(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】腱の垂直切開のための切断ツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3211 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
A61B17/3211
(21)【出願番号】P 2021514064
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2019057034
(87)【国際公開番号】W WO2020053684
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】102018000008555
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】カキック,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルベリッヒ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ルッキーニ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】パリーシ,ジャンルカ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05391169(US,A)
【文献】特表2014-519879(JP,A)
【文献】米国特許第00519879(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3211
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱の垂直切開のための切断ツールであって、
長手方向軸(2a)に沿って延在し且つ遠位端(2d)および近位端(2p)を有するシャフト(2)と、
複数のブレード(11、15)を有する、前記遠位端(2d)に近い切断ヘッド(9)と、を備え、
前記切断ヘッド(9)が、
使用構成において、前記シャフト(2)の前記長手方向軸(2a)の下に位置し、前記シャフト(2)の前記長手方向軸(2a)に平行な平面上にあり且つ前記長手方向軸(2a)に対して10°から20°の角度(α)だけ傾斜したカップリング(16)によって前記シャフトに接続され
、
前記切断ヘッド(9)がベースプレート(10)および上部ブレード(15)を備え、前記ベースプレート(10)から2つの半円形の側方ブレード(11)が突出し、前記ベースプレート(10)に直交し且つ互いに平行な平面に沿って延び、前記上部ブレード(15)は、前記ベースプレート(10)の上部エッジ(14)に沿って配置され、前記2つの側方ブレード(11)に直交する、切断ツール。
【請求項2】
前記2つの半円形の側方ブレード(11)および前記上部ブレード(15)がそれぞれ面取りされたエッジ(11b、15b)を有する、請求項
1に記載の切断ツール。
【請求項3】
前記切断ヘッド(9)が、使用構成において逆U字形の断面を有する、請求項
2に記載の切断ツール。
【請求項4】
前記シャフト(2)が前記切断ヘッド(9)と一体である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の切断ツール。
【請求項5】
前記切断ツールは把持
スリーブ(4)に結合することができる、請求項1から
4のいずれか1項に記載の切断ツール。
【請求項6】
前記シャフト(2)が、前記把持スリーブ(4)への安定した結合のためのノッチ(5)を有する、請求項
5に記載の切断ツール。
【請求項7】
前記シャフト(2)が、前記シャフト(2)と前記把持スリーブ(4)との間の相対回転を防止するために平坦な表面(6)を有する、請求項
5に記載の切断ツール。
【請求項8】
前記シャフト(2)が目盛りを刻んだスケール(7)を有する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の切断ツール。
【請求項9】
前記シャフト(2)が、前記把持
スリーブ(4)との正しい位置合わせおよび手術部位への前記
切断ツールの正しい挿入を支援するための配向インジケータ(8)を有する、請求項
5から
7のいずれか1項に記載の切断ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腱の垂直切開のための切断ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主題である切断ツールは、大腿四頭筋腱の垂直皮下切開を目的としており、知られているように、大腿四頭筋腱は、十字靭帯の再建に重要な利益をもたらす。
【0003】
実際、大腿四頭筋腱は他の腱よりも大きな直径に達することができ、その摘出部位は、例えば膝蓋腱と比較して低い罹患率を持ち、良好な生体力学的特性を持ち、ひずみや変形が起こり難いので、膝靭帯の再建に好ましい剛性プロファイルを持つ。
【0004】
大腿四頭筋腱を切断および取り除くための外科的技術は、膝蓋骨の上縁部の上方の皮膚切開を伴う。
【0005】
皮下切開後、大腿四頭筋腱を露出させるために、膝蓋前皮下包の層は長手方向に裂かれる。
【0006】
その後、十字靭帯の再建のための所望の幅の腱が、垂直切断ツールまたは腱ナイフで切開される。
【0007】
皮膚切開部を通して、垂直切開のための切断ツールは皮下位置で腱に適用され、移植のための所望の移植片の長さが達成されるまで、腱に近位に押し込まれる。したがって、腱は完全に切断されるのではなく、側部で切開される。
【0008】
手術の第2のステップは、腱自体の伸展軸に平行に、腱を水平に切断することを伴う。このステップでは、取り除かれる腱の部分が、第2の切断ツールによって、上下の周囲の軟組織から分離される。腱分離器としても知られている水平切開用のこの切断ツールは、取り除かれる腱/移植片の厚さを規定する。
【0009】
皮膚切開部を通して、水平切開用の切断ツールすなわち腱分離器は、腱の切開部に横方向に導入され、近位方向に前記同じ長さに沿って皮下に押し込まれ、腱の伸展方向に沿って、上部および下部で水平に腱を切断する。
【0010】
第3のステップは、腱の近位端を横方向に切り離すように適合された第3のツール(腱カッター)の再び皮下への挿入を伴い、ここで「近位」は患者を指す。
【0011】
最後に、腱の遠位端も切断され、その後取り除かれ、十字靭帯の再建に使用するために準備される。
【0012】
具体的には、本発明は、腱の垂直切開のための切断ツールに関し、したがって、手術の第1のパートで使用される切断ツールに関する。
【0013】
既知の外科的技術は、切開外科的処置を必要とし、使用されるツールは、腱自体を摘出するプロセスを困難にする。
【0014】
最新技術のいくつかは皮下に関する解決策を提供するが、それらはツールを使用する方法および設計のために依然として困難を示す。現在使用されているツールに見られる不利な点のいくつかは、制御されておらず且つ寸法的に不正確な採取につながる不安定な切断先端部を含む。一方、他のツールは、切断エッジの長方形の形状のため、切断抵抗がより大きい切断ヘッドを備える。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を克服する、腱の垂直切開のための切断ツールを提示することである。
【0016】
実際、本発明の目的の1つは、低侵襲であり、周囲の軟組織に損傷を与えることなく患者のための完全に安全な切断を確実にする、腱の垂直切開のための切断ツールを提案することである。
【0017】
さらに、本発明の目的は、外科医が使用しやすく、手術部位が外科医に良好な視認性を許容しないにもかかわらず迅速、安全、安定且つ正確な切断を可能にする、腱の垂直切開のための切断ツールを提案することである。
【0018】
本発明の別の目的は、腱自体の容易な摘出を可能にするだけでなく、手術後の美容的側面を維持することを可能にする、腱の垂直切開のための切断ツールを提案することである。
【0019】
これらおよび他の目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載されているように、腱を垂直切開するための切断ツールによって実質的に達成される。
概要
特に、第1の態様によれば、本発明は、腱の垂直切開のための切断ツールに関する。
【0020】
好ましくは、遠位端および近位端を有する、長手方向軸に沿って延びるシャフトが想定される。
【0021】
好ましくは、切断ツールはまた、複数のブレードを有する、前記遠位端の近くに配置された切断ヘッドを備える。
【0022】
有利には、切断ヘッドは、前記シャフトの長手方向軸に平行な平面上にあり、長手方向軸に対して10°から20°、好ましくは15°の角度で傾斜したカップリングによってシャフトに接続される。切断ヘッドの横たわっている面は、シャフトの横たわっている面に対してずれており、且つ平行である。
【0023】
切断ヘッドは、使用中、好ましくは、シャフトの長手方向軸の下に位置する。
【0024】
前記切断ヘッドは、好ましくは、ベースプレートおよび上部プレートを備え、ベースプレートから2つの半円形(または丸みを帯びた)側方ブレードが突出し、前記ベースプレートに対して直交し且つ互いに平行な平面に沿って延びており、上部プレートは、前記側方ブレードに直交し、前記切断ヘッドのベースプレートの上部エッジに沿って配置されている。
【0025】
好ましくは、半円形の側方ブレードおよび上部ブレードはそれぞれ、面取りされたエッジを有する。
【0026】
使用中、切断ヘッドは、好ましくは、逆U字形の断面を有する。
【0027】
シャフトは、好ましくは、前記切断ヘッドと一体である。
【0028】
シャフトは、好ましくは、外科医の把持を容易にするために把持スリーブに結合することができる。
【0029】
シャフトは、好ましくは、把持スリーブへの安定した結合のためのノッチを有する。
【0030】
シャフトはまた、好ましくは、シャフトと把持スリーブとの間の相対回転を回避するために、平坦な表面を有する。
【0031】
シャフトは、好ましくは、その長手方向の伸展に沿って目盛りを刻んだスケールを有する。
【0032】
シャフトは、好ましくは、把持スリーブとの正しい位置合わせおよび手術部位へのツールの正しい挿入を支援するための配向インジケータを有する。
【0033】
追加の特徴および利点は、本発明および従属請求項による、腱の垂直切開のための切断ツールの好ましいが排他的ではない実施形態の説明においてより詳細に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、例としてのみ提供される添付の図面を参照して、以下の詳細な説明によってより明確にされるであろう。
【
図1】本発明による腱の垂直切開のための切断ツールの斜視図を示す。
【
図2】
図1に示される切断ツールの一部の斜視図を示す。
【
図3】
図2に示されているように、本発明の主題である切断ツールの側面図である。
【
図4】
図2に示されているように、本発明の主題である切断ツールの上面図である。
【
図5】
図2に示されているように、本発明の主題である切断ツールの正面図である。
【
図6】製造ステップで示される、本発明の主題である切断ツールの部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上記の図において、番号1は、本発明による腱の垂直切開のための切断ツール全体を示す。
【0036】
示されている例では、ツール1は、大腿四頭筋腱がその解剖学的部位から取り除かれて十字靭帯の再建のために別の部位に移植される手術の実施中に使用されるのに適している。
【0037】
切断ツール1は、長手方向軸2aに沿って延在し且つ遠位端2dおよび近位端2pを有するシャフト2を備える。
【0038】
「遠位」および「近位」という用語は、外科医に対する近接を示す。したがって、「近位」端は外科医の手に最も近い端であり、「遠位」端は外科医の手から最も遠い端である。
【0039】
近位端2pは、切断ツール1のハンドルとして機能する把持スリーブ4に接続することができる。近位端2pの近くに、シャフト2は、シャフト2自体を把持スリーブ4のロック機構と安定して結合するためのノッチ5を有する。このようにして、結合後、把持スリーブ4とシャフト2との間の軸2aに沿った軸方向の滑りが防止される。
【0040】
さらに、近位端2pにおいて、シャフト2は、長手方向軸2a周りのシャフト2と把持スリーブ4自体との間の相対回転を回避するために、把持スリーブ4の内側の当接部と結合する平坦な切断面6を有する。
【0041】
シャフト2は、ツールの皮膚への挿入の深さに関する基準を持ち、どの深さまで切り込みを入れるかを知り、摘出物(harvesting)の長さ、したがって摘出される軟組織の長さの表示を持つように、側面2cの長手方向の伸展に沿って目盛りを刻んだスケール7を有する。
【0042】
近位端2pの近くに、把持スリーブ4との正しい位置合わせおよび手術部位内へのツール1の正しい挿入を支援するための配向インジケータ8もある。
【0043】
遠位端2dの近くに、切断ツール1はまた、複数のブレード11、15を有する切断ヘッド9を備える。
【0044】
具体的には、切断ヘッド9は、平坦な水平のベースプレート10を有し、その長手方向軸9aは、シャフト2の長手方向軸2aに平行である。
【0045】
切断ヘッド9は、2つの半円形または丸みを帯びた側方ブレード11を備え、これらの側方ブレード11は、互いに平行であり且つ長手方向軸2aに平行な平面に沿って延びる。これらの側方ブレード11は、
図1および2に示されるように、使用構成において下向きに、垂直方向に平面10から直角に突出している。
【0046】
円形の2つの側方ブレード11は、軟組織の細長いストリップ(strip)を切断するために、軟組織の垂直切断に適している。
【0047】
半円形の側方ブレード11は、面取りされたエッジ11bを有する。
【0048】
側方ブレード11の内面20間の距離は、採取される軟組織の所望の部分の幅を規定する。
【0049】
側方切断ブレード11の面取りされたエッジ11bと丸みを帯びた設計との組み合わせは、軟組織へのブレードの挿入を改善する。さらに、これらの設計の特徴は、軟組織の抵抗が減少するため、採取中のツールの前進(および後退)を大幅に改善する。
【0050】
他方、切り込みの高さは、側方ブレード11の高さによって、特に、各側方円形ブレード11の下部頂点12と切断ヘッド9の水平のベースプレート10の下面13との間の距離によって、規定される。
【0051】
切断ヘッド9はまた、ベースプレート10の遠位端10dに配置された上部エッジ14を有する。
【0052】
このエッジ14は、円形側方ブレード11に直交している。このエッジ14には、上部ブレード15があり、上部ブレード15も側方ブレード11に直交する。上部ブレード15はまた、面取りされたエッジ15bを有する。
【0053】
上部ブレード15およびその面取りされたプロファイルは、ツールが手術部位内で前進するときに軟組織の剥離並びにツールの挿入および前進を容易にする。
【0054】
言い換えれば、前部位置に配置されると、上部ブレード15の前部ベベルは、腱の上の軟組織を持ち上げるのを支援し、ツールのスライドを容易にする。ブレードの傾斜が外科医の労力をかけずに腱に徐々に影響を与えるからである。
【0055】
断面において、切断ヘッド9は、逆U字形を有する(使用中)。
【0056】
シャフト2は、遠位位置において、10°から20°、好ましくは15°の角度α、長手方向軸2aに対して傾斜したカップリング16を有する。
【0057】
このカップリング16は、シャフト2を切断ヘッド9に接続する。
【0058】
切断ヘッド9が接合されるカップリング16の傾斜を受けて、使用中、切断ヘッド9は、シャフト2の長手方向軸2aの下に位置する。
【0059】
長手方向軸2aに対する切断ヘッドの位置および傾斜は、膝蓋骨の上縁部へのツールの挿入および使用を容易にする。ずれた平面上のシャフト2および切断ヘッド9の位置は、切断中にシャフトが腱に接触しないことを確実にする。
【0060】
切断ヘッド9は、ツール自体の製造中にスロット18に挿入される突起17を有する。
【0061】
突起17はまた、切断ヘッド9の長手方向軸9aに対して、上記の角度αと同じ幅を有する角度Ωだけ、すなわち、10°から20°、好ましくは15°だけ傾斜している。
【0062】
次に、2つの部品がしっかりと結合され、その結果、シャフト2と切断ヘッド9が単一の分割できない本体となる。
【0063】
このタイプのカップリングは、切断ヘッド9をシャフト2とさらに安定させる。
【0064】
さらに、切断ヘッドが製造プロセスの終了前のようにシャフトから分離されて表されている
図6に見られるように、シャフト2は、遠位端2dに、ツール自体の安定性を高めるノーズ19を有する。安定性の向上は、ノーズ19が使用中に切断ヘッド9の堅固な垂直ストッパとして機能するためであり、切断ヘッド9とシャフト2との間の接続点で正確に動作する。
【0065】
使用中、切断ツール1は、軟組織を軸方向に採取するために、専用ハンドルまたは把持スリーブ4に軸方向に挿入される。
【0066】
ツール1の切断ブレードの先端部は、採取のために所望の軟組織に軸方向に挿入されなければならない。
【0067】
挿入されると、切断ツール1は、事前に規定された幅および高さで軟組織のストリップを横方向に切断するように、軟組織を通って進められなければならない。ツールは、シャフト2に配置された目盛りを刻んだスケール7を介して制御することができる、事前に確立された深さまで進められる。
【0068】
面取りされたエッジを備えた半円形の側方ブレード11は、軟組織へのより良い侵入を可能にし、順方向および逆方向の両方で遭遇する抵抗を少なくする。
【0069】
このツールで得られる利点は、切断ヘッドがシャフトにしっかりと接続された単一ユニット設計による、ツールのより良い取り扱いと安定性である。
【0070】
さらに、側方ブレードの円形形状は、軟組織の至るところで前後の切断を改善する。
【0071】
シャフトと切断ヘッドとの間のオフセット位置、およびカップリングとシャフトとの間の傾斜は、膝蓋骨の上縁部へのツールの挿入を容易にする。
【0072】
上部ブレードの遠位ベベルは、軟組織を剥離する能力が向上した結果として、ツールを前進させるのを支援する。
【0073】
このように、このツールは簡単に使用できる。ツールの滑らかさが増し、軟組織の剥離が容易になるので、手術の長さが大幅に短縮される。
【0074】
このように製造および設計されたツールは、腱の許容できない摘出の可能性を減らすことにより、切断の安定性を改善する。丸みを帯びた/円形のブレードおよびブレードの面取りされたエッジは、前後に切断する能力を高め、したがって、従来技術で遭遇する欠点を克服する。