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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】遠心機用ロータ及び遠心機
(51)【国際特許分類】
   B04B 5/00 20060101AFI20220914BHJP
   B04B 1/00 20060101ALI20220914BHJP
   B04B 7/12 20060101ALI20220914BHJP
   B04B 11/02 20060101ALI20220914BHJP
   B04B 7/08 20060101ALI20220914BHJP
   B04B 7/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B04B5/00 Z
B04B1/00
B04B7/12
B04B11/02
B04B7/08
B04B7/06 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021558201
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037344
(87)【国際公開番号】W WO2021100333
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2019210149
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-128748(JP,U)
【文献】実開昭58-116061(JP,U)
【文献】特開2010-082567(JP,A)
【文献】特開2017-131873(JP,A)
【文献】米国特許第06713028(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
A61M 1/02
B01F 7/16
C12M 1/00
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に凹部を有するロータボディと、前記凹部内に配置されるロータコアと、前記ロータボディの開口を閉鎖するロータカバーを有し、駆動源により回転される遠心機用ロータであって、
前記ロータコアは、
円柱状の中実部と、中実部の上面から径方向外側に延在する円板部と、
前記ロータコアの上面であって、前記中実部から前記円板部にかけて連続するように形成される送液用溝と、
前記中実部の上面から下側に延びて、さらに径方向に延在するように形成された送液用孔を有し、
前記円板部の下面であって、前記円板部を軸線方向に見たときに前記送液用溝の位置と部分的にオーバーラップする位置に、応力緩和溝を形成したことを特徴とする遠心機用ロータ。
【請求項2】
前記ロータコアは樹脂または金属製の一体品であって、前記送液用溝の開口部分は前記ロータカバーの内壁に接することにより閉じられることを特徴とする請求項1に記載の遠心機用ロータ。
【請求項3】
前記応力緩和溝は、前記円板部の下面を内周側から外周側にかけて径方向に延在する溝であって、外周側の端部が前記円板部の外縁部に到達することを特徴とする請求項2に記載の遠心機用ロータ。
【請求項4】
前記送液用溝は周方向に等間隔で複数形成され、
前記応力緩和溝は、複数の前記送液用溝にそれぞれ対応するように形成されることを特徴とする請求項3に記載の遠心機用ロータ。
【請求項5】
前記送液用溝は、延在方向と直交する断面形状がU字状であり、
前記応力緩和溝は延在方向と直交する断面形状が長方形状、U字状、又はV字状であることを特徴とする請求項4に記載の遠心機用ロータ。
【請求項6】
前記円板部の板厚をT、前記送液用溝の深さDの場合、
前記応力緩和溝の深さDは、D+D<Tであることを特徴とする請求項5に記載の遠心機用ロータ。
【請求項7】
前記送液用溝のそれぞれに対して、前記応力緩和溝が周方向又は径方向に分散して複数形成されることを特徴とする請求項6に記載の遠心機用ロータ。
【請求項8】
前記中実部の外周面から径方向外側に延在するブレードが更に設けられ、前記ブレードは前記円板部に接続された鉛直板状であって、
前記円板部と、前記中実部と、前記ブレードが一体に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の遠心機用ロータ。
【請求項9】
前記中実部の上面の軸心には、軸方向上側に突出する円柱状の凸部が形成され、
前記送液用溝は、前記凸部の外周面を下方向に延びる4本の軸方向溝部と、前記軸方向溝部の下端から中実部の径方向外側に向けて延びる径方向溝部により構成されることを特徴とする請求項8に記載の遠心機用ロータ。
【請求項10】
前記送液用孔は、
前記凸部の上面の軸心に上側開口を有し、軸線方向に下方向に延在して、途中で径方向外側に向かい、前記中実部の外周面であって前記円板部の下面近くに開口する第1の送液用孔と、
前記第1の送液用孔の上側開口から径方向外側に隣接する位置に開口を有して軸線下方向に延在し、途中で径方向外側に向かって前記中実部の外周面に開口を有する第2の送液用孔を有することを特徴とする請求項9に記載の遠心機用ロータ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の遠心機用ロータと、
前記ロータカバーに取り付けられ前記凹部内に液体を供給及び排出させる流路が通る貫通口を有するドアアダプタと、
前記遠心機用ロータが回転するロータ室を画定するボウルと、
前記駆動源及び前記ボウルを保持するための筐体を有することを特徴とする遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転中に試料を機外から注入し、遠心分離した試料をロータの回転中に機外で回収する遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、分離すべき試料を保持するロータ(回転体)をロータ室(回転室)の中に収容し、ドアによってロータ室の開口部を密閉した状態で、モータ等の駆動装置を用いてロータを高速回転させることによって、ロータに保持された試料の分離、精製等を行う。通常の使用では、ロータが回転停止している時に分離する試料を試料容器に入れてロータに保持させ、ロータ室のドアを閉めてから駆動装置によってロータを回転させる。遠心分離運転が終了したら、ロータの回転を停止させて、ドアを開けて試料容器を取り出す。
【0003】
他の遠心分離の方法として、医学、薬学等の分野で使われるように、遠心機本体の機外からチューブを介して試料を連続的にロータに直接流し込んで分離する、いわゆる連続ロータを用いるものがある。連続ロータの構造例は、例えば特許文献1、特許文献2に示される。連続ロータを使用する場合には、遠心分離機本体の外部に試料を入れた試料容器を設け、その容器から遠心分離機本体のロータ室に設置されたロータまで延在するチューブによって試料流通路を形成し、ロータを回転させながら分離する試料を試料容器からロータへ連続して流し込む構造となる。
【0004】
連続ロータを使用する遠心分離機において試料チューブを遠心機本体の機外からロータ室へ導入するには、ロータ室内と外部を仕切るドアにアダプタを設ける。アダプタは回転中のロータの上部軸心付近から、ロータの内部空間に密度勾配液や試料等の液体の注入と排出を可能とする。ロータの形状は様々であるが、例えば蓋(ロータカバー)を有するお椀型として、その内部空間には、注入及び排出される液体が所定方向に流れるようにロータコアと呼ばれる部材が装着されるものがある。ロータコアの形状も様々なものがあるが、一例ではロータコアの上面をロータカバーに密着させ、上面に数カ所の中心軸心付近から径方向外側に放射状に延びる密度勾配液の送液用の溝が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭60-119946号公報
【文献】特開2010-82567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続ロータで用いるロータコアはロータの内部に配置され、ロータの内部空間に密度勾配液や試料等の液体で満たされた状態で高速回転されるため、ロータコアに形成された溝部分、例えば、上面に放射状に形成された送液用溝の、特定の箇所に遠心分離による液圧による応力が集中する。この応力は、ロータコアの溝部付近を変形させる方向に作用するため、ロータコアには応力に対応できる十分な強度が求められる。また、強度だけでなく繰り返しの使用に耐えられるようにして、ロータコアに十分な寿命を持たせることが重要である。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、ロータコアの上面に形成された送液用溝に加わる液圧による局部的に加わる応力を平均化して、ロータコアの変形を抑制するようにした遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機を提供することにある。
本発明の他の目的は、ロータコアの変形を抑制することにより寿命に十分な裕度を持たせた遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、内部に凹部を有するロータボディと、凹部内に配置されるロータコアと、ロータボディの開口を閉鎖するロータカバーを有し、駆動源により回転される遠心機用ロータであって、ロータコアは、円柱状の中実部と、中実部の上面から径方向外側に延在する円板部と、ロータコアの上面であって、中実部から円板部にかけて連続するように形成される送液用溝と、中実部の上面から下側に延びて、さらに径方向に延在するように形成された送液用孔を有し、円板部の下面に応力緩和溝を形成した。ロータコアは樹脂または金属製の一体品であって、送液用溝の上側開口部分はロータカバーの内側下壁に接することにより閉じられ、円板部を軸線方向に透視したときに、応力緩和溝は送液用溝の位置と部分的にオーバーラップするような部分に配置される。さらに、応力緩和溝は、円板部の下面を内周側から外周側にかけて径方向に直線上に延在する溝であって、外周側の端部が円板部の外縁部に到達するように形成される。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、送液用溝は周方向に等間隔で複数形成され、応力緩和溝は、複数の送液用溝にそれぞれ対応するように形成される。例えば、送液用溝は、延在方向と直交する断面形状がU字状であり、応力緩和溝は延在方向と直交する断面形状が長方形状、U字状、又はV字状である。また、円板部の板厚をT、送液用溝の深さDの場合、応力緩和溝の深さDは、D+D<Tの条件を満たすように構成される。このように、送液用溝のそれぞれに対して、応力緩和溝が周方向又は径方向に分散して複数形成される。さらに、中実部の外周面から径方向外側に延在するブレードが更に設けられる。これらブレードは円板部に接続された鉛直板状であって、中実部とブレードが一体又は別体式で形成される。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、中実部の上面の軸心には、軸方向上側に突出する円柱状の凸部が形成される。送液用溝は、凸部の外周面を下方向に延びる4本の軸方向溝部と、軸方向溝部の下端から中実部の径方向外側に向けて延びる径方向溝部により構成される。また、送液用孔は、凸部の上面の軸心に上側開口を有し、軸線方向に下方向に延在して途中で径方向外側に向かい、中実部の外周面であって円板部の下面近くで開口する第1の送液用孔と、第1の送液用孔の上側開口から径方向外側に隣接する位置に開口を有して軸線下方向に延在し、途中で径方向外側に向かって中実部の外周面で開口する第2の送液用孔を有する。以上のように構成された遠心機用ロータと、ロータカバーに取り付けられ凹部内に液体を供給及び排出させる流路が通る貫通口を有するドアアダプタと、遠心機用ロータが回転するロータ室を画定するボウルと、駆動源及びボウルを保持するための筐体等を用いて遠心機が構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータコアの径方向に延在する円板部の下面であって、送液用溝の位置と部分的にオーバーラップする位置に応力緩和溝を形成したので、コアの上面に形成された送液用溝よって局所的に加わる応力の集中を緩和させることができ、高速回転時のロータコアの変形を抑制することが可能となり、ロータコアの寿命を伸ばすことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の本実施例に係る遠心機1の全体構成図である。
図2図1のロータ20の拡大図である。
図3図2のロータコア40の斜め下から見た斜視図である。
図4図2のロータコア40の斜め上から見た斜視図である。
図5】(A)は図4のB部から見たロータコア40の円板部44の部分側面図であり、(B)(C)は、送液用溝152、52の応力を説明するための部分断面図である。
図6】遠心分離運転時の密度勾配液の送液状態を説明するためのロータ20の模式図である。
図7】遠心分離運転時の試料の送液状態を説明するためのロータ20の模式図である。
図8】遠心分離運転時の分離された試料の排出状態を説明するためのロータ20の模式図である。
図9】本実施例の変形例にかかる送液用溝を説明するための部分上面図と部分側面図である。
図10】本実施例の変形例にかかる送液用溝を説明するための部分上面図と部分断面図である。
図11】本実施例の変形例にかかる送液用溝を説明するための部分上面図と部分断面図である。
図12】従来の遠心機のロータコア140の図であり、(A)はロータコア140の斜め下から見た斜視図であり、(B)はロータコア140の斜め上から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、上下左右の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係る遠心機1の全体構造を示す断面図である。遠心機1は、箱形の板金などで製作される筐体2の内部が、仕切板13によって筐体2の内部空間が上室と下室に分割され、上室内に金属製の薄板で形成されたボウル3が設けられる。ボウル3の開口部はスライド式のドア18によって閉鎖することでロータ室4が画定される。ロータ20は分離する試料を回転中に出し入れ可能とした、いわゆる連続遠心分離用の回転体であって、駆動装置たるモータ9の回転軸10に取付けられる。モータ9はダンパー12を介して筐体2の一部を構成する仕切板13に固定される。筐体2の下側には脚部16が設けられる。
【0015】
ボウル3はステンレス、アルミ合金、銅合金などの材料で形成され、水平方向断面が略円形であって、上側に開口部を有する略カップ状の形状である。ボウル3の底面にはロータ室4を冷却してロータ20を設定温度に冷却(維持)するための冷却装置14が設けられる。ボウル3の外側に、肉厚が数mm~数十mmの金属製プロテクタ8が配置される。
【0016】
モータ9の回転軸10の上端には、クラウン11が設けられ、クラウン11にロータ20の回転軸穴25が係合するように載置される。筐体2の内部には、モータ9の運転などを制御する制御装置15が配置される。制御装置15には、マイクロプロセッサが含まれ、コンピュータプログラムを実行することによってモータ9の回転制御、冷却装置14の運転制御、密度勾配液や試料等の送液及び排出制御を行う。筐体2の上面には、図示してしない液晶ディスプレイ等の表示装置が設けられる。
【0017】
ロータ20の上側には、内部にシールボディを収容したドアアダプタ70が配置される。ドアアダプタ70は回転しない部材であり、シールボディ71を含むシールアタッチメントをドア18の貫通穴18aにて支持する。シールボディ71には、試料出入口72、密度勾配液入口73、冷却水用の配管の水出口74が設けられる。ここでは図示していないが、試料出入口72には試料を送液し、試料と密度勾配液を排出するための図示しないチューブが接続され、密度勾配液入口73には密度勾配液を送液するためのチューブが接続される。水出口74は、図示しないシールボディクミを冷却する冷却水を循環させるための図示しないチューブが接続される。
【0018】
ロータ20は、分離を目的とする試料を収容し、モータ9によって回転駆動されることによって試料を径方向に層を成すように分離する。ロータボディ21は椀形であって、椀形の外周の上端部に雄ねじが形成され、底面には回転軸10の先端(上端)に固定されるクラウン11に装着される回転軸穴25が形成される。ロータボディ21の上側の開口から内側に窪む凹部22の内側にはコア(ロータコア40)が配設され、開口がカバー30で閉鎖される。ロータコア40は、分離室24を上方からみて扇形に4つに分割するような隔壁たるブレード58(後述する図2図4参照)を有する。
【0019】
カバー30は、ロータボディ21の雄ねじに締結する雌ねじを有し、椀形のロータボディ21の開放部を塞ぐことによって、試料を収容し、カバー30とロータボディ21とによって、分離室24(符号は図2参照)を閉鎖する。本実施例の遠心機1は、いわゆる連続遠心分離用のロータ20だけでなく、一般的なアングルロータやスイングロータを用いることもできる。アングルロータは、周方向に複数の試験容器を装着する装着穴を有するもので、アングルロータをクラウン11に装着する場合は、図1に示すドアアダプタ70を取りはずし、ドア18の貫通穴18aを閉鎖する。
【0020】
図2はロータ20の拡大図である。ロータ20は、椀形のロータボディ21と、分離室(収容部)24の所定の径方向及び軸方向位置に送液を導き、措定の径方向及び軸方向位置から液体を吸引するためのロータコア40と、ロータボディ21の上部開口を閉鎖するカバー30によって構成される。ロータボディ21は、チタン合金等の金属の一体成形によって形成されたもので、ロータボディ21の上部開口部の外周部に雄ねじ(図示せず)が形成され、底面にはクラウンに装着される回転軸穴25が形成される。
【0021】
カバー30はチタン合金等の金属の一体品であって、ロータボディ21の開口面と同一面となる円板面31と、円板面31の外縁部から下方に延在する円筒面32によって構成される。円筒面32の内周側には、ロータボディ21側に形成された雄ねじに締結する雌ねじが形成され、カバー30が椀形のロータボディ21の開放部を塞ぐことによって、試料を収容し、カバー30とロータボディ21の内部空間に試料の分離室24を形成する。カバー30とロータボディ21の接合部にはシールパッキン28が設けられ、密閉性を高めている。更にカバー30の中心軸部に。シャフト35を挿入するための貫通穴30aが形成される。シャフト35は、カバー30に図示しないナットによって固定される。その内管の外側に外管が形成された二重の管路となっており、内側の管路はロータコア40の中心軸孔45に連結され、外側の管路は、カバー30の中心軸線上の下面側に形成された上下反対向きの漏斗状に形成された逆漏斗状流路部34と連通する通路となる。逆漏斗状流路部34は、密度勾配液やバッファ液等の送排出用の通路の一部となる。
【0022】
ロータコア40は、略円筒状の中実部41と、中実部41の上面と同一面にて径方向外側にフランジ状に延在する環状の円板部44によって主に構成される。これらは合成樹脂や金属の一体成形により製造される。中実部41は完全な円柱状でなく、その直径は上側から下側に向かうにつれ外径がやや小さくなるように形成される。ロータコア40の上面中心部には、上側に凸状に突出する円柱状の凸部43が形成され、カバー30に形成された円柱状の窪み部分(凹部37)に係合する。ロータコア40の下面中心部には、上側に凸状に窪む凹部42aが形成され、ロータボディ21の底面中心軸付近に形成された上側に突出する凸部23と係合する。凹部42aと凸部23の間には、Oリング27が介在され、矢印45cで示す中心軸45の下端から段差部42の下側に液が漏れないようにシールしている。
【0023】
ロータコア40の上面には径方向延在する送液用の送液用溝(径方向溝)52が形成される。送液用溝52の外周側端部は、ロータボディ21の凹部の内壁面にほぼ到達する位置まで延びている。送液用溝52は円板部44の上面側に形成されるが、送液用溝52の位置に対応する円板部44の下面側には、応力緩和溝57が形成される。
【0024】
ロータコア40の回転軸線A1と同心状に中心軸孔45が形成される。中心軸孔45は、ロータコア40の上面の矢印45aの位置から下面の矢印45cの位置まで貫通するようにドリルによって形成される。さらに、ロータコア40の下面において、矢印46aで示す位置付近から中心軸孔45の途中の矢印45bの位置まで斜めに径方向孔46が形成される。径方向孔46は、周方向に90度ずつ隔てるように等間隔で合計4本形成される(断面位置の関係から図2では2本しか見えない)。径方向孔46も中心軸孔45と同様にドリルにて形成することができる。
【0025】
周方向の配置位置が異なるため図2の縦断面位置では見えないが、ロータコア40には凸部43の上面から、矢印41bで示す中実部41の上端付近とを連通する略L字状の貫通孔47(図7で模式的に示す)が形成される。
【0026】
図3はロータコア40を斜め下から見た斜視図である。ロータコア40は試料や密度勾配液のロータボディ21内における通路を形成するために設けられるもので、合成樹脂や金属の一体成形により製造される。ロータコア40に形成される4枚のブレード58は、分離室24(図2参照)内の試料、密度勾配液の乱れを防止するために形成される。円板部44の外縁部分には、送液用の径方向溝52の出口開口が露出する。径方向溝52から径方向外側に向けて送出される液体が、下側空間に効果的に流れるように、円板部44の径方向溝52の開口付近は、内側に円弧状にやや窪ませた窪み部56が形成される。この窪み部56を形成したことによって、窪み部56以外の円板部44の外周面がロータボディ21の内周側壁面と密接しても流路を制限することはない。L字状孔47の開口47aは、矢印41bに示すような中実部41の上端付近であって、円板部44の直下に位置づけられる。このL字状孔47の他方側の開口は、ロータコア40の上面の中心軸上に形成された凸部43(図2参照)の上面に開口する。
【0027】
ロータコア40の中実部41の下面には、中心軸孔45(図2参照)と連通する径方向孔46の開口46aが形成される。図2の断面図で示したように径方向孔46は水平ではなくて斜めに形成され、回転軸線A1に近づくにつれて上方向になるように斜めに形成される。4カ所の開口46aとロータボディ21(図2参照)の底面が密着すると、液体が流れないので、中実部41の底面の外縁側とロータボディ21の間に隙間を有するように、中実部の下側にはわずかに下側に突出させた段差部42が形成される。このように段差部42を形成したことによって、径方向孔46を使用する第1の送液用孔によって、試料が分離室24(図2参照)内にスムーズに流入又は排出できるように構成される。尚、径方向孔46は第1の送液用孔であり、L字状孔47は第2の送液用孔であり、互いに独立した流路である。
【0028】
ここで、図12を用いて従来のロータコア140の形状を説明する。従来のロータコア140は、中実部141と、その上面から径方向外側に延在する円板部144が形成される。また、中実部141の外周面にはチタン合金製のチタンスリーブ160が装着される。チタンスリーブ160の外周側には、合成樹脂例のブレード(図示せず)が装着され、全体形状としては図3で示した本実施例のロータコア40と同様の形状となる。チタンスリーブ160を用いるのは、中実部141を補強するもので、中実部141にはめ込んで使用する。チタンスリーブ160の外周側には、図示しない合成樹脂製のブレードが装着可能である。図示しないブレードは、図3で示したブレード58とほぼ同様の形状になる。従来のロータコア140にも、図3で示したのと同じ第1の送液用孔(径方向孔146)と、第2の送液用孔(L字状孔147)が形成される。また、中実部141と円板部144の上面144aには、径方向に延在する4本の送液用溝152が形成される。中実部141の上面中央には、凸部143が形成されるが、この形状や形成される孔や溝の位置は、図2及び図3で示すものと同じである。しかしながら、図12(B)で明らかなように、円板部144の下面144bは平坦であって、溝や窪みが一切形成されていない。
【0029】
再び図3に戻る。図12に示した従来のロータコア140と違う点は、ブレード58もロータコア40に含めて一体成形すると共に、円板部44の下面に応力緩和溝57を形成したことである。応力緩和溝57は、円板部44の上面に形成される送液用溝52の下側に形成されるものである。応力緩和溝57は軸線A1方向に見て、送液用溝52の形成される位置と部分的に重なるように配置される。また、応力緩和溝57の径方向外側端部は、窪み部56にて開口する。応力緩和溝57の径方向内側端部は、矢印57aに示すように球面状になめらかなエッジ部分を形成し、特定の変曲点に応力が集中することを極力避けている。
【0030】
図4はロータコア40の斜め上から見た斜視図である。ロータコア40の上面は、点線で示す中実部41の上面と、その径方向外側に形成される円板部44が連続するような平面にて形成される。中実部41の上面の軸心付近には、中心軸孔45の上側開口45aが形成される。この上側開口45aは、第1の送液用孔の開口部でもある。上側開口45aの周囲には4カ所の上側開口47cが形成される。上側開口47cは、凸部43の上面であって、回転軸線A1よりもわずかに径方向外側に離れた位置に形成される。尚、上側開口45aにはシャフト35(図2参照)が貫通されるので、上側開口47cを通る流路とは混在せずに独立した流路を維持する。
【0031】
主に密度勾配液等を分離室内に供給するための通路は、ロータコア40の上面に形成された送液用溝51、52により形成される。送液用溝51は凸部43の外周面に沿って上から下方向に形成された溝部で、凸部43がカバー30の凹部37と当接することによって閉鎖された通路となる。送液用溝52は凸部43の外周面に沿って径方向内側から外側に向けて形成された溝部で、ロータコア40の上面がカバー30の内側下面と当接することによって閉鎖された通路となる。送液用溝52の径方向外側端部は、径方向内側に向けて円弧状に窪むように削り落としされた窪み部56を有し、送液用溝52を通って径方向外側部分まで到達した液体が、下側の分離室24(図2参照)に向けて流れるようになっている。ロータコア40の中実部41の外周面には、放射状に接続された4枚のブレード58が一体的な形状にて形成される。これらブレード58によって分離室24(図2参照)の内部が4つの空間に分離される。分離された4つの空間のそれぞれには、図3にて示したように径方向孔46(第1の送液用孔)の開口46aと、L字状孔47(第2の送液用孔)の開口47aが配置される。
【0032】
ロータコア40の上面であって、中実部41の上側端部には、周方向に均等間隔で4つの穴部49が設けられる。これらは、ロータコア40をロータボディ21から取り出す際に、専用の治具を係合させるために形成されるものである。
【0033】
図5図4のロータコア40をB部から見た円板部44の部分側面図である。円板部44は板厚がTであり、その上面には径方向内側から外側に延びる送液用溝52は、断面形状が長円を半分にしたような半長円状である。送液用溝52の内側端部には軸線方向に延びる送液用溝51と接続される。送液用溝51は、凸部43の外周面において内周側に窪む溝である。本実施例では、円板部44の下面であって、送液用溝51に対応する周方向位置(一例として送液用溝51の円板部44の下面のほぼ同じ位置)に、径方向内側から外側に延在する応力緩和溝57が形成される。応力緩和溝57も送液用溝52と同様の形状であり、その断面形状が長円を半分にしたような半長円状であって、送液用溝51に接近する方向に窪む溝である。送液用溝52の板厚方向の深さDは、応力緩和溝の深さD2よりも深く形成されるのが望ましいが、形状、液圧などの諸条件により異なるため、強度を十分に確認して最適な形状で形成する。但し、D+Dが板厚Tよりも十分小さく、送液用溝52と応力緩和溝57の間が十分残る程度にすることが必要である。送液用溝52の周方向幅Wは、径方向内側から外側にかけて一定となるように形成する。同様に、応力緩和溝の幅Wは、形状、液圧などの諸条件により異なるため、強度を十分に確認して最適な形状で形成する。
【0034】
ここで図5(B)、(C)を用いて溝部(送液用溝52)の存在によって応力変化がどう起こるかを説明する。図5(B)は図12に示した従来のロータコア140の送液用溝152である。送液用溝152において、ロータコア40には注入される密度勾配液や試料等の液体により同一半径の位置において一様に液圧が負荷されるが、溝部(送液用溝152)の壁面にもロータ20の高速回転による液圧が矢印65a、65bの方向にかかるため、溝部の角を支点として矢印66a、66bのように溝の中心付近を上に凸状に曲げるようなモーメントが発生する。このため、回転中は送液用溝152を上に凸状に変形させる力が働く。そこで、本実施例では図5(C)のように、円板部44の下側にも溝部(応力緩和溝57)を形成することにより、下側の溝部(応力緩和溝57)に点線矢印67a、67bのように働く液圧を利用して、点線矢印68a、68bのように溝部(応力緩和溝57)を下向きに曲げるモーメントが発生するようにし、上側の溝により発生するモーメント(66a、66b)と、下側の溝により発生するモーメント(68a、68b)が打ち消し合うようにして変形を抑え、上下の溝部の応力を緩和するようにしたので、円板部44の変形が小さくなる。このように回転中のコアの変形が小さくなることで、繰り返しの使用に伴う材料疲労の影響を低減し、ロータコア40の寿命に余裕を持たせられるようになった。
【0035】
次に図6図8を用いて遠心分離運転時の密度勾配液や試料の給送及び排出状態を説明する。図6は、ロータ20内に試料を注入する前の準備段階である、密度勾配液の送液状態を説明する図である。図6図8の各(A)図では、液体の流れがわかるように、送液用溝52、第1の送液用孔(径方向孔46)を大きく図示し、第2の送液用孔(L字状孔47)を同じ断面図中に見えるように周方向位置にずらして図示したもので、実際の縮尺や配置に即しない模式的な図とした。特にロータコア40の形状は小さめに図示して各通路の大きさを大きくしたので注意されたい。
【0036】
試料注入する工程について説明する。オペレータが図示しない表示パネルを操作して運転をスタートさせると、制御装置15はモータ9を回転させて、ロータ20を約3,000rpmで回転させる。この際、制御装置15は、冷却装置14を稼動させてロータ室4内の温度を所定のまで冷却する。次に、図に示していない制御装置15は、カバー30の中心軸線を貫通する2重の通路のうち、外側の通路を用いて、矢印81aのように密度勾配液を送液する。図6(A)では左側の黒矢印にだけ符号を付しているが、回転対称であるので、図中右側の分離室24においても同様の液体の流れとなる。矢印81aのように流れて凸部43の上面の空間36部分に到達した密度勾配液は、遠心力により漏斗状に形成された逆漏斗状流路部34の外周面に沿って流れ、矢印81b~81dのように送液用溝51、52に流入する。ここで、ロータ20は3,000rpmで回転中のため、液体は遠心力で外周側を流れるので、L字状孔47内に液体は流れこまない。送液用溝52の外縁部まで流れた液体は、矢印82a、82bのように分離室24の内部に流れ込む。このようにして分離室24内に密度勾配液を満たすが、このときには比重の異なる密度勾配液を切り替えながら流すことによって分離室24内に異なる密度の液体の層ができる。分離室24の内部が密度勾配液で満たされると、余剰分であり比重の小さい密度勾配液が径方向孔46を通って矢印85のように中心側に押し出され、中心軸孔45を矢印86a、86bのように流れてロータ20の外部に排出される。このように、図示しない送液ポンプを使用してロータ20の外部から、試料分離に必要な密度勾配液を注入し、シャフト35から排出する。
【0037】
次に、図7を用いて遠心分離する工程について説明する。図6に示す密度勾配液の注入状態から流路を切り替えて、ロータ20の回転を32,000~35,000rpmまで高めて、図示しない送液ポンプを用いてシャフト35の内側から試料を矢印87aのように送り込む。矢印87a~87cのように中心軸孔45、径方向孔46を流れた試料は、矢印87cのようにロータコア40の中実部41の下面とロータボディ21の底面との間の隙間を通って分離室24に流れ込む。分離室24では高速で回転するロータ20の遠心力によって、密度の高い成分は外周側に移動し、密度の低い成分は内周側に移動する。矢印87a~87dのように流入する試料は連続的に流れるため、分離室24のうち、内周側の比重の軽い成分が、L字状孔47の開口47aから矢印87fのように内側に移動し、矢印87gのように凸部43に形成された上側開口47cから排出され、矢印87hのようにロータ20から外部に排出される。このように試料をロータ20に連続的に流しながら、遠心分離に適した時間の運転を行う。
【0038】
図8は遠心分離運転が終了して、分離された試料成分(分離試料90)を取り出す際の手順を示す図である。ここではロータ20を再び3,000rpmまで減速させる。次に試料排出口から、比重の重い押出液を矢印88a~88dのように注入する。すると、押出液は分離室24にて取り出す対象となる分離された試料成分(分離試料90)の外周側から内周側に押し出す。分離試料90の内周側の密度勾配液は、矢印91a~91c、92、93a、93bのようにしてシャフト35より外部に排出される。さらに、押出液を注入すると、内周側の密度勾配液に続いて分離試料90が排出されるので、それを回収する。沈降した粒子を含んだ密度勾配液は、吸光度を分光光度計等によって連続的に測定しながらフラクションコレクタで分割回収することができる。このように、押出液を流入し続けることにより分離室24の外側から内側に分離試料90を押し出して、中心軸孔45を介して分離試料90が矢印93a、93bが回収される。以上の一連の工程において、ロータ室4と大気とは、密閉状態で行われる。
【0039】
以上説明したように本実施例では、ロータコア40の上面の送液用溝52に加えて応力緩和溝57を形成したので、高速回転中のロータコア40の変形が小さくなることで、繰り返し使用時の破壊リスクが低減し、ロータコア40の寿命に大幅な裕度を持たせることができるようになった。
【0040】
次に図9図11を用いて、本実施例の応力緩和溝57の変形例を説明する。応力緩和溝57は図5(C)にて説明したように送液用溝52に起因する曲げモーメントを打ち消すために形成する。そのため、応力緩和溝57の形状や設ける位置は、その効果が十分であれば様々な箇所に形成でき、また溝の形状も様々に形成できる。図9(A)は、本実施例の応力緩和溝57の形状であり、応力緩和溝57は中実部41と円板部44の接続部近くから外縁部まで連続するように形成される。この際の送液用溝52と応力緩和溝の断面形状のバリエーションを示すのが、右側部分である。一番上の側面図が図3図8にて説明した応力緩和溝57の断面形状である。尚、図9の右側に示す送液用溝52と応力緩和溝57の断面開口が長方形状にあるが、実際には、図5(A)に示したように溝内の角部を丸めたような形状とすると良い。図9(A)の右上の側面形状は、送液用溝52と応力緩和溝57の幅(周方向の長さ)は同一である。
【0041】
図9(A)の右側真ん中の側面形状は、応力緩和溝77aの幅が送液用溝52の幅よりも50%程度小さい形状であり、図9(A)の右側下側の側面形状は、応力緩和溝77bの幅が送液用溝52の幅よりも50%程度大きい形状である。このように応力緩和溝57、77a、77bの形状を変更しても応力低減の効果が得られればこのような形状でも良い。
【0042】
図9(B)は、応力緩和溝77(77c~77e)の径方向長さは、それぞれ図9(A)の応力緩和溝57、77a、77bと同じであるが、その側面形状、断面形状が略長方形ではなく、円弧状に形成された溝である。図9(B)の右側に応力緩和溝77c~77eの3つの形状を示しているが、このように応力緩和溝77c~77eの溝の長手方向と直交する断面形状を円弧状に形成しても、応力低減効果が得られれば良い。
【0043】
図9(C)は、応力緩和溝78の径方向長さを、図9(B)の応力緩和溝78に比べて径方向に短くしたものである。この際、応力緩和溝78の径方向外側位置は変えずに、矢印78aに示す内側位置を外側にずらすようにした。図9(C)の右側に示すように、応力緩和溝78の長手方向と直交する断面形状は円弧状としているが、図9(A)、(B)の各図に示したような形状を採用しても良い。
【0044】
図10(A)は、応力緩和溝79の径方向外側の位置を、円板部44の外縁位置まで伸ばさずに、矢印79bに示すように外縁よりもやや内側に留めたものである。応力緩和溝79の内周側の位置は矢印79aに示すように図3図5に示した応力緩和溝57の内周側と同じである。ここでは図10(A)の右側に示すように、応力緩和溝79のC-C断面における断面形状が円弧状に形成したが、図8及び図9で示したような様々な断面形状としても良い。
【0045】
図10(B)は、(A)で示した応力緩和溝79を周方向に隣接するように間隔を空けて2本配置したものである、応力緩和溝79A、79Bのそれぞれの内周側位置は図3図5に示した応力緩和溝57の内周側とほぼ同じであり、外周側位置は図10(A)の応力緩和溝79とほぼ同じである。D-D部の断面形状は右側に2つ示すように、応力緩和溝79A、79Bの断面形状を円弧状としても、応力緩和溝79C、79Dのような略長方形としてもいずれでも良い。
【0046】
図11は、更なる応力緩和溝の変形例を示したものであり、図11(A)では、溝の代わりに半球状の窪み157A~157Cを3つ形成した。図11(A)の右側に示すように、E-E断面における窪み157Cの断面形状は半円状に形成した。これら窪み157A~157Cを形成する位置は、送液用溝52と軸線A1方向に透視した際に完全に又は部分的にオーバーラップする位置に配置する。
【0047】
図11(A)では応力緩和溝を径方向に断続するように複数個形成したが、図11(B)では、応力緩和用の溝を径方向位置に応じてその幅(周方向の長さ)が変わるように形成したものである。つまり、円板部44を底面側から見た際に、応力緩和溝158がくさび状となる三角形状にした。断面F-F部の断面形状は図11(B)の右側の図のようになる。尚、応力緩和溝158の溝の断面形状は略長方形状に角部を設けるのではなくて、円弧状となるようにして角部をなめらかな曲面にて形成するようにしても良い。
【0048】
以上、本実施例のロータコア40と、応力緩和溝の様々な変形例を説明したが、上述の実施例の形状だけに限られずに、円板部44の下面に何らかの凹部を形成するようなロータコア40であれば、本実施例と同様の効果を得ることができる。また、ロータコア40の材質は合成樹脂材でなく金属製としても良い。
【符号の説明】
【0049】
1…遠心機、2…筐体、3…ボウル、4…ロータ室、6…プロテクタ、7,8…断熱材、9…モータ、10…回転軸、11…クラウン、12…ダンパー、13…仕切板、14…冷却装置、15…制御装置、16…脚部、18…ドア、18a…(ドアの)貫通穴、20…ロータ、21…ロータボディ、22…凹部、23…凸部、24…分離室、25…回転軸穴、27…Oリング、28…シールパッキン、30…カバー、30a…貫通穴、31…円板面、32…円筒面、34…逆漏斗状流路部、35…シャフト、36…空間、37…凹部、40…コア、41…中実部、41b…(中実部の)上端付近、42…段差部、42a…凹部、43…凸部、44…円板部、45…中心軸孔、45a…上側開口、46…径方向孔(第1の送液用孔)、46a…(径方向孔の)開口、47…L字状孔(第2の送液用孔)、47a…(L字状孔の)出口、47c…(L字状孔の)上側開口、49…穴部、50…送液用溝、51…送液用溝(軸方向溝)、52…送液用溝(径方向溝)、56…窪み部、57…応力緩和溝、58…ブレード、70…ドアアダプタ、71…シールボディ、72…試料出入口、73…密度勾配液入口、74…水出口、77,77a~77c…応力緩和溝、78,79,79A,79B…応力緩和溝、90…分離試料、140…コア、141…中実部、143…凸部、144…円板部、144a…上面、144b…下面、146…径方向孔、147…L字状孔、152…送液用溝、158…応力緩和溝、160…チタンスリーブ、A1…(ロータの)回転軸線
図1
図2
図3
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図5
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図12