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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/345 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
B41J2/345 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021509115
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011621
(87)【国際公開番号】W WO2020196078
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2019058660
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木口 真一
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043013(JP,A)
【文献】特開2003-200605(JP,A)
【文献】実開昭60-013767(JP,U)
【文献】特開2009-226671(JP,A)
【文献】米国特許第05745149(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置し、主走査方向に並ぶ複数の発熱部と、
前記基板上に位置し、前記複数の発熱部のぞれぞれと電気的に繋がる電極と、
前記基板上に位置し、前記電極と繋がるパッドと、
前記発熱部を駆動させる駆動ICと、
前記駆動ICと前記電極とを繋ぐワイヤと、を備え、
前記パッドを複数有し、少なくとも1つが、
前記ワイヤが接続される第1領域と、
複数のプローブがそれぞれ接続される第2領域と、を有するマルチパッドであり、
前記第2領域は、
第1のプローブが接続される第3領域と、
第2のプローブが接続される第4領域と、を有しており、
前記パッドは、
前記主走査方向に並ぶパッド列を、副走査方向に複数有しており、
前記発熱部の近くに位置するパッド列Aを構成する前記パッドは、前記マルチパッドであり、
前記発熱部から離れて位置するパッド列Bは、前記第1領域と、前記プローブの接続領域が1つであるシングルパッドである、サーマルヘッド。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に位置し、主走査方向に並ぶ複数の発熱部と、
前記基板上に位置し、前記複数の発熱部のぞれぞれと電気的に繋がる電極と、
前記基板上に位置し、前記電極と繋がるパッドと、
前記発熱部を駆動させる駆動ICと、
前記駆動ICと前記電極とを繋ぐワイヤと、を備え、
前記パッドを複数有し、少なくとも1つが、
前記ワイヤが接続される第1領域と、
複数のプローブがそれぞれ接続される第2領域と、を有するマルチパッドであり、
前記第2領域は、
第1のプローブが接続される第3領域と、
第2のプローブが接続される第4領域と、を有しており、
前記複数のパッドのそれぞれは、
副走査方向において、前記第3領域または前記第4領域の長さが、前記第1領域の長さよりも長い、サーマルヘッド。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に位置し、主走査方向に並ぶ複数の発熱部と、
前記基板上に位置し、前記複数の発熱部のぞれぞれと電気的に繋がる電極と、
前記基板上に位置し、前記電極と繋がるパッドと、
前記発熱部を駆動させる駆動ICと、
前記駆動ICと前記電極とを繋ぐワイヤと、を備え、
前記パッドを複数有し、少なくとも1つが、
前記ワイヤが接続される第1領域と、
複数のプローブがそれぞれ接続される第2領域と、を有するマルチパッドであり、
前記第2領域は、
第1のプローブが接続される第3領域と、
第2のプローブが接続される第4領域と、を有しており、
前記複数のパッドのそれぞれは、
前記第1領域と前記第4領域とが副走査方向に隣り合っており、
副走査方向において、前記第4領域の長さが、前記第3領域の長さよりも短い、サーマルヘッド。
【請求項4】
前記パッドは、
前記第1領域と前記第2領域とを接続する第1幅狭部と、
前記第3領域と前記第4領域とを接続する第2幅狭部と、を有しており、
副走査方向において、前記第1幅狭部の長さが、前記第2幅狭部の長さよりも長い、請求項またはに記載の、サーマルヘッド。
【請求項5】
請求項1~のうちいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備える、サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリあるいはビデオプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。例えば、基板と、複数の発熱部と、電極と、パッドと、駆動ICと、ワイヤとを備えるサーマルヘッドが知られている。複数の発熱部は、基板上に位置し、主走査方向に並んでいる。電極は、基板上に位置し、複数の発熱部のぞれぞれと電気的に繋がっている。パッドは、基板上に位置し、電極と繋がっている。駆動ICは、発熱部を駆動させる。ワイヤは、駆動ICと電極とを繋ぐ。また、このサーマルヘッドは、パッドが、ワイヤが接続される第1領域と、プローブが接続される第2領域とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-192847号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のサーマルヘッドは、基板と、複数の発熱部と、電極と、パッドと、駆動ICと、ワイヤと、を備える。複数の発熱部は、基板上に位置し、主走査方向に並ぶ。電極は、基板上に位置し、複数の発熱部のぞれぞれと電気的に繋がる。パッドは、基板上に位置し、電極と繋がる。駆動ICは、発熱部を駆動させる。ワイヤは、駆動ICと電極とを繋ぐ。また、本開示のサーマルヘッドは、パッドを複数有し、少なくとも1つが、ワイヤが接続される第1領域と、複数のプローブがそれぞれ接続される第2領域と、を有するマルチパッドである。前記第2領域は、第1のプローブが接続される第3領域と、第2のプローブが接続される第4領域と、を有している。
一例において、前記パッドは、前記主走査方向に並ぶパッド列を、副走査方向に複数有しており、前記発熱部の近くに位置するパッド列Aを構成する前記パッドは、前記マルチパッドであり、前記発熱部から離れて位置するパッド列Bは、前記第1領域と、前記プローブの接続領域が1つであるシングルパッドである。
一例において、前記複数のパッドのそれぞれは、副走査方向において、前記第3領域または前記第4領域の長さが、前記第1領域の長さよりも長い。
一例において、前記複数のパッドのそれぞれは、前記第1領域と前記第4領域とが副走査方向に隣り合っており、副走査方向において、前記第4領域の長さが、前記第3領域の長さよりも短い。
【0005】
本開示のサーマルプリンタは、上記に記載のサーマルヘッドと、発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のサーマルヘッドの概略を示す分解斜視図である。
図2図1に示すサーマルヘッドの平面図である。
図3図2に示すIII-III線断面図である。
図4図1に示すサーマルヘッド一部を拡大して示す平面図である。
図5図1に示すサーマルヘッドのパッドを拡大して示す平面図である。
図6】本開示のサーマルプリンタを示す概略を示す図である。
図7】他のサーマルヘッドの一部を拡大して示す平面図である。
図8】他のサーマルヘッドのパッドを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1~5を参照して説明する。図1は、サーマルヘッドX1の構成を概略的に示しており、保護層25、被覆層27、および被覆部材29を省略している。図2は、保護層25、被覆層27、被覆部材29、および封止部材12を省略して示している。また、個別電極19とマルチパッド16との位置関係の概略を示している。
【0008】
サーマルヘッドX1は、ヘッド基体3と、コネクタ31と、封止部材12と、放熱板1と、接着部材14とを備えている。サーマルヘッドX1は、放熱板1上に接着部材14を介してヘッド基体3が位置している。ヘッド基体3は、外部から電圧が印加されることにより、発熱部9を発熱させ記録媒体(不図示)に印画を行う。コネクタ31は、外部とヘッド基体3とを電気的に接続している。封止部材12は、コネクタ31とヘッド基体3とを接合している。放熱板1は、ヘッド基体3の熱を放熱する。接着部材14は、ヘッド基体3と放熱板1とを接着している。
【0009】
放熱板1は、直方体形状である。放熱板1上に基板7が位置している。放熱板1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料にて作製される。
【0010】
ヘッド基体3は、直方体形状である。ヘッド基体3の基板7上に、サーマルヘッドX1を構成する各部材が位置している。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印画を行う。
【0011】
コネクタ31は、ヘッド基体3に電気的に接続されており、ヘッド基体3と外部の電源とを電気的に接続している。コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、基板7の上下に位置し、基板7を狭持する。上側に配置されたコネクタピン8は、ヘッド基体3の端子2(図2参照)に電気的に繋がっている。
【0012】
封止部材12は、端子2、およびコネクタピン8が外部に露出しないように設けられている。封止部材12は、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により作製される。封止部材12は、コネクタ31とヘッド基体3との接合強度を向上させている。
【0013】
接着部材14は、放熱板1とヘッド基体3との間に位置しており、ヘッド基体3と放熱板1とを接合している。接着部材14は、両面テープ、あるいは樹脂性の接着剤を例示できる。
【0014】
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について、図2~5を用いて説明する。
【0015】
基板7は、直方体形状である。基板7は、一方の長辺7aと、他方の長辺7bと、一方の短辺7cと、他方の短辺7dとを有している。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって作製される。
【0016】
蓄熱層13は、基板7上に位置している。蓄熱層13は、下地部13aと隆起部13bとを有している。下地部13aは、基板7の上面の全域にわたって位置している、隆起部13bは、下地部13aから上方へ向けて突出している。
【0017】
隆起部13bは、一方の長辺7aに隣り合うように位置しており、主走査方向に沿って帯状に延びている。隆起部13bの副走査方向に沿った断面形状は、略半楕円である。隆起部13b上に発熱部9が位置することにより、記録媒体P(図参照)は、プラテンローラ50の押圧によって発熱部9上に位置する保護層25に良好に押し当てられる。下地部13aの厚みを例示すると、15~40μmである。隆起部13bの厚みを例示すると、15~90μmである。
【0018】
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、発熱部9の温度が低下しすぎることなく、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高める。蓄熱層13は、例えば、以下の方法で作製する。まず、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを作製する。次に、従来周知のスクリーン印刷等によって、ガラスペーストを基板7の上面に塗布し、これを焼成することで作製できる。
【0019】
電気抵抗層15は、基板7の上面および蓄熱層13の上面に位置する。電気抵抗層15上には、ヘッド基体3を構成する各種電極が位置する。電気抵抗層15は、ヘッド基体3を構成する各種電極と同形状にパターニングされている。電気抵抗層15は、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有し、各露出領域が発熱部9を構成する。複数の発熱部9は、隆起部13b上おいて主走査方向に並んでいる。
【0020】
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図2では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi~2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって作製される。発熱部9は、電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱する。
【0021】
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、複数の発熱部9と、コネクタ31とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の一方の長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。主配線部17dは、基板7の他方の長辺7bに沿って延びている。
【0022】
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分けており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11とを電気的に接続している。個別電極19の端部には、パッド4が設けられている。パッド4は、上方に配置された駆動IC11と、ワイヤ18を介して電気的に接続されている。
【0023】
複数のIC-コネクタ接続電極21は、信号電極21aと、グランド電極21bとを備えている。複数のIC-コネクタ接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC-コネクタ接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。信号電極21aは、駆動IC11に種々の信号を送っている。
【0024】
グランド電極21bは、個別電極19と、信号電極21aと、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲まれている。グランド電極21bは、0~1Vのグランド電位に保持されている。
【0025】
端子2は、共通電極17、個別電極19、IC-コネクタ接続電極21およびグランド電極21bをコネクタ31に接続するために、基板7の他方の長辺7b側に設けられている。端子2は、コネクタピン8に対応して位置しており、コネクタピン8と端子とが接続されている。
【0026】
複数のIC-IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。複数のIC-IC接続電極26は、それぞれIC-コネクタ接続電極21に対応するように位置しており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
【0027】
上記のヘッド基体3を構成する各種電極は、例えば、以下の方法で作製できる。まず、蓄熱層13上に、各々を構成する材料層を、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜形成技術によって順次積層する。次に、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより作製できる。なお、ヘッド基体3を構成する各種電極は、同じ工程によって同時に作製してもよい。
【0028】
駆動IC11は、図2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して位置している。駆動IC11は、個別電極19の他端部と、IC-コネクタ接続電極21の一端部とに、ワイヤ18にて接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。
【0029】
駆動IC11は、個別電極19、IC-IC接続電極26およびIC-コネクタ接続電極21に接続された状態で被覆部材29により封止されている。被覆部材29は、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂により作製できる。
【0030】
図3に示すように、基板7上に設けられた蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が位置する。
【0031】
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を封止する。保護層25は、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗からサーマルヘッドX1を保護する。
【0032】
保護層25は、SiN、SiO2、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて作製できる。保護層25は、単層で構成されてもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。保護層25は、スパッタリング法等あるいはスクリーン印刷等により作製できる。
【0033】
また、図3に示すように、基板7上には、共通電極17、個別電極19およびIC-コネクタ接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC-IC接続電極26およびIC-コネクタ接続電極21の大部分を被覆する。それにより、被覆層27は、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から各種電極を保護する機能を有する。
【0034】
コネクタ31とヘッド基体3とは、コネクタピン8、接合部材23、および封止部材12により固定されている。接合部材23は、端子とコネクタピン8との間に位置する。接合部材23は、例えば、半田、あるいは異方性導電接着剤等である。サーマルヘッドX1においては、接合部材23として半田を用いて説明する。
【0035】
なお、接合部材23と端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。なお、端子2とコネクタピン8との間においては、接合部材23は必ずしも設けなくてもよい。この場合、クリップ式のコネクタピン8を用いて、コネクタピン8で基板7を挟持することにより、端子2とコネクタピン8とを直接電気的に接続すればよい。
【0036】
封止部材12は、第1封止部材12aと第2封止部材12bとを有している。第1封止部材12aは基板7の上面に位置している。第2封止部材12bは基板7の側面および下面に位置している。第1封止部材12aは、コネクタピン8と各種電極とを封止するとともに、コネクタピン8と各種電極とを固定している。第2封止部材12bは、コネクタ31とヘッド基体3との接合を補強する。
【0037】
図4,5を用いてパッド4について詳細に説明する。
【0038】
パッド4は、第1領域E1と第2領域E2とを有するマルチパッド16である。以下、本実施形態では、パッド4をマルチパッド16として説明する。マルチパッド16は、個別電極19の端部に接続されており、個別電極19よりも基板7の他方の長辺7bに位置する。マルチパッド16は、ワイヤ18(図3参照)により駆動IC11と電気的に接続される。
【0039】
マルチパッド16は、主走査方向に並ぶパッド列4A~4Cを有している。パッド列4A~4Cは、副走査方向に並んでいる。パッド列4A~4Cは、発熱部9(図2参照)に近い側から、パッド列4A、パッド列4B、パッド列4Cの順に並んでいる。パッド列4A,4Bを構成するマルチパッド16は、主走査方向において、パッド列4Cを構成するマルチパッド16の間にそれぞれ位置している。
【0040】
図5に示すように、マルチパッド16は、第1領域E1と、第2領域E2と、第1幅狭部20と、第2幅狭部22とを有している。また、第2領域E2は、第3領域E3と第4領域E4とを有している。
【0041】
第1領域E1は、ワイヤ18が接続される領域である。第2領域E2は、複数のプローブがそれぞれ接続される領域である。本実施形態においては、2つのプローブがそれぞれ接続される第3領域E3と、第4領域E4とを有している。第3領域E3は、第1のプローブが接続される領域である。第4領域E4は、第2のプローブが接続される領域である。
【0042】
第1領域E1、第3領域E3、第4領域E4は、それぞれ平面視して矩形状である。第1領域E1、第3領域E3、第4領域E4の幅W1(主走査方向の長さ。以下同じ)は、例えば、40~110μmである。第1領域E1の長さL1(副走査方向の長さ。以下同じ)、第3領域E3の長さL3、および第4領域E4の長さL4は、例えば、50~150μmである。
【0043】
第1幅狭部20は、第1領域E1と第2領域E2とを接続する。より詳細には、第1幅狭部20は、第1領域E1と第4領域E4とを接続する。第2幅狭部22は、第3領域E3と第4領域E4とを接続する。第1幅狭部20および第2幅狭部22の幅W2は、第1領域E1および第2領域E2の幅W1よりも狭い。第1幅狭部20および第2幅狭部22の幅W2は、例えば、20~90μmである。第1幅狭部20の長さL5、第2幅狭部22の長さL6は、例えば、10~30μmである。
【0044】
マルチパッド16は、個別電極19に接続されている。マルチパッド16を構成する各部位は、個別電極19から、第2領域E2、第1幅狭部20、第1領域E1の順に位置している。より詳細には、マルチパッド16を構成する各部位は、個別電極19から、第3領域E3、第2幅狭部22、第4領域E4、第1幅狭部20、第1領域E1の順に位置している。
【0045】
そのため、マルチパッド16は、平面視して、第1幅狭部20および第2幅狭部22に対応する箇所が括れた形状である。換言すると、マルチパッド16は、第1幅狭部20および第2幅狭部22に対応する箇所に切欠きを有する。それにより、ワイヤ18、あるいはプローブを接続する際に、第1領域E1および第2領域E2を認識しやすくなる。すなわち、第1幅狭部20および第2幅狭部22をワイヤボンディング時、およびプロービング時のマーカとして使用できる。
【0046】
上述したように、第1幅狭部20および第2幅狭部22に対応する位置に切欠きを有するとみなすと、切欠きは、マルチパッド16の一方の長辺にのみ設けられている。それにより、マルチパッド16の面積が、切欠きにより小さくなりすぎず、ワイヤ18と第1領域E1との電気的な接続を安定させることができる。
【0047】
ここで、サーマルヘッドX1は、発熱部9の抵抗値測定、オープン/ショート検査、その他の電気的検査を行う際に、プロ―ブを第2領域E2に押し当てて行なっている。その際に、いわゆるプロ―ブ痕が第2領域E2上に生じる場合がある。
【0048】
近年では、サーマルヘッドX1の抵抗値管理の要求が高まっており、上記の検査が複数回行われる場合がある。例えば、第2領域E2が第3領域E3のみを有していた場合、第1プローブを第3領域E3に接続させて電気的検査を行い、続いて、第2プローブも第3領域E3に接続させて電気的検査を行うこととなる。この場合、同じ第3領域E3に複数回プローブが接続されることとなり、第3領域E3がめくれてパッド屑が生じる場合がある。
【0049】
これに対して、サーマルヘッドX1は、マルチパッド16が、ワイヤ18が接続される第1領域E1と、複数のプローブがそれぞれ接続される第2領域E2を有する。それにより、マルチパッド16は、ワイヤを接続する領域と、第1プローブを接続する領域と、第2プローブを接続する領域と、を別々に有することとなる。そのため、複数回の抵抗値測定、オープン/ショート検査、その他の電気的検査を行った場合においても、マルチパッド16にめくれが生じにくい。その結果、サーマルヘッドX1が破損しにくい。
【0050】
また、マルチパッド16は、第1領域E1が、第2領域E2よりも駆動IC11の近くに位置する。換言すると、第1領域E1は、第2領域E2よりも基板7の他方の長辺7b側に位置する。
【0051】
このような構成を有することにより、第1領域E1と駆動IC11との距離を短くすることができる。その結果、ワイヤ18の長さを短くできる。それゆえ、ワイヤ18の部材費を低減できる。また、ワイヤボンディングの作業時間を短くできる。
【0052】
また、マルチパッド16は、第4領域E4が、第3領域E3よりも第1領域E1側に位置していてもよい。このような構成を有することにより、第1プローブがサーマルヘッドX1の電気的検査を行い、第2プローブがサーマルヘッドX1の出荷前の抵抗値検査を行う場合に、抵抗値検査の精度を向上できる。
【0053】
次に、サーマルプリンタZ1について、図6を参照しつつ説明する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
【0055】
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図5の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pにインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
【0056】
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護層25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
【0057】
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
【0058】
サーマルプリンタZ1は、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
【0059】
図7を用いて、他の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同じ符号を付しており、以下同様とする。
【0060】
サーマルヘッドX2は、パッド4として、マルチパッド16とシングルパッド28とを有している。パッド列4Aは、マルチパッド16により構成されている。パッド列4B、4Cは、シングルパッド28により構成されている。
【0061】
シングルパッド28は、第1領域E1と、第2領域E2とを有している。第1領域E1は、ワイヤ18が接続される領域である。第2領域E2は、第2プローブが接続される領域である。すなわち、シングルパッド28の第2領域E2は、マルチパッド16の第4領域E4に相当する。シングルパッド28の第2領域E2は、プローブが接続される領域を1つのみ有する。そのため、シングルパッド28の長さは、マルチパッド16の長さよりも短い。
【0062】
サーマルヘッドX2は、パッド列4Aがマルチパッド16で構成されており、パッド列4B、4Cがシングルパッド28で構成されている。このような構成を有することにより、パッド列4B、4Cの副走査方向における長さを短くすることができる。その結果、パッド列4A、4Bを基板7の他方の長辺7bに近づけることができる。それにより、サーマルヘッドX2を小型化できる。また、ワイヤ18(図3参照)の長さを短くできる。それゆえ、ワイヤ18の部材費を低減できる。また、ワイヤボンディングの作業時間が短くなる。
【0063】
また、パッド列4Aがマルチパッド16で構成されていることにより、サーマルヘッドX1、第1プローブおよび第2プローブの接続を行うことができる。
【0064】
図8を用いて、マルチパッド316の別形態について説明する。
【0065】
マルチパッド316は、第1領域E1と、第2領域E2と、第1幅狭部20と、第2幅狭部22とを有している。また、第2領域E2は、第3領域E3と第4領域E4とを有している。
【0066】
第3領域E3の長さL3および第4領域E4の長さL4が、第1領域E1の長さL1よりも長い。第3領域E3の長さL3および第4領域E4の長さL4は、例えば、第1領域E1の長さL1の1.05~1.5倍である。
【0067】
第1幅狭部20の長さL5は、第2幅狭部22の長さL6よりも長い。第1幅狭部20の長さL5は、例えば、第2幅狭部22の長さL6の1.05~1.5倍である。
【0068】
マルチパッド316は、第1領域E1、第3領域E3、および第4領域E4の角部にC面24を有している。換言すると、第1領域E1、第3領域E3、および第4領域E4の角部が切り欠かれている。これにより、マルチパッド316が蓄熱層13(図3参照)から剥離しにくい。なお、C面24は、マルチパッド316の作製時の印刷マスクの設計により作製できる。
【0069】
マルチパッド316は、第3領域E3の長さL3および第4領域E4の長さL4が、第1領域E1の長さL1よりも長い。このような構成を有することにより、プローブの位置ずれに対して許容しやすくなる。すなわち、プローブに位置ずれが生じた場合においても、プローブと、第3領域E3および第4領域E4とが接続しやすい。
【0070】
なお、第3領域E3の長さL3および第4領域E4の長さL4が、第1領域E1の長さL1よりも長い例を示したが、第3領域E3の長さL3のみ第1領域E1の長さL1よりも長くてもよい。また、第4領域E4の長さL4のみ第1領域E1の長さL1よりも長くてもよい。
【0071】
また、図示していないが、第4領域E4の長さL4が、第3領域E3の長さL3よりも短くてもよい。このような構成を有することにより、第3領域E3を第1領域E1に近づけることができる。それにより、第1プロービング時における電気的検査の精度を向上できる。すなわち、第3領域E3で測定する電気抵抗値を、第1領域E1で測定する電気抵抗値に近づけることができ、検査の精度が向上する。
【0072】
この場合、第4領域E4の長さLは、例えば、第1領域E1の長さL1の1.05~1.5倍である。
【0073】
また、第1幅狭部20の長さL5が、第2幅狭部22の長さL6よりも長くてもよい。このような構成を有することにより、第1領域E1と第2領域E2との距離が遠くなる。それにより、プローブが第1領域E1に接触しにくくなり、マルチパッド316が破損しにくい。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。
【0075】
例えば、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。また、電気抵抗層15を共通電極17と個別電極19との間にのみ設けて発熱部9を形成してもよい。
【0076】
また、発熱部9が基板7上に形成された平面ヘッドを例示して説明したが、発熱部9が基板7の端面に設けられた端面ヘッドに本発明を用いてもよい。
【0077】
なお、封止部材12を、駆動IC11を被覆する被覆部材29と同じ材料により形成してもよい。その場合、被覆部材29を印刷する際に、封止部材12が形成される領域にも印刷して、被覆部材29と封止部材12とを同時に形成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
X1~X2 サーマルヘッド
Z1 サーマルプリンタ
1 放熱板
2 端子
3 ヘッド基体
4 パッド
7 基板
9 発熱部
11 駆動IC
12 封止部材
14 接着部材
16 マルチパッド
17 共通電極
18 ワイヤ
19 個別電極
20 第1幅狭部
21 IC-コネクタ接続電極
22 第2幅狭部
23 接合部材
24 C面
25 保護層
27 被覆層
28 シングルパッド
31 コネクタ
E1 第1領域
E2 第2領域
E3 第3領域
E4 第4領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8