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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】手術用ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20220914BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20220914BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B17/94
B25J18/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021115992
(22)【出願日】2021-07-13
(62)【分割の表示】P 2017526785の分割
【原出願日】2015-07-09
(65)【公開番号】P2021180856
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-07-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「未来医療を実現する先端医療機器・システム研究開発 先端医療機器の開発 高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 和俊
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157001(WO,A1)
【文献】特開2010-227600(JP,A)
【文献】特表2013-510664(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104402(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
A61B 17/94
B25J 18/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有しており関節を備えていない中空の筒状体からなる可撓シャフトと、近位端が前記可撓シャフトの遠位端に連なり、その軸線と直交する方向に曲げ可能である中空の曲げ関節と、前記曲げ関節の遠位端に連なり、その軸線周りに回動可能である手首関節と、前記手首関節に取り付けられたエンドエフェクタと、可撓性を有し、前記可撓シャフト及び前記曲げ関節に挿通されて遠位端が前記手首関節に取り付けられている中空のトルク伝達チューブと、遠位端が前記曲げ関節に取り付けられている曲げ関節操作ケーブルと、を含む複数のロボット本体と、
前記複数のロボット本体のそれぞれに対応して配置され、曲げ方向の剛性が前記可撓シャフトの曲げ方向の剛性よりも大きい可撓性を有する筒状体によって構成され前記可撓シャフトを延在方向に案内する複数の案内管と、
遠位端から前記複数の案内管のそれぞれの遠位端が突出し、近位端から前記複数の案内管のそれぞれの近位端が突出する長さを有しており、前記複数の案内管を集束する集束菅と、
前記ロボット本体が取り付けられたときに前記曲げ関節操作ケーブルを動作させるように構成された曲げ関節駆動部と、前記ロボット本体が取り付けられたときに前記トルク伝達チューブの近位端を回動させるように構成された手首関節駆動部とを含むようにそれぞれが構成され、前記複数のロボット本体のそれぞれに対応して配置された複数のロボット本体駆動機構と、を備える、手術用ロボット。
【請求項2】
前記案内管は、その遠位端を湾曲させる遠位端湾曲機構を有する、請求項1に記載の手術用ロボット。
【請求項3】
前記複数のロボット本体のそれぞれは、前記トルク伝達チューブに挿通され、遠位端が前記エンドエフェクタに取り付けられているエンドエフェクタ操作ケーブルを有し、
前記エンドエフェクタは、前記エンドエフェクタ操作ケーブルが該エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に動作することによって動作するように構成され、
前記複数のロボット本体駆動機構のそれぞれは、前記エンドエフェクタ操作ケーブルを該エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に動作させるエンドエフェクタ駆動部を含む、請求項1又は2に記載の手術用ロボット。
【請求項4】
前記曲げ関節駆動部は、第1モータを含み、
前記手首関節駆動部は、第2モータを含み、
前記複数のロボット本体のそれぞれは、前記可撓シャフトの近位端が取り付けられたベースを含み、前記ベースを介して前記複数のロボット本体駆動機構のそれぞれに取り付け可能に構成され、
前記ベースを前記ロボット本体駆動機構に取り付けることにより、前記曲げ関節駆動部は、前記第1モータの駆動力により前記曲げ関節操作ケーブルを動作させるように構成され、且つ、前記手首関節駆動部は、前記第2モータの駆動力により前記トルク伝達チューブの近位端を回動させるように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の手術用ロボット。
【請求項5】
前記エンドエフェクタは鉗子である、請求項1乃至4の何れかに記載の手術用ロボット。
【請求項6】
可撓性を有する内視鏡をさらに備え、
前記複数の案内管の中の1つの案内管が前記内視鏡を案内する、請求項1乃至5の何れかに記載の手術用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から患者の体内に挿入される処置具を備える医療システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この医療システムは、患者の体内に挿入される挿入部を有する。挿入部は、湾曲部と、湾曲部の先端に取り付けられた右アーム及び左アームを有し、各アームは、各アームの軸線と直交する方向に湾曲させることができる。そして、各アームには、可撓性を有する長尺のシース部と、シース部の先端部に有する処置具とが挿通され、処置具は各アームの先端開口から突出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2014/156286号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の医療システムは、湾曲部の先端から突出するシース部の根元をアームによって湾曲させて処置具の向きを変えるものであるため、処置具のアームの先端からの突出量が大きくなるに従い、処置具を目標の向きに精確に向けることが困難になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る手術用ロボットは、可撓性を有しており関節を備えていない中空の筒状体からなる可撓シャフトと、近位端が前記可撓シャフトの遠位端に連なり、その軸線と直交する方向に曲げ可能である中空の曲げ関節と、前記曲げ関節の遠位端に連なり、その軸線周りに回動可能である手首関節と、前記手首関節に取り付けられたエンドエフェクタと、可撓性を有し、前記可撓シャフト及び前記曲げ関節に挿通されて遠位端が前記手首関節に取り付けられている中空のトルク伝達チューブと、遠位端が前記曲げ関節に取り付けられている曲げ関節操作ケーブルと、を含む複数のロボット本体と、前記複数のロボット本体のそれぞれに対応して配置され、曲げ方向の剛性が前記可撓シャフトの曲げ方向の剛性よりも大きい可撓性を有する筒状体によって構成され前記可撓シャフトを延在方向に案内する複数の案内管と、遠位端から前記複数の案内管のそれぞれの遠位端が突出し、近位端から前記複数の案内管のそれぞれの近位端が突出する長さを有しており、前記複数の案内管を集束する集束菅と、前記ロボット本体が取り付けられたときに前記曲げ関節操作ケーブルを動作させるように構成された曲げ関節駆動部と、前記ロボット本体が取り付けられたときに前記トルク伝達チューブの近位端を回動させるように構成された手首関節駆動部とを含むようにそれぞれが構成され、前記複数のロボット本体のそれぞれに対応して配置された複数のロボット本体駆動機構と、を備える。
【0007】
この構成によれば、可撓シャフトの遠位端に連なる曲げ関節によってエンドエフェクタの向きを変えることができるので、処置部位の近傍でエンドエフェクタを目標の向きに向けることができる。よって、エンドエフェクタを目標の向きに精確に向けることができる。
【0008】
また、術者が曲げ関節を曲げることによるエンドエフェクタの動きを容易に予想することができる。
【0009】
更に、手首関節を回動させることにより、目標の向きに向けたエンドエフェクタの軸線周りの角度位置を調節することができる。
【0010】
また、手首関節の回動は、トルク伝達チューブを回動させることによって行われるので、可撓シャフト及び曲げ関節を曲げたときに手首関節が動くことを防止することができる。更に、可撓シャフトをその軸線周りに回動させたときに案内管が変形することを防止することができ、可撓シャフトの延在方向を維持した状態で、可撓シャフトの角度位置を変更することができる。
【0011】
このようにして、手術用ロボットの操作性を向上させることができる。
【0012】
前記案内管は、その遠位端を湾曲させる遠位端湾曲機構を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、手術用ロボットの動作時に、他の手術用ロボットと干渉することを防止することができる。
【0016】
前記複数のロボット本体のそれぞれは、前記トルク伝達チューブに挿通され、遠位端が前記エンドエフェクタに取り付けられているエンドエフェクタ操作ケーブルを有し、前記エンドエフェクタは、前記エンドエフェクタ操作ケーブルが該エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に動作することによって動作するように構成され、前記複数のロボット本体駆動機構のそれぞれ、前記エンドエフェクタ操作ケーブルを該エンドエフェクタ操作ケーブルの延在方向に動作させるエンドエフェクタ駆動部を含んでいてもよい。
【0017】
この構成によれば、曲げ関節を曲げることによって、エンドエフェクタ操作ケーブルがその延在方向に動かされ、エンドエフェクタが動作することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、手術用ロボットの操作性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る手術用ロボットを備える手術用ロボットシステムの構成例を概略的に示す図である。
図2図1の手術用ロボットの構成例を示す図である。
図3図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す斜視図である。
図4図1の手術用ロボットのロボット本体の構成例を概略的に示す図である。
図5A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。
図5B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体の関節部を曲げた状態を示す図である。
図6図1の手術用ロボットのロボット本体の手首関節の構成例を示す一部破断図である。
図7A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
図7B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブルの構成例を示す図である。
図8A図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。
図8B図1の手術用ロボットのロボット本体の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
図9図1の手術用ロボットの制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る手術用ロボット1を備える手術用ロボットシステム100の構成例を概略的に示す図である。図2は、手術用ロボット1の構成例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、手術用ロボットシステム100は、術者Wが手術台111上の患者Pの体内に挿入した手術用ロボット1の遠位端に設けられた術具を外部から遠隔的に操作することによって、低侵襲手術を行うシステムである。
【0023】
手術用ロボットシステム100は、例えば、1以上の手術用ロボット1と、内視鏡101と、を備える。
【0024】
手術用ロボット1は、手術台111に取り付けられた手術用ロボット支持台113に支持されている。そして、手術用ロボット1は、細長く形成されたアームを有し、アームの遠位端に術具を有する。そして、この術具によって、患者Pの体内の処置部位の処置を行う。本実施の形態において、手術用ロボット1は、アームの遠位端に鉗子を有するロボットである。しかし、アームのの遠位端の術具は鉗子に限られるものではなく、種々の術具を適用することができる。
【0025】
内視鏡101は、術者Wが患者Pの体内を視認するためのものであり、遠位端にビデオカメラ及び照明を有する。そして、内視鏡101のビデオカメラによって撮影した画像は、表示装置114に表示される。これによって、術者Wは、患者Pの体内に位置するアームの遠位端及び術具の状態、並びに処置部位の状態を視認しながら、手術用ロボット1を操作し、手術を行うことができる。
【0026】
そして、図2に示すように、手術用ロボット1は、集束管102に挿入され、集束される。集束管102は、可撓性を有し、中空の筒状に形成されている。
【0027】
[ロボット本体の構成例]
図3は、手術用ロボット1のロボット本体2の遠位端の構成例を示す斜視図である。図4は、ロボット本体2の構成例を概略的に示す図である。
【0028】
図2に示すように、手術用ロボット1は、ロボット本体2と、駆動部3と、制御器4(図1参照)と、操作部5(図1参照)と、案内管6と、を備える。
【0029】
図2に示すように、ロボット本体2は、アーム21と、アーム21の遠位端21bに設けられた鉗子(エンドエフェクタ)22と、駆動力伝達機構24と、を有する。更に、ロボット本体2は、ベース23を有する。ベース23は、駆動部3に取り付けることができるように構成されている。そして、ベース23を駆動部3に取り付けることによって、ロボット本体2を駆動部3に連結することができる。
【0030】
図5Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体2の関節部26を真っ直ぐに伸ばした状態を示す図である。図5Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、ロボット本体2の関節部26を曲げた状態を示す図である。
【0031】
図5A及び図5Bに示すように、アーム21は、可撓性を有する中空の可撓シャフト25と、関節部26とを有する。
【0032】
可撓シャフト25は、例えば、筒状体である。そして、図2に示すように、可撓シャフト25の近位端25aは、ベース23に取り付けられ、固定されている。
【0033】
可撓シャフト25は、曲げ方向には可撓性を有する一方で、軸線方向には高い剛性を有する。また、可撓シャフト25は、軸線周りの回転トルクに対しても剛性を有する。
【0034】
図5A及び図5Bに示すように、関節部26は、近位端(第1曲げ関節27の近位端27a)が可撓シャフト25の遠位端25bに連なる。関節部26は、中空の筒状体であり、内部空間は、可撓シャフト25の内部空間と連通している。
【0035】
関節部26は、第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とを有する。第1曲げ関節27と、第2曲げ関節28と、接続部29と、手首関節30とは、同一軸線上に配設されている。関節部26は、外周面が図示しないカバーによって覆われ、可撓シャフト25と略同一の径を有する。
【0036】
第1曲げ関節27は、中空の筒状体であり、近位端27aが可撓シャフト25の遠位端25bに連なるように取り付けられている。なお、「連なる」とは、2つのものが直接接続されている場合のみならず、2つのものの間に他のものが介在し、間接的に接続されている場合も含む。
【0037】
図8Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すB-B矢視図である。図8Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示すC-C矢視図である。
【0038】
第1曲げ関節27は、関節部26の軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材31を有する。コマ部材31は、関節部26の軸線方向に延在する円柱状に形成されている。そして、コマ部材31は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線から離れるに従ってコマ部材31の軸線方向の厚さ寸法が小さくなるテーパー状に形成されている。すなわち、コマ部材31は、図5Aにおいて、上方及び下方に向かうに従って薄くなるように形成されている。これによって、第1曲げ関節27を曲げたときにコマ部材31の端面と当該端面に対峙する隣接するコマ部材31の端面との干渉を回避している。
【0039】
そして、図8A及び図8Bに示すように、コマ部材31は、第1挿通孔31aと、一対の第2挿通孔31bと、一対の第3挿通孔31cとを有する。
【0040】
第1挿通孔31aは、コマ部材31の軸線上に形成され、後述するトルク伝達チューブ44が挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の第1挿通孔31aがアーム21の延在方向に延在する第1経路R1を構成している。
【0041】
一対の第2挿通孔31bは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第2挿通孔31bのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て(すなわち、後述するピン31fの延在方向から見て)、コマ部材31の軸線に対して一対の第2挿通孔31bのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、図5Aにおいて、一対の第2挿通孔31bのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第1曲げ関節操作ケーブル41の両端部が一対の第2挿通孔31bにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第2挿通孔31bがアーム21の延在方向に延在する一対の第2経路R2を構成している。したがって、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0042】
一対の第3挿通孔31cは、コマ部材31の両端面を接続し、コマ部材31の軸線と平行に延在している。一対の第3挿通孔31cのうち一方は、コマ部材31の軸線及び後述する第1曲げ関節27の曲げ方向と直交する方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3挿通孔31cのうち他方が位置する側と反対側に位置している。すなわち、図5Aにおいて、一対の第3挿通孔31cのうち一方は、後述するピン31fよりも上方に形成され、他方は後述するピン31fよりも下方に形成されている。そして、後述する第2曲げ関節操作ケーブル42の両端部が一対の第3挿通孔31cにそれぞれ挿通されている。そして、一列に連なった複数のコマ部材31の一対の第3挿通孔31cがアーム21の延在方向に延在する一対の第3経路R3を構成している。したがって、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置している。
【0043】
また、コマ部材31の一方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第1突出部31dが形成され、更に、コマ部材31の他方の端面からコマ部材31の延在方向外側に向かって突出する一対の第2突出部31eが形成されている。一対の第1突出部31dと隣り合うコマ部材31の一対の第2突出部31eとは、一直線上に並ぶ一対のピン31fによって連結されている。これによって、各コマ部材31は、隣接するコマ部材31に対して一対のピン31fの軸線(揺動軸線)周りに揺動可能に連結されている。そして、コマ部材31の各揺動軸線は互いに平行となるように構成され、第1曲げ関節27は、コマ部材31の軸線及び揺動軸線と直交する方向(以下、曲げ方向ともいう。)に第1曲げ関節27の遠位端27bが向かうように曲げ可能に構成されている。なお、図5Aにおいて、コマ部材31の軸線とは紙面の左右方向に延在する軸線であり、揺動軸線とは紙面の奥行方向に延在する軸線である。
【0044】
上述の通り、一対の第2経路R2のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第2経路R2のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第2経路R2のうち曲げ方向内側に位置する第2経路R2の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第2経路R2は長くなる。同様に、一対の第3経路R3のうち一方は、後述するピン31fの延在方向から見て、コマ部材31の軸線に対して一対の第3経路R3のうち他方が位置する側と反対側に位置しているので、第1曲げ関節27が曲げ動作を行うと一対の第3経路R3のうち曲げ方向内側に位置する第3経路R3の経路長は短くなり、曲げ方向外側に位置する第3経路R3は長くなる。
【0045】
第2曲げ関節28は、第1曲げ関節27と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0046】
接続部29は、中空の筒状体であり、第1曲げ関節27と第2曲げ関節28とを接続している。
【0047】
手首関節30は、鉗子22をアーム21の遠位端21bの軸線L周りに回動させる。手首関節30は、アーム21の軸線(関節部26の軸線)と直交する平面上に延在する板状体であり、中央部に手首関節30の近位端側の面と遠位端側の面を接続する貫通孔30aが設けられている。貫通孔30aは、後述する鉗子操作ケーブル43が挿通される孔であり、アーム21の遠位端21bの軸線上に形成されている。そして、手首関節30は、図示しない軸受けを介して、第2曲げ関節28の遠位端28bに連なるように取り付けられている。したがって、手首関節30は、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28に対して、手首関節30の軸線周り(アーム21の遠位端21bの軸線L周り)に回動可能に構成されている。
【0048】
また、手首関節30の近位端側の面であって、貫通孔30aの周縁部には、後述するトルク伝達チューブ44の遠位端44bが固定されている(図6参照)。
【0049】
エンドエフェクタは、術具であり、本実施の形態において、鉗子22である。鉗子22は、手首関節30の遠位端側の面に取り付けられている。すなわち、鉗子22は、関節部26の遠位端(第2曲げ関節28の遠位端28b)に連なる。
【0050】
また、鉗子22は、操作ケーブル連結部を有する開閉動作作動機構(図示せず)を備える。操作ケーブル連結部は、後述する鉗子操作ケーブル43の遠位端43aが連結される部分である。鉗子22の開閉動作作動機構は、操作ケーブル連結部が所定方向に動かされると、その移動量に応じて鉗子を所定量開閉する機構である。また、操作ケーブル連結部は、図示しない付勢機構によって、鉗子操作ケーブル43の近位端から遠位端43aに向かう方向に付勢されている。これによって、鉗子操作ケーブル43を遠位端43aから近位端に向かう方向に牽引すると、操作ケーブル連結部は、上記付勢機構の付勢力に抗して鉗子操作ケーブル43の遠位端43aの移動方向に動かされ、例えば閉動作を行い、対象物の把持動作を行う。また、鉗子操作ケーブル43を近位端から遠位端43aに向かう方向に送り出すと、鉗子操作ケーブル43は撓むが、付勢機構がこの撓みを吸収するように、操作ケーブル連結部を上記鉗子操作ケーブル43の遠位端43aの移動方向とは反対方向に移動させ、例えば開動作を行い、対象物の解放動作を行う。
【0051】
このように、アーム21の近位端21aから遠位端21bまでの内部空間は連通しており、内部に後述する駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル41、第2曲げ関節操作ケーブル42、鉗子操作ケーブル43、及びトルク伝達チューブ44が挿通されている。
【0052】
駆動力伝達機構24は、駆動部3の後述するロボット本体駆動機構51の駆動力を可撓シャフト25の遠位端25bに連なる機構に伝達する機構である。すなわち、駆動力伝達機構24は、ロボット本体駆動機構51と第1曲げ関節27、ロボット本体駆動機構51と第2曲げ関節28、ロボット本体駆動機構51と手首関節30、及びロボット本体駆動機構51と鉗子22とをそれぞれ接続し、ロボット本体駆動機構51の駆動力を、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、手首関節30、及び鉗子22に伝達する機構である。図3及び図4に示すように、駆動力伝達機構24は、第1曲げ関節操作ケーブル41と、第1曲げ関節操作ケーブル作動部(図示せず)と、第2曲げ関節操作ケーブル42と、第2曲げ関節操作ケーブル作動部(図示せず)と、鉗子操作ケーブル43と、鉗子操作ケーブル作動部(図示せず)と、トルク伝達チューブ44と、トルク伝達チューブ回動部(図示せず)と、を有する。
【0053】
図7Aは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第1曲げ関節操作ケーブル41の構成例を示す図である。
【0054】
第1曲げ関節操作ケーブル41は、図7Aに示すように、両端部41aが第1曲げ関節27の遠位端27bに位置するコマ部材31に固定されている。
【0055】
そして、第1曲げ関節操作ケーブル41は、一方の端部41aから中間部に向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。また、他方の端部41aから中間部に向かって延びる部分が、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。
【0056】
第1曲げ関節操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部を第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向に移動させる機構である。そして、駆動部3の駆動力によって第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部が第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向における一方側に移動すると、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から何れか一方の端部41aに亘る部分が牽引され、当該一方の端部41aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から前記一方の端部41a側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該一方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から他方の端部41aに亘る部分は送り出され、一対の第2経路R2のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。
【0057】
一方、駆動部3の駆動力によって第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部が第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向における他方側に移動すると、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から他方の端部41aに亘る部分が牽引され、当該他方の端部41aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第1曲げ関節27の一対の第2経路R2のうち、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から前記他方の端部41aが挿通されている他方の経路長が短くなり、第1曲げ関節27は、当該他方の第2経路R2が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第1曲げ関節操作ケーブル41の中間部から一方の端部41aに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第2経路R2のうち一方の経路に送り込まれる。
【0058】
図7Bは、ロボット本体2の遠位端の構成例を示す図であり、第2曲げ関節操作ケーブル42の構成例を示す図である。
【0059】
第2曲げ関節操作ケーブル42は、図7Bに示すように、両端部42aが第2曲げ関節28の遠位端28bに位置するコマ部材31に固定されている。そして、第2曲げ関節操作ケーブル42は、一方の端部42aから中間部に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち一方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち一方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。また、他方の端部42aから中間部に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち他方、接続部29、第1曲げ関節27の一対の第3経路R3のうち他方、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、ベース23の内部空間まで延びている。
【0060】
第2曲げ関節操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部を第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向に移動させる機構である。そして、駆動部3の駆動力によって第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部が第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向における一方側に移動すると、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から何れか一方の端部42aに亘る部分が牽引され、当該一方の端部42aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から前記一方の端部42a側の部分が挿通されている一方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該一方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から他方の端部42aに亘る部分は送り出され、一対の第3経路R3のうち経路長が長くなった他方の経路に送り込まれる。
【0061】
一方、駆動部3の駆動力によって第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部が第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向における他方側に移動すると、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から他方の端部42aに亘る部分が牽引され、当該他方の端部42aがアーム21の近位端21aに向かって移動する。これによって、第2曲げ関節28の一対の第3経路R3のうち、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から前記他方の端部42aが挿通されている他方の経路長が短くなり、第2曲げ関節28は、当該他方の第3経路R3が位置する側に曲がるように曲げ動作を行う。また、第2曲げ関節操作ケーブル42の中間部から一方の端部42aに亘る部分は送り出され、経路長が長くなった一対の第3経路R3のうち一方の経路に送り込まれる。
【0062】
鉗子操作ケーブル(エンドエフェクタ操作ケーブル)43は、上述の通り、遠位端43aが鉗子22に取り付けられている。そして、鉗子操作ケーブル43は、遠位端43aから近位端に向かって延びる部分が、手首関節30の貫通孔30a(図6参照)、及びトルク伝達チューブ44の内部空間(関節部26及び可撓シャフト25の内部空間)を通り、近位端が、ベース23の内部空間に位置している。すなわち、鉗子操作ケーブル43は、トルク伝達チューブ44に挿通されている。
【0063】
鉗子操作ケーブル作動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、ベース23の内部空間に位置する鉗子操作ケーブル43の近位端をアーム21の軸線方向に牽引する機構である。そして、駆動部3の駆動力によって鉗子操作ケーブル43の近位端が牽引されると、アーム21に対して鉗子操作ケーブル43が鉗子操作ケーブル43の延在方向に移動し、その結果鉗子22が動作するように構成されている。
【0064】
図6は、手首関節30の構成例を示す一部破断図である。
【0065】
トルク伝達チューブ44は、可撓性を有し、筒状に形成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、近位端にかかるトルクを任意の方向に向けた遠位端44bに伝達することができるものである。すなわち、トルク伝達チューブ44は、近位端を回動させることによって、任意の形状に曲げた中間部分を介して、遠位端44bを近位端の回動量に応じて回動させるように構成されている。そして、トルク伝達チューブ44は、図7に示すように、遠位端44bが手首関節30の貫通孔30aの周縁部に固定されている。そして、トルク伝達チューブ44は、遠位端44bから近位端に向かって延びる部分が、第2曲げ関節28の第1経路R1、接続部29、第1曲げ関節27の第1経路R1、及び可撓シャフト25の内部空間を通り、近位端が、ベース23の内部空間に位置している。
【0066】
トルク伝達チューブ回動部は、ベース23の内部に設けられ、駆動部3の駆動力によって、トルク伝達チューブ44の近位端を回動させる機構である。そして、トルク伝達チューブ44の近位端が回動すると、トルク伝達チューブ44の遠位端44bが従動して回動し、手首関節30が回動するように構成されている。
【0067】
なお、上記鉗子操作ケーブル43は、鉗子22から手首関節30の貫通孔30aを通ってトルク伝達チューブ44の遠位端44bからトルク伝達チューブ44の内部空間に引き込まれ、このトルク伝達チューブ44の内部空間を通ってベース23まで延び、ベース23の内部空間において、トルク伝達チューブ44の近位端からトルク伝達チューブ44の外側に引き出されている。したがって、鉗子操作ケーブル43は、トルク伝達チューブ44の中心軸又はその近傍に沿って延在している。トルク伝達チューブ44の近位端から遠位端44aまでの中心軸沿いの経路長は、アーム21を伸ばした状態と曲げた状態において殆ど変化しないので、アーム21を曲げることによって、鉗子操作ケーブル43がその延在方向に動かされ、鉗子22が動作することを防止することができる。また、鉗子操作ケーブル43が第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42と接触することを防止することができ、第1曲げ関節操作ケーブル41又は第2曲げ関節操作ケーブル42が動作したときに、予期せず鉗子操作ケーブル43が動作することを防止することができる。
【0068】
また、第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42は、可撓シャフト25とトルク伝達チューブ44との間に位置する空間を通ってベース23まで延びている。したがって、第1曲げ関節操作ケーブル41及び第2曲げ関節操作ケーブル42の動作と鉗子操作ケーブル43及びトルク伝達チューブ44の動作とを分離することができる。したがって、鉗子22の動作及び手首関節30の動作から独立して第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28を動作させることができる。
【0069】
そして、トルク伝達チューブ44は、可撓性を有しているので、可撓シャフト25、と共に曲げることができる。
【0070】
図2に示すように、案内管6は、可撓性の筒状体であり、可撓シャフト25が挿通されている。そして、図2に示す使用状態において、可撓シャフト25の遠位端25bは、案内管6の遠位端6bから突出している。よって、関節部26及び鉗子22は、案内管6の遠位端6bから突出した状態にある。また、案内管6の長さ寸法は、可撓シャフト25の長さ寸法よりも短く形成されている。更に、案内管6は、可撓シャフト25、関節部26、及び鉗子22を挿通することができる大きさに形成されている。したがって、案内管6の近位端6aから鉗子22、関節部26、及び可撓シャフト25を挿入し、ロボット本体2の遠位端を送り込むことによって、ロボット本体2の遠位端を案内管6の遠位端6bに向かって送り込み、案内管6の遠位端6bから鉗子22、関節部26、及び可撓シャフト25の遠位端25bを突出させることができる。そして、案内管6は、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の延在方向に滑らかに動かすことができるように構成され、また、挿入された各手術用ロボット1及び内視鏡101を案内管6の軸線周りに滑らかに回動させることができるように構成されている。
【0071】
本実施の形態において、案内管6は、集束管102と別体であるが、集束管102と一体的に構成されていてもよい。
【0072】
また、案内管6は、遠位端6bを湾曲させる遠位端湾曲機構を有する。遠位端湾曲機構は、図示しない操作部を操作することによって、遠位端6bを所定の向きに湾曲させることができるように構成されている。すなわち、案内管6は、案内管6の軸線を含む仮想の平面内で案内管6の軸線と直交する方向に案内管6の遠位端6bが向かうように曲げ可能に構成されている。したがって、遠位端湾曲機構によって案内管6の遠位端6bを湾曲させると、案内管6の内部空間に挿通されている可撓シャフト25が湾曲し、更に可撓シャフト25の内部空間に挿通されている第1曲げ関節操作ケーブル41、第2曲げ関節操作ケーブル42、トルク伝達チューブ44、及び鉗子操作ケーブル43が湾曲する。上述の通り、アーム21は、第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28によっても湾曲するように構成されているので、ロボット本体2のアーム21は、患部の近傍で、3ヶ所湾曲するように構成されている。したがって、ロボット本体2の操作性を向上させることができる。
【0073】
更に、案内管6は、曲げ方向の剛性が可撓シャフト25の曲げ方向の剛性よりも大きく構成されている。これによって、可撓シャフト25をその軸線周りに回動させたときに、案内管6が変形することを防止することができ、可撓シャフト25の延在方向を維持した状態で、可撓シャフト25の角度位置を変更することができる。
【0074】
[駆動部の構成例]
図2に示すように、駆動部3は、ロボット本体2を駆動するロボット本体駆動機構51を有する。
【0075】
図6に示すように、ロボット本体駆動機構51は、第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、手首関節駆動部38、鉗子駆動部(エンドエフェクタ駆動部)37を有する。第1曲げ関節駆動部35、第2曲げ関節駆動部36、手首関節駆動部38、及び鉗子駆動部37は、例えばサーボモータを含む。
【0076】
第1曲げ関節駆動部35は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、第1曲げ関節操作ケーブル41と接続され、その駆動力により、第1曲げ関節操作ケーブル41を第1曲げ関節操作ケーブル41の延在方向に移動(往復動)させる。これによって、第1曲げ関節27が曲げ動作を行う。
【0077】
第2曲げ関節駆動部36は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、第2曲げ関節操作ケーブル42と接続され、その駆動力により、第2曲げ関節操作ケーブル42を第2曲げ関節操作ケーブル42の延在方向に移動(往復動)させる。これによって、第2曲げ関節28が曲げ動作を行う。
【0078】
手首関節駆動部38は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、トルク伝達チューブ44と接続され、その駆動力により、トルク伝達チューブ44の近位端を回動させる。これによって、手首関節30が回動し、鉗子22が軸線L周りに回動する。
【0079】
鉗子駆動部37は、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付けることによって、鉗子操作ケーブル43と接続され、その駆動力により、鉗子操作ケーブル43を鉗子操作ケーブル43の延在方向に移動(往復動)させる。これによって、鉗子22が開閉する。
【0080】
[制御器及び操作部の構成例]
図9は、制御器4の構成例を示すブロック図である。
【0081】
ロボット本体2が備える制御器4は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部81と、ROM及びRAM等のメモリを有する記憶部82とを備えている。制御部81は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいて各手術用ロボット1のロボット本体駆動機構51の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。また、制御部81は、内視鏡101から受信した画像データを処理し、表示装置114に送信する。記憶部82には所定の制御プログラムが記憶されていて、制御部81がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、手術用ロボット1の動作が制御される。
【0082】
操作部5は、術者Wが操作して、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令を入力するためのものである。操作部5は、制御部81と通信可能に構成されている。そして、操作部5は、術者Wによって入力された手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令をデータに変換し、制御部81に送信する。
【0083】
[使用例]
次に、手術用ロボット1の使用例を説明する。
【0084】
まず、図2に示すように、1以上の案内管6を集束管102の近位端102aの開口から集束管102に挿入し、集束管102の遠位端102bから案内管6の遠位端6bが突出するまで送り込む。また、内視鏡101についても同様に、集束管102の遠位端102bから内視鏡101の遠位端が突出するまで送り込む。
【0085】
次に、患者Pの体表の1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101を挿入する部位にトロッカー110を留置する。
【0086】
次に、患者Pの体表に留置したトロッカー110に集束管102を挿入し、内視鏡101によって患者Pの体内を視認し、集束管102の遠位端102bを患者Pの処置部位の近傍に位置させる。なお、集束管102、内視鏡101、及び案内管6は、可撓性を有するので、トロッカー110が留置されている部位と処置部位とを通る仮想の直線上に、例えば患者Pの臓器が位置する場合であっても、集束管102、内視鏡101、及び案内管6を湾曲させることによって、この臓器を迂回し集束管102の遠位端102bを処置部位の近傍に導入することができる。
【0087】
次に、1以上の手術用ロボット1のロボット本体2のアーム21を案内管6の近位端6aの開口から案内管6に挿入し、案内管6の遠位端6bから可撓シャフト25の遠位端25bが突出するまで送り込む。これによって、1以上の手術用ロボット1及び内視鏡101は、集束管102によって集束され、これらを一体的に患者Pの処置部位の近傍に導入することができる。
【0088】
なお、上述の通り、案内管6、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、可撓シャフト25、第1曲げ関節操作ケーブル41、第2曲げ関節操作ケーブル42、トルク伝達チューブ44、及び鉗子操作ケーブル43は、何れも曲げ可能に構成されているので、患者Pの体内に導入された集束管102が湾曲している場合であっても、案内管6及びアーム21を集束管102に送り込むことによって、集束管102の内部の湾曲した経路に沿って案内管6及びアーム21が湾曲し、集束管102の遠位端102bから案内管6及びアーム21の遠位端21bを突出させることができる。
【0089】
次に、ベース23をロボット本体駆動機構51に取り付け、ロボット本体2の駆動力伝達機構24と、ロボット本体駆動機構51とを連結する。これによって、ロボット本体駆動機構51の駆動力が駆動力伝達機構24の第1曲げ関節操作ケーブル作動部、第2曲げ関節操作ケーブル作動部、鉗子操作ケーブル作動部、及びトルク伝達チューブ回動部を介して、第1曲げ関節27、第2曲げ関節28、鉗子22、及び手首関節30に伝達されるようになる。
【0090】
次に、各手術用ロボット1の案内管6の遠位端湾曲機構の操作部を操作し、案内管6の遠位端6bを湾曲させる。これによって、アーム21の遠位端21bを集束管102の遠位端102bの軸線と直交する方向に移動させることができ、各手術用ロボット1のアーム21の遠位端21bを互いに離間させることができる。よって、手術用ロボット1の動作時に、各手術用ロボット1のアーム21の遠位端21b同士が干渉することを防止することができ、手術用ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0091】
次に、術者Wは、内視鏡101のビデオカメラによって撮影され、表示装置114に表示される画像を確認しながら、操作部5を操作する。そして、制御部81は、操作部5から受信したデータに基づいてロボット本体駆動機構51の動作を制御し、手術用ロボット1の動作を制御する。
【0092】
このとき、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、第1曲げ関節27を曲げる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、第1曲げ関節27を曲げる。これによって、鉗子22は、第1曲げ関節27の曲げ方向に移動する。
【0093】
また、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、第2曲げ関節28を曲げる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、第2曲げ関節28を曲げる。これによって、鉗子22は、第2曲げ関節28の曲げ方向に移動する。
【0094】
更に、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、鉗子22に把持動作又は解放動作を行わせる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、鉗子22に把持動作又は解放動作を行わせる。
【0095】
また、制御部81は、手術用ロボット1によって実行されるべき動作命令に、手首関節30を回動させる動作命令が含まれていると判定すると、制御部81は、ロボット本体駆動機構51を駆動し、手首関節30を回動させる。このように、任意の形状に曲げた中間部分を介して、遠位端44bを近位端の回動量に応じて回動させることができるトルク伝達チューブ44の回動によって手首関節30を回動させるので、可撓シャフト25及びトルク伝達チューブ44が曲げられた状態であっても、また、可撓シャフト25及びトルク伝達チューブ44を曲げながらでも手首関節30を精確に回動させることができる。
【0096】
そして、ロボット本体2のアーム21の近位端21aを案内管6に更に挿し込み、案内管6の遠位端6bからの可撓シャフト25の遠位端25bの突出量を大きくすることによって、鉗子22を処置部位に近づけることができる。また、ロボット本体2のアーム21の近位端21aを案内管6から引き出し、案内管6の遠位端6bからの可撓シャフト25の遠位端25bの突出量を少なくすることによって、鉗子22を処置部位から遠ざけることができる。上述の通り、可撓シャフト25は、軸線方向には高い剛性を有するので、アーム21の近位端21aを軸線方向に移動させることによって、可撓シャフト25の遠位端25bを軸線方向に追従して移動させることができる。
【0097】
なお、案内管6に対するアーム21の挿し込み及び引き出しは、例えば、ロボット本体2を可撓シャフト25の近位端25aの軸線方向に移動させることによって行ってもよい。
【0098】
そして、案内管6の遠位端6bからの可撓シャフト25の遠位端25bの突出量は、例えば、0mm以上30mm以下の範囲内で行われる。これによって、可撓シャフト25の撓みに起因する鉗子22の位置と目標位置との誤差を抑えることができ、且つ鉗子22の可動範囲を拡げることができるので、手術用ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0099】
以上に説明したように、本発明の手術用ロボット1は、可撓シャフト25の遠位端25bに連なる第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28によってアーム21を曲げて、鉗子22の向きを変えることができるので、処置部位の近傍で鉗子22を目標の向きに向けることができる。また、アーム21の延在方向における鉗子22に対する第1曲げ関節27及び第2曲げ関節28の相対的な位置は不変であるので、術者Wは第1曲げ関節27又は第2曲げ関節28を曲げることによって鉗子22がどのように動くかを予測し易い。
【0100】
更に、手首関節30を回動させることにより、目標の向きに向けた鉗子22の軸線周りの角度位置を調整することができる。
【0101】
また、手首関節30の回動は、トルク伝達チューブ44を回動させることによって行われるので、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28を曲げたときに手首関節30が動くことを防止することができる。すなわち、例えば、手首関節30を可撓シャフト25に挿通したケーブルをケーブルの延在方向に動作させることによって動作させるように構成されている場合、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28を曲げたときにこれらの内部空間の経路長が変化し、遠位端がこれによってケーブルが動作する結果、手首関節30が予期せず動作する場合があった。本発明の手術用ロボット1は、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28を曲げてもトルク伝達チューブ44がその軸線周りに回動しないので、可撓シャフト25、第1曲げ関節27、及び第2曲げ関節28を曲げたときに手首関節30が予期せず動作することを防止することができる。
【0102】
このようにして、手術用ロボット1の操作性を向上させることができる。
【0103】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0104】
1 手術用ロボット
2 ロボット本体
3 駆動部
4 制御器
5 操作部
6 案内管
21 アーム
22 鉗子
23 ベース
24 駆動力伝達機構
25 可撓シャフト
26 関節部
27 第1曲げ関節
28 第2曲げ関節
29 接続部
30 手首関節
31 コマ部材
32 操作ケーブル連結部
35 第1曲げ関節駆動部
36 第2曲げ関節駆動部
37 鉗子駆動部
38 手首関節駆動部
41 第1曲げ関節操作ケーブル
42 第2曲げ関節操作ケーブル
43 鉗子操作ケーブル
44 トルク伝達チューブ
51 ロボット本体駆動機構
81 制御部
82 記憶部
100 手術用ロボットシステム
101 内視鏡
102 集束管
110 トロッカー
111 手術台
113 手術用ロボット支持台
114 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9