IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレの特許一覧

特許7141416N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤
<>
  • 特許-N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤 図1
  • 特許-N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤 図2
  • 特許-N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤 図3
  • 特許-N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤 図4
  • 特許-N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造法、及びそれを含む製剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220914BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C07D487/04 141
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P31/12
A61P37/06
A61P25/00
A61P17/06
A61P9/10
A61P11/00
A61P19/02
A61P13/12
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019572116
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067394
(87)【国際公開番号】W WO2019002454
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】17305826.4
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】307012403
【氏名又は名称】ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ザンピエーリ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】カルダレッリ,マリナ
(72)【発明者】
【氏名】カンディアーニ,イラリア
(72)【発明者】
【氏名】ダアネロ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ダラスモ,ジェルマーノ
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

で示されるN-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩。
【請求項2】
ブラッグ角2θ(°±0.2で表される)2.76、8.10、10.79、13.49、16.13、17.37、17.62、19.77、21.94、24.18、24.66による粉末X線回折図によって特徴づけられる請求項1記載の化合物の結晶形I型
【請求項3】
請求項記載の式(II)の化合物の結晶形I型を得るための製造方法であって、出発物質N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドを有機溶媒中のHPO溶液1~2当量と反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
有機溶媒が、EtOHである、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
ブラッグ角2θ(°±0.2で表される)9.43、9.86、12.23、13.70、14.81、18.01、19.78、20.73、24.55、24.82、26.81による粉末X線回折図によって特徴づけられる請求項1記載の化合物の結晶形II型
【請求項6】
請求項記載の式(II)の化合物の結晶形II型を得るための製造方法であって、出発物質N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドを水中のHPO溶液1~2当量と反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項記載の式(II)の化合物を1種以上の薬学的に許容しうる賦形剤と組合せて含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項2記載の式(II)の化合物の結晶形I型を1種以上の薬学的に許容しうる賦形剤と組み合せて含む医薬組成物
【請求項9】
請求項5記載の式(II)の化合物の結晶形II型を1種以上の薬学的に許容しうる賦形剤と組み合せて含む医薬組成物
【請求項10】
細胞増殖性疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患又は神経変性疾患の治療において使用するための、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌の治療において使用するための、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、及び皮膚癌からなる群から選択される癌腫
リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burkett's)リンパ腫を含む);
骨髄系の造血器腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病を含む);
間葉起源の腫瘍(線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);
中枢及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫神経芽腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む);
他の腫瘍(メラノーマ、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ(keratoxanthoma)、甲状腺濾胞癌並びにカポジ肉腫、中皮腫、高度異数性の腫瘍、並びにMPS1、MAD2、MAD1、BUB1、BUBR1及びBUB3からなる群から選択される有糸分裂チェックポイント成分を過剰発現する腫瘍を含む)
良性前立腺過形成;
家族性腺腫性ポリポーシス;
神経線維腫症;
乾癬;
アテローム性動脈硬化症に関連する血管平滑細胞増殖;
肺線維症;
関節炎;
糸球体腎炎;又は
術後狭窄及び再狭窄
の治療において使用するための、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
伝毒性剤、有糸分裂毒、代謝拮抗剤、プロテアソーム阻害剤及びキナーゼ阻害剤からなる群から選択される抗癌剤と組み合わせて投与される、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
放射線治療と組み合わせて投与される、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞増殖性疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患又は神経変性疾患の治療において使用するための医薬品の製造における、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用
【請求項16】
癌の治療において使用するための医薬品の製造における、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用
【請求項17】
膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、及び皮膚癌からなる群から選択される癌腫
リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burkett's)リンパ腫を含む);
骨髄系の造血器腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病を含む);
間葉起源の腫瘍(線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);
中枢及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫神経芽腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む);
他の腫瘍(メラノーマ、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ(keratoxanthoma)、甲状腺濾胞癌並びにカポジ肉腫、中皮腫、高度異数性の腫瘍、並びにMPS1、MAD2、MAD1、BUB1、BUBR1及びBUB3からなる群から選択される有糸分裂チェックポイント成分を過剰発現する腫瘍を含む)
良性前立腺過形成;
家族性腺腫性ポリポーシス;
神経線維腫症;
乾癬;
アテローム性動脈硬化症に関連する血管平滑細胞増殖;
肺線維症;
関節炎;
糸球体腎炎;又は
術後狭窄及び再狭窄
の治療において使用するための医薬品の製造における、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用
【請求項18】
前記医薬品が、遺伝毒性剤、有糸分裂毒、代謝拮抗剤、プロテアソーム阻害剤及びキナーゼ阻害剤からなる群から選択される抗癌剤と組み合わせて投与される、請求項16記載の使用。
【請求項19】
前記医薬品が、放射線治療と組み合わせて投与される、請求項16記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】

で示されるN-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、その製造方法、及びまたそれを含む製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドは、腫瘍学の分野で非常に価値のある薬理学的特性を有する。実際、N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドは、TTK(チロシン及びセリン/トレオニンキナーゼ)としても知られるMPS1(単極紡錘体1(Monopolar Spindle 1))キナーゼを阻害する能力を有する。この能力は、幾つかの多様な癌、細胞増殖性疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患及び神経変性疾患の治療における分子治療的有用性をもたらす。治療が想定される癌のうち、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌を含む)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、及び皮膚(扁平上皮癌を含む)などの癌;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burkett's)リンパ腫を含む);骨髄系の造血器腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);中枢及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫神経芽腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む);他の腫瘍(メラノーマ、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ(keratoxanthoma)、甲状腺濾胞癌及びカポジ肉腫を含む)、中皮腫、高度異数性の腫瘍並びにMPS1、MAD2、MAD1、BUB1、BUBR1、BUB3などのような有糸分裂チェックポイント成分を過剰発現する腫瘍を挙げることができるがこれらに限定されない。治療が想定される細胞増殖性疾患のうち、良性前立腺過形成、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に関連する血管平滑細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎並びに術後狭窄及び再狭窄を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0004】
N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの調製法及び治療的使用は、例えば、欧州特許明細書EP 2303891に記載されており、その内容が引用例として取り込まれる。
【0005】
この化合物の薬学的価値を考慮すると、活性化合物を優れた収率で、高純度で、そして優れた再現性で得られることが重要である。更に、静脈内投与の方法を考慮に入れると、非常に良好な溶解特性を持つことも重要である。先行技術に記載されている塩基は、非最適な純度をもたらす精製の問題を示し、また難溶性を示すことが直ぐに判明した。多数の調査研究後に、特に精製、それを得る方法の再現性、及び収率に関する種々の利点を併せ持つが、また予想外に活性化合物の溶解度を非常に大幅に改善するという利点をも有する新しい塩を特定することができた。更に、はるかに水溶性が高いにもかかわらず、この新しい塩は遊離塩基よりも高い吸湿性を示さない。よってこの新しい塩は、物理化学的及び薬物動態の両方の観点から、医薬品としての使用に不可欠なすべての品質を備えている。
【0006】
よって本発明は、N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの新しい塩、更に特に式(II):
【0007】
【化2】

で示されるN-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩に関する。
【0008】
この新しい塩は次の利点を有する:
-優れた収率でそれを得るための単純で再現性のある方法;
-高い化学的純度、及び低い吸湿性;
-静脈内投与に大きな期待を持たせる、水と生理学的漿液の両方への溶解度の向上。
【0009】
本発明はまた、N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩を得る製造方法に関する。
【0010】
例えば、これは、EP 2303891で得られるとおり、出発物質の8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボン酸エチルから出発することができ、これを強塩基の存在下で2,6-ジエチルアニリンと反応させて、8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-N-(2,6-ジエチルフェニル)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドを与え、次にこれをN,N-ジメチルピペリジン-4-アミンと反応させて、式(I)の化合物を生成させ、次にこれをHPO溶液1~2当量と混合して、式(II)のN-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩を与える。
【0011】
本発明の式(II)の化合物は、変性条件下(40℃/75%相対湿度(RH))で長時間良好な安定性を有する:
【0012】
【表1】
【0013】
本発明の新しい塩はまた溶解特性の改善されたことが立証されている:
-予備試験において、室温での非晶質塩基からのインサイツ(in situ)塩形成により、リン酸塩は塩酸塩より少なくとも25倍、遊離塩基より少なくとも24,000倍、溶解度を改善する能力があることが示された:
【0014】
【表2】
【0015】
-式(II)のリン酸塩の結晶形Iを用いた更なる調査により、水とNaCl 0.9%の両方で、遊離塩基として表される少なくとも130mg/mlの室温での溶解度が示された:
【0016】
【表3】
【0017】
リン酸塩は、以下の動的水蒸気吸着(Dynamic Vapour Sorption)分析法により示されるとおり吸湿性向が低いが、原薬の溶解性を大幅に改善することがこの塩のスクリーニング中に特定された:
【0018】
【表4】
【0019】
有利な代替形態において、式(II)の化合物を得るために使用される製造方法の最後の工程は、有機溶媒、より具体的には、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、EtOH、MeOH、(1-又は2-)プロパノール、(1-又は2-)ブタノール、tert-ブタノール、2-メトキシエタノール、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、アセトン、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びこれらの混合物のような極性溶媒中で実施され得る。
【0020】
その場合、得られる式(II)の化合物は、I型と名付けられた多形形態によって特性決定される。
この新しいI型は、粉末X線回折図から得られる次のブラッグ角2θ(°±0.2で表される)によって特性決定される:2.76、8.10、10.79、13.49、16.13、17.37、17.62、19.77、21.94、24.18、24.66。
【0021】
別の有利な代替形態において、式(II)の化合物を得るために使用される製造方法の最後の工程は、水中で実施されて、II型と名付けられた新しい水和多形形態をもたらす。
この新しいII型は、粉末X線回折図から得られる次のブラッグ角2θ(°±0.2で表される)によって特性決定される:9.43、9.86、12.23、13.70、14.81、18.01、19.78、20.73、24.55、24.82、26.81。
【0022】
本発明はまた、活性成分として、本発明の式(II)の化合物を、1種以上の不活性で非毒性の適切な賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物のうち、特に、経口、非経口(静脈内又は皮下)又は経鼻投与に適したもの、錠剤又は糖衣錠、顆粒剤、舌下錠、カプセル剤、菱形トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、皮膚用ゲル剤、注射製剤、飲用懸濁液及びチューインガム剤を挙げることができる。
【0023】
本発明の式(II)の化合物を含む医薬品製剤は、癌、細胞増殖性疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患及び神経変性疾患の治療に使用されよう。治療が想定される癌のうち、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌を含む)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、及び皮膚(扁平上皮癌を含む)などの癌;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burkett's)リンパ腫を含む);骨髄系の造血器腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);中枢及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫神経芽腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む);他の腫瘍(メラノーマ、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ(keratoxanthoma)、甲状腺濾胞癌及びカポジ肉腫を含む)、中皮腫、高度異数性の腫瘍並びにMPS1、MAD2、MAD1、BUB1、BUBR1、BUB3などのような有糸分裂チェックポイント成分を過剰発現する腫瘍を挙げることができるがこれらに限定されない。治療が想定される細胞増殖性疾患のうち、良性前立腺過形成、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に関連する血管平滑細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎並びに術後狭窄及び再狭窄を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0024】
有用な投与量は、疾患の性質と重症度、投与経路、及び患者の年齢と体重に応じて変えることができる。投与量は、1回以上の投与で、遊離塩基換算で1日1mgから1gまで変化する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】遊離塩基N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドの非晶質形態のX線回折図を示している。
図2】N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩のI型のX線回折図を示している。
図3】N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩のI型のDSC図を示している。
図4】N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩のII型のX線回折図を示している。
図5】N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩のII型のDSC図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、決して本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0027】
I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩
工程A:8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-N-(2,6-ジエチルフェニル)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド
THF 34.8L中の8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド 2.32kgを含有する溶液に2,6-ジエチルアニリン 0.877Lを添加する。次にLiHMDS 15.2Lを-10℃で滴下する。反応物を1.5時間撹拌し、LiHMDSを完了するまで加える。次にNaCl溶液 30.17Lを加え、有機相をNaCl溶液で2回洗浄し、溶媒を蒸発させる。次に水/アセトンの溶液を残渣に加え、溶液を還流させ、次いで5℃に冷却する。次に沈殿物を濾過して、表題生成物を淡黄色粉末として与える。
融点:218~220℃
MS 計算値:561.1608;MS 実測値:561.1591
工程B:I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩
工程Aで得られた8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-N-(2,6-ジエチルフェニル)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド 0.55kgをTHF 6Lと共に反応器に仕込む。この撹拌混合物に、THF 3.9L中の酢酸パラジウム 3.3g及びRuPhos 13.7gを室温で窒素下で添加する。
4-ジメチルアミノ-ピペリジン 0.15kgをTHF 0.55Lと共に反応混合物に加え、内部温度を50℃に上げて、THF中1M LiHMDS 3.9Lを滴下する。
反応混合物を50℃で4.5時間撹拌し、次に室温まで冷却する。水12Lを加え;相を分離して、水相をMTBE 7Lで1回抽出する。
有機相を食塩水で洗浄し、次に10%クエン酸水溶液で2回抽出する。クエン酸相をプールし、MTBE/THFの2/1混合物を加える。二相混合物を10℃に冷却し、pH9まで35% NaOH水溶液を加える。有機相を分離し、SPM32樹脂で還流下で処理する。MTBE/THFの2/1混合物で洗浄して樹脂を濾別し、溶媒を部分的に蒸発させる。無水エタノールを加えて溶媒を蒸発させる;この手順を繰り返し、次に無水エタノール 12Lを加える。得られた溶液を60℃で加熱し、無水EtOH 0.6Lと混合した85% HPOの溶液67mLを滴下する。溶液は約半分添加するまで保持され、次に沈殿物が形成される。懸濁液を18分間加熱還流(78.0℃)し、次に1時間25分で23℃に冷却する。懸濁液を更に1時間で5℃に冷却し、22.5時間5℃に保つ。表題化合物を濾過により単離し;湿った濾滓を無水EtOH 2.5Lで洗浄し、一定重量になるまで50℃で真空乾燥する。黄色粉末の形で表題化合物が得られる。
融点220~223℃、分解あり。
【実施例2】
【0028】
I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩
工程A:N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド(遊離塩基)
THF 177mL中にPd(OAc) 213mg及びRuPhos 897mgを含有する溶液を、THF 250mL中の実施例1の工程Aで得られた8-[(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)アミノ]-N-(2,6-ジエチルフェニル)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド 21.53gに、窒素下、室温で加えた。混合物を40℃に加熱した後、THF中の1M LiHMDS 152mL及びN,N-ジメチルピペリジン-4-アミン 10.7mLを逐次添加する。反応物を40℃で2.5時間保持し、次に室温まで冷却する。次に、食塩水300mLを加えて、有機分離相を食塩水200mLで洗浄する。
有機相を活性炭2.8gで処理し;混合物をダイカライト(dicalite)パッドで濾過し、蒸発乾固させ、DCM/EtOH/NH 95:5:0.5で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。プールした画分を蒸発させて残渣とし、EtOAcに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液及び水で5回洗浄し、次いで蒸発乾固させる。生成物をオーブンで50℃で7時間、及び40℃で64時間乾燥させる。遊離塩基は非晶質の黄色粉末として得られ、そのX線回折図によって特性決定される(図1を参照のこと)。
工程B:I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩
無水エタノール 105mLの中の工程Aで得られたN-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド非晶質遊離塩基3.50gを、窒素下で60℃に加熱する。この混合物に、エタノール 17.5mLの中の85%リン酸の新たに調製した溶液0.682gを、効率的な撹拌下で20分間にわたって滴下した。得られた懸濁液を5分間加熱還流し(浴温82~84℃)、次に2時間かけて自然に室温まで冷却させ、最後に+4℃で16時間熟成させた。固体を濾過により単離し、フィルター上でエタノール 17.5mLで洗浄し、真空下で+50℃で10時間乾燥させて、黄色粉末の形態で表題化合物を生成させた。
融点220~223℃、分解あり。
実施例1及び2の表題生成物のI型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩は、Thermo/ARL XTRA装置を使用して実施された粉末X線回折図によって特性決定され、図2に示される。
この機器は、Bragg-Brentano配置に基づいており、45KV/40mA(1.8kW電力)で動作するCuKα発生器及びPeltier冷却半導体検出器を備えている。スペクトル範囲は2~40° 2θであり、1.20° 2θ/分の速度での連続走査取得を伴う。試料は、シリコン低バックグラウンドプレートに載せられた。粉末は、顕微鏡ガラススライド又は他の適切なツールで静かに押すことにより、ホルダー内で平らにされた。
結果は、面間距離d、ブラッグ角2θ(°±0.2で表される)及び相対強度(最強線に対する割合として表される)に関して表される:
【0029】
【表5】
【0030】
粉末X線回折図に特徴的なブラッグ角2θ(°±0.2として表される)は以下のとおりである:2.76、8.10、10.79、13.49、16.13、17.37、17.62、19.77、21.94、24.18、24.66。
実施例1及び2の表題化合物はまた、試料約2~4mgを載せた50μLの穴あきアルミニウムDSCパンを使用して、Perkin-Elmer DSC-7で実施したそのDSC図により特性決定された。アルミニウムディスクをこの粉末の上に当て、薄層を得て熱交換を改善した。対照は同じ種類の空のパンとした。温度スケールとエンタルピー応答に関する装置の較正を評価するために、インジウム、スズ及び鉛(LGC認定標準物質)が使用された。試料は、10℃/分の加熱速度で窒素流下で分析された。開始及びピーク温度(℃)が一般に対象のパラメーターと見なされた。
得られた図を図3に示すが融解開始温度は229℃である。
【実施例3】
【0031】
II型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩・四水和物
実施例2の工程Aで得られた化合物304mgを、25mLの三口丸底フラスコに入れ、室温で水 12mLを加える。得られた懸濁液を、61~62℃で加熱しながら撹拌する;pHは約5.3である。1時間撹拌後、HPO35.9μLと水 5mLとを加えると、ほぼ瞬時に全てが溶解して、pHが3.1に低下した。完全な溶解を保証するため、溶液を70℃に1時間加熱する(pH=3.2)。加熱浴を取り外し、容器を室温まで放冷後、2時間撹拌する。容器を一晩冷蔵庫に入れて5℃に冷却すると、溶液から黄色の沈殿物が破砕して出てくる。固体を室温で混合物内に沈殿させ、上清液を除去した。残った固体を真空下、50℃のオーブンで18時間乾燥させた。表題の化合物が黄色の固体として得られた。
広範囲の脱水吸熱:35~125℃
結晶化の発熱(T開始):190℃
表題生成物は、Thermo/ARL XTRA装置を使用して実施したその粉末回折図により特性決定された。この機器は、Bragg-Brentano配置に基づいており、45KV/40mA(1.8kW電力)で動作するCuKα発生器及びPeltier冷却半導体検出器を備えている。スペクトル範囲は2~40° 2θであり、1.20° 2θ/分の速度での連続走査取得を伴い、これによって以下の結晶パラメーターを割り出すことができる:
-単位格子パラメーター:a=13.866(2)Å;b=18.824(2)Å;c=7.2575(7)Å;α=92.014(8)°;β=91.813(7)°;γ=107.294(8)°
-空間群:P-1(2)(三斜晶系)
表題生成物はまた、Thermo/ARL XTRA装置を使用して実施した図4に示される粉末X線回折図により特性決定された。この機器は、Bragg-Brentano配置に基づいており、45KV/40mA(1.8kW電力)で動作するCuKα発生器及びPeltier冷却半導体検出器を備えている。スペクトル範囲は2~40° 2θであり、1.20° 2θ/分の速度での連続走査取得を伴う。試料は、シリコン低バックグラウンドプレートに載せられた。粉末は、顕微鏡ガラススライド又は他の適切なツールで静かに押すことにより、ホルダー内で平らにされた。
結果は、面間距離d、ブラッグ角2θ(°±0.2で表される)及び相対強度(最強線に対する割合として表される)に関して表される:
【0032】
【表6】
【0033】
粉末X線回折図に特徴的なブラッグ角2θ(°±0.2として表される):9.43、9.86、12.23、13.70、14.81、18.01、19.78、20.73、24.55、24.82、26.81。
実施例3の化合物はまた、試料約2~4mgを載せた50μLの穴あきアルミニウムDSCパンを使用して、Perkin-Elmer DSC-7で実施したそのDSC図により特性決定された。アルミニウムディスクをこの粉末の上に当て、薄層を得て熱交換を改善した。対照は同じ種類の空のパンとした。温度スケールとエンタルピー応答に関する装置の較正を評価するために、インジウム、スズ及び鉛(LGC認定標準物質)が使用された。試料は、10℃/分の加熱速度で窒素流下で分析された。開始及びピーク温度(℃)が一般に対象のパラメーターと見なされた。
得られた図を図5に示す。
【実施例4】
【0034】
長期条件下のI型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩の純度及び安定性
I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩の純度及び安定性は、以下のとおり長期条件下で試験されている:
【0035】
【表7】
【0036】
結果は、I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩が、少なくとも24ヶ月まで安定であることを示している。
【実施例5】
【0037】
I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩の溶解度
試験条件:試験化合物約730mgをWFI(注射用水)又は生理食塩水(0.9% NaCl)4mlに懸濁することにより、遊離塩基として150mg/mlの目標溶解度を試験した。懸濁液を室温で24時間、磁気撹拌し、アンバーガラスバイアルで光から保護した。試験化合物の濃度は、1時間及び24時間後に測定された。
回収した懸濁液/溶液の全量を遠心分離し、濾過及び希釈後に上層の溶液をHPLCにより分析した。
得られた結果を以下の表に要約する:
【0038】
【表8】
【実施例6】
【0039】
I型N-(2,6-ジエチルフェニル)-8-({4-[4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]-2-メトキシフェニル}アミノ)-1-メチル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミド・リン酸塩の吸湿性測定
試験対象の化合物は、動的水蒸気吸着(Dynamic Vapour Sorption)装置(DVS 1000 表面測定システム)を使用して吸湿性試験に供される。
この装置は、秤量試料が一定の制御された温度で相対湿度(RH)の変動に曝される「制御された雰囲気の微量天秤」として簡単に定義される。正確に秤量された量の生成物(通常5~10mg)が分析された。
結果を以下の表に報告する:
【0040】
【表9】
【実施例7】
【0041】
医薬組成物
A.錠剤
実施例1の用量35mgを各々含有する1000錠 100g
コムギデンプン 20g
トウモロコシデンプン 20g
乳糖 30g
ステアリン酸マグネシウム 2g
シリカ 1g
ヒドロキシプロピルセルロース 2g
B.バイアルの凍結乾燥物
実施例1の化合物、マンニトール及びTween 80を含有するバルク溶液を調製し、次に凍結乾燥して、実施例1の化合物各々35mg、マンニトール 300mg及びTween 80 5mgを含有するバイアルを得る。
凍結乾燥物は、注射用水10mlに再懸濁される。
図1
図2
図3
図4
図5