(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】油圧システム用の低ノイズ制御アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20220915BHJP
B66F 9/22 20060101ALI20220915BHJP
F15B 1/00 20060101ALI20220915BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F04B49/06 311
B66F9/22 X
F15B1/00 D
F15B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2016566888
(86)(22)【出願日】2015-05-06
(86)【国際出願番号】 US2015029520
(87)【国際公開番号】W WO2015171803
(87)【国際公開日】2015-11-12
【審査請求日】2018-05-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-27
(32)【優先日】2014-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】322007154
【氏名又は名称】ダンフォス パワー ソリューションズ ツー テクノロジー エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オルソン、マイケル、ウィリアム
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】関口 哲生
【審判官】窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-100779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B49/06
F15B11/00-11/22
F15B1/00
B66F9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプの放射ノイズ低減方法であって、
(a)作業回路又は推進回路を作動させる複数の油圧分岐回路に選択的に流体接続する可変容量ポンプを有し、該可変容量ポンプをリザーバに選択的に流体接続するドレンバルブアセンブリを設けない油圧システムを設け、前記油圧分岐回路のそれぞれは、前記可変容量ポンプからの油圧作動流体の流れを制御する制御バルブアセンブリを有し、圧力を有する油圧作動流体を収容し、
電子コントローラは、
(b)前記可変容量ポンプが、油圧作動流体が前記作業回路又は前記推進回路
からリザーバに戻る最小限のポンプ流量であるゼロ
吐出位置であり、かつ、オペレータが前記作業回路又は前記推進回路のいずれ
にも動作を要求していないことを判断し、
(c)前記可変容量ポンプが前記ゼロ
吐出位置のままであり、かつ、オペレータが前記作業回路又は前記推進回路のいずれ
にも動作を要求していない限り、有効になるノイズ制御アルゴリズムを開始し、
(d)前記ノイズ制御アルゴリズムは、最も低い圧力を有する
前記油圧分岐回路に対応する制御バブルアセンブリを開放する一方、残りの全ての
前記制御バルブアセンブリを閉位置にする、
ステップを含むことを特徴とする油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項2】
最も低い圧力を有する前記油圧分岐回路に対応する前記制御バブルアセンブリを開放するステップは、最も低い圧力を有するように予め定められた前記制御バルブアセンブリを開放することを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項3】
最も低い圧力を有する前記油圧分岐回路に対応する前記制御バブルアセンブリを開放するステップは、前記ノイズ制御アルゴリズムを開始したとき、前記電子コントローラが各分岐回路の油圧を比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項4】
前記油圧システムを設けるステップは、複数の前記油圧分岐回路のそれぞれに圧力センサを設けることを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項5】
前記油圧システムを設けるステップは、第1分岐回路及び第2分岐回路を設けることを含み、前記第2分岐回路がアキュムレータを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項6】
前記油圧システムを設けるステップは、前記第1分岐回路用の第1制御バルブアセンブリと、前記第2分岐回路用の第2制御バルブアセンブリと、を設けることを含み、前記第1制御バルブアセンブリが閉位置に付勢され、前記第2制御バルブアセンブリが開位置に付勢されることを特徴とする請求項5に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項7】
最も低い圧力を有する前記油圧分岐回路に対応する前記制御バブルアセンブリを開放するステップは、前記第1制御バルブアセンブリを開放することを含むことを特徴とする請求項6に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項8】
前記油圧システムを設けるステップは、第1分岐回路と、第2分岐回路と、第3分岐回路と、を設けることを含むことを特徴とする請求項4に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項9】
前記油圧システムを設けるステップは、前記第1分岐回路用の第1制御バルブアセンブリを設け、前記第2分岐回路用の第2制御バルブアセンブリを設け、前記第3分岐回路用の第3制御バルブアセンブリを設けることを含み、前記第1、第2及び第3制御バルブアセンブリは、閉位置に付勢されることを特徴とする請求項8に記載の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項10】
フォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法であって、
(a)第1油圧分岐回路及び第2油圧分岐回路に選択的に流体接続する可変出力ポンプを有し、該可変出力ポンプをリザーバに選択的に流体接続するドレンバルブアセンブリを設けない油圧システムを備えるフォークリフトを設け、
i.前記第1油圧分岐回路は、第1制御バルブアセンブリと、少なくとも前記フォークリフトのリフト及びチルト機能に動力を与える作業回路と、を含み、
ii.前記第2油圧分岐回路は、第2制御バルブアセンブリと、アキュムレータと、前記フォークリフトの駆動機能に動力を与える推進回路と、を含み、
前記第1及び第2制御バルブアセンブリに接続する電子コントローラを設け、該電子コントローラは、
(b)ポンプ出力が、油圧作動流体が前記作業回路又は前記推進回路
からリザーバに戻る最小限のポンプ流量であるゼロ
吐出位置であること、かつ、オペレータが前記作業回路又は前記推進回路のいずれ
にも動作を要求していないことを判断し、
(c)前記可変出力ポンプが前記ゼロ
吐出位置のままであり、かつ、オペレータが前記作業回路又は前記推進回路のいずれ
にも動作を要求していない限り、有効になるノイズ制御アルゴリズムを開始し、
(d)前記ノイズ制御アルゴリズムは、ポンプ流量を前記可変出力ポンプからリザーバに戻すことを可能にするように、
前記第2油圧分岐回路より低い圧力を有する前記第1油圧分岐回路に対応する前記第1制御バルブアセンブリを開放する一方、前記第2制御バルブアセンブリを閉位置にする、
ステップを含むことを特徴とするフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項11】
油圧システムを備えるフォークリフトを設けるステップは、前記第1制御バルブアセンブリが閉位置に付勢され、前記第2制御バルブアセンブリが開位置に付勢されることを含んでいることを特徴とする請求項10に記載のフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項12】
前記第1及び第2制御バルブアセンブリは、それぞれが付勢ばね及びアクチュエータを含むことを特徴とする請求項11に記載のフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項13】
前記第1及び第2制御バルブアセンブリのそれぞれの前記アクチュエータは、ソレノイドタイプの制御バルブであることを特徴とする請求項12に記載の油圧ポンプのフォークリフト放射ノイズ低減方法。
【請求項14】
前記電子コントローラを設けるステップは、更に、前記作業回路及び前記推進回路に関連するオペレータの入力を受取る電子コントローラを設けることを含むことを特徴とする請求項
10に記載のフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項15】
前記作業回路及び前記推進回路に関連するオペレータの入力を受取る前記電子コントローラを設けるステップは、リフトレバー、チルトレバー及びサイドシフトレバーから入力を受取る
電子コントローラを設けることを含むことを特徴とする請求項
10に記載のフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【請求項16】
前記可変出力ポンプを設けるステップは、斜板を有する可変容量アキシアルピストンポンプを設けることを含むことを特徴とする請求項10に記載のフォークリフト油圧ポンプの放射ノイズ低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、PCT国際特許出願として、2015年5月6日に出願され、2014年5月6日に出願された米国特許出願第61/989,215号の優先権を主張し、その開示は、参照することにより、本書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト、ホイールローダ、トラックローダ、掘削機、バックホー、ブルドーザ及びテレハンドラー等の作業機が知られている。作業機は、パレット、ゴミ及び/又は瓦礫等の材料を移動させるのに使用することができる。一般的に、作業機は、この作業機に連結された作業機具(例えば、フォーク)を含んでいる。作業機に取付けられた作業機具は、油圧システムによって駆動される。油圧システムは、ディーゼルエンジン等の原動機によって駆動される油圧ポンプを含んでいる。いくつかの用途では、油圧ポンプは、作業機の作業機能及び駆動機能の両方に交互に駆動力を与える。このようなシステムのいくつかの動作モードにおいて、過剰な又は望ましくないノイズが油圧ポンプによって発生される。改良が望まれる。
【発明の概要】
【0003】
フォークリフト又は他の作業機用の油圧ポンプの放射ノイズ低減方法が開示されている。一のステップでは、複数の油圧分岐回路に選択的に流体接続する可変容量ポンプを有する油圧システムを設け、油圧分岐回路のそれぞれは、制御バルブアセンブリを含み、圧力を有する油圧作動流体を収容している。別のステップでは、ポンプの吐出量がゼロにあること、及び、オペレータが油圧分岐回路のいずれからも流量を要求していないことを判断することを含む。さらに別のステップでは、ポンプの吐出量がゼロのままであり、オペレータが油圧分岐回路のいずれからも流量を要求していない限り、有効になるノイズ制御アルゴリズムを開始することを含む。ノイズ制御アルゴリズムが有効なとき、この方法は、他の全ての油圧分岐回路の圧力と比較して最も低い圧力を有する油圧分岐回路に対応する制御バルブアセンブリを開放する一方、残された全ての制御バルブアセンブリを閉位置にすることを含む。いくつかの実施形態において、例えば、ハイブリッドフォークリフト作業機に、駆動及び作業機能の両方を駆動する油圧ポンプが設けられ、最も低い圧力の機能に関連するバルブは、ノイズ制御アルゴリズムが作動されているとき、開放されるバルブとすることができる。他の実施形態において、ドレンバルブアセンブリが設けられ、これは、ノイズ制御アルゴリズムが作動されているとき、開放される一方、他のバルブは閉位置に位置決め又は保持される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
非限定的及び非網羅的な実施形態は、必ずしもスケール通りに描かれていないが、以下の図を参照して説明され、他に特定されない限り、様々な図の至るところの同様の参照符号は、同様の部品を指している。
【0005】
【
図1】本開示の原理に従う態様の例である機構を有する作業機の概略図である。
【
図2】
図1に示す作業機の使用に適した油圧システムの概略図である。
【
図3】
図2に示す油圧システムの改良型の概略図である。
【
図4】
図2に示す油圧システムの改良型の概略図である。
【
図5】
図2、
図3及び/又は
図4に示す油圧システムに用いられる電子コントローラシステムの概略図である。
【
図6】
図2、
図3及び/又は
図4に示す油圧システムの動作方法を示す処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
様々な実施形態は、図を参照して詳細に記載され、同様の参照符号は、ぞれぞれの図の至る所の同様の部品及びアセンブリを示す。様々な図への言及は、本明細書に添付された特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書に記載されたあらゆる例は、限定を意図させるものではなく、単に添付の特許請求の範囲の多くの実施可能な実施形態のいくつかを記載しているにすぎない。
【0007】
概要
図1に示されるように、作業機300が示されている。作業機300は、ワークタスクの多様性を実施するためのワークアタッチメント301を含む。一実施形態において、作業機300は、フォークリフトトラックであり、ワークアタッチメント301は、2つのフォークを備えている。しかしながら、当業者は、ワークアタッチメントがあらゆる油圧駆動作業装置であってもよいことを十分に理解するであろう。
【0008】
また、作業機300は、少なくとも1つのドライブホイール305と、少なくとも1つのステアホイール306と、を含むように示されている。特定の実施形態において、1つ以上のドライブホイール305は、1つ以上のステアホイール306に組み合わさっている。ドライブホイールは、油圧推進回路204を介して、ポンプ12及び油圧モータ312に駆動連結するエンジン308によって駆動される。ポンプ12は、エンジン308に機械的に結合され、油圧モータ312は、油圧システム10を介してエンジン308に結合される。また、モータ312は、車軸316、ディファレンシャル318及び駆動軸320を介して1つ以上のドライブホイール305に機械的に結合される。
【0009】
また、一実施形態において、作業回路104及びステアリング回路324は、油圧システム10に流体接続される。作業回路104は、ワークタスクを実行できるように、ワークアタッチメント301を作動させ、ステアリング回路324は、作業機300を所望の方向に選択的に操舵させることを可能にする。
【0010】
油圧システムの説明
図2を参照して、一実施形態の油圧システム10が概略図として示されている。図に示すように、油圧システム10は、少なくとも第1制御バルブアセンブリ102を有する第1油圧分岐回路100と、第2制御バルブアセンブリ202を有する第2油圧分岐回路200と、に加圧流体を供給するように構成されたポンプ12含む。この実施形態において、ポンプ12は、可変容量アキシアルポンプとして示されている。しかしながら、ポンプ12としてオーバーセンターポンプ等の他のタイプのポンプを用いることができる。構成されたように、油圧ポンプ12は、リザーバ14からの油圧流体
(油圧作動流体)を受取る入口(すなわち、低圧側)を含み、更に、油圧ポンプ12は、それぞれの油圧供給ライン18,19を介して第1及び第2制御バルブアセンブリ102,202に接続された出口(すなわち、高圧側)を含む。ポンプが回転されたとき、油圧流体
(油圧作動流体)は、リザーバ14からポンプ12の入口の中に流れ、油圧ポンプ12の出口から高圧で排出される。
【0011】
図2を参照して、制御バルブアセンブリ102は、作業回路104として構成された油圧回路104の上流側になるように示され、更に、第2制御バルブアセンブリ202は、推進回路204として構成された第2油圧回路204の上流側になるように示されている。流体は、回路104,204からそれぞれのリザーバライン20,21によって、戻される。
【0012】
作業回路104は、フォークリフトトラックのワークアッタチメント(例えば、フォーク)用のリフトアクチュエータ、チルトアクチュエータ及びサイドシフトアクチュエータ等のアクチュエータを介して作業機の様々な作業機能を制御し、作動させるために設けられる。作業回路104の一例は、条件付きロードセンサコントロールと題された米国特許出願公開2012/0204549に説明され、その全体が参照することにより、本書に含まれる。作業回路104は、作業機の様々な機能を作動させるために用いられる1つ以上の個々の作業回路部分に対応する1つ以上のバルブ部分で構成されている。作業回路部分は、油圧モータ、及び/又は、油圧アクチュエータを作動させるように構成されている。例えば、作業回路104は、フォークリフトのリフト、チルト、及びシフト機能に対応する3つの個々の作業回路部分を含むことができる。
【0013】
推進回路204は、動力を作業機の駆動系に供給させる。図示の実施形態においては、第2油圧分岐回路200は、ポンプ12が使用できないとき、又は、駆動系を作動させるために十分な容量を有していないとき、使用する高圧の油圧流体を貯蔵するための機能を備えるアキュムレータ206を含む。一実施形態において、推進回路は、1つ以上の油圧モータを含む。
【0014】
図1に示す実施形態において、第1制御バルブアセンブリ102及び第2制御バルブアセンブリ202は、閉位置A及び開位置Bを有する二位置二方向弁として構成されている。第1制御バルブアセンブリ102が開位置Bにあるとき、油圧流体は、ポンプ12から作業回路104に流れることが可能である。これに対して、第1制御バルブアセンブリ102が閉位置Aにあるとき、流体は、ポンプ12から作業回路104への流れ及びその逆の流れを阻止される。第2制御バルブアセンブリ202が開位置Bにあるとき、油圧流体は、ポンプ12から推進回路204、及び/又は、アキュムレータ206に流れることが可能である。第2制御バルブアセンブリ202が閉位置Aにあるとき、流体は、ポンプ12と、推進回路204及びアキュムレータ206と、の間を流れるのを阻止される。アキュムレータ206が第2油圧分岐回路200にあり、第2油圧分岐回路の圧力が第1油圧分岐回路100の圧力より大きい場合には、第2制御バルブアセンブリ202の閉位置Aは、油圧流体の第1油圧分岐回路100を介したアキュムレータ206からリザーバ14への望ましくない流れを阻止する。
【0015】
一実施形態において、第1制御バルブアセンブリ102は、付勢ばね102a及びアクチュエータ102bを含む。図に示すように、付勢ばね102aは、第1制御バルブアセンブリ102を閉位置Aに付勢する働きをし、アクチュエータ102bは、付勢ばね102aの付勢力に抗して、第1制御バルブアセンブリ102を開位置Bに駆動させる働きをする。しかしながら、付勢及び制御機能は、必要に応じて、バルブ102が開位置Bに付勢され、閉位置Aに駆動されるように、逆に配置することができることに留意されたい。一実施形態において、第1制御バルブアセンブリ102は、付勢ばね102a及びアクチュエータ102bがスリーブ内でスプールの両端に作用するスプールタイプのバルブである。図示の実施形態では、アクチュエータ102bは、可変力ソレノイドバルブ(すなわち、比例制御弁)又はボイスコイルである。しかしながら、アクチュエータ102bは、油圧アクチュエータ、若しくは、他のタイプの電気式又は電気-油圧式アクチュエータであってもよいことが理解されるであろう。
【0016】
一実施形態において、第2制御バルブアセンブリ202は、付勢ばね202a及びアクチュエータ202bを備える。図に示すように、付勢ばね202aは、第2制御バルブアセンブリ202を開位置Bに付勢する働きをし、アクチュエータ202bは、付勢ばね202aの付勢力に抗して、第2制御バルブアセンブリ202を閉位置Aに駆動させる働きをする。しかしながら、付勢及び制御機能は、必要に応じて、バルブ202が閉位置Aに付勢され、開位置Bに駆動されるように、逆に配置することができることに留意されたい。一実施形態において、第2制御バルブアセンブリ202は、付勢ばね202a及びアクチュエータ202bがスリーブ内でスプールの両端に作用するスプールタイプのバルブである。図示の実施形態では、アクチュエータ202bは、可変力ソレノイドバルブ(すなわち、比例制御弁)又はボイスコイルである。しかしながら、アクチュエータ202bは、油圧アクチュエータ、若しくは、他のタイプの電気式又は電気-油圧式アクチュエータであってもよいことが理解されるであろう。
【0017】
図3に示すように、油圧システム10は、油圧回路604で表されるあらゆる数の所望の油圧回路の(“X”)、例えば、最大20個の油圧回路を含むことができる。一実施形態において、追加の油圧回路604の1つは、作業機300のステアリング回路324にすることができる。油圧回路604は、
図1の第1及び第2分岐回路100,200に示されたものに対して説明したものと同じである制御バルブ602及び圧力センサ610を備える。例えば、制御バルブアセンブリ602は、バルブアセンブリを閉位置Aと開位置Bとの間で移動させるためのアクチュエータ602b及び付勢ばね602aを含む。また、1つ以上の油圧回路604は、供給ライン23を介してポンプ12に流体接続して配置され、更に、排出ライン25を介してリザーバ14に流体接続して配置されている。
図3に示される概略図は、アキュムレータ206を用いない第2油圧回路204を示し、制御バルブアセンブリ102,202,602がそれぞれの付勢ばね102a,202a,602aによって開位置Aに付勢されることに留意されたい。
【0018】
図4を参照して、油圧システム10は、排出バルブアセンブリ702をさらに含む。図に示すように、排出バルブアセンブリ702は、閉位置A及び開位置Bを有する二位置二方向弁として構成されている。排出バルブアセンブリ702が開位置Bにあるとき、油圧流体は、ポンプ12からリザーバ14に直接流れる。これに対して、排出バルブアセンブリ702が閉位置Bにあるとき、流体は、排出バルブアセンブリ702を介したポンプ12からリザーバ14への流れが阻止される。
【0019】
一実施形態において、排出バルブアセンブリ702は、付勢ばね702a及びアクチュエータ702bをさらに含む。図に示すように、付勢ばね702aは、排出バルブアセンブリ702を閉位置Aに付勢する働きをし、アクチュエータ702bは、付勢ばね702aの付勢力に抗して、排出バルブアセンブリ702を開位置Bに駆動する働きをする。しかしながら、付勢及び制御機能は、必要に応じて、バルブ702が開位置Bに付勢され、閉位置Aに駆動されるように、逆に配置することができることに留意されたい。一実施形態において、排出バルブアセンブリ702は、付勢ばね702a及びアクチュエータ702bがスリーブ内でスプールの両端に作用するスプールタイプのバルブである。図示の実施形態では、アクチュエータ702bは、可変力ソレノイドバルブ(すなわち、比例制御弁)又はボイスコイルである。しかしながら、アクチュエータ702bは、油圧アクチュエータ、若しくは、他のタイプの電気式又は電気-油圧式アクチュエータであってもよいことが理解されるであろう。
【0020】
電子制御システム
油圧システム10は、作業機300の要求(例えば、オペレータによる)に応じて様々なモードで作動される。電子制御システムは、監視して、様々なモードを適切な状況で開始させることを可能とする。電子コントローラ50は、複数のセンサ及び油圧システム10の動作パラメータを監視して、油圧システム10を最も適切な動作モードに設定する。
【0021】
図5を参照して、電子コントローラ50は、プロセッサ50Aと、RAM、フラッシュドライブ又はハードドライブ等の非一時的記憶媒体又はメモリ50Bと、を含むように概略図として示されている。メモリ50Bは、実行可能なコード、動作パラメータ、オペレータインターフェイスからの入力を記憶するものであり、プロセッサ50Aは、コードを実行するためのものである。また、電子コントローラ50は、作業回路の動作モードを実施するために用いられる複数の入力及び出力を有するように示されている。図に示すように、電子コントローラ50は、第1油圧回路圧力入力部500、第2油圧回路圧力入力部502及び“X”油圧回路圧力入力部504を含む。また、電子コントローラは、リフトレバー62a、チルトレバー62b及びサイドシフトレバー62c等の1つ以上のレバー62、アクセルペダル位置63及びステアリングホイール位置65を含む複数の作業機入力部506を有するように示されている。一実施形態において、1つ又は複数のレバー位置入力は、電子レバーからの直接デジタル信号である。作業レバー62は、作業回路104に関連した1つ又は複数の油圧アクチュエータによる作業動作が要求されるコントローラ50へのユーザーの指示を提供する。当業者は、多くの他の入力が可能であること理解するであろう。例えば、測定されたエンジンスピードは、電子コントローラ50に直接入力として与えられてもよく、又は、コントロールエリアネットワーク(CAN)を介してコントロールシステムの他の部分から受け取ってもよい。また、測定されたポンプ吐出量、例えば、吐出量フィードバックセンサを介して提供されてもよい。一実施形態において、電子コントローラ50は、様々な回路104,204,604の入力のために必要な全ての動作入力を含むように構成される。
【0022】
更に、
図5を参照して、電子コントローラ50からの多数の出力が示されている。1つの出力は、ポンプ12の出力圧力を調整するポンプ出力コマンド510である。一実施形態において、ポンプ圧力の出力は、可変容量アキシアルピストンポンプの斜板の角度を調整することにより制御できる。図示された更なる出力は、第1制御バルブアセンブリポジションコマンド512、第2制御バルブアセンブリポジションコマンド514、“X”制御バルブアセンブリポジションコマンド516及びドレンバルブポジションコマンド518である。他の出力は、同様に可能である。一実施形態において、電子コントローラ50は、様々な回路104,204,604のために必要とされる全ての作動出力を含むように構成される。
【0023】
また、電子コントローラ50は、コントローラ50の入力及び出力の相互関係を示す多数のマップ又はアルゴリズムを含む。例えば、以下の動作方法のセクションでさらに説明するように、コントローラ50は、予測されたノイズ出力レベル、及び、センサ100,210及び/又は610で測定された圧力に基づいて、バルブ102,202,602及び/又は702の位置を制御するためのアルゴリズムを含むことができる。
【0024】
電子コントローラ50は、それぞれのモードがいつ開始、及び/又は、終了されるかを決定するためのいくつかの所定の、及び/又は、設定可能なパラメータ及びオフセットを記憶する。本明細書に用いられている「構成可能な」という用語は、コントローラで選択する(すなわち、ディップスイッチを介して)ことができるか、コントローラ内で調整することができるパラメータ及びオフセットの値について言及している。
【0025】
動作方法
図6を参照して、制御バルブアセンブリ102,202,602及び/又は702の動作方法1000が示されている。
図6は、方法のステップを特定の順序で図式的に示しているが、この方法は、必ずしも示された順序で実施されることに限定されることを意図としていないことに留意されたい。それどころか、少なくとも示されたステップのいくつかは、重複、異なる順序、及び/又は、同時に実施することができる。
【0026】
方法1000の第1ステップ1002において、電子コントローラ50は、油圧ポンプ12がゼロ吐出状態であると判断し、これは、オペレーターが動作を要求していないので、ポンプ12が出力の流れを生じさせないように指令されている、又は、様々な制御バルブがゼロ流量である、及び/又は、閉位置にあることを意味している。可変容量アキシアルピストンポンプを利用する油圧システムの実際の実施では、ポンプ12の完全な又は真のゼロ流量状態が生じず、この状態において、一部の流れがポンプによって生じることを留意されたい。したがって、“ゼロ出力位置”及び“ゼロ吐出位置”の用語は、ほとんど吐出しない又は流れないが、わずかな正の油圧流れがポンプ12によって生じる油圧ポンプの位置を含む。この状況のため、また、リリーフバルブが油圧システム10に設けられるように示されていないために、少なくとも1つの制御バルブ102,202,602及び/又は702は、最小限の流量がポンプ12からリザーバ14に戻ることが可能に少なくとも部分的に開放されていなければならない。
【0027】
ステップ1004において、オペレータが油圧分岐回路100,200,600のいずれかからの流れを要求しているかどうかの判断が行われる。一実施形態において、この判断は、電子コントローラ50への上述の入力506に基づいて行われ、この入力は、作業機300の油圧回路における機能が要求されていないことを示している。流れがいずれかの分岐回路100,200,600から要求されている場合、この方法は、ステップ1002に戻る。
【0028】
ステップ1006において、低ノイズ制御、すなわち、ノイズ低減アルゴリズムは、コントローラ50内で開始される。ノイズ低減アルゴリズムは、ポンプ12がゼロ吐出状態のままであり、かつ、オペレータからの要求がない限り、作動したままである。このノイズ低減アルゴリズムは、油圧分岐回路とポンプ12の入口側との間の高圧力差によって引起されるポンプ12のノイズを低減させるためのものである。ポンプ12の入口と出口との差圧が増加することで、ポンプ12によって生じる放射ノイズが増加することに留意されたい。したがって、ポンプ12が比較的高圧力の分岐回路に連通されるとき、ポンプのノイズ出力は、ポンプ12が比較的低圧力の分岐回路に連通されるときに生じるノイズより大きくなる。
【0029】
ステップ1008において、最も低い分岐ライン圧力に関連する制御バルブは、最小限のポンプ流量がリザーバに戻るように開放されると共に、そのポンプで作動される分岐回路用の残り全ての制御バルブが確実に閉位置にされる。閉位置は、バルブアセンブリ又は複数のバルブアセンブリを作動させることによって、又は、閉位置に付勢されたバルブを設けることによって、達成することができる。一実施形態において、最も低い分岐ライン圧力は、圧力センサ110,210及び/又は610からの入力を比較することにより決定することができる。上述したように、最も低い圧力に関連する制御バルブを開放することにより、ポンプ12に生じるノイズを最も低くする。高圧力を維持するアキュムレータを含む
図2に示す特定の構成では、第1油圧分岐回路100は、通常、第2油圧分岐回路200より低い圧力になっている。このため、ノイズ低減制御アルゴリズムが開始されたとき、分岐回路圧力の直接比較を実施することに代えて、又は、これに加えて、第1制御バルブアセンブリ102を開放するデフォルトのバルブアセンブリとして選択してもよい。さらにドレンバルブアセンブリ702を含む
図4に示す特定の構成では、代替ステップ1008aがステップ1008に代えて実施されてもよい。ステップ1008aにおいて、ノイズ低減アルゴリズムがステップ1006で実行されたとき、ドレンバルブアセンブリ702は、最小限のポンプ流量がリザーバに戻ることを可能にするように開放され、このとき、油圧分岐回路に関連するバルブアセンブリは、閉位置に指令される、又は、デフォルトの閉位置に保持される。
【0030】
上述の方法は、ノイズ低減制御の方法のいかなるタイプも実行しない一般的な油圧システムと比較して、油圧ポンプからの放射音を相当低減することができる。
【0031】
上述の様々な実施形態は、説明の目的のために提供され、本明細書に添付された特許請求の範囲を限定することと解釈するべきでない。当業者は、本明細書に説明された、及び、記載された例示的な実施形態及び用途に従うことなくなされる様々な改良及び変更を容易に認識し、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱することなく、実施することができる。