(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】蓋体、および蓋体を備える容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/24 20060101AFI20220914BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B65D81/24 A
B65D77/20 Z
(21)【出願番号】P 2022083454
(22)【出願日】2022-05-21
【審査請求日】2022-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520055560
【氏名又は名称】東京港醸造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 善実
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-301785(JP,A)
【文献】特開2005-022665(JP,A)
【文献】特開2008-184204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/24
B65D 77/20
B65D 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液面に浮遊する蓋体であって、
前記蓋体は少なくとも2枚のシートが積層されてなり、
前記少なくとも2枚のシートの少なくとも一方は開口部を備え
、
前記シートの重心から前記シートの外周端部へ引いた直交線と前記外周端部との交点と、前記重心と、の中点を結ぶ線と、
前記シートの外周端部と、
の間の領域を端部側領域とし、
前記中点を結ぶ線と前記重心との間の領域を重心側領域とした時に、
前記重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均は、前記端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均より大きい、
ことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記開口部は、前記シートの全面に渡り不規則に配置されている、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記蓋体は、上層、中層、および下層を構成する3枚のシートが積層されてなり、前記上層および前記下層の少なくとも1層に前記開口部を備える、請求項1
または2に記載の蓋体。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の蓋体を備える容器。
【請求項5】
請求項3に記載の蓋体を備える容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に浮く蓋体、および蓋体を備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酒類、醤油、コーヒーなどの液体は、容器に入れておくと液面と接する大気により酸化され、品質が劣化する。液体の酸化を抑制するためには、例えば容器を密封することが挙げられる。ただ、容器から液体を導出する際には、必ず容器の蓋を開けなければならず、導出した液体の体積分の大気が容器内に入る。このため容器中の液体は酸化を免れない。窒素ガス及びアルゴンガスなどの置換による酸化防止装置は存在するが、高価であるため、食用として使用されることは稀である。
【0003】
そこで、従来から、液面に蓋体を浮かせることにより液体の酸化を抑制する技術が採用されている。液体の酸化を抑制するためには、液体が大気と接しないようにするため、蓋体の端部と容器の内壁との間隔を極力狭くする必要があると考えられる。しかし、このような蓋体を使用すると、容器を傾けて液体の一部を外部に導出した後に容器を元の状態に戻す一連の動作の中で、蓋体が容器の内壁に引っ掛かり、水平状態に戻らないことがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、容器を傾けた後に元の状態に戻しても、蓋体が液面に浮いた状態に戻るようにするため、蓋体の側面と容器の内壁に隙間を設ける技術が開示されている。特許文献2には、液体容器から試薬を分注するとともに試薬の酸化を抑制するため、所定の大きさの開口部を備える蓋体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3174885号公報
【文献】特開2009-58322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、特許文献1に記載の蓋体は、容器を傾けたり元に戻したりした際に液面に浮いた状態を維持することを目的としており、蓋体が液体に浮いた後の状態のみ考慮されている。このため、容器に液体を入れる際の状況は一切検討されていない。同文献には、二つの部材で構成され、両部材が端部で物理的に接合されているとともに接合後の断面が略楕円形状の蓋体のみが記載されている。このように、二つの部材で構成されるとともに両部材が接合されている蓋体は、接合のコストがかかる。また、両部材が接合されているとともに断面が略楕円形状であるため、容器の蓋が小さい場合には、蓋体を容器に入れることは容易ではない。
【0007】
特許文献2には、空の容器に液体を導入した後に蓋体を液体に浮遊させてもよいし、空の容器にあらかじめ蓋体を入れておき、その後に液体を導入してもよいことが開示されている。そして、同文献には、容器に蓋体を入れた後に液体を導入する場合には、蓋体は液面に浮かび上がるとともに、蓋体の上部の液体は開口部から下部に自然に移動することが開示されている。また、同文献には、蓋体はシートであってもよいことが開示されている。
【0008】
特許文献2に記載の蓋体において、蓋体がシート状である場合には、容器の蓋が小さくても蓋体を丸めて容器に入れることは可能である。ここで、蓋体がシート状である場合であって、容器に蓋体を入れた後に液体を導入する場合には、蓋体が液面に浮上する際、蓋体の上部に液溜まりが発生することがある。前述のように、特許文献2の蓋体には分注するための開口部が設けられているが、開口部が設けられているだけでは、蓋体の上部に残存する液溜まりが蓋体の下方に流れ落ちないことがある。液溜まりが発生しないようにするためには、開口部を大きくしてもよいと思われる。しかしながら、開口部が大きいと液体が酸化されてしまう。
【0009】
一方で、容器に液体が導入された後に蓋体を容器に入れて液面に浮かせる場合には、蓋体が開口部を備える場合であっても、液面上の気体が液面と蓋体の下部との間に巻き込まれ、蓋体の下部に大きな空気溜まりが発生することがある。
【0010】
また、特許文献2に記載の蓋体を、特許文献1に記載のように、断面が略楕円形状になるように加工すれば、シート表面の傾斜により液溜まりの発生が抑制されるとも思われる。しかし、1枚のシートを断面が楕円形状になるように加工するにはコストがかかる。また、シートの断面が略楕円形状になるようにシートを加工したとしても、シートは薄く、そのような加工により得られた傾斜では傾斜角度が小さい。このため、シートからなる蓋体に発生し得る空気溜まりや液溜まりは、蓋体の端部や中央の開口部に移動せずに滞留してしまう。
【0011】
このように、従来の蓋体では、コストがかかるとともに液溜まりや空気溜まりの滞留を抑制することができない。容器内の液体の酸化を更に抑制するためには更なる検討が必要である。
【0012】
本発明の課題は、低コストであるとともに、容器の蓋が小さい場合であっても容器内に容易に入れることができ、且つ、空気溜まり若しくは液溜まりの滞留を抑制することにより、容器内の液体の酸化を抑制することができる蓋体、および蓋体を備える容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、低コストであるとともに、容器の蓋が小さい場合であっても容器内に容易に入れることができるようにするため、特許文献1で開示する立体的な蓋体ではなく、シートで構成される蓋体を用いて検討を行った。開口部を備えないシート状の蓋体を用い、容器に蓋体を入れた後に液体を導入する場合、蓋体が液中を傾きながら浮上することがある知見が得られた。そして、この蓋体が液面に浮上した後に水平状態になる際、空気が蓋体の下部に巻き込まれ、空気溜まりが滞留するとともに、蓋体の表面に液溜まりも滞留する知見が得られた。液体が導入されている容器にこの蓋体を入れたとしても、液溜まりや空気溜まりが滞留する知見が得られた。一方、特許文献2のように、液体の酸化を抑制することができる程度の大きさの開口部を1つ備える1層の蓋体であっても、フランジ部に液溜まりや空気溜まりが滞留する。そこで、本発明者らは、シート状の蓋体を用いて更なる検討を行った。
【0014】
その結果、フランジ部にも開口部を設けることに思い至った。ここで、液溜まりや空気溜まりが発生した箇所に開口部があれば、蓋体の上部に発生した液溜まりは液中に流れ落ち、蓋体の下部に発生した空気溜まりは上昇して液面上の空気中に取り込まれる。
【0015】
しかしながら、液溜まりや空気溜まりが開口部と開口部との間に発生した場合には、これらはその間に滞留するため、液溜まりや空気溜まりを抑制することができない。これに対しては、フランジ部にも多数の開口部を設けることも考えられるが、開口部が多すぎると、そもそも、蓋体を用いる目的を達成することができず、液体が酸化してしまう。
【0016】
本発明者らは、更に検討を重ねた結果、シートを少なくとも2枚積層するとともに開口部を備えるシートを少なくとも1層積層することにより、液溜まりや空気溜まりの滞留を抑制することができる知見を得た。これは、以下の現象によるものと推察される。蓋体がシートを少なくとも2層積層されてなる場合には、開口部の近傍および開口部には毛細管現象が発生する。このため、開口部と開口部との間に液溜まりや空気溜まりが発生したとしても、これらが開口部に移動するとともに開口部もしくは蓋体の外周端部から蓋体の外部に放出され、液溜まりや空気溜まりの滞留を抑制することができると推察される。
この知見により得られた本発明は以下のとおりである。
【0017】
(1)容器内の液面に浮遊する蓋体であって、蓋体は少なくとも2枚のシートが積層されてなり、少なくとも2枚のシートの少なくとも一方は開口部を備えることを特徴とする蓋体。
【0018】
(2)開口部の個数密度は、1枚のシート当たり0.0001~0.8個/mm2である、上記(1)に記載の蓋体。
【0019】
(3)シートの重心からシートの外周端部へ引いた直交線と外周端部との交点と、重心と、の中点を結ぶ線と、シートの外周端部と、の間の領域である端部側領域に設けられている開口部の個数密度は、中点を結ぶ線と重心との間の領域である重心側領域に設けられている開口部の個数密度より大きい、上記(1)または上記(2)に記載の蓋体。
【0020】
(4)重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均は、端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均より大きい、上記(1)~上記(3)のいずれか1項に記載の蓋体。
【0021】
(5)開口部は、シートの全面に渡り不規則に配置されている、上記(1)または上記(2)に記載の蓋体。
【0022】
(6)蓋体は、上層、中層、および下層を構成する3枚のシートが積層されてなり、上層および下層の少なくとも1層に開口部を備える、上記(1)~上記(5)のいずれか1項に記載の蓋体。
【0023】
(7)開口部は、スリット孔、丸孔、多角形孔、楕円孔、および不定形孔の少なくとも1種である、上記(1)~上記(6)のいずれか1項に記載の蓋体。
【0024】
(8)シートの面積に対する開口部の面積である開口部の面積率は、0.3~40%である、上記(1)~上記(7)のいずれか1項に記載の蓋体。
【0025】
(9)上記(1)~上記(8)のいずれか1項に記載の蓋体を備える容器。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る2枚のシートからなる蓋体の一例を示す図であり、
図1(a)は上面図であり、
図1(b)は底面図であり、
図1(c)は
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る2枚のシートからなる蓋体の別の一例を示す図であり、
図2(a)は上面図であり、
図2(b)は底面図であり、
図2(c)は
図2(a)のA-A断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る3枚のシートからなる蓋体の一例を示す図であり、
図3(a)は上面図であり、
図3(b)は底面図であり、
図3(c)は
図3(a)のA-A断面側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る3枚のシートからなる蓋体を構成する各シートの一例を示す図であり、
図4(a)は上層を構成するシートの図であり、
図4(b)は中間層を構成するシートの図であり、
図4(c)は下層を構成するシートの図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る蓋体の別の一例を示す図であり、
図5(a)は円状のシートにおいて、外周端部に近い領域で開口部が密に存在することを表す模式図であり、
図5(b)は不定形のシートにおいて、外周端部に近い領域で開口部が密に存在することを表す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る蓋体の別の例を示す図であり、
図6(a)は、重心に円状の最大開口部を備えるとともに、端部に向かって円状の開口部の大きさが徐々に小さくなるシートを示す図であり、
図6(b)は、中央から端部に向かって円状の開口部の大きさが徐々に小さくなるシートを示す図であり、
図6(c)、は大小の円状の開口部が混在しているシートを示す図であり、
図6(d)は、円状の開口部がシート全面に設けられているシートを示す図であり、
図6(e)は、
図6(d)に示す円状の開口部より径が小さい開口部がシート全面に設けられているシートを示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る蓋体の別の例を示す図であり、
図7(a)は、スリット状の開口部がシートの中央から端部に向けて放射状に設けられているシートを示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)においてスリット状の開口部の間に小径の円状の開口部が設けられているシートを示す図であり、
図7(c)は、
図7(b)において、
図7(b)の開口部より径が大きい円状の開口部が設けられているシートを示す図であり、
図7(d)は、重心に円状の最大開口部を備えるとともに、端部に向かってスリット状の開口部が放射状に設けられているシートを示す図であり、
図7(e)は、スリット状の開口部がシートの重心から同心円状に設けられているシートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を、図を用いて詳述する。なお、本発明は、以下で詳述する実施形態に限定されることはなく、また、各々の態様を適宜組み合わせてもよい。
【0028】
1. 蓋体
(1)蓋体を構成するシート
図1は、本実施形態に係る2枚のシート11およびシート12からなる蓋体10の一例を示す図であり、
図1(a)は上面図であり、
図1(b)は底面図であり、
図1(c)は
図1(a)のA-A断面図である。
図1に示すように、蓋体10は、2枚のシート11および12で構成されている。シート11および12は円状のシートであるが、容器の断面形状と略同一であれば、円状である必要はない。円筒状の容器に入れる場合には円盤状のシートであればよく、断面が略矩形状の容器に入れる場合には、断面に合わせた略矩形状のシートであればよい。
【0029】
各シートの膜厚は特に限定されないが、容器の蓋が小さい場合であっても、シートを丸めた後、容器の蓋を開けて容器内に入れることができる程度の膜厚であればよい。適度な厚さであれば、表面張力により容器の側壁や底面に添着しない。蓋が小さい容器に蓋体を入れる場合には、柔らかい材質が好ましい。
【0030】
また、蓋体を容器に入れた後に液体を導入する場合、蓋体が容器の底に表面張力で張り付かないように、シートにはある程度の高い浮力が必要である。このような浮力を得るためには、例えば水より比重が小さい材質を選択することが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなど、従来から使用されている材質であればよく、耐熱性、耐寒性、透明性、耐水性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0031】
蓋体の端部と容器の側壁との間隔は、0.3~3.0mm程度であればよい。この程度であれば、容器を傾けた後に元の状態に戻す際、蓋体が容器の側壁に引っ掛からず、液面と同様に水平状態に戻る。また、液体表面の面積に対する蓋体が液体表面を覆う面積の割合((蓋体の面積÷液体表面の面積)×100)は、液体の酸化を抑制する観点から70~99%であることが好ましく、80~95%であることがより好ましい。なお、「蓋体の面積」とは、開口部を含む面積を表す。
【0032】
蓋体10は、後述する容器に導入されている液面に浮いて使用されるため、蓋体10を構成するシート11、12は、互いに物理的に接合されている必要はなく、例えば液体の表面張力により積層していればよい。従来では、蓋体を2層構造にする場合、蓋体が浮くように層間に気体を封入する必要があるため、必ず層同士は端部で接合されている必要があった。したがって、従来では2枚のシートの端部が接合されているため、シートの間に液体が流入することがなく、液溜まりや空気溜まりが滞留する。しかし、本発明では、シート自体にも十分な浮力があることに着目し、敢えて、従来とは異なり、少なくとも2枚のシートを、単に重ねただけの構造にすることにより、毛細管現象を利用して液溜まりや空気溜まりの滞留を抑制することができる。
【0033】
なお、本発明では、シート間に空気溜まりや液溜まりが移動することができれば、シートが部分的に接合されていてもよい。このような形態であれば、シートのずれが発生しないため、蓋体を容器に入れた後であっても、層間の開口部の位置を所望のまま維持することができる。例えば、シートの開口部と開口部との間の1~3か所と、他方のシートとで、熱圧着や接着がされていてもよい。コストの観点から、各シート11、12は、接着されてなく、且つ、各々表面張力により単に積層されてなることが好ましい。
【0034】
本発明に係る蓋体10は、蓋体10を構成するシート11、12の少なくとも一方に開口部を備える。例えば、
図1に示すように、蓋体10の下層であるシート12が開口部13を備えてもよい。シート11が開口部を備えてもよく、両シートが開口部を備えてもよい。
【0035】
液体が導入された容器に蓋体10を入れると、蓋体10の下には空気溜まりが発生することがある。
図1に示すように、蓋体10の下層を構成するシート12が開口部13を備える場合、例えば、空気溜まりが蓋体10の端部近傍に発生した場合、この空気溜まりは、蓋体10に発生する浮力により、シートが若干傾くため、容器の側壁との間から蓋体10の上に存在する大気中に容易に放出することができる。また、空気溜まりが蓋体10の重心部近傍に発生した場合には、空気溜まりは、シート11とシート12との間に侵入した後、液体の浮力によりシート同士が密着するために蓋体の端部に移動し、蓋体10の端部から蓋体10の上部に放出される。
【0036】
図1に示す蓋体10は、上層のシート11に開口部が設けられていないため、蓋体10は液体から大きな浮力を受けることができる。この際、蓋体は、水平に浮上するのではなく、液体の入れ方やシートの重なり方に応じて若干傾いて浮上するが、蓋体10が液面に浮上する際に付勢されるため、蓋体10のシート11上に発生しうる液溜まりは、蓋体10上にほとんど滞留することなく端部から液体に流れ落ちる。
【0037】
なお、
図1に示す蓋体10の場合、蓋体10の下部に発生し得る空気溜まりは、発生する場所にもよるが、表面張力により開口部13に侵入する場合がある。また、空気溜まりが開口部13からシート11とシート12との間に侵入すると、水同士の分子間力は水と空気の分子間力より大きいため、毛細管現象により開口部13から蓋体10の端部を介して蓋体10の上部に放出されると推察される。
【0038】
また、開口部を備えないシートが入っている容器に液体を導入すると、シートと容器の底面との間に表面張力が発生し、シートが浮上しない、もしくは液面に浮上するために長時間を要してしまうことがある。このため、好ましくは、
図1に示す蓋体10のように、下層には、開口部13を備えるシート12を配置することが好ましい。
図1(b)では、シート12が1つの開口部13を備える例を示している。
【0039】
図2は、本実施形態に係る2枚のシート21およびシート22からなる蓋体20の別の一例を示す図であり、
図2(a)は上面図であり、
図2(b)は底面図であり、
図2(c)は
図2(a)のA-A断面図である。
図2に示す蓋体20は、
図1に示す蓋体10と同様に2枚のシート21および22からなる。
図2に示すように、開口部24がシート21に複数設けられており、各々の開口部24はシート21の重心から等距離であるとともに、各々の開口部24の間隔も等間隔になるように配置されていてもよい。
【0040】
図2の蓋体20では、仮に上層のシート21上に液溜まりが発生したとしても、毛細管現象により、液溜まりを、開口部24を介して蓋体20の端部から蓋体20の下部にある液体に流し落とすことができる。
図2に示す蓋体20であれば、蓋体20の下に空気溜まりが発生するとともに、蓋体20の上に液溜まりが発生したとしても、空気溜まりや液溜まりを容易に大気中や液体中に戻すことができるため、蓋体20が液面で水平に浮遊することができ、液体の酸化を十分に抑制することができる。
【0041】
また、
図2に示す蓋体20は、シート21が備える開口部24とシート22が備える開口部23が蓋体20を貫通する位置にはない。このため、
図2(c)に示すように、蓋体20を側面から見たときに、蓋体20は各々の開口部23および24により貫通していない。よって、シート21のように開口部24を多数設けたとしても、十分な浮力が得られるとともに、毛細管現象により空気溜まりや液溜まりの滞留を抑制することができる。
【0042】
図3は、本実施形態に係る3枚のシート31~33からなる蓋体30の一例を示す図であり、
図3(a)は上面図であり、
図3(b)は底面図であり、
図3(c)は
図3(a)のA-A断面面図である。
図3に示す蓋体30は、
図3(c)に示すように、開口部34および35の位置が重なっている。しかし、開口部を備えないシート32が上層のシート31と下層のシート33との間に介在しているため、
図3(c)に示すように、蓋体30を貫通する開口部は設けられていないことになる。
【0043】
図3に示す蓋体30は3枚のシート31~33からなり、
図2と同様に、空気溜まりや液溜まりの発生もしくは滞留を抑制することができる。また、上層のシート31と下層のシート33の開口部34および35は、
図2と同様に、シート31、33の重心から等距離に配置されている。これにより空気溜まりや液溜まりが表面張力により開口部34に移動しやすくなり、これらを外部に放出させることができる。更には、蓋体30の下に空気溜まりが発生したとしても、空気溜まりはシート33とシート32との間で移動する。また、蓋体30の上に液溜まりが発生したとしても、液溜まりはシート31とシート32との間で移動する。このため、空気溜まりの移動と液溜まりの移動が互いに阻害されることなく、空気溜まりや液溜まりの解消がさらに容易になる。この現象は液体の表面張力と素材の撥水性と浮き蓋体隙間の毛細管現象によるものである
【0044】
シートの全面に均一に配置しようとすると、開口部の1個あたりの面積が大きければ個数が少なくなり、開口部の1個あたりの面積が小さければ個数が多くなる。このため、開口部の総面積が大きすぎなければ、蓋体が液面に浮上する際に十分な浮力を得ることができる。また、開口部の総面積が小さすぎなければ、開口部の位置が重なり槓子していたとしても、空気溜まりや液溜まりを解消することができる。このため、開口部の総面積に対するシート面積の割合である開口部の面積率は、0.5~40%であることが好ましく、1~31%であることがより好ましく、5~20%であることが更に好ましい。
【0045】
開口部の形状は特に限定されないが、
図1~
図3に記載のように、スリット孔、丸孔、多角形孔、楕円孔、および不定形孔の少なくとも1種であればよい。スリット状の開口部は、単にカッターなどで切り込みを入れることにより設けられてもよく、隙間がない線状の開口部も含まれる。丸孔などとスリット状の孔が混在していてもよい。
【0046】
開口部の個数密度は、前述の面積率の範囲内において、多ければ多いほど、液溜まりや空気溜まりの移動が迅速に行われる。また、多すぎないようにすれば蓋体の加工の工数が増加せず、コストを抑制することができる。さらに、個数がある程度の範囲では、蓋体の強度が担保され、蓋体が歪みにくいなる。開口部の個数密度は、1枚のシート当たり、0.0001~0.720個/mm2であることが好ましく、0.01~0.700個/mm2であることが好ましく、0.05~0.6個/mm2であることが更に好ましい。
【0047】
また、開口部の形状はさまざまであるため、本発明では、開口部の直径を開口部の円相当径とする。本発明における円相当径とは、開口部の最も長い箇所の長さを円相当径とする。例えば、楕円であれば長径が円相当径になる。また、さまざまな円相当径の開口部が存在する場合には、円相当径の度数分布を求め、各の円相当径と円相当径の度数とを乗じ、乗じた結果の和を度数の合計で除して、円相当径の平均を求めることができる。
【0048】
例えば、円相当径が2mmの開口部が100個と、円相当径が3mmの開口部が50個設けられている場合には、開口部の円相当径の平均は、(2mm×100個+3mm×50個)÷150個≒2.33mmとして算出される。開口部の円相当径の平均で0.1~35mm程度であればよく、0.3~20mmであることが好ましい。
【0049】
また、本発明に係る蓋体は、各層が液体の表面張力で積層されている場合には、容器の断面が変わる場合であっても、ある程度の許容範囲をもって液面を覆うことができる。蓋体を構成する各シートは、接合されていない場合には、蓋体を構成するシートがずれて積層されることがあり、各シートの面積より大きい面積の液面を覆うことができる。このため、本発明に係る蓋体では、容器の断面積によらず、液体の酸化を抑制することができる。
【0050】
また、本発明に係る蓋体を構成するシートの形態例を
図4~
図7に示す。
図4は、本実施形態に係る3枚のシート41、43、44からなる蓋体を構成する各シート41、43、44の一例を示す図であり、
図4(a)は上層を構成するシート41の図であり、
図4(b)は中間層を構成するシート43の図であり、
図4(c)は下層を構成するシート44の図である。
【0051】
図4に示す蓋体40は、3枚のシートからなり、上層のシート41および下層のシート44の開口部42および45は、各々、各シート41、44の全面に渡り不規則に配置されている。中間層のシート43には開口部は設けられていない。開口部42および45の配置に規則性は存在しない。本発明において、「不規則」とは、隣り合う開口部間の距離が開口部の円相当径の1~20倍であれば、その距離が限定されないことを表す。開口部同士が重なり、1つの開口部が実質的に大きくならないようにすることが好ましい。また、本発明において「全面に渡り」とは、シートの重心から最も離れた位置にある最外開口部の重心とシートの重心との距離が、シートの重心からシートの外周端部に引いた直交線と交わる点と、重心と、の距離の0.8~0.93倍の範囲に存在することを表す。例えば、シートおよび開口部がいずれも円の場合には、シートの中心と最外開口部の中心との距離が、シートの直径より小さいことになる。なお、本発明では、開口部がスリット状であって、且つカッターなどで切り込みを入れただけの状態である場合には、円相当径はスリット長さに相当する。
【0052】
液溜まりおよび空気溜まりは、シートのどの部分に発生するか予測することは困難である。このため、開口部42および44が
図4に示すように不規則に配置されていれば、液溜まりおよび空気溜まりが開口部もしくは開口部の近傍に発生する可能性が高くなり、シートの外部にこれらを放出することができる。また、本発明では、開口部は、格子状に均一に配置されていてもよい。この場合、格子の間隔は、シートの強度を確保する観点から、開口部同士が接することがなく、複数の開口部が繋がらないような間隔であればよい。好ましくは、隣り合う開口部間は開口部の円相当径の1~20倍である。
【0053】
また、
図4では、中間層のシート43には開口部が設けられていないため、上層のシート41と中間層のシート43、および中間層のシート43と下層のシート44との間で毛細管現象が発現しやすくなり、空気溜まりや液溜まりを蓋体の外部に放出しやすい。
【0054】
図5は、本実施形態に係る蓋体の別の一例を示す図であり、
図5(a)は円状のシート51において、外周端部に近い領域で開口部52が密に存在することを表す模式図であり、
図5(b)は不定形のシート56において、外周端部に近い領域で開口部57が密に存在することを表す模式図である。なお、「外周端部に近い領域」とは、シート51、56の重心53、58からシート51、56の外周端部へ引いた直交線55、60と外周端部との交点53a、58aと、重心53、58と、の中点54、59を結ぶ線55a、60aとシート51、56の外周端部との間の領域である「端部側領域」を表し、
図5(a)および
図5(b)における白い領域を表す。また、中点54、59を結ぶ線55a、60aと重心53、58との間の領域は「重心側領域」を表し、
図5(a)および
図5(b)における灰色領域を表す。
【0055】
図5(a)および
図5(b)に示すシート51、56は、「端部側領域」に設けられた開口部52、57の個数密度が、「重心側領域」に設けられた開口部52、57の個数密度より大きいことが好ましい。端部側領域に滞留する液溜まりや空気溜まりは比較的面積が小さいため、小さい開口部を端部側領域に多数設けた方がよい。このような構成にすることによって、
図5に記載のシート51、56を用いた蓋体では、液溜まりや空気溜まりが蓋体の外周端部から放出されやすくなり、より迅速に液溜まりや空気溜まりを放出することができる。このような効果を十分に発揮するため、「重心側領域」に設けられている開口部の円相当径の平均は、「端部側領域」に設けられている開口部の円相当径の平均より大きいことが好ましい。
【0056】
線55a、60aの形は、
図5(a)、
図5(b)に示すように、各々シート51、56の外周端部と同じ形であることが好ましい。シート56のような不定形のシートの面積は、例えば、同じ形を1mm目方眼紙に描き、外周端部の内側のマス目の数と外周端部と重なるマス目の数の合計を1mm
2で乗じて得ることができる。また、画像処理装置を用いて面積を求めてもよい。
【0057】
また、重心側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均は、端部側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均より大きいことが好ましい。これは、蓋体の中央部に比較的大きな液溜まりや空気溜まりが滞留する傾向があり、これらを速やかに移動させるためである。重心側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均は、端部側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均の1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、重心側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均は、端部側領域に設けられている開口部52、57の円相当径の平均の10倍以下であればよい。
【0058】
前述のように、「端部側領域」に設けられた開口部52、57の個数密度は、「重心側領域」に設けられた開口部52、57の個数密度より大きいことが好ましい。中点54、59から重心53、58までの「端部側領域」における開口部52、57の個数密度は、0.01~0.9個/mm2であることが好ましく、0.03~0.85個/mm2であることがより好ましく、0.05~0.6個/mm2であることが更に好ましい。また、中点54、59から外周端部までの「重心側領域」における開口部52、57の個数密度は、0.005~0.4個/mm2であることが好ましく、0.01~0.3個/mm2であることがより好ましく、0.03~0.2個/mm2であることが更に好ましい。また、中点54、59から重心53、58までの「重心側領域」における開口部52、57の個数密度と、中点54、59から外周端部までの「端部側領域」における開口部52、57の個数密度との比は、個数密度重心側領域:個数密度端部側領域=1:1.1~1:10であることが好ましく、1:2~1:5であることが更に好ましい。
【0059】
また、シートの形状は、液体の酸化を抑制することができる程度に液面を覆うことができれば特に限定されない。例えば
図5(a)に示すように円状であってもよく、
図5(b)に示すように不定形状であってもよい。
【0060】
図6は、本実施形態に係る蓋体の別の例を示す図であり、
図6(a)は重心に円状の最大開口部を備えるとともに、端部に向かって円状の開口部の大きさが徐々に小さくなるシートを示す図であり、
図6(b)は中央から端部に向かって円状の開口部の大きさが徐々に小さくなるシートを示す図であり、
図6(c)は大小の円状の開口部が混在しているシートを示す図であり、
図6(d)は円状の開口部がシート全面に設けられているシートを示す図であり、
図6(e)は
図6(d)に示す円状の開口部より径が小さい開口部がシート全面に設けられているシートを示す図である。
図6に示すシートの開口部の形状は、円状の他、多角形状、楕円形状などであってもよい。
図6(a)および
図6(b)に示すシート61、62ように、重心部近傍に最も大きい面積である開口部が配置され、外周端部に向かって徐々に開口部の面積が小さくなるとともに開口部の個数密度が増加するように配置されていてもよい。また、
図6(c)~
図6(e)に示すシート63~65のように、シートの全面に渡り不規則に開口部が配置されていてもよい。
図6(c)~
図6(e)では、不規則に開口部が配置されているが、開口部同士の距離が等しくなるように配置されていてもよく、前述のように開口部が格子状に配置されていてもよい。
【0061】
図7は、本実施形態に係る蓋体の別の例を示す図であり、
図7(a)はスリット状の開口部がシートの中央から端部に向けて放射状に設けられているシートを示す図であり、
図7(b)は
図7(a)においてスリット状の開口部の間に小径の円状の開口部が設けられているシートを示す図であり、
図7(c)は
図7(b)において、
図7(b)の開口部より径が大きい円状の開口部が設けられているシートを示す図であり、
図7(d)は重心に円状の最大開口部を備えるとともに、端部に向かってスリット状の開口部が放射状に設けられているシートを示す図であり、
図7(e)はスリット状の開口部がシートの重心から同心円状に設けられているシートを示す図である。
図7に示すシートの開口部の形状は、少なくともスリット状のものを含み、
図7(b)および
図7(c)のように、円状の開口部を備えていてもよい。開口部は、多角形状、楕円形状などであってもよい。
【0062】
スリットの向きは、
図7(a)~
図7(d)のシート71~74ように重心から外周端部に向かって放射状に配置されていてもよく、
図7(e)の75のように、同心円状に配置されていてもよい。なお、
図7(d)および
図7(e)に示すシート74、75にも、
図7(b)および
図7(c)のシート72、73のように、円状、多角形状、楕円形状などの開口部を備えていてもよい。
【0063】
シートの枚数は2枚以上である必要があり、3枚以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、10枚以下であることが好ましく、5枚以下であることがより好ましく、4枚以下であることが更に好ましい。奇数枚の場合であって、最上層と最下層に開口部を備える同じシートを配置すれば、容器に蓋体を入れる際に上下を判別する必要がない。また、液体から浮力を受けるとともに毛細管現象が十分に発現する観点から、少なくとも1層は開口部を備えないシートであることが好ましい。蓋体が3枚以上のシートで構成される場合には、上層と下層との間に開口部を備えないシートが配置されるように積層されていることが好ましい。
なお、本発明に係る蓋体は、液体の表面に浮遊するものであるため、液体の表面に浮遊しているものに限定されない。
【0064】
2. 蓋体の製造方法
本発明に係る蓋体の製造方法は、シート材を所定の形状に加工した後、所定の開口部を開けるためのパンチでシートに開口部を設けてもよい。また、シート材に所定の開口部を設けるためのパンチで所定の位置に開口部を設けた後、所定のシート形状に加工してもよい。また、スリット状の開口部は、カッターなどでシート材に切り込みを入れて設けてもよい。
【0065】
3. 容器
本発明に係る容器は、本発明に係る蓋体を備える。容器は特に限定されることがなく、醤油さし、ワインボトル、一升瓶など、種々の液体容器であってもよい。本発明に係る蓋体の形状は、容器の断面形状に合わせて適宜調整すればよい。容器の側壁の材質も従来から使用されているものでよく、PET、ガラスなど、特に限定されることはない。また、本発明に係る容器は、液体が入っているものに限られず、液体が入っていないものも含む。
【実施例】
【0066】
本実施形態の効果を立証するため、以下の実施例にて評価を行った。
直径が6.0cmの円状のアクリルシートを用意し、開口部を設けた。「略円」状の開口部は、ポンチでアクリルシートに孔をあけることにより設けられた。「スリット状」の開口部は、カッターでアクリルシートに所定の長さの切り込みを入れることにより設けられた。このように準備された蓋体を、内径の直径が6.3cmであり、深さが15cmの円筒状容器に入れ、水を容器の底から10cmの高さまで導入した。
【0067】
表1および表2において、「開口部を備える層」欄に「上層+下層」が記載されている実施例では、上層および下層には、シートの厚さ、並びに、開口部の数、大きさ、および位置が同じシートを用いた。
【0068】
表1および表2において、「開口部の円相当径」とは、開口部が略円の場合には、ノギスで直径を測定して開口部の円相当径とした。楕円形状など、真円ではない場合には、最も長い箇所の長さを円相当径とした。開口部が「スリット」の場合には、スリット長を円相当径とした。
【0069】
表1および表2において、「開口部の円相当径」欄の「対応図面番号」とは、種々の径の開口部を設けた場合における、開口部の円相当径と配置とのイメージが最も近い図番を表す。各実施例の開口部に関する実測値は表の通りである。また、例えば実施例4などのように、複数の数値が記載されている例がある。これは、1枚のシートに異なる径の開口部が設けられていることを表す。実施例4では、円相当径が0.4mm、0.8mm、1.4mm、および9mmの開口部が設けられていることを表す。また、実施例17などでは、スリットの円相当径と略円の円相当径が計測されている。例えば実施例17では、スリットの円相当径が1mmであり、略円の円相当径が3mmであることを表す。なお、スリットの円相当径とは、スリットの長さを表す。
【0070】
表1および表2の「端部側領域」は
図5(a)における白色部分の領域を表し、「重心側領域」は
図5(a)における灰色部分の領域を表す。「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」とは、端部側領域に異なる径の開口部が設けられている場合における、端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均を表す。「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」とは、重心側領域に異なる径の開口部が設けられている場合における、重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均を表す。例えば、実施例1では、1種類の開口部のみが設けられているため、「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」および「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、いずれも「開口部の円相当径」欄と同一になる。実施例2、3、22~31、および38も同様に算出された。
【0071】
例えば、実施例4では、「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」が0.4mmであるため、端部側領域には、円相当径が0.4mmの開口部のみが設けられていることになる。これにともない、実施例4の重心側領域には、円相当径が0.8mm、1.4mm、および9mmの開口部が設けられていることになる。実施例4の「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、以下のように求めることができる。実施例4の「開口部の個数の合計」欄には、重心側領域には、円相当径が0.8mmの開口部が200個、円相当径が1.4mmの開口部が28個、円相当径が9mmの開口部が1個設けられていることが記載されている。このため、「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、(0.8×200+1.4×28+9×1)/229≒0.91mmであると算出された。実施例5、7、8、10、11、32、および33も同様に算出された。
【0072】
実施例6では、「開口部の個数の合計」欄に記載されているように、円相当径が1.4mmの開口部が40個、および円相当径が4.6mmの開口部が48個設けられており、各々がシート全面に渡り配置されている。このため、実施例6の「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」および「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、いずれも、(1.4×40+4.6×48)/88≒3.15mmであると算出された。実施例9、12、および34も同様に算出された。
【0073】
実施例13では、端部側領域と重心側領域のスリット数はいずれも144個であった。このため、「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」および「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、いずれも「開口部の円相当径」欄と同一になる。実施例14、19、および35も同様に算出された。
【0074】
実施例15は、重心側領域に開口部が設けられていない。このため、「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は「-」と記載した。「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、「開口部の円相当径」欄と同一になる。実施例16、20、および36も同様に算出された。
【0075】
実施例17では、スリットの数は端部側領域と重心側領域でいずれも144個であったが、略円の数は、端部側領域が32個であり、重心側領域が16個であった。これらから、「端部側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、(1×144+3×32)/176≒1.36mmであると算出された。「重心側領域に設けられている開口部の円相当径の平均」は、(1×144+3×16)/160=1.20であると算出された。実施例18、21、および37も同様に算出された。
【0076】
「1枚当たりの開口部の面積」は、1つの開口部の面積×個数(mm2)により算出された。また、「1枚当たりの開口部の面積率」は、(「1枚当たりの開口部の面積」×100)/(シートの面積)(%)により算出された。実施例4のように異なる円相当径の開口部を備える場合、「1枚当たりの開口部の面積」は、0.2mm×0.2mm×3.14×1800個+0.4mm×0.4mm×3.14×200個+0.7mm×0.7mm×3.14×28個+4.5mm×4.5mm×3.14×1個≒433.23mm2と算出された。実施例4の「1枚当たりの開口部の面積率」は、(433.23mm2×100)/(30mm×30mm×3.14)≒15.33%と算出された。形状が略円である開口部を備えるその他の実施例も同様に算出された。
【0077】
また、「スリット」はカッターなどで切り込みを入れただけであり、「略円」とは異なり目視で確認できるような穴はあいていない。このため、開口部が「スリット」のみである実施例13~16、19、20、35、および36の場合には、「開口部の面積」および「開口部の面積率」については、測定不能として「-」と記載した。なお、形状が「スリット」と「略円」である開口部が混在している実施例17、18、21、および37では、略円における「1枚あたりの開口部の面積」および「1枚当たりの開口部の面積率」が算出された。
【0078】
「開口部の個数」は、1枚のシートに設けられた開口部の個数である。円相当径が異なる開口部を備える場合には、各々の個数の合計が「開口部の個数」に相当する。このようなシートの場合には、開口部毎の個数と合計が記載されている。「開口部の個数密度」は、「開口部の個数」/(シートの面積)で算出された。
【0079】
「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」は、端部側領域に設けられた開口部の個数をシートの面積で除した値である。また、「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は、重心側領域に設けられた開口部の個数をシートの面積で除した値である。
【0080】
実施例1では、1種類の開口部のみが設けられているため、「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」および「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は、いずれも同一になる。実施例2、3、22~31、および38も同様の方法で算出された。
【0081】
実施例4では、前述のように、端部側領域に円相当径が0.4mmの開口部が1800個設けられている。端部側領域の面積は、30mm×30mm×3.14-15mm×15mm×3.14=2119.5mm2である。これらから、実施例4の「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」は、(1800個)/(2119.5mm2)≒0.8493(個/mm2)と算出される。また、実施例4の重心側領域には、円相当径が0.8mmの開口部が200個、円相当径が1.4mmの開口部が28個、および円相当径が9mmの開口部が1個設けられている。また、重心側領域の面積は、15mm×15mm×3.14=706.5mm2である。これらから、実施例4の「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は、(200個+28個+1個)/(706.5mm2)≒0.3241(個/mm2)と算出される。実施例5、7、8、10、11、32、および33も同様の方法で算出された。
【0082】
実施例6では、前述のように、円相当径が1.4mmの開口部が40個、および円相当径が4.6mmの開口部が48個設けられており、各々がシート全面に渡り配置されている。このため、実施例6の「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」および「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は、いずれも、(40個+48個)/2826mm2≒0.0311(個/mm2)であると算出された。実施例9、12、および34も同様の方法で算出された。
【0083】
実施例13では、端部側領域と重心側領域のスリット数はいずれも144個であった。このため、「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」は、144個/2119.5mm2≒0.0679(個/mm2)であると算出された。同様に、「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は、144個/706.5mm2≒0.2038(個/mm2)であると算出された。実施例14、19、および35も同様の方法で算出された。
【0084】
実施例15では、開口部はすべて端部側領域に設けられており、重心側領域に開口部が設けられていない。このため、「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」は、160個/2119.5mm2≒0.0755(個/mm2)であると算出された。「重心側領域に設けられている開口部の個数密度」は0.0000(個/mm2)であった。実施例16、20、および36も同様の方法で算出された。
【0085】
実施例17では、前述のように、スリットの数は端部側領域と重心側領域でいずれも144個であったが、略円の数は、端部側領域が32個であり、重心側領域が16個であった。これらから、「端部側領域に設けられている開口部の個数密度」は、(144個+32個)/2119.5mm2≒0.0830(個/mm2)であると算出された。(144個+16個)/706.5mm2≒0.2265(個/mm2)であると算出された。実施例18、21、および37も同様の方法で算出された。
【0086】
表に示す蓋体について、空気溜まりの面積率((空気溜まりの面積/蓋体の面積)×100(%))、液溜まりの面積率((液溜まりの面積/蓋体の面積)×100(%))を求めた。空気溜まりの面積を以下のように求めた。蓋体が液面に浮遊してから1分が経過した後、蓋体に滞留する空気溜まりについて、最も長い部分を目視で確認し、その長さをノギスで測定し、測定した長さを空気溜まりの直径として、空気溜まりの面積を求めた。液溜まりの面積も同様である。なお、空気溜まりは蓋体の底面に滞留し、液溜まりは蓋体の表面に滞留するため、目視にて両者を区別することは容易であった。
空気溜まりの面積率が5%以下であり、且つ液溜まりの面積率が5%以下であれば、液体の酸化が抑制されていると判断した。また、いずれも1.0%以下であれば、更に液体の酸化が十分に抑制されていると判断し、0.5%以下であれば、特に液体の酸化が抑制されていると判断した。
以下に結果を示す。
【0087】
【0088】
【表2】
表1の結果から明らかなように、本実施例の蓋体は、すくなくとも1層に開口部を備えるシートを用いているため、空気溜まり面積率および液溜まり面積率が小さいことがわかった。これに対して、開口部が設けられていない比較例1~4では、大きな空気溜まりおよび水溜まりが滞留することがわかった。開口部が設けられていないシートを複数枚積層しても、同様であった。
【符号の説明】
【0089】
10,20,30,40 蓋体、11,12,21,22,31,32,33,41,43,44,51,56,61,62,63,64,65,71,72,73,74,75 シート、13,23,24,34,35,42,45,52,57 開口部、53,58 重心、53a,58a シートの重心からシートの外周端部へ引いた直交線と外周端部との交点、54,59 シートの重心からシートの外周端部へ引いた直交線と外周端部との交点と、重心と、の中点、55,60 シートの重心からシートの外周端部へ引いた直交線、55a,60a シートの重心からシートの外周端部へ引いた直交線と外周端部との交点と、重心と、の中点を結ぶ線
【要約】 (修正有)
【課題】低コストであるとともに、容器の蓋が小さい場合であっても容器内に容易に入れることができ、且つ、空気溜まりや液溜まりの滞留を抑制することにより、容器内の液体の酸化を抑制することができる蓋体、および蓋体を備える容器を提供する。
【解決手段】蓋体10は、容器内の液面に浮遊する。蓋体10は少なくとも2枚のシート11、12が積層されてなり、シート11、12の少なくとも一方は開口部を備える。開口部の個数密度は、1枚のシート当たり0.0001~0.8個/mm
2である蓋体。
【選択図】
図1