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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】多層フィルム及び金属積層板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220914BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220914BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20220914BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/34
B32B15/082 B
B32B15/088
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020510755
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011557
(87)【国際公開番号】W WO2019188611
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018067659
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松山 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】田井 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祥
(72)【発明者】
【氏名】間山 孝之
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006149(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084867(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0282488(US,A1)
【文献】古河電工時報,日本,2007年09月,第120号,第135-137頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層された多層フィルムであって、前記フッ素樹脂層及び前記ポリイミド樹脂層の合計層数が5層以上であり、前記多層フィルム全体の厚さに対する前記フッ素樹脂層の総厚さの割合が60%超であり、前記多層フィルムの最外層の少なくとも一方がフッ素樹脂層である多層フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムの最外層の双方がフッ素樹脂層である請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂層の線膨張係数が25ppm/K以下であり、前記ポリイミド樹脂層の厚さが25μm以下である、請求項1又は2記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記フッ素樹脂層の厚さが50μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記最外層におけるフッ素樹脂層の厚さが、前記多層フィルムの内部層におけるフッ素樹脂層の厚さ以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の多層フィルムと、前記多層フィルムの少なくとも一方の面に配置された金属箔とを含む金属積層板。
【請求項7】
前記金属箔が、銅箔、銅合金箔、ステンレス箔、及びアルミ箔からなる群より選ばれるいずれか1種以上である、請求項6記載の金属積層板。
【請求項8】
前記金属箔の表面粗度(Rz)が、1.5μm以下である、請求項6又は7記載の金属積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及び金属積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板(FPC)の絶縁材料としてポリイミド樹脂が広く用いられている。しかしながら、近年の電子機器の高速通信、自動車へのミリ波レーダー搭載等の安全機能向上に伴って、高速伝送(低伝送損失)を向上することが求められており、ポリイミド樹脂の特性のみでこの要求に対応することは困難となってきている。この高速伝送には絶縁材料の誘電率及び誘電正接(以下、まとめて誘電特性ともいう。)が影響することが知られており、その誘電特性に優れる絶縁材料としてフッ素樹脂(PTFE等)及び液晶ポリマー(LCP)が注目されている。しかしながら、これらの材料は、金属箔等の異種材料との接着性が十分ではなく、更にフッ素樹脂を用いた場合は回路形成時のレーザー加工性が十分ではない。また、フッ素樹脂は、線膨張係数(CTE)が大きく寸法安定性が十分ではないため、フッ素樹脂単独でFPC材料の絶縁層に使用することは困難である。このため、寸法安定性に優れるガラスクロス等のガラス基材にフッ素樹脂を含浸させることにより高い寸法安定性を付与させたリジッド材料が広く用いられている。しかしながら、ガラスクロス等のガラス基材を用いると製品の厚さが大きくなり、さらにガラス自体の誘電率が高いことに起因して当該製品の誘電率が大きくなるという欠点がある。このような問題を解決する手段として、FPC材料の絶縁層として、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂の多層フィルムが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)銅箔/(B)ポリイミド層/(C)フッ素樹脂層/(D)ポリイミド層/(E)フッ素樹脂層/(F)ポリイミド層/(G)銅箔がこの順に積層されている回路用基板において、(B)ポリイミド層及び(F)ポリイミド層を、所定のポリイミド層とし、(D)ポリイミド層の線膨張率を特定値以下とすることにより、高周波帯においても伝送損失が極めて少なく、寸法安定性にも優れる回路用基板が得られることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、厚みが15μm以下のポリイミドフィルムの少なくとも片面にフッ素樹脂層が積層されている多層ポリイミドフィルムは、低い誘電率及び低い線膨張係数を有することが開示されている。この文献の実施例では、ポリイミドフィルムの両面にプライマー層を形成し、さらにプライマー層の上に、フッ素樹脂層を形成することにより得られる多層フィルムが開示されている。
【0005】
特許文献3には、芳香族ポリイミド層の少なくとも片面に所定の厚さを有する熱圧着性多層ポリイミドフィルムとフッ素樹脂フィルムとを所定の方法にラミネートして得られるポリイミド基板が開示されている。この文献によれば、上記のポリイミド基板は、高耐熱性ポリイミドフィルムの特性を維持しつつ、低誘電率性を付与できることが開示されている。また、この文献の実施例では、熱圧着性三層押し出しポリイミドフィルムの両面にフッ素樹脂フィルム及び銅箔を順次重ね合わせて得られる銅箔積層板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-106629号公報
【文献】特開2017-136755号公報
【文献】特許第4029732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の回路用基板については、伝送損失を一層低くすることが求められる。
【0008】
特許文献2の実施例では、多層フィルムは、フッ素樹脂と銅箔との接着性を高めるためにその層間に接着剤フィルムを用いているが、フッ素樹脂と銅箔の直接的な接着性については開示されていない。このような多層フィルムを用いて得られる銅箔積層板は、銅箔の近傍に接着剤フィルムの成分であるアクリル樹脂、エポキシ樹脂が存在することになり、誘電特性が十分ではない。また、銅箔積層板に回路を形成するためのレーザー加工性も十分ではない。
【0009】
特許文献3の実施例では、多層フィルムの構成は、フッ素樹脂/ポリイミド樹脂/フッ素樹脂の3層構成であり、このような構成では十分な誘電特性を確保するためにフッ素樹脂層の厚さを大きくする必要があるが、そうすると、回路を形成するためのレーザー加工性が十分ではない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、優れたレーザー加工性、誘電特性、耐絶縁破壊性、及び高速伝送特性を同時に満たすことができる多層フィルム及び金属積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層された多層フィルムにおいて、フッ素樹脂層及びポリイミド樹脂層の合計層数を特定値以上とし、多層フィルム全体の厚さに対するフッ素樹脂層の総厚さの割合を特定値以上とし、多層フィルムの最外層の少なくとも一方をフッ素樹脂層とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)
フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層された多層フィルムであって、前記フッ素樹脂層及び前記ポリイミド樹脂層の合計層数が5層以上であり、前記多層フィルム全体の厚さに対する前記フッ素樹脂層の総厚さの割合が50%以上であり、前記多層フィルムの最外層の少なくとも一方がフッ素樹脂層である多層フィルム。
(2)
前記多層フィルムの最外層の双方がフッ素樹脂層である(1)の多層フィルム。
(3)
前記ポリイミド樹脂層の線膨張係数が25ppm/K以下であり、前記ポリイミド樹脂層の厚さが25μm以下である、(1)又は(2)の多層フィルム。
(4)
前記フッ素樹脂層の厚さが50μm以下である、(1)~(3)のいずれかの多層フィルム。
(5)
前記最外層におけるフッ素樹脂層の厚さが、前記多層フィルムの内部層におけるフッ素樹脂層の厚さ以下である、(1)~(4)のいずれかの多層フィルム。
(6)
(1)~(5)のいずれかの多層フィルムと、前記多層フィルムの少なくとも一方の面に配置された金属箔とを含む金属積層板。
(7)
前記金属箔が、銅箔、銅合金箔、ステンレス箔、及びアルミ箔からなる群より選ばれるいずれか1種以上である、(6)の金属積層板。
(8)
前記金属箔の表面粗度(Rz)が、1.5μm以下である、(6)又は(7)の金属積層板。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、優れたレーザー加工性、誘電特性、耐絶縁破壊性及び高速伝送特性を同時に満たすことができる多層フィルム及び金属積層板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の多層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の金属積層板の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、SEMの観察箇所を説明するための概略説明図である。
図4図4は、実施例1の代表的な観察写真である。
図5図5は、比較例1の代表的な観察写真である。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本明細書において、「耐絶縁破壊性」とは、絶縁材料として用いた際、電圧を高くしても絶縁破壊を抑制できる性質をいう。
【0017】
[多層フィルム]
本実施形態の多層フィルムは、フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層された多層フィルムである。フッ素樹脂層及びポリイミド樹脂層の合計層数は、5層以上である。多層フィルム全体の厚さに対するフッ素樹脂層の総厚さの割合は、50%以上である。多層フィルムの最外層の少なくとも一方は、フッ素樹脂層である。本実施形態の多層フィルムは、これらの構成を備えることにより、優れたレーザー加工性、誘電特性、耐絶縁破壊性及び高速伝送特性を同時に満たすことができる。
【0018】
図1に本実施形態の多層フィルムの一例を示す。図1に示す多層フィルム10は、フッ素樹脂層1、ポリイミド樹脂層2、フッ素樹脂層3、ポリイミド樹脂層4、及びフッ素樹脂層5がこの順序で積層されている。
【0019】
本実施形態の多層フィルムは、フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層され、フッ素樹脂層及びポリイミド樹脂層の合計層数(積層数)が5層以上である構成を備える。上記構成を備えることにより、絶縁層(フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層)の層数と、界面の数が多くなり、その結果、多層フィルムは、その厚さ方向の耐絶縁破壊性に優れる。また、多層フィルムはポリイミド樹脂層を有するため、回路材料等に用いる際のレーザー加工時の不要な削れ(抉れ)を抑制でき、レーザー加工後のめっき処理による導通信頼性に優れる。本実施形態の多層フィルムは、多層フィルム全体の厚さに対するフッ素樹脂層の総厚さの割合が50%以上である構成を備える。上記構成を備えることにより、多層フィルムは、誘電特性に優れる。本実施形態の多層フィルムは、その最外層の少なくとも一方がフッ素樹脂層である構成を備える。上記構成を備えることにより、本実施形態の多層フィルムは、金属箔(例えば、銅箔)との接着力と高速伝送特性に優れる。
【0020】
(フッ素樹脂層)
フッ素樹脂層におけるフッ素樹脂は、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、フッ素原子を有するモノマー(以下、「フッ素含有モノマー」という。)を重合成分として含有する重合体(以下、「フッ素含有重合体」という。)が挙げられる。フッ素含有重合体は、1種類の重合成分から構成される単独重合体であってもよく、2種類以上の重合成分から構成される共重合体であってもよい。
【0021】
フッ素含有モノマーとしては、例えば、不飽和フッ化炭化水素(例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンなどのフルオロオレフィン類)、及びエーテル基含有不飽和フッ化炭化水素(例えば、フッ化アルキルビニルエーテル)が挙げられる。これらのフッ素含有モノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
フッ素含有重合体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。これらのフッ素含有重合体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、フッ素含有重合体としては、金属箔との密着性に一層優れる観点から、PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、PFAであることがより好ましい。
【0023】
フッ素樹脂として、公知の方法により調製した調製品、又は市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ダイキン工業株式会社製品の「ネオフロンFEP」、「ネオフロンPFA」及び株式会社潤工社製品の「JUNFLON」が挙げられる。
【0024】
フッ素樹脂層は、本発明の作用効果を阻害しない範囲において、フッ素樹脂以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。例えば、レーザー加工性を向上させるため染料、顔料等の着色剤を添加してもよい。フッ素樹脂層におけるフッ素樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、50質量%以上であってもよい。
【0025】
フッ素樹脂層の厚さは、50μm以下であることが好ましい。上記厚さが50μm以下であることにより、本実施形態の多層フィルムは、レーザー加工性に一層優れる傾向にある。同様の観点から、フッ素樹脂層の厚さは40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましく、25μm以下であることが特に好ましい。
【0026】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂層におけるポリイミド樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂及び熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられ、線膨張係数が小さいという観点から、ポリイミド樹脂は、熱硬化性ポリイミド樹脂であることが好ましい。熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、酸二無水物とジアミンを共重合することによって得られる縮合型ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、及びマレイミド樹脂が挙げられ、縮合型ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0027】
酸二無水物及びジアミンとしては、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれであってもよく、耐熱性の観点からは、酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。
【0028】
酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、及びビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。これらの酸二無水物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、2,4-ジアミノデュレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、o-トリジン、m-トリジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p-ターフェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス-1,4-ジアミノシクロヘキサン、シス-1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、1,3-ジアミノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
ポリイミド樹脂としては、公知の方法により調製した調製品、又は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、東レ・デュポン株式会社製品の「カプトンENシリーズ」、「カプトンHシリーズ」、「カプトンVシリーズ」、カネカ株式会社製品の「アピカルHPシリーズ」、「アピカルNPIシリーズ」、及び宇部興産株式会社製品の「ユーピレックスS」が挙げられる。
【0031】
ポリイミド樹脂層は、本発明の作用効果を阻害しない範囲において、ポリイミド樹脂以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ポリイミド樹脂以外の成分としては、例えば、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂層におけるポリイミド樹脂の含有量は、特に限定されず。例えば、50質量%以上であってもよい。
【0032】
ポリイミド樹脂層の線膨張係数は、25ppm/K以下であることが好ましい。線膨張係数が25ppm/K以下であることにより、本実施形態の多層フイルムは、耐熱性及び寸法安定性に一層優れる傾向にある。ここでいう「寸法安定性」とは、多層フィルムを金属積層板等に用いた際の寸法安定性をいう。同様の観点から、線膨張係数は、24ppm/K以下であることがより好ましく、23ppm/K以下であることが更に好ましい。線膨張係数は、例えば、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0033】
ポリイミド樹脂層の厚さは、25μm以下であることが好ましい。上記厚さが25μm以下であることにより、レーザー加工性及び耐吸水性に一層優れる傾向にある。同様の観点から、ポリイミド樹脂層の厚さは、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましく、12.5μm以下であることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態の多層フィルムは、フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層とが交互に積層され、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層の合計層数(積層数)が5層以上である構成を備える。上記構成を備えることにより、絶縁層(フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層)の層数と界面の数が多くなり、その結果、多層フィルムは、その厚さ方向の耐電圧に優れ、耐絶縁破壊性に優れる。同様の観点から、上記合計層数は、6層以上であることが好ましく、7層以上であることがより好ましい。また、多層フィルムはポリイミド樹脂層を有するため、レーザー加工性にも優れる。
【0035】
本実施形態の多層フィルムにおいて、フッ素樹脂層及びポリイミド樹脂層の各樹脂層の種類の数は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0036】
本実施形態の多層フィルムにおいて、多層フィルム全体の厚さに対するフッ素樹脂層の総厚さの割合は、50%以上である。上記割合が50%以上であることにより、多層フィルムは、誘電特性に優れる。同様の観点から、上記割合は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。
【0037】
本実施形態の多層フィルムの厚さは、例えば、20~300μmであり、ハンドリング性、低伝送損失の観点から、好ましくは50~300μmであり、より好ましくは75~250μmである。
【0038】
本実施形態の多層フィルムは、その最外層の少なくとも一方がフッ素樹脂である構成を備える。上記構成を備えることにより、本実施形態の多層フィルムは、回路(例えば、銅箔等の金属箔)との接着力と高速伝送特性に優れる。ここで、回路との接着力と高速伝送特性の観点から、回路と接する樹脂層がフッ素樹脂層であることが好ましく、多層フィルムの両面に回路が形成される場合には、多層フィルムの最外層の双方がフッ素樹脂層であることが好ましい。
【0039】
本実施形態の多層フィルムは、最外層におけるフッ素樹脂層の厚さが多層フィルムの内部層におけるフッ素樹脂層の厚さ以下である構成を備えることが好ましい。上記構成を備えることにより、多層フィルムは、レーザー加工性に一層優れる傾向にある。
【0040】
[金属積層板]
本実施形態の金属積層板(金属積層体)は、本実施形態の多層フィルムと、多層フィルムの少なくとも一方の面に配置された金属箔とを含む。本実施形態の金属積層板は、本実施形態の多層フィルムを含むことにより、優れたレーザー加工性、誘電特性、耐絶縁破壊性、及び高速伝送特性に優れる。
【0041】
図2に本実施形態の金属積層板の一例を示す。図2に示す金属積層板100は、図1に示す多層フィルム10の両面に金属箔11、12が配置されている。
【0042】
金属積層板は、多層フィルムの両面にそれぞれ金属箔が配置された形態を有してもよく、多層フィルムの片面のみに金属箔が配置された形態を有してもよい。
【0043】
(金属箔)
金属箔は、特に限定されず、銅箔、銅合金箔、ステンレス箔、及びアルミ箔からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、銅箔であることがより好ましい。
【0044】
金属箔の厚さは、特に限定されず、例えば、6~70μm程度であってもよい。
【0045】
金属箔の表面粗度(Rz)は、1.5μm以下であることが好ましい。表面粗度が1.5μm以下であることにより、金属積層板は、回路材料として用いる際に回路材料の導体の表皮効果を小さくでき、その結果、低伝送損失性を向上できる傾向にある。金属箔の表面粗度(Rz)は、1.3μm以下であることが更に好ましい。
【0046】
(金属積層体の製造方法)
本実施形態の金属積層体の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いられる。金属積層体の製造方法の具体例としては、本実施形態の多層フィルムの両面の少なくとも一方に金属箔を重ね合わせた状態でプレス積層する方法が挙げられる。プレス積層法において、加圧温度は、特に限定されず、250~350℃程度であってもよく、圧力は、特に限定されず、例えば、3~5MPa程度であってもよい。
【0047】
上述した各物性の評価及び測定方法については、特に明記しない限り、以下の実施例に記載された方法に従って評価及び測定することができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
(フッ素樹脂層)
・フッ素樹脂フィルム(ダイキン工業株式会社製品の「ネオフロンFEP」。以下では、「FEP」とも記載する。)
・フッ素樹脂フィルム(株式会社潤工社製品の「JUNFLON」。以下では、「PFA」とも記載する。)
(ポリイミド樹脂層)
・ポリイミド樹脂フィルム(CTEが16ppm/Kの東レデュポン株式会社製品の「カプトンEN」。以下では、「カプトンEN」とも記載する。)
・ポリイミド樹脂フィルム(CTEがppm/Kの宇部興産株式会社製品の「ユーピレックスS」。以下では、「ユーピレックスS」とも記載する。)
(金属箔)
・銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製品「CF-T49A-DS-HD2―12μm」。以下では、「低粗度銅箔」とも記載する。)
・銅箔(福田金属箔分工業株式会社製「CF-H9A-DS-HD2-12μm」。以下では、「通常粗度銅箔」とも記載する。)
【0050】
[合成例1]
反応容器の中に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)68gと、p-フェニレンジアミン(p-PDA)2.4933g及び4,4’-オキシジアニリン(ODA)1.1542gを添加後、室温で撹拌して、NMPにp-PDAとODAとを溶解させた。得られた溶液に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.3524gを徐々に添加した。その後、室温下で3時間撹拌することにより樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0051】
[製造例1]
合成例1で得られたポリアミック酸溶液を低粗度銅箔の粗化処理面にイミド化後の樹脂層厚さが12.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、130℃で10分間乾燥させた。ポリアミック酸溶液を塗布し乾燥した銅箔を、室温まで冷却後、段階的に360℃(物温)まで加熱した。360℃で2時間保持後、室温まで自然冷却し、銅箔とポリイミド層から構成される2層フレキシブル金属積層板(以下、「CCL」とも記載する。)を得た。得られたポリイミド層の線膨張係数(以下、「CTE」とも記載する。)は18ppm/Kを示した。
【0052】
[実施例1]
低粗度銅箔、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0053】
[実施例2]
低粗度銅箔、12.5μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、50μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0054】
[実施例3]
低粗度銅箔、12.5μmの厚さを有するPFA、25μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA、25μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0055】
[実施例4]
低粗度銅箔、12.5μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA、25μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA、及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0056】
[実施例5]
低粗度銅箔、25μmの厚さを有するFEP、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するFEP、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA、及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0057】
[実施例6]
通常粗度銅箔、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA及び通常粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0058】
[実施例7]
低粗度銅箔、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するユーピレックスS、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するユーピレックスS、25μmの厚さを有するPFA及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0059】
[比較例1]
低粗度銅箔、50μmの厚さを有するPFA、50μmの厚さを有するPFA、及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0060】
[比較例2]
低粗度銅箔、50μmの厚さを有するFEP、50μmの厚さを有するFEP、及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0061】
[比較例3]
低粗度銅箔、25μmの厚さを有するFEP、50μmの厚さを有するカプトンEN、25μmを有するFEP及び低粗度銅箔をこの順序で重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0062】
[比較例4]
製造例1で得られたCCL、12.5μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、25μmの厚さを有するPFA、12.5μmの厚さを有するカプトンEN、12.5μmの厚さを有するPFA、製造例1で得られたCCLをこの順序で、CCLのポリイミド層面がPFAと接するように重ねて、温度320℃及び圧力4MPaの条件にて10分間プレス積層することにより、多層フィルムの両面に銅箔が配置した金属積層板を作製した。
【0063】
各実施例及び比較例で得られた多層フィルムの各物性の測定及び評価は、以下の方法により行った。結果を表1及び表2に示す。
【0064】
[厚さ]
株式会社ミツトヨ製マイクロメータMDC-25MXを用いて測定した
【0065】
[線膨張係数(CTE)]
島津製作所製の熱機械分析装置TMA-60を用いて、サンプルサイズを幅5mm、長さ15mmとして、加重5g、10℃/分の昇温速度で加熱した際の100℃から200℃までの寸法変化により算出した。
【0066】
[表面粗度(Rz)]
銅箔の粗化処理面を、触針式表面粗さ計を用いてJIS B0601:1994に準じて測定した。
【0067】
[引き剥がし強さ]
金属積層板の銅箔を3mm幅になるようにエッチングで回路パターン形成し、JIS C6471の8.1項に準じて、引きはがし方向は180゜、引張速度50mm/分として23℃、50%RHの雰囲気下に24時間以上静置したサンプル(処理条件A)の引き剥がし強さを測定した。
○:引き剥がし強さが6N/cm以上
×:引き剥がし強さが6N/cm未満
【0068】
[誘電率及び誘電正接]
金属積層板の銅箔全てをエッチングで除去し、23℃、50%RHの雰囲気下に24時間以上静置したサンプルを、23℃の雰囲気下、「Agilent Technologies社製 Network Analyzer N5230A」を用いて、SPDR法(共振器法)にて、処理条件A及び23℃の純水に24時間浸漬したサンプル(処理条件D)のそれぞれについて、周波数5GHz、10GHzの2つの条件で測定した。
【0069】
[伝送損失]
回路長100mm、インピーダンスが50Ωになるようにマイクロストリップパターンを設計し、金属積層板の銅箔をエッチングして回路形成し、23℃の雰囲気下、Agilent Technologies社製 Network Analyzer N5247Aを用いて、アンリツ社製フィクスチャー3660-20GHzにて、処理条件A及び処理条件Dのそれぞれについて、周波数20GHzまでの伝送損失を測定した。
【0070】
[吸水率]
金属積層板の銅箔全てをエッチングで除去したサンプルを105℃、0.5時間の条件で乾燥させ、室温まで冷却した後のサンプル質量を初期値(m0)とした。このサンプルを23℃の純水に24時間、浸漬させ、その後の質量(md)を測定し、初期値と浸漬後の質量の変化から下記式を用いて処理条件D-24/23による吸水率を測定した。吸水率(%)=(md―m0)×100/m0
【0071】
[CTE]
金属積層板の銅箔全てをエッチングで除去し、23℃、50%RHの雰囲気下に24時間以上静置したサンプルをサイズ幅5mm、長さ15mmとし、島津製作所製の熱機械分析装置TMA-60を用い、荷重5g、10℃/分の昇温速度で加熱した際の100℃から200℃までの寸法変化から、MD方向及びTD方向のCTEを求めた。
【0072】
[レーザー加工性]
金属積層板の銅箔を直径100μmφの形状になるようにエッチングで除去し、ビアメカニクス株式会社製レーザー加工機LC-2K212を用い、周波数2000Hz、出力11.5W、パルス幅18μsの条件で穴開け加工を実施した。その後、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型顕微鏡(以下では、「SEM」とも記載する)S-4800を用い、加速電圧20kV、倍率700倍、観察傾斜角度10°の条件で穴の壁面の形状を観察し、厚さ方向で凹凸形状が大きい(多い)、または断面が斜めになっている(テーパーがある)ものを「×」、凹凸形状が小さい(少ない)、または断面が垂直になっているものを「○」とした。図3は、SEMの観察箇所を説明するための概略説明図であり、(a)は、穴開け加工を実施した後の銅張積層板を示し、(b)は、(a)の銅張積層板の点線で示す断面を模式的に表した図である。図3の(b)に示す点線で囲む領域をSEMで観察した。代表的な観察写真として、実施例1及び比較例1をそれぞれ図4及び図5に示す。
【0073】
[絶縁破壊電圧]
23℃、50%RHの雰囲気下に24時間以上静置した金属積層板を、JIS C6471の7.3項に準じて、処理条件Aによる絶縁破壊電圧を測定した。
【0074】
表1及び表2に示すようにフッ素比率が同等のものを比べた場合(例えば、実施例3及び4と比較例5及び6)、いずれも良好な誘電特性を有するが、実施例の方が、一層優れたレーザー加工性、絶縁破壊電圧を有する結果が得られた。また、多層フィルムの最外層をフッ素樹脂層にすることで優れた誘電特性、伝送損失を有する結果が得られた。
【表1】
【表2】
【0075】
本出願は、2018年3月30日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-067659)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5