(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ダイボンディングシート、及びフィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2022102074
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2021503660の分割
【原出願日】2020-03-06
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2019041885
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/083982(WO,A1)
【文献】特許第5946650(JP,B2)
【文献】特開2016-089138(JP,A)
【文献】特開2019-016634(JP,A)
【文献】特開2014-135467(JP,A)
【文献】特開2016-015456(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、
前記基材は、帯電防止層が形成された基材又は帯電防止性基材であり、
大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X
0を測定し、前記変位量X
0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X
1を測定し、前記変位量X
1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X
2を測定したとき、
式(1):(X
1-X
0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、
式(2):(X
2-X
1)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、
式(3):(X
2-X
0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%である、ダイボンディングシート。
【請求項2】
前記基材の粘着剤層側とは反対側に位置する面における表面抵抗率が1.0×10
11Ω/□以下である、請求項1に記載のダイボンディングシート。
【請求項3】
前記基材は帯電防止層が形成された基材である、請求項1又は2に記載のダイボンディングシート。
【請求項4】
前記基材は、前記粘着剤層側とは反対側に位置する面上に帯電防止層を備えている、請求項3に記載のダイボンディングシート。
【請求項5】
前記基材は帯電防止性基材である、請求項1又は2に記載のダイボンディングシート。
【請求項6】
前記帯電防止性基材が帯電防止剤及び樹脂を含有し、
前記帯電防止性基材の、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合が7.5~20質量%である、請求項5に記載のダイボンディングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンディングシート、及びフィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法に関する。本願は、2019年3月7日に日本に出願された特願2019-041885号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造時には、半導体チップと、その裏面に設けられたフィルム状接着剤と、を備えたフィルム状接着剤付き半導体チップが使用される。ここで、半導体チップの裏面とは、半導体チップの回路が形成されている側の面(本明細書においては、「回路形成面」と略記することがある)とは反対側の面を意味する。
【0003】
フィルム状接着剤付き半導体チップは、例えば、以下に示す方法で製造される。
すなわち、まず、半導体ウエハの回路が形成されている側の面(本明細書においては、「回路形成面」と略記することがある)に、バックグラインドテープ(別名:表面保護テープ)を貼付する。
次いで、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。次いで、グラインダーを用いて、半導体ウエハの回路形成面とは反対側の面(本明細書においては、「裏面」と略記することがある)を研削することにより、半導体ウエハの厚さを目的とする値に調節するとともに、このときの半導体ウエハに加えられる研削時の力を利用することによって、改質層の形成部位において、半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを形成する。このように改質層の形成を伴う半導体ウエハの分割方法は、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれており、半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、照射部位の半導体ウエハを削り取りながら、半導体ウエハをその表面から切断していくレーザーダイシングとは、本質的に全く異なる。
【0004】
次いで、バックグラインドテープ上で固定化されているこれら半導体チップの、上述の研削を行った裏面(換言すると研削面)に、1枚のダイボンディングシートを貼付する。ここで、ダイボンディングシートとしては、例えば、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて、構成されたものが挙げられる。そして、この場合には、ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤を、適温に加熱することによって軟化した状態で、半導体チップの裏面に貼付する。これにより、ダイボンディングシートを安定して半導体チップに貼付できる。
【0005】
次いで、半導体チップからバックグラインドテープを取り除いた後、ダイボンディングシートを、冷却しながらその表面(例えば、フィルム状接着剤の半導体チップへの貼付面)に対して平行な方向に引き伸ばす、いわゆるエキスパンドを行うことにより、フィルム状接着剤を半導体チップの外周に沿って切断(分割)する。
以上により、半導体チップと、その裏面に設けられた切断後のフィルム状接着剤と、を備えたフィルム状接着剤付き半導体チップが得られる。
【0006】
フィルム状接着剤付き半導体チップを得た後は、前記基材及び粘着剤層の積層シートを、フィルム状接着剤付き半導体チップを載せた状態のまま、その表面に対して平行な方向において引き伸ばす(エキスパンドする)。さらにこの状態を維持したまま、前記積層シートのうち、フィルム状接着剤付き半導体チップが載っていない周縁部を加熱する。以上により、前記周縁部を収縮させつつ、前記積層シート上においては、隣接する半導体チップ間の距離(本明細書においては、「カーフ幅」と称することがある)を、以降、適切に保持する。
【0007】
次いで、フィルム状接着剤付き半導体チップを、前記積層シートから引き離して、ピックアップする。このとき、粘着剤層が硬化性である場合には、粘着剤層を硬化させて粘着性を低下させておくことで、ピックアップが容易となる。
以上により、半導体装置の製造に使用するフィルム状接着剤付き半導体チップを、安定して得られる。
【0008】
ピックアップされた半導体チップは、その裏面に設けられているフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングされ、必要に応じて、この半導体チップにさらに別の半導体チップが1個以上積層されて、ワイヤボンディングされた後、全体が樹脂により封止される。このようにして得られた半導体パッケージを用いて、最終的には、目的とする半導体装置が製造される。
【0009】
このように、エキスパンドにより切断可能なフィルム状接着剤を備えたダイボンディングシートとしては、基材と、粘着剤層と、基材層(中間層に相当)と、粘接着剤層(前記フィルム状接着剤に相当)と、がこの順に積層されて構成され、前記基材層が特定範囲の引張特性を有するダイシング-ダイボンディングテープ(前記ダイボンディングシートに相当)が開示されている(特許文献1参照)。このダイボンディングシートによれば、中間層に相当する前記基材層を備えていることで、フィルム状接着剤をそのエキスパンド時に、高精度に切断できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のとおり、通常、ダイボンディングシートの使用時には、ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤を加熱しながら半導体チップに貼付したり、フィルム状接着剤を切断後、エキスパンドした状態のダイボンディングシートの周縁部を加熱することにより、隣接する半導体チップ間の距離、すなわちカーフ幅を、以降の工程で、十分に広く、かつ高い均一性で保持することが望まれる。そして、このような温度変化を伴う工程を安定して行うことができれば、高品質のフィルム状接着剤付き半導体チップを安定して得られる。
これに対して、特許文献1で開示されているダイボンディングシートは、このような特性を十分に有するか否か、定かではない。
【0012】
本発明は、基材、粘着剤層及びフィルム状接着剤を備えて構成され、半導体チップへ加熱しながら貼付するときに、安定して貼付でき、かつ、フィルム状接着剤の切断後にエキスパンドしたときに、カーフ幅を十分に広く、かつ高い均一性で保持できるダイボンディングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、式(1):(X1-X0)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、式(2):(X2-X1)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、式(3):(X2-X0)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%である、ダイボンディングシートを提供する。
本発明のダイボンディングシートにおいては、前記中間層の幅の最大値が、150~160mm、200~210mm、又は300~310mmであってよい。
本発明のダイボンディングシートにおいては、[前記中間層の0℃における引張弾性率]/[前記基材の0℃における引張弾性率]の値が0.5以下であることが好ましい。
【0014】
本発明は、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられたフィルム状接着剤と、を備えたフィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法であって、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部に改質層を形成する工程と、前記改質層を形成後の前記半導体ウエハの裏面を研削するとともに、前記半導体ウエハに加えられる研削時の力を利用することにより、前記改質層の形成部位において、前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップが整列した状態の半導体チップ群を得る工程と、前記ダイボンディングシートを加熱しながら、その中のフィルム状接着剤を、前記半導体チップ群中のすべての半導体チップの裏面に貼付する工程と、前記半導体チップ群中に貼付した後の前記ダイボンディングシートを、冷却しながら、その表面に対して平行な方向に引き伸ばすことにより、前記フィルム状接着剤を前記半導体チップの外周に沿って切断し、複数個の前記フィルム状接着剤付き半導体チップが整列した状態のフィルム状接着剤付き半導体チップ群を得る工程と、前記フィルム状接着剤付き半導体チップ群を得た後の、前記ダイボンディングシートに由来する、基材、粘着剤層及び中間層の積層シートを、前記粘着剤層の表面に対して平行な方向にエキスパンドし、さらにこの状態を維持したまま、前記積層シートのうち、前記フィルム状接着剤付き半導体チップが載っていない周縁部を加熱する工程と、前記周縁部を加熱した後の、前記積層シート中の前記中間層から、前記フィルム状接着剤付き半導体チップを引き離して、ピックアップする工程と、を有し、前記中間層の幅の最大値と、前記半導体ウエハの幅の最大値と、の差を、0~10mmとする、フィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材、粘着剤層及びフィルム状接着剤を備えて構成され、半導体チップへ加熱しながら貼付するときに、安定して貼付でき、かつ、フィルム状接着剤の切断後にエキスパンドしたときに、カーフ幅を十分に広く、かつ高い均一性で保持できるダイボンディングシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示すダイボンディングシートの平面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用対象である半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用対象である半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図3C】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用対象である半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートの使用方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図5】実施例でのカーフ保持性の評価時における、カーフ幅の測定箇所を説明するために、評価対象物を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
◇ダイボンディングシート
本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートは、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、式(1):(X1-X0)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率(本明細書においては、単に「加熱時変化率」と略記することがある)が0~2%であり、式(2):(X2-X1)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率(本明細書においては、単に「放冷時変化率」と略記することがある)が-2~0%であり、式(3):(X2-X0)/15×100で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率(本明細書においては、単に「総合変化率」と略記することがある)が-2~1%である。
【0018】
本実施形態のダイボンディングシートは、前記加熱時変化率が前記上限値以下であることで、基材の加熱時の膨張が抑制されるため、ダイボンディングシートを加熱しながらそのフィルム状接着剤によって半導体チップへ貼付するときに、安定して貼付できる加熱貼付安定性を有する。一方、基材は、その加熱時には収縮しないため、前記加熱時変化率は、負の値とはならない。
【0019】
本実施形態のダイボンディングシートは、前記放冷時変化率が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤を切断し、基材、粘着剤層及び中間層がこの順に、これらの厚さ方向において積層された構成を有する積層シートをエキスパンドしたまま、その周縁部を加熱して収縮させつつ、隣接する半導体チップ間の距離(カーフ幅)を調節したときに、カーフ幅を十分に広く、かつ高い均一性で保持できるカーフ保持性を有する。一方、基材は、その放冷時には膨張しないため、前記放冷時変化率は、正の値とはならない。
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「積層シート」とは、上述の基材、粘着剤層及び中間層が積層された構成を有する積層シートを意味する。
【0020】
本実施形態のダイボンディングシートは、前記総合変化率が前記下限値以上であることで、前記放冷時変化率が前記下限値以上である場合と同様の効果を奏する。また、前記総合変化率が前記上限値以下であることで、上述のとおり前記積層シートをエキスパンドしたまま、その周縁部を加熱して収縮させたときに、十分収縮し、その結果、カーフ幅を高い均一性で保持できる。
【0021】
本実施形態のダイボンディングシートは、ダイシング後の半導体ウエハが好ましい使用対象となる。ここで、ダイシング後の半導体ウエハとは、複数個の半導体チップがあらかじめ整列した状態となっているもの、又は、このように整列した複数個の半導体チップと、それ以外に、半導体ウエハ中の半導体チップへの分割が行われていない領域と、を含むものが挙げられる。
【0022】
ダイボンディングシートのこのような使用対象物は、例えば、以下のような半導体ウエハのダイシングによって得られる。
すなわち、まず、半導体ウエハの回路が形成されている側の面(すなわち回路形成面)に、バックグラインドテープ(表面保護テープ)を貼付する。
次いで、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。このときの焦点の位置は、半導体ウエハの分割(ダイシング)予定位置であり、半導体ウエハから目的とする大きさ、形状及び個数の半導体チップが得られるように設定される。
次いで、グラインダーを用いて、半導体ウエハの回路形成面とは反対側の面(すなわち裏面)を研削する。これにより、半導体ウエハの厚さを目的とする値に調節するとともに、このときの半導体ウエハに加えられる研削時の力を利用することによって、改質層の形成部位において、半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、改質層が形成された半導体ウエハに力を加えることにより、半導体ウエハ内部の改質層に力が加えられ、この改質層の部位において半導体ウエハが割れて、複数個の半導体チップが得られる。
なお、この研削時の条件によっては、半導体ウエハの一部の領域において、半導体チップへの分割が行われないこともある。
【0023】
以下、図面を参照しながら、前記ダイボンディングシートについて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るダイボンディングシートを模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示すダイボンディングシートの平面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
ここに示すダイボンディングシート101は、基材11を備え、基材11上に、粘着剤層12、中間層13及びフィルム状接着剤14がこの順に積層されて、構成されている。ダイボンディングシート101は、さらにフィルム状接着剤14上に剥離フィルム15を備えている。
【0026】
ダイボンディングシート101においては、基材11の一方の面(以下、「第1面」と称することがある)11a上に、粘着剤層12が設けられ、粘着剤層12の基材11が設けられている側とは反対側の面(以下、「第1面」と称することがある)12a上に、中間層13が設けられ、中間層13の粘着剤層12が設けられている側とは反対側の面(以下、「第1面」と称することがある)13a上に、フィルム状接着剤14が設けられ、フィルム状接着剤14の中間層13が設けられている側とは反対側の面(以下、「第1面」と称することがある)14a上に、剥離フィルム15が設けられている。このように、ダイボンディングシート101は、基材11、粘着剤層12、中間層13及びフィルム状接着剤14がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
【0027】
ダイボンディングシート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤14の第1面14aが、半導体チップ、又は、完全には分割されていない半導体ウエハ(図示略)の、回路形成面とは反対側の面(すなわち裏面)に貼付されて、使用される。
【0028】
なお、本明細書においては、基材及び粘着剤層を含む積層体を「支持シート」と称することがある。
図1においては、符号1を付して支持シートを示している。
【0029】
中間層13及びフィルム状接着剤14を、これらの上方から見下ろして平面視したときの平面形状は、いずれも円形状であり、中間層13の直径とフィルム状接着剤14の直径は同じである。
そして、ダイボンディングシート101において、中間層13及びフィルム状接着剤14は、これらの中心が一致するように、換言すると、中間層13及びフィルム状接着剤14の外周の位置が、これらの径方向においていずれも一致するように、配置されている。
【0030】
中間層13の第1面13aと、フィルム状接着剤14の第1面14aは、いずれも、粘着剤層12の第1面12aよりも面積が小さくなっている。そして、中間層13の幅W13の最大値(すなわち直径)と、フィルム状接着剤14の幅W14の最大値(すなわち直径)は、いずれも、粘着剤層12の幅の最大値と、基材11の幅の最大値よりも小さくなっている。したがって、ダイボンディングシート101において、粘着剤層12の第1面12aの一部は、中間層13及びフィルム状接着剤14によって覆われていない。このような、粘着剤層12の第1面12aにおける、中間層13及びフィルム状接着剤14が積層されていない領域には、剥離フィルム15が直接接触して積層されており、剥離フィルム15が取り除かれた状態では、この領域は露出している(以下、本明細書においては、この領域を「非積層領域」と称することがある)。
なお、剥離フィルム15を備えたダイボンディングシート101においては、粘着剤層12の、中間層13及びフィルム状接着剤14によって覆われていない領域には、ここに示すように、剥離フィルム15が積層されていない領域があってもよい。
【0031】
ダイボンディングシート101は、フィルム状接着剤14が未切断で、かつ上述の半導体チップ等に貼付された状態で、粘着剤層12の前記非積層領域の一部を、半導体ウエハ固定用のリングフレーム等の治具に貼付することで、固定できる。したがって、ダイボンディングシート101を前記治具に固定するための治具用接着剤層を、ダイボンディングシート101に別途設ける必要がない。そして、治具用接着剤層を設ける必要がないため、ダイボンディングシート101を安価かつ効率的に製造できる。
【0032】
このように、ダイボンディングシート101は、治具用接着剤層を備えていないことにより、有利な効果を奏するが、治具用接着剤層を備えていてもよい。この場合、治具用接着剤層は、ダイボンディングシート101を構成するいずれかの層の表面のうち、周縁部近傍の領域に設けられる。このような領域としては、粘着剤層12の第1面12aにおける、中間層13及びフィルム状接着剤14によって覆われていない領域等が挙げられる。
【0033】
治具用接着剤層は、公知のものでよく、例えば、接着剤成分を含有する単層構造であってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造であってもよい。
【0034】
また、後述するように、ダイボンディングシート101をその表面(例えば、粘着剤層12の第1面12a)に対して平行な方向に引き伸ばす、所謂エキスパンドを行うときには、粘着剤層12の第1面12aに前記非積層領域が存在することで、ダイボンディングシート101を容易にエキスパンドできる。そして、フィルム状接着剤14を容易に切断できるだけでなく、中間層13及びフィルム状接着剤14の粘着剤層12からの剥離が抑制されることもある。
【0035】
ダイボンディングシート101においては、基材11から作製した、大きさが4.5mm×15mmである試験片は、その熱機械分析(本明細書においては、「TMA」と称することがある)を行ったときに、以下に示す特性を有する。
すなわち、まず、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、TMAを行い、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定する。X0は、通常、0(ゼロ)であるか、又は0に近い数値となる。
次いで、引き続きTMAを行い、X0を測定後の試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温し、このときの、試験片の変位量の最大値X1を測定する。X1は、通常、試験片の温度が70℃のときの変位量となる。また、通常は、X1≧X0の条件を満たす。
次いで、引き続きTMAを行い、X1を測定後の試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷し、このときの、試験片の変位量の最小値X2を測定する。X2は、通常、試験片の温度が放冷によって変動しなくなった(換言すると最低となった)ときの変位量となる。
X0、X1及びX2は、一連のTMAによって連続的に測定するため、これらの測定方向はすべて同じである。また、試験片に加える荷重は一定値である。
【0036】
ダイボンディングシート101においては、このようにして取得したX0及びX1を用いて、式(1):
(X1-X0)/15×100
で算出される、試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%となる。
また、このようにして取得したX1及びX2を用いて、式(2):
(X2-X1)/15×100
で算出される、試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%となる。
また、このようにして取得したX2及びX0を用いて、式(3):
(X2-X0)/15×100
で算出される、試験片の変位量の総合変化率が-2~1%となる。
【0037】
本実施形態のダイボンディングシートは、
図1及び
図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1及び
図2に示すものにおいて一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0038】
例えば、本実施形態のダイボンディングシートは、基材と、粘着剤層と、中間層と、フィルム状接着剤と、剥離フィルムと、治具用接着剤層と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。ただし、本発明のダイボンディングシートは、
図1に示すように、粘着剤層を基材に直接接触した状態で備え、中間層を粘着剤層に直接接触した状態で備え、フィルム状接着剤を中間層に直接接触した状態で備えていることが好ましい。
【0039】
例えば、本実施形態のダイボンディングシートにおいて、中間層及びフィルム状接着剤の平面形状は、円形状以外の形状であってもよく、中間層及びフィルム状接着剤の平面形状は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、中間層の第1面の面積と、フィルム状接着剤の第1面の面積は、いずれも、これらよりも基材側の層の面(例えば、粘着剤層の第1面)の面積よりも小さいことが好ましく、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。そして、中間層及びフィルム状接着剤の外周の位置は、これらの径方向においていずれも一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
次に、本発明のダイボンディングシートを構成する各層について、より詳細に説明する。
【0040】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状である。
前記基材の構成材料は、各種樹脂であることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE等))、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド(PI)、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体及びエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外のエチレン共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が挙げられる。
【0041】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0042】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0043】
前記加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率の調節がより容易である点では、基材の構成材料は、ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)であることがより好ましい。
【0044】
基材は1層(単層)からなるものでもあってよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0045】
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、50~300μmであることが好ましく、60~150μmであることがより好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、基材の構造がより安定化する。基材の厚さが前記上限値以下であることで、前記ダイボンディングシートのエキスパンド時において、フィルム状接着剤の切断性がより向上する。さらに、フィルム状接着剤を切断後のダイボンディングシートのエキスパンド時(換言すると、前記積層シートのエキスパンド時)において、カーフ幅を十分に広く、かつ高い均一性で保持する効果が、より高くなる。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0046】
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理、エンボス加工処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;等が表面に施されていてもよい。
また、基材の表面は、プライマー処理されていてもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;ダイボンディングシートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層;等を有していてもよい。
【0047】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0048】
樹脂を構成材料とするフィルム又はシートは、その製造方法によっては、異方性を有する。例えば、樹脂の成形によって製造されているフィルム又はシートは、通常、樹脂の成形時における樹脂の流れ方向(Machine Direction)と、この樹脂の流れ方向に直交する方向(Transverse Direction)と、で特性が変わることがあり、これは周知事項である。本明細書においては、上述の樹脂の流れ方向を「MD」と称し、樹脂の流れ方向に直交する方向を「TD」と称することがある。
MDは、フィルム又はシートの加工時における、フィルム又はシートの流れに平行な方向であり、TDは、このようなフィルム又はシートの流れに直交する方向であるともいえる。フィルム又はシートを延伸加工する場合には、MDは、フィルム又はシートの延伸方向であり、TDは、このようなフィルム又はシートの延伸方向に直交する方向である。
各層のMD及びTDは、例えば、X線2次元回折画像の分析等、光学的な分析によって、互いに区別できる。
【0049】
本実施形態においては、基材、中間層、粘着剤層及びフィルム状接着剤等も含めて、樹脂の成形によって製造されたフィルム又はシートは、MD及びTDを有する可能性がある。
【0050】
前記ダイボンディングシートにおいては、基材(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、基材11)のMDと、後述する中間層(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、中間層13)のMDと、が一致していることが好ましい。換言すると、前記ダイボンディングシートにおいては、基材のTDと、中間層のTDと、が一致していることが好ましい。基材及び中間層がこのように配置されている前記ダイボンディングシートは、エキスパンドのされ易さ(拡張性)が方向によらず、より均一化する。そして、このようなダイボンディングシートを用いることで、エキスパンドによるフィルム状接着剤の切断性がより向上し、さらに、フィルム状接着剤の切断時に、半導体チップ間の領域、いわゆるカーフがより安定して形成され、この領域の幅(すなわちカーフ幅)の均一性もより高くなる。さらに、このようにカーフ幅の均一性が高くなることで、後述するフィルム状接着剤付き半導体チップをピックアップするときに、工程不良の発生を抑制する効果が顕著に高くなる。
【0051】
<基材から作製した試験片の変位量の加熱時変化率>
基材(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、基材11)から作製した前記試験片の前記加熱時変化率は、先に説明したとおり、0~2%であり、例えば、0~1.6%、0~1.2%、及び0~0.9%のいずれかであってもよいし、0.2~2%、0.4~2%、及び0.6~2%のいずれかであってもよいし、0.2~1.6%、0.4~1.2%、及び0.6~0.9%のいずれかであってもよい。
【0052】
前記試験片の前記加熱時変化率は、その2以上の測定方向同士の間では、互いに同じであることもあり、異なることもある。ここで、「加熱時変化率の2以上の測定方向」とは、試験片の第1面(基材の第1面に相当)に対して平行な方向のうち、異なる2以上の方向である。例えば、試験片がMD及びTDを有する場合、試験片のMDにおける前記加熱時変化率と、試験片のTDにおける前記加熱時変化率とは、互いに同じであることもあり、異なることもある。
【0053】
本実施形態において、前記加熱時変化率は、前記試験片のいずれの測定方向においても、0~2%である。例えば、前記試験片がMD及びTDを有する場合、前記加熱時変化率は、MD及びTDのいずれにおいても、0~2%であり、MD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した9とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおける加熱時変化率の数値範囲と、TDにおける加熱時変化率の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0054】
<基材から作製した試験片の変位量の放冷時変化率>
基材(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、基材11)から作製した前記試験片の前記放冷時変化率は、先に説明したとおり、-2~0%であり、例えば、-2~-0.4%、-2~-0.8%、-2~-1.2%、及び-2~-1.6%のいずれかであってもよい。
【0055】
前記試験片の前記放冷時変化率は、その2以上の測定方向同士の間では、互いに同じであることもあり、異なることもある。ここで、「放冷時変化率の2以上の測定方向」とは、上述の「加熱時変化率の2以上の測定方向」と同じである。例えば、試験片がMD及びTDを有する場合、試験片のMDにおける前記放冷時変化率と、試験片のTDにおける前記放冷時変化率とは、互いに同じであることもあり、異なることもある。
【0056】
本実施形態において、前記放冷時変化率は、前記試験片のいずれの測定方向においても、-2~0%である。例えば、前記試験片がMD及びTDを有する場合、前記放冷時変化率は、MD及びTDのいずれにおいても、-2~0%であり、MD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した4とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおける放冷時変化率の数値範囲と、TDにおける放冷時変化率の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0057】
<基材から作製した試験片の変位量の総合変化率>
基材(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、基材11)から作製した前記試験片の前記総合変化率は、先に説明したとおり、-2~1%であり、例えば、-2~0.6%、-2~0.3%、-2~0%、-2~-0.3%、及び-2~-0.6%のいずれかであってもよいし、-1.8~1%、-1.6~1%、及び-1.4~1%のいずれかであってもよいし、-1.8~0.6%、-1.8~0.3%、-1.8~0%、-1.6~-0.3%、及び-1.4~-0.6%のいずれかであってもよい。
前記試験片の前記総合変化率は、これらの中でも、-2~0%であることが好ましい。
【0058】
前記試験片の前記総合変化率は、その2以上の測定方向同士の間では、互いに同じであることもあり、異なることもある。ここで、「総合変化率の2以上の測定方向」とは、上述の「加熱時変化率の2以上の測定方向」と同じである。例えば、試験片がMD及びTDを有する場合、試験片のMDにおける前記総合変化率と、試験片のTDにおける前記総合変化率とは、互いに同じであることもあり、異なることもある。
【0059】
本実施形態において、前記総合変化率は、前記試験片のいずれの測定方向においても、-2~1%である。例えば、前記試験片がMD及びTDを有する場合、前記総合変化率は、MD及びTDのいずれにおいても、-2~1%であり、MD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した13とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおける総合変化率の数値範囲と、TDにおける総合変化率の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0060】
基材から作製した前記試験片においては、前記加熱時変化率が上述の9とおりの数値範囲のいずれかであり、かつ、前記放冷時変化率が上述の4とおりの数値範囲のいずれかであり、かつ、前記総合変化率が上述の13とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。
このような試験片としては、例えば、MD及びTDのいずれか一方又は両方における前記加熱時変化率が0.6~0.9%であり、かつ、MD及びTDのいずれか一方又は両方における前記放冷時変化率が-2~-1.6%であり、かつ、MD及びTDのいずれか一方又は両方における前記総合変化率が-1.4~-0.6%であるものが挙げられる。ただし、これは、前記試験片の一例である。
【0061】
前記加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率の測定対象である前記試験片の厚さは、特に限定されず、これらの測定を高精度に行うことができる厚さであればよい。例えば、前記試験片の厚さは、10~200μmであってもよい。
【0062】
基材から作製した前記試験片の前記加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率は、基材の含有成分、例えば、樹脂、の種類及び含有量を調節することにより、調節できる。
【0063】
<基材から作製した試験片の引張弾性率Eb’>
前記基材(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、基材11)から作製した、幅が15mmで、長さが100mmを超える試験片について、チャック間距離を100mmとし、温度を0℃とし、テンシロンを用いて、引張速度を200mm/minとして引っ張る引張試験を行い、弾性変形領域における、0℃の試験片の引張弾性率Eb’を測定したとき、Eb’は、例えば、10~200MPa、50~150MPa、及び70~120MPaのいずれかであってもよい。Eb’がこのような範囲であることで、後述する引張弾性率比Ei’/Eb’の調節が、より容易となる。
【0064】
前記ダイボンディングシートのエキスパンドによる、フィルム状接着剤の切断は、その切断性が向上する点から、0℃又はその近傍の温度で行うのが好適である。そのため、前記ダイボンディングシートにおいては、基材から作製した試験片の引張弾性率Eb’を、0℃における値で規定する。本実施形態においては、ダイボンディングシートのエキスパンド適性に大きな関わりを有する重要な物性を、実際にエキスパンドを行う温度又はその近傍の温度の条件下で規定する。
【0065】
前記試験片のEb’は、その2以上の測定方向同士の間では、互いに同じであることもあり、異なることもある。ここで、「Eb’の2以上の測定方向」とは、試験片の第1面(基材の第1面に相当)に対して平行な方向のうち、異なる2以上の方向である。例えば、試験片がMD及びTDを有する場合、試験片のMDにおけるEb’と、試験片のTDにおけるEb’とは、互いに同じであることもあり、異なることもある。
【0066】
本実施形態において、前記引張弾性率Eb’は、例えば、前記試験片のいずれの測定方向においても、先に例示した3とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。例えば、前記試験片がMD及びTDを有する場合、Eb’は、MD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した3とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおけるEb’の数値範囲と、TDにおけるEb’の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0067】
前記引張弾性率Eb’の測定対象である前記試験片の厚さは、特に限定されず、これらの測定を高精度に行うことができる厚さであればよい。例えば、前記試験片の厚さは、10~200μmであってもよい。
【0068】
基材から作製した前記試験片のEb’は、基材の含有成分、例えば、樹脂の種類及び含有量を調節することにより、調節できる。
【0069】
基材の光学特性は、本発明の効果を損なわない範囲内において、特に限定されない。基材は、例えば、レーザー光又はエネルギー線を透過させるものであってよい。
【0070】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する(樹脂を構成材料とする)基材は、前記樹脂又は前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0071】
<表面抵抗率>
ダイボンディングシート中の基材の粘着剤層側とは反対側に位置する面における、表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であってもよい。
詳しくは後述するが、基材として、帯電防止層が形成された基材、又は、帯電防止性基材を用いることにより、基材の粘着剤層側とは反対側に位置する面における表面抵抗率を1.0×1011Ω/□以下とすることができる。
帯電防止層が形成された基材における、粘着剤層側とは反対側に位置する面を、「ダイボンディングシートの最表層」という場合がある。また、帯電防止性基材の粘着剤層側とは反対側に位置する面を、「ダイボンディングシートの最表層」という場合がある。
【0072】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
粘着剤層は、前記粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。
【0073】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0074】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0075】
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0076】
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0077】
粘着剤層は、硬化性及び非硬化性のいずれであってもよく、例えば、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
【0078】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0079】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0080】
粘着剤層の厚さは1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0081】
粘着剤層の光学特性は、本発明の効果を損なわない範囲内において、特に限定されない。例えば、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものであってもよい。
次に、前記粘着剤組成物について説明する。
【0082】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0083】
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0084】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル樹脂であることが好ましい。
前記アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0086】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0087】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0088】
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0089】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0090】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0091】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0092】
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0093】
架橋剤を用いる場合、前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0094】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0095】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0096】
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0097】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0098】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
【0099】
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するための成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0100】
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
粘着剤組成物(I-1)のその他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0102】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0103】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましい。
【0104】
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
【0105】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0106】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0107】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
粘着剤組成物(I-2)において、粘着剤組成物(I-2)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
【0110】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0111】
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0112】
架橋剤を用いる場合、前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0113】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0114】
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0116】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0117】
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0118】
粘着剤組成物(I-3)において、粘着剤組成物(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0119】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0120】
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
【0121】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0122】
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0123】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0124】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-3)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0125】
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0126】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル樹脂を含有するものが好ましい。
【0127】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
【0128】
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。
【0129】
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0130】
粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0131】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0132】
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~25質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることが特に好ましい。
【0134】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0135】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0136】
○中間層
前記中間層は、シート状又はフィルム状であり、樹脂を含有する。
中間層は、樹脂からなるものであってもよいし、樹脂と樹脂以外の成分を含有するものであってもよい。
中間層は、例えば、前記樹脂又は前記樹脂を含有する中間層形成用組成物を成形することで形成できる。また、中間層は、中間層の形成対象面に、前記中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることでも形成できる。
【0137】
中間層の構成材料である前記樹脂は、特に限定されない。
中間層における好ましい前記樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタンアクリレート(UA)等が挙げられる。
【0138】
前記中間層形成用組成物の前記樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、80質量%以上、90質量%以上、及び95質量%以上等のいずれかとすることができるが、これらは一例である。
【0139】
中間層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0140】
<中間層から作製した試験片の引張弾性率Ei’>
中間層(
図1に示すダイボンディングシート101の場合には、中間層13)から作製した、幅が15mmで、長さが100mmを超える試験片について、チャック間距離を100mmとし、温度を0℃とし、テンシロンを用いて、引張速度を200mm/minとして引っ張る引張試験を行い、弾性変形領域における、0℃の試験片の引張弾性率Ei’を測定したとき、Ei’は、例えば、10~150MPa、10~100MPa、及び10~50MPaのいずれかであってもよい。Ei’がこのような範囲であることで、後述する引張弾性率比Ei’/Eb’の調節が、より容易となる。
【0141】
前記ダイボンディングシートにおいては、上述のEb’の場合と同じ理由で、中間層から作製した試験片の引張弾性率Ei’も、0℃における値で規定する。
【0142】
前記試験片のEi’は、その2以上の測定方向同士の間では、互いに同じであることもあり、異なることもある。ここで、「Ei’の2以上の測定方向」とは、試験片の第1面(中間層の第1面に相当)に対して平行な方向のうち、異なる2以上の方向である。例えば、試験片がMD及びTDを有する場合、試験片のMDにおけるEi’と、試験片のTDにおけるEi’とは、互いに同じであることもあり、異なることもある。
【0143】
本実施形態において、前記引張弾性率Ei’は、例えば、前記試験片のいずれの測定方向においても、先に例示した3とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。例えば、前記試験片がMD及びTDを有する場合、Ei’は、MD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した3とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおけるEi’の数値範囲と、TDにおけるEi’の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0144】
前記引張弾性率Ei’の測定対象である前記試験片の厚さは、特に限定されず、これらの測定を高精度に行うことができる厚さであればよい。例えば、前記試験片の厚さは、10~200μmであってもよい。
【0145】
中間層から作製した前記試験片のEi’は、中間層の含有成分、例えば、樹脂の種類及び含有量を調節することにより、調節できる。
【0146】
<引張弾性率比Ei’/Eb’>
本実施形態においては、基材から作製した試験片の引張弾性率Eb’と、中間層から作製した試験片の引張弾性率Ei’と、を用いて算出される、引張弾性率比Ei’/Eb’は、0.5以下であることが好ましく、例えば、0.45以下、0.4以下、及び0.35以下のいずれかであってもよい。引張弾性率比Ei’/Eb’が、前記上限値以下であることで、前記ダイボンディングシートのエキスパンド時において、基材の伸長に対して、カーフ幅が十分に広くなり、フィルム状接着剤の切断性が向上する。
【0147】
先の説明のとおり、Eb’及びEi’は、いずれも、その測定対象である試験片(Eb’の場合は基材の試験片、Ei’の場合は中間層の試験片)の測定方向によって、異なり得る。本実施形態においては、引張弾性率比Ei’/Eb’の算出に用いるEi’及びEb’としては、前記ダイボンディングシートにおける、基材と中間層の配置方向を反映したものを採用する。
例えば、基材の試験片と、中間層の試験片とが、いずれもMD及びTDを有しており、前記ダイボンディングシートにおいて、基材のMDと、中間層のMDと、が一致している(換言すると、基材のTDと、中間層のTDと、が一致している)場合には、引張弾性率比Ei’/Eb’は、これらのMD及びTDのいずれか一方又は両方において、先に例示した4とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおけるEi’/Eb’の数値範囲と、TDにおけるEi’/Eb’の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0148】
前記引張弾性率比Ei’/Eb’の下限値は、0より大きければ特に限定されない。例えば、Eb’の好ましい上限値の一例である200MPaと、Ei’の好ましい下限値の一例である10MPaと、の組み合わせから算出されるという観点から、引張弾性率比Ei’/Eb’は0.05以上であってもよい。
【0149】
前記引張弾性率比Ei’/Eb’は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、引張弾性率比Ei’/Eb’は、0.05~0.5、0.05~0.45、0.05~0.4、及び0.05~0.35のいずれかであってもよい。
そして、基材の試験片と、中間層の試験片とが、いずれもMD及びTDを有しており、前記ダイボンディングシートにおいて、基材のMDと、中間層のMDと、が一致している(換言すると、基材のTDと、中間層のTDと、が一致している)場合には、引張弾性率比Ei’/Eb’は、これらのMD及びTDのいずれか一方又は両方において、ここで例示した4とおりの数値範囲のいずれかであってもよい。その場合、MDにおけるEi’/Eb’の数値範囲と、TDにおけるEi’/Eb’の数値範囲と、の組み合わせは、任意である。
【0150】
先の説明のとおり、中間層の幅の最大値は、粘着剤層の幅の最大値と、基材の幅の最大値よりも小さくなっている。
中間層の幅の最大値は、半導体ウエハの大きさを考慮して、適宜選択できる。例えば、中間層の幅の最大値は、150~160mm、200~210mm、又は300~310mmであってもよい。これら3つの数値範囲は、ダイボンディングシートとの貼付面に対して平行な方向における幅の最大値が、150mmである半導体ウエハ、200mmである半導体ウエハ、又は300mmである半導体ウエハ、に対応している。ただし、本実施形態においては、先の説明のように、ダイシング後の半導体ウエハに対して、ダイボンディングシートを貼付する。なお、「ダイシング後の半導体ウエハ」とは、後述する「半導体チップ群」と同義である。
【0151】
本明細書においては、特に断りのない限り、「中間層の幅」とは、例えば、「中間層の第1面に対して平行な方向における幅」を意味する。例えば、平面形状が円形状である中間層の場合、上述の中間層の幅の最大値は、前記平面形状である円の直径となる。
これは、半導体ウエハの場合も同様である。すなわち、「半導体ウエハの幅」とは、上述の、「半導体ウエハの、そのダイボンディングシートとの貼付面に対して平行な方向における幅」を意味する。例えば、平面形状が円形状である半導体ウエハの場合、上述の半導体ウエハの幅の最大値は、前記平面形状である円の直径となる。
【0152】
150~160mmという中間層の幅の最大値は、150mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
同様に、200~210mmという中間層の幅の最大値は、200mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
同様に、300~310mmという中間層の幅の最大値は、300mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
すなわち、本実施形態においては、中間層の幅の最大値と、半導体ウエハの幅の最大値と、の差は、例えば、半導体ウエハの幅の最大値が150mm、200mm及び300mmのいずれであっても、0~10mmであってよい。
中間層の幅の最大値がこのような条件を満たすことにより、前記ダイボンディングシートのエキスパンドによる、フィルム状接着剤の切断時において、後述する切断後のフィルム状接着剤の目的外の飛散を抑制する効果が高くなる。
【0153】
中間層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、20~150μmであることが好ましく、50~120μmであることがより好ましい。中間層の厚さが前記下限値以上であることで、中間層の構造がより安定化する。中間層の厚さが前記上限値以下であることで、前記ダイボンディングシートのエキスパンド時において、フィルム状接着剤の切断性がより向上する。さらに、フィルム状接着剤を切断後のダイボンディングシートのエキスパンド時(換言すると、前記積層シートのエキスパンド時)において、カーフ幅を十分に広く、かつ高い均一性で保持する効果が、より高くなる。
ここで、「中間層の厚さ」とは、中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層の厚さとは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0154】
中間層は、基材よりも柔軟であることが好ましい。例えば、Ei’がEb’未満(Ei’<Eb’)である中間層は、この条件を満たし、このような観点でより好ましい中間層としては、先に説明したように、引張弾性率比Ei’/Eb’が0.5以下となる中間層が挙げられる。
【0155】
○フィルム状接着剤
前記フィルム状接着剤は、硬化性を有し、熱硬化性を有するものが好ましく、感圧接着性を有するものが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
【0156】
ダイボンディングシートを上方から見下ろして平面視したときに、フィルム状接着剤の面積(すなわち第1面の面積)は、分割前の半導体ウエハの面積に近くなるように、基材の面積(すなわち第1面の面積)及び粘着剤層の面積(すなわち第1面の面積)よりも小さく設定されていることが好ましい。このようなダイボンディングシートでは、粘着剤層の第1面の一部に、フィルム状接着剤と接触していない領域が存在する。これにより、ダイボンディングシートのエキスパンドがより容易になるとともに、エキスパンド時にフィルム状接着剤に加えられる力が分散しないため、フィルム状接着剤の切断がより容易となる。
【0157】
フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。
【0158】
接着剤組成物の塗工は、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0159】
接着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。接着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0160】
フィルム状接着剤は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0161】
先の説明のとおり、フィルム状接着剤の幅の最大値は、粘着剤層の幅の最大値と、基材の幅の最大値よりも小さくなっている。
フィルム状接着剤の幅の最大値は、半導体ウエハの大きさに対して、先に説明した中間層の幅の最大値と同様であってよい。
すなわち、フィルム状接着剤の幅の最大値は、半導体ウエハの大きさを考慮して、適宜選択できる。例えば、フィルム状接着剤の幅の最大値は、150~160mm、200~210mm、又は300~310mmであってもよい。これら3つの数値範囲は、ダイボンディングシートとの貼付面に対して平行な方向における幅の最大値が、150mmである半導体ウエハ、200mmである半導体ウエハ、又は300mmである半導体ウエハ、に対応している。
【0162】
本明細書においては、特に断りのない限り、「フィルム状接着剤の幅」とは、例えば、「フィルム状接着剤の第1面に対して平行な方向における幅」を意味する。例えば、平面形状が円形状であるフィルム状接着剤の場合、上述のフィルム状接着剤の幅の最大値は、前記平面形状である円の直径となる。
また、特に断りのない限り、「フィルム状接着剤の幅」とは、後述するフィルム状接着剤付き半導体チップの製造過程における、切断後のフィルム状接着剤の幅ではなく、「切断前(未切断)のフィルム状接着剤の幅」を意味する。
【0163】
150~160mmというフィルム状接着剤の幅の最大値は、150mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
同様に、200~210mmというフィルム状接着剤の幅の最大値は、200mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
同様に、300~310mmというフィルム状接着剤の幅の最大値は、300mmという半導体ウエハの幅の最大値に対して、同等であるか、又は10mmを超えない範囲で大きいことを意味する。
すなわち、本実施形態においては、フィルム状接着剤の幅の最大値と、半導体ウエハの幅の最大値と、の差は、例えば、半導体ウエハの幅の最大値が150mm、200mm及び300mmのいずれであっても、0~10mmであってよい。
フィルム状接着剤の幅の最大値がこのような条件を満たすことにより、前記ダイボンディングシートのエキスパンドによる、フィルム状接着剤の切断時において、後述する切断後のフィルム状接着剤の目的外の飛散を抑制する効果が高くなる。
【0164】
本実施形態においては、中間層の幅の最大値と、フィルム状接着剤の幅の最大値と、はいずれも、上述の数値範囲のいずれかであってもよい。
すなわち、本実施形態のダイボンディングシートの一例としては、中間層の幅の最大値と、フィルム状接着剤の幅の最大値と、がともに、150~160mm、200~210mm、又は300~310mmであるものが挙げられる。
【0165】
フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、3~10μmであることが特に好ましい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることで、被着体(半導体チップ)に対してより高い接着力が得られる。フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることで、エキスパンドによるフィルム状接着剤の切断性がより向上し、また、フィルム状接着剤に由来する切断片の発生量をより低減できる。
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
次に、前記接着剤組成物について説明する。
【0166】
<<接着剤組成物>>
好ましい接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)を含有するものが挙げられる。以下、各成分について説明する。
なお、以下に示す接着剤組成物は、好ましいものの一例であり、本実施形態における接着剤組成物は、以下に示すものに限定されない。
【0167】
[重合体成分(a)]
重合体成分(a)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分であり、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与すると共に、半導体チップ等の接着対象への接着性(換言すると貼付性)を向上させるための重合体化合物である。また、重合体成分(a)は、後述するエポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)に該当しない成分でもある。
【0168】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する重合体成分(a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0169】
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂であることが好ましい。
【0170】
接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、重合体成分(a)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、重合体成分(a)の含有量の割合)は、20~75質量%であることが好ましく、30~65質量%であることがより好ましい。
【0171】
[熱硬化性成分(b)]
熱硬化性成分(b)は、熱硬化性を有し、フィルム状接着剤を熱硬化させるための成分である。
熱硬化性成分(b)は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化性成分(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
・エポキシ樹脂(b1)
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0173】
エポキシ樹脂(b1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0174】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ樹脂(b1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0175】
・熱硬化剤(b2)
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0176】
熱硬化剤(b2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
【0177】
熱硬化剤(b2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
【0178】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化剤(b2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0179】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、1~100質量部、1~50質量部、及び1~25質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0180】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化性成分(b)の含有量(すなわち、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、5~75質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが特に好ましく、例えば、5~35質量部、及び5~20質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、中間層とフィルム状接着剤との間の剥離力が、より安定する。
【0181】
前記フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記フィルム状接着剤が含有する他の成分で好ましいものとしては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。
【0182】
[硬化促進剤(c)]
硬化促進剤(c)は、接着剤組成物の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0183】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0184】
硬化促進剤(c)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、熱硬化性成分(b)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(c)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(c)が、高温・高湿度条件下でフィルム状接着剤中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0185】
[充填材(d)]
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、エキスパンドによるその切断性がより向上する。また、フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤が充填材(d)を含有することにより、硬化後のフィルム状接着剤の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0186】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0187】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0188】
充填材(d)を用いる場合、接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、充填材(d)の含有量の割合)は、5~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の充填材(d)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。
【0189】
[カップリング剤(e)]
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有する。
【0190】
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、熱硬化性成分(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0191】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0192】
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、フィルム状接着剤の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0193】
[架橋剤(f)]
重合体成分(a)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)は、重合体成分(a)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0194】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0195】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
【0196】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0197】
架橋剤(f)を用いる場合、接着剤組成物において、架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.3~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
【0198】
[エネルギー線硬化性樹脂(g)]
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、フィルム状接着剤は、エネルギー線の照射によって、その特性を変化させることができる。
【0199】
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0200】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0201】
エネルギー線硬化性樹脂(g)を用いる場合、接着剤組成物において、接着剤組成物の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0202】
[光重合開始剤(h)]
接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
【0203】
接着剤組成物における光重合開始剤(h)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物等が挙げられる。
また、光重合開始剤(h)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0204】
接着剤組成物が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0205】
光重合開始剤(h)を用いる場合、接着剤組成物において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0206】
[汎用添加剤(i)]
汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0207】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0208】
[溶媒]
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0209】
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0210】
接着剤組成物の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0211】
<<接着剤組成物の製造方法>>
接着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
接着剤組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0212】
○帯電防止層
前記ダイボンディングシートにおいては、その中のいずれかの層を、帯電防止層とすることができる。
【0213】
このような場合、好ましい前記ダイボンディングシートとしては、例えば、前記基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、かつ、前記基材は、前記粘着剤層側とは反対側に位置する面上に帯電防止層(本明細書においては、「背面帯電防止層」と略記することがある)を備えているダイボンディングシートが挙げられる。
【0214】
また、好ましい前記ダイボンディングシートとしては、例えば、前記基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、かつ、前記基材は帯電防止性を有する(本明細書においては、この基材を「帯電防止性基材」と略記することがある)ダイボンディングシートが挙げられる。
【0215】
また、好ましい前記ダイボンディングシートとしては、例えば、前記基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、かつ、帯電防止層として、前記基材の、前記粘着剤層側に位置する面上に帯電防止層(本明細書においては、「表面帯電防止層」と略記することがある)を備えたダイボンディングシートが挙げられる。
【0216】
前記帯電防止層(背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層)は、いずれも帯電防止剤を含有する。これらの中でも、背面帯電防止層又は帯電防止性基材を備えたダイボンディングシートが好ましい。
【0217】
ダイボンディングシートの前記表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であってもよい。次に述べるように、前記表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であることにより、半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0218】
本発明のダイボンディングシートは半導体群の裏面に貼付され、ダイボンディングシート及び半導体群から構成される積層体を形成し、この積層体の基材側の面がダイシングテーブル上に固定される。
【0219】
次いで、ダイシングテーブル上に固定された状態のこの積層体において、半導体ウエハを分割し、フィルム状接着剤を切断して、基板、粘着剤層、中間層、切断後のフィルム状接着剤及び分割後の半導体ウエハ(すなわち半導体チップ)をこの順に備えた積層体(以下、「分割済み積層体」と略記する)を得る。
【0220】
次いで、分割済み積層体の、ダイシングテーブル上での固定状態を解除し、積層体を洗浄用テーブル上に搬送して、このテーブル上に固定する。
次いで、洗浄用テーブル上に固定された状態の積層体を水で洗浄し、前工程でのダイシング時に生じ、付着した切削屑を洗い流して取り除く。この切削屑は、半導体ウエハ、フィルム状接着剤に由来する。洗浄は、通常、洗浄用テーブルを回転させながら行う。
【0221】
次いで、この洗浄後の、分割済み積層体の、洗浄用テーブル上での固定状態を解除し、積層体を乾燥用テーブル上に搬送して、このテーブル上に固定する。
次いで、乾燥用テーブル上に固定された状態の積層体を乾燥させ、前工程での洗浄時に付着した水を取り除く。乾燥は、通常、乾燥用テーブルを回転させながら行う。
【0222】
次いで、この乾燥後の、分割済み積層体の、乾燥用テーブル上での固定状態を解除し、次工程を行う装置に、積層体を搬送して、次工程を行う。そして、最終的に、切断済みのフィルム状接着剤を裏面に備えた半導体チップ(フィルム状接着剤付き半導体チップ)を、中間層から引き離してピックアップする。
【0223】
以上のように、分割済み積層体は、いずれかのテーブル上に固定され、作業が行われた後、この固定状態を解除され、次工程を行う箇所に搬送される。これら積層体は、例えば、いずれのテーブルにおいても、吸着によって固定され、吸着の解除後に、テーブルから引き離されて、次の箇所に搬送される。通常、これらテーブルはいずれも、その厚さ方向において貫通する空隙部を有しており、テーブルの前記積層体と接触している側とは反対側が減圧されることにより、前記積層体はテーブル上で吸着され、固定される。
【0224】
上述した通り、半導体ウエハと前記ダイボンディングシートを用いて、裏面にフィルム状接着剤を備えた半導体チップを製造する過程では、この積層体を、テーブル上で固定した状態とし、次いで、テーブル上の固定面から引き離す、という操作を行う。前記ダイボンディングシートにおいて、前記基材の最表層の前記表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であることにより、前記積層体の引き離し時の帯電(本明細書においては、「引き離し時帯電」と称することがある)が抑制される。その結果、この引き離し時の半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0225】
前記ダイボンディングシートの前記表面抵抗率は、実施例においても後述するように、ダイボンディングシート中の基材側の最表層を測定対象とし、表面抵抗率計を用いて、印加電圧を100Vとして、測定できる。
【0226】
○背面帯電防止層
前記背面帯電防止層は、シート状又はフィルム状であり、帯電防止剤を含有する。
前記背面帯電防止層は、前記帯電防止剤以外に、樹脂を含有していてもよい。
【0227】
背面帯電防止層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0228】
背面帯電防止層の厚さは、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、例えば、100nm以下であってもよい。厚さが200nm以下である背面帯電防止層においては、十分な帯電防止能を維持しつつ、帯電防止剤の使用量を低減できるため、このような背面帯電防止層を備えたダイボンディングシートのコストを低減できる。さらに、背面帯電防止層の厚さが100nm以下である場合には、上述の効果に加え、背面帯電防止層を備えていることによる、ダイボンディングシートの特性の変動を最小限に抑制できるという効果も得られる。前記特性としては、例えば、エキスパンド性が挙げられる。
ここで、「背面帯電防止層の厚さ」とは、背面帯電防止層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる背面帯電防止層の厚さとは、背面帯電防止層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0229】
背面帯電防止層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、及び65nm以上のいずれかであってもよい。厚さが前記下限値以上である背面帯電防止層は、形成がより容易であり、かつ、構造がより安定である。
【0230】
背面帯電防止層の厚さは、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、背面帯電防止層の厚さは、10~200nmであることが好ましく、例えば、20nm~200nm、30~200nm、40~180nm、及び65~100nmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、背面帯電防止層の厚さの一例である。
【0231】
背面帯電防止層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、フィルム状接着剤がエネルギー線硬化性を有する場合には、背面帯電防止層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、ダイボンディング合シート中のフィルム状接着剤を、背面帯電防止層を介して光学的に検査するためには、背面帯電防止層は透明であることが好ましい。
【0232】
<<帯電防止組成物(VI-1))>>
背面帯電防止層は、前記帯電防止剤を含有する帯電防止組成物(VI-1)を用いて形成できる。例えば、背面帯電防止層の形成対象面に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に背面帯電防止層を形成できる。帯電防止組成物(VI-1)における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、背面帯電防止層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
背面帯電防止層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。
【0233】
帯電防止組成物(VI-1)の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法であってよい。
【0234】
基材上に背面帯電防止層を設ける場合には、例えば、基材上に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に背面帯電防止層を積層すればよい。また、基材上に背面帯電防止層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に背面帯電防止層を形成しておき、この背面帯電防止層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に背面帯電防止層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、ダイボンディングシートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0235】
帯電防止組成物(VI-1)の乾燥条件は、特に限定されないが、帯電防止組成物(VI-1)は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する帯電防止組成物(VI-1)は、例えば、40~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0236】
帯電防止組成物(VI-1)は、前記帯電防止剤以外に、前記樹脂を含有していてもよい。
【0237】
[帯電防止剤]
前記帯電防止剤は、導電性化合物等、公知のものでよく、特に限定されない。前記帯電防止剤は、例えば、低分子化合物及び高分子化合物(換言すると、オリゴマー又はポリマー)のいずれであってもよい。
【0238】
前記帯電防止剤のうち、低分子化合物としては、例えば、各種イオン液体が挙げられる。
前記イオン液体としては、例えば、ピリミジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、イミダゾリウム塩、モルホリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等、公知のものが挙げられる。
【0239】
前記帯電防止剤のうち、高分子化合物としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(本明細書においては、「PEDOT/PSS」と称することがある)、ポリピロール、カーボンナノチューブ等が挙げられる。前記ポリピロールは、複数個(多数)のピロール骨格を有するオリゴマー又はポリマーである。
【0240】
帯電防止組成物(VI-1)が含有する帯電防止剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0241】
帯電防止組成物(VI-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する帯電防止剤の含有量の割合(すなわち、背面帯電防止層における、背面帯電防止層の総質量に対する、帯電防止剤の含有量の割合)は、例えば、0.1~30質量%、及び0.5~15質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、ダイボンディングシートの剥離帯電の抑制効果が高くなり、その結果、フィルム状接着剤と半導体ウエハとの間の異物混入の抑制効果が高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、背面帯電防止層の強度がより高くなる。
【0242】
[樹脂]
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層が含有する前記樹脂は、硬化性及び非硬化性のいずれであってもよく、硬化性である場合、エネルギー線硬化性及び熱硬化性のいずれであってもよい。
【0243】
好ましい前記樹脂としては、例えば、バインダー樹脂として機能するものが挙げられる。
【0244】
前記樹脂として、より具体的には、例えば、アクリル樹脂等が挙げられ、エネルギー線硬化性アクリル樹脂であることが好ましい。
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層における前記アクリル樹脂としては、例えば、前記粘着剤層におけるアクリル樹脂と同じものが挙げられる。帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層における前記エネルギー線硬化性アクリル樹脂としては、例えば、前記粘着剤層における粘着性樹脂(I-2a)と同じものが挙げられる。
【0245】
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層が含有する前記樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0246】
帯電防止組成物(VI-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する前記樹脂の含有量の割合(すなわち、背面帯電防止層における、背面帯電防止層の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、例えば、30~99.9質量%、35~98質量%、60~98質量%、及び85~98質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、背面帯電防止層の強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、帯電防止層の帯電防止剤の含有量をより多くすることが可能となる。
【0247】
[エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤]
帯電防止組成物(VI-1)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、エネルギー線硬化性化合物を含有していてもよい。
また、帯電防止組成物(VI-1)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、前記樹脂の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、前記エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤としては、例えば、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)が含有する、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-1)の、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤の含有量は、それぞれ、特に限定されず、前記樹脂、エネルギー線硬化性化合物又は光重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0248】
[その他の添加剤、溶媒]
帯電防止組成物(VI-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、帯電防止組成物(VI-1)は、上述の粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する、その他の添加剤(ただし、帯電防止剤を除く)及び溶媒と同じものが挙げられる。さらに、帯電防止組成物(VI-1)が含有する前記その他の添加剤としては、上記のもの以外にも、乳化剤も挙げられる。さらに、帯電防止組成物(VI-1)が含有する溶媒としては、上記のもの以外にも、エタノール等の他のアルコール;2-メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、2-エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル)、1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等のアルコキシアルコール等も挙げられる。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-1)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0249】
<<帯電防止組成物(VI-1)の製造方法>>
帯電防止組成物(VI-1)は、前記帯電防止剤と、必要に応じて前記帯電防止剤以外の成分等の、帯電防止組成物(VI-1)を構成するための各成分を配合することで得られる。
帯電防止組成物(VI-1)は、配合成分が異なる点以外は、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0250】
○帯電防止性基材
前記帯電防止性基材は、シート状又はフィルム状であり、帯電防止性を有し、さらに前記基材と同様の機能も有する。
前記ダイボンディングシートにおいて、帯電防止性基材は、先に説明した基材と、背面帯電防止層と、の積層物と同様の機能を有し、この積層物に代えて配置できる。
帯電防止性基材は、帯電防止剤及び樹脂を含有し、例えば、さらに帯電防止剤を含有する点以外は、先に説明した基材と同様であってよい。
【0251】
帯電防止性基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0252】
帯電防止性基材の厚さは、例えば、先に説明した基材の厚さと、同様であってよい。帯電防止性基材の厚さがこのような範囲であることで、前記ダイボンディングシートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性と、がより向上する。
ここで、「帯電防止性基材の厚さ」とは、帯電防止性基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる帯電防止性基材の厚さとは、帯電防止性基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0253】
帯電防止性基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、フィルム状接着剤がエネルギー線硬化性を有する場合には、背面帯電防止層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤を、帯電防止性基材を介して光学的に検査するためには、帯電防止性基材は透明であることが好ましい。
【0254】
帯電防止性基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、中間層又はフィルム状接着剤)との接着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;等が表面に施されていてもよい。また、帯電防止性基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0255】
<<帯電防止組成物(VI-2))>>
帯電防止性基材は、例えば、前記帯電防止剤及び樹脂を含有する帯電防止組成物(VI-2)を成形することで製造できる。帯電防止組成物(VI-2)における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、帯電防止性基材における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0256】
帯電防止組成物(VI-2)の成形は、公知の方法で行えばよく、例えば、前記基材の製造時において、前記樹脂組成物を成形する場合と同じ方法で行うことができる。
【0257】
[帯電防止剤]
帯電防止組成物(VI-2)が含有する帯電防止剤としては、前記背面帯電防止層が含有する帯電防止剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する帯電防止剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0258】
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材において、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合は、7.5質量%以上であることが好ましく、8.5質量%以上であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、ダイボンディングシートの剥離帯電の抑制効果が高くなり、その結果、フィルム状接着剤と半導体ウエハとの間の異物混入の抑制効果が高くなる。
【0259】
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材において、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合の上限値は、特に限定されない。例えば、帯電防止剤の相溶性がより良好となる点では、前記割合は20質量%以下であることが好ましい。
【0260】
前記帯電防止剤の含有量の割合は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記割合は、7.5~20質量%であることが好ましく、8.5~20質量%であることがより好ましい。ただし、これらは、前記割合の一例である。
【0261】
[樹脂]
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材が含有する樹脂としては、前記基材が含有する樹脂と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材が含有する前記樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0262】
帯電防止組成物(VI-2)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する前記樹脂の含有量の割合(すなわち、帯電防止性基材における、帯電防止性基材の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、30~99.9質量%であることが好ましく、35~98質量%であることがより好ましく、60~98質量%であることがさらに好ましく、85~98質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、帯電防止性基材の強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、帯電防止性基材の帯電防止剤の含有量をより多くすることが可能となる。
【0263】
[光重合開始剤]
帯電防止組成物(VI-2)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、前記樹脂の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、前記光重合開始剤としては、例えば、粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-2)の光重合開始剤の含有量は、特に限定されず、前記樹脂又は光重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0264】
[添加剤、溶媒]
帯電防止組成物(VI-2)は、前記帯電防止剤、樹脂及び光重合開始剤以外に、これらのいずれにも該当しない、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する前記添加剤としては、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する、その他の添加剤(ただし、帯電防止剤を除く)と同じものが挙げられる。
また、帯電防止組成物(VI-2)は、その流動性を向上させるために、溶媒を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、前記溶媒としては、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、帯電防止剤及び樹脂は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-2)の、添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0265】
<<帯電防止組成物(VI-2)の製造方法>>
帯電防止組成物(VI-2)は、前記帯電防止剤と、前記樹脂と、必要に応じてこれら以外の成分等の、帯電防止組成物(VI-2)を構成するための各成分を配合することで得られる。
帯電防止組成物(VI-2)は、配合成分が異なる点以外は、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0266】
○表面帯電防止層
前記表面帯電防止層は、ダイボンディングシートにおけるその配置位置が、前記背面帯電防止層とは異なるが、その構成自体は、前記背面帯電防止層と同じである。例えば、表面帯電防止層は、帯電防止組成物(VI-1)を用いて、先に説明した背面帯電防止層の形成方法と同じ方法で形成できる。そこで、表面帯電防止層の詳細な説明は省略する。
ダイボンディングシートが表面帯電防止層及び背面帯電防止層をともに備えている場合、これら表面帯電防止層及び背面帯電防止層は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0267】
前記ダイボンディングシートの一実施形態としては、例えば、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、
式(1):(X1-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、
式(2):(X2-X1)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、
式(3):(X2-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%であり、
前記基材は、前記基材の片面又は両面上に帯電防止層を備えているか、又は、前記基材は、帯電防止性を有しており、前記基材側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であるものが挙げられる。
【0268】
前記ダイボンディングシートの一実施形態としては、例えば、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、
式(1):(X1-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、
式(2):(X2-X1)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、
式(3):(X2-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%であり、
前記基材は、前記粘着剤層側とは反対側に位置する面上に帯電防止層を備え、前記基材の最表層の表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であるものが挙げられる。
【0269】
前記ダイボンディングシートの一実施形態としては、例えば、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、
式(1):(X1-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、
式(2):(X2-X1)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、
式(3):(X2-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%であり、
前記基材は、帯電防止性を有し、前記基材の最表層の表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であるものが挙げられる。
【0270】
前記ダイボンディングシートの一実施形態としては、例えば、基材を備え、前記基材上に、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤がこの順に積層されて構成されており、大きさが4.5mm×15mmである前記基材の試験片を作製し、熱機械分析装置を用いて、荷重を2gとして、前記試験片を温度変化させずに、前記試験片の、その温度が23℃であるときの変位量X0を測定し、前記変位量X0を測定後の前記試験片を、昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、その温度が70℃になるまで昇温したときの、前記試験片の変位量の最大値X1を測定し、前記変位量X1を測定後の前記試験片を、荷重を2gとして、23℃の温度条件下で放冷したときの、前記試験片の変位量の最小値X2を測定したとき、
式(1):(X1-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の加熱時変化率が0~2%であり、
式(2):(X2-X1)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の放冷時変化率が-2~0%であり、
式(3):(X2-X0)/15×100
で算出される、前記試験片の変位量の総合変化率が-2~1%であり、
前記基材は、前記粘着剤層側に位置する面上に帯電防止層を備え、前記基材の最表層の表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であるものが挙げられる。
【0271】
◇ダイボンディングシートの製造方法
前記ダイボンディングシートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0272】
前記ダイボンディングシートは、例えば、基材、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤を、それぞれあらかじめ用意しておき、これらを、基材、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤の順となるように貼り合わせて積層することにより、製造できる。このとき、必要に応じて、基材及び中間層のMD又はTDが、目的とする方向となるように、基材及び中間層の配置方向を調節する。
【0273】
また、前記ダイボンディングシートは、これを構成するための、複数の層が積層されて構成された、2種以上の中間積層体をあらかじめ作製しておき、これら中間積層体同士を貼り合わせることでも、製造できる。中間積層体の構成は、適宜任意に選択できる。例えば、基材及び粘着剤層が積層された構成を有する第1中間積層体と、中間層及びフィルム状接着剤が積層された構成を有する第2中間積層体と、をあらかじめ作製しておき、第1中間積層体中の粘着剤層と、第2中間積層体中の中間層と、を貼り合わせることで、ダイボンディングシートを製造できる。ただし、この製造方法は一例である。
【0274】
フィルム状接着剤上に剥離フィルムを備えた状態のダイボンディングシートを製造する場合には、例えば、剥離フィルム上にフィルム状接着剤を作製し、この状態を維持したまま、残りの層を積層して、ダイボンディングシートを作製してもよいし、基材、粘着剤層、中間層及びフィルム状接着剤をすべて積層した後に、フィルム状接着剤上に剥離フィルムを積層して、ダイボンディングシートを作製してもよい。剥離フィルムは、ダイボンディングシートの使用時までに、必要な段階で取り除けばよい。
【0275】
基材、粘着剤層、中間層、フィルム状接着剤及び剥離フィルム以外の別の層を備えているダイボンディングシートは、上述の製造方法において、適切なタイミングで、この別の層を形成し、積層する工程を追加して行うことで、製造できる。
【0276】
◇ダイボンディングシートの使用方法(フィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法)
前記ダイボンディングシートは、半導体装置の製造過程において、フィルム状接着剤付き半導体チップの製造時に使用できる。
以下、図面を参照しながら、前記ダイボンディングシートの使用方法(フィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法)について、詳細に説明する。
【0277】
図3は、ダイボンディングシートの使用対象である半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
図4は、前記ダイボンディングシートの使用方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示すダイボンディングシート101を例に挙げて、その使用方法について説明する。
【0278】
まず、ダイボンディングシート101の使用に先立ち、
図3Aに示すように、半導体ウエハ9’を用意し、その回路形成面9a’に、バックグラインドテープ(表面保護テープ)8を貼付する。
図3中、符号W
9’は、半導体ウエハ9’の幅を示している。
【0279】
次いで、半導体ウエハ9’の内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光(図示略)を照射することにより、
図3Bに示すように、半導体ウエハ9’の内部に改質層90’を形成する。
前記レーザー光は、半導体ウエハ9’の裏面9b’側から、半導体ウエハ9’に照射することが好ましい。
【0280】
次いで、グラインダー(図示略)を用いて、半導体ウエハ9’の裏面9b’を研削する。これにより、半導体ウエハ9’の厚さを目的とする値に調節するとともに、このときの半導体ウエハ9’に加えられる研削時の力を利用することによって、改質層90’の形成部位において、半導体ウエハ9’を分割し、
図3Cに示すように、複数個の半導体チップ9を形成する。
図3中、符号9aは、半導体チップ9の回路形成面を示しており、半導体ウエハ9’の回路形成面9a’に対応している。また、符号9bは、半導体チップ9の裏面を示しており、半導体ウエハ9’の研削後の裏面9b’に対応している。
以上により、ダイボンディングシート101の使用対象である半導体チップ9が得られる。より具体的には、本工程により、バックグラインドテープ8上で複数個の半導体チップ9が整列して固定された状態の半導体チップ群901が得られる。
【0281】
半導体チップ群901を、その上方から見下ろして平面視したときに、半導体チップ群901の最も外側の部位を結んで形成される平面形状(本明細書においては、このような平面形状を単に「半導体チップ群の平面形状」と称することがある)は、半導体ウエハ9’を同様に平面視したときの平面形状と全く同じであるか、又は、これら平面形状同士の相違点は無視し得るほどに軽微であって、半導体チップ群901の前記平面形状は、半導体ウエハ9’の前記平面形状と概ね同じであるといえる。
したがって、半導体チップ群901の前記平面形状の幅は、
図3Cに示すように、半導体ウエハ9’の幅W
9’と同じであると見做せる。そして、半導体チップ群901の前記平面形状の幅の最大値は、半導体ウエハ9’の幅W
9’ の最大値と同じであると見做せる。
【0282】
なお、ここでは、半導体ウエハ9’から半導体チップ9を目的どおりに形成できた場合について示しているが、半導体ウエハ9’の裏面9b’の研削時の条件によっては、半導体ウエハ9’の一部の領域において、半導体チップ9への分割が行われないこともある。
【0283】
次いで、上記で得られた半導体チップ9(半導体チップ群901)を用いて、フィルム状接着剤付き半導体チップを製造する。
まず、
図4Aに示すように、剥離フィルム15を取り除いた状態の、1枚のダイボンディングシート101を加熱しながら、その中のフィルム状接着剤14を、半導体チップ群901中のすべての半導体チップ9の裏面9bに貼付する。
【0284】
本工程では、ダイボンディングシート101を用いることにより、ダイボンディングシート101を、加熱しながらそのフィルム状接着剤14によって、半導体チップ9へ安定して貼付できる。
【0285】
ダイボンディングシート101中の中間層13の幅W13の最大値と、フィルム状接着剤14の幅W14の最大値は、いずれも、半導体ウエハ9’の幅W9’(換言すると、半導体チップ群901の幅)の最大値と全く同じであるか、又は、同じではないが、誤差が軽微で、ほぼ同等となっている。
【0286】
より具体的には、W9’の最大値は、W13の最大値及びW14の最大値に対して、0.88~1.12倍であることが好ましく、0.9~1.1倍であることがより好ましく、0.92~1.08倍であることが特に好ましい。すなわち、[W9’の最大値]/[W13の最大値]の値、及び[W9’の最大値]/[W14の最大値]の値は、いずれも、0.88~1.12であることが好ましく、0.9~1.1であることがより好ましく、0.92~1.08であることが特に好ましい。
【0287】
W13の最大値と、幅W9’の最大値と、の差([W13の最大値]-[幅W9’の最大値])は、0~10mmであることが好ましく、W14の最大値と、W9’の最大値と、の差([W14の最大値]-[幅W9’の最大値])は、0~10mmであることが好ましい。
【0288】
ダイボンディングシート101の貼付時の加熱温度は、特に限定されないが、ダイボンディングシート101の加熱貼付安定性がより向上する点から、40~70℃であることが好ましい。
【0289】
次いで、この固定した状態の半導体チップ群からバックグラインドテープ8を取り除く。そして、
図4Bに示すように、ダイボンディングシート101を、冷却しながら、その表面(例えば、粘着剤層12の第1面12a)に対して平行な方向に引き伸ばすことにより、エキスパンドする。ここでは、ダイボンディングシート101のエキスパンドの方向を矢印E
1で示している。このようにエキスパンドすることにより、フィルム状接着剤14を半導体チップ9の外周に沿って切断する。
本工程により、半導体チップ9と、その裏面9bに設けられた切断後のフィルム状接着剤140と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップ914が、中間層13上で整列して固定された状態の、フィルム状接着剤付き半導体チップ群910が得られる。
【0290】
先の説明のとおり、半導体ウエハ9’の分割時に、半導体ウエハ9’の一部の領域において、半導体チップ9への分割が行われなかった場合には、本工程を行うことにより、この領域は半導体チップへ分割される。
【0291】
ダイボンディングシート101は、その温度を-5~5℃としてエキスパンドすることが好ましい。ダイボンディングシート101を、このように冷却してエキスパンドすることにより、フィルム状接着剤14をより容易かつ高精度に切断できる。
【0292】
ダイボンディングシート101のエキスパンドは、公知の方法で行うことできる。例えば、ダイボンディングシート101中の粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層13及びフィルム状接着剤14が積層されていない周縁部近傍の領域を、リングフレーム等の治具に固定した後、ダイボンディングシート101の中間層13及びフィルム状接着剤14が積層されている領域全体を、基材11から粘着剤層12へ向かう方向に、基材11側から突き上げることにより、ダイボンディングシート101をエキスパンドできる。
【0293】
なお、
図4Bでは、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層13及びフィルム状接着剤14が積層されていない非積層領域は、中間層13の第1面13aに対してほぼ平行となっているが、上述のように、ダイボンディングシート101の突き上げによりエキスパンドしている状態では、前記非積層領域は、粘着剤層12の外周に近付くにしたがって、上記の突き上げの方向とは逆方向に高さが下降する傾斜面を含む。
【0294】
本工程では、中間層13の幅W
13の最大値と、半導体ウエハ9’の幅W
9’の最大値と、の差が、0~10mmである場合には、切断後のフィルム状接着剤140の目的外の飛散を抑制する高い効果が得られる。ここで、「切断後のフィルム状接着剤140の目的外の飛散」とは、切断後のフィルム状接着剤140のうち、元々半導体ウエハ9’に貼付されていなかったフィルム状接着剤14の周縁部(
図4では、このような周縁部の記載を省略している)に由来するものが飛散して、半導体チップ9の回路形成面9aに付着する不具合を意味する。
【0295】
本工程では、ダイボンディングシート101において、引張弾性率比Ei’/Eb’が0.5以下であることで、カーフ幅が十分に広くなり、フィルム状接着剤14の切断性が向上する。
【0296】
次いで、
図4Cに示すように、ダイボンディングシート101に由来する、基材11、粘着剤層12及び中間層13の積層シートを、粘着剤層12の第1面12aに対して平行な方向にエキスパンドし、さらにこの状態を維持したまま、前記積層シートのうち、フィルム状接着剤付き半導体チップ914(フィルム状接着剤付き半導体チップ群910)が載っていない周縁部を加熱する。
ここでは、前記積層シートのエキスパンドの方向を矢印E
2で示している。前記積層シートのエキスパンドの方向は、上述のダイボンディングシート101のエキスパンドの方向と同じである。
また、ここでは、前記積層シートのうち、加熱対象である周縁部を、矢印Hで示している。加熱対象である周縁部は、前記非積層領域に含まれる。
【0297】
本実施形態においては、上述のフィルム状接着剤14の切断時におけるダイボンディングシート101のエキスパンドを解除してから、本工程での前記積層シートのエキスパンドを行うことが好ましい。
【0298】
本工程においては、前記積層シートを、上述のダイボンディングシート101の場合と同様の方法でエキスパンドできる。例えば、前記積層シート中の粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層13が積層されていない周縁部近傍の領域を治具に固定した後、前記積層シートの中間層13が積層されている領域全体を、基材11から粘着剤層12へ向かう方向に、基材11側から突き上げることにより、前記積層シートをエキスパンドできる。
【0299】
なお、
図4Cでは、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層13及びフィルム状接着剤14が積層されていない非積層領域(矢印Hで示している前記周縁部を含む領域)は、中間層13の第1面13aに対してほぼ平行となっているが、上述のように、前記積層シートの突き上げによりエキスパンドしている状態では、前記非積層領域は、粘着剤層12の外周に近付くにしたがって、上記の突き上げの方向とは逆方向に高さが下降する傾斜面を含む。
【0300】
本工程では、ダイボンディングシート101を用いていることにより、前記周縁部を収縮させつつ、前記積層シート上においては、隣接する半導体チップ9間の距離、すなわちカーフ幅を、十分に広くかつ高い均一性で保持できる。例えば、本実施形態においては、本工程を行った後のカーフ幅を10μm以上とすることが可能であり、すべてのカーフ幅を10μm以上とすることも可能である。また、複数存在するカーフ幅のうち、最大値と最小値との差を100μm以下とすることが可能である。
このように、カーフ幅を十分に広くかつ高い均一性で保持することにより、後述するように、フィルム状接着剤付き半導体チップを容易にピックアップできる。
【0301】
フィルム状接着剤付き半導体チップ群910は、その温度を低温、例えば-15~0℃、として、エキスパンドすることが好ましい。フィルム状接着剤付き半導体チップ群910を、このよう温度でエキスパンドすることにより、カーフ幅を、十分に広くかつ高い均一性で保持できる効果がより高くなる。
【0302】
フィルム状接着剤14の切断後は、フィルム状接着剤付き半導体チップ914を、前記積層シート中の中間層13から引き離して、ピックアップする。このとき、上記のようにカーフ幅が十分に広く、かつ高い均一性を有することにより、フィルム状接着剤付き半導体チップ914を容易にピックアップできる。フィルム状接着剤付き半導体チップ914は、公知の方法でピックアップできる。
【0303】
ここでは、
図1に示すダイボンディングシート101を例に挙げて、その使用方法について説明したが、それ以外の本実施形態に係るダイボンディングシートも、同様に使用できる。その場合、必要に応じて、このダイボンディングシートと、ダイボンディングシート101と、の構成の相違点に基づいて、他の工程を適宜追加して使用してもよい。
【0304】
前記フィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法で、好ましい実施形態としては、例えば、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられたフィルム状接着剤と、を備えたフィルム状接着剤付き半導体チップの製造方法であって、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部に改質層を形成する工程と、前記改質層を形成後の前記半導体ウエハの裏面を研削するとともに、前記半導体ウエハに加えられる研削時の力を利用することにより、前記改質層の形成部位において、前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップが整列した状態の半導体チップ群を得る工程と、前記ダイボンディングシートを加熱しながら、その中のフィルム状接着剤を、前記半導体チップ群中のすべての半導体チップの裏面に貼付する工程と、前記半導体チップ群中に貼付した後の前記ダイボンディングシートを、冷却しながら、その表面に対して平行な方向に引き伸ばすことにより、前記フィルム状接着剤を前記半導体チップの外周に沿って切断し、複数個の前記フィルム状接着剤付き半導体チップが整列した状態のフィルム状接着剤付き半導体チップ群を得る工程と、前記フィルム状接着剤付き半導体チップ群を得た後の、前記ダイボンディングシートに由来する、基材、粘着剤層及び中間層の積層シートを、前記粘着剤層の表面に対して平行な方向にエキスパンドし、さらにこの状態を維持したまま、前記積層シートのうち、前記フィルム状接着剤付き半導体チップが載っていない周縁部を加熱する工程と、前記周縁部を加熱した後の、前記積層シート中の前記中間層から、前記フィルム状接着剤付き半導体チップを引き離して、ピックアップする工程と、を有し、前記中間層の幅の最大値と、前記半導体ウエハの幅の最大値と、の差を、0~10mmとするものが挙げられる。
【実施例】
【0305】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0306】
<<接着剤組成物の製造原料>>
接着剤組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(a)]
(a)-1:アクリル酸メチル(95質量部)及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(5質量部)を共重合してなるアクリル樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度9℃)。
[エポキシ樹脂(b1)]
(b1)-1:アクリロイル基が付加されたクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「CNA147」、エポキシ当量518g/eq、数平均分子量2100、不飽和基含有量はエポキシ基と等量)
[熱硬化剤(b2)]
(b2)-1:アラルキル型フェノール樹脂(三井化学社製「ミレックスXLC-4L」、数平均分子量1100、軟化点63℃)
[充填材(d)]
(d)-1:球状シリカ(アドマテックス社製「YA050C-MJE」、平均粒径50nm、メタクリルシラン処理品)
[カップリング剤(e)]
(e)-1:シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE-402」)
[架橋剤(f)]
(f)-1:トリレンジイソシアナート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)
[帯電防止組成物(as)]
(as)-1:ポリピロールを反応性乳化剤によって乳化し、有機溶媒に溶解させて得られたポリピロール溶液。
(as)-2:出光興産社製「UVH515」
【0307】
[実施例1]
<<ダイボンディングシートの製造>>
<基材の製造>
押出機を用いて、低密度ポリエチレン(LDPE、住友化学社製「スミカセンL705」)を溶融させ、Tダイ法により溶融物を押し出し、冷却ロールを用いて押し出し物を2軸で延伸することにより、LDPE製の基材(厚さ110μm)を得た。
【0308】
<中間層の作製>
押出機を用いて、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、東ソー社製「ウルトラセン636」)を溶融させ、Tダイ法により溶融物を押し出し、冷却ロールを用いて押し出し物を2軸で延伸し、さらに一部を切り出すことにより、平面形状が円形(直径305mm)のEVA製の中間層(厚さ80μm)を得た。
【0309】
<粘着剤層の作製>
粘着性樹脂(I-1a)としてアクリル樹脂(トーヨーケム社製「オリバインBPS 6367X」)(100質量部)と、架橋剤(トーヨーケム社製「BXX 5640」)(1質量部)と、を含有する非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルムを用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物を塗工し、100℃で2分、加熱乾燥させることにより、非エネルギー線硬化性の粘着剤層(厚さ10μm)を作製した。
【0310】
<フィルム状接着剤の作製>
重合体成分(a)-1(100質量部)、エポキシ樹脂(b1)-1(10質量部)、熱硬化剤(b2)-1(1.5質量部)、充填材(d)-1(75質量部)、カップリング剤(e)-1(0.5質量部)、及び架橋剤(f)-1(0.5質量部)を含有する熱硬化性の接着剤組成物を製造した。
次いで、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルムを用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた接着剤組成物を塗工し、80℃で2分、加熱乾燥させ、さらに一部を切り出すことにより、平面形状が円形(直径305mm)の、熱硬化性のフィルム状接着剤(厚さ7μm)を作製した。
【0311】
<ダイボンディングシートの製造>
上記で得られた粘着剤層の、剥離フィルムを備えている側とは反対側の露出面を、上記で得られた基材の一方の表面と貼り合わせた。
上記で得られたフィルム状接着剤の、剥離フィルムを備えている側とは反対側の露出面を、上記で得られた中間層の一方の表面と貼り合わせた。このとき、フィルム状接着剤と中間層を、同心状に配置した。
次いで、このようにして得られた、剥離フィルム、粘着剤層及び基材の積層物(先に説明した、剥離フィルム付きの第1中間積層体に相当)から、剥離フィルムを取り除き、新たに生じた粘着剤層の露出面を、剥離フィルム、フィルム状接着剤及び中間層の積層物(先に説明した、剥離フィルム付きの第2中間積層体に相当)における中間層の露出面と貼り合わせた。このとき、基材のMDと、中間層のMDと、が一致する(換言すると、基材のTDと、中間層のTDと、が一致する)ように、基材と中間層の配置方向を調節した。
以上により、基材(厚さ110μm)、粘着剤層(厚さ10μm)、中間層(厚さ80μm)、フィルム状接着剤(厚さ20μm)及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルム付きのダイボンディングシートを得た。
【0312】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
平面形状が円形で、その直径が300mmであり、厚さが775μmである半導体ウエハを用い、その回路形成面にバックグラインドテープ(リンテック社製「Adwill E-3100TN」)を貼付した。
次いで、レーザー光照射装置(ディスコ社製「DFL73161」)を用い、この半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成した。このとき、前記焦点は、この半導体ウエハから大きさが8mm×8mmである半導体チップが多数得られるように設定した。また、レーザー光は、半導体ウエハの裏面側から、半導体ウエハ9’に照射した。
次いで、グラインダーを用いて、半導体ウエハの裏面を研削することにより、半導体ウエハの厚さを30μmにするとともに、このときの半導体ウエハに加えられる研削時の力を利用することによって、改質層の形成部位において、半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを形成した。これにより、バックグラインドテープ上で複数個の半導体チップが整列して固定された状態の半導体チップ群を得た。
【0313】
次いで、テープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD2500」)を用いて、上記で得られた1枚のダイボンディングシートを60℃に加熱しながら、その中のフィルム状接着剤を、すべての前記半導体チップ(半導体チップ群)の裏面に貼付した。
次いで、この半導体チップ群へ貼付後のダイボンディングシート中の粘着剤層のうち、前記非積層領域に含まれる周縁部を、リングフレームに貼付することにより、回路形成面にバックグラインドテープを備え、裏面にダイボンディングシートを備えた半導体チップ群を固定した。
【0314】
次いで、この固定した状態の半導体チップ群からバックグラインドテープを取り除いた。そして、全自動ダイセパレーター(ディスコ社製「DDS2300」)を用いて、0℃の環境下で、ダイボンディングシートを冷却しながら、その表面に対して平行な方向にエキスパンドすることにより、フィルム状接着剤を半導体チップの外周に沿って切断した。このとき、ダイボンディングシートの周縁部を固定し、ダイボンディングシートの中間層及びフィルム状接着剤が積層されている領域全体を、その基材側から15mmの高さだけ突き上げることにより、エキスパンドした。
これにより、半導体チップと、その裏面に設けられた切断後のフィルム状接着剤と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、中間層上で整列して固定された状態の、フィルム状接着剤付き半導体チップ群を得た。
【0315】
次いで、上述のダイボンディングシートのエキスパンドを一度解除した後、常温下で、基材、粘着剤層及び中間層が積層されて構成された積層シートを、粘着剤層の第1面に対して平行な方向にエキスパンドした。さらに、このエキスパンドした状態を維持したまま、前記積層シートのうち、フィルム状接着剤付き半導体チップが載っていない周縁部を加熱した。これにより、前記周縁部を収縮させつつ、前記積層シート上においては、隣接する半導体チップ間のカーフ幅を一定値以上に保持した。
【0316】
<<基材の評価>>
<変位量の加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率の算出>
上記で得られた基材について、熱機械分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製「TMA4000SA」を用いて、以下に示す手順で熱機械分析(TMA)を行った。
すなわち、まず、基材を4.5mm×15mmの大きさに切断することにより、試験片を作製した。
次いで、この試験片を前記熱機械分析装置に設置して、試験片に加える荷重を2gとして、この試験片の温度を変化させずに、TMAを行うことによって、試験片の温度が23℃であるときのMDにおける変位量X0を測定した。昇温速度を20℃/minとし、荷重を2gとして、この変位量X0を測定後の試験片を、その温度が70℃になるまで昇温し、この昇温終了時までの間、TMAを行うことによって、この間の試験片のMDにおける変位量の最大値X1を測定した。荷重を2gとして、この変位量X1を測定後の試験片を、23℃の温度条件下で放冷し、この放冷終了時までの間、TMAを行うことによって、この間の試験片のMDにおける変位量の最小値X2を測定した。
次いで、これらX0、X1及びX2を用いて、前記式(1)、(2)及び(3)により、試験片のMDにおける変位量の加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率を算出した。
さらに、試験片のTDにおいても同様に、変位量の加熱時変化率、放冷時変化率及び総合変化率を算出した。
結果を表1に示す。
【0317】
<引張弾性率Eb’の測定>
上記で得られた基材から、幅が15mmである試験片を切り出した。
次いで、試験機の試験片の設置箇所の温度を、あらかじめ0℃に維持しておき、ここへ前記試験片を設置した。
次いで、チャック間距離を100mmとし、温度を0℃のままとし、テンシロンを用いて、引張速度を200mm/minとして試験片を引っ張り、弾性変形領域における、0℃の試験片のMDの引張弾性率Eb’を測定した。
さらに、0℃の試験片のTDにおいても同様に、引張弾性率Eb’を測定した。
結果を表1に示す。
【0318】
<<中間層の評価>>
<引張弾性率Ei’の測定>
上記で得られた中間層から、幅が15mmである試験片を切り出した。
次いで、この中間層の試験片について、上述の基材の試験片の場合と同じ方法で、0℃でのMDとTDにおける引張弾性率Ei’を測定した。
結果を表1に示す。
【0319】
<<引張弾性率比Ei’/Eb’の算出>>
上記で得られた引張弾性率Eb’及び引張弾性率Ei’の測定値を用いて、引張弾性率比Ei’/Eb’を、基材及び中間層のMDと、基材及び中間層のTDと、の両方向において算出した。
結果を表1に示す。
【0320】
<<ダイボンディングシートの評価>>
<ダイボンディングシートの加熱貼付適性>
上述のフィルム状接着剤付き半導体チップの製造時において、ダイボンディングシートを60℃に加熱しながら、その中のフィルム状接着剤を半導体チップの裏面に貼付した後、粘着剤層の周縁部(非積層領域)をリングフレームに貼付する前の段階で、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VH-Z100」)を用いて、ダイボンディングシートの半導体チップへの貼付状態を確認した。そして、下記基準に従って、ダイボンディングシートの加熱貼付適性を評価した。
結果を表1に示す。
(評価基準)
A:ダイボンディングシートの剥がれが認められる半導体チップが、存在しない。
B:ダイボンディングシートの剥がれが認められる半導体チップが、1個以上存在する。
【0321】
<フィルム状接着剤の切断性>
上述のフィルム状接着剤付き半導体チップの製造時において、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VH-Z100」)を用いて、得られたフィルム状接着剤付き半導体チップ群を、その半導体チップ側の上方から観察した。そして、ダイボンディングシートのエキスパンドによって、フィルム状接着剤が正常に切断されたと仮定した場合に形成されているはずの、中間層のMDに伸びる複数本のフィルム状接着剤の切断線と、中間層のTDに伸びる複数本のフィルム状接着剤の切断線と、のうち、実際には形成されていない切断線、及び、形成が不完全である切断線、の本数を確認し、下記評価基準に従って、フィルム状接着剤の切断性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:実際には形成されていないフィルム状接着剤の切断線、及び、形成が不完全であるフィルム状接着剤の切断線、の合計本数が、5本以下である。
B:実際には形成されていないフィルム状接着剤の切断線、及び、形成が不完全であるフィルム状接着剤の切断線、の合計本数が、6本以上である。
【0322】
<フィルム状接着剤の飛散抑制性>
上述のフィルム状接着剤の切断性の評価時に、フィルム状接着剤付き半導体チップ群を、その半導体チップ側の上方から目視観察した。そして、半導体チップの回路形成面において、飛散した切断後のフィルム状接着剤の付着の有無を確認し、下記評価基準に従って、フィルム状接着剤の飛散抑制性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:回路形成面にフィルム状接着剤の付着が認められる半導体チップの個数が0個である。
B:回路形成面にフィルム状接着剤の付着が認められる半導体チップの個数が1個以上である。
【0323】
<カーフ保持性>
上述のフィルム状接着剤付き半導体チップの製造時において、常温下で前記積層シートをエキスパンドし、前記積層シートの周縁部を加熱した後、下記方法によってカーフ保持性を評価した。
すなわち、ダイボンディングシートのエキスパンドによって、フィルム状接着剤が正常に切断されたと仮定した場合には、エキスパンド後のフィルム状接着剤付き半導体チップ群には、中間層のMDに伸びる複数本のカーフと、中間層のTDに伸びる複数本のカーフと、によって、カーフが網目状に形成される。中間層のMDに伸びるカーフと、中間層のTDに伸びるカーフと、の交差部位(換言すると直交部位)のうち、分割前のシリコンウエハのほぼ中心部に相当する中央の交差部位(本明細書においては、「第1の交差部位」と称することもある)と、分割前のシリコンウエハの外周に位置が最も近く、かつ中間層のTDにおいて前記中央の交差部位(第1の交差部位)と同じ位置にある2箇所の交差部位(本明細書においては、それぞれ「第2の交差部位」、「第4の交差部位」と称することもある)と、分割前のシリコンウエハの外周に位置が最も近く、かつ中間層のMDにおいて前記中央の交差部位(第1の交差部位)と同じ位置にある2箇所の交差部位(本明細書においては、それぞれ「第3の交差部位」、「第5の交差部位」と称することもある)と、の合計5箇所において、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VH-Z100」)を用いて、フィルム状接着剤付き半導体チップ群の半導体チップ側の上方から、中間層のMD及びTDのそれぞれのカーフ幅を測定した。すなわち、交差部位1箇所につき、カーフ幅の測定値は、前記MD及びTDそれぞれ1個ずつ、合計2個とし、カーフ幅の測定値の総数を、交差部位5箇所合計で10個とした。
【0324】
図5に、このときのカーフ幅の測定箇所を示す。
図5中、符号7は半導体チップを示し、符号79aは中間層のMDに伸びるカーフを示し、符号79bは中間層のTDに伸びるカーフを示している。使用したダイボンディングシートが
図1に示すものである場合、これらカーフ79a及びカーフ79bにおいては、中間層13の第1面13aが露出する。そして、符号W
a1、W
a2、W
a3、W
a4及びW
a5は、いずれも中間層のMDに伸びるカーフの幅(換言すると、前記交差部位における、TDのカーフ幅)を示し、符号W
b1、W
b2、W
b3、W
b4及びW
b5は、いずれも中間層のTDに伸びるカーフの幅(換言すると、前記交差部位における、MDのカーフ幅)を示している。カーフ幅W
a1及びW
b1を測定する交差部位が前記第1の交差部位である。また、カーフ幅W
a2及びW
b2を測定する交差部位が前記第2の交差部位であり、カーフ幅W
a4及びW
b4を測定する交差部位が前記第4の交差部位である。また、カーフ幅W
a3及びW
b3を測定する交差部位が前記第3の交差部位であり、カーフ幅W
a5及びW
b5を測定する交差部位が前記第5の交差部位である。
なお、
図5は、カーフ幅の測定箇所を説明するために、フィルム状接着剤付き半導体チップ群を模式的に示す平面図であり、ここでは、カーフ幅がどこでも一定である場合を示しているが、これは例示に過ぎない。同一のフィルム状接着剤付き半導体チップ群においても、カーフの位置によって、カーフ幅は変化し得るし、また、実施例及び比較例ごとに、フィルム状接着剤付き半導体チップ群における同じ位置のカーフであっても、カーフ幅は変化し得る。
【0325】
そして、上述の10個のカーフ幅の測定値から、下記評価基準に従って、カーフ保持性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:カーフ幅の測定値がすべて10μm以上であり、かつ、前記測定値の最大値と最小値との差が100μm以下である。
B:1個以上のカーフ幅の測定値が10μm未満であるか、又は、カーフ幅の測定値がすべて10μm以上であり、かつ、前記測定値の最大値と最小値との差が100μmを超えている。
【0326】
<表面抵抗率>
ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤を130℃で2時間、熱硬化させた。
次いで、表面抵抗率計(アドバンテスト社製「R12704 Resistivity chamber」)を用い、印加電圧を100Vとして、基材の粘着剤層側とは反対側に位置する面において、表面抵抗率を測定した。結果を、表1中の「表面抵抗率(Ω/□)」の欄に示す。
【0327】
<フィルム状接着剤付き半導体チップ、中間層間の浮き>
全自動ダイセパレーター(ディスコ社製「DDS2300」)のプロセス後に得られたフィルム状接着剤付き半導体チップ群を、基材側(非半導体チップ側)から目視にて観察し、フィルム状接着剤付き半導体チップが中間層から浮いているか否かについて確認した。
(評価基準)
A:フィルム状接着剤付き半導体チップの浮きの発生なし
B:フィルム状接着剤付き半導体チップ100個中数個程度、わずかに浮きが発生
【0328】
[実施例2]
<<ダイボンディングシートの製造、フィルム状接着剤付き半導体チップの製造、基材の評価、中間層の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
中間層の直径を305mmに代えて310mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ダイボンディングシート及びフィルム状接着剤付き半導体チップを製造し、基材、中間層及びダイボンディングシートを評価した。結果を表1に示す。
【0329】
[実施例3]
<<ダイボンディングシートの製造、フィルム状接着剤付き半導体チップの製造、基材の評価、中間層の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
中間層の直径を305mmに代えて320mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ダイボンディングシート及びフィルム状接着剤付き半導体チップを製造し、基材、中間層及びダイボンディングシートを評価した。結果を表1に示す。
【0330】
[実施例4]
<<ダイボンディングシートの製造>>
<基材の製造>
実施例1で得られた基材の、粘着剤層側とは反対側に位置する面に前記帯電防止組成物(as)-1を塗布し、100℃で2分乾燥させることにより、前記基材上に、厚さ75nmの背面帯電防止層(AS1)が形成された基材を製造した。
LDPE製基材に代えて、上記で得られた背面帯電防止層(AS1)が形成された基材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、帯電防止層、基材、粘着剤層、中間層、フィルム状接着剤及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルム付きのダイボンディングシートを作製した。
【0331】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
得られたダイボンディングシートを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤付き半導体チップを製造した。
【0332】
<<基材の評価、中間層の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
実施例1の場合と同じ方法で、基材、中間層及びダイボンディングシートを評価した。結果を表1に示す。
【0333】
[実施例5]
<基材の製造>
帯電防止組成物(as)-1に代えて、前記帯電防止組成物(as)-2を用いて厚さ170nmの背面帯電防止層(AS2)が形成された基材を製造した。
この基材を用いて、実施例4の場合と同じ方法で、剥離フィルム付きのダイボンディングシートを作製した。
【0334】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
得られたダイボンディングシートを用いて、実施例4の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤付き半導体チップを製造した。
【0335】
<<基材の評価、中間層の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
実施例1の場合と同じ方法で、基材、中間層及びダイボンディングシートを評価した。結果を表2に示す。
【0336】
[実施例6]
<<ダイボンディングシートの製造>>
<帯電防止性基材の製造>
ウレタンアクリレート樹脂及び光重合開始剤を含有し、ウレタンアクリレート樹脂の含有量に対する光重合開始剤の含有量の割合が3.0質量%である組成物に対して、帯電防止剤としてホスホニウム系イオン液体(ホスホニウム塩からなるイオン液体)を配合し、撹拌することにより、エネルギー線硬化性の帯電防止組成物を得た。このとき、帯電防止組成物において、帯電防止剤及びウレタンアクリレート樹脂の合計含有量に対する、帯電防止剤の含有量の割合は、9.0質量%とした。
次いで、ファウンテンダイ方式により、上記で得られた帯電防止組成物をポリエチレンテレフタレート製の工程フィルム(東レ社製「ルミラーT60 PET 50 T-60 トウレ」、 厚さ50μm品)上に塗布し、厚さ80μmの塗膜を形成した。そして、紫外線照射装置(アイグラフィクス社製「ECS-401GX」)を用い、高圧水銀ランプ(アイグラフィクス社製「H04-L41」)を用いて、紫外線硬化させて、帯電防止剤及びウレタンアクリレート樹脂から形成された帯電防止性基材を得た。
LDPE製基材に代えて、上記で得られた帯電防止性基材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、剥離フィルム付きのダイボンディングシートを作製した。
【0337】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
得られたダイボンディングシートを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤付き半導体チップを製造した。
【0338】
<<基材の評価、中間層の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
実施例1の場合と同じ方法で、基材、中間層及びダイボンディングシートを評価した。結果を表2に示す。
【0339】
[比較例1]
<<ダイボンディングシートの製造>>
<基材の製造>
押出機を用いて、ポリプロピレン(PP、プライムポリマー社製「プライムポリプロF-744NP」)を溶融させ、Tダイ法により溶融物を押し出し、冷却ロールを用いて押し出し物を2軸で延伸することにより、PP製の基材(厚さ50μm)を得た。
【0340】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
LDPE製基材に代えて、上記で得られたPP製基材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ダイボンディングシート及びフィルム状接着剤付き半導体チップを製造した。
【0341】
<<基材の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
上記で得られた基材及びダイボンディングシートについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0342】
[比較例2]
<<ダイボンディングシートの製造>>
<基材の製造>
押出機を用いて、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、東ソー社製「ウルトラセン636」)を溶融させ、Tダイ法により溶融物を押し出し、冷却ロールを用いて押し出し物を2軸で延伸することにより、EVA製の基材(厚さ120μm)を得た。
【0343】
<<フィルム状接着剤付き半導体チップの製造>>
LDPE製基材に代えて、上記で得られたEVA製基材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ダイボンディングシート及びフィルム状接着剤付き半導体チップを製造した。
【0344】
<<基材の評価、及びダイボンディングシートの評価>>
上記で得られた基材及びダイボンディングシートについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0345】
【0346】
【0347】
上記結果から明らかなように、実施例1~6においては、ダイボンディングシートの加熱貼付適性及びカーフ保持性がいずれも良好であった。
実施例1~5においては、基材(試験片)の変位量の加熱時変化率が、MDにおいては0.8%であり、TDにおいては0.7%であった。実施例6においては、基材(試験片)の変位量の加熱時変化率が、MD及びTDのいずれにおいても、0.8%であった。
実施例1~5においては、基材(試験片)の変位量の放冷時変化率が、MD及びTDのいずれにおいても、-1.9%であった。実施例6においては、基材(試験片)の変位量の放冷時変化率が、MD及びTDのいずれにおいても、-1.8%であった。
実施例1~5においては、基材(試験片)の変位量の総合変化率が、MDにおいては-1.1%であり、TDにおいては-1.2%であった。実施例6においては、基材(試験片)の変位量の総合変化率が、MD及びTDのいずれにおいても、-1.0%であった。
【0348】
なお、実施例1~6においては、さらに、ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤の切断性が良好であった。
実施例1~5においては、Eb’が、MDにおいては90MPaであり、TDにおいては104MPaであった。また、Ei’が、MDにおいては25MPaであり、TDにおいては33MPaであった。その結果、Ei’/Eb’は、MDにおいては0.28であり、TDにおいては0.32であった。
実施例6においては、Eb’が、MDにおいては100MPaであり、TDにおいては100MPaであった。また、Ei’が、MDにおいては25MPaであり、TDにおいては33MPaであった。その結果、Ei’/Eb’は、MDにおいては0.25であり、TDにおいては0.33であった。
【0349】
一方、実施例1~2、4~6においては、さらに、フィルム状接着剤の飛散抑制性が良好であったが、実施例3においては、フィルム状接着剤の飛散抑制性が、実施例1~2、4~6の場合よりも劣っていた。
実施例1~2においては、中間層の直径と半導体ウエハの直径との差が10mm以下(5~10mm)であるが、実施例3においては、前記差が10mmよりも大きかった(20mmであった)。
【0350】
これに対して、比較例1においては、ダイボンディングシートの加熱貼付適性が劣っていた。
比較例1においては、基材(試験片)の変位量の加熱時変化率が、TDにおいては2.9%であった。
比較例1においては、基材(試験片)の変位量の総合変化率が、TDにおいては1.5%であった。
【0351】
比較例2においては、基材(試験片)の変位量の放冷時変化率が、MDにおいては、-2.8%であった。
比較例2においては、基材(試験片)の変位量の総合変化率が、MDにおいては、-2.6%であった。
【0352】
また、比較例2においては、さらに、ダイボンディングシート中のフィルム状接着剤の切断性も劣っていた。
比較例2においては、Eb’が、MDにおいては25MPaであり、TDにおいては33MPaであった。また、Ei’が、MDにおいては25MPaであり、TDにおいては33MPaであった。その結果、Ei’/Eb’は、MD及びTDのいずれにおいても、1.00であった。
【0353】
実施例4~6においては、基材として、背面帯電防止層が形成された基材又は帯電防止性基材を用いたため、表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であった。
これに対して、実施例1~3、比較例1、2においては、基材として、背面帯電防止層が形成された基材又は帯電防止性基材を用いなかったため、表面抵抗率が1.0×1011Ω/□より大きかった。
【0354】
帯電防止性が付与されていない実施例1~3、比較例1、2は、全自動ダイセパレーター(ディスコ社製「DDS2300」)のプロセスにおいて、テーブルとダイボンディングシートの間に、静電気等の影響により異物が混入し、異物がある部分とない部分で段差が生じ、フィルム状接着剤付き半導体チップが中間層から剥離するきっかけが発生し、局所的にチップ浮きが発生し、その結果、最終的にチップ飛散が発生した。
これに対して、帯電防止性が付与された実施例4~6においては、テーブルとダイボンディングシートの間に異物が混入しづらく、チップ浮きが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0355】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0356】
101・・・ダイボンディングシート、11・・・基材、12・・・粘着剤層、13・・・中間層、14・・・フィルム状接着剤、W13・・・中間層の幅、W14・・・フィルム状接着剤の幅