(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】遠心機
(51)【国際特許分類】
B04B 13/00 20060101AFI20220914BHJP
B04B 15/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B04B13/00
B04B15/02
(21)【出願番号】P 2021543129
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037349
(87)【国際公開番号】W WO2021131216
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2019238146
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 賢
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-093588(JP,A)
【文献】特開2010-131585(JP,A)
【文献】特開平07-071769(JP,A)
【文献】特開平06-229561(JP,A)
【文献】特開2003-093230(JP,A)
【文献】特開2008-100140(JP,A)
【文献】特開2009-082836(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 13/00
B04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータを回転駆動するモータと、
ユーザが前記ロータの設定運転時間、前記モータの駆動開始指示を入力可能で、前記モータの運転状態を表示可能な入出力手段と、
前記駆動開始指示が前記入出力手段に入力されると前記モータの駆動を開始し、前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記制御部は、前記入出力手段によって入力された前記設定運転時間の遠心分離を行
った後に前記モータ
の駆動を停止して前記ロータを停止させる遠心機において、
前記制御部は、
前記ロータが停止してから時間のカウントを開始し、そのカウント時間を前記入出力手段に表示し、
前記時間のカウント中にユーザによる前記入出力手段の操作を検出すると、前記入出力手段による前記カウント時間の表示を消去することを特徴とする遠心機。
【請求項2】
ロータと、
前記ロータを収納する回転室と、
前記ロータを回転駆動するモータと、
前記回転室の開口部を塞ぐドアと、
前記ドアをロックするロック機構と、
ユーザが前記ロータの設定運転時間、前記モータの駆動開始指示を入力可能で、前記モータの運転状態を表示可能な入出力手段と、
前記駆動開始指示が前記入出力手段に入力されると前記モータの駆動を開始し、前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記制御部は、前記入出力手段によって入力された前記設定運転時間の遠心分離を行
った後に前記モータ
の駆動を停止して前記
ロータを停止させる遠心機において、
前記制御部は、
前記ロータが停止してから時間のカウントを開始
し、そのカウント時間を前記入出力手段に表示し、
前記時間のカウント中にユーザによる前記入出力手段の操作を検出すると、前記時間のカウントを停止すると共に、前記ロック機構による前記ロックの解除ボタンの操作が
できるようにすることを特徴とする請求項1に記載の遠心機。
【請求項3】
前記入出力手段はタッチ式のドットマトリクスディスプレイであって、前記ロータの設定運転時間、設定回転速度、前記ロータの設定温度を表示し、
前記制御部は、前記表示の内容に追加するか、前記表示の画面に重畳するようにして前記カウント時間を表示することを特徴とする請求項1
又は2のいずれか一項に記載の遠心機。
【請求項4】
前記入出力手段はセグメント方式の表示装置と、前記表示装置の表示内容を可変させる操作入力部の組み合わせであって、
前記表示装置には前記ロータの設定運転時間の表示欄が設けられ、
前記設定運転時間の経過後の前記時間のカウントは、前記設定運転時間の欄を通常とは異なる表示態様にてカウントアップ表示することによりおこなうことを特徴とする請求項1
又は2に記載の遠心機。
【請求項5】
前記制御部は記憶部を有し、前記制御部は前記モータが停止した終了時刻を前記記憶部に記憶し、前記記憶部に記憶した前記終了時刻を前記入出力手段に表示することができることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の遠心機。
【請求項6】
前記ロータを収容するボウルを有し、前記ボウルの上側開口部は開閉式のドアによって閉鎖されることによりロータ室が形成され、
前記ボウルを冷却する冷却装置を設け、
前記制御部は、前記時間のカウント及び前記カウント時間の前記入出力手段への表示をしている最中にも前記冷却装置を稼働させて前記ロータ室の温度を設定温度に維持することを特徴とする請求項3に記載の遠心機。
【請求項7】
携帯端末と通信可能な通信手段をさらに備え、
前記制御部は、前記通信手段を介して外部の携帯端末に前記カウント時間を送信して表示させることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の遠心機。
【請求項8】
前記ロータを収納し、前記ロータを出し入れするための開口部を有するロータ室と、前記開口部を開閉するドアと、を有し、
前記ドアが開かれると、前記制御部は前記入出力手段への前記カウント時間の表示を停止させることを特徴とする請求項1に記載の遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離運転の終了後の経過時間がひと目で確認できるようにした遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心機(遠心分離機)は分離するサンプルに合わせて、ユーザが回転数、運転時間(分離時間)、保持温度、加速勾配、減速勾配等の運転条件を設定して使用する。このため遠心機には設定した条件や実際の状態を表示させる表示部が設けられる。これらの表示は従来、7セグメントLEDを用いて構成するものから、タッチ液晶式のディスプレイを用いるものまで製品化され、遠心機の使い勝手を向上させるための様々な工夫が施されている。例えば特許文献1では、条件設定時および加速、減速時にはその遠心機が持つ機能がわかるよう多くの情報を表示し、加速、減速時間に比べ一般的に時間が長く、使用者が離れがちな回転整定中は遠心分離に必用な情報のみを表示する遠心機が開示されている。また、特許文献2には、表示部にプログラム運転状況を折れ線グラフで表示すると共に、ロータの回転が停止する到達予想時間が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-301029号公報
【文献】特開2015-116541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ユーザが遠心機から離れがちな整定中は、遠心機に必要な情報「設定回転速度」「設定温度」「設定時間」のみを表示するが、ユーザが運転開始の操作をしたか否かの判断は整定中であれば確認可能だが、運転終了時は初期操作画面に戻ってしまうため、遠心運転が終了している状態なのか、そもそも遠心運転の実行をしていなかったかの判断が画面上でできなかった。一方、特許文献2では、運転状況を示す折れ線グラフにおいて、運転が完了した部分はハッチングにて強調表示され、現在進行中の位置を示すインジケータが矢印にて表示されるので、状況を容易に確認することができる。しかしながら、特許文献2の技術を用いるためには、精細度の高いディスプレイを用いる必要がある。さらに、遠心機にリアルタイムクロック(RTC:real-time clock)を用いて、システムの電源が切られていてもバッテリバックアップなどにより「時刻」を刻み続ける必要があり、簡易な構成の遠心機に採用するには製造コストの上昇が避けられなかった。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、遠心機の運転を開始した直後にユーザが遠心機から離れ、その後戻った時に運転が停止していた場合に、遠心機の運転が正常に終了したのか、運転開始がされなかったのかを、ユーザが容易に判別できるようにした遠心機を提供することにある。
本発明の他の目的は、遠心機の内蔵タイマーを利用して、リアルタイムクロックを実装することなく運転終了後の経過時間がひと目で判るような機能を設けた遠心機を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、運転終了後にロータを取り出さずに長時間放置した場合であっても、ユーザが再度の運転が必要か否かを即座に判断できるようした遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、ロータと、ロータを回転駆動するモータと、ユーザがロータの設定運転時間、モータの駆動開始指示を入力可能で、モータの運転状態を表示可能な入出力手段と、駆動開始指示が入出力手段に入力されるとモータの駆動を開始するよう制御する、モータの駆動を制御する制御部と、を有し、制御部は入出力手段によって入力された設定運転時間の遠心分離を行う経過後にモータを停止させるようにした遠心機において、制御部は、ロータが停止してからの時間のカウントを開始し、そのカウント時間を入出力手段に表示するように構成した。また、制御部は時間のカウント中にユーザによる入出力手段の操作を検出すると、入出力手段によるカウント時間の表示を消去するか、又は、時間のカウントを停止する。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、入出力手段はタッチ式のドットマトリクスディスプレイであって、ロータの設定運転時間、設定回転速度、ロータ(又はロータ室)の設定温度を表示し、制御部は、表示の内容に追加するか、表示の画面に重畳するようにしてカウント時間を表示する。また、入出力手段はセグメント方式の表示装置と、表示装置の表示内容を可変させる操作入力部の組み合わせであって、表示装置にはロータの設定運転時間の表示欄が設けられ、設定運転時間の経過後の時間のカウントは、設定運転時間の欄を通常とは異なる表示態様にてカウントアップ表示する。さらに、制御部は記憶部を有し、制御部はモータが停止した終了時刻を記憶部に記憶し、記憶部に記憶した終了時刻を入出力手段に表示する。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、ロータを収容するボウルを有し、ボウルの上側開口部は開閉式のドアによって閉鎖されることによりロータ室が形成され、ボウルを冷却する冷却装置を設け、制御部は、時間のカウント及びカウント時間の入出力手段への表示をしている最中にも冷却装置を稼働させてロータ室の温度を設定温度に維持する。また、携帯端末と通信可能な通信手段をさらに備え、制御部は、通信手段を介して外部の携帯端末にカウント時間を送信して表示させるようにした。さらに遠心機は、ロータ室の開口部を開閉するドアが開かれるたら、制御部は入出力手段によるカウント時間の表示を停止させるように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記方法により、リアルタイムクロックを実装することなく安価に運転終了を判断できるように構成し、かつ運転終了後の経過時間がひと目で確認できるようにしたため、遠心機の使い勝手を大幅に向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る遠心機1の全体構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る遠心機1の制御手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例に係る操作パネル10の設定画面50を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係る操作パネル10の表示画面50Aを示す図である。
【
図5】本発明の実施例に係る操作パネル10の通知画面70を示す図である。
【
図6】本発明の実施例に係る操作パネル10の通知画面70Aを示す図である(その4)。
【
図7】本発明の実施例に係る操作パネル10の通知画面70A消去後の設定画面50Bを示す図である。
【
図9】遠心機1から携帯通信端末300に情報を送信している状態を示す図である。
【
図10】
図9の携帯通信端末300の画面301の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例に係る遠心機1の全体構造を示す断面図である。遠心機1は、箱形の板金などで製作される筐体2の内部に金属製の薄板で形成されたボウル3が設けられ、ボウル3とドア7によって回転室4が画定される。筐体2の底部には脚部11が設けられる。ドア7は回転室4の開口部を密閉するもので、筐体の一部に設けられる蝶番(図示せず)を中心軸にして上下方向に回動させることができる。ロータ5は分離する試料を保持し高速回転するものであり、モータ6の回転軸6aに装着される。モータ6は、商用交流電源を用いて駆動される交流モータ、又は、インバータ制御のブラシレスモータであり、ダンパ12を介してモータ6は筐体2の仕切り板2aに保持される。
【0013】
ドア7の右側方には、使用者がロータの回転速度や分離時間等の条件を入力すると共に、各種情報を表示する操作パネル10が配置される。操作パネル10は、遠心機に必要な制御情報を入力するための入力部となるものである。本実施例では、いわゆるタッチパネル方式の液晶ディスプレイを用いることにより、操作者に対して必要な情報を表示するための表示部としての機能も果たす。尚、操作パネル10はタッチパネル方式の液晶ディスプレイだけでなく、その他のドットマトリクス方式の入出力装置で構成しても良い。また、その他の公知の表示装置と公知の入力装置の組み合わせで構成しても良い。
【0014】
回転室4は、上側の開口部がドア7によって密閉可能に構成され、ドア7を開けた状態で回転室4の内部に、ロータ5を装着又は取り外しができる。ロータ5は、遠心分離を行う試料やそれを保持するサンプル容器に合わせて適宜選択され、モータ6の回転軸6aに装着される。制御装置8は遠心機1の全体を制御するもので、操作パネル10から入力される遠心分離運転のための各種情報に従って、モータ6の回転制御、冷却装置9の運転制御等を行う。
【0015】
ロータ5の温度は、回転室4に設置される図示しない温度センサにより測定される。温度センサを設ける位置は種々考えられるが、本実施例ではボウル3の底部に設けられる。温度センサの出力は制御装置8にて監視され、制御装置8は回転室4の温度をユーザによって入力された設定温度に保つように冷却装置9を稼働させる。
【0016】
ボウル3はステンレス等の金属合金製であり、その外周には図示しない銅パイプが螺旋状に巻かれる。銅パイプは冷却装置9の一部を構成するものであって、冷却装置9に含まれる圧縮機9aから銅パイプ9c通って冷媒が凝縮機9bに送られ、凝縮機9b及び図示しないファンによって、冷却された冷媒は液化する。液化した冷媒は図示しないキャピラリを通って銅パイプ9dに供給され、ボウル3の外周部に巻かれた部分において、ボウル3の表面の熱を急激に奪うことによって回転室4の内部を冷却する。ボウル3の熱を奪って気化した冷媒は、銅パイプ9eを通って圧縮機9aに戻る。このようにして回転室4の内部は、制御装置8の冷却装置9に対する制御によって設定された所望の温度に一定に保たれる。
【0017】
図2は、本実施例の遠心機1の制御手順を示すフローチャートである。
図2に示す一連の手順は、制御装置8にあらかじめ格納されたプログラムによってソフトウェア的に実行可能である。最初にユーザは、遠心分離対象を収容したロータ5を回転室4内にセットして、ドア7を閉めて、操作パネル10から遠心分離運転のための各種情報を入力する(ステップ21)。この各種情報とは、ロータ5の設定回転速度、設定温度、運転時間、加速度、減速度等である。
図1に示した遠心機1は、真空装置を有していないが、真空装置付きの遠心機の場合は、回転室4内の真空度を設定する。ここで、
図3を用いて操作パネル10に表示される遠心分離運転のための各種情報の設定画面50を説明する。
【0018】
図3は、ステップ21における操作パネル10における設定画面50を示す図である。この表示画面は、遠心機1の運転条件を設定した直後(スタートボタンを押す前)の状態である。設定画面50は、遠心機1の運転状態と運転条件(設定値)を表示するもので、その画面中には、遠心機の運転条件である回転速度表示領域51、運転時間表示領域54、温度表示領域57が設けられる。これら領域の周囲には、回転室4にセットされたロータ5の種類を表すロータ種別表示部60、ロータ5の加速度合いを示すACCEL表示部61、ロータ5の減速度合いを示すDECEL表示部62が設けられる。設定画面50の下側の右側部分には、遠心分離動作の開始を指示するためにアイコンとして表示されるスタートボタン63、ドア7を開くためのオープンボタン64が表示される。
【0019】
回転速度表示領域51はロータ5の回転速度に関する情報を表示するもので、中央の大きな数字“0”は、ロータ5の現在の回転速度52を示し、その下側の“SET ”に続く数字が設定(SET)された設定回転速度53である。
図3の例では遠心分離を行うための設定回転速度53として、毎分18,000回転(rpm)がセットされている。ユーザが回転速度表示領域51の枠内を指でタッチすると、図示しないテンキー画面がポップアップ表示されるので、使用者はテンキーを操作することにより設定回転速度53を設定できる。
【0020】
運転時間表示領域54はロータ5の運転時間に関する情報を表示するもので、中央の大きな数字は、ロータ5を設定回転速度53で運転された実際の運転時間(経過時間)55であり、時、分の単位で表示される。
図3では遠心分離を行う前の状態であってロータ5はまだ回転していないので、運転時間55は00分00秒の表示である。運転時間55は、制御装置8のマイコンに含まれるタイマー機能を用いて自動的にカウントされ、表示される。運転時間55の下側の“SET ”に続く数字は、使用者によって入力された遠心分離を行う時間たる設定運転時間56であり、
図3の例では遠心分離を行うための時間として、25分00秒が設定された状態を示している。回転速度表示領域51と同様に、ユーザが指で運転時間表示領域54の枠内をタッチすると、テンキー画面(図示せず)がポップアップ表示され、使用者がテンキーを操作することにより運転時間を設定できる。
【0021】
温度表示領域57は回転室4の内部の温度に関する情報を表示するもので、中央の大きな文字は、回転室4の現在の温度58であり、その下側の“SET ”に続く数字が、遠心分離を行う際に保持すべきロータ5の設定温度59である。
図3では、現在の温度58が20.0℃であり、設定された設定温度が4.0℃であることを示している。回転速度表示領域51と同様に、ユーザが指で温度表示領域57の枠内をタッチすると、テンキー画面(図示せず)がポップアップ表示され、使用者がテンキーを操作することにより運転時間を設定できる。
【0022】
ロータ種別表示部60は、運転するロータ5の型名の表示であり、
図3ではロータ5の型番である“TA18A41”が表示される。ロータ5の設定は、使用者がロータ種別表示部60の部分をタッチして、図示しないロータ一覧画面を表示させて、その一覧中から選択するように構成しても良いし、ロータ5自体に情報を持たせて、ロータ5が遠心機1にセットされたら、遠心機1側で自動的にロータ型番を識別するようにしても良い。ロータ型番の自動識別の方法は、ロータに光学式あるいは磁気式のIDコードを付けても良いし、その他公知の識別方法を用いれば良いので、ここでの説明は省略する。
【0023】
スタートボタン63は遠心機1の運転を開始させるボタンで、スタートボタン63にタッチすると制御装置8は、ロータ5を回転速度表示領域51で設定された設定回転速度53まで加速させて、ロータ5を設定回転速度53で回転(整定)させる。オープンボタン64は遠心機1のドア7を開くためのボタンで、オープンボタン64にタッチするとドア7の図示しないロック機構が解除される。
【0024】
再び
図2に戻る。ステップ21において遠心分離運転のための各種情報の入力が終了したら、ユーザは操作パネル10からスタートボタン63(
図3参照)を操作することによって遠心分離運転を開始する(ステップ22)。遠心分離運転手順は、例えば、ロータ5の加速-整定-減速を含むが、これらの運転制御手順は従来の遠心機と同じである。制御装置8は、遠心分離運転が終了したらステップ24に進み、終了していなかったらステップ22に戻る(ステップ23)。ここで、遠心分離運転が終了してロータ5が減速している際に操作パネル10に表示される表示画面50Aを
図4にて示す。
【0025】
図4では
図3で示した設定画面50のうち、必要な情報だけ、即ち、回転速度表示領域51、運転時間表示領域54、温度表示領域57の3つの表示領域だけが表示される。ロータ5は減速している最中であるので、表示画面50Aにはスタートボタン63(
図3参照)とオープンボタン64(
図3参照)は表示されない。ここでは、ロータ5の現在の回転速度52が300rpmまで減速されていることを示し、経過した運転時間55が00分00秒の表示である。ここで運転時間55は、遠心分離運転中にはカウントアップまたはアウンダウンされるが、
図4で示す状態では遠心分離運転が終了してロータ5が整定回転数(18,000rpm)から減速中であるので、ゼロに到達又はゼロクリアされている。遠心分離運転の終了後も冷却装置9は継続して稼動しており、回転室4内は一定に保たれるため、回転室4の現在温度58は4.0℃であって、設定温度59と等しく保たれる。冷却装置9はドア7を空けた後に停止するように制御装置8によって制御される。
【0026】
再び
図2に戻る。ステップ24以降は、遠心分離運転を終了してロータ5の回転が停止した後の制御である。ステップ24以降のステップ25及び26を実行するための前提として、本実施例の遠心機1においては、「遠心分離運転終了後に、操作パネル10上に、ユーザに対する特別な運転終了通知を行う」か「行わないか」を予め設定しておくことができるように構成される。この“運転終了通知”をすることは本実施例の特徴的な制御である。事前設定に基づいて制御装置8は、“運転終了通知”の(事前)設定がされているか否かを判定する(ステップ24)。事前設定がなされている場合は、制御装置8は「運転終了直後の表示画面」を行い、その表示画面中に,遠心分離運転が終了してからの経過時間を表示する(ステップ25)。事前設定がなされていない場合、即ち、遠心分離運転終了後に運転終了通知を行わないとの設定の場合は、ステップ24からステップ27に進む。ここで
図5を用いて運転終了直後の通知画面70を説明する。
【0027】
図5において通知画面70は、
図4のロータ5の停止直前の表示画面50Aに、経過時間表示を追加したものである。即ち、通知画面70の上方に、回転速度表示領域51、運転時間表示領域54、温度表示領域57の3つの表示領域を移動して、その下側に経過時間表示欄71と、その右側に、時間が経過したことを示す説明文(“have passed”)74を表示するようにした。
図5の状態は、
図4の表示画面50Aから
図5の通知画面70に切り替わった直後を示しているので、経過時間表示欄71に示される経過時間73には、“00:00:00”と表示されている。この経過時間73の上側には、その時間の単位を示す説明(“TIME h:m:s”)72が表示される。
【0028】
再び
図2に戻る。制御装置8は、ステップ25にて運転終了を示す通知画面70を表示したら、使用者による操作パネル10の何らかの操作(入力)があったか否かを判定し(ステップ26)、操作がなければステップ25に戻って、運転終了を示す通知画面70における経過時間73(
図5参照)の更新をする。「何らかの操作」とは、ユーザが遠心機1の前にいることを確認することができる操作であり、ここではユーザによる操作パネル10の任意のエリア、例えば、回転速度表示領域51、運転時間表示領域54、温度表示領域57のいずれかの領域に触れる操作を差す。ここで
図6を用いて更新後の通知画面70Aを説明する。
【0029】
図6で示す例は、
図5の表示がされてから15分放置され、この間にユーザによる操作がされなかった状態を示している。
図6の通知画面70Aは
図5の通知画面70と一点を除いて同じであり、経過時間73が
図5の“00:00:00”から、
図7の“00:15:00”にカウントアップされている点が異なる。この通知画面70Aを見ることによってユーザは、遠心分離運転が終了してから15分経過していることを即座に判別することができる。尚、
図5及び
図6においては、通知画面70、70Aをモノクロ表示しているが、操作パネル10としてカラー表示ができるタッチ入力式のディスプレイ装置を用いる場合は、カラー表示によって遠心分離運転が終了したことを示す態様で表示するようにしても良い。例えば、遠心分離運転が正常終了した場合は、画面全体または特定部位を青系の表示とし、遠心分離運転が異常停止した場合は、画面全体または特定部位を赤系の表示とすることである。さらに、正常終了の場合であっても、経過時間表示欄71の表示色を、経過時間が0~10分未満は緑色、10~20分は黄色、20分以上は赤色等のように表示態様を変えるように表示しても良い。
【0030】
再び
図2に戻る。制御装置8はステップ26にて使用者による操作パネル10の操作があった場合は、操作パネル10の表示を設定画面50Bに戻すことで、本実施例の制御を終了する。ここで
図7を用いて、ステップ26にて表示される設定画面50Bを説明する。
図7において設定画面50Bは、
図3で示した設定画面50と一部を除いて同じである。回転速度表示領域51の表示は、ロータ5の回転が停止しているので回転速度52は“0”である。運転時間表示領域54に示される運転時間55は、
図4~
図6と同じ“00:00”のままである。温度表示領域57に表示される現在の温度58は、4.0℃のままである。これは回転室4の内部にある遠心分離対象の冷却を続けているため、オープンボタン64が操作されてドア7の開閉が行われるまで冷却装置9が稼動しているためである。
【0031】
以上説明したように、制御装置8は運転終了直後の通知画面70に、表示画面50Aの内容に加えて、経過時間73を表示して、それをカウントアップするようにしたので、使用者は操作パネル10の表示から遠心機1の運転終了状態、特に「運転が終了したか否か」を確実に判断できる。また、経過時間表示欄71に経過時間73が具体的に表示され、ユーザが何らかの操作を行うまでその表示が継続されるので、特に痛みやすい遠心分離対象(試料)の場合に、試料の再度の遠心分離の必要性等を容易に判断することができる。
【実施例2】
【0032】
上述の第一の実施例では、遠心機1の運転終了からの経過時間を操作パネル10にて表示するようにした。しかしながら、運転終了からの経過時間を操作パネル10に表示するだけでなく、遠心機に外部の携帯端末と通信可能な通信手段を設けて、制御部が通信手段を介して外部の携帯端末にカウント時間を送信して表示させるように構成しても良い。この第2の実施例を
図8~
図10を用いて説明する。
【0033】
図8は、制御装置8の概略ブロック図である。制御装置8の内部には、データバス(BUS)130によって接続される中央処理装置121、通信インターフェース(I/F)124、無線LAN125、NFC等の近接通信手段126、USBインターフェース(I/F)134、及び記憶装置122を有する。制御装置8にはさらに、モータ6を駆動するためのモータ用インバータ131と、冷却装置のコンプレッサ118を駆動するためのコンプレッサ用インバータ132と、冷却装置の冷却ファン119を駆動する駆動回路135を有し、これらのモータの駆動は中央処理装置121によって制御される。制御装置8にはさらに、操作パネル10、スピーカー136、LANコネクタ138、及び、USBコネクタ137が接続される。その他、制御装置8の内部には図示しない電源装置、A/D変換器、D/A変換器等が含まれるが、
図8では本発明に関係する主要部分のみを記載し。その他の構成の図示及び説明は省略する。
【0034】
中央処理装置121は遠心機の運転データの生成、運転データの記憶、携帯通信端末300との通信機能を担うもので、マイクロコンピュータ等を含んで構成される。記憶装置122は遠心機1の制御プログラム、設定条件データ、運転データや監査証跡データ等を記憶するためのものであり、公知のハードディスク装置や半導体記憶装置等により構成される。操作パネル10はタッチパネル式の液晶表示装置で実現された入出力手段であって、ユーザが情報を入力するための入力手段としての機能と、ユーザに対して運転データや各種情報の表示を行うための表示手段としての機能を兼ねる。操作パネル10はデータバス130に接続される。本実施例では操作パネル10としてタッチパネル式の液晶表示装置を用いるが、これだけに限られずに、操作パネル自体を、中央処理装置付きのPDA(携帯情報端末)などで実現しても良い。
【0035】
通信インターフェース124は、有線によるネットワーク回線を介して外部の装置と通信をするための回路であって、公知のEthernet(登録商標)などの一般的な通信方式を用いるための回路で、公知のLANコネクタ138によりルーター等の外部機器に接続できる。無線LAN125は、無線によって外部の接続装置と通信をするための通信手段であって、外部の携帯通信端末300(例えばスマートフォン等)と接続し、操作パネル10に表示される情報のすべて又は一部の送受信を行なう。近接通信手段26は、ブルートゥース(登録商標)やNFC(近距離無線通信の国際標準規格)、BLE(Bluetooth Low Energy)等を使った公知の近接通信手段である。これらの構成によって、遠心機の中央処理装置121は、スマートフォンなどの携帯通信端末300と直接通信をすることができ、
図10に示すように遠心機から携帯通信端末300に運転が終了した旨のメッセージや、経過時間を送信して表示させることができる。
【0036】
図9は、遠心機1Aから携帯通信端末300に情報を送信している状態を示す図である。遠心機1Aは、筐体2Aの第一の実施例の筐体2の形状と異なり、操作パネル10の搭載位置も異なるが、それ以外の内部構成は、同様である。ここでは通信手段を用いて遠心機1Aの制御装置8は必要な情報を携帯通信端末300に送信する。携帯通信端末300側には、遠心機1Aからの情報を受け取って画面301に表示するための専用のアプリケーションソフト(“アプリ”)を予めインストールしておくことにより、受け取った情報のすべて又は一部を表示する。
【0037】
図10は
図9の携帯通信端末300の画面301の表示例を示す図である。携帯通信端末300を所有するユーザは、遠心機1Aの近くにいるとは限らず、遠心機1Aを視認できない場所にいることもある。そのため、遠心機1Aの運転が終了すると、遠心機1Aの制御装置8に含まれるマイコンは、運転を終了した旨の情報と、遠心機1Aの型名と、
図3及び
図6で示した情報を携帯通信端末300に送信する。携帯通信端末300は受け取った情報から必要と思われる情報を抜き出して画面301に表示する。
図10はその一例を示す図である。画面301には、“遠心分離運転が終了しました”という終了メッセージ302と、その下側に必要な情報、即ち、遠心機1Aの型名303(ここでは“CF18R”)と、ロータ型名304(ここでは“T18A41”)を表示する。これらのうち少なくても遠心機1Aの型名303(“CF18R”)を表示しないと、ユーザにはどの遠心機に対するメッセージなのかが判別できないためである。
【0038】
尚、ロータ型名304の表示は省略しても良いが、ユーザはロータ型名304を知らされることによって装着される試料容器のタイプや試料の内容等を識別しやすくなる。運転停止時間305は、遠心機の運転が終了したと、遠心機1Aからのメッセージを受け取った時間である。本実施例の遠心機1、1Aでは、遠心機にリアルタイムクロックが設けられていない場合もあるが、携帯通信端末300には必ずリアルタイムクロックが設けられる。よって、携帯通信端末300が、遠心機1Aから受け取った経過時間306がスタートした情報を受けると、遠心機1Aの運転停止時間305として表示することが可能となる。
【0039】
停止からの経過時間表示欄306には、
図5、
図6の通知画面70における経過時間73と同じ時間が表示される。この時間は遠心機1、1Aから所定間隔毎(例えば1分毎)に送信される。ここでは、遠心分離運転が終了してからの経過時間307が1時間10分20秒である例を示している。画面301の右下には“閉じる”と表示されたアイコン308が表示される。携帯通信端末30の所有者は、アイコン308をタッチすることによりこの画面を閉じて元の画面に戻ることができる。また、一度閉じたアプリを再び起動させることで
図10の画面301を再び表示させたり、表示履歴を表示させたりすることができる。画面301を再び表示する際には、経過時間306を再表示する時刻に合わせて更新して表示すると良い。
【0040】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では操作パネル10が入出力機能を有する液晶ディスプレイである場合で説明したが、押しボタンと、4方向スイッチ又はダイヤル等の入力手段と、セグメントLEDを用いた表示機構であっても実現可能である。セグメントLEDを用いる場合は、経過時間の表示欄を遅い点滅をさせながらカウントアップするようにすれば同様の機能を達成できる。
【符号の説明】
【0041】
1,1A…遠心機、2…筐体、2a…仕切り板、3…ボウル、4…回転室、5…ロータ、6…モータ、6a…回転軸、7…ドア、8…制御装置、9…冷却装置、9a…圧縮機、9b…凝縮機、9c~9e…銅パイプ、10…操作パネル、11…脚部、12…ダンパ、50…設定画面、50A…表示画面、50B…設定画面、51…回転速度表示領域、52…回転速度、53…設定回転速度、54…運転時間表示領域、55…運転時間、56…設定運転時間、57…温度表示領域、58…現在温度、59…設定温度、60…ロータ種別表示部、61…ACCEL表示部、62…DECEL表示部、63…スタートボタン、64…オープンボタン、70,70A…通知画面、71…経過時間表示欄、72…単位説明欄、73…経過時間、118…コンプレッサ、119…冷却ファン、121…中央処理装置、122…記憶装置(記憶部)、124…通信インターフェース、125…無線LAN、126…近接通信手段、130…データバス、131…モータ用インバータ、132…コンプレッサ用インバータ、134…USBインターフェース、135…駆動回路、136…スピーカー、137…USBコネクタ、138…LANコネクタ、300…携帯通信端末、301…画面、302…終了メッセージ、303…遠心機型名、304…ロータ型名、305…運転停止時間、306…経過時間表示欄、307…経過時間、308…アイコン