる。
【0084】
本発明は重要な利点をもたらす。
第1に、本発明のおかげで、最適な官能特性を備えるエスプレッソコーヒーとブラックコーヒーの両方を必要に応じて作ることができる飲料製造装置、ならびに該装置と少なくとも2つの異なるカプセルの組み合わせを提供することが可能になった。特に、本発明のおかげで、現在販売されている対応するカプセルと比較して、コーヒーではなくただの熱水を少しの間も供給することがない飲料製造用カプセルが提供された。
【0085】
最後に、本発明は製造が比較的容易であり、本発明の実施に関連するコストもあまり高くないことに注意すべきである。上記の本発明は、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、いくつかの方法で変更および適応させることができる。
【0086】
すべての細部は、技術的に同等な他の要素と置き換えることができ、さまざまな構成要素の使用材料並びに形状及び寸法も要件に応じて変えることができる。