(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】触媒蒸留用規則充填物
(51)【国際特許分類】
B01J 19/32 20060101AFI20220914BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20220914BHJP
C10G 7/12 20060101ALI20220914BHJP
C10G 11/10 20060101ALI20220914BHJP
B01D 3/26 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B01J19/32
B01J8/02 Z
C10G7/12
C10G11/10
B01D3/26 A
(21)【出願番号】P 2020555320
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2019025791
(87)【国際公開番号】W WO2019199571
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-08
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516148335
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リャン
(72)【発明者】
【氏名】ローゾス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ペリー
(72)【発明者】
【氏名】トムスラ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】グローテン, ウィリブロルド アー.
(72)【発明者】
【氏名】ポドレバラック, ゲーリー ジー.
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-510391(JP,A)
【文献】特開平7-251063(JP,A)
【文献】特開2010-82617(JP,A)
【文献】特開昭53-133579(JP,A)
【文献】実開平6-77825(JP,U)
【文献】特開平3-181328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/00-3/42,53/18
B01J 8/02,19/32
C10G 7/12,11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの格子を有する
剛性骨格と、
上記格子に設置された複数の水平流体透過管であって、該複数の水平流体透過管の間に複数の流体路を形成し、各水平流体透過管は6辺多角形の外形を有する、複数の水平流体透過管と、
上記複数の水平流体透過管のうち垂直方向に整列した各管を接続する複数の垂直プレート又はワイヤーであって、1つの垂直方向整列管の角から、隣接する垂直方向整列管の角へと接続している複数の垂直プレート又はワイヤーと
を有する
触媒蒸留構造体。
【請求項2】
第1の垂直方向整列管群と第2の垂直方向整列管群とを更に有し、上記第1群は、上記第1群内で平行な隣接する垂直方向に整列した列として配置された上記複数の水平流体透過管を有し、上記第2群は、上記第2群内で平行な隣接する垂直方向に整列した列として配置された上記複数の水平流体透過管を有する、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項3】
上記第1の垂直方向整列管群は、上記第2の垂直方向整列管群からずれており、それにより、上記第1群の上記水平流体透過管が、上記第2のプレート群の上記水平流体透過管と接触することなく上記第2群の上記水平流体透過管と重なり合うことで蛇行流体路を形成する、請求項2に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項4】
上記複数の垂直プレート又はワイヤーの高さによって、上記第1群及び上記第2群の上記水平流体透過管が均等に隔てられている、請求項3に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項5】
上記第1群及び上記第2群は
横方向に距離を置いて並んで
配置されている、請求項4に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項6】
6辺多角形の幾何学的形状を更に有しており、上記6辺多角形の4つの角で第1の角度を、上記6辺多角形の2つの角で第2の角度を形成しており、上記第1の角度は上記第2の角度より大きい、請求項3に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項7】
上記第2の角度は、上記複数の垂直プレート又はワイヤーで接続された垂直方向整列管の角にある、請求項6に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項8】
上記6辺多角形は、第1の長さを有する2辺と第2の長さを有する4辺とを有する、請求項7に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項9】
上記第1の角度は、上記第1の長さを有する辺と上記第2の長さを有する辺との接続部の角にあり、上記第2の角度は、上記第2の長さを有する2辺の接続部の角にある、請求項8に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項10】
上記第2の長さは上記第1の長さより大きい、請求項9に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項11】
上記第2の長さは上記第1の長さより短い、請求項9に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項12】
上記複数の水平流体透過管及び複数の垂直プレート又はワイヤーは、金網等の同じ材料で作製されている、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項13】
上記少なくとも2つの格子を各格子から距離を置いて強固に保持する少なくとも1つの支持ロッドを更に有する、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項14】
上記複数の水平流体透過管はそれぞれ、該管の第1端及び第2端に開口部を有する、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項15】
上記格子は複数の開口部を有する、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項16】
上記格子の上記複数の開口部は、上記複数の水平流体透過管の外形と同じ外形を有する、請求項15に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項17】
上記複数の水平流体透過管は、上記格子の上記複数の開口部に配置されている、請求項16に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項18】
上記6辺多角形は六角形であり、上記複数の垂直プレート又はワイヤーは、1つの垂直方向整列管の六角形の上部の角から、隣接する垂直方向整列管の六角形の底部の角へと上記垂直方向整列管を接続している、請求項1に記載の
触媒蒸留構造体。
【請求項19】
反応と、反応物質からの生成物の分離とを同時に実施するための蒸留塔反応器であって、
垂直配置容器と、
上記垂直配置容器に配置された1つ以上の
触媒蒸留構造体とを有しており、
上記
触媒蒸留構造体は、
少なくとも2つの格子を有する
剛性骨格と、
上記格子に設置された複数の水平流体透過管であって、該複数の水平流体透過管の間に複数の流体路を形成し、各水平流体透過管は6辺多角形の外形を有する、複数の水平流体透過管と、
上記複数の水平流体透過管のうち垂直方向に整列した各管を接続する複数の垂直プレート又はワイヤーであって、1つの垂直方向整列管の角から、隣接する垂直方向整列管の角へと接続している複数の垂直プレート又はワイヤーとを有している、
蒸留塔反応器。
【請求項20】
フローラインを介して上記垂直配置容器へ接続された1つ以上のリボイラー、コンデンサー、供給タンク、又はセパレーターを更に有する、請求項19に記載の蒸留塔反応器。
【請求項21】
上記供給タンクからのフローラインは、上記1つ以上の
触媒蒸留構造体の位置で、その上で、又はその下で上記垂直配置容器へ接続している、請求項20に記載の蒸留塔反応器。
【請求項22】
上記
剛性骨格は、溶接、クリンプ、接着剤、又はメカニカルファスナーによって上記垂直配置容器へ着脱可能に取り付けられる、請求項19に記載の蒸留塔反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、概して、反応触媒及び蒸留用の物質移動表面という2つの機能を発揮できる蒸留構造体に関する。より具体的には、本明細書の実施形態は、固体粒子状触媒を含んでいてもよい固定蒸留構造体に関する。本明細書で提供される蒸留用規則充填物は、接触反応用の触媒と蒸留用の物質移動表面領域とを提供するという2つの機能を発揮できる。
【背景技術】
【0002】
触媒蒸留は、蒸留及び接触反応プロセスを組み合わせて、溶液中で混合物を選択的に分離する反応蒸留の一分野である。触媒蒸留の主な機能は、ガソリンの精製等、接触有機反応の収率を最大化することである。また、触媒蒸留で使用される触媒は各種物質で構成されており、様々な物体に充填される。例えば、上記各種物質は反応性が高くてもよく、反応速度を顕著に加速できることで効果的な触媒となる。典型的には、触媒が充填される形状によって幾何学的配置が形成されることで、反応物質と触媒とが接触して生成物を形成する蒸留塔の領域(すなわち触媒床)に間隔が設けられる。この間隔は、触媒が確実に塔内に広がるようにするためのものである。触媒蒸留塔内では、液体反応物質が触媒されると同時に加熱される。その結果、生成物がすぐに気化し始めて初期の溶液から分離される。反応物質を同時に触媒及び加熱することで、新たに形成された生成物が急速に沸騰して系外へ放出される。
【0003】
反応と反応物質からの生成物の分離とを同時に行うことがしばらくの間実施され、その利点も認識されていた。同時に行う反応及び蒸留の採用例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6(エーテル化);特許文献7(二量体化);特許文献8(水和);特許文献9(解離);特許文献10及び特許文献11(芳香族アルキル化);並びにCatalytic Distillation Technologies及び/又はLummus Technologyに付与された別の最近の特許に開示されている。これらの教示全体が参照により本願に援用される。
【0004】
いくつかの異なる触媒蒸留構造体が提案されている。例えば、ワイヤーデミスターが巻かれた布ベルトのポケット内に粒子状触媒を収容することで触媒蒸留構造体を形成する特許文献12及び特許文献13や、触媒部材を形成する波形要素及びテープを有する充填物を開示している特許文献14を参照されたい(これらの教示全体が参照により本願に援用される)。特許文献15及び特許文献16に開示されているように、触媒を収容するように高効率充填物の改変が行われている。これらの教示全体が参照により本願に援用される。
【0005】
特許文献16には、少なくとも2つの略垂直な二重格子と、該格子に設置された複数の略水平な菱形管であって、該管の間に流体路を形成する菱形管とで構成された剛性骨格を有する触媒構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,232,177号明細書
【文献】米国特許第4,307,254号明細書
【文献】米国特許第4,336,407号明細書
【文献】米国特許第4,504,687号明細書
【文献】米国特許第4,918,243号明細書
【文献】米国特許第4,978,807号明細書
【文献】米国特許第4,242,530号明細書
【文献】米国特許第4,982,022号明細書
【文献】米国特許第4,447,668号明細書
【文献】米国特許第4,950,834号明細書
【文献】米国特許第5,019,669号明細書
【文献】米国特許第4,302,356号明細書
【文献】米国特許第4,443,559号明細書
【文献】米国特許第4,731,229号明細書
【文献】米国特許第5,073,236号明細書
【文献】米国特許第5,730,843号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本概要は、以下の詳細な説明で更に記載されるいくつかの概念を紹介するものである。本概要は、請求項に記載した主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また請求項に記載した主題の範囲を限定する一助として使用されることも意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本明細書に開示した実施形態は、少なくとも2つの格子を有する剛性骨格と共に、上記格子に設置された複数の水平流体透過管であって、該複数の水平流体透過管の間に複数の流体路を形成する複数の水平流体透過管を有していてもよい触媒蒸留構造体に関する。加えて、各水平流体透過管は、6辺多角形の外形を有していてもよい。また、上記触媒蒸留構造体は、上記複数の水平流体透過管のうち垂直方向に整列した各管を接続する複数の垂直プレート又はワイヤーを有していてもよい。更に、上記複数の垂直プレート又はワイヤーは、1つの垂直方向整列管の角から、隣接する垂直方向整列管の角へと接続している。
【0009】
一態様において、本明細書に開示した実施形態は、反応と、反応物質からの生成物の分離とを同時に実施するための蒸留塔反応器であって、垂直配置容器と、上記垂直配置容器に配置された1つ以上の触媒蒸留構造体とを有していてもよい蒸留塔反応器に関する。加えて、上記触媒蒸留構造体は、少なくとも2つの格子を有する剛性骨格と共に、上記格子に設置された複数の水平流体透過管であって、該複数の水平流体透過管の間に複数の流体路を形成する複数の水平流体透過管を有していてもよい。各水平流体透過管は、6辺多角形の外形を有していてもよい。また、上記触媒蒸留構造体は、上記複数の水平流体透過管のうち垂直方向に整列した各管を接続する複数の垂直プレート又はワイヤーを有していてもよい。更に、上記複数の垂直プレート又はワイヤーは、1つの垂直方向整列管の角から、隣接する垂直方向整列管の角へと接続している。
【0010】
蒸留塔内で流体の移動度をより大きくできるという点で、本明細書中の実施形態は有利である。本明細書中のいくつかの実施形態に係る触媒蒸留構造体は、従来技術で開示された構造体よりも良好な蒸留特性を提供できるという点が更に有利である。以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、別の態様及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2A】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2B】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2C】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2D】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2E】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2F】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2G】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図2H】本開示の1つ以上の実施形態に係る触媒を含む要素及び空間的関係を表す充填構造体の断面模式図である。
【
図3】
図1の空間的関係で表される充填構造体のアイソメトリック図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態に係る充填構造体用の
剛性骨格のアイソメトリック図である。
【
図5】本開示の1つ以上の実施形態に係る蒸留塔反応器に配置された充填構造体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照して、以下で本開示の実施形態を詳述する。一貫性を保つために、各種図面で類似の要素を類似の参照番号で表している場合がある。また、以下の詳細な説明においては、請求項に記載した主題をより十分に理解させる目的で多くの具体的詳細を記載している。しかしながら、当業者には明らかなように、これらの具体的詳細がなくても記載した実施形態を実施可能である。他の例では、説明が不必要に複雑化するのを避けるために、周知の特徴を詳細には記載していない。
【0013】
一態様において、本明細書に開示した実施形態は、触媒蒸留用の規則充填物に関する。本明細書中、「連結された」又は「~に連結された」又は「接続された」又は「~に接続された」という語は、直接的又は間接的な接続のいずれかを確立することを示している場合があり、明示されない限り、いずれにも限定されない。可能な限り、図面において類似又は同一の参照番号を使用して共通の又は同じ要素を特定している。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、図面中の特定の特徴及び特定の図は、明確化する目的で縮尺を誇張して表している場合がある。
【0014】
本明細書の実施形態に係る触媒蒸留構造体は、格子に配置された複数の水平流体透過管を有する装置であり、垂直方向に隣接する管の間に液体輸送接続部(ワイヤー等)を有していてもよく、所定のレイアウトで配置された複数の格子内の管は、フレーム又はフレームハウジング(すなわち剛性骨格)内に収容してもよい。フレーム内の水平流体透過管の配置及び形状によって、触媒蒸留構造体の触媒充填量、分離能、及び水力学的能力の1つ以上を向上させつつ、複雑さ及び設計を顕著に低減できる。水平流体透過管は格子全体に設置されて、触媒蒸留構造体において流体用の流路を導き、形成する。本明細書中、流体とは液体、気体、及び/又はその混合物を意味する場合がある。加えて、プレートを用いて、フレーム内で垂直方向に整列した各水平流体透過管を接続してもよい。更に、プレートで接続された垂直方向整列管は、プレートで接続された第2の垂直方向整列管群とずれて隣接していてもよい第1群を含んでいてもよい。
【0015】
従来の触媒蒸留構造体は、典型的には、従来の触媒蒸留構造体の水力学的能力を強化するために低触媒充填量の管を有する。従来の触媒蒸留構造体では、広範囲の溶接部によって触媒充填用の面積が小さくなり、且つ多数の流体透過管を必要とするような広範囲のレイアウト及び配置の流体透過管を用いる場合がある。いくつかの例において、流体透過管は、従来の触媒蒸留構造体内を移動する流体用の乱流路を形成しており、複雑に曲がったり方向が変化したりするものがある。このような従来の触媒蒸留構造体は、部品、部材、及び溶接部の数が多いことから、重量が大きくなり、且つ製造コストも高くなり得る。従って、当業者には明らかである通り、本開示における1つ以上の実施形態を採用することで、このような課題を解決すると共に、従来の触媒蒸留構造体に対して別の利点を得ることができる。
【0016】
特許文献16の菱形構造とは対照的に、本明細書の実施形態に係る触媒蒸留構造体は、より優れた液体及び/又は蒸気流特性を容易に得られるような形状及び構造を有する。本明細書に開示した触媒蒸留構造体は、垂直プレートを含む触媒構造体を有する。各垂直プレートは、複数の水平流体透過管を有する。各流体透過管の間の垂直接続部によって、垂直方向に隣接する水平管の間の液体輸送が容易になり、それにより、濡れた状態で各水平管内に触媒を保持又は配置する液体の流れが得られる。
【0017】
垂直プレートは、それぞれ間隔を空けて隣接していてもよく、その場合、管が垂直方向にずれることで、プレート及び蛇行蒸気路(隣接するプレート間の開放空間)が効率的に充填された格子が得られる。垂直方向に隣接する各流体透過管の間の垂直接続部は、中実接続部であってもよく、管を相互接続する複数のワイヤー又はファイバーであってもよい。単一のプレートの管間の垂直接続部は、管底部から液体を自由落下させるものではなく、垂直方向に隣接する管間の流体連通を容易にするような材料で形成されるべきである。液滴が自由落下すると、飛沫同伴が発生したり、構造体の性能属性が低下したりし得るからである。
【0018】
管の構成は、管内に収容された触媒粒子へと液体流が誘導されるようなものであってもよい。いくつかの実施形態において、輸送液体がプレートを横断して下っていくため、触媒の濡れがすぐに起こる。他の実施形態において、管の外部形状によって触媒の濡れを向上させたり変化させたりすることができる。更に他の実施形態において、輸送液体及び輸送蒸気が高度に充填された格子を経由することで、管の形状によって、上述した従来技術の菱形管と比較して水力学的能力の向上、触媒充填量の向上、及び構造体の性能の全体的向上が可能となることが見出だされた。
【0019】
1つ以上の実施形態において、本開示の規則充填物は、各垂直プレートに沿って設置された六角形状管を有していてもよく、該プレートは並んで組み合わせられて新たな規則充填物を形成している。六角形状管を用いた場合、従来の触媒蒸留構造体と比較して、水平流体透過管により多くの触媒を収容して、水力学的能力を損なうことなく触媒充填量を向上させることができる。これは一部には、水平流体透過管が6辺多角形の外形を有すると共に、垂直方向に整列した水平流体透過管をプレートが接続していることによるものである。得られる構造体では、触媒蒸留構造体用の隣接する水平流体透過管間の移行がスムーズになる。
【0020】
加えて、触媒蒸留構造体は、ある形状に曲げるのが容易であり(例えば、平坦なメッシュシートで作製された水平流体透過管)、従って、溶接を全く又は最小限にしか必要とせず、管理許容差を緩和し、製造性を向上できる(すなわち、製造コスト及び製造時間の削減)部材を有していてもよい。更に、触媒蒸留構造体用の規則充填物は、必要とする水平流体透過管の数を少なくできる。触媒蒸留構造体用の規則充填物全体で、製品工学、透過管製造に係るリスクを最小化し、組立て時間の削減、ハードウェアコストの削減、重量及び覆いの削減を行うことができる。加えて、触媒蒸留構造体の規則充填物は、よりスムーズな流路、向上した触媒充填量、より良好な分離能、及び高い水力学的能力に加えて、プレートで接続された6辺多角形状の水平流体透過管の幾何学的形状を変化させる柔軟性も有することができる。更に、本開示の実施形態によれば、触媒蒸留構造体は、反応と反応物質からの生成物の分離とを同時に実施するために管及び溶接部の追加を必要とせず、垂直配置容器等の蒸留塔反応器や類似の構造体へ直接接続することができ、このため、このような触媒蒸留システムのコストを削減し、性能を向上できる。
【0021】
図1~
図3を参照すると、本明細書の実施形態は、いかにして
触媒蒸留構造体に対して複数の水平流体透過管2が配置されるかという点に関してある空間的関係を有する充填構造体1を含む。いくつかの実施形態において、複数の水平流体透過管2は、充填構造体1において垂直方向に整列していてもよい。また、垂直方向整列管2を複数のプレート又はワイヤー3で接続することで、垂直方向に隣接するプレート間の流体連通を容易にできることも想定される。加えて、上記構造体は、上記垂直方向整列管2の隣接する行を複数有している。更に、複数の水平流体透過管2の空間的関係によって、蛇行流路4が形成される。
触媒蒸留構造体の流路、触媒充填量、分離能、及び水力学的能力は、
触媒蒸留構造体における管の空間的関係により決定できる。
【0022】
図1を参照すると、
図1は、複数の水平流体透過管2がある空間的関係を有する充填構造体1の正面模式図である。12本の水平流体透過管2が図示されているが、これは単に例示を目的としたものであり、任意の数の水平流体透過管を使用できることを当業者なら理解するであろう。隣接する垂直方向に整列した水平流体透過管は、複数のプレート又はワイヤー3で接続されて、距離hだけ互いに離れている。更に、複数の水平流体透過管2が6辺多角形の外形を有するよう形成されることも想定される。例えば、6辺多角形は、六角形の4つの角で第1の角度ベータ(β)を有し、六角形の2つの角で第2の角度アルファ(α)を有する六角形であってもよい。第2の角度アルファ(α)は、六角形の最底部の角及び最上部の角にあってもよく、その場合、複数のプレート又はワイヤー3は、複数の水平流体透過管2の第2の角度アルファ(α)の角で接続される。更に、第1の角度ベータ(β)は第2の角度アルファ(α)より大きくてもよいことも想定される。例えば、第1の角度ベータ(β)の値は130°であってもよく、第2の角度アルファ(α)の値は100°であってもよい。その場合、内角(β,α)の和は720°となる。具体的な数値を記載したが、角度(β,α)の値は単に例示を目的としたものであり、角度(β,α)の値は、本開示の範囲から逸脱しない任意の値であってもよい。加えて、六角形は長さの異なる辺を有していてもよい。いくつかの実施形態において、六角形は、第1の長さ(a)の4辺と第2の長さ(t)の2辺とを有していてもよい。また、第1の長さ(a)は第2の長さ(t)より長くてもよい。第2の角度アルファ(α)は、第1の長さの辺のうちの2辺で形成される角にあってもよい。第1の角度ベータ(β)は、第1の長さの辺のうちの1辺と第2の長さの辺のうちの1辺とで形成される角にあってもよい。加えて、第2の長さ(t)の2辺は、複数のプレート又はワイヤー3と平行であってもよい。更に、複数の水平流体透過管2の外形はX軸及びY軸に沿って対称であってもよいことも想定される。
【0023】
更に
図1を参照すると、水平流体透過管2は、垂直方向に隣接する行(A~E)となるように整列していてもよい。例えば、垂直方向に隣接する行(A~E)は、第1群(行A、C、及びE)と第2群(行B及びD)とに分けられる。第1群(行A、C、及びE)は、対応する行内で垂直方向に整列する複数の水平流体透過管2a、2c、2eを有しており、行A、C、及びEは、水平流体透過管2a、2c、2eが第1群(行A、C、及びE)内で一方の行から他方の行へと水平方向に整列するように整列していてもよい。加えて、第2群(行B及びD)は、対応する行内で垂直方向に整列する複数の水平流体透過管2b、2dを有しており、行B及びDは、水平流体透過管2b、2dが第1群(行B及びD)内で一方の行から他方の行へと水平方向に整列するように整列していてもよい。
図1では5行あり、行内に2つ又は3つの水平流体透過管が存在しているが、いかに充填構造体1は2つ又は3つの水平流体透過管を有する5行に限定されず、行の数及び行内の水平流体透過管の数はそれぞれ任意の数であってもよいことを当業者なら理解するであろう。
【0024】
更に
図1で示した通り、充填構造体1は、隣接する行(A、C、EとB、D)の水平流体透過管2a~2eがずれて、各列の管の一部が重なり合うが接触はしないように空間的に配置されている。重なり合うことで、流体用の蛇行流路4が得られ、それにより流体が構造体の管と接触する機会が増える。上述の通り、隣接する垂直方向に整列した水平流体透過管は、各行(A~E)内で距離hだけ互いに離れるように複数のプレート又はワイヤー3で接続されている。加えて、隣接する垂直方向に整列した水平流体透過管(2a~2e)の1つの行(A~E)にある複数のプレート又はワイヤー3は、隣接する垂直方向に整列した水平流体透過管(2a~2e)の隣接する行(A~E)の複数のプレート又はワイヤー3から距離dだけ間隔を空けている。隣接する垂直方向に整列した水平流体透過管(2a~2e)の全ての行(A~E)間で同じ蛇行流路4となるように、距離dは行(A~E)間で複数のプレート又はワイヤー3全てについて一定であってもよい。いかにして水平流体透過管2の幾何学的形状又は寸法、及び複数のプレート又はワイヤー3の高さhによって流路4の幅が操作されるかを当業者なら理解するであろう。
【0025】
いくつかの実施形態において、複数の水平流体透過管(2a~2e)のうち任意の数の管が触媒30を含んでもよく、他の管(2a~2e)は空であってもよい。いくつかの場合において、複数の水平流体透過管(2a~2e)は全て触媒30を有していても空であってもよい。加えて、複数の水平流体透過管(2a~2e)のうちいくつかが触媒30を含むか空であると同時に、複数の水平流体透過管(2a~2e)の任意の数の管が不活性物質(図示せず)又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。不活性物質は、化学反応の活性化エネルギーの低減にほとんど又は全く関与しない粒子であることが当該分野で知られている。
【0026】
1つ以上の実施形態において、充填構造体1の最狭窄部における蒸気及び液体流用のわずかな開放領域が、水平流体透過管(2a~2e)と蛇行流路4との寸法によって与えられる。例えば、所定のプレート間距離dに対して最も高い触媒密度では、蛇行流路4の幅wは略一定であってもよい。更に、より低い触媒密度が望ましい場合、垂直方向に整列した水平流体透過管(2a~2e)の間隔を大きくする(すなわち、複数のプレート又はワイヤー3の高さhを大きくする)ことも想定される。その結果、複数のプレート又はワイヤー3から距離dだけ離れたままでありながら、複数の水平流体透過管(2a~2e)が互いに更に離れるように、蛇行流路4の幅wが変化する。あるいは、不活性充填物又は空の管によって触媒密度を低下させてもよい。従って、充填構造体1において構造構成と管充填量とを組み合わせることで、多様な流体の接触に高度に順応できる接触手段が提供される。
【0027】
図1に示した通り、いかにして充填構造体1が、良好な液体-触媒接触を維持するのに必要な
触媒蒸留構造体への水力学的負荷を最小化し、蒸気-液体交換が起こる前の液体と触媒との接触時間を非常に短くできるかを当業者なら理解するであろう。良好な液体-触媒接触を維持すること、及び蒸気-液体交換が起こる前の液体と触媒との接触時間を非常に短くできることによって、フラッドポイント未満の水力学的負荷範囲にわたって、且つ幅広い運転条件(例えば還流比)にわたって触媒をより効率的に活用できる。加えて、平衡制限系に対する駆動力を大きくするために、充填構造体1の理論段相当高さ(HETP)は低くてもよい。
【0028】
触媒蒸留用途では、液相と蒸気相の両方が存在することになる。いくつかの実施形態において、液体は複数の水平流体透過管2と接触して膜を形成する。加えて、液体は、複数の水平流体透過管2の触媒30又は他の充填材に吸着することで、複数の水平流体透過管2へある程度吸収される。充填構造体1は蒸留構造体として機能するが、複数の水平流体透過管2に粒子状物質が存在することや、それに対する液体の毛細管引力によって、従来の方法とは異なる環境が得られる。従来の方法では、液体や気体は、経路を通じて最も抵抗の少ない経路をたどる。しかしながら、塔の液体の一部が管で取り扱われると、抵抗の少ない開放経路では競争が少なくなり、従って、従来の方法で予想されるよりも背圧が低くなる。
【0029】
図1に対して、
図2A~
図2Hを参照すると、
図2A~
図2Hは充填構造体1内の別の空間的関係及び管の別の幾何学的形状を表す。具体的には、
図2A~
図2Hは、充填構造体1内で流体用の蛇行流路4を形成する複数の水平流体透過管2の別の幾何学的形状及び空間的関係の概要を示す。
図2Aでは、複数の水平流体透過管2は5辺多角形(すなわち五角形)の外形を有するよう形成されている。例えば、管2は、プレート又はワイヤー3と直交する上面17、プレート又はワイヤー3と平行な2つの側面18、及び2つの傾斜面19を有し、2つの傾斜面19が点20を形成するものであってもよい。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の上面17から垂直方向に隣接する管の点20へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0030】
図2Bでは、複数の水平流体透過管2は円筒の外形を有するよう形成されている。例えば、管2は、プレート又はワイヤー3と平行な2つの側面21と、該2つの側面21に挟まれて接続された2つの曲面22とを有していてもよい。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の曲面22から垂直方向に隣接する管の曲面22へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0031】
図2Cでは、複数の水平流体透過管2は丸い多角形の外形を有するよう形成されている。例えば、丸い多角形は円、楕円、又は長円であってもよい。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の接点から垂直方向に隣接する管の接点へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0032】
図2Dでは、複数の水平流体透過管2は4辺多角形(すなわち正方形又は菱形)の外形を有するよう形成されている。
図2Dの空間的関係としては、特許文献16に記載されたものが例示できるが、これに限定されない。この文献の教示全体が参照により本願に援用される。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の上部の角23から垂直方向に隣接する管の底部の角24へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0033】
図2Eでは、複数の水平流体透過管2はパイ型の外形を有するよう形成されている。例えば、管2は、1つの円形面25と2つの線形面26とを有していてもよい。2つの線形面26はそれぞれ、1つの円形面25に接続された第1端27と、互いに接続されて第1端27の下で点28を形成する第2端とを有する。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の円形面25から垂直方向に隣接する管の点28へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0034】
図2Fでは、複数の水平流体透過管2はハート型の外形を有するよう形成されている。例えば、管2は、対称又は対称になる2つの曲面29を有し、該2つの曲面29が上点31と底点32とで接続してハート型を形成するものであってもよい。更に、より角張ったハートを形成するように2つの曲面29が実際には線形であってもよいことも想定される。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の上点31から垂直方向に隣接する管の底点32へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0035】
図2Gでは、複数の水平流体透過管2は矢又は槍の外形を有するよう形成されている。例えば、管2は、下向き矢(
図2Gに図示)又は上向き矢(図示せず)であってもよい。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管の先端から垂直方向に隣接する管の内角34へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。
【0036】
図2Hでは、複数の水平流体透過管2は、涙滴に似た形の外形を有するよう形成されている。例えば、涙滴は全体的に円形であるが、1つの接点がコーナーノード35である。加えて、プレート又はワイヤー3は、1つの管のコーナーノード35から垂直方向に隣接する管の接点へと垂直方向整列管2を接続していてもよい。更に、
図1~
図2Hを参照すると、複数の水平流体透過管2の外形は、それぞれの充填構造体1内の全ての管2についてただ1つの外形に限定されないことも想定される。いかにして
図1~
図2Hに記載した外形を相互に組み合わせて、本開示の範囲を逸脱することなく異なる外形を有する複数の管を含む充填構造体とすることができるかを当業者なら理解するであろう。
【0037】
いくつかの実施形態において、
図1~
図2Hを参照すると、1つ以上の管2を取り除いて開放空間(図示せず)を残してもよい。開放空間によって横断経路の接続が可能であり、少なくとも気体用の蛇行経路(間隙経路等)が得られる。気体の流れは上向きのキャレット(上向きに流れる気体等)で表す。加えて、液体は、下向きのキャレット(下向きに流れる液体等)で表す通り、管2及びその材料の上及び中を流れることができる。キャレットの量は単に例示を目的としたものであり、液体及び気体流路は、本開示から逸脱することなくキャレット外を流れることもできる。更に、液体はプレート又はワイヤー3上及び中を流れることができる。管2が粒子状の触媒材料30を含んでいてもよいことから、粒子状触媒材料を含む各管2の端部は、クリンプ、端部キャップの挿入、又は溶接等により封止されていてもよいことが更に想定される。加えて、管2のいくつかは、粒子状材料を全く含まなくてもよく、及び/又は不活性粒子状材料を含んでいてもよい。例えば、空隙充填物は密度がより低く、膨大な開放空間及び表面によって優れた蒸留特性が得られるものであってもよい。不活性要素は、触媒粒子状材料と同じ大きさであるか、あるいはそれより小さい又は大きくてもよい不活性粒子状材料で満たされた充填物である。いくつかの場合において、不活性要素によって、触媒要素と同じ水力学的特性を全て得ることができるが、反応蒸留とも呼ばれる
触媒蒸留においては可逆反応であることが多い接触反応を低減させ得る。反応蒸留としては、例えば特許文献11に記載されたものが例示できるが、これに限定されない。この文献の教示全体が参照により本願に援用される。従って、反応性要素は希釈するが蒸留要素は保持することによって、
触媒蒸留の分離面を高度なものにすることが可能である。言い換えれば、所定の充填構造体において触媒要素間に不活性要素を分散させることで、分別分離が強調される。一方、複数の
触媒充填構造体を有する塔を含む系(
図5参照)全体としては、反応の力が保持される。
【0038】
図3を参照すると、
図1に示した充填構造体1の複数の水平流体透過管2がアイソメトリック図として示されているが、充填構造体1を設置できる
剛性骨格(
図4参照)は示されていない。
図3には、
図1に記載した外形を有する複数の水平流体透過管2が示されているが、該外形は
図1~
図2Hに記載したいずれの外形であってもよい(単純化のみを目的として、
図2A~
図2Hはアイソメトリック図として図示せず)。複数の水平流体透過管2はそれぞれ、上記管2の第1端6に開口部5を有していてもよい。更に、上記管2が、第1端6の反対側にある第2端(図示せず)に第2開口部(図示せず)を有していてもよいことも想定される。加えて、上記管2は、水平面Pにおいて一定の長さで水平に延在している。また、
図3で示す通り、複数のプレート又はワイヤー3も、複数の水平流体透過管2と一致して水平面Pにおいて水平に延在していてもよい。更に、複数の水平流体透過管2は、(
図1に記載の通り)隣接する行として示されており、隣接する行内で垂直方向に整列し、複数のプレート又はワイヤー3で接続されている。いくつかの実施形態において、隣接する行は、(
図1に記載の通り)距離dで並んで整列していてもよい。
図3では20個の隣接する行を示しているが、本開示は20個の垂直方向整列行に限定されず、1個以上の垂直方向整列行を有していればよい。更に、水平流体透過管2が、金網材料、各種透過性材料、又はこれらの組み合わせから選択される材料群で作製されていてもよいことも想定される。更に、金網材料は、金属、カーボンファイバー、プラスチック、ガラス、又は複合材料から選択できる。更に、水平流体透過管2は、一部のみが金網で作製され、別の部分は非透過性材料で作製されたものであってもよいことも想定される。加えて、複数のプレート又はワイヤー3も、金網材料、各種透過性材料、又は非透過性材料で作製されていてもよい。
【0039】
図1~
図3の水平透過管2は、管の断面形状が特定の方向から図示されている。例えば、
図2Hの涙滴形状は、涙滴の角度がついた端部が上向きに、涙滴の曲線部が下向きに図示されている。本明細書中の実施形態では、開示した管形状を逆にしたものも考慮される。例えば、管は、涙滴の角度がついた端部が下向き、涙滴の曲線部が上向きの涙滴形状であってもよい。
【0040】
更に、
図1~
図3の充填構造体は垂直方向で図示されているが、本明細書では、充填構造体が垂直に対してある角度をなして配置されてもよいことが考慮される。言い換えれば、構造体の方向が、上向きだが垂直に対して傾斜している蒸気経路4となるものであってもよく、プレート又はワイヤー3は、下向きだが垂直に対して傾斜している液体経路を管2間に提供してもよい。加えて、蒸留塔内の充填構造体の連続した垂直断面は、それぞれ反対の角度に向くことで、塔内で蒸気及び液体輸送用のジグザグパターンとなっていてもよい。
【0041】
1つ以上の実施形態において、
図4は、(
図1~
図3に記載した)充填構造体1を設置又は付加できる
剛性骨格7を示している。
剛性骨格7は、1本以上の支持ロッド9で隔てられている少なくとも2つの格子8A、8Bを有していてもよい。加えて、支持ロッド9はそれぞれ、溶接、クリンプ、メカニカルファスナー、又は連結等によって両格子8A、8Bへ固定されるか又は着脱可能に取り付けられる。支持ロッド9は、(
図3と同じ)水平面Pにおいて一定の長さで水平に延在している。更に、格子8A、8Bを互いに固定する際には、更にネジ付きロッド及びナット又はボルト(図示せず)を使用してもよいことも想定される。更に、格子8A、8Bは複数の開口部10を有していてもよい。いくつかの実施形態において、支持ロッド9は複数の開口部10に付加されていてもよい。
図4の得られる構造体は、本発明の少なくとも1つの別の構造体及び100~200ポンドの負荷を支持する強固で能力の高いフレームである。
剛性骨格7は、金属、カーボンファイバー、プラスチック、複合材料、又は各種耐荷重材料から選択される材料で作製できる。
【0042】
上述の通り、充填構造体(1)は剛性骨格7に設置又は付加できる。複数の水平流体透過管(2)は格子8A、8Bに設置できる。例えば、上記管(2)の第1端(6)を溶接、クリンプ、又は連結して第1の格子8Aに固定するか又は着脱可能に取り付けることができ、加えて、上記管(2)の第2端を溶接、クリンプ、又は連結して第2の格子8Bに固定するか又は着脱可能に取り付けることができる。加えて、支持ロッド9と管(2)とは、格子8A、8Bから等しく間隔を空けるよう同様な長さであってもよい。また、複数のプレート(3)も溶接、クリンプ、又は連結して格子8、8Bに固定するか又は着脱可能に取り付けることができる。更に、管(2)の開口部が格子8A、8Bの開口部10と一列に整列するように管(2)が剛性骨格7に配置されてもよいことも想定される。いくつかの実施形態において、格子8A、8Bが支持ロッド9によって互いに固定されると、管(2)が開口部10にしっかりと保持され結合するように、開口部10は管(2)の幾何学的形状と略同じ大きさ及び構成である。
【0043】
図5を参照すると、1つ以上の実施形態において、
図5は、蒸留塔反応器12に配置された1つ以上の
触媒蒸留構造体11を示す。
触媒蒸留構造体11は、
図1~
図4に記載の複数の水平流体透過管(2)を有する充填構造体(1)及び
剛性骨格(7)を有していてもよい。加えて、
触媒蒸留構造体11は、当該分野で知られている溶接、クリンプ、接着剤、又はメカニカルファスナーによって蒸留塔反応器12へ固定されても又は着脱可能に取り付けられてもよい。加えて、
触媒蒸留構造体11は、任意の効率的な方法で蒸留塔反応器12に支持されていてもよい。例えば、
触媒蒸留構造体11は、ラシヒリング等の不活性蒸留充填物(図示せず)によって支持及び分離されていてもよい。更に
図5に示す通り、蒸留塔反応器12は、フローライン(矢印で図示)を介して蒸留塔反応器12に取り付けられた1つ以上のリボイラー13、コンデンサー14、及び供給タンク15を有していてもよい。いくつかの実施形態において、リボイラー13は、フローラインを介して取り付けられたセパレーター16を1つ以上有していてもよい。
【0044】
図5では蒸留塔反応器12に1つの
触媒蒸留構造体11しか示されていないが、いかに本開示はただ1つの
触媒蒸留構造体11に限定されず、本開示の範囲を逸脱することなく追加の
触媒蒸留構造体を有していてもよいことを当業者なら理解するであろう。加えて、複数の
触媒蒸留構造体11は同じ又は異なる充填構造体(
図1~
図2Hに記載の構成)を有していてもよい。更に、蒸留塔反応器12の様々な高さに2つ以上の
触媒蒸留構造体11が配置されていてもよいことも理解されるであろう。いくつかの実施形態において、これらの複数の
触媒蒸留構造体11は、蒸留塔反応器12において垂直方向及び横方向に配置されていてもよい。更に、供給タンク15から蒸留塔反応器12へのフローラインは、蒸留塔反応器12の
触媒蒸留構造体11より上に図示されているが、本開示はこのような配置に限定されず、該フローラインは
触媒蒸留構造体11の上でも、その下でも、その位置でも、その間でもよい。いかにして蒸留塔反応器12が他の蒸留塔反応器へ取り付けられるかを当業者なら理解するであろう。更に、
触媒蒸留の動的性質及び上述した蒸留特性の向上を考慮すると、蒸留塔反応器12に含まれる一定量の触媒の希釈は取るに足らないものとなり得ることも想定される。いくつかの場合において、金網に充填される触媒の体積はその膨潤に対する反応に依存する。
【0045】
図1及び
図3について上述した通り、
図3は六角形状管を有する構造体の3D模式図であり、
図1は該構造体の断面模式図である。六角形状管は、流体(液体及び/又は気体)を透過する材料、優先的には金網で作製されている。六角形状管の全て又は少なくとも一部は、触媒材料を収容することで、規則充填物での
触媒反応を促進できる。一方、収容された触媒表面と共に六角形状管表面を含む垂直プレートの全ての表面によって、蒸留プロセスのための蒸気相-液相間の相互作用及び物質移動を促進することができる。図面に示した通り、垂直プレートは互いに並んで積み重なるよう組み合わせられることで、接触することなくずれている隣接するプレートの六角形状管によって流体用の経路(
図1に示す4)が形成される。各六角形状管は、通常、触媒を収容するのに使用されるが、必ずしも全ての管が触媒を含む必要はない。各六角形状管の寸法は通常同じであり、その形状は垂直方向及び水平方向という2つの軸に沿って対称である。また、各辺(a及びt等)の長さ及び各角度(α及びβ等)を調整して六角形状管の大きさを操作することで、規則充填物の触媒充填量を制御できる。六角形状管の大きさに加えて、各プレートに沿った所定の高さあたりの六角形状管の数、各プレートに沿った隣接する管間の接続ラインの長さ(h)、及び隣接するプレート間の距離(d)を調整して流路(4)の幅を操作することができ、それにより、規則充填物の流体力学的性能又は水力学的能力に影響を与えたり、制御したりできる。特許文献16で報告された規則充填物と比較して、本明細書中の実施形態は、以下の利点の1つ以上を有する。
・各六角形状管は菱形管よりも多くの触媒を収容できるので、水力学的能力又は流体力学的性能を損なうことなく、所定の体積の規則充填物に対する触媒充填量を向上できる。
・六角形状管では、隣接する辺間の移行が菱形管よりもスムーズである。これは、六角形状管は平坦なメッシュシートから比較的容易に曲げられるため、このような規則充填物の製造プロセスを容易にできることを意味する。また、流体が
触媒蒸留プロセス中に流路に沿って移動する際にはるかにスムーズな移行となるため、規則充填物の水力学的能力が向上する。
・本明細書中の六角形管は、特許文献16の菱形管と比較して、単位体積あたりの充填質量を増加させることができる。いくつかの実施形態において、単位体積あたりの充填質量の増加率は10%~50%の範囲となる。また、顕著な流体力学的影響を及ぼさずに充填量(単位体積あたりの質量)の増加を達成できる。
・規則充填物は費用対効果を高くできるため、同じ性能を達成しつつも必要とされ得るプレート及び溶接部が少なくなる。
・この新規な規則充填物の設計は柔軟性を有しているため、触媒充填量、分離能、及び水力学的能力の点で六角形状管の寸法及び各プレートに沿った六角形状管の配置を変化させることで所望の
触媒蒸留性能を達成できる。
・本開示の六角形デザインにおいて、辺の長さa及びt並びに角度β及びαを調整することで六角形状管の大きさを操作できる。
【0046】
要約すると、本明細書中の実施形態は、反応又は触媒蒸留プロセスに特に有用である新規な規則充填物に関する。しかしながら、この新規な構造体は、一般に、触媒材料の存在下、液体-液体、気体-液体、又は気体-気体の並流又は向流に使用できる。
【0047】
本開示は限られた数の実施形態に関して記載したが、本明細書に記載した開示の範囲を逸脱することのない他の実施形態を考案できることを、本開示の恩恵を受ける当業者なら理解するであろう。従って、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるべきである。