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特許7141419コンテナ用の親綱張架装置及びコンテナ用の親綱張架方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】コンテナ用の親綱張架装置及びコンテナ用の親綱張架方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20220914BHJP
   B65D 90/22 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A62B35/00 H
B65D90/22 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020032078
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021132914
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 有哉
(72)【発明者】
【氏名】津田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高取 久夫
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特許第5833942(JP,B2)
【文献】実開昭60-015888(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0252619(US,A1)
【文献】特開2007-312891(JP,A)
【文献】米国特許第5004071(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060967(US,A1)
【文献】特開平11-291863(JP,A)
【文献】特開2006-000308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
B65D 90/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ用の親綱張架装置であって、
コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置される一対の親綱張架ユニットを備え、
前記親綱張架ユニットは、
親綱支柱を有するトラス構造部材と、
上部に前記トラス構造部材が連結されるとともに、コンテナ長手方向両端のコンテナ柱に固定され、親綱が取り付けられた前記トラス構造部材を地上からコンテナ屋根面に設置するための柱材と、を有することを特徴とするコンテナ用の親綱張架装置。
【請求項2】
前記トラス構造部材は、
一端側が前記柱材に固定され、他端側がコンテナ長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面に沿って配置される水平材と、
コンテナ長手方向端部よりも内側の位置で前記水平材と連結し、コンテナ屋根面に対して略垂直に延びる前記親綱支柱と、
前記水平材と前記親綱支柱とに連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される斜材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンテナ用の親綱張架装置。
【請求項3】
前記トラス構造部材は、
一端側が前記柱材に固定され、他端側がコンテナ長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面に沿って配置される水平材と、
前記水平材の一端側と連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される第1斜材と、
前記水平材の他端側と連結し、コンテナ長手方向内側から外側に向かって傾斜して配置される第2斜材と、を含み、
前記第1斜材及び前記第2斜材は、前記水平材上方の節点で接合され、前記節点を頂点とする前記親綱支柱を形成していることを特徴とする請求項1に記載のコンテナ用の親綱張架装置。
【請求項4】
前記柱材は、上下に上部コーナーフィッティング及び下部コーナーフィッティングが設けられたコンテナ柱に設置され、
前記親綱張架ユニットは、
前記トラス構造部材の下面から下方に延び、前記上部コーナーフィッティングの上面に形成された孔に挿入可能な係止片と、
前記柱材に回動可能に設けられ、下部コーナーフィッティングの長孔内部でのロックのためのロック用留め具と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のコンテナ用の親綱張架装置。
【請求項6】
コンテナ用の親綱張架方法であって、
親綱支柱を有するトラス構造部材と、上部に前記トラス構造部材が連結される柱材とを含む一対の親綱張架ユニットに、親綱を取り付ける第1工程と、
親綱が取り付けられた前記一対の親綱張架ユニットを、コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置する第2工程と、
前記トラス構造部材がコンテナ屋根面に載置された状態で、前記柱材をコンテナに固定する第3工程と、
張力を加えて親綱を張り、親綱を左右の前記柱材それぞれに固定する第4工程と、
を含むことを特徴とするコンテナ用の親綱張架方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ屋根面での高所作業における作業者の墜落制止用器具(安全帯)を連結するための親綱張架技術に関する。
【背景技術】
【0002】
労働安全衛生法令(厚生労働省)によれば、高所作業における墜落防止措置を講ずる必要がある。代表例として、作業床や手すり等の設置が困難である場合、親綱を張架して作業者着用の墜落制止用器具(安全帯)を親綱に連結する手法がある。
【0003】
特許文献1には、高所作業用安全支柱が記載されており、安全支柱をコンテナの上部コーナーフィッティングに設置し、親綱を安全支柱に張架している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5833942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の安全支柱は、コンテナ屋根面にのぼって取り付け作業を行わなければならない。このため、親綱を張るための安全支柱の取り付け作業時(親綱を張る前)は、墜落制止用器具による墜落防止措置が講じられていない状態となり、コンテナ屋根面での作業に対する墜落防止措置が十分ではない課題がある。
【0006】
また、40フィートコンテナの場合、外寸は、幅が2438mm(8フィート)、長さが12192mm(40フィート)、高さが、2591mm(8フィート6インチ)又は2896mm(9フィート6インチ)である。そして、労働安全衛生法令では、親綱の支柱スパンが10m以下とすることが規定されている。
【0007】
このとき、特許文献1の安全支柱は、コーナーフィッティングに設置され、コンテナの四隅が設置場所となる。このため、特許文献1の安全支柱スパンが10mを超えてしまい、40フィートコンテナに適用することができない問題がある。また、例えば、安全支柱スパンが10mを超えないように、中間支柱を設置するなどの追加措置を講じることもできるが、部品点数の増加や設置手間の増加などを考慮すると、このような追加措置は現実的ではない。
【0008】
そこで、本発明は、コンテナ屋根面に上がる前に、安全かつ容易に親綱を取り付けることができるコンテナ用の親綱張架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のコンテナ用の親綱張架装置は、コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置される一対の親綱張架ユニットを備える。親綱張架ユニットは、親綱支柱を有するトラス構造部材と、上部にトラス構造部材が連結されるとともに、コンテナ長手方向両端のコンテナ柱に固定され、親綱が取り付けられたトラス構造部材を地上からコンテナ屋根面に設置するための柱材と、を有する。
【0010】
(2)上記(1)において、トラス構造部材は、一端側が前記柱材に固定され、他端側がコンテナ長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面に沿って配置される水平材と、コンテナ長手方向端部よりも内側の位置で水平材と連結し、コンテナ屋根面に対して略垂直に延びる親綱支柱と、水平材と親綱支柱とに連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される斜材と、を備えるように構成することができる。
【0011】
(3)上記(1)において、トラス構造部材は、一端側が前記柱材に固定され、他端側がコンテナ長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面に沿って配置される水平材と、水平材の一端側と連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される第1斜材と、水平材の他端側と連結し、コンテナ長手方向内側から外側に向かって傾斜して配置される第2斜材と、を含むように構成することができる。このとき、第1斜材及び第2斜材は、水平材上方の節点で接合され、節点を頂点とする親綱支柱を形成するように構成される。
【0012】
(4)上記(1)から(3)において、柱材は、上下に上部コーナーフィッティング及び下部コーナーフィッティングが設けられたコンテナ柱に設置することができる。このとき、親綱張架ユニットは、トラス構造部材の下面から下方に延び、上部コーナーフィッティングの上面に形成された孔に挿入可能な係止片と、柱材に回動可能に設けられ、下部コーナーフィッティングの長孔内部でのロックのためのロック用留め具と、を有するように構成することができる。
(5)上記(1)から(4)において、柱材は、トラス構造部材と連結する第1柱部と、第1柱部に対してスライド自在に嵌合する第2柱部と、第1柱部及び第2柱部において、一方の柱部に形成される第1挿通孔と、他方の柱部に形成される、上下方向に離間した複数の第2挿通孔とを含み、第1挿通孔と前記第2挿通孔とに挿入されるロック部材によって、トラス構造部材をコンテナ屋根面に設置するためのコンテナの高さに対応したスライド位置で固定する固定部と、第2柱部に設けられ、親綱支柱から張架される親綱の綱止め部と、を有するように構成することができる。
【0013】
(6)本発明のコンテナ用の親綱張架方法は、親綱支柱を有するトラス構造部材と、上部にトラス構造部材が連結される柱材とを含む一対の親綱張架ユニットに、親綱を取り付ける第1工程と、親綱が取り付けられた一対の親綱張架ユニットを、コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置する第2工程と、トラス構造部材がコンテナ屋根面に載置された状態で、柱材をコンテナに固定する第3工程と、張力を加えて親綱を張り、親綱を左右の柱材それぞれに固定する第4工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、親綱支柱を有するトラス構造部材と当該トラス構造部材が連結された柱材とで構成される一対の親綱張架ユニットを、コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置し、柱材をコンテナ柱に固定する。このため、親綱が取り付けられたトラス構造部材を地上からコンテナ屋根面に設置することができる。
【0015】
したがって、コンテナ屋根面に上がる前に、安全かつ容易に親綱を取り付けることができ、コンテナ屋根面での墜落制止用器具による墜落防止措置を適切に講ずることが可能となる。言い換えれば、墜落防止措置が講じられていない親綱が設置される前のコンテナ屋根面での親綱張架作業を無くすことができ、安全な高所作業を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るコンテナ用の親綱張架装置を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る親綱張架ユニットの構成例及びコンテナのコーナーフィッティングとの連結例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る親綱張架装置が適用された親綱の張架例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る親綱張架ユニットの第1変形例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る親綱張架装置を適用した親綱張架方法を説明する図である。
図6図5に続く、本発明の第1実施形態に係る親綱張架装置を適用した親綱張架方法を説明する図である。
図7図6に続く本発明の第1実施形態に係る親綱張架装置を適用した親綱張架方法を説明する図である。
図8図7に続く本発明の第1実施形態に係る親綱張架装置を適用した親綱張架方法を説明する図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る親綱張架ユニットの第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1から図9は、第1実施形態の親綱張架装置を示す図である。図1は、コンテナ500に適用された親綱張架装置100を示す正面図である。
【0019】
本実施形態の親綱張架装置100は、コンテナ500の屋根にのぼっての作業(例えば、コンテナ屋根面501の補修・修復作業など)において、作業者が梯子でコンテナ屋根面501にのぼる前に、地上から親綱Oをコンテナ屋根面501に設置することができる。このため、墜落防止措置が講じられていない親綱Oが設置される前のコンテナ屋根面501における親綱張架作業を無くすことができ、コンテナ屋根面501における安全な高所作業を実現することができる。
【0020】
親綱張架装置100は、一対の親綱張架ユニット100A,100Bを備え、図1に示すように、コンテナ500の長手方向両端にそれぞれ設置される。コンテナ500は、上述した40フィートコンテナや20フィートコンテナである。コンテナ柱530には、上下に上部コーナーフィッティング520及び下部コーナーフィッティング510が設けられている。
【0021】
なお、親綱張架ユニット100A,100Bは、同じ構成なので、以下の説明では、親綱張架ユニット100Aについて説明し、親綱張架ユニット100Bの説明に代える。また、コンテナ500の高さ方向をZ方向、コンテナ500の長手方向をX方向、コンテナ500の幅方向をY方向とし、これらの方向は互いに直交している。
【0022】
親綱張架ユニット100Aは、親綱支柱110を有するトラス構造部材と、上部にトラス構造部材が連結される柱材140とを含んで構成されている。柱材140は、コンテナ500の長手方向両端のコンテナ柱530に固定される。柱材140は、親綱Oが取り付けられたトラス構造部材を地上からコンテナ屋根面501に設置するための長尺状の部材である。トラス構造部材を構成する各部材及び柱材は、例えば、重量低減のため、中空の角パイプ材を用いることができる。
【0023】
柱材140は、トラス構造部材(水平材120)と連結する第1柱部141と、第1柱部に対してスライド自在に嵌合する第2柱部142とで構成され、第1柱部141及び第2柱部142との連結箇所において、コンテナの高さに対応したスライド位置で固定する固定部143が設けられている。
【0024】
トラス構造部材は、一端側が柱材140(第1柱部141)に固定され、他端側がコンテナ500の長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面501に沿って配置される水平材120と、コンテナ500の長手方向端部よりも内側の位置で水平材120と連結し、コンテナ屋根面501に対して略垂直に延びる親綱支柱110と、水平材120と親綱支柱110とに連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される斜材130と、を備えている。親綱支柱110の下面には、コンテナ屋根面501に接触する幅広の当接部材111が設けられている。
【0025】
親綱支柱110、水平材120、斜材130で構成されるトラス構造部材は、図1に示すように、親綱支柱110と斜材130の連結部が節点となる、直角三角形状に形成されている。節点(親綱支柱110)には、親綱Oが挿通されるリング状の係止部材が設けられ、さらに、斜材130の柱材140側の端部にも、親綱Oが挿通されるリング状の係止部材が設けられている。親綱Oは、親綱支柱110から斜材130に沿って柱材140の綱止め部144に向かってガイドされ、綱止め部144で固定される。
【0026】
コンテナ500に固定される柱材140(親綱張架ユニット100A)は、第2柱部142にロック用留め具160が設けられている。ロック用留め具160は、第2柱部142に回動可能に設けられ、下部コーナーフィッティング510の長孔内部でロックされて、柱材140をコンテナ柱530に固定する。
【0027】
水平材120の下面(トラス構造部材の下面)には、係止片150が設けられている。係止片150は、コンテナ柱530の上部コーナーフィッティング520の上面側に形成された孔に挿入される部材であり、水平材120の下面から下方に向かって延びている。係止片150が上部コーナーフィッティング520に挿入されることで、トラス構造部材のY方向(コンテナ500の幅方向)の移動が阻止される。
【0028】
なお、図示した例では、親綱支柱110に対して、親綱支柱110の側面に水平材120が連結し、水平材120が柱材140と連結しているが、トラス構造部材を構成する各部材の連結構造やトラス構造部材と柱材140との連結構造は、任意である。また、係止片150は、トラス構造部材の下面において下方に延び、上部コーナーフィッティング520の上面側の孔に挿通可能な態様で取り付けられていればよい。
【0029】
図2は、親綱張架ユニット100A(100B)の構成及びコンテナ500の各コーナーフィッティング510,520との連結例を示す図である。
【0030】
図2に示すように、係止片150は、水平材120の下面に固定され、下方に延びる板状部材である。上部コーナーフィッティング520の上面には、X方向に長い長孔521が形成されており、長孔521に係止片150が挿入される。
【0031】
このとき、水平材120の下面は、コンテナ屋根面501と非接触状態で設置されており、トラス構造部材は、親綱支柱110の当接部材111によってコンテナ屋根面501と接触している。なお、水平材120の下面にコンテナ屋根面501が当接するように構成してもよい。
【0032】
ロック用留め具160は、棒状の操作部材161にX方向に延びる軸部材163が設けられ、軸部材163に先端に、ロック部材162が取り付けられた構造を有している。ロック部材162は、下部コーナーフィッティング510の長孔511の長手方向に対応する縦の長さが長く形成され、横幅は、長孔511の幅よりも小さい。そして、アンロック時は、長孔511内部に挿入され、軸方向への移動が許容される。一方、ロック時は、長孔511内部に挿入した状態で軸部材163を回転させる。このため、長孔511の幅方向壁内面にロック部材162が当接し、軸方向への移動が阻止される。軸部材163は、柱材140(第2柱部142)に回動可能に挿通されており、ロック部材162とは逆側の端部に、操作部材161が接続されている。X方向に延びる軸部材163に対して操作部材161の長手方向が直角となるように互いに連結されているため、図2に示すように、操作部材161を時計回りに回転させると、ロック部材162が回転して軸方向への移動が阻止される状態となり、ロック状態から操作部材161を反時計回りに回転させると、ロック部材162が回転して軸方向への移動が許容され、ロック部材162を長孔511から取り外すことができる。
【0033】
柱材140の固定部143は、スライド機構を有し、第1柱部141と第2柱部142を任意のスライド位置で固定する。第1柱部141には、挿通孔143bが形成され、同様に第2柱部142にも挿通孔143cが形成されている。第1柱部141と第2柱部142を相対移動させてスライドし、両挿通孔143b,143cが重なった位置でロック部材143aを挿通孔143b,143cに挿入することで固定することができる。このとき、第2柱部は、上下方向に離間した複数の挿通孔143bが形成されるように構成することができる。このように構成することで、トラス構造部材をコンテナ屋根面501に設置するためのコンテナ500の高さに対応したスライド位置で重なる挿通孔143bにロック部材143aを挿入することで、容易に長さ調節を行うことができる。
【0034】
なお、ロック部材143aは、例えば、ボルトであり、各挿通孔143b,143cに挿入されたボルトは、ナットで締結することができる。このとき、蝶ナットを用いることで、工具なしで容易に締結を行うことができる。また、締結軸の方向は、Y方向(Y-Z平面上)であり、ボルトの頭部やナットがコンテナ500(コンテナ柱530)と干渉することなく、親綱張架ユニット100A(100B)を設置することができる。
【0035】
図3は、親綱張架装置100が適用された親綱Oの張架例を示す図である。図3に示すように、親綱支柱110は、コンテナ500の長手方向端部よりも内側の位置で水平材120の端部と連結し、コンテナ屋根面501に対して略垂直に延びている。このため、親綱張架ユニット100A,100Bの各親綱支柱110のスパン(親綱スパン)は、コンテナ500の長さよりも短くなる。
【0036】
したがって、40フィートコンテナの場合、長さが12192mm(40フィート)であるため、水平材の長さを約1100mmにすれば、親綱支柱110は、コンテナ長手方向端部から約1100mm内側に位置し、親綱スパンを10m以下にすることができる。
【0037】
本実施形態の親綱張架装置100は、20フィートコンテナに適用しても親綱張架作業を地上から行うことができ、墜落防止措置が講じられていない状態での高所作業を抑制することができるが、さらに、40フィートコンテナに適用した場合、親綱スパンを規定長以内にすることができ、墜落防止措置の安全性を向上させることができる。また、親綱スパンが10mを超えないように、中間支柱を設置するなどの追加措置を講じる必要もなく、部品点数の増加や設置手間の増加などが抑制される。
【0038】
特に、本実施形態では、親綱支柱110がトラス構造体の一部として構成され、親綱支柱110の端部(頂点)がトラス構造体の節点となっている。このため、親綱Oに対するZ方向上下の荷重が分散され、簡易な構成で適切な耐荷重性を確保することができ、親綱張架装置100全体の重量を低減することができる。
【0039】
図4は、本実施形態のトラス構造部材の第1変形例を示す図である。図4では、親綱支柱110が、コンテナ屋根面501から略垂直に伸びる支柱ではなく、2つの斜材131,132で構成されているトラス構造部材を備えた親綱張架ユニット100Cを例示している。なお、図2と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0040】
第1変形例のトラス構造部材は、一端側が柱材140に固定され、他端側がコンテナ長手方向内側に向かって延び、コンテナ屋根面501に沿って配置される水平材121と、水平材121の一端側と連結し、コンテナ長手方向内側に向かって傾斜して配置される第1斜材131と、水平材120の他端側と連結し、コンテナ長手方向内側から外側に向かって傾斜して配置される第2斜材132と、を含んで構成されている。そして、第1斜材131及び第2斜材132が、水平材120上方で接合されて節点を形成し、節点を頂点とする親綱支柱を形成している。
【0041】
本変形例においても、親綱Oに対するZ方向上下の荷重が分散され、簡易な構成で適切な耐荷重性を確保することができ、親綱張架装置100全体の重量を低減することができる。
【0042】
図5から図8は、親綱張架装置100を適用した親綱張架方法を説明する図である。
【0043】
本実施形態の親綱張架方法は、以下の工程(ステップ)を含む。
A)一対の親綱張架ユニット100A,100Bに親綱Oを取り付ける(第1工程)。
B)親綱Oが取り付けられた一対の親綱張架ユニット100A,100Bを、コンテナ長手方向両端にそれぞれ設置する(第2工程)。
C)トラス構造部材がコンテナ屋根面501に載置された状態で、柱材140をコンテナ500に固定する(第3工程)。
D)張力を加えて親綱Oを張り、親綱Oを左右の柱材140それぞれに固定する(第4工程)。
【0044】
まず、第1工程は、図5において、左側親綱張架ユニット100Aと、右側親綱張架ユニット100Bとを地面に横たえて置き、1本の親綱Oを、各親綱支柱110に取り付ける。このとき、柱材140の長さをコンテナ高さ(屋根面)に合わせてスライド調節しておく。
【0045】
次に、第2工程及び第3工程は、図6において、柱材140を持ち、左側親綱張架ユニット100Aを持ち上げて、コンテナ屋根面501に、当接部材111を当接させつつ、係止片150を上部コーナーフィッティング520の孔に挿入する。そして、下部コーナーフィッティング510に、ロック用留め具160を挿入してロックし、柱材140をコンテナ柱530に固定する。また、図7において、右側親綱張架ユニット100Bの同様にコンテナ500に設置する。なお、両親綱張架ユニット100A,100Bの取り付け作業は、同タイミングで行ってもよい。
【0046】
第4工程では、左側親綱張架ユニット100Aの綱止め部144に親綱Oを固定し、右側親綱張架ユニット100Bの綱止め部144に、親綱Oの他端を挿通し、親綱Oに張力を与えて張る。そして、張力を与えてコンテナ屋根面501とほぼ平行に張れた状態で、親綱Oを右側親綱張架ユニット100Bの綱止め部144に固定する。このとき、親綱Oを最初に固定する親綱張架ユニットはどちらであってもよい。また、親綱Oを綱止め部144に固定する方法は、適宜公知に手法を用いることができる。例えば、ロープストッパーなどの機材を用いて綱止め部144に親綱Oを固定することができる。
【0047】
図9は、本実施形態の親綱張架ユニット100A,100Bの第2変形例を示す図である。図1の例では、親綱張架ユニット100A,100Bの双方に、綱止め部144が設けられ、親綱Oを柱材140に固定していたが、例えば、一方の親綱張架ユニット100B(100Aであってもよい)の親綱支柱110の節点を綱止め部144aとして構成することもできる。つまり、節点に設けられる親綱支柱110のリング状の係止部材に親綱Oの一端を固定し、他端側の親綱Oは、親綱張架ユニット100Aの綱止め部144に固定されるように構成することができる。
【0048】
本第2変形例では、親綱張架ユニット100Bの柱材140に、綱止め部144を設ける必要がなく、部品点数を低減することができる。また、親綱Oの長さ自体を短くすることができる。例えば、親綱Oの長さが短くなれば、張力が加わった際の親綱Oの伸びを小さくすることができる。
【0049】
そして、第2変形例の場合、図5から図8に示した親綱張架方法において、第1工程は、地面に横たえて置かれた左側親綱張架ユニット100Aに1本の親綱Oを取り付けると共に、右側親綱張架ユニット100Bの親綱支柱110の節点(リング状の係止部材)に親綱Oの一端部を固定する。第2工程及び第3工程は同じで、第4工程では、左側親綱張架ユニット100Aの綱止め部144に親綱Oの他端を挿通し、親綱Oに張力を与えて張る。そして、張力を与えてコンテナ屋根面501とほぼ平行に張れた状態で、親綱Oを左側親綱張架ユニット100Bの綱止め部144に固定する。
【符号の説明】
【0050】
100 親綱張架装置
100A,100B 親綱張架ユニット
110 親綱支柱
111 当接部材
120,121 水平材
130,131,132 斜材
140 柱材
141 第1柱部
142 第2柱部
143 固定部
143a ロック部材
143b,143c 挿通孔
144 綱止め部
150 係止片
160 ロック用留め具
161 操作部材
162 ロック部材
163 軸部材
500 コンテナ
501 コンテナ屋根面
502 コンテナ床面
510 下部コーナーフィッティング
511 長孔
520 上部コーナーフィッティング
530 コンテナ柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9