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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】走行玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 17/14 20060101AFI20220914BHJP
   A63H 7/02 20060101ALI20220914BHJP
   A63H 29/22 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A63H17/14
A63H7/02
A63H29/22 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021141284
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2021-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青鹿 克己
(72)【発明者】
【氏名】市川 敬太
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180050(WO,A1)
【文献】特開2018-163547(JP,A)
【文献】特開平08-294206(JP,A)
【文献】実開昭53-035694(JP,U)
【文献】特開昭63-130087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
G09B 9/00,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
前記車輪の回転状態を検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、検出結果に基づいて手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引き回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする走行玩具。
【請求項2】
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
手押し又は手引きによって前記車輪を回転させることにより誘導起電力を生じさせるように構成され、
前記車輪の回転状態を前記誘導起電力を介して検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、前記検出部で検出した前記誘導起電力の大きさに基づいて前記手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引きの回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする走行玩具。
【請求項3】
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
手押し又は手引きによって前記車輪を回転させることにより誘導起電力を生じさせるように構成され、
前記車輪の回転状態を前記誘導起電力の時間的変化の度合いを介して検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、前記検出部で検出した前記誘導起電力の時間的変化の度合いに基づいて前記手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引きの回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする走行玩具。
【請求項4】
前記処理制御部による制御の下で作動して前記車輪を回転させる第1のモータを備え、手押し又は手引きによって前記車輪の回転を介して前記第1のモータのロータを回転させることにより誘導起電力を生じさせることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の走行玩具。
【請求項5】
前記第1のモータによって回転される前記車輪を左右に備え、前記複数の動作パターンの動作には、この左右の車輪を同時に一方向に回転させることにより実行される動作と、同時に他方向に回転させることにより実行される動作とを含み、
前記左右の車輪のうちの一方の車輪の内側には、当該車輪の車軸を中心に所定範囲で回動可能で、当該車輪、又は、当該車輪と一体的に回転する回転要素との摩擦によって供回りする回動部材が設けられ、
前記回動部材は、前記一方の車輪が一方向に回転するとき、当該車輪の下方に突出して接地し当該車輪を非接地状態とする第1位置を取るとともに、前記一方の車輪が他方向に回転するとき、非接地となり当該車輪を接地状態とする第2位置とを取る、
ことを特徴とする請求項4に記載の走行玩具。
【請求項6】
左右の車輪を備え、一方の車輪は前記第1のモータによって回転され、他方の車輪は、前記処理制御部による制御の下で作動する第2のモータによって回転されるように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の走行玩具。
【請求項7】
手押し又は手引きによって動作するモードに加え外部操縦モードを実行し、前記外部操縦モードでは外部からの操作信号を受信して、その受信した操作信号に応じた動作を行うことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の走行玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪の回転数に応じて動作する走行玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この走行玩具は、例えば、車輪の回転によりオン、オフされるスイッチを備えている。そして、この走行玩具では、スイッチのオン、オフ回数を記憶し、オン、オフ回数が規定の回数に達した時に音声ICから定められた音声メッセージを選択出力するようにプログラム制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3094980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この走行玩具は、車輪の回転数に応じて定められた所定の音声メッセージを所定の時期に選択出力するものであり、遊戯者がその出力内容や出力時期等に関与する余地がないものであり、物足りないものであった。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、遊戯者が手押し又は手引きによって所望の動作をさせることができる走行玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
前記車輪の回転状態を検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、検出結果に基づいて手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引き回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする走行玩具である。
【0006】
第2の手段は、
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
手押し又は手引きによって前記車輪を回転させることにより誘導起電力を生じさせるように構成され、
前記車輪の回転状態を前記誘導起電力を介して検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、前記検出部で検出した前記誘導起電力の大きさに基づいて前記手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引きの回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、
手押し又は手引きによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、
手押し又は手引きによって前記車輪を回転させることにより誘導起電力を生じさせるように構成され、
前記車輪の回転状態を前記誘導起電力の時間的変化の度合いを介して検出する検出部を備え、
前記処理制御部は、前記検出部で検出した前記誘導起電力の時間的変化の度合いに基づいて前記手押し又は手引きの有無を判断し、所定時間内の手押し又は手引きの回数に応じた動作パターンの動作を実行させる、
ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第2又は第3の手段であって、
前記処理制御部による制御の下で作動して前記車輪を回転させる第1のモータを備え、手押し又は手引きによって前記車輪の回転を介して前記第1のモータのロータを回転させることにより誘導起電力を生じさせることを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第4の手段であって、
前記第1のモータによって回転される前記車輪を左右に備え、前記複数の動作パターンの動作には、この左右の車輪を同時に一方向に回転させることにより実行される動作と、同時に他方向に回転させることにより実行される動作とを含み、
前記左右の車輪のうちの一方の車輪の内側には、当該車輪の車軸を中心に所定範囲で回動可能で、当該車輪、又は、当該車輪と一体的に回転する回転要素との摩擦によって供回りする回動部材が設けられ、
前記回動部材は、前記一方の車輪が一方向に回転するとき、当該車輪の下方に突出して接地し当該車輪を非接地状態とする第1位置を取るとともに、前記一方の車輪が他方向に回転するとき、非接地となり当該車輪を接地状態とする第2位置とを取る、
ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第4の手段であって、
左右の車輪を備え、一方の車輪は前記第1のモータによって回転され、他方の車輪は、前記処理制御部による制御の下で作動する第2のモータによって回転されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第1~第6の手段のいずれかであって、
手押し又は手引きによって動作するモードに加え外部操縦モードを実行し、前記外部操縦モードでは外部からの操作信号を受信して、その受信した操作信号に応じた動作を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段によれば、遊戯者がした所定時間内における所定の手押し又は手引きの回数によって所望の動作パターンの選択を行うことができ、興趣性の高い走行玩具が実現できる。
【0013】
第2の手段によれば、生じた誘導起電力の大きさに基づいて所定の手押し又は手引きの有無を判断するので、安価で簡単に、所定の手押し又は手引きがあったかどうかを判断することができる。
【0014】
第3の手段によれば、誘導起電力の時間的変化の度合い基づいて手押し又は手引き回数を検出するので、安価で簡単に、所定の手押し又は手引きがあったかどうかを判断することができる。
【0015】
第4の手段によれば、処理制御部による制御の下で作動して車輪を回転させる第1のモータを備え、第1のモータのロータを回転させることにより誘導起電力を生じさせるので、誘導起電力を生じさせるだけの特別な手段を設ける必要がない。
【0016】
第5の手段によれば、車輪の一方向の回転により当該車輪の下方に突出して接地して当該車輪を浮かせるとともに、当該車輪の他方向の回転により当該車輪の下方から引っ込んで当該車輪を接地させる回動部材が設けられているので、左右の車輪を一方向に回転させて回動部材の接地点を中心にその場回転させる回転動作と、左右の車輪を他方向に回転させて直進動作を行わせることができ、面白みのある走行玩具が実現できる。
【0017】
第6の手段によれば、左右の車輪を独立に制御できるので、動作のバリエーションを増やすことができる。
【0018】
第7の手段によれば、手押し又は手引きによって動作するモードに加え外部操縦モードでも遊べるので、遊びの幅が拡がり、より興趣性の高い走行玩具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の走行玩具を上面側から見た斜視図である。
図2】第1実施形態の走行玩具を下面側から見た斜視図である。
図3】ボディ外板を取り除いた状態の自動車玩具の斜視図である。
図4】ボディ外板及び電池ボックス等を取り除いた状態の自動車玩具の斜視図である。
図5】モータと後輪との連結構造を示す分解斜視図である。
図6】モータ、歯車機構及びレバーを示す斜視図である。
図7】回動部材(レバー)の動作を説明するための側面図である。
図8】自動車玩具のその場回転の様子を示した側面図である。
図9】自動車玩具の機能構成を示すブロック図である。
図10】手引きの検出回路を示す回路図である。
図11】処理制御部の動作を示すフローチャートである。
図12】手引き回数と動作パターンとの対応付けを示す図表である。
図13】第2実施形態の走行玩具を上面側から見た斜視図である。
図14】第2実施形態の走行玩具を下面側から見た斜視図である。
図15】ボディ外板及び基板等を取り除いた状態の自動車玩具の斜視図である。
図16】モータと後輪との連結構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態の自動車玩具10を上面側から見た斜視図、図2は、第1実施形態の自動車玩具10を下面側から見た斜視図である。
この自動車玩具10では、後輪11が動輪で、前輪12が従輪となっている。また、この自動車玩具10の後部には鉤状部13が設けられている。この鉤状部13には所定のコインが着脱可能となっており、所定のコインを挟み込むことによって、前進方向の直進時にウィリー走行をさせることができる。
【0022】
図3は、ボディ外板を取り除いた状態の自動車玩具10の斜視図である。
同図に示すように自動車玩具10には電源となる2個のアルカリボタン電池14が電池ボックス15に2個搭載されている。
【0023】
図4は、ボディ外板及び電池ボックス15等を取り除いた状態の自動車玩具10の斜視図である。
同図に示すようにシャーシ17の上には基板18が設けられ、基板18にはICチップ等の電子部品や電気部品が取り付けられている。また、シャーシ17の後部にはモータMが設置されている。モータMは、歯車機構20を介して後輪11に連結されている。
【0024】
図5は、モータMと後輪11との連結構造を示す分解斜視図である。
左右の後輪11の各々は、ホイール11a及びタイヤ11bから構成され、ホイール11aにタイヤ11bが外嵌された構造となっている。各ホイール11aの中央には6角穴11cが形成され、その中心には円穴11dが形成されている。
そして、右側の後輪11の円穴11dには、車軸21の右側端部が嵌合されている。また、左側の後輪11の円穴11d(図示せず)には、車軸21の左側端部が嵌合されているとともに、左側の後輪11の6角穴11c(図示せず)には、車軸21に固定された後述の歯車20dと一体の6角柱状部22が嵌合されている。その際、歯車20dと左の車輪11との間には回動部材であるレバー23が挟み込まれる。
【0025】
図6は、モータM、歯車機構20及びレバー23を示す斜視図である。
レバー23には、中央部分に円穴23aが形成され、この円穴23aは上記6角柱状部22の外側に緩く嵌合されている。そして、レバー23は、車軸21を中心に所定範囲で回動可能に構成されている。そして、レバー23は、左の車輪11が回転する際に、歯車20d及び左の車輪11と間に働く摩擦によって所定範囲で当該車輪11と供回りする。
図7(A),(B)に示すように、レバー23の可動範囲は、上端部が、電池ボックス15に形成された鉤状のストッパ15aに当たる位置と、電池ボックス15に形成されたねじカバー15bとに当たる位置との間である。
また、レバー23の長さは、レバー23の上端部がストッパ15aに当たった位置でレバー23の下端部が左の後輪11よりも下方に突出して接地し、左の後輪11を浮かせることができる程度となっている。つまり、レバー23の下端部が当該後輪11よりも下方に突出し接地した状態では当該車輪11が非接地状態となり、左右の後輪11が後進方向に回転すると、図8に示すように、レバー23の接地点を中心に自動車玩具10が平面視で時計方向にその場で回転する。
なお、水平面に自動車玩具10が置かれた状態で、レバー23の上端部がストッパ15aに当たる位置にあるとき、レバー23の接地点は、車軸21を通る鉛直線よりも後方位置にあることが好ましい。レバー23の上端部がストッパ15aに当たる位置にある状態で、自動車玩具10を手引きする際に水平面に強く押し付けたときに、レバー23が非接地となる方向に回動するので、左の車輪11を接地状態とすることができるからである。なお、自動車玩具10を手引きする際に水平面に強く押し付けた際に、左の車輪11が接地状態となるように、レバー23が撓むように構成しておいてもよい。
【0026】
歯車機構20は、図6及び図7に示すように、モータMの出力軸に付設された歯車20aと、当該出力軸及び車軸21に平行な軸24に付設され歯車20aに噛合する歯車20bと、軸24に付設され歯車20bとともに2段歯車を構成する歯車20cと、車軸21に固定され歯車20cに噛合する歯車20dとから構成されている。これにより、モータ動力は歯車20a,20b,20c,20dを介して後輪11に伝達される。
その際、上述したように、レバー23は、歯車20d及び左の車輪11と間に働く摩擦によって車軸21を中心に当該車輪11と供回りする。
【0027】
〈機能構成〉
自動車玩具10は、図9に示すように、処理制御部30と、記憶部31と、検出部32と、モータ駆動部33とを備えている。
【0028】
処理制御部30は、中央処理装置及びその周辺回路を備えて構成されている。処理制御部30は、様々なプログラムを実行することにより、実施形態の自動車玩具10としての機能を実現する。
【0029】
記憶部31には、自動車玩具10の機能実現のために利用される様々な情報データが記憶されている。この情報データには処理制御部30が実行するプログラムデータ等が含まれている。この記憶部31には、処理制御部30がアクセス可能となっている。
【0030】
検出部32は自動車玩具10の手引きの有無を検出するためのものである。
図10には、検出部32を構成する検出回路が示されている。
検出回路は、具体的には、モータМのロータの回転に伴って生じる誘導起電力(電圧)を、コンデンサCと抵抗R1とからなる微分回路で時間微分する。そして、この出力電圧をPNPトランジスタTrのベースに印加すると、PNPトランジスタTrがオンしてエミッタとコレクタの間に電流が流れる。このときのコレクタ電圧に基づき発電の有無つまり所定の誘導起電力の発生の有無を検出する。そして、コレクタ電圧が所定値を超えたことを以て所定の手引きがあったとする。これにより、自動車玩具10の所定の手引きの有無が検出される。
すなわち、自動車玩具10の手引きを行う場合、手引きによって、自動車玩具10は始動直後に急激に増速され、速度がピークに至った後に減速されて停止するのが普通である。この場合、生じる誘導起電力の大きさは、この自動車玩具10の手引きの速度に応じて変化する。したがって、速度変化ひいては誘導起電力の時間的変化の度合いは、一般的には始動直後が特に大きくなり、その誘導起電力の時間的変化の度合いが所定値を超えたことを以て所定の手引きがなされたとされる。
なお、速度変化ひいては誘導起電力の時間的変化の度合いは、一般的には停止直前も特に大きくなるが、検出のための所定時間を超えて長く手引きしたときにその手引き回数がカウントされない場合があるので、始動直後の誘導起電力の時間的変化の度合いを検出することが好ましい。
この検出信号は処理制御部30に入力され、処理制御部30で所定時間、例えば5秒間での検出回数がカウントされる。
【0031】
モータ駆動部33は、手引き回数に応じ、第1動作パターン~第3動作パターンのいずれか1つの動作を実行させるためのモータ制御信号を処理制御部30から受ける。そして、モータ駆動部33は、そのモータ制御信号に応じて、所定時間モータMを正転又は逆転させる。
【0032】
図11は、処理制御部30の動作を示したフローチャートである。
メインスイッチSWで電源を投入した後、処理制御部30が検出部32から手引きの検出信号を受けると、処理制御部30は、計時及び計数を開始する。そして、処理制御部30は、所定時間(例えば5秒経過するまで)、手引き検出処理を実行する。この手引き検出処理は検出部32からの検出信号を受け付けるだけでなく、検出回数を計数する。このとき、計時及び計数を開始前の最初の手引きを1回とし、最大3回となるまで手引きの数を加算する。そして、処理制御部30は、計時から所定時間(例えば5秒)経過したならば、手引きの回数に応じて第1動作パターン~第3動作パターンの動作を実行させるためのモータ制御信号をモータ駆動部33に送る。
【0033】
図12は、手引き回数と動作パターンとの対応関係を示す図表である。
同図に示すように、所定時間内の手引き回数が1回の場合には、第1動作パターンの動作を実行させるためのモータ制御信号が処理制御部30からモータ駆動回路に送られ、左右の後輪11を所定時間前進方向に回転させる。これにより、自動車玩具10は所定時間前進方向に直進する。
【0034】
また、所定時間内の手引き回数が2回の場合には、第2動作パターンの動作を実行させるためのモータ制御信号が処理制御部30からモータ駆動回路に送られ、左右の後輪11を所定時間後進方向に回転させる。これにより、レバー23が左の後輪11の下に突出し、左の後輪11が浮き上がる一方で、右の後輪11が地面を蹴るので、レバー23の接地点を支点として、自動車玩具10は上方から見て時計方向に所定時間その場で回転する。
【0035】
さらに、所定時間内の手引き回数が3回の場合には、第3動作パターンの動作を実行させるためのモータ制御信号が処理制御部30からモータ駆動回路に送られ、先ず、左右の後輪11を所定時間前進方向に回転させた後、左右の後輪11を所定時間後進方向に回転させ、その後、左右の後輪11を所定時間前進方向に回転させる。これにより、自動車玩具10は所定時間前進方向に直進した後、レバー23の接地点を支点として、自動車玩具10は上方から見て時計方向に所定時間その場で回転し、その後に、自動車玩具10は所定時間前進方向に直進する。
【0036】
〈第1実施形態の効果〉
この第1実施形態の自動車玩具10によれば次のような主たる効果を得ることができる。
【0037】
第1実施形態の自動車玩具10によれば、遊戯者がした所定時間内における手押し又は手引きによって後輪11を回転させることにより誘電起電力を生じさせ、その誘導起電力を生じさせた回数に応じて、3つの動作パターンの中の所定の動作パターンの動作を選択的に実行させるので、遊戯者が手押し又は手引きの回数によって所望の動作パターンの選択を行うことができ、興趣性の高い自動車玩具が実現できる。
【0038】
また、誘導起電力の時間的変化の度合い基づいて手引き回数を検出するので、安価で簡単に回数を検出することができる。
【0039】
さらに、処理制御部30による制御の下で作動して後輪11を回転させるモータMのロータを回転させることにより誘導起電力を生じさせるので、誘導起電力を生じさせるだけの特別な手段を設ける必要がない。
【0040】
また、後輪11の後進方向の回転により当該後輪11の下方に突出して接地して当該後輪11を浮かせるとともに、当該後輪11の他方向の回転により当該後輪11の下方から引っ込んで当該後輪11を接地させるレバー23が設けられているので、左右の後輪11を後進方向に回転させてレバー23の接地点を中心にその場回転させる回転動作と、左右の後輪11を前進方向に回転させて直進動作を行わせることができ、面白みのある自動車玩具が実現できる。
【0041】
≪第2実施形態≫
図13は、第2実施形態の自動車玩具10Aを上面側から見た斜視図、図14は、第2実施形態の自動車玩具10Aを下面側から見た斜視図、図15は、ボディ外板及び基板等を取り除いた状態の自動車玩具10Aの斜視図である。
この第2実施形態の自動車玩具10Aが、第1実施形態の自動車玩具10と異なる点は、左右の後輪11がそれぞれ別のモータML,МRによって駆動される点、電源が充電池(リポバッテリ)となっており、USBポート4P(図14)を有し、充電可能となっている点である。
【0042】
この第2実施形態の自動車玩具10Aは、モータML,МRを備えている。
モータMLは左側の後輪11を駆動させるもので、図15に示すように、モータMLは歯車機構40Lを介して後輪11に連結されている。歯車機構40Lは、モータMLの出力軸に付設された歯車40La、当該出力軸及び車軸21に平行な軸41Lに付設された歯車40Lbと、軸41Lに付設され歯車40Lbとともに2段歯車を構成する歯車40Lcと、車軸21に空転可能に設けられ歯車40Lcに噛合し後輪11と一体的に回転する歯車40Ldとから構成されている。
一方、モータMRは右側の後輪11を駆動させるもので、モータMRは歯車機構40Rを介して後輪11に連結されている。歯車機構40Rは、モータMRの出力軸に付設された歯車40Ra、当該出力軸及び車軸21Rに平行な軸41Rに付設された歯車40Rbと、軸41Rに付設され歯車40Rbとともに2段歯車を構成する歯車40Rcと、車軸21に空転可能に設けられ歯車40Rcに噛合し後輪11と一体的に回転する歯車40Rdとから構成されている。
【0043】
この第2実施形態の自動車玩具10Aによれば、処理制御部30によってモータML又はモータMRが独立に制御可能となっている。また、モータML,MRの一方の回転に伴う発電を検出し、手引き回数を判定している。
【0044】
この第2実施形態の自動車玩具10Aによれば、左右のモータML又はモータMRが独立に制御可能となっているので、自動車玩具10Aを直進(前進、後進)させたり、その場回転(時計方向回転、反時計方向回転)させたりするだけでなく、自動車玩具10Aにカーブ走行や蛇行走行等させたりすることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、誘導起電力の時間的変化の度合い基づいて手引き回数を検出することとしたが、生じた誘導起電力の大きさによって、所定の手引き回数を検出することとしてもよい。
すなわち、自動車玩具10の手引きを行う場合、手引きによって、自動車玩具10は始動後に急激に増速され、速度がピークに至り、その後に減速されて停止する。また、生じる誘導起電力の大きさは、この自動車玩具10の手引きの速度に応じて変化する。したがって、誘導起電力の大きさつまり自動車玩具10の手引き速度が所定値を超えたことを以て所定の手引きがあったとすることができる。
【0047】
或いは、手引きよって回転する車軸等にカムを設けるとともに、当該カムの隣にリーフスイッチを設けて、リーフスイッチのON、OFFにより手引きを検出するようにしてもよい。
この場合、リーフスイッチのON、OFFが連続している間は1回の手引きが継続的に行われているとし、リーフスイッチのON、OFFが中断したときにその回の手引きが終了したと扱うことができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では、自動車玩具10を後方に向けて手引きし、その手引き回数に応じた動作パターンの動作をさせるようにしたが、自動車玩具10を前方に向けて手押しし、その手押し回数に応じた動作パターンの動作をさせるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、動作パターンの動作は後輪11の回転によってなされる動作であったが、例えば、動作パターンの動作に、前照灯を点灯又は点滅させたり、自動車玩具を電飾したりする発光動作、サイレン音や走行音を発する音声出力動作等他の動作が含まれていてもよい。「動作パターン」の動作は1つの動作から構成される場合と、いくつかの動作が組み合わされた複合的動作の場合とを含むことは言うまでもない。
【0050】
また、上記実施形態では、手引きの回数に応じて所定の動作パターンの動作を自動的に実行する場合について説明したが、自動車玩具に通信部を設けるとともに外部操縦モード用の動作パターンを記憶部に記憶させておき、専用コントローラや、所定のアプリをインストールした携帯端末等からの操作信号に基づき自動車玩具を動作させることもできる。
この場合、特に限定はされないが、コントローラや携帯端末の表示部に操作内容を直感的に認識可能な絵文字や矢印が表示され、その絵文字や矢印をタップすることで、自動車玩具を動作させるようにすることが好ましい。また、特に携帯端末よる外部操縦を行う場合で複合的動作を行わせるとき、表示部上に絵文字や矢印で表示された複数の動作の組み合わせや順序を絵文字や矢印を表示部上でスワイプ等して動かすことにより変更できるように構成することが好ましい。
【0051】
さらに、上記実施形態では、自動車玩具について説明したが、車輪で走行(手押し走行を含む)する走行玩具全てに本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 自動車玩具
10A 自動車玩具
11 後輪
20 歯車機構
21 車軸
21 軸
23 レバー(回動部材)
30 処理制御部
M モータ
ML,MR モータ
【要約】
【課題】 遊戯者が手押し又は手引きによって所望の動作をさせることができる走行玩具を提供すること。
【手段】 手押し又は手引きによる擦り付けによって車輪が回転可能に構成されるとともに、複数の動作パターンの動作を実行させる処理制御部を有する走行玩具において、所定時間内の手押し又は手引きの回数に応じて、前記複数の動作パターンの中の所定の動作パターンの動作を実行させる、ことを特徴とする。これにより。遊戯者がした所定時間内における所定の手押し又は手引きの回数によって所望の動作パターンの選択を行うことができ、興趣性の高い走行玩具が実現できる。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図12
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図16