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特許7141459スクリューロータ及びスクリュー流体機械本体
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  • 特許-スクリューロータ及びスクリュー流体機械本体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】スクリューロータ及びスクリュー流体機械本体
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20220914BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F04C18/16 R
F04C18/16 B
F04C29/00 D
F04C29/00 U
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540079
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2019022693
(87)【国際公開番号】W WO2020044715
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018159882
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智夫
(72)【発明者】
【氏名】矢部 利明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0031213(US,A1)
【文献】実開平04-042280(JP,U)
【文献】特表2012-527556(JP,A)
【文献】特開2016-037901(JP,A)
【文献】特開2016-196859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が軸方向に所定長さ延伸する螺旋状の歯溝を有するスクリュー部と、該スクリュー部の軸方向端部中央に配置されるシャフト部と、を備えるスクリューロータであって、
前記スクリュー部の少なくとも一部の径方向断面が、
前記歯溝を構成する外面部と、
軸心部と、
前記外面部の軸心側と前記軸心部の外径側とを接続する支持部と、
回転方向に隣接する前記支持部同士と歯底又は歯先の軸心側内面によって形成された中空部との各断面からなり、
前記スクリュー部の少なくとも径方向断面のうち、
前記軸心部及び前記支持部の少なくとも一方と、前記外面部とが、異なる部材による一体構成物として連続的に結合する断面からなり、
前記外面部を構成する部材の硬度が、前記軸心部及び前記支持部の少なくとも一方を構成する部材の硬度よりも高い
ものであるスクリューロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリューロータが、雄ロータであるスクリューロータ。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリューロータが、雌ロータであるスクリューロータ。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリューロータが、互いに噛み合う少なくとも1つの雄ロータ及び少なくとも1つの雌ロータの組からなるスクリューロータ。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリュー部の前記軸心部と、前記支持部と、前記外面部とが、3次元造形によって一体構成物としてなるものであるスクリューロータ。
【請求項6】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリュー部の軸方向の端部を備え、
前記スクリュー部及び前記端部が、3次元造形によって一体構成物としてなるものであるスクリューロータ。
【請求項7】
請求項1に記載のスクリューロータであって、
前記スクリュー部の軸方向の端部と、該端部と前記スクリュー部と反対方向の軸方向に延伸するシャフト部とを備え、前記スクリュー部、前記端部及び前記シャフト部とが、3次元造形によって一体構成物としてなるものであるスクリューロータ。
【請求項8】
請求項1に記載のスクリューロータと、該スクリューロータのケーシングとを有するスクリュー流体機械本体。
【請求項9】
請求項に記載のスクリュー流体機械本体であって、
前記スクリューロータが、少なくとも1つの雄ロータ或いは雌ロータと、噛み合う他のロータと組からなる流体機械本体。
【請求項10】
請求項に記載のスクリュー流体機械本体であって、
前記スクリュー部の前記軸心部と、前記支持部と、前記外面部とが、3次元造形によって一体構成物としてなるものであるスクリュー流体機械本体。
【請求項11】
請求項に記載のスクリュー流体機械本体であって、
前記スクリュー流体機械本体が、気体圧縮機本体、膨張機本体又は液流体圧送機本体であるスクリュー流体機械本体。
【請求項12】
請求項に記載のスクリュー流体機械本体であって、
前記スクリュー流体機械本体が、気体圧縮機本体であり、
前記気体圧縮機本体が、給液式又は無給液式であるスクリュー流体機械本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューロータ及びスクリュー流体機械本体に関し、スクリューロータに中空部を有するスクリューロータ及びスクリュー流体機械本体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸込み気体を圧縮して圧縮気体を生成するスクリュー圧縮機や、吸込み液体を加圧搬送するスクリューポンプや、流入する圧縮気体を膨張させて回転力を生成するスクリュー膨張機といったスクリュー型流体機械が知られている。
【0003】
例えば、圧縮機であれば、容積型のスクリュー圧縮機としては、回転する複数のスクリューロータによる歯溝の噛み合いによって圧縮作動室の容積を小さくし、圧縮気体を吐き出すシングルスクリュー圧縮機、ツインスクリュー圧縮機、トリプル(マルチ)スクリュー圧縮機などが知られている(シングルスクリュー圧縮機では雄又は雌ロータをゲートロータと称する場合もある。)。また、スクリュー圧縮機では、圧縮作動室に水や油といった液体を供給して、吸込み気体を圧縮する給液式圧縮機や、液体を供給せずに圧縮する無給液式等、種々の形式が知られている。
【0004】
スクリューロータの構造として、従来から、ロータの内部に中空部分を有する技術が開示されている。例えば、特許文献1は、外部からの切削や研磨によってスクリューロータ歯溝を加工する製造方法の複雑さや工数削減を目的として、予めスクリューロータの外表面の螺旋形状を内径面に有する筒状の金型に、その内径面の径寸よりも小径の外径を有し、内部中空の筒形状であるローブ部材と、当該ローブ部材の軸方向中央を貫通するロータ軸とからなる加工前の部材を挿入し、その後、ロータ軸の中心を軸方向に貫通する軸孔及びこれとローブ部材の中空部が連通するように径方向に貫通する貫通孔を介して中空部に高圧のガスを封入することでローブ部材外周を金型内径面に押し当て、これによって内部中空にして外周が螺旋形状となるスクリューロータを得る方法を開示する。
【0005】
また、特許文献2は、特許文献1に開示する中空のスクリューロータの質量を更に低減させるために、スクリュー部分を貫通するシャフト部分も無い中空のスクリューロータを開示する。
【0006】
また、特許文献3は、複数の鋼板を軸方向に積層して構成した中空部を有するスクリューロータを開示する。この文献では、各鋼板が、軸心を中心に同一回転方向に所定角度回転した形状を有し、これを順次積層することで、外形が螺旋状のスクリューロータを得ることを開示する。そして、各鋼板のスクリュー歯に相当する部分の内側を打ち抜くことで開口部を有する鋼板を得、これらを積層したときに、当該開口部が螺旋状の中空部を形成することを開示する。
【0007】
また、特許文献4及び特許文献5は、特許文献1と同様に、スクリューロータ歯の螺旋形状部は、内部中空の筒状部材の内部に流体圧力をかけて螺旋形状の内壁を有する金型に押し当てることで得、その後、中空の螺旋形状部の軸心を軸方向に貫通する中空ボスを挿入する構成のスクリューロータを開示する。そして、中空ボスの外周が、スクリューの中空部の歯(歯底の中空部側)と接触固定する構成とすることで、中空部を有するスクリューロータの強度を確保するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭57-70985号公報
【文献】特開2006-214366号公報
【文献】特開平5-195701号公報
【文献】特開平8-261183号公報
【文献】特開平8-284856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、スクリュー型流体機械は、圧縮機である場合には、気体の圧縮作用により圧縮熱が発生し、圧縮機本体から吐き出される吐出圧縮気体は高温となり、膨張機である場合には、気体の膨張作用により膨張熱が発生し、圧縮機本体から吐き出される吐出膨張気体は低温となる。即ち圧縮や膨張といった作動室において生ずる圧力変動に伴う熱を考慮する必要がある。
【0010】
例えば、無給液式スクリュー圧縮機の場合、雄ロータと雌ロータは狭小なギャップをもって非接触に噛み合うことで気体を圧縮する構造をとるが、給液式と異なり、作動室内で気体と熱交換を行う媒体がないことから圧縮熱は給液式よりも高温(単段機で約300~350℃、多段機で約160~250℃程度)となる傾向がある。圧縮熱は、ロータや、ロータを格納する圧縮機本体ケーシングの熱膨張を招来することから、保守面から、かかる熱膨張によって各ロータの歯が接触することを回避するのが好ましい。一例としては、圧縮機ケーシング本体に冷却媒体(水、クーラント、油等)の流路を備えたり、予め熱膨張を考慮したギャップを確保したりする場合がある。更には、吐き出す圧縮気体も高温であることから、一般に、これを冷却するクーラを備えることも多い。
【0011】
また、給液式スクリュー圧縮機の場合であっても、無給液に比して低温となる傾向にあるものの、吐出圧縮気体の温度は100℃~120℃程度である場合もあり、圧縮機本体の冷却のために圧縮機本体ケーシングに冷却媒体が流通する流路を備えたり、吐出圧縮気体のクーラを備えたりする場合も少なくない。
【0012】
上述の各特許文献が開示するような中空ロータは、ロータ質量の低減等に資するものであり、駆動エネルギーの低減、軽量化、材料コストの低減という効果を望めるが、他方において、中空のロータに比して熱影響が相対的に高くなる虞がある。例えば、中空ロータは、相対的に強度が低下したり、熱膨張の影響が高かかったり、圧縮気体の冷却性が低下したりする恐れがある。
【0013】
このような熱影響は膨張機の場合にも言える課題である。例えば、作動室に供給される高圧気体が高温である場合には、かかる熱や圧力に対してのロータの耐熱性を考慮する必要がある。逆に膨張熱が低温である場合には、ロータの熱収縮を考慮する必要があるといえる。
中空ロータの利点を享受しつつスクリュー型流体機械の性能を維持向上させる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、例えば、請求の範囲に記載の構成を適用する。即ち、外周が軸方向に所定長さ延伸する螺旋状の歯溝を有するスクリュー部を備えるスクリューロータであって、前記スクリュー部の少なくとも一部の径方向断面が、前記歯溝を構成する外面部と、軸心部と、前記外面部の軸心側と前記軸心部外径側とを接続する支持部と、回転方向に隣接する前記支持部同士と前記歯底又は歯先の軸心側内面によって形成された中空部との各断面からなり、前記スクリュー部の少なくとも径方向断面のうち、前記軸心部及び前記支持部の少なくとも一方と、前記外面部とが、異なる部材による一体構成物として連続的に結合する断面からなる構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱、圧力、錆等に対する中空ロータの性能向上を図ることができる。
【0016】
本発明の他の課題・構成・効果は以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用した実施形態によるスクリューロータの構成を示す軸方向側面図である。
図2】本実施形態によるスクリューロータの径方向断面を模式的に示す図である。
図3】本実施形態によるスクリューロータを適用した圧縮機本体の軸方向縦断面図である。
図4】本実施形態によるスクリューロータを適用した空気圧縮機の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
図1に、本発明を適用した実施例であるスクリューロータの構成を模式的に示す。図1(a)は雄スクリューロータ27軸方向側面の外観を示し、図1(b)は雄スクリューロータ27軸方向縦断面を示す。なお、本実施例では、雄雌ロータが組となるツインスクリューロータの雄ロータを例とするが、本発明は雌ロータについても適用できるものである。
【0019】
図1(a)において、雄スクリューロータ27は、径方向外周が螺旋形状の歯部100及び溝部101と、両軸方向の端部102a及び102bとから構成されるスクリュー部105と、当該スクリュー部105の軸方向端部中央に配置するシャフト部106とから主に構成される。
【0020】
歯部100及び溝部101は、後述する雌スクリューロータ28の歯溝部と接触又は非接触に噛み合い、当該雄スクリューロータ27及び雌スクリューロータを格納するケーシング本体33aのボア内壁とによって圧縮作動室を形成する。雄スクリューロータ27及び雌スクリューロータ28が回転することによって、当該圧縮作動室の容積を収縮し、吸込み側から吸い込んだ気体を圧縮気体として吐き出すようになっている。
【0021】
シャフト部106は、スクリュー部105の軸方向端部中央に配置する。シャフト部106は、後述する駆動源である電動機8からの回転動力を受け、スクリューロータを回転させるようになっている。
【0022】
図1(b)において、雄スクリューロータ27は、その内部に、螺旋状の中空部110と、貫通部111と、連通部112とを備える。
【0023】
中空部110は、歯溝の形状に沿ってスクリュー部105の略全体に中空部分を形成する空隙である。本実施例では、中空部110は、各歯毎に設けられるものとする。貫通部111は、シャフト部106の中心を軸方向に貫通し、後述する流体をスクリュー部105に搬送するための流路である。連通部112は、中空部110の軸方向の両終端と、貫通部111とに流体の流通を可能にする連通部分である。
【0024】
図2に、雄スクリューロータ27と、雌スクリューロータ28との径方向断面を模式的に示す。雄スクリューロータ27を例にすると、中空部110は、歯部100及び溝部101の螺旋形状に沿って、軸方向に延在する形状を有する。溝部101の底部軸心側は、軸心部115から延伸する支持部113と連続構成物として構成される。
【0025】
歯部100及び溝部101は、軸方向に所定の厚みを持ち、この厚みは軸方向に向かって等しい厚みである。これにより中空部の断面は、軸方向で同径(同面積)となる。より具体的には、歯部100の歯先の軸心側内部から軸心部115までの径方向距離が他の歯溝の中空部と同一である。
【0026】
ロータの質量減少や冷却効率の向上の面からは厚みを薄くすることが好ましい。しかしながら、圧力に対する応力及び他のロータやケーシングボアの内壁との接触(カジリを含む。)に対する耐久性の面からは、強度の確保が肝要である。
【0027】
そこで、本実施例の特徴の一つとして、歯部100及び溝部101を含むローブ外面部150と、支持部113及び軸心部115を含むロータ内部160とを異なる特性を有する部材で構成するようになっている。即ち圧縮応力や圧縮熱の影響を相対的に受けやすいローブ外面部150は、ロータ内部160よりも、強度や耐熱性の高い原料を用いて構成する。例えば、ローブ外面部150を鉄、ローブ内部をアルミとする。更に、金属同士の組み合わせ以外にも、上記耐熱性と硬度の関係を有する金属と樹脂或いは樹脂同士の組み合わせや合金との組み合わせであってもよい。
【0028】
更には、防錆性の面から部材を選定してもよい。例えば、ローブ外面部150は、圧縮作動室等の内部空間に発生するドレンによって錆びる場合もある。したがってこれを、例えば防錆性の高いアルミや樹脂とし、ローブ内部160を鉄等にすることもできる。
【0029】
このように、耐熱性、硬度、防錆性等を考慮して、ローブ外面部150と、ロータ内部160とを構成する部材を選択することで、中空ロータの利点を生かしつつその信頼性や性能の向上を図ることが可能となる。
【0030】
ここで、更に本実施例では、ローブ外面部150と、ローブ外面部160とが連続した一体構成物として構成するという特徴も有する。雄スクリューロータ27、雌スクリューロータ28を、3次元造形機を用いた積層造形によって造形する。積層造形としては、光造形方式、粉末焼結積層造形方式、インクジェット方式、原料溶解積層方式、石膏パウダー方式、シート成形方式、フィルム転写イメージ積層方式及び金属光造形複合加工方式等が適用できる。更に、積層方向は軸法を水平方向、鉛直方向又は斜め方向でもよい。
【0031】
上記積層造形用の電子データは、CADやCGソフトウェア又は3次元スキャナで生成した3次元データをCAMによってNCデータに加工することで生成される。該データを3次元造形機又は切削RP装置に入力することで三次元造形が行われる。なお、CAD/CAMソフトウェアによって、3次元データから直接NCデータを生成してもよい。
【0032】
また、3次元データ等の取得方法としては、3次元データ又はNCデータを作成したデータ提供者やサービサーが、インターネット等の通信線を介して所定のファイル形式で配信可能とし、ユーザが当該データを3次元造形機やそれを制御するコンピュータ等にダウンロード又はクラウド型サービスとしてアクセスし、3次元造形機で成形出力することで製造することもできる。なお、データ提供者が3次元データやNCデータを不揮発性の記録媒体に記録して、使用者に提供する方法も可能である。
【0033】
上記の方法により、雄スクリューロータ27(雌スクリューロータ28も同様に)は、原料素材が上記種々の3次元造形法によって、ローブ外面部150(歯部100と溝部101)と、ロータ内部160(支持部113と軸心部115)とが化学結合によって連続一体的な構成物として構成することが可能である。なお、これらスクリュー部105のみならず、端部102a・102bと連続一体構成物としてもよい。更には、端部102aを、軸方向に開口しない平面としてスクリュー部105と連続一体構成物として構成する構成であってもよい。或いは端部102a・102bやシャフト部106も同様に連続一体構成物として構成してもよい。
【0034】
鋳物成型では、例えばスクリュー部150の外周は型により成型できるが、中子の配置は複雑を極め更に中子を除去することが著しく困難或いは不可能であり、これら各部を連続一体に成形することは極めて困難といえる。
【0035】
また、例えば、冒頭の特許文献に開示するように、鋳物或いは切削により、雄スクリューロータ27(雌スクリューロータ27も同様に)を分割構成して、後に溶接や接着を行う場合、溶接及び接着部分の研磨等により工数が増加する。また、当該部分の結合状態を均一にするのは困難であり、強度的な課題も残るといえる。
【0036】
本実施例は、螺旋形状という立体的な成型が困難なスクリューロータについて、強度の確保や冷却性の向上を図ることができ、また質量の低減による運動エネルギーの効率的利用を可能とする中空体を提供しえるという顕著な効果を奏するものである。
【0037】
特に、スクリュー部105の軸方向全体を同一の部材の組み合わせとする以外にも、軸方向で部材の組み合わせを変更することも可能である。例えば、吐出側は吸込み側に比して熱や圧力の影響をより受ける。したがって、スクリュー部105のローブ外面部150吐出側のみをこれらに耐性の高い素材によって構成し、他のローブ外面部150は、ロータ内部160と同一の素材によって構成するなども可能である。このように、本実施例は、軸方向に延伸するスクリュー部105の径方向断面の少なくとも一部のローブ外面部150と、ロータ内部160との材質や特性が異なる場合であっても、その効果を発揮しえる。
【0038】
図3に、雄スクリューロータ27及び雌スクリューロータを適用した圧縮機本体1の軸方向縦断面図を模式的に示す。また、図4に圧縮機本体1を備える圧縮機50の構成を模式的に示す。
【0039】
圧縮機本体1は雄ロータ27、雌ロータ28と、このロータ27、28を収納して複数の圧縮作動室を形成するケーシング本体33aと、シャフト部106を格納する吐出側ケーシング33b及び吸込み側ケーシング33cを備える。
【0040】
ケーシング本体33aは、圧縮作動室に空気を吸込むための吸込口と、圧縮作動室で生成した圧縮空気を吐出すための吐出口とを備える。雄スクリューロータ27の吸込側の軸端部にはピニオンギヤ3が接続し、これを駆動源としての電動機8で駆動することで、雄スクリューロータ27、雌スクリュー28が回転する。各ロータ27、28の吐出側の軸端部にはタイミングギヤ31、32が接続し、これによって雄スクリューロータ27の回転が雌スクリューロータ28に伝わり、同期して回転する構造になっている。回転によって圧縮作動室は、吐出側に移動しながら容積を減少して空気を圧縮するようになっている。
【0041】
図4において、雄スクリューロータ27の軸端部に接続するピニオンギヤ3は、ギヤケーシング2内の中間軸の一方に取り付けたブルギヤ4と噛合する。中間軸の他方には、プーリ5が取り付けられており、プーリ5には、駆動力の伝達体としてベルト7が装架されている。ベルト7は、電動機8の軸端に取り付けたプーリ6にも装架されており、電動機8の動力が圧縮機本体1に伝達される。なお、駆動機構の他の構成としては、プーリ6及びベルト7組合せ以外にギア及びチェーンであってもよいし、ロータ軸と電機機8の出力軸を直結する構成であってもよい。
【0042】
圧縮機本体1の吸込み側には、この圧縮機本体1に吸込まれる空気量を調整する吸込絞り弁10が配置する。空気は、吸込みフィルター9によって異物が除去され、吸込み絞り弁10を通過して圧縮機本体1に吸気され、所定の圧力まで圧縮されて圧縮機本体出口より吐き出される。圧縮機本体1から吐き出された圧縮空気は、この下流に設けた水冷式のプレクーラ11によって冷却をされた後、逆止弁12を経由して、水冷式のアフタークーラ13に導かれる。アフタークーラ13で冷却された圧縮空気は、圧縮空気出口より吐き出される。ここで、アフタークーラ13内の空気通路はU字管で構成されており、その出入口は一体型のクーラヘッダ14で構成されている。
【0043】
圧縮機50では、摺動体等を潤滑するために冷却媒体として潤滑油を使用する。この潤滑油の経路は以下の通りである。ギヤケーシング2の下部に設けられた油溜りに貯留された潤滑油は、オイルポンプ16でオイルクーラ11に導かれて冷却され、オイルフィルタ17でゴミ等を除去された後、圧縮機本体1の軸受部、タイミングギヤ31、32、ピニオンギヤ3、さらに、ギヤケーシング2内の中間軸の軸受部や中間軸に取り付けたブルギヤ4へ供給され、その後ギヤケーシング2の油溜りへ戻り循環する。この潤滑油を、圧縮機本体1に取り付けた雄スクリューロータノズル29(雌スクリューロータノズル30から各ロータ27、28の貫通部111及び連通部112を介して中空部110に流入させ、冷却用に使用する。ロータ27、28を冷却した後は、ピニオンギヤ3を通過し、その他の潤滑油と同様にギヤケーシング2内の油溜りに貯蔵され、循環する構成となっている。なお、この潤滑油は温度の高い吐出側から吸込側へ流入させることで、より高い冷却性能が得ることができるようになっているが、吸込側から吐出側に流入させるようにしてもよい。
【0044】
このように、本実施例によれば雄スクリューロータ27及び雌スクリューロータ28は、特性に応じてロータを構成する部材を異なる部材の組み合わせとすることで、ロータ質量を低減させつつ強度、熱耐性、防錆性等を向上でき、回転エネルギーの削減効果や耐久性を確保することができる。
【0045】
更に、中空部11に冷却媒体を流通させることで、スクリューロータの温度上昇を低減させることができる。かかる冷却性能の向上は、雄スクリューロータ27、雌スクリューロータ28の熱変形を抑制することから、スクリューロータ間及びスクリューロータとケーシング本体33aのボア内壁の隙間を縮小できるため圧縮性能を向上させることができる。
【0046】
加えて、スクリューロータの熱変形が抑制されることで、歯部の加工精度のバラツキや圧縮機の低負荷運転時に生じる圧縮性能のバラツキを小さくすることも可能となる。さらに、吐出空気温度も低減できることから、圧縮機内の冷却機器の縮小又は廃止により、コスト低減と圧縮機全体のコンパクト化を図ることができる。
【0047】
また、各スクリューロータ27、28を3次元造形機により成型することで、螺旋状の中空部110、連通部112、端部102a・102bといった複雑な構造を部分的に異なる特性を有する部材9で構成することが実現可能となる。
【0048】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記種々の例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更や置換が可能である。例えば、上記例では、圧縮機本体1を構成する全てのスクリューロータを中空状とし、両ロータともローブ外面部150とローブ160で異なる部材をもって造形する構成としたが、いずれか1のスクリューロータのみを中空状及び異なる部材の組み合わせとしてもよい。
また、雄雌の各スクリューロータが中空状である場合でも、夫々部材の組み合わせは同一とせずに、異なる組み合わせを適用することも可能である。
【0049】
また、上記実施例では、雄スクリューロータ27の歯が5枚、雌スクリューロータ28の歯が6枚としたが、使用に応じて歯の数は任意に変更可能である。
【0050】
また、上記例では、圧縮機本体1が1つの圧縮機を例としたが、これらが2以上からなる多段構成の圧縮機であってもよい。例えば、低圧段圧縮機本体と高圧段圧縮機本体とからなる2段圧縮機の場合、低圧段と高圧段の各ロータの全部又は一部に上記異なる特性を有する部材からなる中空ロータを適用する構成であってもよい。高圧段圧縮機本体の吸込側は、低圧段圧縮機本体の吸込み側よりもより高温、高圧となる。更には、中間ドレンによって錆びの虞が高まる。そこで、高圧段圧縮機本体のスクリューロータのローブ外面部150に、より強度、耐熱性、防錆性の高い素材を適用することで、各段の課題に応じた信頼性の高い中空ロータを適用することができる。
【0051】
また、上記実施例では流体機械として空気圧縮機を例としたが、例えば、スクリューロータを用いた膨張機や、スクリューロータや回転翼を用いたポンプ装置(液流体圧送機)に適用することも可能である。また、圧縮機としては空気を圧縮するものに限定されず、他の気体を圧縮する圧縮機であってもよい。また、無給油式スクリュー圧縮機を例としたが、圧縮作動室に供給する液体は油のみならず水や他の液体であってもよい。また、給液式スクリュー圧縮機にも本発明は適用することができる。
【0052】
また、上記実施例では、駆動源として電動機を用いて説明したが、例えば、内燃機関や他の回転力を生成する装置であってもよい。特に、本発明を膨張機に利用する場合、電動機に代えて発電機を備える或いは電動機を動発電機として利用する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…圧縮機本体、2…ギヤケーシング、3…ピニオンギヤ、4…ブルギヤ、6…プーリ、7…ベルト、8…電動機、9…吸込みフィルター、10…吸込み絞り弁、11…プレクーラ、12…逆止弁、13…アフタークーラ、14…アフタークーラヘッダ、15…オイルクーラ、16…オイルポンプ、17…オイルフィルタ、27…雄スクリューロータ、28…雌スクリューロータ、29…雄スクリューロータノズル、30…雌スクリューロータノズル、31…雄スクリューロータタイミングギヤ、32…雌スクリューロータタイミングギヤ、33a…ケーシング本体、33b…吐出側ケーシング、33c…吸込み側ケーシング、50…スクリュー圧縮機、100…歯部、101…溝部、102a・102b…端部、105…スクリュー部、106…シャフト部、110…中空部、111…貫通部、112…連通部、113…支持部、115…軸心部、150…ローブ外面部、160…ロータ内部
図1
図2
図3
図4