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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】路面標示板
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/512 20160101AFI20220915BHJP
   E01F 9/524 20160101ALI20220915BHJP
   E01F 9/547 20160101ALI20220915BHJP
   G08B 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E01F9/512
E01F9/524
E01F9/547
G08B5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018155412
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020029694
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】599012684
【氏名又は名称】唐沢 伸
(73)【特許権者】
【識別番号】517266779
【氏名又は名称】株式会社リンコー
(73)【特許権者】
【識別番号】516240592
【氏名又は名称】林 弘美
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 伸
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-186967(JP,A)
【文献】特開2012-088361(JP,A)
【文献】特開平09-204981(JP,A)
【文献】特開2007-200036(JP,A)
【文献】特開平10-317329(JP,A)
【文献】特開2009-157201(JP,A)
【文献】特開2015-063123(JP,A)
【文献】特開2009-182149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
G08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に基板と端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される後記蓄光材層からの光を反射する反射層と、
前記反射層上に反射層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される蓄光材層と、
前記蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される表面ガラス層と、
各層端面及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水層と、
前記各層を嵌合して端面側を保護する枠状部と、
からなる路面標示板であって、
前記防水層は、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に配されるベースフィルム反射層と、
前記ベースフィルム反射層上に直接又は間接に配されるシリコーンゲルと、
で構成された防水フィルムで構成されている路面標示板。
【請求項2】
前記表面ガラス層の下面には、標示のための印刷が施されている請求項1に記載の路面標示板。
【請求項3】
前記蓄光材層と前記反射層との間にシリコーンゲル層を配した請求項1又は請求項2に記載の路面標示板。
【請求項4】
前記蓄光材層と前記表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配した請求項1から請求項3のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項5】
前記基板上に直接又は間接に前記蓄光材層と同厚で上下面一に外光を反射する外光反射層を有する請求項1から請求項4のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項6】
前記基板は強化ガラスである請求項1から請求項5のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項7】
前記表面ガラス層は強化ガラスである請求項1から請求項6のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項8】
前記枠状部は金属製である請求項1から請求項7のいずれか一に記載の路面標示板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に設置される蓄光標示板(以下「路面標示板」という。)に関し、特に、路面標示板の防水のための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光標示板は、板状部材に蓄光材を備え、その発光を利用して避難誘導などのための案内標示を行うものである。蓄光標示板は、屋内外を問わず、壁、床面など様々な場所に設置されるところ、このうち、道路など屋外の路面に設置される路面標示板については、雨水などが標示板の隙間から標示板の内部に浸透して水に弱い蓄光材の発光機能を損なうおそれがあるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するための方法として、従来から、蓄光材の上下及び側面のそれぞれに水の浸透を防ぐための部材を配置する方法が知られている。例えば、特許文献1には、床面に設置される誘導標識に関して、蓄光層(蓄光性塗料を含む着色層)の表面を透明なガラス層で覆い、裏面に金属製などの被服層を配置するとともに、蓄光層の外周部に樹脂のシール材を充填することで蓄光層の外周部を密封し、これにより水分が蓄光層に侵入することを完全に防止できることをうたった誘導標識の構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実登第3164257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、外周部を密封するのはあくまで蓄光層についてのみであり、蓄光材の表面に配置されているガラス層及び裏面に配置されている金属製の被覆層の外周部は密封されずにその端面を外部に露出したままの状態とされている(同文献の図2参照)。そうすると、同図からも明らかなように、外周面には、(蓄光層の外周部に充填されている)樹脂のシール材の端面とガラス層の端面とが露出しており、これら隣接する両端面の境界も外周面に露出した状態となる。しかし、ガラスと樹脂とは熱膨張率が異なることから、温度変化によりこの境界に隙間が生じるおそれがあり、その場合、その隙間から水分が侵入して蓄光層に至り、これを濡らしてしまうおそれがある(蓄光層と金属製の被覆層との関係についても同様である)。つまり、特許文献1の発明のように、蓄光層の外周部だけを密封しても、水分が蓄光層に侵入するおそれを完全に防ぐことはできない。このように、従来技術では、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことは困難であった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みたものであり、その解決すべき課題は、端面に現れる部材の隙間から水が浸透しないように、蓄光層のみならず、その上下に配置される各層の端面全体を防水層で覆うことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のうち、第一の発明は、基板と、前記基板上に基板と端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される後記蓄光材層からの光を反射する反射層と、前記反射層上に反射層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される蓄光材層と、前記蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される表面ガラス層と、各層端面及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水層と、前記各層を嵌合して端面側を保護する枠状部とからなる路面標示板を提供する。
【0008】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、前記表面ガラス層の下面には、標示のための印刷が施されている路面標示板を提供する。
【0009】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記蓄光材層と前記反射層との間にシリコーンゲル層を配した路面標示板を提供する。
【0010】
また、第四の発明は、第一から第三のいずれか一の発明を基礎として、前記蓄光材層と前記表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配した路面標示板を提供する。
【0011】
また、第五の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記防水層はシリコーンゲルで構成されている路面標示板を提供する。
【0012】
また、第六の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記防水層は、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配されるベースフィルム反射層と、前記ベースフィルム反射層上に直接又は間接に配されるシリコーンゲルと、で構成された防水フィルムで構成されている路面標示板を提供する。
【0013】
また、第七の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、前記基板上に直接又は間接に前記蓄光材層と同厚で上下面一に外光を反射する外光反射層を有する路面標示板を提供する。
【0014】
また、第八の発明は、第一から第七のいずれか一の発明を基礎として、前記基板は強化ガラスである路面標示板を提供する。
【0015】
また、第九の発明は、第一から第八のいずれか一の発明を基礎として、前記表面ガラス層は強化ガラスである路面標示板を提供する。
【0016】
また、第十の発明は、第一から第九のいずれか一の発明を基礎として、前記枠状部は金属製である路面標示板を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端面に現れる部材の隙間から水が浸透しないように、蓄光層のみならず、その上下に配置される各層の端面全体を防水層で覆うことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の路面標示板の構成の概要を示す図
図2】反射層が基板と端面の一部を面一として配される構成の一例を示す図
図3】実施例3、実施例4及び実施例5の構成を含む路面標示板の構成の一例を示す図
図4】実施例7の路面標示板の外観の一例を示す斜視図
図5】実施例7の路面標示板の構成の一例を示す図
図6】外光反射層が基板上に直接配される構成の一例を示す図
図7】実施例1の路面標示板の防水層の被覆対象について説明するための概念図
図8】実施例2の路面標示板の構成の概要を示す図
図9】実施例6における防水層の構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0019】
0100 路面標示板
0101 基板
0102 反射層
0103 蓄光材層
0104 表面ガラス層
0105 防水層
0106 枠状部
0307、0308 シリコーンゲル層
0409 外光反射層
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例6は主に請求項1などに関し、実施例7は主に請求項5などに関する。また、実施例1~5は、本発明に関連する発明に関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。


【実施例1】
【0021】
<概要>
本実施例の路面標示板は、その構成要素である基板、反射層、蓄光材層、表面ガラス層の各層及びこれらの各層が重ねられた端面の隙間の全部又は一部を防水層で覆った点に特徴を有する。
【0022】
<構成>
(全般)
図1に本実施例の路面標示板の構成の概要を示す。本図に示すように、本実施例の路面標示板0100は、基板0101と、反射層0102と、蓄光材層0103と、表面ガラス層0104と、防水層0105と、枠状部0106とを有する。
【0023】
(基板)
基板は、その上層に反射層、蓄光材層、表面ガラス層を順次配置して、路面標示板の本体部分(基板、反射層、蓄光材層及び表面ガラス層を合わせた部分をいう。以下同じ。)の一部をなすものであり、本体部分全体をその最下層で支持するための部分である。基板の材料は、その役目に照らし、硬く変形しにくいものであることが望ましく、例えば、強化ガラスなどのガラス、硬質樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂など)、金属(ステンレス、アルミニウムなど)、セラミックなどが考えられる。なかでも特に好適な基板の材料として、強化ガラスが挙げられる。なお、強化ガラスとは、通常のガラス(フロートガラスとも呼ばれる)を約650~700℃で加熱した後、ガラス表面に空気を吹き付け急激に冷やすなどの方法で生成されたガラスをいい、耐圧性や耐衝撃強度に極めて優れたものである。
【0024】
基板の厚みの一例は、約4~6mmであり、より好適には約5mmである。これは、本体部分の寸法が長さ60cm程度、幅6cm程度、厚み1.2cm程度である場合の一例である(以下に記載する本実施例の反射層、蓄光材層、表面ガラス層、防水層及び枠状部の寸法の一例についても同様である)。
【0025】
(反射層)
反射層は、基板上に配される反射材を含む部材であり、その上層に配置される蓄光材層からの光を表面ガラス層方向(即ち、路面標示板の表面方向)に反射することで蓄光材層の輝度を増し、これにより路面標示板の視認性を向上させるためのものである。反射材の材料としては、例えば酸化チタンが考えられる。反射層の厚みの一例は、約0.18~0.22mmであり、より好適には約0.20mmである。反射層の形成方法には特に限定はなく、例えば、基板の表面に反射材を塗布する方法、基板の表面に反射材を備えた反射テープ又は反射フィルムを貼付する方法などが考えられる。
【0026】
反射層は、基板上に直接又は間接に配される。反射層が基板上に間接に配される構成としては、例えば、基板上に直接シリコーンゲル層が配され、さらにシリコーンゲル層上に直接反射層が配されるというものが考えられる(詳細については別の実施例にて後述する)。
【0027】
また、反射層は、基板と端面の少なくとも一部を面一として配される。即ち、基板の端面と反射層の端面は少なくとも一部が面一になっているということである。図1に示した例は、基板の端面0101aと反射層の端面0102aの全部が面一になっている例である(煩雑を避けるため同図の右側の端面についてのみ符号を付したが、左側の端面についても同様である。また、図2についても同様である。)。これに対して、「端面の一部を面一として配される」とは、基板の端面と反射層の端面とが、面一になっている部分もあるがそうなっていない部分もあるという意味である。このような構成の一例としては、図2に示すように、基板の端面の下方部分が切り欠かれた状態になっており、基板の端面のうち上方部分0201aだけが反射層の端面0202aと面一になっているものが挙げられる。
【0028】
(蓄光材層)
蓄光材層は、蓄光材を含み反射層上に配されるものであり、例えば、粉末状の蓄光材をフェニルシリコーン液などの溶媒に溶解し、固化して形成したものである。蓄光材の材料としては、例えばアルミン酸ストロンチウム系蓄光材原料(アルミン酸ストロンチウム(SrAl、SrAl1425など)を母結晶とし、これにケイ素、リン、カルシウム、セリウム、ユーロピウム、ディスプロシウムなどを添加したもの)や硫化亜鉛系のものなどが挙げられる。蓄光材層の厚みの一例は、約1.0~1.75mmであり、より好適には、約1.5mmである。
【0029】
蓄光材層は、発光部分の形状、模様等により標示の内容を示すためのものである。そこで、その標示の内容に応じて、例えば、文字(例えば「と」、「ま」、「れ」という文字群)、ピクトグラム(例えば、非常用電話の位置を示すためのピクトグラム)、図形(例えば避難誘導方向を示す矢印マーク)など適宜の形状、模様等に形成された蓄光材層を使用することができる。あるいは、蓄光材層の可視部分と、蓄光材層の上層の一部に配された不透光性の樹脂シートなどの不透光部分とを組み合わせた形状、模様等によって、これらの文字、ピクトグラム、図形などを表すようにしてもよい。なお、かかる不透光部分を表面ガラス層の下面に印刷を施すことにより配する例については、次実施例で説明する。
【0030】
蓄光材層は、反射層上に直接又は間接に配される。蓄光材層が反射層上に間接に配される構成の例は、反射層が基板上に間接に配される例として前述したところと同様である(詳細については別の実施例にて後述する)。
また、蓄光材層は、反射層の端面の少なくとも一部を面一として配される。即ち、蓄光材層の端面と反射層の端面は少なくとも一部が面一になっているということである。図1に示した例は、蓄光材層の端面0103aと反射層の端面0102aの全部が面一になっている例である。なお、「端面の一部を面一として配される」ことの意味は、基板の端面と反射層の端面の関係について説明したところと同様である。
【0031】
(表面ガラス層)
表面ガラス層は、蓄光材層上に配される部材であり、その下層に配される蓄光材層等の損傷・劣化や汚れを防止するためのものである。表面ガラス層の材料は、文字通りガラスを典型例とし、特に好適な材料としては、基板の材料の一例として挙げたのと同様の強化ガラスが挙げられる。強化ガラスは、上述の耐圧性や対衝撃強度に極めて優れているという特性のほかに、万一割れた場合でも破片が鋭い刃先のようにならず粉々になるため人が破片でけがをしにくいという特徴もあることから、人などが踏むことの多い路面標示板の表面に配する部材としては、強度面のみならず安全面からも適したものである。表面ガラス層の厚みの一例は、約4~6mmであり、より好適には約5mmである。
【0032】
また、表面ガラス層には、滑り止めのために多数の小さな突起が設けられていてもよい。この突起の具体的形状の一例は、別の実施例にて後述する。
【0033】
また、表面ガラス層に上述のような多数の突起を設けることで、この突起等がいわばレンズのような役目を果たし、蓄光材層から発せられる光を表面ガラス層内で乱反射させつつ発出することで、蓄光材層の発光輝度をさらに高めるという効果を得ることができる。
【0034】
表面ガラス層は、蓄光材層上に直接又は間接に配される。表面ガラス層が蓄光材層上に間接に配される構成の例は、反射層が基板上に間接に配される例などとして前述したところと同様である(詳細については別の実施例にて後述する)。
【0035】
また、表面ガラス層は、蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として配される。図1に示した例は、表面ガラス層の端面0104aと蓄光材層の端面0103aの全部が面一になっている例である。なお、「端面の一部を面一として配される」の意味は、基板の端面と反射層の端面の関係などについて説明したところと同様である。
【0036】
(防水層)
防水層は、各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水のための部材である。「各層」とは基板、反射層、蓄光材層及び表面ガラス層をいい、「端面」とは、各層の側部に現れる面をいう。また、「重ねられた端面の隙間」とは、これら各層が下から上に積み重ねられた状態において隣接する各層の端面間に現れる境界に生じ得る隙間をいう。
【0037】
図1において、防水層は、基板の端面0101a、反射層の端面0102a、蓄光材層の端面0103a及び表面ガラス層の端面0104aという各層の端面を覆うように配置されるとともに、これら各層が重ねられた端面の隙間の全部をも覆うように配置されている。即ち、本実施例において、防水層は、従来の例のように、単に蓄光材層の端面を覆う位置に配置されているだけではなく、他の各層の端面及びこれらの端面の隙間の全部又は一部をも覆うように配置される。この結果、従来の例とは異なり、少なくとも蓄光材層の端面及び蓄光材層とその上層及び下層に配置される表面ガラス層及び反射層の端面の隙間が防水層によって覆われた状態となり、蓄光材層が水に濡れるおそれをなくすことができる。
【0038】
このことから明らかなように、防水層によって覆われる対象である「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部」には、少なくとも「蓄光材層の端面」、「蓄光材層の端面と反射層の端面の隙間」及び「蓄光材層の端面と表面ガラス層の端面の隙間」が含まれる。
【0039】
図7は、本実施例の路面標示板の防水層の被覆対象について説明するための概念図であって、上述の「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部」について、より詳細に説明するためのものである(なお、説明の便宜上、隙間を誇張した寸法で描いており、したがって、各層端面及びその隙間の寸法を正確に表したものではない)。同図(a)に示すように、下から順に基板0701、基板と反射層の隙間0701b、反射層0702、反射層と蓄光材層の隙間0702b、蓄光材層0703、蓄光材層と表面ガラス層の隙間0703b、表面ガラス層0704が配置されている。ここで、上述のように、「蓄光材層の端面」、「蓄光材層の端面と反射層の端面の隙間」及び「蓄光材層の端面と表面ガラス層の端面の隙間」が防水層0705で覆われていることが必須であり、(b)がこの状態を示している。一方、「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部」が防水層0705で覆われている状態を(c)が示している。なお、(b)において、蓄光材層の上下の隙間に水が浸透することをより確実に防ぐために、同図の例とは異なり、反射層の端面0702aと表面ガラス層の端面0704aが防水層の端面0705aと面一になる位置まで張り出していてもよい。
【0040】
防水層の好適な材料の一例は、シリコーンゲルである。その具体的構成については、別の実施例にて後述する。また、防水層の厚みの一例は、約0.2~2.0mmであり、特にシリコーンゲルを用いた場合の好適な厚みの一例は約1.0mmである。防水層の形成方法には特に限定はなく、例えば、防水材を備えたテープ又はフィルムを貼付する方法などが考えられる。
【0041】
(枠状部)
枠状部は、上述した基板、反射層、蓄光材層、表面ガラス層の各層を嵌合して端面側を保護するように構成されている。平たく言えば、枠状部は、その中に本体部分をぴったりと過不足なく収容して保護するための部材である。このため、枠状部は、底板及び周壁を有し、上部が開口した盆状ないし箱状の形状をなしている。枠状部の好適な材料の一例としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属が挙げられる。枠状部の寸法の一例としては、部材の厚みが約2.5~3.5mmであって、凹部部分の寸法が長さ60cm程度、幅6cm程度、厚み1.2cm程度である(即ち、本体部分をぴったりと過不足なく収容できるように本体部分とほぼ同一の寸法である)。
【0042】
<効果>
本実施例の発明によれば、防水のための部材の隙間から水が浸透しないように蓄光材を完全に包み込むことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することができる。
【実施例2】
【0043】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1の構成に加えて、表面ガラス層の下面に標示のための印刷が施されているものである。
【0044】
<構成>
本実施例の路面標示板は、実施例1の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、前記表面ガラス層の下面に標示のための印刷が施されているものである。以下、この点に係る構成について説明する。その余の構成は実施例1で説明したところと同様であるから、説明を省略する。
【0045】
(表面ガラス層の下面に標示のための印刷が施されている構成)
図8は、本実施例の路面標示板の構成の概要を示す図である。本図に示すように、本実施例の路面標示板0800においては、表面ガラス層0804の下面に標示のための印刷0810が施されている。
【0046】
本実施例における係る構成の特徴は、この印刷部分に水が浸透しないように構成されているため、油性のみならず水性の塗料を用いることもでき、様々な種類の塗料を用いることができる点にある。ただし、屋外で紫外線にさらされても劣化しにくいものとするため、耐候性に優れた塗料を用いることが望ましい。かかる塗料として、例えばセラミック塗料が好適である。セラミック塗料は、粉末状などのセラミックを成分に含む塗料であり、耐候性のほか、耐熱性や耐久性にも優れたものである。また、金属類を蒸着したり、スパッタリングすることで文字やピクトグラムを描くように構成してもよい。金属類の蒸着やスパッタリングは、金属製や有機系のマスクをガラス面に配置してその上から金属薄膜を積層するように処理する。この場合、金属類としては酸化しづらい金などが最適であるが、本発明の湿気のシール性が高いことから酸化しやすい金属を用いても問題が生じない。例えば、鉄、銅、アルミ、チタン等を採用することができる。さらにチタンなどは予め酸化雰囲気中で蒸着、スパッタリングすることで安定な酸化チタンを印刷文字、ピクトグラム材料として利用できより信頼性の高い路面標示をすることができる。スパッタリングする場合には酸化雰囲気になくても、予め酸化金属ターゲットをスパッタリングすることでガラス面に酸化金属文字、ピクトグラムを構成することができる。また、マスクと蒸着、スパッタリングの方法以外に、ガラス面全面に金属膜、酸化金属膜を構成し、有機系のマスク(レジスト)を文字、ピクトグラムを構成するように配置しエッチングすることで文字、ピクトグラムを構成するようにすることもできる。金属、酸化金属による文字、ピクトグラムは紫外線耐性が高いので屋外の路面標示には適したものとなる。これら、蒸着、スパッタリング、エッチングを用いて文字、ピクトグラムを構成するものも本発明においては「印刷」に含めて解釈するものとする。さらに、印刷は、薄い金属箔を文字やピクトグラム形状に切り抜いてガラスに張り付けたり、あるいは薄い金属箔を切り抜いた部分で文字やピクトグラムを構成するようにしてガラスに張り付けたりして構成してもよい。薄い金属箔としてはアルミ箔、銅箔、ステンレス箔などを採用することができる。これらの箔の厚みは20μm程度から100μm程度が好ましい。薄すぎると機械的強度が弱くなり、厚すぎると隙間が生じる問題がある。好ましくは30μm程度から60μm程度が良い。これら薄い金属箔を利用する処理で文字やピクトグラムを構成するものも本発明においては「印刷」に含める。なお、薄い金属箔のガラスへの固定はシリコーンを用いて行うことが好ましい。
【0047】
印刷方法としては、ディスペンサ等を用いて直接ガラス表面に塗料を塗布する方法や、例えば、セラミック塗料を用いる場合にはセラミック印刷を用いることもできる。セラミック印刷とは、セラミック塗料をガラス表面に吹き付け、焼き付けることで印刷する方法をいう。また、スクリーン印刷を用いることもできる。スクリーン印刷は、塗料を載せたスクリーンを印刷対象(本実施例ではガラス面)上に固定し、スキージ等をスクリーンに押し当てて摺動することで、塗料をスクリーンに穿った開口部から通過させて印刷する方法である。同じデザインの印刷を短時間に大量に施すことができるので、様々な場所への設置のニーズが近年急速に高まっている路面標示板に用いる印刷方法としては極めて好適なものである。また、この方法は、様々な種類の塗料を用いることができるという利点も有している。
【0048】
なお、塗料の厚みは、これを極めて薄いものとすることもできるので、下面に印刷を施した表面ガラス層と蓄光材層とを直接接着させた場合でも、表面ガラス層と蓄光材層との間にほとんど隙間を生じさせることをなくすことができ、したがって、蓄光材層からの発光輝度を損うおそれはない。もっとも、印刷部分の耐候性を増すという観点からは塗料をある程度厚く塗布することが望ましく、この場合には、表面ガラス層の印刷部分と蓄光材層との間に空気の隙間が生じ、その屈折率の違いにより、蓄光材層からの発光輝度が損なわれるおそれがある。そこで、かかる弊害を防ぐため、表面ガラス層と蓄光材層との間にシリコーンゲル層を配することが望ましい。図8に示した例も、印刷部分0810に密着してこれを覆うようにシリコーンゲル層0808が配されている好適な例である。
【0049】
このように構成すれば、表面ガラス層の印刷部分と蓄光材層との間に空気の隙間が生じることがなく、蓄光材層からの発光輝度を損なうおそれをなくすことができる。この場合、蓄光材層とシリコーンゲル層の屈折率を等しくすることが望ましい。また、印刷部分をシリコーン層で覆うことで、印刷部分が剥がれにくくなるという効果もある。なお、表面ガラス層と蓄光材層との間にシリコーンゲル層を配する構成の詳細については、別の実施例にて後述する。
【0050】
<効果>
本実施例の発明によれば、印刷部分を用いて様々な表示を表すことができ、かつ、その際に印刷に用いる塗料に様々な種類のものを用いることが可能な路面標示板を提供することができる。
【実施例3】
【0051】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1又は2の構成に加えて、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配したものである。
【0052】
<構成>
(全般)
本実施例の路面標示板は、実施例1又は2の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配したものである。以下、シリコーンゲル層に係る構成について説明する。その余の構成は実施例1で説明したところと同様であるから、説明を省略する。
【0053】
(シリコーンゲル層)
図3には、本実施例の構成を含む路面標示板の構成の一例が示されている。即ち、同図において、蓄光材層0303と反射層0302との間にシリコーンゲル層0307が配されている。シリコーンゲル層は、シリコーンゲルを材料とする層状の部材であり、例えば、信越化学工業株式会社製のシリコーンゲル(製品名:KE-1052(A/B))を用いることができる。シリコーンゲル層の厚みの一例は、約0.1~1.0mmであり、より好適には約0.2mmである。
【0054】
シリコーンゲルは、透明性、柔軟性及び粘着性を有する。そこで、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配することで、以下のような機能を発揮させることができる。
【0055】
(蓄光材層に対する防水をより確実にする機能)
蓄光材層と反射層は、それぞれ温度変化によって膨張・収縮することがあるが、それぞれの材料の違いにより熱膨張率が異なるため、膨張・収縮によって蓄光材層と反射層の間に隙間が生じるおそれがある。もっとも、防水の観点からみれば、前実施例で説明したように、本発明に係る路面標示板においては防水層が蓄光材層、反射層を含む各層及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆うように配置されているため、たとえ蓄光材層と反射層の間に隙間が生じたとしても、この隙間に水分が浸透するおそれはない。しかし、本実施例の路面標示板のように蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配したものとすれば、シリコーンゲルの柔軟性および粘着性により、蓄光材層と反射層が熱変化などにより膨張・収縮しても、シリコーンゲル層がこれにより生じた隙間に追随する形でその空間を充たすこととなるため、両層が密着した状態を保つことができ、結局両層の間に空気の隙間が生じることはない。そこで、万一防水層の内部に水が浸透したとしても、蓄光材層と反射層の隙間に水が浸透して蓄光層を濡らして劣化させてしまうおそれは生じない。つまり、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配することで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐという本発明の目的をより確実に達成することが可能となる。
【0056】
(蓄光材層をより高輝度で発光させる機能)
シリコーンゲルが柔軟性及び粘着性を有することを利用して、接着剤等を用いることなしにシリコーンゲル層を蓄光材層と反射層とをぴったりと密着させることができ、製造過程において蓄光材層と反射層の間に空気が入らないようにすることができる。このため、蓄光材層から反射層側に向かった光が反射層に反射して再び蓄光材層側に戻る際に接着剤や空気による屈折などによって光が減殺されることがなく、蓄光材層の輝度を明るく保つことができる。なお、かかる観点からは、蓄光材層とシリコーンゲル層の屈折率は等しいことが望ましい。
【0057】
つまり、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配することで、蓄光材層をより高輝度で発光させることが可能となる。この機能は、防水を目的とする機能とは直接には関係しないが、本発明の目的である蓄光材層が水に濡れないようにすることは、究極のところ、蓄光材層が劣化して輝度が損なわれないようにするためのものであるから、この機能も結局のところ、本発明の目的と軌を一にするものである。
【0058】
(路面標示板の圧縮強度を強める機能)
さらに、蓄光材層と反射層との間に配されるシリコーンゲル層の柔軟性により、路面標示板に上下方向の圧縮が加えられた場合に、シリコーンゲル層がいわばクッションの役割を果たし、圧縮強度を増すことができ、路面標示板の本体部分の各部分、特に相対的に強度の弱い表面ガラス層やガラスを用いる場合の基板が損傷されにくいようにすることができる。この観点からは、次実施例に述べるように、蓄光材層と表面ガラス層との間にもシリコーンゲル層を配することが望ましく、このようにすることで、本体部分のクッション性をさらに高めることができ、圧縮強度をさらに強めることが可能となる。さらに、シリコーンゲル層の柔軟性により路面標示板の圧縮強度を強めることも可能となる。
【0059】
<効果>
本実施例の発明によれば、蓄光材層に対する防水をより確実にすることができるとともに、蓄光材層をより高輝度で発光させることができる路面標示板を提供することができる。
【実施例4】
【0060】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1から3のいずれか一の構成に加えて、蓄光材層と表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配したものである。
【0061】
<構成>
(全般)
本実施例の路面標示板は、実施例1から3のいずれか一の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配したものである。以下、シリコーンゲル層に係る構成について説明する。その余の構成は実施例1で説明したところと同様であるから、説明を省略する。
【0062】
(シリコーンゲル層)
前出の図3には、本実施例の構成を含む路面標示板の構成の一例が示されている。即ち、同図において、蓄光材層0303と表面ガラス層0304との間にシリコーンゲル層0308が配されている。シリコーンゲル層自体は、実施例3で説明したものと同じである。そこで、本実施例におけるシリコーンゲル層が果たす機能については、実施例3における「蓄光材層と反射層との間」を、「蓄光材層と表面ガラス層の間」にほぼそのまま置き換えたものとなる。即ち、以下のとおりである。
【0063】
(蓄光材層に対する防水をより確実にする機能)
本実施例の路面標示板のように蓄光材層と表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配したものとすることで、万一防水層の内部に水が浸透したとしても、蓄光材層と表面ガラス層の隙間に水が浸透して蓄光層を濡らして劣化させてしまうおそれは生じない。つまり、蓄光材層と表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配することで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐという本発明の目的をより確実に達成することが可能となる。特に、実施例3で示した蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配した構成に加えて本実施例の構成を備える場合は、蓄光材層の上下両層にシリコーンゲル層が配されることになるので、この目的の達成はより一層確実なものとなる。
【0064】
(蓄光材層をより高輝度で発光させる機能)
シリコーンゲル層を用いて蓄光材層と表面ガラス層とをぴったりと密着させることで、製造過程において蓄光材層と表面ガラス層の間に空気が入らないようにすることができる。このため、蓄光材層からの光が表面ガラス層を介して外部に発せられる際に接着剤や空気による屈折などによって光が減殺されることがなく、蓄光材層の輝度を明るく保つことができる。なお、かかる観点からは、蓄光材層、シリコーンゲル層及び表面ガラス層の屈折率はすべて等しいことが望ましい。特に、実施例3で示した蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配した構成に加えて本実施例の構成を備える場合は、蓄光材層の上下両層にシリコーンゲル層が配されることになるので、この目的の達成もより一層確実なものとなる。
【0065】
<効果>
本実施例の発明によれば、蓄光材層に対する防水をより確実にすることができるとともに、蓄光材層をより高輝度で発光させることができる路面標示板を提供することができる。特に、実施例2の構成に加えて本実施例の構成を備えることで、これら目的の達成をより一層確実なものとすることができる。
【実施例5】
【0066】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1から4のいずれか一の構成に加えて、防水層がシリコーンゲルで構成されているものである。
【0067】
<構成>
(全般)
本実施例の路面標示板は、実施例1から4のいずれか一の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、防水層がシリコーンゲルで構成されているものである。以下、シリコーンゲルで構成されている防水層に係る構成について説明する。その余の構成は実施例1などで説明したところと同様であるから、説明を省略する。
【0068】
(防水層:シリコーンゲルで構成されたもの)
本実施例における防水層は、シリコーンゲルで構成されている。シリコーンゲル層自体は、実施例3で説明したものと同じである。そこで、本実施例においては、本体部分を構成する各層及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部と、枠状部の内壁面との間に配される防水層がこれら両者を密着させる形で配されることになる。このため、本体部分を構成する各層や枠状部を構成する部材が温度変化によって膨張・収縮した場合でも、シリコーンゲルの柔軟性および粘着性により、シリコーンゲルで構成されている防水層がこれにより生じた隙間に追随する形でその空間を充たすこととなるため、本体部分を構成する各層・防水層・枠状部の内壁面が密着した状態を保つことができる。特に、本体部分を構成する各層と防水層とが密着した状態を保つことができることで、これらの隙間から水分が内部に浸透して蓄光材層を水で濡らすおそれを完全になくすことができる。
【0069】
シリコーンゲルで構成される防水層の具体的な構成の一例としては、アルミニウム層の裏面にシリコーンゲルを貼り付けた粘着テープが挙げられる。
【0070】
特に、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配し、かつ、蓄光材層と表面ガラス層との間にもシリコーンゲル層を配するとともに、防水層をシリコーンゲルで構成されているものとした場合には、結局のところ、本体部分全体をシリコーンゲルで側面から完全にシールドするとともに、蓄光材層をシリコーンゲルで完全に包み込むこととなる。前出の図3は、このように蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配し、かつ、蓄光材層と表面ガラス層との間にもシリコーンゲル層を配するとともに、防水層をシリコーンゲルで構成されている例を示したものである。同図では、各部材の範囲を示す便宜上、防水層と各シリコーンゲル層との境界を細線で示したが、実際には、これらすべてが単一のシリコーンゲルで継ぎ目なく一体に構成されている。このため、路面標示板を構成する各部材が温度変化によって膨張・収縮した場合でも、防水層の内部に水分が浸透するおそれも、ましてや蓄光材層にまで水分の浸透が及ぶおそれも皆無となるため、防水のための部材の隙間から水が浸透しないように蓄光材を完全に包み込むことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐという本発明の目的を最も好適な形で達成することができる。
【0071】
なお、図3の例では、図1図2の例と異なり、枠状部の壁面の頂部を内側に少し突出させて防水層頂部を覆うようにして、防水層が路面に露出しないようにしている。これは粘着性を有するシリコーンゲルが路面に露出することでごみや埃を付着して見栄えが悪くなったり、歩行がしづらくなったりすることを防ぐためである。もちろん、実施例1、2で示したような防水層がシリコーンゲルに限定されない路面標示板についてもこのような構成を用いてもよい。
【0072】
<効果>
本実施例の発明によれば、本体部分を構成する各層と防水層とが密着した状態を保つことができることで、これらの隙間から水分が内部に浸透して蓄光材層を水で濡らすおそれを完全になくすことができる。特に、実施例2及び3の構成に加えて本実施例の構成を備えることで、本発明の目的を最も好適に達成することができる。
【実施例6】
【0073】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1から4のいずれか一の構成に加えて、防水層がベースフィルム反射層を有する防水フィルムで構成されており、これにより、蓄光材層から下面及び側面に放出された光が反射層及びベースフィルム反射層に反射して再び蓄光層に戻るようにして、蓄光材層の輝度をより増すことができるようにしたものである。
【0074】
<構成>
本実施例の路面標示板は、実施例1から4のいずれか一の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、防水層が、防水フィルムで構成されている点に特徴がある。以下、防水フィルムで構成されている防水層に係る構成について説明する。その余の構成は実施例1などで説明したところと同様であるから、説明を省略する。
【0075】
(防水層:防水フィルムで構成されたもの)
図9は、本実施例における防水層の構成の一例を示す図である。(a)に示すように、本実施例における防水層は、防水フィルム0911で構成されている。(b)は(a)に示す防水フィルム部分の拡大図である(煩雑を避けるため(a)において右側に示されている防水フィルムについて示したが、左側に示されている防水フィルムはこれと左右対称に現れる)。本図(b)に示すように、防水フィルムは、ベースフィルム0911aと、ベースフィルム反射層0911bと、シリコーンゲル0911cとで構成されている。
【0076】
(ベースフィルム)
ベースフィルムは、その上にベースフィルム反射層を配するためのフィルム状の部材である。フィルムの材料に特に限定はないが、防水性に優れたものであることが必要であるほか、耐久性、遮光性、耐熱性・耐寒性に優れたものであることが望ましい。かかる観点から好適な材料としてアルミニウムなどの金属製のフィルムが挙げられる。ベースフィルムの厚みの一例は、15~300μm程度であり、より好適には約60~90μmである。
【0077】
(ベースフィルム反射層)
ベースフィルム反射層は、ベースフィルム上に配され、蓄光材層から側面に放出された光を蓄光材層側に反射するためのものである。このため、ベースフィルム反射層がベースフィルム上のすべての位置に配されている必要はなく、少なくとも蓄光材層の端面に配されていればよい。ただし、蓄光材層からの光が蓄光材層の上層及び/又は下層にシリコーンゲル層が配されている場合のこれらシリコーンゲル層、表面ガラス層、あるいは基板が強化ガラス等の透光性の材料からなるものである場合の当該基板を介して防水層に放出される分もあるので、これらの光も反射した方が蓄光材層の発光輝度に寄与することになる。したがって、ベースフィルム反射層は、これら透光性の材料からなるすべての部材の端面に配されていることが望ましい。
【0078】
ベースフィルム反射層の材料としては、例えば酸化チタンが考えられる。ベースフィルム反射層の厚みの一例は、約0.18~0.22mmであり、より好適には約0.20mmである。反射層の形成方法には特に限定はなく、例えば、ベースフィルムの表面に反射材を塗布する方法、ベースフィルムの表面に反射材を備えた反射テープ又は反射フィルムを貼付する方法などが考えられる。
【0079】
(シリコーンゲル)
シリコーンゲルは、ベースフィルム上に直接又は間接に配されるものである。シリコーンゲルを配する一つの目的は、前実施例における防水層をシリコーンゲルで構成する目的と同様である。すなわち、特に、蓄光材層と反射層との間にシリコーンゲル層を配し、かつ、蓄光材層と表面ガラス層との間にもシリコーンゲル層を配する構成に加えてこのような構成をすることにより、本体部分全体をシリコーンゲルで側面から完全にシールドするとともに、蓄光材層をシリコーンゲルで完全に包み込むことで蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐという本発明の目的を最も好適な形で達成することにある。
【0080】
また、シリコーンゲルを配するもう一つの目的は、蓄光材層の輝度を明るく保つことにある。即ち、反射層と蓄光材層との間にシリコーンゲル層を設ける構成について述べたところと同様に、シリコーンゲルが柔軟性及び粘着性を有することを利用して、接着剤等を用いることなしにシリコーンゲル層を蓄光材層とベースフィルム反射層とをぴったりと密着させることができ、製造過程において蓄光材層と反射層の間に空気が入らないようにすることができるため、蓄光材層からベースフィルム反射層側に向かった光がベースフィルム反射層に反射して再び蓄光材層側に戻る際に接着剤や空気による屈折などによって光が減殺されることがなく、蓄光材層の輝度を明るく保つことができる。なお、かかる観点からは、蓄光材層とシリコーンゲル層の屈折率はプラスマイナス15%から20%以内で等しいことが望ましい。
【0081】
本実施例において用いられるシリコーンゲルの具体例は、既に述べたシリコーンゲル層を構成するシリコーンゲルと同様である。また、その厚みの一例は、約0.1~1.0mmであり、より好適には、約0.2mmプラスマイナス0.1mmである。厚さは場所によってばらつく。
【0082】
<効果>
本実施例の発明によれば、蓄光材層に対する防水をより確実にすることができるとともに、蓄光材層をより高輝度で発光させることができる路面標示板を提供することができる。
【実施例7】
【0083】
<概要>
本実施例の路面標示板は、実施例1から6のいずれか一の構成に加えて、蓄光材層と同厚・面一の外光反射層を有するものである。つまり、蓄光標示と外光反射標示の両方の機能を備えた路面標示板である。
【0084】
<構成>
(全般)
本実施例の路面標示板は、実施例1から6のいずれか一の路面標示板と基本的に共通する。ただし、本実施例の路面標示板は、基板上に直接又は間接に前記蓄光材層と同厚で上下面一に外光を反射する外光反射層を有するものである。以下、外光反射層の構成について説明する。その余の構成は実施例1などで説明したところと同様であるから説明を省略する。
【0085】
(外光反射層)
図4は、本実施例の路面標示板の外観の一例を示す斜視図である。本図に示すように、本実施例の路面標示板0400は、表面ガラス層の下層に蓄光材層0403とともに、外光反射層0409を備えている。外光反射層は、自動車や自転車のライトや、歩行者の保持する懐中電灯の光などの外光をその光源方向に反射して、運転者や歩行者に路面標示板の位置を知らせるためのものである。例えば、歩道と車道の境界に設置される路面標示板に備えることで、夜間に歩道を走行する自転車の運転者に対して歩道と車道の境界位置を示すものである。外光反射層としては、例えば、住友スリーエム株式会社製の白色反射シート(製品名:3430シリーズ)を用いることができる。
【0086】
図5は、図4のX-X線断面図であり、本実施例の路面標示板の構成の一例を示す図である。
【0087】
外光反射層は、基板上に直接又は間接に配される。外光反射層が基板上に間接に配される構成としては、例えば、基板上に直接シリコーンゲル層が配され、さらにシリコーンゲル層上に直接外光反射層が配されるというものが考えられる。図5の例は、このように外光反射層0509が基板0501上にシリコーンゲル層0508を介して間接に配されている例である。
【0088】
また、外光反射層は、図5に示すように、蓄光材層0503と同厚で上下面一に配置される。外光反射層として外光反射テープ(厚み0.2mm程度)を利用する場合は、外光反射層を蓄光材層(厚み1~1.5mm程度)と同厚・上下面一とするために、例えば蓄光材層とほぼ同厚の樹脂製板の上に外光反射テープを貼り付けたものとすればよい。
【0089】
また、図5の例では、表面ガラス層0504が表面に滑り止め用の多数の小さな突起0504a(煩雑を避けるため一個にのみ符号を付した。なお、図4では図示を省略した。)を有している例を示した。
【0090】
さらに、図5の例では、製造を簡単に行うために、本体部分全体をアルミニウムの裏面にシリコーンゲルを貼り付けたテープで包み込む構成を示した。この構成では、基板の下層にもシリコーンゲルが配されることとなる。このように構成すれば、本体部分に圧力や衝撃が加わった場合、基板の下層のシリコーンゲルがいわばクッションの役目を果たし、圧力や衝撃の一部をより強度の高い金属板に逃がすことができる。
【0091】
なお、外光反射層が基板上に直接配される場合の構成としては、例えば、図6に示すように、蓄光材層の下層に配置される反射層を基板に埋め込むようにして、反射層と、反射層の配置されていない部分の基板面が面一になるようにすればよい。
【0092】
路面標示板に蓄光材層とともに外光反射層をも備えることの実用上の意義の一例は以下のとおりである。即ち、夜間の歩道においては、自転車が急に車道に飛び出して交通事故を起こすことがないように、歩道と車道との境界を自転車運転者に示す必要があり、かかる境界位置に外光反射板を設置することが有用である。一方、東日本大震災の経験を踏まえ、夜間の停電時における避難誘導の重要性がさらに重視され、蓄光材を用いた避難誘導標識の設置のニーズがますます高まっている。そこで、上述の外光反射板を設置する際には、蓄光標示板を兼ねたものとすることが極めて望ましい。
【0093】
その際、蓄光材が水に濡れて劣化しないようにするため、実施例1から4で説明したような構造を持たせる必要があるが、こうした構造を損なわないようにこれに組み込む形で外光反射層を備えるためには、外光反射層を蓄光材層と同厚で上下面一に配置することが望ましく、このようにすることで、実施例1から4で説明した基本構造を変えることなく、蓄光材層の防水を実現できる蓄光・外光反射の両機能を備えた路面標示板を提供することができる。
【0094】
さらに、外光反射層は、そこから反射されて表面ガラス層内に導入された光が、表面ガラス層内で反射して蓄光材層に導入され、蓄光材層を励起するという役目も果たしている。特に、表面ガラス層に滑り止めを兼ねた小さな突起が設けられていると、表面ガラス層内で光が乱反射するため、この外光反射層の役目を一層効果的に果たすことができる。前述のように、図5においてもこのように表面ガラス層0504に凸レンズ状の多数の小さな突起0504aが設けられている例が示されている。
【0095】
(防水層:アルミニウムの裏面にシリコーンゲルを貼り付けたテープ)
なお、本実施例の防水層として、薄膜状のアルミニウムの裏面にシリコーンゲルを貼り付けたテープを用いてもよい。かかるテープの具体的な寸法としては、例えば、厚み0.05~0.1mm程度のアルミニウム箔の裏面に厚み0.2~0.4mm程度のシリコーンゲルを貼り付けて形成したものが挙げられる。
【0096】
このようなテープを用いれば、防水層を形成するには単に本体部分全体を包み込むように覆うだけでよいので、簡単な作業で防水層を形成することができる。この場合、このようなテープは、各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う部分に配置されるだけでなく、基板の下面にも配置されることになる。図5の例も、かかるテープを用いた例を示したものである。
【0097】
(本実施例の路面標示板の製造方法の一例)
上述のようなテープを用いた本実施例の路面標示板の製造方法としては、例えば以下の方法が考えられる。第一ステップにて、予め所定の形状、寸法に調整されている蓄光材層と外光反射層を面一に並べた上で上下にシリコーンゲルを配する処理を行う。次に、第二ステップにて、基板上に直接反射層を貼付する処理を行う。次に、第三ステップにて、前記の第一、第二各ステップで形成された両部材を合体させて側面全体をアルミニウムの裏面にシリコーンゲルを貼り付けたテープからなる防水層でシールドする処理を行う。次に、第四ステップにて、第三ステップで形成された部材の上層に表面ガラス層を配する。さらに、第五ステップにて、第四ステップで形成された部材を金属製の枠状部に嵌設する。なお、第一ステップと第二ステップ、第四ステップと第五ステップの順序はそれぞれ逆でもよい。本発明の路面標示板はこのような極めて簡単な手順で製造することができるため、設置現場で簡単に製造作業をすることができ、また、補修や交換の作業も極めて簡単である。
【0098】
<効果>
本実施例の発明によれば、実施例1から4で説明した基本構造を変えることなく、蓄光材層の防水を実現できる蓄光・外光反射の両機能を備えた路面標示板を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9