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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】物品をマイクロ成形する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/78 20060101AFI20220914BHJP
   B29C 45/48 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 45/53 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 45/77 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/48
B29C45/53
B29C45/26
B29C45/77
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020540336
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 CA2018050407
(87)【国際公開番号】W WO2019191829
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520261460
【氏名又は名称】ウエストフォール アクイジッション アイアイアイ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヘラルド
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-119042(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0079242(US,A1)
【文献】国際公開第2008/026456(WO,A1)
【文献】特表2003-522654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/77
B29C 45/48
B29C 45/53
B29C 45/78
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を射出成形するための方法であって、
可塑化バレル内で、熱可塑性材料を溶融し、第1レベルまで予圧を加え、
モールドキャビティに入る前に、前記熱可塑性材料の溶融圧力をマニホールドのホットランナー内で第2レベルまで操作し、増加した溶融密度をもたらし、および
前記熱可塑性材料の前記溶融圧力をマイクロキャビティ内で超キャビティ保圧力まで操作することを含み、
記熱可塑性材料が前記可塑化バレルから移動して、バルブゲートノズルから出て、前記モールドキャビティに入るときに、前記熱可塑性材料の温度をカスケード式に上昇させることであって、前記熱可塑性材料が前記可塑化バレルから進み、バルブゲートノズルから出て、前記モールドキャビティに入るように移動するにつれて、前記熱可塑性材料の温度がカスケード式に上昇していくことをさらに含む、物品を射出成形するための方法。
【請求項2】
前記熱可塑性材料が前記可塑化バレルを出る前に、前記熱可塑性材料を第1の温度まで加熱することであって、前記第1の温度は、前記熱可塑性材料の溶融温度より高く、前記熱可塑性材料の処理温度より低い、加熱することと、
前記熱可塑性材料が前記マニホールドを出た後、しかし、前記熱可塑性材料がバルブゲートノズルを出る前に、前記熱可塑性材料を処理温度まで加熱することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性材料が前記可塑化バレルを出る前に、前記熱可塑性材料を第1の温度まで加熱することであって、前記第1の温度は、前記熱可塑性材料の溶融温度より高く、前記熱可塑性材料の処理温度より低い、加熱することと、
加熱された第1マニホールド内の前記熱可塑性材料の温度を調節することと、
前記第1マニホールドから分岐した、加熱されたサブマニホールド内の前記熱可塑性材料の温度を調整することと、および
モールドキャビティに入る前記熱可塑性材料が通る、加熱されたノズル内の前記熱可塑性材料の温度を調節することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1移動アセンブリを作動させて、前記熱可塑性材料を前記可塑化バレルからマニホールド内に送出し、
第2移動アセンブリを作動させて、前記熱可塑性材料の前記マニホールドからノズル内への送出量を制御し、および
第3移動アセンブリを作動させて、前記ノズルからモールドキャビティ内への前記熱可塑性材料の送出を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マニホールド内の一定の圧力は、成形品が均質であって、前記成形品は固有の応力が少ないように、使用される溶融材料に基づいて予め決定される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に別段の記載がない限り、このセクションに記載されている材料は、本願の特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、このセクションに含めることによって先行技術であることは認められない。
【0002】
主題は、一般に、射出成形に関する。より具体的には、以下に限定するものではないが、主題は、マイクロ部品の射出成形、射出成形装置内の溶融材料の圧力と温度の制御、および溶融材料の溶融滞留時間の改善に関する。また、潜在的にはキャビティの充填時間も測定可能である。
【背景技術】
【0003】
1つまたは多数のモールドキャビティ内で1g以上の重量の熱可塑性部品を成形するための最新の射出成形機は、内部プランジャースクリューを備えた加熱された射出バレルを利用する。熱可塑性(プラスチックとも称される)ペレットは、バレルに入り、バレル内部のスクリューの回転によって運ばれる。スクリューの長さと直径の比は通常20:1であり、プラスチックペレットはスクリューの前端に向かって移動しながら溶融する。スクリューの前端で、プラスチック材料は、最終処理温度と所望の溶融粘度に達する。スクリューの端部は、溶融物の戻りまたは逆流を防止する逆止弁付きプランジャーとして設計される。スクリューの前のチャンバーの容積は、プラスチック溶融物の所望の射出量を計測する。射出量を計測するために、スクリューは回転し、制御された位置まで後退する。このスクリューの動作により、成形サイクルごとに溶融チャンバーが再充填され、それは再充填段階と呼ばれる。この時点で、チャンバー内の溶融物は(背圧により)低圧になっており、加熱された溶融物の膨張は最高レベルである。次の射出段階では、溶融物をバレルからモールド内に移動して、1つまたは複数のモールドキャビティを充填する。射出段階が始まると、バレル内部のスクリューが前方に移動して、スクリューの前の溶融物を加圧して移動させる。スクリューの前進運動の制御された力と速度、および溶融粘度は、射出圧力の上昇およびキャビティの充填時間を定義する。これは、プラスチック溶融物が圧縮性流体であり、射出圧力の上昇中に溶融量が変化するからであり、溶融密度が増加する、若しくは特定の溶融量が減少するからである。
【0004】
スクリュー前のすべての溶融物がキャビティに射出されているわけではなく、射出ストロークに伴ってスクリューが底部に到達するのを防止するために、バレルチャンバーの前端に溶融クッションとして一定量が残る。また、モールド内部のホットランナーシステム内の溶融物分配により、ホットランナーの溶融物チャネルには、追加の溶融量が残る。スクリューの前の全溶融量は、かなりの粘弾性の圧縮可能な量になり、それは、特に小さなプラスチック部品の成形に関して、射出計量問題である。
【0005】
従来の射出成形機の最小スクリュー直径は、レギュラーサイズのプラスチックペレットで14.0mmで、最大200MPaの射出圧力が可能である。このような溶融圧力は、高粘度のプラスチック溶融物を射出するのに必要とされることが多い。PC、PSU、またはPEIなどの熱可塑性材料は、薄い壁と微細な形状を有するモールドキャビティを充填するのに、このような高い溶融圧力を必要とする例である。より小さな直径のスクリューは、この高圧を発生させるとつぶれてしまうだろう。1mmのストロークで154mmの射出量が発生するので、14.0mmの射出スクリューで少ない射出量を正確に計測することは不可能である。したがって、100mm未満のプラスチック微小部品では、特に、プラスチック溶融物が、高圧でその比体積を変化させる粘弾性の圧縮性流体であることを考慮すると、計測ストロークのはるかに高い分解能が必要である。
【0006】
一段階射出として知られている単一ユニットのスクリュー/プランジャーの組み合わせで少量の溶融量を計測するという欠点を克服するために、最新のマイクロ射出成形機は、二段階射出として知られているスクリューとプランジャーの組み合わせを有する。スクリューバレル内で推奨される処理温度の最大限までプラスチック材料を溶融および加熱し、別のプランジャーで溶融物を射出することは、逆止弁または遮断弁によって分割される2つの機能的な機械要素である。別の加熱されたバレル内のスクリューが、プラスチックペレットを溶融し、溶融物を推奨される溶融処理温度まで加熱している。別のプランジャーバレルが、射出量を再充填し、溶融物射出の射出圧力と速度を発生させる。その設計では、例えば4.0mmのより小さいプランジャー直径では、より長いプランジャーストロークになる。これにより、より細かい解像度および射出ストロークのより正確な制御がもたらされる。例えば、ストロークが1.0mmの直径4.0mmのプランジャーは、ほんの12.56mmの射出量に相当する。この例では、理論上、100mmのマイクロ成形品容量を得るには、8.0mmのプランジャーストロークが必要になる得る
【0007】
しかしながら、4.0mmのプランジャーで10mm未満のマイクロ成形品の計測においては、特に、マイクロ成形品がサイクルごとに±5%未満の成形品重量の一貫性を必要とする場合、別の射出制御問題が生じ得る。この場合、プランジャーのストローク制御は、±0.04mm未満でなければならない。マイクロ成形品さらに1mmまで縮小する場合、プランジャーストローク制御には、0.004mmの繰り返し精度が求められる。しかしながら、それが唯一の制約ではない。
【0008】
マイクロ成形品の体積が小さいほど、4.0mmのプランジャーでマイ成形品の体積を正確に計測することがますます難しくなる。従来技術の二段階マイクロ成形機におけるプランジャーストロークは、溶融粘度、溶融射出量および溶融密度においる動的変化を生み出す。これらの処理変数は、モールドキャビティの増加に伴ってモールドにおいて増加する。これは、プランジャーからマイクロモールドキャビティまでの溶融分配チャネルには、マイクロ成形物自体よりもはるかに大きな溶融量が含まれているためである。したがって、二段階プランジャー射出成形機は、低キャビティモールドの使用に限定される。これは、生産量が低下につながる。プランジャーを1つだけ使用して溶融物を複数のマイクロキャビティ(8、16、32キャビティなど)内に計量し、コールドランナーまたはホットランナーとして知られるモールド内部の多分岐の自然に分岐した溶融物チャネルシステムを通して溶融物を分配すると、より多くの溶融量が得られる。これらのランナーチャネルは、プランジャーの前の圧縮可能な溶融量の急激な増加をもたらす。例えば、230°Cで1000mmのランナー体積のPP溶融物は、溶融圧力0MPaから200MPaまで20%圧縮できる。体積変化は200mmである。つまり、溶融物は、プランジャーストロークの20%を吸収し、その一部を粘弾性エネルギーと内部摩擦熱エネルギーとして保存する。これらの条件下では、一貫性があり再現可能なマイクロ射出成形工程を制御および維持することが困難である。
【0009】
部品体積が10mm未満のますます小さいマイクロ部品を成形する場合、溶融滞留時間が長くなるにつれ、複雑さがさらに増す。溶融滞留時間は、溶融物がスクリューバレルからプランジャーに移動し、そこから分配チャネルを通ってモールドキャビティに移動する間に、溶融物が処理温度にさらされる時間である。熱可塑性材料および添加剤は、熱劣化と物理的特性の損失を経験することなく、処理温度に長時間さらされることを許容しない。マイクロ部品は、通常、1分あたり3~6秒または10~20成形サイクルのサイクルタイムで射出成形され、これにより、溶融滞留時間が1時間を超える。多くの熱可塑性材料は、これらの条件下でかなりのレベルの溶融劣化を経験する。例として、200°Cの処理温度でのPOMの溶融滞留時間は約10~15分である。別の例として、385°Cの処理温度でのPSUの溶融滞留時間は約20~30分である。これらの場合、射出量の増加による溶融滞留時間を改善するために、10、100、または1000倍のコールドランナー体積が実際のマイクロ部品に付属されることがよくある。しかしながら、コールドランナーは無駄な材料である。それは工程管理を弱め、価格が100USD/kg超、または1000USD/kg超でもある高価な熱可塑性材料を処理する場合のオプションにはならない。
【0010】
マイクロ部品は、1000mg未満の成形品重量によって定義される。しかし、100mg未満、または重量が10mg未満の部品の射出成形工程は、ますます要求が厳しくなっている。
【0011】
マイクロ部品の寸法は、ミリメートル以下であり、寸法の許容誤差は、マイクロメートルの範囲で定義されることがよくある。指定された許容範囲内で、完全自動化生産を維持することは最も重要である。しかし、許容範囲および重量を保持し、モールドキャビティ部品の微視的特徴を複製することが唯一の目的ではない。マイクロ部品の品質には、要求の厳しい光学特性、電気的および機械的特性がある。マイクロ成形工程は、大きいサイズのプラスチック成形品で使用される射出成形工程と直接比較することはできない。これは、マイクロ成形品で開発される高分子形態は、大きいプラスチック成形品で開発されるものとは異なるからである。例えば、プラスチックペレットよりもしばしば体積が小さいマイクロ部品の溶融熱エンタルピーは、非常に小さい。したがって、溶融物がモールドキャビティに充填されると、溶融物は瞬時に急速に冷却される。高いキャビティ溶融圧力でのこの急速な冷却時間は、二段階射出成形工程の場合よりもはるかに速く固化されることになる。
【0012】
一段階および二段階成形工程は、保持段階または保圧段階の間に追加の溶融物をキャビティ内に印加することで、収縮を補おうとする。冷却時間中の保圧段階は、フロー穴またはゲートが開口しており固化していない限り、キャビティ内部でしか効果がない。これにより、寸法工程管理が制限される。ホットランナーバルブゲートは、より大きなゲート穴を備えた正の遮断装置であり、充填に十分な長い時間ゲートを開いたままにする。マイクロ部品がキャビティから取り出された後も、部品の収縮は続く。これにより、実際のキャビティの寸法とは異なる寸法公差がさらに変化することになる。従来のマイクロ射出成形機は、プランジャーを使用して印加できる保圧力で成形品が固化する前に、プラスチック成形品の収縮を補償しようとする。成形サイクルのこの段階は、成形品が冷却中に体積収縮する間、より多くの溶融物をマイクロキャビティに供給することを意図している。二段階工程におけるマイクロ部品は、通常、取り付けられたコールドランナーで成形されるので、コールドランナーとマイクロキャビティの間の接続チャネル(いわゆるトンネルゲート)が固化し、キャビティ内への必要な追加の溶融物供給で成形品の収縮の補償することは不可能である。その結果、品質の低いマイクロ部品と、廃材副産物として十分に充填されたコールドランナーが生じる。
【0013】
1987年5月5日にHuskyに付与された米国特許第4,662,837号は、成形品を準備するための従来の射出成形を示している。溶融プラスチック材料は、圧力成形手段を使用して、射出導管を通ってマニホールド内に進む。それから、溶融プラスチック材料は、射出ノズルチャネルを介して射出ノズル内へと移動される。ノズルの先端には、ダイキャビティを有するダイアセンブリが設けられている。ノズルは、溶融プラスチック材料をダイキャビティの中に射出する。本特許による構成では、材料が射出導管に導入されてからノズルの先端を出るまでの間に、溶融プラスチック材料の圧力と温度を上昇させることができない。(本特許出願の)装置全体にわたって材料の溶融温度が維持されるので、材料は熱劣化および物理的特性の損失を経験する。
【0014】
Hummingbirdによって2003年10月8日に提出された米国出願第10/681,065号は、プラスチック材料をバレルからマニホールド内に射出するためのスクリュー含むバレルを示している。溶融プラスチック材料は、マニホールドによって画定されたランナーシステムを通って流れる。溶融装置は、マニホールドに接続され、マニホールドから射出装置(ノズル)内に必要とされる溶融物を計量する。射出装置は、計量された溶融物をモールドキャビティの中に射出する。
【0015】
欧州特許第1912773号は、成形品を製造する方法を説明している。溶融物は成形ツール内に導かれる。溶融物の圧力は、溶融物が固化する程度まで、モールドよって上昇される。それから、溶融物は冷却され、所望の製品が得られる。本特許もまた、モールドキャビティ内の圧力を変化させるための制御メカニズムを記載しており、これは、コンピュータプログラムを用いて制御することができる。本特許による構成では、材料が射出導管に導入されてからノズルの先端を出るまでの間に、溶融プラスチック材料の圧力と温度を上昇させることができない。(本特許出願の)装置全体にわたって材料の溶融温度が維持されるので、材料は熱劣化および物理的特性の損失を経験する。また、本特許は、所望される以上の収縮を呈する。
【0016】
KazmerによるDynamic Feedという表題の米国特許第66320791は、射出充填時間と保圧時間中の成形機の溶融圧力を制御するために、マルチキャビティバルブゲートホットランナーシステムと溶融圧力センサーを利用する。マルチキャビティモールドでは、バルブピンの一部が円錐形状をしており、各ノズルの個々のホットランナー溶融チャネル内で調整可能なチョークとして機能し、個々のモールドキャビティに充填および保圧しながら溶融圧力プロファイルを変化させる。利点としては、各モールドキャビティが独自の個別の溶融圧力プロファイルを受け取り、成形品の収縮を最適化できるので、壁の厚さと成形品形状が異なる精密な部品をマルチキャビティモールド内部で成形できることである
【0017】
LauterbachによるA Method For Controlling The Holding Pressure Phase During The Injection Molding Of Thermoplasticsという標題のEP0461143A1、およびWippenbeckによるProcess And Device For Controlling The Compression Phase In The Injection Molding Of Thermoplastic Moldingという標題のDE3608973A1の両方とも、小ねじ制御による成形パラメーターの制御を教示している。各射出サイクルのこの従来の射出圧力プロファイルは、常に大気溶融圧力から始まる。小ねじバレルの圧力が上昇し、キャビティが充填される。スクリュー前進運動による溶融物圧縮は、射出計量の一部である。キャビティ充填段階の終了時に、プラスチック材料が転移温度で固体状態まで材料を冷却しながら、その体積収縮を補償する保圧力に追従する。そこから、モールドキャビティ内部の熱可塑性成形品は、成形品の取り出し温度に達するまで収縮し続け、最終的に室温まで冷却される。
【0018】
上述の考察に鑑みて、マイクロ部品を成形し、成形装置内の滞留時間を改善するための改善および強化された技術が必要である。
【発明の概要】
【0019】
一実施形態では、熱可塑性材料が可塑化バレルから移動して、バルブゲートノズルから出てモールドキャビティに入るときに、熱可塑性材料の温度および圧力をカスケード制御することによって物品をマイクロ成形するための方法が提供される。方法は、可塑化バレル内で熱可塑性材料を溶融し、第1レベルまで予圧を加えることを含む。熱可塑性材料の溶融圧力は、ホットランナー内で第2レベルまで操作される。第1レベルでの圧力は、第2レベルでの圧力よりも低い。熱可塑性材料の溶融圧力は、バルブゲートノズル内で超キャビティ保圧力まで操作される。第2レベルでの圧力は、超キャビティ保圧力よりも低い。
【0020】
別の実施形態では、熱可塑性材料は、熱可塑性材料が可塑化バレルを出る前に第1の温度まで加熱される。第1の温度は、熱可塑性材料の溶融温度よりも高く、熱可塑性材料の処理温度よりも低い。また、熱可塑性材料は、熱可塑性材料がマニホールドを出た後、しかし、熱可塑性材料がバルブゲートノズルを出る前に、処理温度まで加熱される。
【0021】
さらに別の実施形態では、熱可塑性材料の温度は、加熱された第1マニホールド内で調節される。また、熱可塑性材料の温度は、第1マニホールドから分岐する加熱されたサブマニホールド内で調整される。さらに、熱可塑性材料の温度は、モールドキャビティに入る熱可塑性材料が通る、加熱されたノズル内で調整される。加熱されたノズル自体は、所望の溶融加工温度を制御するモールドキャビティに最も近い温度を有する複数の温度プロファイル加熱ゾーンをもつことができる。
【0022】
さらに別の実施形態では、第1移動アセンブリが作動して、熱可塑性材料を可塑化バレルからマニホールド内に送出する。第1移動アセンブリを作動させることは、可塑化バレル内に配置されたスクリューを回転させることを含む。また、第2移動アセンブリが作動して、マニホールドからノズル内への熱可塑性材料の送出量を制御する。第2移動アセンブリを作動させることは、マニホールドからノズル内への熱可塑性材料の所望の送出量に基づき、第1の方向または第1の方向とは反対の第2の方向へプランジャーを移動させることを含む。第3移動アセンブリを作動させて、ノズルからモールドキャビティ内への熱可塑性材料の送出を調整する。第3移動アセンブリを作動させることは、熱可塑性材料のノズルからの送出を可能にする、または熱可塑性材料のノズルからの送出を阻止する各々の開方向または閉方向へノズルプランジャーを移動させること含む。
【0023】
さらに別の実施形態では、熱可塑性材料がサブマニホールドから第1マニホールド逆止弁を通過して第1マニホールドの中に逆流することを防止し、サブマニホールドは第1マニホールドから分岐する。また、熱可塑性材料が第1マニホールドから可塑化バレル逆止弁を通過して可塑化バレルの中に逆流することを防止し、第1マニホールドは、熱可塑性材料を可塑化バレルから受け取る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
実施形態は、添付の図面の図において限定ではなく例として示され、図面において同様の参照は同様の要素を示す。
【0025】
図1図1は、一実施形態に係る、物品をマイクロ成形するための成形装置の例示的な図である。
【0026】
図2図2は、物品をマイクロ成形するための成形装置の別の例示的な図である。
【0027】
図3図3および図4は、バルブゲートノズル106の詳細図である。
図4】同上。
【0028】
図5図5は、提案された方法に従って移動するときの半結晶性ポリマーのρVTグラフである。
【0029】
図6図6は、提案された方法に従って移動するときの非結晶性ポリマーのρVTグラフである。
【0030】
図7図7は、従来の先行技術のサイクルおよび提案された方法を経過する熱可塑性材料の様々な段階での圧力を示すグラフである。
【0031】
図8図8は、提案された方法に従って移動するときの半結晶性ポリマーのρVTグラフである。
【0032】
図9図9は、従来のシステムと提案された方法のカスケード温度との間の温度曲線の比較を示すグラフである。
【0033】
図10図10は、溶融分解重量損失対溶融滞留時間を示すグラフである。
【0034】
図11図11は、溶融分解重量損失対溶融温度を示すグラフである。
【0035】
図12図12は、提案された方法に従って移動するときの半結晶性ポリマーのρVTグラフである。
【0036】
図13図13は、溶融物の圧力および密度を時間関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の詳細な説明には、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照が含まれている。図面は、例示的な実施形態に応じた図を示す。本明細書において「例」と称されることもあるこれらの例示的な実施形態は、当業者が本主題を実施できるように十分詳しく説明される。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの特定の詳細がなくても実施可能であることが明らかであろう。他の例では、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は詳細に説明されていない。請求項の範囲から逸脱することなく、実施形態を組み合わせることが可能であり、他の実施形態を利用可能であり、または構造的、論理的、および設計変更を行ってもよい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される。
【0038】
本書において、”a”または”an”という用語は、特許文書において一般的であるように、1つまたは複数を含むよう使用される。本書において、”or”という用語は、別段の指示がない限り、「AまたはB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むような非限定的な”or”を指すために使用される。
【0039】
本開示に説明される本発明の性能および図に示される要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、記録可能媒体、またはそれらの組み合わせの様々な形態で実行され得ることを理解されたい。
【0040】
熱可塑性材料が可塑化バレルから移動して、バルブゲートノズルから出てモールドキャビティに入るときに、熱可塑性材料の温度と圧力をカスケード制御することによって、物品をマイクロ成形する方法を開示している。熱可塑性材料は、可塑化バレル内で溶融され、第1レベルまで予圧が加えられる。熱可塑性材料は、可塑化バレルを出て、マニホールドに入る。可塑化バレル逆止弁は、熱可塑性材料のマニホールドから可塑化バレル内への逆流を防止する。熱可塑性材料の溶融圧力は、ホットランナー内で第2レベルまで操作される。第1レベルでの圧力は、第2レベルでの圧力よりも低い。熱可塑性材料の溶融圧力は、バルブゲートノズル内で超キャビティ保圧力まで操作される。第2レベルでの圧力は、超キャビティ保圧力よりも低い。さらに、熱可塑性材料は、熱可塑性材料が可塑化バレルを出る前に、第1の温度まで加熱され、第1の温度は、熱可塑性材料の溶融温度より高く、熱可塑性材料の処理温度より低い。熱可塑性材料は、熱可塑性材料がマニホールドを出た後、しかし、熱可塑性材料がバルブゲートノズルを出る前に、処理温度まで加熱される。
【0041】
図1および図2を参照すると、物品をマイクロ成形するための成形装置が設けられている。一実施形態では、成形装置内の溶融圧力は、一連のステップにおいて大気圧から超キャビティ保圧力まで増加される。成形装置は、可塑化バレル102、マニホールド108およびノズル116を含むことができる。
【0042】
熱可塑性材料は、ホッパー138を使用して、ペレット136の形態で可塑化バレル102に導入されてもよい。一実施形態では、第1移動アセンブリを使用して、熱可塑性材料を可塑化バレル102からマニホールド108内に送出することができる。第1移動アセンブリは、モータを使用して可塑化バレル102内で回転可能なスクリュー118を備えていてよい。一実施形態では、電気リニアモータまたはトランスデューサ付きステッピングモータを使用してもよい。スクリュー118の回転は、スクリュー118の回転方向に応じて、スクリュー118を前方または後方に推進することができる。可塑化バレル内のスクリュー118は、熱可塑性材料に第1レベルまで予圧を加えることができる。可塑化バレル102内の熱可塑性材料は、一定の圧力に維持され得る。スクリュー118は、熱可塑性材料を第1マニホールド110内に押し込む。スクリュー118の先端に配置された可塑化バレル逆止弁134は、第1マニホールド110から可塑化バレル102内への熱可塑性材料の逆流を防止する。
【0043】
スクリュー118の位置は、シリンダが回転モータ156によって駆動されるときにスクリュー118に力Fを及ぼす2つのシリンダの位置によって制御される。力Fを及ぼすシリンダはまた、前方位置と後方位置のリミットスイッチ152、154間での移動によって、バレル102内の固定圧力を維持するのに役立つ。
【0044】
一実施形態では、第1マニホールド110は、ホットランナー104を規定してもよい。第1マニホールド110は、サブマニホールド112に分岐する。サブマニホールド112は、ホットランナー104を規定してもよい。可塑化バレル102から第1マニホールド110によって受け取られた熱可塑性材料は、ホットランナー104を通ってサブマニホールド112のホットランナー104の中に流入する。
【0045】
一実施形態では、マニホールド108のホットランナー104は、熱可塑性材料の溶融圧力を第2レベルまで増加してもよい。一実施形態では、第1レベルでの圧力は、第2レベルでの圧力よりも低くてもよい。
【0046】
一実施形態では、第2移動アセンブリは、マニホールド108からノズル116内への熱可塑性材料の送出量を制御する。第2移動アセンブリは、計量された量の熱可塑性材料をノズル116内に送出するためのプランジャー120を含む。プランジャー120の第1の方向124または第2の方向122への移動は、所望の量の熱可塑性材料をマニホールド108からノズル116内に送出する。一実施形態では、第1の方向124と第2の方向122は、互いに反対である。
【0047】
一実施形態では、サブマニホールド112から第1マニホールド110の中への熱可塑性材料の逆流は、第1マニホールド逆止弁132を使用して制御することができる。
【0048】
一実施形態では、ノズル116からモールド114のキャビティ内への熱可塑性材料の送出を調整するために、第3移動アセンブリが設けられている。第3移動アセンブリは、ノズルプランジャー126を含む。
【0049】
図3を参照すると、開方向128へのノズルプランジャー126の移動は、熱可塑性材料をノズル116から、バルブゲートノズルを通してモールド114のキャビティ内に送出することを可能にする。ノズルプランジャー126の開放位置は”O”で示される。位置”P”で、ノズルプランジャー126は、ノズル116の中に突入して、マイクロキャビティ150内の超キャビティ保圧力を熱可塑性材料に発生させ、熱可塑性材料をモールド114のキャビティの中に射出する。
【0050】
図4を参照すると、ノズルプランジャー126の閉方向130への移動により、熱可塑性材料がノズル116からマイクロキャビティ150内に、そしてバルブゲートノズルを通って送出されるのが阻止される。ノズルプランジャー126の閉鎖位置は”C”で示される。一実施形態では、位置”P”のノズルプランジャー126は、熱可塑性材料を追加して押し込み、熱可塑性材料をモールド114のキャビティの中に押し込むことができる。開放位置から閉鎖位置への移動により、以前の先行技術のシステムよりも大きな圧力を達成することができる。一実施形態では、第2レベルでの圧力は、超キャビティ保圧力よりも低い。一実施形態では、モールド114のキャビティ内部では300MPaから600MPaの超キャビティ保圧力を得ることができる。
【0051】
一実施形態では、成形装置内の熱可塑性材料の温度は、熱可塑性材料が可塑化バレル102から移動して、バルブゲートノズル106から出てモールド114のキャビティに入るときに、カスケード式に上昇する。
【0052】
一実施形態では、熱可塑性材料は、熱可塑性材料が可塑化バレル102を出てマニホールド108に入る前に、第1の温度まで加熱される。第1の温度は、熱可塑性材料の溶融温度より高く、熱可塑性材料の処理温度より低い。さらに、熱可塑性材料は、熱可塑性材料がマニホールド108を出てノズル116に入った後、処理温度まで加熱される。所望の成形品を形成するために、熱可塑性材料の処理温度は、熱可塑性材料がバルブゲートノズル106を出てモールド114のキャビティ内に入るまで、ノズルにおいて維持される。成形品が離型温度まで冷めて十分な硬さになると、モールド114のキャビティが開き、成形品が取り出される。モールド114のキャビティの外側では、成形品は、さらに室温まで冷める。
【0053】
図5図8および図12は、方法を実施するシステムを介して移動するときの半結晶性ポリマーのρVT(密度/体積/温度)グラフである。可塑化バレル102内の圧力は、一定に維持される。この時点で、半結晶性ポリマーの比体積は、その最大である。また、半結晶性ポリマーは、可塑化バレル102内で第1の温度まで加熱されてもよい。温度は、半結晶性ポリマーの結晶化転移温度より高く、半結晶性ポリマーの処理温度より低くてもよい。例として、図5のグラフを参照すると、半結晶性ポリマーに対する可塑化バレル102内の圧力は、0~50MPaの間であってもよい。半結晶性ポリマーが可塑化バレル102を出て、マニホールド108(ホットランナー104)に入ると、マニホールド108(ホットランナー104)内の圧力が第2レベルまで増加し、温度が連鎖的に反応し得る。そして、そうすることで、半結晶性ポリマーの比体積は、可塑化バレル102内にあったものから減少する。例として、図5のグラフを参照すると、半結晶性ポリマーに対するマニホールド108(ホットランナー104)内の圧力は、50~150MPaの間であってもよい。半結晶性ポリマーがマニホールド108(ホットランナー104)を出てノズル116に入ると、ノズル116内の圧力は超キャビティ保圧力まで増加し、温度はさらに処理温度まで連鎖的に反応し得る。そして、そうすることで、半結晶性ポリマーの比体積は、マニホールド108(ホットランナー104)内にあったものからさらに減少する。超キャビティ保圧力は、バルブゲートノズル106にて、その最大であってもよい。例として、図5のグラフを参照すると、半結晶性ポリマーに対するノズル116内の圧力は、150~400MPaの間であってもよい。
【0054】
図5は、半結晶性ポリマーが固体から溶融する結晶化転移線を表す。また、半結晶性ポリマーのカスケード溶融処理温度線も示されている。
【0055】
また、図8を参照すると、提案された方法において、保圧(3)、冷却(4)、およびモールド114のキャビティからの成形品の取り出し(5)の間、密度は同じままである。成形品は常温で収縮しない。一方、従来技術では、保圧段階(B)中の成形部の密度は高く、冷却段階(C)中に減少し、成形部の取り出し中(D)の密度はさらに減少する可能性がある。また、成形部が室温に達すると、成形部は再び収縮し、成形品の密度が低下する可能性がある。
【0056】
図6は、非結晶性ポリマーが方法を実施するシステムを介して移動するときの非結晶性ポリマーのρVT(密度/体積/温度)グラフである。可塑化バレル102内の圧力は、まず第1レベルに維持される。この時点で、非結晶性ポリマーの比体積は、その最大である。また、非結晶性ポリマーは、可塑化バレル102内で第1の温度まで加熱されてもよい。温度は、非結晶性ポリマーの溶融温度より高く、非結晶性ポリマーの処理温度より低くてもよい。例として、図6のグラフを参照すると、非結晶性ポリマーに対する可塑化バレル102内の圧力は、0~50MPaの間であってもよい。非結晶性ポリマーが可塑化バレル102を出て、マニホールド108(ホットランナー104)に入ると、マニホールド108(ホットランナー104)内の圧力が第2レベルまで増加し、温度が連鎖的に反応し得る。そして、そうすることで、非結晶性ポリマーの比体積は、可塑化バレル102内にあったものから減少する。例として、図6のグラフを参照すると、非結晶性ポリマーに対するマニホールド108(ホットランナー104)内の圧力は、50~150MPaの間であってもよい。非結晶性ポリマーがマニホールド108(ホットランナー104)を出てノズル116に入ると、ノズル116内の圧力は超キャビティ保圧力まで増加し、温度はさらに処理温度まで連鎖的に反応し得る。そして、そうすることで、非結晶性ポリマーの比体積は、マニホールド108(ホットランナー104)内にあったものからさらに減少する。超キャビティ保圧力は、バルブゲートノズル106にて、その最大であってもよい。例として、図6のグラフを参照すると、非結晶性ポリマーに対するノズル116内の圧力は、150~400MPaの間であってもよい。
【0057】
図6は、非結晶性ポリマーが固体から溶融する結晶化転移線を表す。また、非結晶性ポリマーのカスケード溶融処理温度線も示されている。
【0058】
図7は、従来の先行技術のサイクルおよび提案された方法を経過する熱可塑性材料の様々な段階での圧力を示すグラフである。可塑化バレル102、マニホールド108内の圧力は、ライン1で示され、サイクル時間を通して一定である。マニホールド108内の圧力はライン2で示されている。マニホールド108内の圧力は、可塑化バレル102のチャンバー内の圧力よりも高いが、マニホールド108内の圧力は、スクリュープランジャーの最小圧力(すなわち、
圧力A)より下がらない。バレルは、最小値と最大値を有する。回転モータは、異なる速度(rpm、例えば40~80rpm)で回転して、再充填量を調整することでスクリューの位置を制御できる。再充填は機械サイクルとは無関係であって、任意の成形サイクル数の後に再充填してもよい。これにより、予圧を加えられた溶融物が複数のサイクルの間保持される。バルブゲートノズル106での圧力は、ライン3で示されている。ライン3のスパイクは、バルブゲートノズル106での圧力の急激な増加である。ライン4および5は、従来のプランジャーおよび従来のキャビティ圧力ラインである。提案された方法とは対照的に、従来のプランジャーと従来のキャビティの圧力はゼロに低下する。従来のプランジャーと従来のキャビティにおいて圧力がゼロに低下するので、提案された方法で達成されるピーク圧力と溶融(キャビティ充填時間)は、従来のシステムでは達成できない。
【0059】
図9は、従来のシステムと提案された方法のカスケード温度との間の温度曲線の比較を示すグラフである。図において分かるように、提案された方法では、ポリマーがホッパーでの室温から処理温度に達するのにかかる時間は、従来のシステムによってかかる時間と比べて短い。これは、提案された方法におけるポリマーの滞留時間に大きく影響する。つまり、提案された方法では、システム内の温度のカスケード制御により、ポリマーが費やす時間が大幅に削減されるので、従来のシステムと比べてポリマーの物理的特性が保持される。
【0060】
図10は、溶融分解重量損失対溶融滞留時間を示すグラフである。グラフは、システム内の溶融が長いほど、溶融物の重量が低下することを示している。溶融物の重量が低下し続けると、溶融物は、より多くの材料劣化および物理的特性の損失を被る。
【0061】
図11は、溶融分解重量損失対溶融温度を示すグラフである。グラフは、さまざまな材料の重量損失を示しており、高温を維持するのではなく、成形のさまざまな段階で温度をカスケード制御する利点を示している。
【0062】
図13は、溶融物の圧力および密度を時間関数として示すグラフである。Aは可塑化バレル102を示し、一定の力Fがスクリュー118に加えられる。可塑化バレルチャンバー102a内の圧力は、第1レベルAで一定である。溶融物がマニホールドBに入ると、マニホールドプランジャー126が溶融物に力F1を加えて、Bまで溶融物の圧力を増加させ、および処理中の溶融物の密度を増加させる。バルブゲートが開き、キャビティが充填される。それから、バルブピンプランジャーは、閉じたときに溶融物にF2の力を加えて、溶融物の圧力をCまで上昇させ、さらに溶融物の密度を増加させる。ノズルプランジャー126を使用して、ノズル116内の溶融物にF3の力を加えてもよい。溶融物は、バルブゲートノズルのマイクロキャビティ150において最大圧力Dを達成し、溶融物の密度をさらに増加させてもよい。溶融チャネルの端にあるゲートオリフィスまたはマイクロキャビティ150は、最大圧力Dまで増加するように、バルブピンの前端が突入される円筒形チャンバーである。マイクロボリューム(V4)はキャビティ内に移動し、圧力の最終的なスパイクをもたらす。マイクロ容積チャンバー150の直径とプランジャー126の端部との比率は、特にDの前の逆止弁が閉じられている瞬間に、高圧の生成を可能にする。モールドキャビティ内のバルブが開口される前に、圧力がこのように最終的に上昇すると、Dにおいて所望のスパイクが生じる。
【0063】
この方法では、従来の一段階または二段階射出成形工程で求められるように、バレル内において完全処理温度または完全射出圧力を必要としない。この方法では、可塑化バレル102内およびマニホールド108内の熱可塑性材料をはるかに低い圧力および温度に保つことができるが、熱可塑性材料を圧力でマニホールド108からバルブゲートノズル106に供給するのに十分低い溶融粘度をえるために、熱可塑性材料を溶融範囲または結晶子の融点以上にするのに十分な温度に保つことができる。一例として、図12に示すように、ポリプロピレンは、溶融温度160°Cおよび処理温度230°Cを有する。次に、可塑化バレル内のポリプロピレンの第1の温度は、例えば180°Cになる。別の例として、ポリカーボネートは、溶融温度は150°Cおよび処理温度290°Cを有する。次に、可塑化バレル内のポリカーボネートの第1の温度は、例えば250℃になる。可塑化バレル102は、2つまたは3つの温度制御ゾーンを有する。第1マニホールド110は、2つの温度制御ゾーンを有するサブマニホールド112内に熱可塑性材料を供給し、熱可塑性材料は、最終的に、個々の温度制御ゾーンを有するバルブゲートノズル106に到達する。バルブゲートノズル106では、熱可塑性材料が射出に最適な処理温度に到達する。熱可塑性材料の温度をカスケード制御すると、特に感熱性材料(POM、PCなど)の溶融滞留時間が改善され、コールドランナー内で材料を無駄にすることなく、且つ熱劣化することなく、体積が1mmから10mmの間でダイレクトゲートマイクロ部品を処理できる。この方法により、射出成形工程が改善され、これにより、品質がより高いマイクロ部品が得られる。
【0064】
この方法では、HDPE、PP PBT、PAなどの半結晶性ポリマーは、モールドキャビティ内で結晶化するのに極めて短い時間ウィンドウを有する。結晶子がより小さく、結晶子構造がより少ないと、マイクロ部品の特性が異なることになる。事前に圧縮された熱可塑性材料による非常に高速な射出により、モールド114のキャビティがミリ秒で充填される。モールド114のキャビティの充填工程は、より大きな部品の場合のように、モールド114のキャビティの壁で凍結層を形成させない。この方法を使用すると、溶融圧力が大気圧から溶融圧力まで上昇しなければならない一段階または二段階射出成形工程の溶融圧縮および射出速度に関連する比較的長い充填時間が大幅に短縮される。また、この方法を使用すると、熱可塑性材料の充填は、モールドキャビティの末端にはるかに速く到達する。提案された方法では、成形品の内部および全体の塑性形態がはるかに均一になり、成形品は固有応力が少なくなる。熱可塑性材料は、モールド鋼と比較してはるかに高い熱膨張係数を有し、これは、モールド114のキャビティにおける成形品の正確な複製に影響を及ぼす。成形品は、処理温度からの冷却中に収縮または縮小しない。これは、熱可塑性材料の温度が上昇したときの溶融膨張とは逆である。
【0065】
提案された方法は、300~500MPaの溶融キャビティ圧力を達成するミリ秒以内のキャビティ充填時間で、予め圧縮された熱可塑性材料を用いて、モールド114のキャビティに熱可塑性材料を射出することによって、従来技術の収縮問題を克服する。充填圧力まで上昇し、保圧力まで降下する低射出圧力でプランジャーに再充填した後に開始する周知の二段階プランジャー射出と比較すると、提案された方法は、ノズルプランジャー126をモールド114のキャビティ付近に配置した状態で、最大100から150MPaのすでに高い圧力で熱可塑性材料を射出する。これは、モールド114のキャビティに対してバルブゲートノズル106が開いたときに、熱可塑性材料がすでに圧縮された状態であって、モールド114のキャビティ内で高い溶融密度に達する超高充填時間となるという利点がある。モールド114のキャビティが充填された直後にバルブゲートノズル106が閉じると、熱可塑性材料の密度は、300から500MPaの圧力でモールド114のキャビティ内でさらに上昇する。ポリマー分子は、高圧および熱可塑性材料の密度の増加により、モールド114のキャビティに密に詰め込まれる。その結果、成形品は冷却段階で収縮しない。これにより、モールド114のキャビティの正確な複製である成形品が得られる。
【0066】
本明細書で説明する例示的な実施形態は、コンピュータにインストールされたソフトウェアを含む動作環境で、ハードウェアで、またはソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実施することができる。
【0067】
一実施形態では、コンピュータは、処理モジュール、メモリモジュール、入力モジュール、出力モジュール、および通信モジュールを含んでいてもよい。
【0068】
処理モジュールは、1つまたは複数のプロセッサの形式で実装され、ハードウェア、コンピュータ実行可能命令、ファームウェア、またはそれらの組み合わせで適切に実施することができる。処理モジュールのコンピュータ実行可能命令またはファームウェアの実施には、説明されたさまざまな機能を実行するために、任意の適切なプログラミング言語で書かれたコンピュータ実行可能または機械実行可能命令が含まれていてもよい。
【0069】
メモリモジュールは、ハードディスクドライブなどの永久メモリを含んでいてもよく、データ、およびプロセッサによって実施される実行可能プログラム命令を記憶するように構成されてもよい。メモリモジュールは、一次および二次メモリの形式で実装されてもよい。メモリモジュールは、処理モジュール上でロード可能および実行可能な追加のデータおよびプログラム命令、ならびにこれらのプログラムの実行中に生成されたデータを格納することができる。また、メモリモジュールは、ランダムアクセスメモリおよび/またはディスクドライブなどの揮発性メモリ、または不揮発性メモリであってもよい。メモリモジュール204は、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、メモリスティック、スマートメディア、マルチメディアカード、セキュアデジタルメモリ、または現存する或は将来存在する可能性のある任意の他のメモリストレージなどのリムーバブルメモリで構成することができる。
【0070】
入力モジュールは、他の入力デバイスの中でも、キーパッド、タッチスクリーン、マウス、マイク、およびスタイラスなどの入力デバイスにインターフェースを提供できる。
【0071】
出力モジュールは、他の出力デバイスの中でも、ディスプレイ画面、スピーカー、プリンター、および触覚フィードバックデバイスなどの出力デバイスにインターフェースを提供できる。
【0072】
通信モジュールは、一例として、GPRSモジュール、または通信を可能にする他のモジュールであってもよい。通信モジュールは、とりわけ、モデム、ネットワークインターフェースカード(イーサネット(登録商標)カードなど)、通信ポート、またはパーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)スロットを含んでいてもよい。通信モジュールは、有線および無線プロトコルの両方をサポートするデバイスを含んでいてもよい。他の信号の中でも、電子信号、電磁信号、光信号の形式でのデータは、通信モジュールを介して転送可能である。
【0073】
上記の工程は、一連のステップとして説明されていることに留意されたい。これは単に説明するために行われた。したがって、いくつかのステップが追加されたり、いくつかのステップが省略されたり、ステップの順序が変更されたり、いくつかのステップが同時に実行され得ることが考えられる。
【0074】
特定の例示的な実施形態を参照して実施形態を説明したが、本明細書で説明されるシステムおよび方法のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な修正および変更を加えてもよいことは明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味というより、例示的なものとみなされる。
【0075】
本発明の多くの変更および修正は、上述の説明を読んだ後、当業者には疑いなく明らかになるであろう。本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。上記の説明は多くの仕様を含み得ることを理解されたい。これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の個人的に好ましい実施形態のいくつかの単なる例示を提供するものとして解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、与えられた例ではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によって決定されるべきである。
図1
図2
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図7
図8
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図10
図11
図12
図13