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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ブランクの製造方法及びブランク
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20220914BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20220914BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20220914BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/816 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/822 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/802 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/804 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/811 20200101ALI20220914BHJP
   A61K 6/813 20200101ALI20220914BHJP
【FI】
C04B35/488
A61C13/083
A61C5/77
A61K6/818
A61K6/816
A61K6/822
A61K6/802
A61K6/804
A61K6/811
A61K6/813
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021507895
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019070826
(87)【国際公開番号】W WO2020035330
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】18189569.9
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】504013395
【氏名又は名称】デグデント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フォルクル,ローター
(72)【発明者】
【氏名】フェヒャー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】カッツナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ウーフナー,ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クランツ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲプハルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハイズマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルホルト,ハイナー
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,アンドレア
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0228223(US,A1)
【文献】国際公開第2017/114772(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/115529(WO,A1)
【文献】特表2019-510767(JP,A)
【文献】特開2012-180351(JP,A)
【文献】特表2019-515030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/488
A61C 13/083
A61C 5/77
A61K 6/818
A61K 6/816
A61K 6/822
A61K 6/802
A61K 6/804
A61K 6/811
A61K 6/813
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯冠、部分歯冠、ブリッジ、ベニヤ、又はアバットメントである歯科用修復物(42)を製造するための多層ブランク(40)であって、
異なる組成の1種以上のセラミック材料の、少なくとも1つの最下層(14)と1つの最上層とを有し、
これらの層は、少なくとも1種の第1着色酸化物を含有し、
第1着色酸化物は、Co、Mn、Ni、Cr群からの少なくとも1種の酸化物、又はそれらの混合物であり、最下層(14)における第1着色酸化物の割合A1が、0ppm<A1≦100ppmであり、最上層における第1着色酸化物の割合A2が、10ppm≦A2≦200ppmであり、かつA2>A1であり、
ブランクは、Pr、Bi、Er、Fe、Ti、V、Cu、Tb群からの少なくとも1種の第2着色酸化物を含有し、最下層(14)における第2着色酸化物の割合は、最上層におけるより高い、
多層ブランク。
【請求項2】
前記第1着色酸化物が、Co 、MnO 、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の多層ブランク。
【請求項3】
第1着色酸化物の割合が、最下層(14)から始まって層毎に高くなり、かつ/又は第2着色酸化物の割合が、最下層(14)から始まって層毎に低くなる、請求項1又は2に記載の多層ブランク。
【請求項4】
層の数が、2~7である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層ブランク。
【請求項5】
基材としてのセラミック材料が、酸化アルミニウム又は酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムであり、酸化イットリウムの割合が4.5~13.0重量%の範囲にあり、その割合は、最下層から最上層に向かって高くなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層ブランク。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層ブランク(40)の製造方法であって、
異なる組成の層(14,24)を層毎に型(10)に導入し、圧縮し、ついで、焼結し、個々の層は、少なくとも1種の着色酸化物を含有し、
第1着色酸化物として、Co、Mn、Ni、Cr群からの少なくとも1種の酸化物が、1つの着色酸化物として使用され、
第1着色酸化物を含有する最下層(14)における第1着色酸化物の割合は、第1着色酸化物を含有する最上層におけるより低く、
Pr、Er、Fe、Ti、V、Bi、Cu、Tb群からの少なくとも1種の酸化物は、第2着色酸化物として使用され、第2着色酸化物を含有する最下層における第2着色酸化物の割合は、最上層における割合より高い、
方法。
【請求項7】
層(14)を型(10)に導入した後、層の表面(18)を平滑化し、更なる層(24)を導入し、層の数に応じてこの手順を続け、更なる層(24)を導入する前に、先の層(14)の平滑化された表面(18)を、隆起及び窪みを形成するように構造化し、全ての層(14,24)を型(10)に導入した後に、それらの層をユニットとして圧縮する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Co、Mn又はこれらの混合物群からの酸化物が第1着色酸化物として使用される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
セラミック材料のために、又はセラミック材料として、Al 、TiO 、酸化ジルコニウム混晶群
【化2】

(式中、Meは、酸化物の形態で二価、三価又は四価のカチオン(n=2、3、4、及び0≦x≦1)として存在する金属である)並びに酸化ジルコニウムの正方晶及び/又は立方晶相
からの少なくとも1種の金属酸化物粉末が使用される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
セラミック材料として、酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウムが使用される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
最下層(14)が、象牙質領域のためのブランク(40)から製造される修復物(42)のために使用され、最上層が切端領域のために使用される、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、基材又はマトリックス材料としてのセラミック材料の最下層及び最上層を有する多層ブランク、特に、歯科用修復物の製造に使用されるブランクの製造方法であって、異なる組成の層を型に層毎に導入し、圧縮し、ついで、焼結し、個々の層が、少なくとも1種の着色酸化物、好ましくは、少なくとも2種の着色酸化物を含有する、方法に関する。
【0002】
また、本発明は、異なる組成のセラミック材料の少なくとも1つの最下層及び1つの最上層を含み、セラミック材料が、各層の基材又はマトリックス材料である、歯科用修復物、例えば、歯冠、部分歯冠、ブリッジ、ベニヤ、アバットメント、特に、解剖学的アバットメントの製造のための多層ブランクに関する。
【0003】
また、本発明の主題は、歯科用修復物である。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
対応する方法は、DE第102015122864号に開示されている。個々の層の間の連続的な移行を達成するために、中間層が、個々の層の間に形成され、隣接する層の材料の混合物を含有する。対応するブランクから製造された歯科用修復物は、底部層から始まる連続的に変化する半透明性を示す。
【0005】
EP第1900341号には、異なる色の多数の主層からなる多色成形体が開示されており、その間に異なる色の中間層が存在する。
【0006】
WO第2015/051095号のブランクは、色及び半透明性の両方が異なる少なくとも2つの層を有する。
【0007】
DE第102007011339号のセラミック塊のブロック体は、多数の層を有し、遷移領域において、得られる光学特性の変化の勾配は実質的に一定である。
【0008】
多層成形体は、WO第2010/010082号及びWO第2015/052080号に記載されており、これらの層は、異なる色及び半透明性を有する。
【0009】
多層ブランク全てに共通する特徴は、異なる配色/半透明性を達成することであり、この目的に使用される着色酸化物は、最下層又は底部層、すなわち、根元側に広がる層から最上層、すなわち、切端側に広がる層に向かって量が減少する。
【0010】
US第2017/0258563号は、セラミック材料製の多層ブランクの製造方法に関する。着色酸化物として、Co、Cr、Mn、Niを含む群からの元素を使用することができる。
【0011】
US第2016/0000538号は、歯科用補綴物を製造するためのジルコニアブロックの製造方法に関する。着色酸化物の割合が最も高いのは、最下層である。
【0012】
複数の層を有するジルコニアブランクが、US第2016/0228223号に開示されている。ジルコニア性の層は、異なるマンガン割合を含み、切端領域が最高のマンガン割合を有し、後続の層がより低い割合を有するように、層が提供される。
【0013】
DE第102015102864号は、異なる割合の着色酸化物を有する複数のセラミック層を有するブランクの製造方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的
本発明の目的は、美的要件を満たすことができ、歯の自然な外観に対応し又はほぼ対応する歯科用修復物を製造することができるブランクが利用可能になるように、冒頭で言及された種類の方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
この目的を達成するために、本明細書に記載された方法は更に発展され、第1着色酸化物として、Co、Mn、Ni、Cr群からの少なくとも1種の酸化物が、1つの着色酸化物として使用されるようにする。第1着色酸化物を含有する最下層における第1着色酸化物の割合は、第1着色酸化物を含有する最上層における割合より低く、Pr、Er、Fe、Ti、V、Bi、Cu、Tb群からの少なくとも1種の酸化物は、第2着色酸化物として使用され、第2着色酸化物を含有する最下層における第2着色酸化物の割合は、最上層における割合より高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の更なる詳細、利点及び特徴は、特許請求の範囲によってのみ提供されるものではなく、それらから引き出される特徴は、図面に示された好ましい実施態様の書き説明からも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、グリーン体の製造装置の模式図を示す。
図2図2は、ブランクの模式を示す。
図3図3は、ブランクから製造されるブリッジの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
層は、好ましくは、第1着色酸化物及び第2着色酸化物の形態の少なくとも2種の着色酸化物を有し、第2着色酸化物として、Pr、Er、Fe、Ti、V、Bi、Cu、Tb群からの少なくとも1種の酸化物が使用され、最下層におけるその割合は、最上層におけるより高い。
【0019】
最上層は、第1着色酸化物を含有する層である。最上層における第1着色酸化物の含量は、最下層におけるより多い。
【0020】
通常、最下層は、底部層であり、最上層は、上部層である。
【0021】
多層ブランクが製造される公知の方法とは異なり、灰色の金属酸化物が使用され、その割合は、最下層において最も低く、最上層において最も高い。その結果、従来技術と比較して、驚くべきことに、切端領域において、天然歯と同じか又はほぼ同じでより半透明で歯に似た外観を生じる。
【0022】
着色自体には、少なくとも1種の第2着色酸化物が、1本の歯又は歯群、すなわちブリッジの色に対応する色を達成するために、特定の層に使用される。第2着色酸化物の割合は、最下層、すなわち、根元側に広がる層から始まって層毎に低くなる。
【0023】
特に、Al、TiO、酸化ジルコニウム混晶群
【化1】

(式中、Meは、酸化物の形態で二価、三価又は四価のカチオン(n=2、3、4、及び0≦x≦1)として存在する金属である)
並びに酸化ジルコニウムの正方晶及び/又は立方晶相
からの少なくとも1種の金属酸化物粉末が、セラミック材料のために又はセラミック材料として使用される。同セラミック材料は、対応する層の基材又はマトリックス材料である。特に、酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウムが使用される。
【0024】
また、Alは、セラミック材料の基材又はマトリクス材料として強調される。
【0025】
酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウムは、特に、セラミック材料として使用される。同セラミック材料は、個々の層に関して、例えば、所望の強度値を達成するために、加えられる着色酸化物にかかわらず、その組成が異なる場合がある。
【0026】
に加えて又はYに代えて、酸化ジルコニウムの結晶相を安定化するために、MgO、CaO、CeO、ScO及びYbO群からの少なくとも1種の酸化物を使用することができる。
【0027】
が使用される場合には、4.5~13.0重量%で存在しなければならない。
【0028】
色が強く、自然な外観の歯科用補綴物は、対応するブランクから、特に、歯頸領域及び象牙質体に製造することができる。同時に、最上層、すなわち切端領域において、最下層と比較して、第1着色酸化物のより高い割合により、自然な切端領域が形成される。
【0029】
驚くべきことに、第1着色酸化物の灰色の着色にもかかわらず、切端領域は、従来技術による第1着色酸化物の割合が底部層又は最下層から上部層又は最上層に向かって低下する歯科用補綴物と比較して、より明るく、より半透明に見えることが見出された。
【0030】
特に、層を型に導入した後、層の表面を平滑化し、ついで、更なる層を導入し、層の数に従って、この手順を続けることが提供される。
【0031】
個々の層の導入に続けて、ついで、これらは、ユニットとして圧縮される。
【0032】
個々の層の間の連続的な移行を得るために、特に、最後の層の平滑化された表面が、更なる層の導入の前に隆起及び窪みを形成するように構造化されることが提供される。
【0033】
第1着色酸化物は、好ましくは、Co、Mn又はそれらの混合物群からの酸化物である。
【0034】
また、本発明の主題は、歯科用修復物、例えば、歯冠、部分歯冠、ブリッジ、ベニヤ、アバットメント、特に、歯冠を有するアバットメントとしての解剖学的アバットメントの製造のための多層ブランクであって、異なる組成の1種以上のセラミック材料の少なくとも1つの最下層及び1つの最上層を含み、層が、少なくとも1種の第1着色酸化物を含有し、第2着色酸化物を含有する最下層における第2着色酸化物の割合は、最上層における割合より高い、多層ブランクである。
【0035】
さらに、少なくとも一部の層は、Pr、Er、Fe、Ti、V、Bi、Cu、Tb群から好ましく選択される第2着色酸化物を有するべきである。最下層における第2着色酸化物の割合は、従来技術による最上層における割合より高い。
【0036】
特に、第1着色酸化物の割合は、最下層から始まって層毎に高くなり、第2着色酸化物の割合は、最下層又は第2着色酸化物を含有する層から始まって層毎に低くなる。
【0037】
例えば、最上層が第2着色酸化物を含有しない場合、又は多層ブランクの連続層が全て同じ割合の着色酸化物を有する場合、本発明から逸脱することは当然ない。それとは関わりなく、第1着色酸化物を含有する最下層における第1着色酸化物の割合は、第1着色酸化物を含有する最上層における第1着色酸化物の割合より低い。
【0038】
本発明は、特に、最下層における第1着色酸化物の割合A1が0ppm<A1≦100ppmであり、かつ/又は最上層における第1着色酸化物の割合A2が10ppm≦A2≦200ppmであり、A2>A1であることを特徴とする。
【0039】
特に、本発明は、第1着色酸化物の割合が層毎に連続的に変化することを提供する。
【0040】
層の数は、従来技術に従って選択することができる。特に、2~7層、好ましくは、3又は4層が提供される。
【0041】
本発明は、歯科用修復物、例えば、歯冠、部分歯冠、ブリッジ、ベニヤ、アバットメント、特に解剖学的アバットメントを特徴とする。該修復物は、少なくとも1つの根元側に広がる最下層と、切端側に広がる最上層と、好ましくは、これらの間に広がる少なくとも1つの中間層とを有し、これらの層は、最上層におけるより低い割合で、最下層に含有される少なくとも1種の第1着色酸化物を含有する。第1着色酸化物は、特に、Co、Mn、Mi、Cr群からの少なくとも1つの酸化物であり、CoもしくはMnO又はそれらの混合物が好ましい。
【0042】
歯科用修復物は、さらに、Pr、Er、Fe、Ti、V、Bi、Cu、Tb群からの第2色酸化物を含有しなければならない。最下層における割合は、最上層におけるより高い。
【0043】
歯科用修復物は、特に、セラミック材料として、酸化イットリウム(Y)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)及び/又は酸化セリウム(CeO)及び/又は酸化スカンジウム(ScO)及び/又は酸化イッテルビウム(YbO)、特に、酸化イットリウムが加えられた酸化ジルコニウムを含有しなければならない。最下層の材料は、室温で安定化された結晶形態の色及び/又は割合が最上層の材料とは異なる。
【0044】
ここから図面に切り替えて、図1を参照すると、歯科用修復物用ブランクがどのようにして製造されるかが純粋に原則として明らかになるであろう。このため、図1aによれば、第1セラミック材料が、プレス型10に充填され、この実施態様では、酸化イットリウム安定化二酸化ジルコニウムが、基材又はマトリックス材料として充填され、下記組成(重量%)を有することができる。
【0045】
HfO<3.0
Al<0.3
技術的に避けられない不純物<0.2(例えば、SiO、NaO)
4.5~13.0
第1着色酸化物としてのCo>0ppm~200ppm
第2着色酸化物としてのFe及びEr 2,000ppm~8,000ppm
ZrO=100%-(Y+Al+HfO+不可避の不純物+第1着色酸化物+第2着色酸化物)
【0046】
第1層14の導入後、その表面を平滑化し(図1a)、ついで、構造化する(図1b)。この目的のために、図面に従って、ジグザグ形状を有するエッジを有する平板要素16を使用することができる。平板要素16は、回転しながら表面18に入り込み、構造26を形成する。構造26は、隆起及び窪みにより、すなわち、要素16により、同心円状に広がる山と谷とからなる。
【0047】
一実施態様によれば、例えば、VITA色A3の歯を製造するために、第1着色酸化物の割合は、3~8ppmの範囲とすることができ、1種以上の第2着色酸化物の割合は、6,500ppm~7,000とすることができる。
【0048】
ついで、第2セラミック材料24を型10に導入する(図1c)。第2セラミック材料24は、第1及び第2着色酸化物を除き、第1層14のそれに対応するか又は異なることができる。特に、第2層の材料は、酸化イットリウムの割合に関して第1層14のセラミック材料とは異なるように提供される。また、第1着色酸化物と第2着色酸化物とにも差がある。Coの形態での第1着色酸化物の割合は、第1層14におけるより高い。特に、Coの割合は、15~20ppmの範囲にある。第2着色酸化物の割合は、第1層14と比較して低く、5,500~6,000ppmの範囲とすることができる。
【0049】
加えて、酸化イットリウムの割合は、最下層又は底部層から最上層又は上部層に向かって高くなる。
【0050】
値の範囲に関して、本発明の教示によれば、第2層における第1着色酸化物は、第1層14におけるより割合が高く、逆に、第2着色酸化物は、第1層14におけるより第2層24において割合が低いことに留意すべきである。
【0051】
ついで、第2層24の表面を平滑化し、対応する更なる層を適用することができるように構造化し、酸化物の割合を、第1着色酸化物が増加し、第2着色酸化物の割合が低くなるように、本発明の教示に従って選択する。
【0052】
最上層又は上部層において、第1着色酸化物の割合(例えば、この実施態様では、Coである)は、35ppm~45ppmとすることができ、第2着色酸化物の割合は、4,000ppm~5,000ppmとすることができる。
【0053】
一旦、全ての層が導入されると、それらをユニットとしてマトリクスに圧縮する(図1d)。圧縮(矢印30)を、例えば、1,000bar~2,000barの圧力で行うことができる。ついで、予備焼結を、例えば、800℃~1,000℃の温度で、例えば、100分~150分の期間行う。
【0054】
対応するブランク140は、セラミック材料に加えられた着色酸化物の結果として、図2に示されたように、色強度及び半透明性の段階的変化を示す。この実施態様において、ブランク140は、底部又は最下層142、中間層144及び上部又は最上層146を有する)。第1着色酸化物、例えば、Coの割合は、最下層142から最上層146の方向に高くなる。対照的に、第2着色酸化物の割合は、底部層(最下層142)から上部層(最上層146)の方向に低くなる。
【0055】
灰色の酸化コバルトの割合は、底部層から上部層の方向に、すなわち、象牙質領域から切端領域に向かって高くなるが、驚くべきことに、ブランクから製造される歯科用補綴物の切断領域において天然歯の切断領域に対応する半透明性を達成することができ、驚くべきことに、灰色の酸化コバルトは、切端領域をより明るく、より半透明にすることが見出された。
【0056】
歯科用補綴物、例えば、ブリッジ42は、現在、CAD/CAMプロセスで対応するブランク40から製造することができる。この目的で、ブリッジ42の下部領域が第1又は底部層14の領域に広がり、切端領域44が上部層に広がるように、ミリングプログラムが設計される。象牙質領域は、底部領域14に広がり、切端領域は、天然歯の半透明性に非常に近い半透明性を有する上部領域に広がる。
【0057】
酸化イットリウム含量の点で異なる酸化ジルコニウムの層が使用される場合には、その強度は、さらに影響される場合がある。このため、上部層中の酸化イットリウムの割合は、予備焼結後の立方晶相の割合が、正方晶相が90%を超えるべきである底部層14中の割合よりかなり高くなるように選択することができる。上部層では、立方晶相の割合は、30%~49%であるべきである。残部は、実質的に正方晶相である。
【0058】
これらの異なる結晶相は、底部層において酸化イットリウムの割合が4.5~7重量%の範囲にあり、上部層において7~13.0重量%の範囲にあり、第1層14における割合が上部層におけるより低いという点で達成される。
図1
図2
図3