IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7141493押出成形セメント製品用添加剤、押出成形セメント製品及び押出成形セメント製品用添加剤の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】押出成形セメント製品用添加剤、押出成形セメント製品及び押出成形セメント製品用添加剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20220914BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220914BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20220914BHJP
   B28B 3/20 20060101ALI20220914BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B28/02
C04B24/26 E
C04B18/08 Z
B28B3/20 K
C08F290/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021082560
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022052707
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158125
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武内 芳樹
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227170(JP,A)
【文献】特開2011-057521(JP,A)
【文献】特開2019-034880(JP,A)
【文献】特開2003-002719(JP,A)
【文献】特開2014-105141(JP,A)
【文献】特開2001-220417(JP,A)
【文献】特開2008-105867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28B 3/20
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)と不飽和モノカルボン酸(塩)(b)とを必須構成単量体として含有する重合体(A)を含有し、
前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、前記(a)の含有量が60~90重量%であり、前記(b)の含有量が10~40重量%であり、
前記重合体(A)の重量平均分子量が30,000~2,000,000である押出成形セメント製品用添加剤。
O-(AO)-OH (1)
[式中、Rは炭素数3~5のアルケニル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、40~200の数である]
【請求項2】
前記重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が4.0~30.0である請求項1に記載の押出成形セメント製品用添加剤。
【請求項3】
前記不飽和モノカルボン酸(塩)(b)が、(メタ)アクリル酸及び/又はクロトン酸である請求項1又は2に記載の押出成形セメント製品用添加剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の押出成形セメント製品用添加剤を含有する押出成形セメント製品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の押出成形セメント製品用添加剤とフライアッシュとを含有する押出成形セメント製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形セメント製品用添加剤、押出成形セメント製品及び押出成形セメント製品用添加剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形セメント製品はセメント質材料を主成分とする粘土様の超高粘性物質を押出し成形機により成形して得られるものである。セメント質材料の水混練物は、そのままでは押出し成形しても保型性、保水性が低く、押出機のシリンダーやダイス内の滑りが悪く、しかもダイス出口の離型性が悪い。従って、表面が平滑な製品が得られず、所定の形状に合わない成形品となってしまう。
この問題を解決するために、押出成形セメント製品にメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体や、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの合成高分子化合物等の添加剤を加えて可塑性を付与している(例えば、特許文献1)。また、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和ジカルボン酸系単量体との共重合物を添加剤として加えている例(例えば、特許文献2)もある。しかし、いずれの例においても押出成形セメント製品の保形性や表面地合いが不十分であるという問題があった。
一方、長期強度が大きい押出成形セメント製品を得たり、流動性を付与して成形性を向上させたりするため、セメント質材料にセメント用混和剤としてフライアッシュを含有することが知られている。しかし、フライアッシュは、未燃カーボンを含んでおり、この未燃カーボンがセメント質材料中に添加した分散剤を吸着する。このため、未燃カーボンの含有量が多いフライアッシュを使用すると、分散剤による分散効果が低下し、大きな押出圧力が必要となるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-256957号公報
【文献】再表2005/123625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、フライアッシュの強熱減量によらず、良好な仕上がり外観の押出成形セメント品を与えることが出来、更に単位時間あたりの押出成形セメント品の生産性を向上できる押出成形セメント製品用添加剤を提供することを目的とする。また、前記押出成形セメント製品用添加剤を含有する押出成形セメント製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記3発明である。
下記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)と不飽和モノカルボン酸(塩)(b)とを必須構成単量体として含有する重合体(A)を含有し、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、前記(a)の含有量が60~90重量%であり、前記(b)の含有量が10~40重量%であり、前記重合体(A)の重量平均分子量が30,000~2,000,000である押出成形セメント製品用添加剤;前記押出成形セメント製品用添加剤を含有する押出成形セメント製品;及び一般式(1)で表されるポリエーテル(a)の存在下に、前記不飽和モノカルボン酸(塩)(b)を滴下し重合することで重合体(A)を得る重合工程を含み、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、前記(a)の含有量が60~90重量であり、前記(b)の含有量が10~40重量%である押出成形セメント製品用添加剤の製造方法である。
O-(AO)-OH (1)
[式中、Rは炭素数3~5のアルケニル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、40~200の数である]
【発明の効果】
【0006】
本発明の押出成形セメント製品用添加剤を用いることにより、フライアッシュの強熱減量によらず、押出成形セメント製品に、良好な仕上がり外観を与えることが出来る。また、単位時間あたりの押出成形セメント製品の生産性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<押出成形セメント製品用添加剤>
本発明の押出成形セメント製品用添加剤は、下記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)と不飽和モノカルボン酸(塩)(b)とを必須構成単量体として含有する重合体(A)を含有する。
O-(AO)-OH (1)
[式中、Rは炭素数3~5のアルケニル基を表し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nはAOの平均付加モル数であり、40~200の数である]
【0008】
一般式(1)において、Rは炭素数3~5のアルケニル基を表す。
炭素数3~5のアルケニル基としては、例えば、アリル基、ホモアリル基(3-ブテニル基)、2-ブテニル基、メタリル基、3-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基及び1,1-ジメチル-2-プロペニル基が挙げられる。
一般式(1)において、Aは炭素数2~4のアルキレン基を表す。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基等が挙げられる。
【0009】
一般式(1)において、nは前記AOの平均付加モル数であり、40~200の数であり、好ましくは50~180であり、更に好ましくは60~150である。
nが40未満であれば重合体の重量平均分子量が所定の値にまですることが難しくなるため、押出成形セメント製品の保形性や表面地合いが不十分になるというという問題があり、200を超えれば重合体が高粘度となるため、本発明の押出成形セメント製品用添加剤を押出成形セメント製品に添加する際、本発明の押出成形セメント製品用添加剤を均一に混合することが出来なくなるという問題がある。
なお、分子中に複数あるAOは同一であっても異なっていてもよい。
【0010】
一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)の具体例としては、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1-ジメチル-2-プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル及びポリプロピレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル等が挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)としては、押形成形セメント製品の製造時に良好な成形圧を得る観点より、好ましくはポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2-メチル-2-ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1-ジメチル-2-プロペニル)エーテルであり、更に好ましくはポリエチレングリコールモノアリルエーテルである。
【0011】
不飽和モノカルボン酸(塩)(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、これら不飽和モノカルボン酸のアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)塩、これらの2種以上の併用などが挙げられる。不飽和モノカルボン酸塩としては、完全中和塩であっても、部分中和塩であってもよい。
これらのうち不飽和ポリエーテル(a)との重合性の観点より、好ましくは、(メタ)アクリル酸及びクロトン酸である。
本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0012】
前記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)の含有量は、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、60~90重量%であり、好ましくは65~88重量%であり、最も好ましくは70~85重量%である。
60重量%未満であれば保水性が低下することにより成形性が悪くなり、90重量%を超えると重合率が低下するため好ましくない。
【0013】
前記(b)の含有量は、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、10~40重量%であり、好ましくは12~35重量%であり、最も好ましくは15~30重量%である。
10重量%未満であれば、押出成形セメント品の混錬時に押出成形セメント製品用添加剤のセメントへの吸着が不十分のため保形性が悪くなり、40重量%を超えると保水性が低下するため成形性が悪くなる。
【0014】
本発明の重合体(A)は、必須構成単量体である不飽和ポリエーテル(a)及び不飽和モノカルボン酸(塩)(b)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、下記一般式(2)で表されるその他の構成単量体(x)を含有してもよい。
O-(AO)-OR (2)
[式中、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mはAOの平均付加モル数であり、1~450の数である。ただし、R及びRのうち少なくとも一方は炭素数1~30のアルケニル基である。また、前記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)に該当するものを除く。]
【0015】
一般式(2)において、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。ただし、R及びRのうち少なくとも一方は炭素数1~30のアルケニル基である。水溶性の観点からは、R及びRのいずれか一方が水素原子であることが好ましい。
炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数が1~30であるアルキル基及びアルケニル基等が挙げられ、その炭素数は好ましくは1~18であり、更に好ましくは1~12であり、特に好ましくは1~3である。
一般式(2)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(2)において、mは前記AOの平均付加モル数であり、1~450の数であり、好ましくは10~400であり、更に好ましくは50~350である。
なお、分子中に複数あるAOは同一であっても異なっていてもよい。
また、その他の構成単量体(x)は、一般式(2)で表される単量体のうち、前記一般式(1)で表される不飽和ポリエーテル(a)に該当するものを除いたものである。
【0016】
その他の構成単量体(x)の含有量は、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、0~20重量%であり、好ましくは0~10重量%であり、更に好ましくは0~7重量%である。
【0017】
重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある)は、30,000~2,000,000であり、好ましくは30,000~1,800,000であり、更に好ましくは40,000~1,500,000であり、最も好ましくは45,000~205,000である。
30,000未満であれば外観不良が起こり、硬度が硬くなるため押出成形性に問題があり、2,000,000を超えると高粘度になるので好ましくない。
【0018】
前記重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、押出成形セメント製品の硬度の観点より、好ましくは4.0~30.0であり、更に好ましくは4.5~28.0であり、最も好ましくは5.0~25.0である。
後述するとおり、製造時の前記(b)の滴下時間、重合温度及び連鎖移動剤の使用量を最適とすることで、重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)を前述の範囲にすることが出来る。
【0019】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC-8320」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK Gel guard column PWXL」「TSK Gel G6000PWXL」「TSK Gel G3000PWXL」[東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.5(w/v)%酢酸ナトリウム(水/メタノール=70/30(体積比))
溶液注入量:50μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール8点(分子量:1,046,000、580,000、290,000、101,000、49,390、27,000、3,870、1,010)
【0020】
本発明の押出成形セメント製品用添加剤は、重合体(A)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、下記一般式(3)で表される化合物(C)を含有してもよい。
O-(AO)-OR (3)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、lはAOの平均付加モル数であり、1~450の数である。]
【0021】
一般式(3)において、R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。水溶性の観点からは、R及びRのうち少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数が1~30であるアルキル基及びアルケニル基等が挙げられ、その炭素数は好ましくは1~18であり、更に好ましくは1~12であり、特に好ましくは1~3である。
一般式(3)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)において、lは前記AOの平均付加モル数であり、1~450の数であり、好ましくは10~400であり、更に好ましくは50~350である。
なお、分子中に複数あるAOは同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
本発明の押出成形セメント製品用添加剤における重合体(A)に対する化合物(C)の重量比(C/A)は0~0.20である。好ましくは0~0.10、更に好ましくは0~0.07である。
【0023】
本発明の押出成形セメント製品用添加剤の形状は特に限定されるものではないが、押出成形セメント製品を構成する水への溶解が容易という観点から、液状又は粉末状であることが好ましい。
【0024】
<押出成形セメント製品>
本発明における押出成形セメント製品は、本発明の押出成形セメント製品用添加剤を含有する。更に水硬性物質、フライアッシュ、フライアッシュ以外の骨材及び水等を含有しているものが挙げられ、それらの原料に加え、更に、セルロース増粘剤及び/又はパルプ繊維材料等を含有しているものが挙げられる。
【0025】
水硬性物質としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント及び着色セメント等が挙げられる。
【0026】
フライアッシュとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A6201-2008「コンクリート用フライアッシュ」に規定されているもの等を用いることが出来る。このうち、汎用的に入手できる観点からは、フライアッシュI種、フライアッシュII種を使用することができる。
フライアッシュの指標の1つとして強熱減量がある。高品質のフライアッシュは強熱減量が2.5%未満であるが、本実施形態では強熱減量が2.5%以上のフライアッシュを使用することができる。なお、フライアッシュの強熱減量の上限は、特に設定されないが、10%以下のものであれば使用可能である。
【0027】
フライアッシュ以外の骨材としては、骨材川砂、砕砂、硅砂、硅石粉、ワラストナイト、石灰石、マイカ類、軽量骨材、シリカフューム、スラグ、ポゾラン、セメント板製造時の不良品、セメント板施工時に発生する端材及び建築物解体時に発生するセメント板廃棄物等を破砕したリサイクル粉末等が挙げられる。
骨材としては、押出成形セメント製品から得られた押出成形品の表面をなめらかに仕上げるという観点から、体積平均粒径が150μm以下のものが好ましい。
【0028】
セルロース増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等)及びヒドロキシアルキルアルキルセルロース(ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等)が挙げられる。
セルロース増粘剤のうち、押出成形セメント製品の成形圧を低くし、更になめらかな表面形状を保持して押出成形するという観点から好ましくは、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースであり、更に好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースであり、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
セルロース増粘剤は、押出成形時の加圧による離水を防止するためには20℃における2重量%水溶液の粘度が1,000mPa・s以上であるものが好ましく、更に好ましくは4,000mPa・s以上であり、特に好ましくは10,000mPa・s以上である。
セルロース増粘剤は、更に増粘剤として、Mwが1,000~800,000の水溶性高分子化合物[水溶性ポリウレタン樹脂(特開平6-191914号公報に記載のもの)、ポリビニルアルコール及びポリアクリルアミド等]等と併用することができる。
【0029】
パルプ繊維材料としては、バージンパルプ及び故紙パルプ等が挙げられる。
バージンパルプとしては、木質パルプ[針葉樹(モミ及びマツ等)又は広葉樹(ユーカリ及びポプラ等)を原料としたもの]、わら(麦又は稲を原料にしたもの)、非木材パルプ(ヨシ、ケナフ又はクワ等を原料としたもの)等が挙げられる。
故紙パルプとしては、故紙(新聞、雑誌、板紙、クラフト紙及び段ボール等)を水に溶解し、機械的な力や重力、界面活性剤等を利用して紙繊維以外の成分を分離・除去した後、脱水・乾燥することにより製造されるものが挙げられる。
パルプ繊維材料のうち、コストと繊維補強効果の両立という面から好ましいのは故紙パルプであり、更に好ましいのはクラフト紙から得られた故紙パルプである。
パルプ繊維材料は、更に無機繊維(ガラス繊維及び炭素繊維等)及びパルプ系繊維以外の有機繊維(ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びビニロン繊維等)等と併用することができる。
【0030】
本発明における押出成形セメント製品には、必要に応じて、軽量化材、着色剤、公知のセメント用混和材及び混和剤等を含有させることができる。
軽量化材としては、樹脂[ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル及びフェノール樹脂等]の中空微小球、シラスバルーン及びパーライト等が挙げられる。
着色剤としては、鉄黒、カーボンブラック及び酸化クロム等が挙げられる。
公知のセメント用混和材及び混和剤としては、「新セメント・コンクリート混和材料」[笠井芳夫、坂井悦郎、技術書院、2007年発行]に記載されている、膨張材、高性能減水剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、硬化促進剤,消泡剤(抑泡剤及び破泡剤)、急結剤、硬化遅延剤、防錆剤、及びポリマーセメントコンクリート又はポリマーモルタル用のポリマーディスパージョン等が挙げられる。
【0031】
押出成形セメント製品における水硬性物質の含有率は、押出成形セメント製品の重量に基づき、好ましくは5~90重量%であり、更に好ましくは10~70重量%であり、特に好ましくは15~50重量%である。
【0032】
押出成形セメント製品におけるフライアッシュの配合量は、水硬性物質100重量部に対し、好ましくは0.1~500重量部であり、更に好ましくは1~400重量部、特に好ましくは5~300重量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の強度が向上するため好ましい。
【0033】
押出成形セメント製品におけるフライアッシュ以外の骨材の配合量は、水硬性物質100重量部に対し、好ましくは1~500重量部であり、更に好ましくは5~400重量部、特に好ましくは10~300重量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の強度が向上するため好ましい。
【0034】
押出成形セメント製品における押出成形セメント製品用添加剤の配合量は、水硬性物質及び骨材の合計重量100重量部に対し、好ましくは0.01~10重量部であり、更に好ましくは0.03~5重量部、特に好ましくは0.05~3重量部、最も好ましくは0.1~1.5重量部である。
上記の範囲であれば、金型転写性及び押出成形品の強度が向上するため好ましい。
【0035】
押出成形セメント製品における水の配合量は、水硬性物質及び骨材の合計重量100重量部に対し、好ましくは15~150重量部であり、更に好ましくは25~100重量部、特に好ましくは30~75質量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の生産性が向上するため好ましい。
【0036】
押出成形セメント製品におけるセルロース増粘剤の配合量は、水硬性物質及び骨材の合計重量100重量部に対し、好ましくは0.05~10重量部であり、更に好ましくは0.1~5重量部、特に好ましくは0.2~3重量部、最も好ましくは0.3~2重量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の生産性が向上するため好ましい。
【0037】
押出成形セメント製品におけるパルプ繊維材料の配合量は、水硬性物質及び骨材の合計重量100重量部に対し、好ましくは0.05~50重量部であり、更に好ましくは0.1~40重量部、特に好ましくは0.2~30重量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の強度が向上するため好ましい。
【0038】
押出成形セメント製品における軽量化剤の配合量は、水硬性物質及び骨材の合計重量100重量部に対し、好ましくは0.1~100重量部であり、更に好ましくは0.5~50重量部、特に好ましくは1~20質量部である。
上記の範囲であれば、押出成形品の強度が向上するため好ましい。
【0039】
押出成形セメント製品における着色剤、公知のセメント用混和材及び混和剤の添加量は、各々の添加剤について効果が発揮される適切な量を加えればよい。ただし、水硬性物質や骨材に対し分散性を付与する添加剤については、添加量が多くなると、押出成形セメント製品が柔らかくなり、押出成形後の表面模様の転写に問題を生じるケースが考えられるため、押出成形セメント製品の硬さに配慮しながら添加量を決定する必要がある。
押出成形セメント製品の硬さは、水の配合量でも調整可能であり、水硬性物質に対する水の配合量を減らせば、押出成形品の強度を高くすることができる。しかしながら、中高層の鉄骨造建築物の外壁材や一般住宅の窯業系サイディングは、高意匠性を確保するための厚みを商品設計の前提にしていることから、強度アップにより製品厚みを薄くできたとしてもメリットは少ない。また、製品厚みを維持したままの強度アップは過剰性能の付与であり、むしろ水に置き換わる原料が必要になることによる製品コストアップのデメリットしかもたらさないということに配慮する必要がある。
【0040】
押出成形セメント製品の製造方法としては特に制限はなく、例えば以下の方法が挙げられる。
本発明の押出成形セメント製品用添加剤、水硬性物質、骨材、水、セルロース増粘剤、パルプ繊維材料、軽量化材、着色剤、公知のセメント用混和材及び混和剤を、投入時期、順序に制限なくニーダー、オムニミキサー、アイリッヒミキサー等の混練機に投入して混練する方法が挙げられる。なお、セメント製品用添加剤が液状の場合、押出成形セメント製品を構成する水にセメント製品用添加剤を溶解させてから、各種原料と混合することができる。セメント製品用添加剤が粉末状の場合、水硬性物質とセメント製品用添加剤をドライブレンドし、その後各種原料と混合することができる。
【0041】
上記の方法で得られた押出成形セメント製品は、所定の製品断面の金型を取り付けた押出成形機により板状に成形された後、ロールやプレスにより表面模様を転写し、押出成形品とすることができる。
押出成形品は、切断機を用いて所定の長さに切断された後、蒸気養生(60~100℃で4~36時間)及び/又はオートクレーブ養生(120~200℃で5~15時間)することにより硬化し、セメント製品とすることができる。
本発明のセメント製品は、主に外壁材として使用することができるが、屋根材、間仕切材、天井材等の建築部材や役物等の生産にも適用可能である。
【0042】
<押出成形セメント製品用添加剤の製造方法>
本発明は、前記一般式(1)で表されるポリエーテル(a)の存在下に、前記不飽和モノカルボン酸(塩)(b)を滴下し重合することで重合体(A)を得る重合工程を含み、前記(a)と前記(b)との合計重量に基づいて、前記(a)の含有量が60~90重量%であり、前記(b)の含有量が10~40重量%である押出成形セメント製品用添加剤の製造方法である。
【0043】
前記重合工程は、温度制御の容易さ、安全性及び重合活性を良好にする観点より、85~110℃にて行われることが好ましく、90~105℃で行われることが更に好ましい。
【0044】
前記重合工程は、溶媒(c)中で行うことが好ましい。
溶媒(c)としては、水、イソプロピルアルコール、酢酸、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。
これら内、不飽和ポリエーテル(a)の溶解性、不飽和モノカルボン酸(塩)(b)の溶解性及び重合開始剤の溶解性の観点から、好ましくは水である。
前記の水は、水道水でも良いが、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水及び超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。
反応に用いた溶媒(c)は必要により留去することができる。
重合工程で用いる前記重合体(A)の構成単量体の合計重量と溶媒(c)との重量比は、溶媒を使用することによる効果を十分発揮する観点より、好ましくは20:80~50:50であり、更に好ましくは25:75~45:55である。
【0045】
前記重合工程は、重合開始剤を添加してもよい。
重合開始剤としては過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩及びt-ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物等が挙げられる。
【0046】
前記重合開始剤の使用量は、重合体(A)として最適な分子量を得る観点から、重合体(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは0.001~20重量%、更に好ましくは0.005~10重量%、特に好ましくは0.01~5重量%、最も好ましくは0.05~3重量%である。
【0047】
前記重合工程は、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、特に限定なく、例えば分子内に1つ又は2つ以上のアミノ基を有する化合物[例えばアンモニア及びアミン(炭素数が1~30の化合物であり、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン及びプロパノールアミン)]、次亜リン酸ナトリウム及び分子内に1つ又は2つ以上のチオール基を有する化合物等が挙げられる。
これらの内で分子量制御の観点から好ましくは、次亜リン酸ナトリウム及び分子内に1つ又は2つ以上のチオール基を有する化合物である。
【0048】
分子内にチオール基を有する化合物には、以下の(1)~(2)のもの、これらの塩[アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム及びカルシウム)塩、アンモニウム塩、炭素数1~20のアミン塩及び無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸)塩]及びこれらの混合物等が含まれる。
【0049】
(1)1価チオール
炭素数1~20の脂肪族チオール(例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n-オクタンチオール、n-ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n-オクタデカンチオール、2-メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、1-チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、1-チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、システイン及び2-メルカプトエチルアミン)、炭素数5~20の脂環式チオール(例えばシクロペンタンチオール及びシクロヘキサンチオール)及び炭素数6~12の芳香(脂肪)族チオール(例えばベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン及びチオサリチル酸)等が挙げられる。
【0050】
(2)多価チオール
ジチオール[炭素数2~40の脂肪族ジチオール(例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、プロパンジチオール、1,3-又は1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール及びネオペンタンジチオール等)、炭素数5~20の脂環式ジチオール(例えばシクロペンタンジチオール及びシクロヘキサンジチオール)及び炭素数6~16の芳香族ジチオール(例えばベンゼンジチオール及びビフェニルジチオール)等が挙げられる。
【0051】
連鎖移動剤を使用する場合の使用量は、重合体(A)として最適な分子量を得る観点から、重合体(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは0.001~10重量%、更に好ましくは0.005~5重量%、特に好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.05~1重量%である。
【0052】
前記重合工程の後、必要により中和剤を用いて、重合体を完全もしくは部分中和塩としてもよい。
中和剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム及びアンモニア等が挙げられる。
【実施例
【0053】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0054】
<製造例1>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水128部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数50)196部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水118.4部、過硫酸アンモニウム4.0部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸63.2部、3-メルカプトプロピオン酸0.64部、イオン交換水196部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液67部で中和し、重合体(A-1)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A-1)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-1)を得た。重合体(A-1)のMwは46,000、Mw/Mnは5.2であった。
【0055】
<製造例2>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水176部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数100)240部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム4.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸77.2部、3-メルカプトプロピオン酸2.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液80部で中和し、重合体(A-2)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A-2)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-2)を得た。重合体(A-2)のMwは64,000、Mw/Mnは5.7であった。
【0056】
<製造例3>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水176部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数120)240部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム4.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸77.2部、3-メルカプトプロピオン酸2.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液80部で中和し、重合体(A-3)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A-3)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-3)を得た。重合体(A-3)のMwは123,000、Mw/Mnは10.2であった。
【0057】
<製造例4>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水160部、イソプロピルアルコール16部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数80)240部を投入し、撹拌下に窒素置換し、窒素雰囲気下で90℃に昇温した。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム4.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸77.2部、3-メルカプトプロピオン酸2.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を90℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成した。その後、100℃まで昇温してイソプロピルアルコールを除去し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液80部で中和し、重合体(A-4)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A-4)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-4)を得た。重合体(A-4)のMwは72,000、Mw/Mnは8.4であった。
【0058】
<製造例5>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水176部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数100)240部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム4.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸77.2部、3-メルカプトプロピオン酸1.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液80部で中和し、重合体(A-5)を含有する重合体組成物を得た。固形分30.0%になる量の水を加えて重合体(A-5)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-5)を得た。重合体(A-5)のMwは300,000、Mw/Mnは24.1であった。
【0059】
<製造例6>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水176部、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイドの平均付加モル数80)ポリオキシプロピレン(プロピレンオキサイドの平均付加モル数20)モノアリルエーテル240部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム4.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からメタクリル酸77.2部、3-メルカプトプロピオン酸2.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液80部で中和し、重合体(A-6)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A-6)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-6)を得た。共重合体(A-6)のMwは41,000、Mw/Mnは4.2であった。
【0060】
<製造例7>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水200部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数150)200部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸ナトリウム4.0部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸94部、3-メルカプトプロピオン酸2.0部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液105部で中和し、重合体(A-7)を含有する重合体組成物を得た。固形分30.0%になる量の水を加えて重合体(A-7)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-7)を得た。重合体(A-7)のMwは204,000、Mw/Mnは18.6であった。
【0061】
<製造例8>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水200部、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数40)200部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)30部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸ナトリウム4.0部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸35.2部、3-メルカプトプロピオン酸0.5部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を90℃で撹拌下、それぞれ3時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で60分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液39部で中和し、重合体(A-8)を含有する重合体組成物を得た。固形分25.0%になる量の水を加えて重合体(A-8)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-8)を得た。重合体(A-8)のMwは52,000、Mw/Mnは3.7であった。
【0062】
<製造例9>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水200部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数180)150部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸ナトリウム0.4部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸94部、イオン交換水234部の均一混合液を、フラスコ内を90℃で撹拌下、それぞれ3時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液105部で中和し、重合体(A-9)を含有する重合体組成物を得た。この重合体組成物910.4部に、化合物(C-1)[ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数40]20部及び化合物(C-2)[ポリエチレングリコール、重量平均分子量1000]5部を投入し、固形分25.0%になる量の水を加えて均一混合することにより、重合体(A-9)、化合物(C-1)及び化合物(C-2)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-9)を得た。重合体(A-9)のMwは509,000、Mw/Mnは11.2であった。
【0063】
<製造例10>
製造例2で得られた重合体(A-2)を含有する重合体組成物940.4部に、化合物(C-3)[ポリエチレングリコール、重量平均分子量8300]25部を投入し、固形分30.0%になる量の水を加えて均一混合することにより、重合体(A-2)及び化合物(C-3)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(P-10)を得た。
【0064】
<比較製造例1>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水130部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)300部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水113部、過硫酸アンモニウム9部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸80部、30%水酸化ナトリウム水溶液1部、イオン交換水288部の均一混合液を、フラスコ内を80℃で撹拌下、それぞれ2時間でフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で1時間熟成し、48%NaOH水溶液80部で中和し、重合体(A’-1)を含有する重合体組成物を得た。固形分40.0%になる量の水を加えて重合体(A’-1)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(B-1)を得た。重合体(A’-1)のMwは21,000、Mw/Mnは2.1であった。
【0065】
<比較製造例2>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水472部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数100)9部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水76部、過硫酸ナトリウム0.48部の混合溶液を、もう一方の滴下口からモノマー溶液としてアクリル酸173部、イオン交換水45.5部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ2.5かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で1時間熟成し、48%水酸化ナトリウム水溶液200部で中和し、重合体(A’-2)を含有する重合体組成物を得た。固形分25.0%になる量の水を加えて重合体(A’-2)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(B-2)を得た。重合体(A’-2)のMwは600,000、Mw/Mnは5.2であった。
【0066】
<比較製造例3>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水120部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数100)348部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水70部、過硫酸アンモニウム5.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸98.3部、3-メルカプトプロピオン酸6.2部、イオン交換水175部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で30分熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液105部で中和し、重合体(A’-3)を含有する重合体組成物を得た。固形分45.0%になる量の水を加えて重合体(A’-3)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(B-3)を得た。重合体(A’-3)のMwは28,000、Mw/Mnは3.3であった。
【0067】
<比較製造例4>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水251.3部、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイドの平均付加モル数210個)ポリオキシプロピレン(プロピレンオキサイドの平均付加モル数11個)モノアリルエーテル353.3部、無水マレイン酸20.9部を投入し、35℃で過硫酸ナトリウムを加え、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温し、10時間反応させた。重合終了後、冷却し48%水酸化ナトリウム水溶液35.5部で中和し、重合体(A’-4)を含有する重合体組成物を得た。固形分40.0%になる量の水を加えて重合体(A’-4)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(B-4)を得た。重合体(A’-4)のMwは22,000、Mw/Mnは2.5であった。
【0068】
<比較製造例5>
撹拌機、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロート及びマントルヒーターを備えた4つ口フラスコにイオン交換水80部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数100個)295部を投入し、撹拌下にフラスコ内を窒素置換し、窒素雰囲気下で加熱し還流させた。滴下口から開始剤溶液としてイオン交換水127部、過硫酸アンモニウム6.2部の混合溶液を、もう一方の滴下口からアクリル酸22.2部、イオン交換水330部の均一混合液を、フラスコ内を100℃で撹拌下、それぞれ4.5時間かけてフラスコ内に同時に滴下した。滴下後、同温度で1時間熟成し、冷却した。冷却後、48%水酸化ナトリウム水溶液25部で中和し、重合体(A’-5)を含有する重合体組成物を得た。固形分35.0%になる量の水を加えて重合体(A’-5)を含有する押出成形セメント製品用添加剤(B-5)を得た。重合体(A’-5)のMwは20,000、Mw/Mnは2.5であった。
【0069】
<実施例1~17及び比較例1~6>
普通ポルトランドセメント100部、表1に示す強熱減量(%)のフライアッシュ100部、硅石粉80部、セルロース系増粘剤「メトローズ SHV-PF[信越化学工業(株)製]」2.1部、故紙パルプ20部をドライブレンドした後、表1に示す製造例又は比較製造例の押出成形セメント組成物用添加剤を、固形分が0.42部となるように水と混合した水溶液120部を加え、ニーダー型ミキサーで10分間混練し押出成形セメント組成物を得た。得られた押出成形セメント組成物について、以下の方法により押出成形セメント製品の生産性と成形性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
<押出成形セメント製品の生産性の評価方法>
筒先に3mmの穴が開いたシリンダー型押出試験器(シリンダーの直径:16mm)に押出成形セメント組成物を詰めた後、オートグラフにて押出成形セメント組成物を5mm/minのスピードで押出した時の吐出圧(MPa)を測定した。吐出圧が低いほど生産性に優れることを意味する。
【0072】
<押出成形セメント製品の成形性の評価方法>
凹型の金型を取り付けたスクリュー型の押出成形機にて押出成形セメント組成物の押出成形を行い、押出成形品の表面状態を目視で観察し、以下の判定基準で成形性を評価した。
◎ : 押出成形物の表面が平滑である。
○ : 押出成形物の表面に目立った掠れがない。
△ : 押出成形物の表面が一部鱗状に掠れている。
× : 押出成形物の表面が大きく掠れている、もしくはひび割れている。
×× : 測定不能
【0073】
実施例及び比較例を比較すると、実施例ではフライアッシュの強熱減量が大きい場合であっても良好な生産性及び成形性の押出成形用セメント製品を得る事が出来ていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の押出成形セメント製品用添加剤を用いた押出成形セメント製品は、建築物の外壁材、間仕切材、天井材等に有用である。